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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136523
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】粉砕装置
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20230922BHJP
   G21C 19/07 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G21F9/30 531J
G21C19/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042248
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591130319
【氏名又は名称】東京パワーテクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518310905
【氏名又は名称】株式会社WINビジネスデベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】府川 慶太
(72)【発明者】
【氏名】土井 秀信
(72)【発明者】
【氏名】渡部 拓史
(72)【発明者】
【氏名】長崎 正裕
(72)【発明者】
【氏名】小松 俊克
(57)【要約】
【課題】燃料貯蔵ラックから使用済み燃料を取り出す際の障害物を安全に粉砕可能な装置を提供する。
【解決手段】複数のラックセルから構成される燃料貯蔵ラックからチャンネルボックスを取り出す際の障害となる物体を粉砕するための粉砕装置Xであって、一のラックセルrに挿通されるハンマー部Aと、ハンマー部Aを一のラックセルrの内部に挿通支持する挿通部Bと、ハンマー部Aの動作を制御する制御機構Cと、挿通部B及び制御機構Cを支持する支持部Dと、を備え、ハンマー部Aは、挿通部Bに連結されるハンマー部本体A1と、ハンマー部本体A1に設けられ、一のラックセルrの内壁に当接可能な当接部A2と、を有し、制御機構Cは、ハンマー部本体A1に内壁に向かう推進力を付与することで、当接部A2を一のラックセルrの内壁に衝突させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラックセルから構成される燃料貯蔵ラックからチャンネルボックスを取り出す際の障害となる物体を粉砕するための粉砕装置であって、
前記一のラックセルに挿通されるハンマー部と、前記ハンマー部を前記一のラックセルの内部に挿通支持する挿通部と、前記ハンマー部の動作を制御する制御機構と、前記挿通部及び前記制御機構を支持する支持部と、を備え、
前記ハンマー部は、前記挿通部に連結されるハンマー部本体と、前記ハンマー部本体に設けられ、前記一のラックセルの内壁に当接可能な当接部と、を有し、
前記制御機構は、前記ハンマー部本体に前記内壁に向かう推進力を付与することで、前記当接部を前記一のラックセルの内壁に衝突させる、粉砕装置。
【請求項2】
前記挿通部は、前記ハンマー部本体を回動可能に支持する軸支部を有し、
前記制御機構は、前記軸支部周りに前記ハンマー部本体を回動させることで、前記当接部を前記一のラックセルの内壁に衝突させる、請求項1に記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記軸支部は略水平方向に延び、
前記制御機構は、前記ハンマー部及び前記挿通部と共に前記一のラックセルに挿通される往復動部と、前記往復動部を略鉛直方向に沿って上下動させる振動付与部と、を有し、
前記往復動部は、前記振動付与部に連結される往復動部本体と、前記往復動部本体と前記ハンマー部本体とを連結する連結部と、を含み、
前記ハンマー部本体は、前記振動付与部を介した前記連結部の上下動により、前記軸支部周りに回動する、請求項2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記挿通部及び前記往復動部は、略鉛直方向に沿って延びる長尺体であり、
前記挿通部には、略鉛直方向に沿って、前記軸支部が複数設けられ、
前記往復動部には、略鉛直方向に沿って、前記連結部が複数設けられ、
前記ハンマー部本体は、略鉛直方向に沿って複数設けられ、
前記複数のハンマー部本体は、それぞれが、一の前記軸支部を介して前記挿通部に連結され、且つ一の前記連結部を介して前記往復動部に連結されている、請求項3に記載の粉砕装置。
【請求項5】
前記支持部を介して、前記挿通部及び前記制御機構を吊上げる吊上げ部を備え、
前記吊上げ部は、所定の吊上げ機が係止される吊上げ部本体と、前記吊上げ部本体と前記支持部とを連結する主連結索を有する、請求項3又は4に記載の粉砕装置。
【請求項6】
前記吊上げ部は、前記吊上げ部本体と前記往復動部本体とを連結する副連結索を有し、
前記副連結索には、前記挿通部及び前記制御機構が吊上げられた状態において、所定の張力が発生し、
前記往復動部本体は、前記張力により上方に移動可能に構成され、
前記ハンマー部本体は、前記往復動部本体の前記張力に基づく移動により、前記当接部が前記一のラックセルの衝突対象となる内壁から離間する方向に回動する、請求項5に記載の粉砕装置。
【請求項7】
前記支持部は、前記吊上げ部本体を載置する載置部を有する、請求項5又は6に記載の粉砕装置。
【請求項8】
前記振動付与部は、略鉛直方向に沿って電気的に上下動するピストンロッドを含むシリンダである、請求項3~7の何れかに記載の粉砕装置。
【請求項9】
前記ハンマー部は、前記当接部を前記一のラックセルの内壁に向かって付勢する付勢部を有する、請求項1~8の何れかに記載の粉砕装置。
【請求項10】
前記支持部に連結され、前記ハンマー部が挿通される前記一のラックセルと異なる他のラックセルに挿通される固定手段を備え、
前記固定手段は、前記他のラックセルの内壁を押圧することで、前記支持部及び前記挿通部を介して、前記当接部を前記一のラックセルの内壁に押圧する、押圧手段を有する、請求項1~9の何れかに記載の粉砕装置。
【請求項11】
前記挿通部は、その上方に設けられ、前記一のラックセルに挿通された前記当接部を撮影可能なカメラ部を有する、請求項1~10の何れかに記載の粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み燃料取り出し作業時の障害物を粉砕するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月に発生した東日本大震災の影響により、福島第一原子力発電所3号機では水素爆発が起こり、爆発によって破損した原子炉建屋の破片は、使用済み燃料プール内の燃料貯蔵ラック上にガレキとなって散乱した。
【0003】
ガレキは、燃料集合体を覆っているチャンネルボックスと、チャンネルボックスと燃料集合体を締結しているチャンネルファスナの隙間、及びチャンネルボックスとラックセルの隙間に入り込み、使用済み燃料を取り出す作業の妨げになっていた。
【0004】
しかしながら、使用済み燃料プール内の水深約7m地点という特殊な場所に位置する燃料貯蔵ラック上で、チャンネルボックスとチャンネルファスナの隙間、及びチャンネルボックスとラックセルの隙間に入り込んだガレキを、安全に除去するのに好適な装置はかつて存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、燃料貯蔵ラックから使用済み燃料を取り出す際の障害物を安全に粉砕可能な装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、複数のラックセルから構成される燃料貯蔵ラックから使用済み燃料を取り出す際の障害となる物体を粉砕するための粉砕装置であって、
前記一のラックセルに挿通されるハンマー部と、前記ハンマー部を前記一のラックセルの内部に挿通支持する挿通部と、前記ハンマー部の動作を制御する制御機構と、前記挿通部及び前記制御機構を支持する支持部と、を備え、
前記ハンマー部は、前記挿通部に連結されるハンマー部本体と、前記ハンマー部本体に設けられ、前記一のラックセルの内壁に当接可能な当接部と、を有し、
前記制御機構は、前記ハンマー部本体に前記内壁に向かう推進力を付与することで、前記当接部を前記一のラックセルの内壁に衝突させる。
【0008】
本発明によれば、制御機構が当接部を一のラックセルの内壁に衝突させることで、このラックセルに隣接するラックセルにおいて、チャンネルボックスとラックセルとの間に入り込んだガレキに、当接部の衝突に伴う打撃力を付与することが可能となる。
作業者は、この打撃動作を必要数実行することで、対象のガレキを粉砕することができ、チャンネルボックスの取り出し作業を、スムーズに行うことが可能となる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記挿通部は、前記ハンマー部本体を回動可能に支持する軸支部を有し、
前記制御機構は、前記軸支部周りに前記ハンマー部本体を回動させることで、前記当接部を前記一のラックセルの内壁に衝突させる。
【0010】
このような構成とすることで、作業者は、ハンマー部本体の遠心力でもって、より効率的に、当接部の衝突に伴う打撃力を付与することが可能となる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記軸支部は略水平方向に延び、
前記制御機構は、前記ハンマー部及び前記挿通部と共に前記一のラックセルに挿通される往復動部と、前記往復動部を略鉛直方向に沿って上下動させる振動付与部と、を有し、
前記往復動部は、前記振動付与部に連結される往復動部本体と、前記往復動部本体と前記ハンマー部本体とを連結する連結部と、を含み、
前記ハンマー部本体は、前記振動付与部を介した前記連結部の上下動により、前記軸支部周りに回動する。
【0012】
このような構成とすることで、作業者は、振動付与部及び往復動部の動作により、当接部による打撃動作を、容易に、連続的に実行することができ、ガレキの粉砕作業の作業性が向上する。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記挿通部及び前記往復動部は、略鉛直方向に沿って延びる長尺体であり、
前記挿通部には、略鉛直方向に沿って、前記軸支部が複数設けられ、
前記往復動部には、略鉛直方向に沿って、前記連結部が複数設けられ、
前記ハンマー部本体は、略鉛直方向に沿って複数設けられ、
前記複数のハンマー部本体は、それぞれが、一の前記軸支部を介して前記挿通部に連結され、且つ一の前記連結部を介して前記往復動部に連結されている。
【0014】
このような構成とすることで、チャンネルボックスとラックセルとの間に、上下方向に所定の間隔を置いて入り込んでいる複数のガレキに対して、一挙に打撃力を付与することができ、ガレキの粉砕作業の作業性がさらに向上する。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記支持部を介して、前記挿通部及び前記制御機構を吊上げる吊上げ部を備え、
前記吊上げ部は、所定の吊上げ機が係止される吊上げ部本体と、前記吊上げ部本体と前記支持部とを連結する主連結索を有する。
【0016】
このような構成とすることで、作業者は、本粉砕装置の、対象の燃料貯蔵ラックへの運搬作業、撤去作業を容易に行うことが可能となる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記吊上げ部は、前記吊上げ部本体と前記往復動部本体とを連結する副連結索を有し、
前記副連結索には、前記挿通部及び前記制御機構が吊上げられた状態において、所定の張力が発生し、
前記往復動部本体は、前記張力により上方に移動可能に構成され、
前記ハンマー部本体は、前記往復動部本体の前記張力に基づく移動により、前記当接部が前記一のラックセルの衝突対象となる内壁から離間する方向に回動する。
【0018】
このような構成とすることで、作業者が本粉砕装置を吊上げた際、往復動部本体が上方へ移動することとなり、これに伴い、ハンマー部本体が軸支部周りに回動する。
そして、ハンマー部本体は、当接部が衝突対象の内壁から離間する方向に回動していくため、挿通部等を、対象のラックセルに挿通する際、当接部がラックセルの開口に引掛かる事態を抑制することができる。
これにより、作業者は、対象のラックセルへの挿通部等の挿通作業を、スムーズに行うことが可能となる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記支持部は、前記吊上げ部本体を載置する載置部を有する。
【0020】
このような構成とすることで、作業者は、本粉砕装置を燃料貯蔵ラックへ着座させた際や不使用時等に、吊上げ部本体を載置部に載置しておくことで、本粉砕装置の収まりを良くし、本粉砕装置の周辺で行う他の作業の作業性を向上させることが可能となる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記振動付与部は、略鉛直方向に沿って電気的に上下動するピストンロッドを含むシリンダである。
【0022】
このような構成とすることで、作業者は、振動付与部の振幅や振動数を予め設定しておくことができ、これに伴い、ハンマー部本体の回転角や当接部による打撃力を調整することが可能となる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記ハンマー部は、前記当接部を前記一のラックセルの内壁に向かって付勢する付勢部を有する。
【0024】
このような構成とすることで、作業者は、当接部が内壁に衝突した際に受ける反力を付勢部に吸収させつつ、常時安定した打撃動作を実行することが可能となる。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記支持部に連結され、前記ハンマー部が挿通される前記一のラックセルと異なる他のラックセルに挿通される固定手段を備え、
前記固定手段は、前記他のラックセルの内壁を押圧することで、前記支持部及び前記挿通部を介して、前記当接部を前記一のラックセルの内壁に押圧する、押圧手段を有する。
【0026】
このような構成とすることで、作業者は、押圧手段により、当接部による打撃力をより確実にガレキに付与することができると共に、繰り返しの打撃動作に伴う本粉砕装置全体の位置のブレを抑制することが可能となる。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記挿通部は、その上方に設けられ、前記一のラックセルに挿通された前記当接部を撮影可能なカメラ部を有する。
【0028】
このような構成とすることで、作業者は、当接部が、対象の内壁に適切に当接している状態か、適切に打撃動作を実行できる状態か、を目視で確認することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、燃料貯蔵ラックから使用済み燃料を取り出す際の障害物を安全に粉砕可能な装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係る粉砕装置の全体斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る粉砕装置を示す図であって、(A)正面図、(B)右側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る粉砕装置の動作説明図である。
図4】本発明の実施形態に係る粉砕装置の動作説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る粉砕装置の使用方法の説明図である。
図6】本発明の実施形態に係る粉砕装置の使用方法の説明図である。
図7】本発明の実施形態に係る粉砕装置の使用方法の説明図である。
図8】本発明の実施形態に係る粉砕装置の使用方法の説明図である。
図9】本発明の実施形態に係る粉砕装置の使用方法の説明図である。
図10】本発明の実施形態に係る粉砕装置の使用方法の説明図である。
図11】本発明の実施形態に係る粉砕装置の使用方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図1図11を用いて、本発明の実施形態に係る粉砕装置について説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係る粉砕装置を示す。
【0032】
なお、図1図11において、圧縮気体や作動油等を各部へ供給するためのエアホースや油圧ホース、映像その他の信号伝送、電源供給等のための配線等は描画を省略しているが、これらの管及び配線の適切な接続関係は当業者であれば容易に理解される。
【0033】
粉砕装置Xは、燃料貯蔵ラックR(図7等参照)からチャンネルボックスfb(使用済み燃料、図8等参照)を取り出す際の障害となる障害物ob(図8等参照)を粉砕するため装置である。
ここで、以下説明の便宜上、図1に示すx軸方向を前後方向、y軸方向を左右方向、z軸方向を鉛直方向と称し、x軸方向における矢印側を前方、y軸方向における矢印側を左方、z軸方向における矢印側を上方と称する。
【0034】
図1及び図2に示すように、粉砕装置Xは、燃料貯蔵ラックRを構成する一のラックセルr(図7等参照)に挿通されるハンマー部Aと、ハンマー部Aを一のラックセルrの内部に挿通支持する挿通部Bと、ハンマー部Aの動作を制御する制御機構Cと、挿通部B及び制御機構Cを支持する支持部Dと、支持部Dを介して、挿通部B及び制御機構Cを吊上げる吊上げ部Eと、支持部Dに連結され、ハンマー部Aが挿通される一のラックセルrと異なる他のラックセルrに挿通される固定手段Fと、を備えている。
なお、図1では、後述する主連結索E2及び副連結索E3を省略している。
また、図1における粉砕装置Xは、吊上げ部Eにより吊上げる前の状態、図2における粉砕装置Xは、吊上げ部Eより吊上げた際の状態で示している。
【0035】
ハンマー部Aは、全体が略薄板状体として構成されており、鉛直方向に沿って略同一の間隔を空けて、4つ設けられている。
なお、ハンマー部Aの、より具体的な構成については、図3を用いて後述する。
【0036】
挿通部Bは、後述する基台部D1の底面から鉛直下方に延びる、一対の長尺体である挿通部本体B1と、後述する各ハンマー部本体A1を回動可能に支持する4つの軸支部B2と、各挿通部本体B1の上端に設けられたカメラ部B3と、各挿通部本体B1の下端に設けられたテーパー部B4と、を有している。
【0037】
各挿通部本体B1は、それぞれが、側面視で長方形状の略薄板状体として構成されており、それぞれの側面が対向するように、基台部D1の底面に連結されている。
また、各挿通部本体B1の間には、各ハンマー部Aが設けられ、各挿通部本体B1の面方向と各ハンマー部Aの面方向とは、略平行となされている。
【0038】
各軸支部B2は、それぞれが、左右方向(各挿通部本体B1の面方向に対して略垂直方向)に延び、各挿通部本体B1と、これらの間に介在する各ハンマー部Aを貫通して設けられている。
【0039】
カメラ部B3は、防水性を有する水中カメラであり、ハンマー部Aと同様に、各挿通部本体B1の間に設けられている。
また、カメラ部B3は、その撮影レンズ(図示せず)が鉛直下方を向いていることで、ラックセルrに挿通された各ハンマー部Aの内、最上方に位置するハンマー部Aの後述する当接部A2を撮影可能に構成されている。
【0040】
テーパー部B4は、下方に向かって鋭利となる、略四角錘状体として構成されている。
このように構成することで、作業者は、各挿通部本体B1のラックセルrへの挿通作業を、スムーズに行うことができる。
【0041】
制御機構Cは、ハンマー部A及び挿通部Bと共にラックセルrに挿通される往復動部C1と、往復動部C1を鉛直方向に沿って上下動させる振動付与部C2と、を有している。
【0042】
往復動部C1は、振動付与部C2に連結される往復動部本体C11と、往復動部本体C11と各ハンマー部本体A1とを連結する4つの連結部C12(図3参照)と、を含む。
【0043】
往復動部本体C11は、各挿通部本体B1それぞれに対して、後方に隣接して設けられた、一対の長尺体である第一往復動部本体C11aと、各第一往復動部本体C11aに挟持された第二往復動部本体C11bと、により構成されている。
【0044】
各第一往復動部本体C11aは、各挿通部本体B1と同様に、側面視で長方形状の略薄板状体として構成されており、それぞれの間に各ハンマー部Aが介在している。
即ち、各挿通部本体B1の面方向と各第一往復動部本体C11aの面方向とは、略平行となされている。
【0045】
第二往復動部本体C11bは、基台部D1を貫通して設けられた、側面視で略L字状のブロック体であり、基台部D1の下方に突出している部分が、各第一往復動部本体C11aに挟持されている。
また、第二往復動部本体C11bの外周と、第二往復動部本体C11bが貫通する基台部D1の貫通孔(図示せず)との間には僅かに隙間が設けられており、これにより、第二往復動部本体C11bは、所定の範囲で鉛直方向に沿った上下動が可能となされている。
【0046】
なお、第二往復動部本体C11bが各第一往復動部本体C11aに挟持されている部分には、各第一往復動部本体C11aと第二往復動部本体C11bとを接合する、3つの接合部jが設けられている。
各接合部jは、例えば、各第一往復動部本体C11aと第二往復動部本体C11bとを貫通するボルト等によって構成することができる。
【0047】
各連結部C12は、各第一往復動部本体C11aの間に懸架されて設けられる略円柱状体であり、軸支部B2と同一方向(左右方向)に延びている。
なお、各第一往復動部本体C11aの外側面には、各連結部C12の両端を覆うように、略四角板状体のカバー部材kが嵌め込まれている。
【0048】
振動付与部C2は、本実施形態においては、鉛直方向に沿って、電気的に上下動するピストンロッドC21を含む、複動型の所謂エアシリンダである。
詳述すれば、振動付与部C2は、ピストンロッドC21と、ピストンロッドC21を上下動させるシリンダ機構等(図示せず)が内蔵された筐体部C22と、筐体部C22の上方から延びる接続パイプC23と、を含む。
なお、振動付与部C2は、油圧シリンダや電動シリンダであっても良い。
【0049】
ピストンロッドC21は、基台部D1の上方に突出している第二往復動部本体C11bの上面における、後方端部に連結されている。
【0050】
筐体部C22は、略円柱状の段付き形状として構成され、その外周を覆って設けられる一対の長尺の固定金具mを介して、後述する立設部D2に固定されている。
【0051】
接続パイプC23は、その内部が筐体部C22の内部と連通している。
また、接続パイプC23の一端には、上記したシリンダ機構と、別途外部に設置されたエアポンプ(図示せず)と、を接続するエアホース(図示せず)が、カプラ等により接続されている。
これにより、エアポンプから供給される圧縮空気が、各エアホースを通りシリンダ機構に供給されることで、ピストンロッドC21の上下動が可能となされている。
【0052】
支持部Dは、燃料貯蔵ラックR上に着座する略平板状の基台部D1と、基台部D1における上面の後方端部から立設された立設部D2と、立設部D2における上面の左右端部から立設された一対の載置部D3と、立設部D2における上面の後方端部から延設されたパイプ支持部D4と、立設部D2における左右側面の上端部に連結された一対の吊上げブラケット保持部D5、各載置部D3に連結されたホース引掛け部D6と、を有している。
【0053】
基台部D1は、その底面に、挿通部本体B1や固定手段Fが連結される、前後方向に長い略長方形状の第一基台部D11と、その上面に立設部D2が立設される、左右方向に長い略長方形状の第二基台部D12と、により構成されている。
【0054】
立設部D2は、略四角筒状に構成され、その下部には、立設部D2を第二基台部D12上に安定的に固定するための補強リブ部eが設けられている。
【0055】
各載置部D3は、上部に後述する第一吊上げ部本体E11が挿し込まれるスリットが設けられた載置部本体D31と、各載置部本体D31から外方に突設された補助載置部D32と、により構成されている。
【0056】
各載置部本体D31は、それぞれが、略薄板状体として構成され、その面方向が前後方向と略平行となるように、立設部D2に設けられている。
また、各載置部本体D31は、その上部に、スリットに向かう傾斜部が、前後方向にそれぞれ形成されていることで、側面視で略Y字状を呈するように構成されている。
このように構成することで、作業者は、第一吊上げ部本体E11のスリットへの挿通作業を、スムーズに行うことができる。
【0057】
各補助載置部D32は、正面視で略L字状を呈する略薄板状体として構成され、第一吊上げ部本体E11がスリットに差し込まれた際の、第一吊上げ部本体E11の左右端部の荷重を支持する。
【0058】
パイプ支持部D4は、立設部D2の上面から後方に向かって延設された、略薄板状体の延設部D41と、延設部D42から立設され、側面視で略逆L字状を呈する、略薄板状体のパイプ支持部本体D42と、により構成されている。
【0059】
パイプ支持部本体D42は、図2(B)に示すように、接続パイプC23(及び後述する接続パイプP13)を下方から当接支持している。
【0060】
各吊上げブラケット保持部D5は、正面視で略逆L字状を呈する、略薄板状体として構成され、その前方側端部には、後述する主連結索E2が締結される吊上げブラケットwが設けられている。
【0061】
ここで、吊上げブラケットwは、各吊上げブラケット保持部D5の他、第一基台部D11の上面左右側方、第二往復動部本体C11bの上面前方にも設けられている。
また、各吊上げブラケットwは、主連結索E2及び副連結索E3が取付けられる連結孔が設けられた、略薄板状体として構成されている。
【0062】
ホース引掛け部D6は、上面視で前方に開口する略コ字状を呈する略角柱状体として構成されている。
また、ホース引掛け部D6には、エアホース及び後述する油圧ホースが、別途固縛材等で結束された後、引掛けられる。
【0063】
吊上げ部Eは、所定の吊上げ機(図示せず)が係止される吊上げ部本体E1と、吊上げ部本体E1と支持部Dとを連結する主連結索E2と、吊上げ部本体E1と往復動部本体C11とを連結する副連結索E3と、を有している。
【0064】
吊上げ部本体E1は、略薄板状体の第一吊上げ部本体E11と、第一吊上げ部本体E11の下方に位置する第二吊上げ部本体E12と、第一吊上げ部本体E11と第二吊上げ部本体E12とを連結する連結具E13と、により構成されている。
【0065】
第一吊上げ部本体E11には、吊上げ機が係止される係止孔hが設けられている。
【0066】
第二吊上げ部本体E12には、主連結索E2及び副連結索E3が取付けられる連結孔が設けられている。
また、第二吊上げ部本体E12は、連結具E13が取付けられ、前後方向に連結孔が設けられた主部E12aと、主部E12aの前方端面に設けられ、左右方向に連結孔が設けられた補助部E12bと、により構成されている。
【0067】
連結具E13は、第一吊上げ部本体E11と第二吊上げ部本体E12とを、鉛直方向を軸として相対回転可能に連結する、所謂ナスカンとして構成されている。
【0068】
主連結索E2は、本実施形態においては4つ設けられ、それぞれが、ワイヤーロープ状の主連結索本体E21と、主連結索本体E21の両端が締結された一対の連結リングE22と、により構成されている。
また、2つの主連結索E2は、それぞれの各連結リングE22が、各吊上げブラケット保持部D5に設けられた吊上げブラケットwの連結孔と、主部E12aの後方の連結孔と、に取付けられることで、吊上げ部本体E1と支持部Dとを連結している。
さらに、残りの2つの主連結索E2は、それぞれの各連結リングE22が、第一基台部D11に設けられた吊上げブラケットwの連結孔と、補助部E12bの各連結孔と、に取付けられることで、吊上げ部本体E1と支持部Dとを連結している。
【0069】
副連結索E3は、本実施形態においては1つ設けられ、ワイヤーロープ状の副連結索本体E31と、副連結索本体E31の両端が締結された一対の連結リングE32と、により構成されている。
また、副連結索E3は、各連結リングE32が、第二往復動部本体C11bに設けられた吊上げブラケットwの連結孔と、主部E12aの前方の連結孔と、に取付けられることで、吊上げ部本体E1と往復動部本体C11とを連結している。
【0070】
固定手段Fは、基台部D1の底面から鉛直下方に延びる、一対の側壁部F1と、各側壁部F1の間に介在する押圧手段Pと、を有する。
なお、押圧手段Pの、より具体的な構成については、図4を用いて後述する。
【0071】
各側壁部F1は、それぞれが、略薄板状体として構成された側壁部本体F11と、側壁部本体F11の下端部に連接されたテーパー部F12と、により構成されている。
【0072】
各側壁部本体F11は、その面方向が前後方向と略平行となるように、左右方向に所定の間隔を置いて設けられている。
【0073】
各テーパー部F12は、それぞれが内方に向かって傾斜していることで、一対のテーパー部F12全体として、下端に向かうにつれて鋭利となる、先細り形状を呈するように構成されている。
このように構成することで、作業者は、固定手段Fのラックセルrへの挿通作業を、スムーズに行うことができる。
【0074】
以下、図3を用いて、ハンマー部Aの構成、動作について詳述する。
なお、図3の各上図は、図2(B)の部分拡大図であり、各挿通部本体B1及び各第一往復動部本体C11aを、点線で描画することで透過させた状態で示し、カバー部材kを除外して示している。
また、図3の各上図では、主連結索E2や副連結索E3、及びこれらが連結される吊上げブラケットwを省略している。
また、図3の各下図は、各上図において、ハンマー部A及び連結部C12のみを示した部分拡大図である。
【0075】
図3に示すように、ハンマー部Aは、それぞれ、挿通部本体B1に連結されるハンマー部本体A1と、ハンマー部本体A1に設けられ、ラックセルrの内壁に当接可能な当接部A2と、当接部A2をラックセルrの内壁に向かって付勢する付勢部A3と、を有している。
なお、以下説明の便宜上、最上方のハンマー部Aの構成について説明するが、他のハンマー部Aも、後述する圧縮バネ部A4が設けられていないことを除いて、同一の構成である。
【0076】
ハンマー部本体A1は、軸支部B2により回動可能に支持されている。
また、ハンマー部本体A1には、軸支部B2が貫通している部分から後方に所定の距離を置いて、連結部C12が挿通される遊嵌孔A11が設けられている。
遊嵌孔A11は、側面視で略楕円形状に構成されることで、略円柱状に構成された連結部C12が遊嵌孔A11に対して、遊びを持った状態で挿通されている。
【0077】
当接部A2は、ハンマー部本体A1の下方から前方に向かって延設されている。
なお、ハンマー部Aは、ハンマー部本体A1及び当接部A2により、全体として略同一の厚みを有する略板状体として構成されている。
【0078】
付勢部A3は、ハンマー部本体A1の後方に設けられ、後方に向かって略くの字状に湾曲形成された板バネであり、当接部A2が当接する内壁と対向する内壁に当接することで、当接部A2を付勢する。
【0079】
圧縮バネ部A4は、最上方のハンマー部Aのみが有しており、ハンマー部本体A1の上方に、当接部A2と同様に前方に向かって突出するように設けられている。
また、圧縮バネ部A4は、当接部A2と同様に、ラックセルrの内壁に当接可能な構成されている。
【0080】
上記のように構成されたハンマー部Aは、制御機構Cにより、以下のように動作する。
即ち、図3(A)に示す状態から、ピストンロッドC21が下方に移動すると、ピストンロッドC21に連結された第二往復動部本体C11bが下方に移動し、第二往復動部本体C11bに連結されたた第一往復動部本体C11aが下方に移動する。
すると、第一往復動部本体C11aが、連結部C12を介して、ハンマー部本体A1を下方に向かって押圧する。
これにより、ハンマー部本体A1が、軸支部B2を軸として、右側面視で時計回りに回動する(内壁に向かう推進力が付与される)ことで、図3(B)に示す状態となる。
【0081】
また、図3(B)に示す状態から、振動付与部C2のピストンロッドC21が上方に移動すると、第一往復動部本体C11aが、連結部C12を介して、ハンマー部本体A1を上方に向かって引上げる。
これにより、ハンマー部本体A1が、軸支部B2を軸として、右側面視で反時計回りに回動し、図3(A)に示す状態となる。
なお、以下、図3(A)に示すハンマー部Aの状態、即ち、当接部A2が、ハンマー部本体A1から、略水平方向に延設されている状態を、初期状態と称する。
【0082】
このように、振動付与部C2(ピストンロッドC21)により、往復動部本体C11に、上下方向の往復振動動作が付与され、この往復振動動作が、軸支部B2及び連結部C12により、ハンマー部本体A1の回転振動動作に変換される。
【0083】
なお、図3(及び図11)においては、説明の便宜上、往復振動動作の移動距離、及びこれに伴う回転振動動作の回転角は、誇張して示しているが、実際には、より微小な移動距離及び回転角となる。
【0084】
具体的には、例えば、ピストンロッドC21は、1mm程度の振幅、9Hz~10Hz程度の振動数でもって高速で上下動することで、ハンマー部本体A1は、5°程度の微小角でもって高速で回転振動動作を行う。
また、作業者は、ピストンロッドC21の振動数や振幅を、後述する制御盤を介して、任意の値に変更可能である。
【0085】
以下、図4を用いて、押圧手段Pの構成、動作について詳述する。
なお、図4は、図2(B)の部分拡大図であり、各側壁部F1を、点線で描画することで透過させた状態で示している。
【0086】
押圧手段Pは、シリンダP1と、レバー部P2と、シリンダP1とレバー部P2とを連結する変換機構P3と、を有している。
【0087】
シリンダP1は、本実施形態においては、鉛直方向に沿って、電気的に上下動するピストンロッドP11を含む、複動型の所謂油圧シリンダである。
詳述すれば、シリンダP1は、ピストンロッドP11と、ピストンロッドP11を格納するシリンダチューブt1、前後カバーt2等で構成されたシリンダ機構P12と、接続パイプP13と、を含む。
なお、シリンダP1は、エアシリンダや電動シリンダであっても良い。
【0088】
ピストンロッドP11の先端には、後述するガイドレールP31が設けられている。
【0089】
シリンダ機構P12は、基台部D1の底面に、鉛直下方に沿って延びるように連結されている。
【0090】
接続パイプP13は、前後カバーt2及び上記した立設部D2の内部に、それぞれ設けられている。
また、立設部D2の内部に設けられた接続パイプP13の一端には、シリンダ機構P12、別途外部に設置された油圧ポンプ(図示せず)と、を接続する油圧ホース(図示せず)が、カプラを介して接続されている。
【0091】
さらに、前後カバーt2に設けられた接続パイプP13及び立設部D2の内部に設けられた接続パイプP13も、カプラを介して、油圧ホースにより接続されている。
なお、この油圧ホースは、例えば、基台部D1や立設部D2に設けられた貫通孔(図示せず)に挿通されることにより、各接続パイプP13の端部まで引き出される。
これにより、油圧ポンプから供給される作動油が、各油圧ホースを通りシリンダ機構P12に供給されることで、ピストンロッドP11の上下動が可能となされている。
【0092】
レバー部P2は、側面視で略くの字状の板状体であるレバー部本体P21と、各側壁部F1の間に懸架され、レバー部本体P21を回動可能に支持する回動軸P22と、により構成されている。
【0093】
レバー部本体P21は、左右方向に沿って延びる回動軸P22により軸支されていることで、ハンマー部Aと同一方向に回動可能に構成されている。
【0094】
変換機構P3は、ピストンロッドP11の先端に設けられ、ピストンロッドP11と共に往復動作するガイドレールP31と、レバー部本体P21の上部に設けられ、ガイドレールP31に沿って、前後方向に摺動可能に嵌合されたカムフォロワP32と、により構成されている。
【0095】
上記のように構成された押圧手段Pは、油圧ポンプにより、以下のように動作する。
即ち、図4(A)に示す状態から、ピストンロッドP11と共にガイドレールP31が下方に移動すると、カムフォロワP32が前方に摺動しつつ、レバー部本体P21が、回動軸P22を軸として、右側面視で反時計回りに回動する。
これにより、レバー部本体P21の下部が、側面視で各側壁部F1から突出し、図4(B)に示す状態となる。
【0096】
また、図4(B)に示す状態から、ピストンロッドP11と共にガイドレールP31が上方に移動すると、カムフォロワP32が後方に摺動しつつ、レバー部本体P21が、回動軸P22を軸として、右側面視で時計回りに回動する。
これにより、レバー部本体P21の下部が、側面視で各側壁部F1の間に格納された状態となり、図4(A)に示す状態となる。
【0097】
このように、シリンダP1(ピストンロッドP11)の往復摺動動作が、変換機構P3により、レバー部本体P21の回動動作に変換される。
【0098】
以下、図5図11を用いて、粉砕装置Xの使用方法について説明する。
なお、図5及び図6に示す拡大図、及び図9以降では、図3と同様に、各挿通部本体B1及び各第一往復動部本体C11aを透過させた状態で示し、カバー部材kを除外して示している。
また、図5及び図6に示す拡大図では、主連結索E2及びこれに連結される吊上げブラケットwや、固定手段Fを省略している。
また、図8以降に示す右側面図では、燃料貯蔵ラックR及びチャンネルボックスfbを、図7に示すPP´線断面図で示している。
【0099】
ここで、作業者は、上記したエアポンプによる振動付与部C2の動作や、油圧ポンプによるシリンダP1の動作を、外部に設置された制御盤(図示せず)や、電磁弁(図示せず)等を介して、遠隔制御可能である。
また、作業者は、カメラ部B3を通した映像も、例えば、制御盤近傍に設けられた表示モニター(図示せず)を介して視認可能である。
【0100】
まず、作業者は、図5に示す状態から、クレーン車等の吊上げ機を、第一吊上げ部本体E11の係止孔hに係止させ、粉砕装置Xを吊上げる。
なお、粉砕装置Xは、不使用時においては、図5に示すように、複数の柱や梁から構成された専用の架構Zに、立設状態で支持されており、第一吊上げ部本体E11は、各スリットに挿し込まれることで、各載置部D3に載置されている。
【0101】
ここで、粉砕装置Xは、吊上げ機により吊上げられることで、図5に示す状態から、図6に示す状態となる。
【0102】
詳述すれば、粉砕装置Xが架構Zに支持されている状態において、各ハンマー部Aは、往復動部本体C11が自重により下方に移動していることで、初期状態から、やや時計回りに回動した状態となされている。
【0103】
そして、粉砕装置Xが吊上げ機により吊上げられると、副連結索E3に所定の張力が発生することで、往復動部本体C11が、この張力により上方に移動する。
これにより、各ハンマー部本体A1は、各連結部C12を介して、各軸支部B2を軸に、各当接部A2がラックセルrの衝突対象となる内壁から離間する方向(本実施形態においては反時計回り)に回動し、初期状態となされる。
【0104】
なお、本実施形態においては、各ハンマー部Aが初期状態となされた際の、各ハンマー部A(各当接部A2)の前方端面から各付勢部A3の後端部(頂部)までの距離が、ラックセルrの前後方向に沿った幅と、略同一となるように構成されている。
このように構成することで、作業者は、ラックセルr1への挿通部B等の挿通作業を、スムーズに行うことができると共に、各当接部A2を、速やかにラックセルrの内壁に当接した状態とすることができる。
【0105】
次に、作業者は、図7に示すように、吊上げ機により、粉砕装置Xを燃料貯蔵ラックRまで運搬する。
【0106】
なお、以下、説明の便宜上、ハンマー部A、挿通部本体B1及び往復動部C1が挿通されるラックセルrをラックセルr1、固定手段Fが挿通されるラックセルrをラックセルr2と称する。ラックセルr1とラックセルr2は、前後方向に隣接するラックセルrである。
また、ラックセルr1の前方に隣接するラックセルrには、図7では図示を省略しているが、別途専用の引上げ装置(図示せず)を用いて引上げられる、チャンネルボックスfb(使用済み燃料、図8等参照)が挿入されている。
【0107】
次に、作業者は、図8(A)に示すように、吊上げ機により、粉砕装置Xを燃料貯蔵ラックRに配置する。
詳述すれば、作業者は、ハンマー部A、挿通部本体B1及び往復動部C1(第一往復動部本体C11a、連結部C12)をラックセルr1に挿通させ、固定手段Fをラックセルr2に挿通させ、基台部D1を燃料貯蔵ラックRに着座させる。
【0108】
次に、作業者は、図8(B)に示すように、吊上げ機により、第一吊上げ部本体E11を各スリットに挿し込むことで、各載置部D3に載置する。
このとき、各当接部A2及び各付勢部A3それぞれが、ラックセルr1の前後方向に対向する各内壁に当接することで、各ハンマー部Aは、初期状態となされている。
【0109】
次に、作業者は、図9(A)に示すように、油圧ポンプを作動させ、ピストンロッドP11を下方に移動させることで、変換機構P3により、レバー部本体P21を各側壁部F1から突出させる。
これにより、レバー部本体P21がラックセルr2の内壁を押圧し、これに伴う反力が粉砕装置X全体に伝わることで、各当接部A2が、ラックセルr1の内壁に押圧される。
【0110】
また、作業者は、図9(B)に示すように、カメラ部B3により撮影されている映像を介して、最上方のハンマー部Aが有する圧縮バネ部A4が収縮していることを確認する。
即ち、圧縮バネ部A4が収縮していると、圧縮バネ部A4がラックセルr1の内壁に当接していることを示し、このことから、作業者は、当接部A2が確実にラックセルr1の内壁に当接していることを確認することができる。
このように、最上方のハンマー部Aにおいて、当接部A2よりも上方に圧縮バネ部A4が設けられていることで、例えば、混濁した水中で、当接部A2の視認が困難な場合であっても、カメラ部B3を介した、当接部A2の当接状態の確認作業が容易となる。
【0111】
ここで、図10に示すように、使用済み燃料を覆っているチャンネルボックスfbは、その上端の一つの角に位置するチャンネルファスナcfによって燃料集合体に締結されている。
チャンネルファスナcfは、チャンネルボックスfbと燃料集合体とをそのスクリューネジで結合する他に、原子炉内においては燃料集合体の相互間隔を保持する目的の2辺一対の板バネを有する機器である。
【0112】
また、図10に示すように、通常、複数のラックセルrを隔てる隔壁pの上端に設けられたラックガイド部Lgは、チャンネルボックスfb(使用済み燃料)の挿通作業の利便性等を考慮して、その上端及び下端に向かうに伴って狭窄するような傾斜が形成されている。
さらに、燃料貯蔵ラックR(隔壁p)の上部にあるラックガイド部Lgが、ラックセルrの内径より狭くなっており、通常の燃料取り出し時にはチャンネルファスナcfの板バネがラックガイド部Lgに接触して押されて内側にたわみながら燃料が取り出される。
【0113】
上記のようなチャンネルファスナcf及び隔壁pの構成から、例えば、図10に示すように、チャンネルボックスfbとチャンネルファスナcfとの間に障害物obが挟まっている場合、チャンネルボックスfb(使用済み燃料)を取り出そうとすると、ラックガイド部Lgにチャンネルファスナcfの板バネが接触しても、障害物obの存在により、その板バネが押し下げられない。
これにより、チャンネルボックスfb(使用済み燃料)が、ラックガイド部Lgを通過できないため、チャンネルボックスfb(使用済み燃料)を取り出す作業の妨げとなる。
【0114】
このため、作業者は、粉砕装置Xを図9に示す状態とした後、当接部A2による、ラックセルr1の内壁を打撃する打撃動作を実行する。
【0115】
詳述すれば、作業者は、エアポンプを作動させ、振動付与部C2(ピストンロッドC21)を往復振動させることで、ハンマー部Aを回転振動させる。
即ち、ピストンロッドC21が上方に移動することで、ハンマー部Aは、付勢部A3の付勢力に抗して、反時計回りに回動する(図11(A))
そして、ピストンロッドC21が下方に移動することで、ハンマー部Aは、付勢部A3の付勢力を受けつつ、内壁に向かう推進力が付与されることで時計回りに回動し、ラックセルr1の前方側内壁を打撃する(図11(B))
【0116】
このとき、ピストンロッドC21は、図3を用いて説明した程度の振幅及び振動数でもって微小振動を繰り返すことで、ハンマー部本体A1は、上記した時計回り及び反時計回りの微小回転を繰り返す。
これにより、当接部A2は、ラックセルr1の前方側内壁を繰り返し打撃し、前方側内壁を介して、当接部A2の打撃力が障害物obに伝わることで、障害物obが粉砕される。
【0117】
また、上記では、説明の便宜上、最上方のハンマー部Aの打撃動作のみ詳述したが、他の各ハンマー部Aも、最上方のハンマー部Aと同時に、上記と同様の打撃動作を実行することとなる。
これにより、チャンネルボックスfbと隔壁pの間に挟まった他の障害物obについても、他の各当接部A2の打撃力により粉砕される。
なお、図11(B)では、当接部A2が、ハンマー部本体A1から略水平方向に延設されている状態で、内壁に衝突しているが、ある程度角度を付けた状態(即ち、延設方向が、やや上方或いは下方となされている状態)で、内壁に衝突するように構成しても良い。
【0118】
以上の各ハンマー部Aの打撃動作により、チャンネルボックスfbと隔壁p(或いはチャンネルボックスfbとチャンネルファスナcf)の間に挟まった複数の障害物obが粉砕され、作業者は、使用済み燃料をスムーズに取り出すことができる。
【0119】
なお、チャンネルボックスfbと他の隔壁pとの間にも障害物obが入り込んでいる場合、作業者は、油圧ポンプにより、押圧手段Pの押圧状態を解除した後、吊上げ機により粉砕作業1を吊上げる。
そして、作業者は、他の隔壁pにより形成される他のラックセルrに、挿通部B等を挿通させ、上記と同様の打撃動作を実行する。
【0120】
本実施形態によれば、作業者は、制御機構Cによりハンマー部Aによる打撃動作を必要数実行することで、障害物obを粉砕することができ、使用済み燃料の取り出し作業を、スムーズに行うことが可能となる。
【0121】
また、制御機構Cが、軸支部B2周りにハンマー部本体A1を回動させ、当接部A2をラックセルr1の内壁に衝突させることで、作業者は、ハンマー部本体A1の遠心力でもって、より効率的に、当接部A2の衝突に伴う打撃力を付与することが可能となる。
【0122】
また、振動付与部C2及び往復動部C1の動作により、作業者は、当接部A2による打撃動作を、容易に、連続的に実行することができ、障害物obの粉砕作業の作業性が向上する。
【0123】
また、略鉛直方向に沿って複数(4つ)設けられたハンマー部Aにより、作業者は、チャンネルボックスfbとラックセルrとの間に入り込んでいる複数の障害物obに対して、一挙に打撃力を付与することができ、障害物obの粉砕作業の作業性がさらに向上する。
【0124】
また、吊上げ部Eにより、作業者は、粉砕装置Xの、燃料貯蔵ラックRへの運搬作業、撤去作業を容易に行うことが可能となる。
【0125】
また、粉砕装置Xを吊上げた状態で所定の張力が発生する副連結索E3により、粉砕装置Xを吊上げた状態で、ハンマー部本体A1を時計回りに回動させることができ、作業者は、ラックセルr1への挿通部B等の挿通作業を、スムーズに行うことが可能となる。
【0126】
また、載置部D3により、作業者は、粉砕装置Xを燃料貯蔵ラックRへ着座させた際や不使用時等に、吊上げ部本体E1を載置部D3に載置しておくことで、粉砕装置Xの収まりを良くし、粉砕装置Xの周辺で行う他の作業の作業性を向上させることが可能となる。
【0127】
また、振動付与部C2がエアシリンダであることで、作業者は、振動付与部C2の振幅や振動数を予め設定しておくことができ、これに伴い、ハンマー部本体A1の回転角や当接部A2による打撃力を調整することが可能となる。
【0128】
また、付勢部A3により、作業者は、当接部A2が内壁に衝突した際に受ける反力を吸収させつつ、常時安定した打撃動作を実行することが可能となる。
【0129】
また、押圧手段Pにより、作業者は、当接部A2による打撃力をより確実にガレキに付与することができると共に、繰り返しの打撃動作に伴う粉砕装置X全体の位置のブレを抑制することが可能となる。
【0130】
また、カメラ部B3により、作業者は、当接部A2が、対象の内壁に適切に当接している状態か、適切に打撃動作を実行できる状態か、を目視で確認することが可能となる。
【0131】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0132】
例えば、本実施形態において、ハンマー部Aの数は4つであったが、3つ以下、或いは5つ以上としても良く、これに伴い、挿通部本体B1及び第一往復動部本体C11aの長さ、軸支部B2及び連結部C12の数も変更される。
【符号の説明】
【0133】
X 粉砕装置
A ハンマー部
B 挿通部
C 制御機構
D 支持部
E 吊上げ部
F 固定手段
R 燃料貯蔵ラック
r ラックセル
fb チャンネルボックス(使用済み燃料)
cf チャンネルファスナ
ob 障害物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11