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  • 特開-接続継手構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136550
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】接続継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/18 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
F16L59/18
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042279
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593222229
【氏名又は名称】株式会社クライオバック
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】浅海 貴男
(72)【発明者】
【氏名】別府 亮彦
(72)【発明者】
【氏名】樋口 晃一
(72)【発明者】
【氏名】梅川 大地
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA02
3H036AA04
3H036AB33
3H036AC06
3H036AD09
(57)【要約】
【課題】接続操作性を良くできるように挿入すき間を比較的大きくできるノーズシールを備えた構成でありながらも、ノーズシールでのシール性を高めて挿入すき間への低温液の侵入を防止する。
【解決手段】真空断熱管からなり受け側管部31に挿入される差込側管部51の先端部にノーズシール54を備える。ノーズシール54の先端側外周角部にはテーパ面54eを形成する。受け側管部31におけるテーパ面54eに対向する部位には、受け部13と差込部15に形成されたフランジ32,52の締め付けでテーパ面54eが密着する傾斜受け面33aを形成する。また、ノーズシール54の差込方向後方位置に、ノーズシール54よりも大径で受け側管部31の内周面31aに対して摺動するガイドリング55を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱管からなる受け側管部を有する受け部と、真空断熱管からなり前記受け側管部に挿入される差込側管部を有する差込部を備え、前記受け部と前記差込部に形成されたフランジを互いに近接する方向に締め付けて、前記フランジに備えられたシールと、前記差込側管部の先端部に設けたノーズシールとの間で前記受け側管部と前記差込側管部との間の挿入すき間を閉じる接続継手構造であって、
前記ノーズシールの先端側外周角部にテーパ面が形成され、
前記受け側管部における前記テーパ面に対向する部位に、前記フランジの締め付けで前記テーパ面が密着する傾斜受け面が形成され、
前記ノーズシールの差込方向後方位置に、前記ノーズシールよりも大径で前記受け側管部の内周面に対して摺動可能なガイドリングが設けられた
接続継手構造。
【請求項2】
前記ガイドリングが前記ノーズシールに近接して設けられた
請求項1に記載の接続継手構造。
【請求項3】
前記ノーズシールが前記差込側管部の先端よりも差込方向後方に設けられ、
前記差込側管部における前記ノーズシールよりも先に、前記ノーズシールの前記テーパ面よりも小径の小径先端部が形成された
請求項1または請求項2に記載の接続継手構造。
【請求項4】
前記ノーズシールが、前記差込側管部の先端から差し込んで保持された
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の接続継手構造。
【請求項5】
前記フランジの締め付けが、前記フランジを径方向において挟み付けるクランプでなされる
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の接続継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば液化水素のような極低温の液化ガスを移送するフレキシブルホースに使用されるような接続継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
超低温の液化ガスを例えばローリーから貯槽に充填する接続継手には、外部からの熱による気化を極力抑制し、貯槽内の圧力上昇の防止と効率的な移送が行えるようにするため、真空断熱構造のバイオネット接続構造が採用されている。
【0003】
この接続構造は、真空断熱管からなる受け側管部を有する受け部と、真空断熱管からなり受け側管部に対して挿入される差込側管部を有する差込部で構成される。受け部と差込部にはフランジが形成されており、これらを互いに近接する方向に締め付けて、フランジに備えられたシールと、差込側管部の先端部に設けたノーズシールとの間で、受け側管部及び差込側管部間の挿入すき間を閉じるように構成されている。
【0004】
下記特許文献1の第1図に開示されているように、ノーズシールを備えない形態のものもあったが、受け側管部と差込側管部との間の挿入すき間(径方向での間隔)から液化ガスが侵入することでフランジのシールが凍結してガス漏れが生じることになる。液化ガスの侵入を防ぐため、挿入すき間を極力小さくする必要があった。この隙間は、具体的には0.1mm未満である。
【0005】
しかし、挿入すき間、換言すればクリアランスが小さいと挿入が行いにくい。しかも、挿入すき間が小さいので受け側管部と差込側管部との接触により僅かでもキズやバリ、変形が生じると、挿入できなくなってしまう。
【0006】
このため、挿入すき間を大きくしてもフランジの大幅な温度低下やシールの凍結を抑制できるようにするため、下記特許文献1の第2図に開示されているように、差込側管部の先端部にノーズシールを備えるものもあった。ノーズシールは挿入すき間への低温液の侵入を防止するためのものであって、特許文献1の第2図のようなOリングで構成するほか、円筒形状のシールで構成するものもある。
【0007】
Oリングは差込側管部外周面に取り付けられており、受け側管部に挿入されると圧縮される。円筒形状のシールは差込側管部の先端に突出状態で設けられており、受け側管部に形成されたテーパ状の受け面に対して挿入方向に押し付けて密着するときに、先端側が拡径するように変形する。
【0008】
ノーズシールがOリングであっても円筒形状のシールであっても、接続時には大きな変形を伴うので、ねじれや不規則な変形によって必ずしもシール性が得られるとは限らない。また、シール性は使用に伴って低下しやすい。
【0009】
しかも、円筒形状のシールを用いる場合には、シールを変形させるため押し込み代が大きい。つまり、差込側管部を受け側管部に差し込む際のストロークが長く、フランジの締め付けは、ねじ継手で行う必要があった。ねじ継手は長い距離の締め付けを可能にするが、人手によって回転させるには径が大きく作業性が良くない。また、ネジの摩耗粉の発生があるうえ、ローリー等へ積載するのにはスペースが大きくなり利便性が良くない。
【0010】
特許文献1に記載の考案では、第3図に開示されているように、差込側管部にゴムまたは可撓性樹脂よりなる複数のリングをそれらの間に間隔をあけて装着した構成を採用している。この構成により、差込側管部の先端部のOリングを通って挿入すき間に低温液が浸入した場合でもフランジのシールまで低温液が到達するのを防止するとされている。防止できれば、フランジのシールが凍結することはなく、漏れの発生を防げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開昭53-6923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、接続時にノーズシールが大きな変形を伴うため低温液の侵入を防げないことがあり、挿入すき間に侵入した低温液は挿入すき間で対流することになる。このため、挿入すき間に低温液が浸入した場合には、フランジのシールに大きな温度低下が生じることは避けられない。
【0013】
そこで、この発明は、接続操作性が良いように挿入すき間を比較的大きくできるノーズシールを備えた構成でありながらも、ノーズシールでのシール性を高めて挿入すき間への低温液の侵入を防止できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのための手段は、ノーズシールの先端側外周角部にテーパ面が形成され、受け側管部におけるテーパ面に対向する部位に、フランジの締め付けでテーパ面が密着する傾斜受け面が形成され、ノーズシールの差込方向後方位置に、ノーズシールよりも大径で受け側管部の内周面に対して摺動可能なガイドリングが設けられた接続継手構造である。
【0015】
この構成では、差込部の差込側管部を受け部の受け側管部に挿入してフランジの締め付けを行うと、差込側管部のノーズシールにおけるテーパ面が受け側管部内の傾斜受け面に密着する。このとき、ノーズシールは大きく変形することは必要でなく、直進するテーパ面が傾斜受け面に真っすぐ押し当てられることによって、差込部から受け部に向けて流れる低温液が挿入すき間に侵入することを防ぐ。挿入すき間に入るのは密着部分からリークする微少なガスであり、このガスによって挿入すき間は均圧になり、このことによっても低温液が挿入すき間に侵入することが防止される。
【0016】
また、ガイドリングがノーズシールの後方で、差込側管部の挿入姿勢を規制し、同時に挿入動作を滑らかにし、ノーズシールのテーパ面を傾斜受け面に正しく対向させる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、大きな変形が不要な構成のノーズシールによって挿入すき間に対する低温液の侵入が良好に防止でき、また挿入すき間はリークした微少のガスで均圧状態に保たれる構成であるので、低温液の侵入によるフランジの温度低下を確実に抑制できる。
【0018】
しかも、ノーズシールを備えた構成であって、挿入すき間を比較的大きくできるので、重い差込側管部でも挿入操作性が良好である。そのうえ、ガイドリングが差込側管部の挿入姿勢の規制と挿入動作の円滑化を行うので、差込側管部や受け側管部が損傷することを防止し、挿入不可能になることを回避できる。同時にガイドリングは、ノーズシールのテーパ面を傾斜受け面に正しく対向させるので、ノーズシールの予期しない変形を防止して、高いシール性を確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】接続継手構造の断面図。
図2】挿入開始時の状態を示す断面図。
図3】接続して低温液を流した状態の挿入すき間を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0021】
図1に、超低温の液化ガスの移送に利用される真空断熱配管の接続や、貯槽の充填ライン配管と充填用フレキシブルホースの接続に好適な接続継手構造11を示す。
【0022】
接続継手構造11は、流体の移送方向に位置する受け部13と、流体の上流方向に位置する差込部15を備えており、受け部13は真空断熱管からなる受け側管部31を有し、差込部15は、同じく真空断熱管からなる差込側管部51を有している。接続継手構造11が貯槽の充填ライン配管と充填用フレキシブルホースの接続継手を構成する場合、受け部13は貯槽の充填ライン配管の端末に備えられ、差込部15は充填用フレキシブルホースの先端に備えられる。
【0023】
受け部13は、受け側管部31の接続側の先端に、外周方向に張り出すフランジ32を有しており、差込部15の差込側管部51の基端には、差込側管部51を受け側管部31に挿入したときに受け部13のフランジ32と対をなすフランジ52が形成されている。
【0024】
一組のフランジ32,52は組んだ状態で縦断面等脚台形状をなし、受け部13のフランジ32における移送方向の面と差込部15のフランジ52における上流側の面には、相反する方向に傾斜する傾斜面32a,52aが形成されている。これらのフランジ32,52には、フランジ32,52同士を互いに近接する方向に締め付けるためにフランジ32,52を径方向において挟み付けるクランプ17が備えられる。
【0025】
クランプ17は、図示を省略するが、二分割クランプであり、ボルトナットで締め付ける構成である。ボルトナットは両端に存在する構造のものであるほか、一端が枢着されて開放側の片側のみに存在する構造のものであってもよい。またクランプ17は、ボルトナット等で締め付けるだけでフランジ32,35を締め付けられる構造のものであればよい。
【0026】
フランジ32,52の対向面間には、内外で重なり合う受け側管部31と差込側管部51との間の挿入すき間19を閉じて低温液やガスが漏れるのを防止するシールが必要であり、差込側管部51のフランジ52に、シールとしてのOリング53が保持されている。Oリング53には、耐寒性に優れるEPDM(エチレンプロピレンゴム)製のものが好適に使用される。EPDM製のOリング53は低温下でも弾性を維持できる。
【0027】
軸心を共通にする受け側管部31の内周面31aと差込側管部51の外周面51aとの間、つまり挿入すき間19の間隔は、挿入作業性と断熱性を考慮して、0.1mmよりも大きい適宜の値に設定される。
【0028】
差込側管部51の先端部には、ノーズシール54とガイドリング55が先端側から順に備えられる。
【0029】
ノーズシール54は、受け側管部31と差込側管部51との間の挿入すき間19を閉じて低温液が挿入すき間19に入るのを防ぐための構成の一つである。ノーズシール54の全体形状は円環状であり、その縦断面形状は略長方形に形成されている。つまりノーズシール54は、差込側管部51の長手方向に適宜長さの内周面54a及び外周面54b、これら内周面54a及び外周面54bに対して直交する方向に広がる前端面54c及び後端面54dを有している。そしてノーズシール54の先端側に位置する前端面54cと外周面54bとの間、つまり先端側外周角部にはテーパ面54eが形成されている。
【0030】
ノーズシール54は、低温での寸法安定性に優れ機械的強度を有する高機能樹脂素材PCTFE(例;ダイフロン(登録商標))で形成される。PCTFE製のノーズシール54は、硬くて変形しにくく低温になっても収縮率が小さいので適している。
【0031】
このノーズシール54は先端ブロック57の先端よりも差込方向後方に設けられ、差込側管部51におけるノーズシール54よりも先に、ノーズシール54のテーパ面54eよりも小径の小径先端部56が形成される。またノーズシール54は、差込側管部51の先端から差し込んで保持される。
【0032】
具体的には、ノーズシール54は、差込側管部51の先端において外筒51cと内筒51dを結合する円環状をなす先端ブロック57の長手方向の中間部に形成された円周保持面57aに保持される。円周保持面57aの直径はノーズシール54の内周面54aが嵌まる大きさであり、円周保持面57aの長手方向の長さはノーズシール54の内周面54aよりも短い。円周保持面57aの後端には垂直面57bが形成されている。
【0033】
円周保持面57aよりも先端側部分は、円周保持面57aよりも小径に形成され、その先端側部分には凹溝部57cと雄ねじ部57dが先端側から順に形成されている。
【0034】
つまり、ノーズシール54は円周保持面57aに対して嵌められたのち、雄ねじ部57dに螺合される固定ナット58で垂直面57bに対して押し付けられて保持される。固定ナット58は、凹溝部57cに固定されるスナップリング59で脱落防止がなされる。
【0035】
先端ブロック57における円周保持面57aより先端側の部分と、この部分に備えられたスナップリング59及び固定ナット58が、前述した小径先端部56を構成する。
【0036】
ガイドリング55は、ノーズシール54よりも大径に形成されており、受け側管部31の内周面31aに対して摺動するものである。ガイドリング55の形状は全体として円環状であり、その縦断面形状は正方形または長方形である。
【0037】
このガイドリング55は、低摩擦性に優れる高機能素樹脂素材PTFE(例;テフロン(登録商標))で形成されるのが好ましい。PTFE製のガイドリング55は、受け側管部31の内周面31aと接触しても傷の発生を防ぎ、差込側管部51の挿入時の芯ずれを良好に防止する。
【0038】
ガイドリング55はノーズシール54に近接して設けられる。ここで、近接とは、近くにあることをいい、接しておらずともノーズシール54と一つのまとまりを持った態様で備えられていることを意味する。この例においてガイドリング55はノーズシール54と同じ先端ブロック57に備えられる。
【0039】
先端ブロック57におけるノーズシール54を保持する垂直面57bよりも差込方向後方には、後方ほど大径となる傾斜した拡径面57eと、差込側管部51の長手方向に延びる外周面57fが連続して形成されている。ガイドリング55は、外周面57fに形成された凹溝57gに嵌めて固定される。
【0040】
このような差込側管部51を受け入れる受け側管部31は、その内奥部に、ノーズシール54のテーパ面54eと協働して低温液が挿入すき間19に侵入しないよう挿入すき間19を閉じるための構成を有している。すなわち、受け側管部31の内筒31dを移送方向に延びる流路形成管13aに接続する基端ブロック33におけるノーズシール54のテーパ面54eに対向する部位に、フランジ32,52の締め付けでテーパ面54eが密着する傾斜受け面33aを有している。
【0041】
傾斜受け面33aは、テーパ面54eを受けるのに十分な広さであり、テーパ面54eと密着できる傾斜角度に形成される。
【0042】
以上のような構成の接続継手構造11では、差込部15の差込側管部51を受け部13の受け側管部31に挿入したのち、それらのフランジ32,52をクランプ17で締め付けると、接続が完了する。
【0043】
差込側管部51を挿入するときは、その先端を受け側管部31の開口に狙いを定めるが、差込側管部51の先端にはノーズシール54のテーパ面54eよりも小径の小径先端部56が形成されているので、狙いが定めやすい。
【0044】
また、ノーズシール54の先端側外周角部にテーパ面54eが形成されており、そのノーズシール54は機械的強度が高く低摩擦性のPCTFE製であるので、受け側管部31の開口に接しても損傷することもなく、相手方を毀損することもない。そのうえ、テーパ面54eがガイド機能を発揮して円滑な挿入が可能である。
【0045】
図2の仮想線で示したようにノーズシール54が受け側管部31に入った後は、そのまま水平に差し込むことで、ノーズシール54の差込方向後方に位置するガイドリング55も、その低摩擦性によって円滑に進入することになる。
【0046】
挿入されるときにガイドリング55は、受け側管部31の内周面31aに対して摺動し、受け側管部31にキズやバリ、変形が発生するのを防止するとともに、差込側管部51の軸心を受け側管部31の軸心に合わせる。これによってノーズシール54のテーパ面54eは受け部13の傾斜受け面33aに正対する。
【0047】
差込側管部51を挿入したのち、差込部15のフランジ52と受け部13のフランジ32をクランプ17で締め付けてフランジ32,52同士を互いに接する方向に締め付けると、Oリング53が圧縮されて、フランジ32,52でのシールがなされる。同時に、ノーズシール54のテーパ面54eが傾斜受け面33aに密着する。これら2か所のシールで、挿入すき間19は閉じられる。
【0048】
ノーズシール54によるシールについて、ノーズシール54は硬く変形の少ない材料である上に、テーパ面54eが当接してシールする構成であるので、大きな変形を伴うシール構造である場合に比して、高いシール性が確実に得られる。
【0049】
このため、低温液を差込部15側から受け部13側に流しても、ノーズシール54を通って挿入すき間19に低温液が浸入することを防止できる。
【0050】
しかも、ノーズシール54によるシールは大きな変形を伴わない構成であるので、挿入することでシールする構造であっても、挿入長さを長くとる必要はなく、前述のようなクランプ17の締め付けて十分にシールが可能である。クランプ17による締め付けは作業が簡単であるので、一人でも接続作業が行える。
【0051】
挿入すき間19には高圧の低温液の気化した微少のガスがノーズシール54部分からリークして侵入するが、このガスは、図3に示したように、フランジ32,52のOリング53によるシール部分までの全体にわたって均圧な状態となる。テーパ面54eの密着によるシールに加えて、挿入すき間19に均圧のガスが満ちていることによっても、低温液の侵入は阻止される。
【0052】
このようにして、挿入すき間19に対する低温液の侵入は防止されるため、フランジ32,52が大幅に温度低下したり、Oリング53が凍結したりすることはなく、接続部分からの低温液やガスの漏れを確実に防止できる。
【0053】
接続操作性が良いように挿入すき間19を比較的大きくしても、前述のように漏れを確実に防止できるので、作業性と断熱性の両立を図れる。
【0054】
そのうえ、前述のように主にガイドリング55によって受け側管部31や差込側管部51の損傷が防止されて、挿入が不可能なるような事態を回避できるが、特にガイドリング55はノーズシール54に近接して設けられているので、挿入直後から作用する。ガイドリング55の作用によって、円滑な挿入が可能になる。
【0055】
しかも、差込側管部51の先端には小径先端部56が形成されているので、挿入直後に差込側管部51の向きが水平から多少ずれたとしても、小径先端部56が受け側管部31の内周面31aに接することはなく、確実に損傷防止が行える。
【0056】
また、ノーズシール54は差込側管部51の先端から差し込んで保持され、垂直面57bで支えられる構成であるので、テーパ面54eを挿入方向に押し付けてシールする構成であることと相まって、ノーズシール54の予期しない不測の変形を防止できる。この点からも、良好なシール性を確実に得られる。
【0057】
以上の構成は、この発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0058】
例えばガイドリング55の先端側外周角部にテーパ面を形成してもよい。
【0059】
接続構造は、新規の真空断熱配管等に使用されるほか、アダプタとして構成して既存の設備に適用することもできる。
【符号の説明】
【0060】
11…接続継手構造
13…受け部
15…差込部
17…クランプ
19…挿入すき間
32…フランジ
33a…傾斜受け面
51…差込側管部
52…フランジ
53…Oリング
54…ノーズシール
54e…テーパ面
55…ガイドリング
56…小径先端部
図1
図2
図3