(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136524
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】圧縮気体噴射装置
(51)【国際特許分類】
G21F 9/28 20060101AFI20230922BHJP
G21C 19/07 20060101ALI20230922BHJP
G21C 19/32 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G21F9/28 501A
G21C19/07
G21C19/32
G21F9/28 522B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042249
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591130319
【氏名又は名称】東京パワーテクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518310905
【氏名又は名称】株式会社WINビジネスデベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】府川 慶太
(72)【発明者】
【氏名】土井 秀信
(72)【発明者】
【氏名】渡部 拓史
(72)【発明者】
【氏名】長崎 正裕
(72)【発明者】
【氏名】小松 俊克
(57)【要約】
【課題】燃料貯蔵ラックから使用済み燃料を取り出す際の障害物を安全に除去可能な装置を提供する。
【解決手段】複数のラックセルから構成される燃料貯蔵ラックから使用済み燃料を取り出す際の障害となる物体を除去するための圧縮気体噴射装置Xであって、装置本体1と、固定機構2と、制御部3と、を備え、装置本体1は、移動機構11と、噴射機構12を有し、移動機構11は、噴射機構12を3次元的に移動可能に構成され、噴射機構12は、ノズル本体12a1を含み、ノズル本体12a1は、その先端部に、最先端部に近づくにつれて漸次拡径するコアンダノズル部cdと、周囲の流体を吸込むための吸込穴itと、が設けられ、固定機構2は、装置本体1を燃料貯蔵ラックに固定可能に構成され、制御部3は、固定機構2と、移動機構11と、噴射機構12と、を遠隔操作可能に構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラックセルから構成される燃料貯蔵ラックから使用済み燃料を取り出す際の障害となる物体を除去するための圧縮気体噴射装置であって、
装置本体と、固定機構と、制御部と、を備え、
前記装置本体は、移動機構と、噴射機構を有し、
前記移動機構は、前記噴射機構を3次元的に移動可能に構成され、
前記噴射機構は、ノズル本体を含み、
前記固定機構は、前記装置本体を前記燃料貯蔵ラックに固定可能に構成され、
前記制御部は、前記固定機構と、前記移動機構と、前記噴射機構と、を遠隔操作可能に構成されている、圧縮気体噴射装置。
【請求項2】
前記ノズル本体は、その先端部に、最先端部に近づくにつれて漸次拡径するコアンダノズル部と、周囲の流体を吸込むための吸込穴と、が設けられている、請求項1に記載の圧縮気体噴射装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記噴射機構を各軸上で直線的に移動させるための、X軸移動装置と、Y軸移動装置と、Z軸移動装置と、を含む、請求項1又は2に記載の圧縮気体噴射装置。
【請求項4】
前記X軸移動装置と、前記Y軸移動装置と、前記Z軸移動装置と、は前記噴射機構の各軸上の移動量を計測可能な計装部をそれぞれ含み、
前記計装部は、これに対して圧縮気体を注入可能に構成されている、請求項3に記載の圧縮気体噴射装置。
【請求項5】
前記ノズル本体は、その噴射方向が傾斜している、請求項1~4の何れかに記載の圧縮気体噴射装置。
【請求項6】
前記噴射機構は、その噴射方向が相異なる方向に向けられた複数の前記ノズル本体を含む、請求項1~5の何れかに記載の圧縮気体噴射装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記移動機構を寸動操作可能に構成されている、請求項1~6の何れかに記載の圧縮気体噴射装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記噴射機構が前記装置本体の重心位置に来るように、前記移動機構を自動制御可能に構成されている、請求項1~7の何れかに記載の圧縮気体噴射装置。
【請求項9】
前記固定機構は、複数の主固定装置を有し、
前記複数の主固定装置は、前記ラックセル内に挿入可能な略柱状体である、請求項1~8の何れかに記載の圧縮気体噴射装置。
【請求項10】
前記複数の主固定装置は、該主固定装置を前記ラックセル内に固定するための補助固定装置をそれぞれ含む、請求項9に記載の圧縮気体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み燃料取り出し作業時の障害物を除去するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月に発生した東日本大震災の影響により、福島第一原子力発電所3号機では水素爆発が起こり、爆発によって破損した原子炉建屋の破片は、使用済み燃料プール内の燃料貯蔵ラック上にガレキとなって散乱した。
【0003】
ガレキは、燃料集合体を覆っているチャンネルボックスと、チャンネルボックスと燃料集合体を締結しているチャンネルファスナの隙間、及びチャンネルボックスとラックセルの隙間に入り込み、使用済み燃料を取り出す作業の妨げになっていた。
【0004】
しかしながら、使用済み燃料プール内の水深約7m地点という特殊な場所に位置する燃料貯蔵ラック上で、チャンネルボックスとチャンネルファスナの隙間、及びチャンネルボックスとラックセルの隙間に入り込んだガレキを、安全に除去するのに好適な装置はかつて存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、燃料貯蔵ラックから使用済み燃料を取り出す際の障害物を安全に除去可能な装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、複数のラックセルから構成される燃料貯蔵ラックから使用済み燃料を取り出す際の障害となる物体を除去するための圧縮気体噴射装置であって、
装置本体と、固定機構と、制御部と、を備え、前記装置本体は、移動機構と、噴射機構を有し、
前記移動機構は、前記噴射機構を3次元的に移動可能に構成され、
前記噴射機構は、ノズル本体を含み、
前記ノズル本体は、その先端部に、最先端部に近づくにつれて漸次拡径するコアンダノズル部と、周囲の流体を吸込むための吸込穴と、が設けられ、
前記固定機構は、前記装置本体を前記燃料貯蔵ラックに固定可能に構成され、
前記制御部は、前記固定機構と、前記移動機構と、前記噴射機構と、を遠隔操作可能に構成されている。
【0008】
本発明によれば、燃料貯蔵ラック上に装置を固定し、遠隔から噴射機構を移動させ、ノズル本体から噴射される噴流の力で障害物を除去することができる。
また、コアンダノズル及び吸込穴により、周囲の水を吸い込んで噴流に巻き込むことができ、気体のみの噴流と比較して噴流の威力及び有効射程を延ばすことが可能となる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記移動機構は、前記噴射機構を各軸上で直線的に移動させるための、X軸移動装置と、Y軸移動装置と、Z軸移動装置と、を含む。
【0010】
このような構成とすることで、格子状に配列した複数のラックセルから構成される燃料貯蔵ラック上で、障害物の除去作業を効率よく行うことができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記X軸移動装置と、前記Y軸移動装置と、前記Z軸移動装置と、は前記噴射機構の各軸上の移動量を計測可能な計装部をそれぞれ含む。
【0012】
このような構成とすることで、噴射機構の空間位置を空間座標に表し、数値的に把握することができるため、作業の正確性や効率が向上する。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記計装部は、これに対して圧縮気体を注入可能に構成されている。
【0014】
このような構成とすることで、圧縮気体の注入によって計装部の内圧を外部の水圧よりも高く保つことができ、計装部内への浸水、ひいては計装機器類の水没故障を防止することが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記ノズル本体は、その噴射方向が傾斜している。
【0016】
このような構成とすることで、直上からは噴流を当てにくい障害物にも噴流を当てることができる。
例えば、燃料集合体を覆っているチャンネルボックス上部に設けられたチャンネルファスナの隙間に障害物が挟まっている場合に、障害物の直上がチャンネルファスナで覆われていても、側方から障害物に直接噴流を当てることができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記噴射機構は、その噴射方向が相異なる方向に向けられた複数のノズル本体を含む。
【0018】
このような構成とすることで、チャンネルボックス上部の角を挟むように設けられたチャンネルファスナの二辺一対の板バネに対し、その両方の隙間に障害物が挟まっていても、複数のノズルから同時に噴流を噴射してこれを一挙に除去し、作業を迅速に進めることができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記噴射機構は、前記ノズル本体の噴射方向を撮影可能なカメラ部を含む。
【0020】
このような構成とすることで、使用者は、障害物やチャンネルボックスの状態を視覚的に確認しつつ、安全に障害物の除去作業を行うことができる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記制御部は、前記移動機構を寸動操作可能に構成されている。
【0022】
このような構成とすることで、噴射方向の微調整を容易に行うことができるため、作業の正確性、安全性が向上する。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記制御部は、前記噴射機構が前記装置本体の重心位置に来るように、前記移動機構を自動制御可能に構成されている。
【0024】
このような構成とすることで、本装置をクレーン設置する際の重心調整が容易に行われるため、クレーン作業の安全性や効率が向上する。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記固定機構は、複数の主固定装置を有し、前記複数の主固定装置は、前記ラックセル内に挿入可能な略柱状体である。
【0026】
このような構成とすることで、ラックセルに主固定装置を挿入することで、本発明に係る装置を燃料貯蔵ラックに簡単に設置することができる。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記複数の主固定装置は、該主固定装置を前記ラックセル内に固定するための補助固定装置をそれぞれ含む。
【0028】
このような構成とすることで、ラックセルに挿入された主固定装置がより強く固定されるため、本発明に係る装置は、高圧噴流噴射時の反力にも十分耐えることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、燃料貯蔵ラックから使用済み燃料を取り出す際の障害物を安全に除去可能な装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係る圧縮気体噴射装置の概略斜視図及び側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る噴射機構の概略斜視図、側面図及び平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る噴流噴射作業の例である。
【
図4】本発明の実施形態に係るノズル本体の概略図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る固定機構の概略図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る制御部に表示される操作画面の例である。
【
図7】本発明の実施形態に係る圧縮気体噴射装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、
図1~
図7を用いて本発明の実施形態に係る圧縮気体噴射装置について説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、符号Xは本発明の実施形態に係る圧縮気体噴射装置を指す。
【0032】
なお、
図1~
図7において、圧縮気体や作動油等を各部へ供給するための管や、映像その他の信号伝送、電源供給等のための配線等は描画を省略しているが、これらの管及び配線の適切な接続関係は当業者であれば容易に理解される。
【0033】
図1(A)に示すように、圧縮気体噴射装置Xは、装置本体1と、固定機構2と、制御部3と、を備える。
【0034】
装置本体1は、移動機構11と、噴射機構12と、を有し、移動機構11は、X軸移動装置11aと、Y軸移動装置11bと、Z軸移動装置11cと、を含む。噴射機構12の詳細は後述する。
【0035】
X軸移動装置11aは、油圧モータomと、計装部isと、ボールねじbsと、スライドレールsrを含む。
【0036】
即ち、X軸移動装置11aは、油圧モータomの回転運動を、ボールねじbsによって直線運動に変換することで、Y軸移動装置11bと、Z軸移動装置11cと、噴射機構12と、をX軸方向に直線移動させることができる。また、スライドレールsrは、この直線移動を補助する。
【0037】
また、計装部isは、油圧モータomの回転量等からX軸移動量を計測することができるため、これらに基づいて噴射機構12のX座標を計測することが可能である。
【0038】
また、計装部isは、接続口cnを含み、この部分から圧縮気体を計装部isの内部に注入することが可能である。これにより、計装部isの内圧を外圧よりも高い状態に維持し、特に水中においては計装部is内への浸水を防ぐことができる。
【0039】
なお、Y軸移動装置11bと、Z軸移動装置11cについても、X軸移動装置11aと同様の構成により実現されている。
【0040】
Y軸移動装置11bは、Z軸移動装置11cと、噴射機構12と、をY軸方向に直線移動させることができ、計装部isによって噴射機構12のY座標を計測することが可能である。
【0041】
Z軸移動装置11cは、噴射機構12をZ軸方向に直線移動させることができ、計装部isによって噴射機構12のZ座標を計測することが可能である。
【0042】
よって、X軸移動装置11aと、Y軸移動装置11bと、Z軸移動装置11cと、が協働することで、噴射機構12を3次元的に移動可能であると共に、各装置の計装部isが計測した各軸上の移動量から、噴射機構12の空間座標を計測することができる。
【0043】
固定機構2は、略柱状体の第一主固定装置21と、第二主固定装置22と、を有し、これらは、土台baを介して装置本体1に取り付けられている。
【0044】
制御部3は、装置本体1及び固定機構2への電源供給を制御するためのメインブレーカと、その他の操作を制御するためのタッチパネル(図示せず)を有し、装置本体1及び固定機構2とは離れた場所に設置される。
【0045】
図1(B)は、A-A′方向から本装置Xを見た、本装置Xの側面図(一部省略)である。第一主固定装置21は、複数の柱状体21aと、補助固定装置21bと、を含み、第二主固定装置22についても、同様に複数の柱状体22aと、補助固定装置22bと、を含む。
【0046】
図2(A)に示すように、噴射機構12は、複数のノズル本体12a1、12a2と、複数のカメラ部12b1、12b2と、をそれぞれ含む。
【0047】
カメラ部12b1は、ノズル本体12a1の噴射方向を撮影可能なカメラ本体cmと、カメラ固定部brと、を含み、カメラ本体cmには、映像信号の伝送線cbが接続されている。なお、カメラ本体cmと、伝送線cbには、一般的な水中カメラ及びその付属品を好適に用いることができる。
また、カメラ部12b2は、ノズル本体12a2の噴射方向を撮影可能であって、カメラ部12b1と同様に構成されている。
【0048】
図2(B)は、ノズル本体12a1側から見た、噴射機構12の側面図であり、これに示すように、ノズル本体12a1の噴射方向は所定の傾斜がつけられている。なお、ノズル本体12a2も同様である。
【0049】
図2(C)は、カメラ部12b1、12b2を省略した噴射機構12の平面図であり、これに示すように、ノズル本体12a1、12a2の各噴射方向は略直交する相異なる方向に向けられている。
【0050】
図3(A)は障害物の除去作業の様子を上から見た図であり、使用済み燃料を覆っているチャンネルボックスfbは、その上端の一つの角に位置するチャンネルファスナcfによって燃料集合体に締結されている。
チャンネルファスナcfは、チャンネルボックスfbと燃料集合体とをそのスクリューネジで結合する他に、原子炉内においては燃料集合体の相互間隔を保持する目的の二辺一対の板バネを有する機器である。
【0051】
図3(B)は、作業の様子を横から見た図である。
燃料ラックの上部にあるラックガイド部Lgは、ラックセル内径より狭くなっており、通常の燃料取り出し時にはチャンネルファスナcfの板バネがラックガイド部Lgに接触して押されて内側にたわみながら燃料が取り出される。
しかし、
図3(B)に示すように、チャンネルファスナcfの板バネ内側に障害物obが入り込むと、燃料引き上げ時にラックガイド部Lgがファスナの板バネに接触しても障害物obのせいで板バネが押し下げられずラックガイド部Lgを通過できない。
【0052】
即ち、チャンネルファスナcfとチャンネルボックスfbの隙間に障害物obが入り込むと、これらがラックガイド部Lgと干渉し、チャンネルボックスfb(使用済み燃料)を取り出すことができない。
【0053】
つまり、本装置Xは、チャンネルファスナcfの板バネ内側に入り込んだ障害物obを、圧縮気体の噴流によって除去することで、チャンネルファスナcfとラックガイド部Lgとの干渉を解除し、チャンネルボックスfb(使用済み燃料)を取り出せるようにする。
【0054】
なお、強度上、圧縮気体の圧力が2MPaを超えるとノズル破損等の恐れがあるため、圧縮気体の圧力が2MPa以下で本装置Xが使用されることが好ましく、本装置Xの設定上限圧力は、実際に2MPaとなっている。
【0055】
図2(B)で示したように、ノズル本体12a1、12a2の噴射方向には所定の傾斜がつけられているので、障害物obの直上がチャンネルファスナcfで覆われていても、側方から障害物obに噴流を当てることができる。
【0056】
図2(C)で示したように、ノズル本体12a1、12a2の各噴射方向は略直交する相異なる方向に向けられているため、2個一対に設けられたチャンネルファスナcfの両方に障害物obが挟まっている場合でも、各障害物obに一挙に噴流を当てて除去することができる。
【0057】
即ち、噴射機構12の構成は、
図3(B)に示すような状況に好適である。
【0058】
図4はノズル本体12a1の先端部について拡大した図であり、点線は内部構造を示す。ノズル本体12a1の先端部には、最先端部に近づくにつれて漸次拡径するコアンダノズル部cdと、周囲の流体を吸込むための吸込穴itが設けられている。
【0059】
コアンダノズル部cdは、ノズル本体12a1の先端部に、略円錐台形の空間を構成する。
【0060】
吸込穴itは、コアンダノズル部cdとノズル外部の空間を連通するように、ノズルの最先端部に8か所設けられている。
【0061】
コアンダノズル部cdは、ノズル本体12a1の内部を高速の気体噴流gjが通過する際に、外部との差圧を生じるため、この差圧によって吸込穴itから外部の流体が引き込まれる。即ち、使用済み燃料プール内においては、水が引き込まれる。
【0062】
そうすると、気体噴流gjは、ノズルの円周方向8か所からノズル周囲の水を巻き込んだ気液混合噴流gw(網掛け領域)となって流下するため、気体のみの噴流と比較して、噴流の威力及び射程距離が向上する。
【0063】
なお、ノズル本体12a2の先端部についても、ノズル本体12a1と同様に構成されている。
【0064】
図5及び
図1(A)に示すように、第一主固定装置21は、複数の柱状体21aが、補助固定装置21bを囲むようにして、全体が略柱状かつ外寸がラックセルの内径よりわずかに小さくなるように構成されている。
よって、
図5に示すように、第一主固定装置21をラックセルfcに挿入するだけで、土台baひいては装置本体1(図示せず)を、燃料貯蔵ラックfL上におおよそ固定することができる。
【0065】
補助固定装置21bは、油圧シリンダosと、変換機構coと、突っ張り部tmを含む。
【0066】
変換機構coによって力の向きが変換されるため、
図5(A)に示すように、油圧シリンダosが下がった場合には、突っ張り部tmが引っ込むように力が働く。
また、
図5(B)に示すように、油圧シリンダosが上がった場合には、突っ張り部tmが出っ張るように力が働き、突っ張り部tmがラックガイド部Lgに接触することで、固定力を得ることができる。
なお、使用者は、油圧シリンダosの上下を、制御部3から制御し、補助固定装置21bの固定状態、非固定状態を制御部3から切り替えることができる。
【0067】
なお、第二主固定装置22についても、第一主固定装置21と同様に構成されており、固定機構2が、複数の主固定装置21、22を有することで、本装置Xをより強く固定することができる。
【0068】
図6は、制御部3のタッチパネル上で表示される操作画面の例である。
図6(A)に示すように、制御部3は、噴射機構12の現在座標を確認しながら、高速又は低速で噴射機構12を寸動操作可能である。
【0069】
よって、使用者は、任意の軸及び速度を選択し、「正転」又は「逆転」の何れかを押下している間、噴射機構12が選択した軸上で微動するように移動機構11を寸動操作することができるので、噴射位置の微調整を容易に行うことができる。
【0070】
また、
図6(B)に示すように、制御部3は、予め設定された重心座標に基づいて、噴射機構12が装置本体1の重心位置に来るように、移動機構11を自動制御可能に構成されている。
【0071】
よって、使用者は、「移動開始」を押下するだけで、噴射機構12が装置本体1の重心位置に来るように移動させることができるため、本装置をクレーン吊上げする際の安全性や作業効率が向上する。
【0072】
図7に示すように、本装置Xは、クレーン吊上げにより、燃料貯蔵ラックfLに設置される。そのため、本装置Xは、略箱状のフレーム部frを更に備え、フレーム部frは、吊上げフックshと、フック受け台hrと、を有する。
これにより、クレーン吊上げ時の玉掛け作業が容易になるため、作業効率が向上する。
【0073】
本実施形態によれば、ノズル本体12a1及び12a2の先端部に、それぞれコアンダノズル部cdと、吸込穴itと、が設けられているため、圧縮気体の噴流を、威力及び射程距離を向上させた気液混合噴流として噴射することができる。
【0074】
また、移動機構11が、X軸移動装置11aと、Y軸移動装置11bと、Z軸移動装置11cと、を含むことで、格子状に配列した複数のラックセルから構成される燃料貯蔵ラックfL上で、噴射機構12を直線的に移動させ、障害物の除去作業を効率よく行うことができる。
【0075】
また、X軸移動装置11aと、Y軸移動装置11bと、Z軸移動装置11cと、が噴射機構12の各軸上の移動量を計測可能な計装部isをそれぞれ含むことで、噴射機構の空間位置を数値的に把握することができ、作業の正確性や効率が向上する。
【0076】
また、計装部isが、これに対して圧縮気体を注入可能に構成されていることで、圧縮気体の注入によって計装部isの内圧を外部の水圧よりも高く保つことができ、計装部is内への浸水、ひいては計装機器類の水没故障を防止することが可能となる。
【0077】
また、ノズル本体12a1及び12a2が、その噴射方向が傾斜していることで、直上からは噴流を当てにくい障害物にも噴流を当てることができる。
【0078】
また、噴射機構12が、その噴射方向が相異なる方向に向けられた複数のノズル本体として12a1、12a2を含むことで、二辺一対のチャンネルファスナの両方に障害物が挟まっていても、同時に噴流を噴射してこれを一挙に除去することができる。
【0079】
また、噴射機構12が、ノズル本体12a1及び12a2の噴射方向を撮影可能なカメラ部12b1及び12b2を含むことで、障害物やチャンネルボックスの状態を視覚的に確認しつつ、安全に障害物の除去作業を行うことができる。
【0080】
また、制御部3が、移動機構11を寸動操作可能に構成されていることで、噴射方向の微調整を容易に行うことができるため、作業の正確性、安全性が向上する。
【0081】
また、制御部3が、噴射機構12が装置本体1の重心位置に来るように、移動機構11を自動制御可能に構成されていることで、本装置Xをクレーン設置する際の重心調整が容易に行われるため、クレーン作業の安全性や効率が向上する。
【0082】
また、固定機構2が、複数の主固定装置21及び22を有し、複数の主固定装置21及び22は、ラックセルに挿入可能な略柱状体であることで、ラックセルに主固定装置21及び22を挿入し、本装置Xを燃料貯蔵ラックfLに容易に設置することができる。
【0083】
また、複数の主固定装置21及び22が、主固定装置21及び22をラックセル内に固定するための補助固定装置21b及び22bをそれぞれ含むことで、本装置Xは強く固定され、高圧噴流噴射時の反力にも十分耐えることができる。
【0084】
なお、上述の実施形態において示した各構成や機能は、あくまでも一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
X 圧縮気体噴射装置
1 装置本体
11 移動機構
11a X軸移動装置
11b Y軸移動装置
11c Z軸移動装置
12 噴射機構
12a1、12a2 ノズル本体
12b1、12b2 カメラ部
2 固定機構
21 第一主固定装置
21a 柱状体
21b 補助固定装置
22 第二主固定装置
22a 柱状体
22b 補助固定装置
3 制御部
is 計装部
cd コアンダノズル部
it 吸込穴
fb チャンネルボックス
cf チャンネルファスナ
ob 障害物