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  • 特開-配線基板および配線基板の製造方法 図1
  • 特開-配線基板および配線基板の製造方法 図2
  • 特開-配線基板および配線基板の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136531
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】配線基板および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/06 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H05K3/06 H
H05K3/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042259
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮本 光教
(72)【発明者】
【氏名】関根 俊秀
【テーマコード(参考)】
5E339
【Fターム(参考)】
5E339AD01
5E339BC01
5E339BE13
5E339CD06
5E339CE04
5E339CE13
5E339CF07
5E339CF16
5E339CF17
5E339EE01
(57)【要約】
【課題】下地膜とはんだ膜とを備えた配線基板において、下地膜とはんだ膜との外形を容易に一致させることが可能な配線基板および配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】基板11上に形成された金属膜12、13と金属膜12、13上に形成されたはんだ膜14とを備える配線基板10において、前記金属膜は、第1金属膜12と第1金属膜12と異なる金属材料を含む第2金属膜13とを有し、第2金属膜13は、第1金属膜12の周囲でありはんだ膜14の外形に沿って配置されている配線基板10とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された金属膜と前記金属膜上に形成されたはんだ膜とを備える配線基板において、前記金属膜は、第1金属膜と前記第1金属膜と異なる金属材料を含む第2金属膜とを有し、前記第2金属膜は、前記第1金属膜の周囲の少なくとも一部であり前記はんだ膜の外形に沿って配置されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記第1金属膜は貴金属を含み、前記第2金属膜は貴金属を含まないことを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1金属膜は基板表面からTi膜、Pt膜およびAu膜が積層された積層膜であり、前記第2金属膜はTiW膜であることを特徴とする請求項2に記載の配線基板。
【請求項4】
基板上に第1金属膜を形成する工程と、
前記基板上であり前記第1金属膜の周囲の少なくとも一部に前記第1金属膜と異なる金属材料を含む第2金属膜を形成する工程と、
前記第1金属膜の全面、および前記第1金属膜と近接する領域の前記第2金属膜上にはんだ膜を形成する工程と、
前記はんだ膜から露出した前記第2金属膜を除去する工程と、
を備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記第2金属膜を除去する工程は、前記はんだ膜をマスクとして前記第2金属膜をウェットエッチングすることを特徴とする請求項4に記載の配線基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ素子などの電子部品を搭載する配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ素子などの電子部品の実装に際しては、例えば、電子部品を配線基板の所定位置に配置し、配線基板に形成されたはんだ膜を溶融、固化することで電子部品を配線基板に接合する方法が採用されている。特許文献1には、半導体レーザをサブマウントに実装した半導体レーザ光源が開示されている。この半導体レーザ光源は、サブマウント基板の上側に例えばTi層、Pt層、Au層、およびバリア層からなる下地層とはんだ層とからなる配線を備え、サブマウントのはんだ層と半導体レーザの接合面とを接合している。この半導体レーザ光源においては、バリア層上における壁部で囲まれる領域にはんだ層を配置し、半導体レーザを壁部の内面に対して予め定められた間隔を開けるとともに、半導体レーザの出力端をサブマウントのはんだ層の端から突出させて接合することで、溶融されたはんだ層の余剰な濡れ拡がりを規制し半導体レーザ光源の出力特性や信頼性が向上できるとしている。
【0003】
また、サブマウントに代表される配線基板は、例えば特許文献2に開示されるように、フォトリソグラフィ技術を利用してサブマウント基板に配線をパターニングし、ダイシングによってサブマウント基板を所定寸法に分割することで製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-173218号公報
【特許文献2】特開2006-286945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ素子などの電子部品を配線基板の縁端部まで、または縁端部より突出して実装する際には、電子部品の接合強度や放熱性を十分に確保するため、はんだ膜と下地膜の両者を配線基板の縁端部まで形成することが求められている。また、下地膜の最表層にはんだ膜より高い延性をもつAu膜などが採用され、その下地膜が露出した状態でその下地膜上が切断された場合、はんだ膜上を切断した場合と比較して切断によるバリの発生が起きやすい。以上のことから、配線基板においては特別な理由によって下地膜を露出させることが必要とされない部位では、可能な限り下地膜をはんだ膜より露出させず、はんだ膜と下地膜との外形を一致させておくことが好ましい。
【0006】
しかし、フォトリソグラフィ技術を利用した配線形成においては、はんだ膜と下地膜の両者の外形を一致させ形成することは困難である。これは、例えば、配線を形成するために利用するレジスト膜のパターニング精度や、配線に採用した材料によってはウェットエッチング法、ドライエッチング法、リフトオフ法などの配線のパターニング手段に制限を受けてしまうことに起因する。本発明は、このような課題に鑑み、下地膜とはんだ膜とを備えた配線基板において、下地膜とはんだ膜の外形を容易に一致させることが可能な配線基板および配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
基板上に形成された金属膜と前記金属膜上に形成されたはんだ膜とを備える配線基板において、前記金属膜は、第1金属膜と前記第1金属膜と異なる金属材料を含む第2金属膜とを有し、前記第2金属膜は、前記第1金属膜の周囲の少なくとも一部であり前記はんだ膜の外形に沿って配置されている配線基板とする。
ここで、前記第1金属膜は貴金属を含み、前記第2金属膜は貴金属を含まない配線基板としてもよい。
さらに、前記第1金属膜は基板表面からTi膜、Pt膜およびAu膜が積層された積層膜であり、前記第2金属膜はTiW膜である配線基板としてもよい。
また、基板上に第1金属膜を形成する工程と、前記基板上であり前記第1金属膜の周囲の少なくとも一部に前記第1金属膜と異なる金属材料を含む第2金属膜を形成する工程と、前記第1金属膜の全面、および前記第1金属膜と近接する領域の前記第2金属膜上にはんだ膜を形成する工程と、前記はんだ膜から露出した前記第2金属膜を除去する工程と、を備えた配線基板の製造方法とする。
ここで、前記第2金属膜を除去する工程は、前記はんだ膜をマスクとして前記第2金属膜をウェットエッチングする配線基板の製造方法としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の配線基板および配線基板の製造方法によれば、下地膜とはんだ膜との外形が一致した配線基板を容易に提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る配線基板の一実施例を示す断面模式図である。
図2】本発明に係る配線基板の製造方法の一実施例を示す断面模式図である。
図3】本発明に係る配線基板の製造方法の一実施例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の配線基板および配線基板の製造方法の一実施例について説明する。
【0011】
図1は、本発明に係る配線基板の一実施例を示す断面模式図であり、(a)は配線基板の正面図、(b)は(a)のA-A断面図である。配線基板10は、矩形状の基板11と、基板11の一方の面上に形成された第1下地膜12および第1下地膜12と異なる材料を含む第2下地膜13、第1下地膜12と第2下地膜13の上に形成されたはんだ膜14とを備える。第1下地膜12は、基板11の端部から所定の間隔をもって基板11の一方の面のほぼ全面に形成され、その一部に延出部121を備える。第1下地膜12における延出部121は、基板11の端部から所定の間隔を有することなく形成され、第1下地膜12は延出部121において基板11の端部まで形成されている。また、第2下地膜13は、第1下地膜12の周囲の一部に形成されている。より具体的には、第2下地膜13は第1下地膜12の延出部121における基板11の端部と接する辺を除いた辺の周囲2箇所に形成されており、第2下地膜13の一辺は基板11の端部まで形成されている。また、はんだ膜14は矩形状であり、第1下地膜12における延出部121と延出部121と接続された部位の一部および第2下地膜13の上部に形成され、はんだ膜14の一辺は基板11における第1下地膜12の延出部121が形成された端部まで形成されている。ここで、はんだ膜14の一部においてはんだ膜14の端部と第2下地膜13の端部とは、基板11の一方の面に直交する方向において略同一直線上にあり、はんだ膜14の外形と第2下地膜13の外形は一致している。したがって、第2下地膜12ははんだ膜14から露出することなく配置されている。なお、配線基板10は、第1下地膜12は延出部121を除く部分でその一部がはんだ膜14から外部に露出した構成であるが、この露出した第1下地膜12は、配線基板10と外部機器などとを電気的に接続する際にワイヤボンドなどの電気的接続手段の接続部位として利用される。
【0012】
配線基板10に用いられる下地膜には、はんだ膜14と基板11への密着性と、下地膜や基板11の成分がはんだ膜14へ拡散することを防止する拡散防止性とが求められる。本実施例の配線基板10は、第1下地膜12を主に密着性、拡散防止性を持つ材料によって構成し、第1下地膜12の周囲に配置した第2下地膜13を密着性およびはんだ膜14と外形とを後述する製造過程において容易に一致させることが可能な材料によって構成したことを特徴としている。
【0013】
基板11は、例えばYをバインダーとして添加されたAlN焼結体を用いることできる。レーザ素子などの発熱体を配線基板10に搭載する場合には、配線基板10は高い熱伝導率を有することが望ましく、その観点から、基板11にSiC基板やその他のセラミックスを用いることができる。基板11は、表面が研磨されていることが望ましいが、研削面や焼結後そのままの面でも構わない。
【0014】
第1下地膜12は、貴金属を含む積層の金属膜であり、基板11に近い側よりTi膜、Pt膜、Au膜が積層された積層膜によって構成されている。ここで、Ti膜は基板11に対しての密着性を得るための密着層、Pt膜は基板11へのはんだの浸食を防ぐ拡散防止層、Au膜ははんだ膜14の密着や濡れを得るための電極層として機能する。この密着層を形成する材料としては、Tiのほかに、Cr、Ni、Taやこれらの化合物、これらの材料を含む合金などを用いることができる。
【0015】
第2下地膜13は、貴金属を含まない単層の金属膜であり、TiW合金によって構成されている。配線基板10は例えばフォトリソグラフィ技術を利用して製造されるが、その際にパターニングされる金属膜に貴金属を含む場合、貴金属が化学的に安定であることより基板11や製造過程で用いるフォトレジスト膜を侵さずに処理する方法は現実的に存在せず、ウェットエッチング法による処理は実質的に採用できない。ここでは、第2下地膜13に貴金属を含まない構成としたため、第2下地膜13のパターニング手段としてウェットエッチング法を採用することができ、はんだ膜14と第2下地膜13それぞれの外形を一致させるために有効である。第2下地膜13としては、基板11と密着し、はんだ膜14との濡れ性のよい材料で構成することが好ましく、TiWのほかに、Cr、Ni、Ti、TiN、TaNやこれらの化合物、これらの材料を含む合金などを用いることができる。
【0016】
はんだ膜14は、AuSnはんだによって構成されている。はんだ膜14の材料としてはAuSnはんだのほかに、AuGe系はんだ、SnAg系はんだ、SnCu系はんだ、SnBi系はんだ、SnSb系はんだ、SnAgCu系はんだ、SnIn系はんだなどを用いることができる。
【0017】
次に、配線基板10の製造方法について説明する。図2および図3は、本発明に係る配線基板10の製造方法の一実施例を示す断面模式図であり、図1における配線基板10のA-A断面を示している。配線基板10は以下の工程により製造される。
【0018】
[第1金属膜形成工程:図2(a)]
まず、基板11となる基材111を準備し、基材111の一方の面の全面に第1下地膜12を構成する材料からなる第1金属膜112を形成する。第1金属膜112の形成は、第1下地膜12を構成するTi膜、Pt膜およびAu膜を構成する各材料を蒸着法やスパッタリング法などで順に形成することで行う。
【0019】
[第1レジストパターン形成工程:図2(b)]
次に、基材111に形成された第1金属膜112上に配線基板10の第1下地膜12に対応する領域に第1レジスト膜115を形成する。第1レジスト膜115は、まず第1金属膜112の全面にレジスト膜形成し、フォトリソグラフィにより第1下地膜12に対応する領域を残すようパターニングする。第1レジスト膜115としては、液体レジストやドライフィルムレジストを利用することができる。
【0020】
[第1金属膜エッチング工程:図2(c)]
次に、第1レジスト膜115をマスクとして第1レジスト膜115に覆われていない第1金属膜112をエッチングする。第1金属膜112は、第1下地膜12を構成するPt膜を含むことよりウェットエッチング法による除去は困難であるため、ドライエッチング法、具体的にはArイオンによるミリングによって行う。エッチングによって不要部分が除去された第1金属膜112は、配線基板10における第1下地膜12となる。(a)~(c)の工程はエッチングによる形成方法の一例であるが、リフトオフ法によって形成しても差し支えない。
【0021】
[第2金属膜形成工程:図2(d)]
次に、第1レジスト膜115をマスクとして、基材111上に第2下地膜13を構成する材料であるTiWからなる第2金属膜113を形成する。第2金属膜113は、第1金属膜112と同じ膜厚であり、蒸着法やスパッタリング法などで形成することができる。
【0022】
[第2レジストパターン形成工程:図3(e)]
次に、第1レジスト膜115を除去し、基材111に形成された第2金属膜113上であり、配線基板10のはんだ膜14に対応する領域を除いた領域に第2レジスト膜116を形成する。第2レジスト膜116は、まず第1金属膜112および第2金属膜113の全面にレジスト膜形成し、その後フォトリソグラフィによりパターニングする。第2レジスト膜116としては、フォトレジスト液やドライフィルムレジストを利用することができる。
【0023】
[はんだ膜形成工程:図3(f)]
次に、第2レジスト膜116の開口から露出した第1金属膜112および第2金属膜113の表面にはんだ膜14を形成する。はんだ膜14は蒸着法やスパッタリング法などで形成することができる。
【0024】
[第2金属膜エッチング工程:図3(g)]
次に、第2レジスト膜116を除去し、はんだ膜14をマスクとしてはんだ膜14に覆われていない第2金属膜113をエッチングする。第2金属膜113のエッチングは、ウェットエッチング法によって行う。エッチング液として例えば過酸化水素にキレート剤を添加したエッチング液などを利用することができる。エッチングによって不要部分が除去された第2金属膜113は、配線基板10における第2下地膜13となる。
【0025】
ここで、本実施例では、第2金属膜113(第2下地膜13)が貴金属を含まない材料によって構成されており、ウェットエッチング法によってエッチングを行うことができる。例えば、ウェットエッチング法の代替手段としてドライエッチング法が考えられるが、この場合、はんだ膜14上にレジスト膜などのマスク部材を配置する必要がある。しかし、はんだ膜14上に配置するマスク部材をはんだ膜14の外形に沿って精度よく配置することは非常に困難であり、ドライエッチング法でははんだ膜14の下地となる膜がはんだ膜14から露出することがある。しかし、本実施例の配線基板10では、第2金属層113のエッチングにはんだ膜14をマスクとしたウェットエッチング法を適用することができ、はんだ膜14とその下地となる膜の外形を精度よく一致させることが可能となる。
【0026】
[基材切断工程:図3(h)]
最後に、基材111を任意の寸法で切断する。基材111の切断はダイアモンドを電着したブレードを用いたダイシング法などによって行うことができ、例えば、はんだ膜14が形成された部位の上部より基板111を切断する。この際に、はんだ膜14とその下地膜、具体的には第2金属膜113との外形は一致しており、第2金属膜113は、はんだ膜14から露出した部分がないため、切断により生じるバリの発生を抑制することができる。第1金属膜112(第1下地膜12)、第2金属膜113(第2下地膜13)およびはんだ膜14を表面に備えた基材111を任意の寸法に切断することで配線基板10を得ることができる。
【0027】
以上、本発明の配線基板および配線基板の製造方法を実施例に基づき説明してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。本発明は、はんだ膜14の下地膜を任意に選択したそれぞれ異なる金属材料を含む第1下地膜12と第2下地膜13とから構成とすることによって、下地膜のエッチング手法を任意に選択することをできるようにしたものであり、その結果、はんだ膜14とその下地膜の外形を精度よく一致させることを可能としたものである。上記実施例に例示した材質、形状、配置箇所などはこの主旨に逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば上記実施例では、第2下地膜13を基板111の切断に架かる部位となる第1下地膜12の延出部121の周囲のみに形成しているが、はんだ膜14の外形に対応した部位における第1下地膜12のすべての周囲に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10 配線基板
11 基板
12 第1下地膜
13 第2下地膜
14 はんだ膜
111 基材
112 第1金属膜
113 第2金属膜
115 第1レジスト膜
116 第2レジスト膜
121 延出部

図1
図2
図3