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特開2023-136553ロープ、ロープの製造方法、補助ロープ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136553
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ロープ、ロープの製造方法、補助ロープ
(51)【国際特許分類】
   D07B 9/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
D07B9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042285
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山下 英樹
(72)【発明者】
【氏名】小阪 俊之
(72)【発明者】
【氏名】中本 惟大
【テーマコード(参考)】
3B153
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153AA26
3B153AA45
3B153BB01
3B153CC21
3B153EE22
3B153EE23
3B153EE24
3B153FF08
3B153FF17
(57)【要約】
【課題】ストランドの配置を変更することなく、また、ストランドの均一性が保たれ、本体ロープピッチの間隔も変化することなく、破断強度の低下を抑制し、破断しにくくできるロープと、その製造方法、補助ロープを提供する。
【解決手段】前記補助ロープの長さ方向で、一端側に前記一対の対峙部が、他端側に前記折り返し部が、それぞれ配置されるように、前記一対の対峙部のうち、前記一方が前記Zストランド組に沿うように前記S側挿込部に挿し込まれ、前記他方が前記Sストランド組に沿うように前記Z側挿込部に挿し込まれることで、前記折り返し部が、環状のアイ部を構成する、ロープ。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ストランドを複数備える本体ロープと、
第2ストランドをS方向に組むことで構成されるSストランド組と、第2ストランドをZ方向に組むことで構成されるZストランド組と、をそれぞれ複数備え、前記Sストランド組と前記Zストランド組を組み合わすことで構成され、前記本体ロープよりも短い補助ロープであって、並行する前記Sストランド組同士の間に、複数の前記Zストランド組が組み合わされるS側結合部が形成され、並行する前記Zストランド組同士の間に、複数の前記Sストランド組が組み合わされるZ側結合部が形成される補助ロープとを備え、
前記本体ロープは、長さ方向で折り返すことにより構成される折り返し部と一対の対峙部とを備え、
前記一対の対峙部は、引張力を受ける第1対峙部と、自由端を含む第2対峙部とを備え、
前記S側結合部は、前記第1対峙部または前記第2対峙部のどちらか一方が挿し込まれる空間として構成されるS側挿込部を備え、
前記Z側結合部は、前記第1対峙部または前記第2対峙部のどちらか他方が挿し込まれる空間として構成されるZ側挿込部を備え、
前記補助ロープの長さ方向で、一端側に前記一対の対峙部が、他端側に前記折り返し部が、それぞれ配置されるように、前記一対の対峙部のうち、前記第1対峙部または前記第2対峙部の一方が前記Zストランド組に沿うように前記S側挿込部に挿し込まれ、前記第1対峙部または前記第2対峙部の他方が前記Sストランド組に沿うように前記Z側挿込部に挿し込まれることで、前記折り返し部が、環状のアイ部を構成する、ロープ。
【請求項2】
前記S側挿込部は、前記S側結合部から前記Zストランド組を構成する少なくとも1本の前記第2ストランドが欠落した状態で構成され、
前記Z側挿込部は、前記Z側結合部から前記Sストランド組を構成する少なくとも1本の前記第2ストランドが欠落した状態で構成され、
前記Zストランド組と前記Sストランド組において前記第2ストランドの欠落数が同じ数であることを特徴とする、請求項1に記載のロープ。
【請求項3】
前記本体ロープは、複数の前記第1ストランドの外周を被覆する被覆部を備える、請求項1又は2に記載のロープ。
【請求項4】
前記Sストランド組を構成する第2ストランドが素線をZ方向に撚ることで構成されるZ撚りストランドであり、
前記Zストランド組を構成する第2ストランドが素線をS方向に撚ることで構成されるS撚りストランドである、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のロープ。
【請求項5】
請求項1に記載のロープを製造するためのロープの製造方法であって、
前記S側結合部から前記Zストランド組を構成する前記第2ストランドを抜くことで、前記第2ストランドが抜かれた空間を前記S側挿込部として構成し、前記Z側結合部から前記Sストランド組を構成する前記第2ストランドを抜くことで、前記第2ストランドが抜かれた空間を前記Z側挿込部として構成する抜き工程を備える、ロープの製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載のロープを製造するためのロープの製造方法であって、
前記Sストランド組と前記Zストランド組を組み合わすことで前記補助ロープを構成する補助ロープ作成工程を備え、
前記補助ロープ作成工程では、並行する前記Sストランド組同士で含まれる前記第2ストランドの数が異なり、並行する前記Zストランド組同士で含まれる前記第2ストランドの数が異なるように、前記Sストランド組と前記Zストランド組とを組み合わせ、
前記S側挿込部は、組み合わされる複数の前記Zストランド組同士で異なる前記第2ストランドの数分の空間として構成され、
前記Z側挿込部は、組み合わされる複数の前記Sストランド組同士で異なる前記第2ストランドの数分の空間として構成される、ロープの製造方法。
【請求項7】
前記S側挿込部及び前記Z側挿込部のいずれか一方に前記第1対峙部を挿し込み、前記S側挿込部及び前記Z側挿込部のいずれか他方に前記第2対峙部を挿し込む挿込工程を備え、
前記挿込工程では、前記補助ロープの長さ方向の一端側から他端側に向かうように、前記いずれか一方に前記第1対峙部を挿し込み、前記補助ロープの長さ方向の他端側から一端側に向かうように、前記いずれか他方に前記第2対峙部を挿し込む、請求項5又は請求項6に記載のロープの製造方法。
【請求項8】
ストランドをS方向に組むことで構成されるSストランド組と、ストランドをZ方向に組むことで構成されるZストランド組と、をそれぞれ複数備え、前記Sストランド組及び前記Zストランド組を組み合わすことで構成される補助ロープであって、
並行する前記Sストランド組同士の間には、複数の前記Zストランド組が組み合わされるS側結合部が形成され、
並行する前記Zストランド組同士の間には、複数の前記Sストランド組が組み合わされるZ側結合部が形成され、
前記S側結合部に組み合わされる複数の前記Zストランド組で、前記ストランドの数が異なり、
前記Z側結合部に組み合わされる複数の前記Sストランド組で、前記ストランドの数が異なり、
前記S側結合部のうち、複数の前記Zストランド組で異なる前記ストランドの数分の空間が、別体として構成される本体ロープを挿し込み可能なS側挿込部として構成され、
前記Z側結合部のうち、複数の前記Sストランド組で異なる前記ストランドの数分の空間が、前記本体ロープを挿し込み可能なZ側挿込部として構成される、補助ロープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
長さ方向の一部が環状に構成されたロープ、その製造方法、補助ロープに関する。
【背景技術】
【0002】
ロープの端末を丸く曲げ、加工や結束によって環状にするアイスプライスという方法が従来から存在している。このアイスプライスに関する文献として、例えば、特許文献1がある。
【0003】
上記特許文献1には、図7乃至10に示すように、2本の緑色のストランドと、1本の赤色のストランドとからなる三打ちロープをストランド毎にほぐして加工しろを作成し、赤色のストランドを中央にし、左右に緑色のストランドを置く口入準備(割り)を行った後、各ストランドを順番に三打ちロープの本体に通すことで構成される、三打ちロープを用いたアイスプライスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-236380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1では、アイスプライスを行うにあたって、加工しろの作成と口入準備(割り)をして、三打ちロープを3本のストランドに分解している。そのため、上記特許文献1記載のアイスプライスでは、各ストランドの配置が乱れ、ロープの破断強度が下がるという問題が生じる。また、上記特許文献1記載のアイスプライスでは、前記ストランドが通された三打ちロープの本体において、例えば、分解したストランドを通すためにストランド間がこじ開けられてストランドの配置が乱れ、各ストランドの長さがピッチ(撚りの間隔)内で不ぞろいになり、各ストランドが均等に荷重を負担しなくなる。またピッチが短くなることでストランドの角度が大きくなり、ロープの破断強度が低下していた。なお、これら問題は、上記特許文献1記載のアイスプライスに限られず、ロープをストランドに分解してストランドをロープに挿し込むもの全般において生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、本体ロープをストランドに分解することなく、また、分解したストランドを本体ロープに挿し込む必要もなく、本体ロープの破断強度の低下を抑制し、破断しにくくできる、長さ方向の一部が環状に構成されたロープと、その製造方法、補助ロープを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1ストランド を複数備える本体ロープと、第2ストランドをS方向に組むことで構成されるSストランド組と、第2ストランドをZ方向に組むことで構成されるZストランド組と、をそれぞれ複数備え、前記Sストランド組と前記Zストランド組を組み合わすことで構成され、前記本体ロープよりも短い補助ロープであって、並行する前記Sストランド組同士の間に、複数の前記Zストランド組が組み合わされるS側結合部が形成され、並行する前記Zストランド組同士の間に、複数の前記Sストランド組が組み合わされるZ側結合部が形成される補助ロープとを備え、前記本体ロープは、長さ方向で折り返すことにより構成される折り返し部と一対の対峙部とを備え、前記一対の対峙部は、引張力を受ける第1対峙部と、自由端を含む第2対峙部とを備え、前記S側結合部は、前記第1対峙部または前記第2対峙部のどちらか一方が挿し込まれる空間として構成されるS側挿込部を備え、前記Z側結合部は、前記第1対峙部または前記第2対峙部のどちらか他方が挿し込まれる空間として構成されるZ側挿込部を備え、前記補助ロープの長さ方向で、一端側に前記一対の対峙部が、他端側に前記折り返し部が、それぞれ配置されるように、前記一対の対峙部のうち、前記第1対峙部または前記第2対峙部の一方が前記Zストランド組に沿うように前記S側挿込部に挿し込まれ、前記第1対峙部または前記第2対峙部の他方が前記Sストランド組に沿うように前記Z側挿込部に挿し込まれることで、前記折り返し部が、環状のアイ部を構成する、ロープである。
【0008】
前記構成によれば、前記一方が前記S側挿込部に挿し込まれ、前記他方が前記Z側挿込部に挿し込まれることで、前記折り返し部が環状のアイ部を構成するため、前記本体ロープを前記第1ストランドに分解することなく、また、前記本体ロープに分解したストランドを挿し込む必要もなく、前記アイ部を構成できるため、ロープの破断強度の低下を抑制できる。
【0009】
また、本発明のロープでは、前記S側挿込部は、前記S側結合部から前記Zストランド組を構成する少なくとも1本の前記第2ストランドが欠落した状態で構成され、前記Z側挿込部は、前記Z側結合部から前記Sストランド組を構成する少なくとも1本の前記第2ストランドが欠落した状態で構成され、前記Zストランド組と前記Sストランド組において前記第2ストランドの欠落数が同じ数であることを特徴としてもよい。
【0010】
前記構成によれば、前記Zストランド組と前記Sストランド組の前記第2ストランドの欠落数が同じ数であるため、前記補助ロープを組む方向である前記Z方向と前記S方向のバランスが崩れることを防止でき、前記補助ロープの形状を維持することができる。
【0011】
また、前記本体ロープは、複数の前記第1ストランドの外周を被覆する被覆部を備えてもよい。
【0012】
前記構成によれば、前記被覆部が複数の前記第1ストランドの外周を被覆することで、前記被覆部が前記第1ストランドと前記第2ストランドとの接触を遮り、前記第1ストランドと前記第2ストランドとが接触して互いに損傷することを防止でき、且つ前記本体ロープから前記被覆部を剥がすことなく、前記アイ部を形成できる。
【0013】
また、本発明では、前記Sストランド組を構成する第2ストランドが素線をZ方向に撚ることで構成されるZ撚りストランドであり、前記Zストランド組を構成する第2ストランドが素線をS方向に撚ることで構成されるS撚りストランドであってもよい。
【0014】
前記構成によれば、前記素線に無理な撚りを入れることなく、組み上げた前記ロープの強力を安定的に高く出すことができる。
【0015】
また、本発明は、上記ロープを製造するためのロープの製造方法であって、前記S側結合部から前記Zストランド組を構成する前記第2ストランドを抜くことで、前記第2ストランドが抜かれた空間を前記S側挿込部として構成し、前記Z側結合部から前記Sストランド組を構成する前記第2ストランドを抜くことで、前記第2ストランドが抜かれた空間を前記Z側挿込部として構成する抜き工程を備える、ロープの製造方法であってもよい。
【0016】
前記構成によれば、例えば、8つ打ちロープから前記Z方向に組む第2ストランドと前記S方向に組む第2ストランドを1本ずつ抜き取ることで、前記S側結合部と前記Z側結合部のうち、前記Z方向に組む第2ストランドと前記S方向に組む第2ストランドそれぞれが抜かれた空間が、前記S側挿込部と前記Z側挿込部を構成できる。
【0017】
また、本発明は、上記ロープを製造するためのロープの製造方法であって、前記Sストランド組と前記Zストランド組を組み合わすことで前記補助ロープを構成する補助ロープ作成工程を備え、前記補助ロープ作成工程では、並行する前記Sストランド組同士で含まれる前記第2ストランドの数が異なり、並行する前記Zストランド組同士で含まれる前記第2ストランドの数が異なるように、前記Sストランド組と前記Zストランド組とを組み合わせ、前記S側挿込部は、組み合わされる複数の前記Zストランド組同士で異なる前記第2ストランドの数分の空間として構成され、前記Z側挿込部は、組み合わされる複数の前記Sストランド組同士で異なる前記第2ストランドの数分の空間として構成される、ロープの製造方法であってもよい。
【0018】
前記構成によれば、前記S側挿込部は、組み合わされる前記Zストランド組同士で異なる前記第2ストランドの本数分の空間として構成され、前記Z側挿込部は、組み合わされる前記第2ストランド組同士で異なる前記第2ストランドの本数分の空間として構成されるため、前記補助ロープ作成工程を行えば、前記補助ロープを構成できると共に、前記S側挿込部と前記Z側挿込部を形成できる。
【0019】
また、本発明のロープ製造方法は、前記S側挿込部及び前記Z側挿込部のいずれか一方に前記第1対峙部を挿し込み、前記S側挿込部及び前記Z側挿込部のいずれか他方に前記第2対峙部を挿し込む挿込工程を備え、前記挿込工程では、前記補助ロープの長さ方向の一端側から他端側に向かうように、前記いずれか一方に前記第1対峙部を挿し込み、前記補助ロープの長さ方向の他端側から一端側に向かうように、前記いずれか他方に前記第2対峙部を挿し込むようにしてもよい。
【0020】
前記構成によれば、前記挿込工程では、例えば、前記補助ロープの長さ方向の一端側から他端側に向かうように、前記S側挿込部に前記第1対峙部を挿し込み、前記補助ロープの長さ方向の他端側から一端側に向かうように、前記Z側挿込部に前記第2対峙部を挿し込むため、前記補助ロープの長さ方向で、前記本体ロープを往復できる。
【0021】
また、本発明は、ストランドをS方向に組むことで構成されるSストランド組と、ストランドをZ方向に組むことで構成されるZストランド組と、をそれぞれ複数備え、前記Sストランド組及び前記Zストランド組を組み合わすことで構成される補助ロープであって、並行する前記Sストランド組同士の間には、複数の前記Zストランド組が組み合わされるS側結合部が形成され、並行する前記Zストランド組同士の間には、複数の前記Sストランド組が組み合わされるZ側結合部が形成され、前記S側結合部に組み合わされる複数の前記Zストランド組で、前記ストランドの数が異なり、前記Z側結合部に組み合わされる複数の前記Sストランド組で、前記ストランドの数が異なり、前記S側結合部のうち、複数の前記Zストランド組で異なる前記ストランドの数分の空間が、別体として構成される本体ロープを挿し込み可能なS側挿込部として構成され、前記Z側結合部のうち、複数の前記Sストランド組で異なる前記ストランドの数分の空間が、前記本体ロープを挿し込み可能なZ側挿込部として構成される、補助ロープである。
【発明の効果】
【0022】
以上、本発明によれば、前記本体ロープをストランドに分解することなく、また、本体ロープに分解したストランドを差し込む必要もなく、前記アイ部を構成することで、ロープの破断強度の低下を抑制し、ロープを破断しにくくできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る本体ロープと補助ロープとを示す図である。
図2図2は、補助ロープの詳細を示す図であり、(a)はS側結合部を示す図であり、(b)はZ側結合部を示す図である。
図3図3は、Zストランド組に沿うように、本体ロープをS側結合部に挿し込んだ状態のロープを示す図である。
図4図4は、図3に示す状態から、Sストランド組に沿うように、本体ロープをZ側結合部に挿し込んだ状態のロープを示す図である。
図5図5は、図4の状態のロープのうち、Vの箇所を拡大した状態を示す図である。
図6図6は、実施例1、比較例1~3における比較強度を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のロープの一実施形態について説明する。ロープは、例えば、船舶の係船時や水上浮体等の係留や漁場での荷揚げ時、人命救助の際に利用される。
【0025】
以下の説明に際して、ロープの長さ方向を「長さ方向」、ロープの太さや径の方向を「径方向」と称する。また、以下の説明において、「S方向」とは、長さ方向の一方側から他方側にかけて、長さ方向まわりを反時計回りに回りながら延びる方向であり、「Z方向」とは、長さ方向の一方側から他方側にかけて、長さ方向まわりを時計回りに回りながら延びる方向のことである。
【0026】
ロープ1は、図1に示すように、それぞれが別体として構成される、本体ロープ2と補助ロープ3とを組み合わせることで構成されている。本体ロープ2は、ロープ本体20と、該ロープ本体20を被覆する被覆部21とを備える。本実施形態の本体ロープ2は、ストランドである第1ストランド20aを3本撚り合わせることで構成される、3つ打ちロープである。ここで、「ストランド」とは、例えば、繊維を集合させて固めて構成され、或いは複数の素線(例えば、第1素線や第2素線)を撚り合わせる(具体的には、複数の原糸を撚り合わせて構成されたヤーンを複数撚り合わせる)ことで構成されるもののことである。本実施形態のロープ本体20は、ポリエステル(具体的には、PET樹脂)を材料として構成されたロープである。また、本実施形態の本体ロープ2は、直径が8mmである。なお、本実施形態では、図1に示すように、3本の第1ストランド20aをZ撚りに撚り合わせることで構成された本体ロープ2を用いるが、これに限らず、例えば、S撚りに撚り合わせることで構成された本体ロープ2であってもよいし、中芯の周囲に複数のストランドを配置して構成されるブレードロープでもよい。
【0027】
本実施形態の被覆部21は、ロープ本体20(具体的には、撚られた状態にある3本の第1ストランド20a)の長さ方向の全域を外周側から被覆している。そのため、本実施形態の被覆部21は、ロープ本体20を外側から保護し、本体ロープ2の耐損傷性の向上に寄与している。なお、本実施形態の被覆部21は、樹脂(具体的には、ポリウレタンエラストマー)を材料として構成されている。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の本体ロープ2は、長さ方向の端が先細り形状として構成されている。すなわち、本体ロープ2は、長さ方向の両端で、ロープ本体20と被覆部21とが斜めに切断されることによって、長さ方向の両端が先細り形状となっている。
【0029】
本体ロープ2は、図1に示すように長さ方向に延びる状態から、少なくとも長さ方向の端部Aを折り返すことが可能に構成されている。そのため、図3,4に示すように、本実施形態では、本体ロープ2の長さ方向の端部Aを折り返すことで、長さ方向の途中部分は、略U字状の折り返し部2αを構成する。また、本体ロープ2では、長さ方向の端部Aが折り返されることにより、折り返し部2αを挟んで、長さ方向の一端部側と他端部側とが対峙する。そのため、本体ロープ2は、長さ方向の端部Aが折り返された状態において、互いに対向する一対の対峙部2a(具体的には、第1対峙部2bと第2対峙部2c)を備える。なお、一対の対峙部2aは、長さ方向の端部Aを含む。
【0030】
第1対峙部2bは、本体ロープ2において、引張力を受ける側である。具体的に、第1対峙部2bのうち、例えば、長さ方向の端部A側が固定され、折り返し部2α側が引っ張られることで、本体ロープ2は使用される。第2対峙部2cでは、長さ方向の端部Aが固定されずに自由端を構成する。そのため、第2対峙部2cには、本体ロープ2の自由端が含まれる。
【0031】
補助ロープ3は、本体ロープ2のアイ部Iの形成を補助するためのものである。この補助ロープ3は、別体として構成される本体ロープ2と組み合わせて使用される。本実施形態では、補助ロープ3が本体ロープ2のアイ加工のために用いられる。図1、2(a)(b)に示すように、補助ロープ3は、ストランドである第2ストランド3aを複数備える。ここでは、第2ストランド3aとして、複数の素線をZ方向に撚ることで構成されるZ撚りストランド30と、複数の素線をS方向に撚ることで構成されるS撚りストランド31とを複数備える。また、補助ロープ3は、Z撚りストランド30とS撚りストランド31を、それぞれS方向、Z方向に組み合わせることで構成されている。本実施形態の補助ロープ3では、Z撚りストランド30同士、S撚りストランド31同士がそれぞれ並行するように、径方向でZ撚りストランド30とS撚りストランド31とが配置されている。具体的には、図2(a)に示すように、並んで配置される2本のZ撚りストランド30と1本のZ撚りストランド30とがS方向に組まれ、図2(b)に示すように、並んで配置される2本のS撚りストランド31と1本のS撚りストランド31とがZ方向に組まれ、本実施形態の補助ロープ3は構成されている。そのため、本実施形態の補助ロープ3は、6本の第2ストランド3aから構成されている。なお、以下では、説明の便宜のため、ロープ状に組んで配置する第2ストランド3aを、「ストランド組」と称し、そのストランド組をロープに組む方向(S方向、Z方向)も含めて、「Sストランド組」、「Zストランド組」と称する。そのため、並んで配置される2本のZ撚りストランド30はS方向に組まれるためSストランド組300と称し、前記Sストランド組300と並行する1本のZ撚りストランド30のことをSストランド組301と称する。また、並んで配置される2本のS撚りストランド31はZ方向に組まれるためZストランド組310と称し、前記Zストランド組310と並行する1本のS撚りストランド31のことをZストランド組311と称する。
【0032】
図1図2(a)に示すように、本実施形態の補助ロープ3では、Zストランド組311とZストランド組310とはZ方向に配置されるように構成されている。また、図2(b)に示すように、Sストランド組301とSストランド組300とはS方向に配置されている。即ち、本実施形態の補助ロープ3において、いずれかのストランド組の長さ方向の始端と終端との間には、径方向で並行するストランド組が配置される。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の補助ロープ3は、径方向や長さ方向の寸法が本体ロープ2とは異なって構成されている。具体的に、本実施形態の補助ロープ3を構成する第2ストランド3aは、直径が、本体ロープ2の直径と略同一であり、8mmである。ところで、本実施形態の補助ロープ3は、上述したように、本体ロープ2のアイ部Iの形成を補助するためのものである。そのため、補助ロープ3は、本体ロープ2よりも長さ寸法が短い。なお、本実施形態の補助ロープ3では、組み合わせたストランド同士がばらけることがないようにするべく、長さ方向の端部B,Bが粘着テープによる巻付、接着剤による接着、熱融着等によって固定されている。よって、補助ロープ3の長さ方向の端部Bには、固定された固定部B1が含まれている。
【0034】
本実施形態の補助ロープ3は、Sストランド組300,301同士、Zストランド組310,311同士を並行にし、Sストランド組300,301とZストランド組310,311とをそれぞれS方向、Z方向に組み合わされて構成されている。そのため、図2(a)に示すように、互いに並行するSストランド組300,301同士の間の空間は、S側結合部Cとして構成されている。また、図2(b)に示すように、Zストランド組310,311同士の間の空間は、Z側結合部Dとして構成されている。
【0035】
図2(a)に示すように、本実施形態のS側結合部Cには、Zストランド組310,311が挿通されている。また、図2(b)に示すように、Z側結合部Dには、Sストランド組300,301が挿通されている。
【0036】
ここで、上述したように、本実施形態の補助ロープ3では、Zストランド組310とZストランド組311とが並行する。そして、S側結合部Cに組み合わされたZストランド組310,311では、Zストランド組311を構成する第2ストランド3aがZストランド組310を構成する第2ストランド3aよりも1本少なく、第2ストランド3aの本数が異なる。よって、図2(a)に示すように、S撚りストランド31が挿通されたS側結合部Cには、並行するZストランド組310,311同士で、S撚りストランド31の本数の差の分だけ、空間が形成されている。この空間をS側挿込部C1と称する。すなわち、本実施形態のS側結合部Cは、S側挿込部C1を備える。
【0037】
また、本実施形態では、並行するSストランド組300,301においても、Z撚りストランド30の本数が異なる。そのため、図2(b)に示すように、Z側結合部Dは、並行するSストランド組300,301で異なるZ撚りストランド30の本数分の空間である、Z側挿込部D1を備える。
【0038】
続いて、本実施形態のロープ1の製造方法について説明する。本実施形態のロープ1を形成するためには、まず、事前の工程として、図1に示す、本体ロープ2と補助ロープ3を準備する。なお、事前の工程に含まれる、本体ロープ2の準備としては、例えば、3つの第1ストランド20aをZ撚りに撚ってロープ本体20を構成する、被覆部21でロープ本体20を外周側から被覆する、本体ロープ2の長さ方向の両端を斜めに切断する、といったことが含まれている。
【0039】
本実施形態の補助ロープ3の準備としては、補助ロープ3を作成する補助ロープ作成工程を行う。本実施形態の補助ロープ作成工程は、8つ打ち工程と、抜き工程とを備える。本実施形態の補助ロープ作成工程としては、まず、2本のZ撚りストランド30をS方向に組むことで構成されるSストランド組300,300と、2本のS撚りストランド31をZ方向に組むことで構成されるZストランド組310,310を備え、Sストランド組300,300とZストランド組310,310とをそれぞれS方向、Z方向に組み合わせて8つ打ちロープを構成する8つ打ち工程を行う。
【0040】
8つ打ち工程では、径方向で並行するSストランド組300,300の間に形成されたS側結合部Cに、径方向で並行するZストランド組310,310を組み合わせる。また、径方向で並行するZストランド組310,310の間に形成されたZ側結合部Dに、径方向で並行するSストランド組300,300を組み合わせる。本実施形態では、長さ方向の全域で、S側結合部CにZストランド組310,310を組み合わせ、Z側結合部DにSストランド組300,300を組み合わせる。そして、長さ方向の両端部B,Bを固定して固定部B1を形成する。このようにして8つ打ちロープを構成する。
【0041】
続いて、S側結合部CからS撚りストランド31を抜き、Z側結合部DからZ撚りストランド30を抜く抜き工程を行う。本実施形態の抜き工程では、前記8つ打ち工程で構成した8つ打ちロープのうち、1つのSストランド組300と、1つのZストランド組310のそれぞれから第2ストランド3aを同じ数(具体的には、1本ずつ)抜いて欠落させることで、Sストランド組301と、Zストランド組311とを構成する。そのため、本実施形態では、8つ打ちロープの長さ方向の全域に亘って第2ストランド3aを抜くことで、6本の第2ストランド3aで構成された補助ロープ3が構成される。ここで、前述したように、抜き工程では、S側結合部Cに組み合わされたZストランド組310からS撚りストランド31としての第2ストランド3aが抜かれ、Z側結合部Dに組み合わされたSストランド組300からZ撚りストランド30としての第2ストランド3aが抜かれる。よって、S側結合部CとZ側結合部Dそれぞれでは、第2ストランド3aを抜き取って欠落した箇所に、空間(具体的には、S側挿込部C1とZ側挿込部D1)が形成される。よって、抜き工程により、本実施形態の補助ロープ3は、6本の第2ストランド3aで8つ打ちロープと同様のストランド配置となっている。
【0042】
以上が事前の工程の説明である。続いて、本体ロープ2を補助ロープ3に挿し込む挿込工程を行う。本実施形態の挿込工程では、まず、本体ロープ2の自由端を含む長さ方向の端部AをS撚りストランド31に沿うように、S側挿込部C1に挿通させるZ方向挿込工程を行う。具体的に、Z方向挿込工程では、補助ロープ3の長さ方向の両端に設けられる固定部B1,B1の間で、本体ロープ2を、Z方向に組まれたZストランド組311に沿うように、S方向に組まれたSストランド組300,301の間に形成されているS側挿込部C1に挿通させる。
【0043】
本実施形態のZ方向挿込工程では、Z方向で、Zストランド組311に沿わせながら、先細りに構成された本体ロープ2の長さ方向の端部AをS側挿込部C1に挿通させる。これにより、本体ロープ2は、補助ロープ3の長さ方向の一方側から他方側に向けて進む。なお、本実施形態では、図3に示すように、本体ロープ2をZ方向で略3周分、Zストランド組311に沿わせる。そのため、補助ロープ3の長さ方向の他方側には、本体ロープ2が挿し込まれない余り部分Eが形成される。
【0044】
Z方向で、本体ロープ2をZストランド組311に沿わせて、Z方向挿込工程が完了したら、続いて、本体ロープ2を長さ方向で折り返す折り返し工程を行う。図3に示すように、この折り返し工程では、Zストランド組311に挿通され、補助ロープ3の長さ方向の一方側の端部B側から他方側の端部B側に移動した本体ロープ2の長さ方向の端部A側を、長さ方向で折り返す。これにより、本体ロープ2の長さ方向の途中部分は、略U字状の折り返し部2αを構成する。また、折り返された本体ロープ2は、長さ方向の端部Aを含む第2対峙部2cと、S側挿込部C1に挿し込まれる第1対峙部2bとを備える。そして、図3、4に示すように、長さ方向の一方側(図3,4の右側)に一対の対峙部2aが配置され、他方側(図3,4の左側)に折り返し部2αが配置される。
【0045】
続いて、本実施形態では、再び、挿込工程を行う。ここで、本実施形態の挿込工程としては、S方向挿込工程が行われる。このS方向挿込工程では、補助ロープ3の長さ方向における他方側の端部Bから一方側の端部Bに向けて、Sストランド組301に沿うように、Z側挿込部D1に本体ロープ2を挿し込む。ここで、本実施形態では、並行するSストランド組300,301において、Z撚りストランド30の本数が異なるため、Z側結合部Dは、Z側挿込部D1を備える。そのため、S方向挿込工程では、補助ロープ3の長さ方向の他方側から一方側に向けて、Z側挿込部D1に本体ロープ2の第2対峙部2cを挿し込んでいく。そして、本実施形態では、補助ロープ3の長さ方向の一方側に、本体ロープ2が挿し込まれない余り部分Eが残るようにするべく、S方向で略3周分、Sストランド組301に沿わせながら、第2対峙部2cを長さ方向の一方側に進める。
【0046】
S方向挿込工程では、Z方向でZストランド組311に沿う第1対峙部2bよりも径方向の内側(補助ロープ3の軸心側)に、第2対峙部2cが挿し込まれる。特に、本実施形態では、補助ロープ3の長さ方向に、本体ロープ2が挿し込まれない余り部分Eが残るようにするべく、S方向で略3周分、Sストランド組301に沿わせながら、第2対峙部2cを長さ方向の一方側に進める。そのため、図5に示すように、第2対峙部2cは、第1対峙部2bよりも径方向の内側(補助ロープ3の軸心側)で、Z側挿込部D1に挿し込まれたところで、S方向挿込工程は完了する。
【0047】
このように、本体ロープ2の一対の対峙部2aが、補助ロープ3のS側挿込部C1、Z側挿込部D1それぞれに挿し込まれることで、本体ロープ2と補助ロープ3が組み合わせられる。そのため、一対の対峙部2aが、補助ロープ3のS側挿込部C1、Z側挿込部D1それぞれに挿し込まれてしっかりと締め付けられることで、折り返し部2αは、環状のアイ部Iとして構成される。この環状のアイ部Iは、例えば、船舶係船用の場合、地上から鉛直方向に立設する係船柱又はビットを挿通して掛けられる。
【0048】
以上、本実施形態によれば、前記第1対峙部2bが前記S側挿込部C1に挿し込まれ、前記第2対峙部2cが前記Z側挿込部D1に挿し込まれることで、前記折り返し部2αが環状のアイ部Iを構成するため、前記本体ロープ2を3本の前記第1ストランド20aに分解することなく、また、前記本体ロープ2に分解したストランドを挿し込む必要もなく、前記アイ部Iを構成できるため、ロープ1の破断強度の低下を抑制できる。
【0049】
また、本実施形態によれば、前記S撚りストランド31と前記Z撚りストランド30が同じ数抜かれるため、前記補助ロープ3のバランスが崩れることを防止でき、形状を維持することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、前記被覆部21が撚られた状態にある第1ストランド20aの外周を被覆することで、前記被覆部21が前記第1ストランドと前記第2ストランドとの接触を遮り、前記第1ストランド20aと前記第2ストランド3aとが接触して互いに損傷することを防止できる。その結果、前記本体ロープ2の破断強度を強くできる。
【0051】
また、本実施形態では、8つ打ちロープから前記S撚りストランド31と前記Z撚りストランド30を一本ずつ抜き取ることで、前記S側結合部Cと前記Z側結合部Dのうち、前記S撚りストランド31と前記Z撚りストランド30それぞれが抜かれて欠落した空間が、前記S側挿込部C1と前記Z側挿込部D1を構成できる。
【0052】
また、本実施形態の前記挿込工程では、Z方向挿込工程(図3参照)で、前記補助ロープ3の長さ方向の一方側から他方側に向かうように、前記S側挿込部C1に前記第2対峙部2cを挿し込まれ、S方向挿込工程(図4参照)で、前記補助ロープ3の長さ方向の他方側から一方側に向かうように、前記Z側挿込部D1に前記第2対峙部2cを挿し込まれるため、前記補助ロープ3の長さ方向で、前記本体ロープ2が往復できる。
【0053】
また、本実施形態では、本体ロープ2の長さ方向の端が先細り形状として構成されているため、長さ方向の端をS側挿込部C1やZ側挿込部D1に挿し込む際に挿し込みやすい。
【0054】
また、本実施形態では、第2対峙部2cは、第1対峙部2bよりも補助ロープ3の径方向における内側(軸心側)に配置され、第1対峙部2bは、補助ロープ3の径方向における外側から第2対峙部2cを締め付けるため、第1対峙部2bが径方向の外側から第2対峙部2cを押さえることで、第2対峙部2cが補助ロープ3のZ側結合部Dから抜けることを防止できる。特に、ロープ1の使用時には、第1対峙部2bに引張力が加わるため、引張力で第1対峙部2bが第2対峙部2cを締め付けることができる。
【0055】
また、本実施形態では、本体ロープ2としてロープ本体20が被覆部21で被覆された、いわゆる被覆ロープを用いることができるため、被覆部21を剥がす必要がなく、被覆ロープをそのまま本体ロープ2として使用できる。ところで、従来、被覆ロープでアイ部Iを形成する際には、被覆部21を剥がす必要があった。そのため、被覆部21を剥がす手間や、被覆部21を剥がすことによって本体ロープ2を傷付けてしまわないように注意しなければならなかった。一方で、本実施形態のロープ1では、被覆部21を剥がすことなく、被覆ロープをそのまま本体ロープ2として使用できるため、作業工数を減らすことができると共に、本体ロープ2を傷付けてしまわないように注意するといったことが不要になる。
【0056】
また、本実施形態のロープ1では、補助ロープ3の長さ方向の端部Bに余り部分Eがあるため、本体ロープ2にかかる張力が高くなるにつれて全長に亘って締め付けられていくことで、本体ロープ2を補助ロープ3から抜けにくくできる。
【0057】
また、本実施形態では、補助ロープ3を構成する第2ストランドの直径は、本体ロープ2の直径と略同一であるため、抜き工程で第2ストランド3aを抜くことにより、第2ストランド3aが欠落した空間(具体的には、S側挿込部C1とZ側挿込部D1)に本体ロープ2を挿し込む際に、本体ロープ2をきっちりと挿し込むことができる。
【実施例0058】
以下、実施例1により本発明をさらに説明する。
【0059】
[実施例1]
S側挿込部とZ側挿込部をそれぞれ15箇所ずつ備える補助ロープに、8mmのポリエステルロープにポリウレタンから構成される被覆部で被覆した本体ロープをZ方向、S方向それぞれで15回挿通することにより、アイ部を構成した。
【0060】
[比較例1]
8mmのポリエステルロープにポリウレタンから構成される被覆部で被覆した本体ロープを、長さ方向で折り返して、複数のワイヤークリップで折り返した部分を締め付けることによりアイ部を構成した。
【0061】
[比較例2]
上記と同様に、8mmのポリエステルロープにポリウレタンから構成される被覆部で被覆した本体ロープを、長さ方向で折り返して、ロープキャッチャーで折り返した部分を締め付けることによりアイ部を構成した。
【0062】
[比較例3]
3本のストランドを撚り合わせたロープ本体と、該ロープ本体を被覆する被覆部とを備えるロープについて、ロープの長さ方向の一端と途中で被覆部を剥離してから、ロープの一端をループに折り返すと共に、ロープの一端を3本のストランドに分解し、ストランドそれぞれをロープの途中の組み目の中に挿し込むことで、アイ部を構成した。
【0063】
[試験方法]
100kN横型引張試験機の両端部に実施例、比較例1~3それぞれのロープを取付け、引張速度を毎分100mmで引っ張る引張強度比較試験を1回行い、実施例と比較例1~3の破断強度を測定した。具体的には、100kN横型引張試験機の駆動側では、ピン径をφ25とした治具にアイ部を取付け、100kN横型引張試験機のうち、固定されていて駆動しない側に、ドラムチャックを取り付けてロープを2周巻き付けた。
【0064】
図6は、上記の引張強度比較試験により測定した、実施例と比較例1~3の破断強度を示す表である。上記試験の結果から、実施例1が最も破断強度が強いことが認められた。
【0065】
実施例1のロープは、比較例3のロープよりも破断強度が強いことがわかる。すなわち、比較例3は、ロープのストランドの間がこじ開けられて分解したストランドを挿し込むので、ロープの挿し込まれた側のストランドの配置が乱れ、各ストランドの長さがピッチ(撚りの間隔)内で不ぞろいになり、各ストランドが均等に荷重を負担しなくなる。また、ロープのピッチが短くなってストランドの角度が大きくなり、強度低下が生じるのに対し、実施例1では本体ロープのストランドの配置が乱れずに均一性が保たれ、撚りの間隔も変化することなく、破断強度が下がることを抑制できる。
【0066】
また、ワイヤークリップやロープキャッチャーといったロープとは別の、ロープを締め付けるための部材を使った場合(比較例1、2)と比較しても、実施例1は強度が強いことがわかる。
【0067】
なお、本発明のロープ、その製造方法、補助ロープは、上記実施形態や実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。
【0068】
上記実施形態では、本体ロープ2はポリエステルを材料として構成されている場合について説明したが、これに限らず、例えば、ナイロンやポリエチレン、ポリプロピレンやビニロン、ワイヤーなどの金属や自然素材(具体的には、木綿)を材料として構成されていてもよい。
【0069】
上記実施形態では、本体ロープ2が、いわゆる被覆ロープである場合について説明したが、これに限らず、例えば、本体ロープ2はロープ本体20の外周が被覆部21によって被覆されていないものであってもよい。
【0070】
上記実施形態では、被覆部21はポリウレタンによって構成されている場合について説明したが、これに限らず、例えば、被覆部21は、塩化ビニール樹脂によって構成されていてもよい。また、例えば、被覆部21は、ロープ本体20の内部まで染み込んでおり、ロープ本体20から剥離できないように構成されていてもよい。
【0071】
上記実施形態では、被覆部21がロープ本体20の長さ方向の全域を被覆している場合について説明したが、これに限らず、例えば、本体ロープ2としては、ロープ本体20の長さ方向の端部が被覆部21で被覆されたものであってもよい。
【0072】
なお、上記実施形態では、補助ロープ作成工程が、8つ打ち工程と、抜き工程とを備え、8つ打ちロープから2本の第2ストランド3aを抜く場合について説明した。しかし、これに限らず、例えば、補助ロープ作成工程では、規定本数(例えば、8本)よりも少ない本数(例えば、合計6本)のストランドで、Z撚りストランド30とS撚りストランド31を形成してから、それぞれ異なる本数のZ撚りストランド30を含むSストランド組300,301とを構成し、また、それぞれ異なる本数のS撚りストランド31を含むZストランド組310,311を構成し、Sストランド組300,301を並行させ、Zストランド組310,311を並行させ、Sストランド組300,301とZストランド組310,311とを、それぞれS方向、Z方向に組み合わせて、補助ロープ3を構成するようにしてもよい。
【0073】
具体的に、図1に示す補助ロープ3を作成する場合、径方向で、2本のZ撚りストランド30からなるSストランド組300と、1本のZ撚りストランド30からなるSストランド組301とが並行し、2本のS撚りストランド31からなるZストランド組310と、1本のS撚りストランド31からなるZストランド組311とが並行するように、Sストランド組300,301とZストランド組310,311とを交互に組み合わせる。また、長さ方向の全域に亘って、S側結合部Cに、並行するZストランド組310,311が組み合わされ、Z側結合部Dに、並行するSストランド組300,301が組み合わされる。
【0074】
これにより、S側結合部Cには、組み合わされたZストランド組310とZストランド組311とで異なるS撚りストランド31の数(具体的には、1本)分の空間として、S側挿込部C1が形成される。また、Z側結合部Dには、組み合わされたSストランド組300とSストランド組301とで異なるZ撚りストランド30の数(具体的には、1本)分の空間として、Z側挿込部D1が形成される。そのため、S側挿込部C1は、S側結合部Cから、S撚りストランド31が欠落することで構成され、Z側挿込部D1は、Z側結合部Dから、Z撚りストランド30が欠落することで構成されている。
【0075】
よって、前記S側挿込部C1は、組み合わされるZストランド組310,311同士で異なる前記S撚りストランド31の本数分の空間として形成され、前記Z側挿込部D1は、組み合わされるSストランド組300,301同士で異なる前記Z撚りストランド30の本数分の空間として構成されるため、前記補助ロープ作成工程を行えば、前記補助ロープ3を構成できると共に、前記S側挿込部C1と前記Z側挿込部D1を形成できる。
【0076】
上記実施形態では、8つ打ちの補助ロープ3について説明したが、これに限らず、例えば、4つ打ちロープや、16打ちのロープ等、種々の打ち数のロープであってもよい。すなわち、S側結合部CとZ側結合部Dとを備えるように構成された補助ロープ3であればよい。
【0077】
上記実施形態では、Z方向挿込工程の後、折り返し工程を経てから、S方向挿込工程を行った。これに限らず、例えば、あらかじめ折り返し工程を行い、本体ロープ2を折り返すことで、折り返し部2αと一対の対峙部2aを構成し、その後、挿込工程を行うようにしてもよい。
【0078】
上記実施形態では、Z方向挿込工程の後にS方向挿込工程を行うことで、第2対峙部2cが第1対峙部2bよりも径方向の内側(補助ロープ3の軸心側)に配置される場合について説明したが、これに限らず、例えば、第2対峙部2cが第1対峙部2bよりも径方向の外側に配置されるようにするべく、先にS方向挿込工程に行ってもよい。
【0079】
上記実施形態では、本体ロープ2(具体的には、第1対峙部2b)を、補助ロープ3の組む方向(Z方向)に略3周分、Zストランド組311に沿わせ、第2対峙部2cを補助ロープ3の組む方向(S方向)に略3周分、Sストランド組301に沿わせて構成されていたが、これに限らず、例えば、第1対峙部2b、第2対峙部2cそれぞれを、3周未満、或いは3周超過でZストランド組311、Sストランド組301に沿わせるようにしてもよい。なお、この場合、第1対峙部2b、第2対峙部2cそれぞれを沿わせる周数だけ、第1対峙部2b、第2対峙部2cのそれぞれは、S側挿込部C1、Z側挿込部D1それぞれに挿し込まれることが考えられる。
【0080】
上記実施形態では、図4に示すように、ロープ1の長さ方向における片側でアイ部Iを構成する場合について説明したが、例えば、ロープの両端でアイ部Iを構成するようにしてもよい。この場合、2本の補助ロープ3を用いると共に、本体ロープ2は長さ方向の両端が折り返されるといったことが考えられる。
【0081】
上記実施形態では、抜き工程において、8つ打ちロープの長さ方向の全域に亘って、第2ストランド3aを抜くことを説明した。しかし、これに限らず、例えば、長さ方向の端部B,Bで、第2ストランド3a,3aを切断して抜かないようにし、その部分を余り部分Eにしてもよい。すなわち、補助ロープ3の長さ方向の端部B,Bでは、8つ打ちに構成され、補助ロープ3のうち、長さ方向の端部B,Bを除く中間部分は、6つ打ちに構成されていてもよい。これにより補助ロープ3の長さ方向の端部B,Bにおいて、補助ロープ3がばらけることをより確実に防止できる。
【0082】
上記実施形態では、第2ストランド3aの直径が、本体ロープ2の直径と略同一である場合について説明したが、これに限らず、例えば、第2ストランド3aの直径が、本体ロープ2の直径よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。ここで、第2ストランド3aの直径が、本体ロープ2の直径よりも小さいと、補助ロープ3の直径を細くできるため、ロープの美観上好ましい。
【0083】
上記実施形態では、6本のストランドを8つ打ちロープとする補助ロープ作成工程や、8つ打ちロープから2本のストランドを抜く抜き工程を行うことで、本体ロープ2を挿し込む空間を形成していたが、これに限らず、例えば、複数のZ撚りストランド30と複数のS撚りストランド31とを交互に組み合わせて8つ打ちロープを構成する際に、各ストランド同士に本体ロープ2を挿し込むための空間が形成される程度に緩く編むようにしてもよい。この場合、緩く編むことで形成された前記空間に、本体ロープ2を挿し込み、アイ部Iを形成してもよい。
【0084】
上記実施形態では、Sストランド組300,301を構成する第2ストランド3aが、複数の素線をZ方向に撚ることで構成されるZ撚りストランド30であり、Zストランド組310,311を構成する第2ストランド3aが、複数の素線をS方向に撚ることで構成されるS撚りストランド31であるとしていたが、これに限らず、例えば、Sストランド組300,301を構成する第2ストランド3aをS撚りストランド31、Zストランド組310,311を構成する第2ストランド3aをZ撚りストランド30としてもよい。ストランドを構成する際の撚り方向(S方向、Z方向)とロープの組み方向(S方向、Z方向)が同じものは、追撚りを加えていきロープを硬くすることで、耐摩耗性を重視することができる。また、Sストランド組300,301、Zストランド組310,311を構成する第2ストランド3aを同じ撚り方向のストランド3aとしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1:ロープ、2:本体ロープ、2a:一対の対峙部、2b:第1対峙部、2c:第2対峙部、2α:折り返し部、20:ロープ本体、20a:第1ストランド、21:被覆部、3:補助ロープ、3a:第2ストランド、30:Z撚りストランド、300:Sストランド組、31:S撚りストランド、310:Zストランド組、A:長さ方向の端部、B:長さ方向の端部、B1:固定部、C:S側結合部、C1:S側挿込部、D:Z側結合部、D1:Z側挿込部、E:余り部分、I:アイ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6