(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136555
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】天井クレーン監視システム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
B66C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042289
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】師岡 清和
(72)【発明者】
【氏名】松本 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】稲澤 藍
(72)【発明者】
【氏名】阪本 湧哉
(57)【要約】
【課題】天井クレーンを遠隔操作するのに好適な映像をオペレータに提供できるようにする。
【解決手段】軌条4に沿って走行する走行体2と、走行体2に沿って、走行体2の走行方向と直交する方向に走行する横行台車3と、横行台車3に搭載された巻上装置5とを備えた天井クレーン1を監視するための天井クレーン監視システムであって、走行体2の一方の端部に、俯瞰する姿勢で撮影を行うパノラマカメラ6が設置される。パノラマカメラ6で撮影した映像は、遠隔操作室に設置されたワイドディスプレイ21に表示される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌条に沿って走行する走行体と、前記走行体に沿って、前記走行体の走行方向と直交する方向に走行する横行台車と、前記横行台車に搭載された巻上装置とを備えた天井クレーンを監視するための天井クレーン監視システムであって、
前記走行体の一方の端部に、俯瞰する姿勢で撮影を行うパノラマカメラが設置されることを特徴とする天井クレーン監視システム。
【請求項2】
前記パノラマカメラで撮影する映像には、前記天井クレーンの下方の置き場と、前記走行体の他方の端部の端面位置における、前記横行台車の走行方向である横行方向に対して垂直な仮想垂直面とが写ることを特徴とする請求項1に記載の天井クレーン監視システム。
【請求項3】
前記パノラマカメラで撮影する映像には、前記走行方向の両エンド位置における、前記走行方向に対して垂直な仮想垂直面が写ることを特徴とする請求項2に記載の天井クレーン監視システム。
【請求項4】
前記パノラマカメラは、180°以上の水平視野角を有するものであり、前記横行台車の走行方向である横行方向を水平視野角の中心とするように配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の天井クレーン監視システム。
【請求項5】
遠隔操作室に、前記パノラマカメラで撮影した映像を表示するワイドディスプレイが設置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の天井クレーン監視システム。
【請求項6】
前記走行体の走行位置を計測する走行位置計測手段と、
前記横行台車の横行位置を計測する横行位置計測手段と、
前記巻上装置による吊具の高さ位置を計測する高さ位置計測手段と、
前記走行位置計測手段で計測した前記走行体の走行位置と、前記横行位置計測手段で計測した前記横行台車の横行位置と、前記高さ位置計測手段で計測した前記吊具の高さ位置とを、監視用画像を用いて、遠隔操作室に設置されたディスプレイに表示するように制御する表示制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の天井クレーン監視システム。
【請求項7】
前記表示制御手段は、
前記監視用画像に、前記走行体を表す第1の表示パーツ、及び、前記横行台車を表す第2の表示パーツを表示し、
前記走行位置計測手段で計測した前記走行体の走行位置と、前記横行位置計測手段で計測した前記横行台車の横行位置とに基づいて、前記監視用画像上で第1の表示パーツ及び前記第2の表示パーツを移動させることを特徴とする請求項6に記載の天井クレーン監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井クレーン監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
資材の置き場等に対して、天井クレーンが設置される。天井クレーンの遠隔操作の実用化のためには、遠隔操作室から天井クレーン及び天井クレーンの周辺を監視できるようにする天井クレーン監視システムを構築することが求められる。
特許文献1には、天井クレーン操作装置であって、天井クレーンの作業状態を写すビデオカメラを設ける構成が開示されている。
特許文献2には、コンテナクレーン・トランスファクレーン・アンローダ等の運転方法であって、トロリーに取付けたカメラで置荷及び吊荷の姿を撮影して、その映像を地上に設けたディスプレイ装置に送信し、該ディスプレイ装置に表示された映像に基づいて運転者は地上又は地上近くに設けた操作盤から置荷の吊り上げ操作または吊荷の着床操作を行うようにすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-274779号公報
【特許文献2】特開平5-246683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、地上に設置したカメラで天井クレーンを撮影しているが、天井クレーンの遠隔操作の実用化に際しては、地上部への人の立入、資材や設備の状態を把握する必要があり、天井クレーン上(機上)の運転室目線での映像が必要である。
また、特許文献2では、トロリーに取付けた3台のカメラで置荷及び吊荷の姿を撮影しているが、これを見るオペレータは、複数の異なる方向から撮影された映像を頭の中で組み合わせる必要があり、オペレータへの負担が大きくなり、咄嗟の判断が鈍るおそれもある。
【0005】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、天井クレーンを遠隔操作するのに好適な映像をオペレータに提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の天井クレーン監視システムは、軌条に沿って走行する走行体と、前記走行体に沿って、前記走行体の走行方向と直交する方向に走行する横行台車と、前記横行台車に搭載された巻上装置とを備えた天井クレーンを監視するための天井クレーン監視システムであって、前記走行体の一方の端部に、俯瞰する姿勢で撮影を行うパノラマカメラが設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、天井クレーンを遠隔操作するのに好適な映像をオペレータに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】パノラマカメラで撮影する映像を模式的に示す図である。
【
図5】天井クレーン監視システムのネットワーク構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1及び
図2に、天井クレーン1の概略構成を示す。
図1は、天井クレーン1を模式的に示す平面図、
図2は、天井クレーン1を模式的に示す斜視図である。
天井クレーン1は、建屋内の置き場7に対して設置され、置き場7に置かれた資材を吊り下げて搬送する。
天井クレーン1は、建屋に設置された一対の軌条(レール)4と、軌条4に沿って走行する走行体2と、走行体2に沿って走行する横行台車3と、横行台車3に搭載された巻上装置5とを備える。横行台車3は、走行体2の走行方向と直交する方向に走行する。巻上装置5は、フック等の吊具5aを巻上げたり、巻下げたりして、置き場7に置かれた吊荷(資材)を吊り下げる。本願においては、走行方向(軌条4の延伸方向)をx方向、横行台車3の走行方向である横行方向をy方向、高さ方向をz方向と定義する。
【0010】
図3に、走行体2の構成例を示す。
図3(a)は走行体2の正面図(横行台車3は省略する)、(b)は走行体2の平面図である。
走行体2は、クレーンガーダ等と呼ばれるものであり、y方向に延伸する長尺材で、その両端部のサドル2cが軌条4で支持される。
図3(a)に示すように、走行体2の一方の端部2aの下部に、パノラマカメラ6が設置される。パノラマカメラ6は、矢印Aに示すように、撮影方向を例えば機上の運転室から人が吊荷を見下ろす目線方向のように下向きにするように配置され、俯瞰する姿勢で撮影を行う。パノラマカメラ6は、180°の水平視野角を有するものであり、走行体2の一方の端部2aにおいて、横行方向(y方向)を水平視野角の中心とするように配置される。
【0011】
ここで、
図4を参照して、パノラマカメラ6で撮影する映像を説明する。
図4は、パノラマカメラ6で撮影する映像を模式的に示す図である。
図4に示すように、パノラマカメラ6で撮影する映像には、天井クレーン1の下方の置き場(建屋の床)7が写る。また、パノラマカメラ6で撮影する映像には、走行体2の他方の端部2b側の壁8及び軌条4が写る。また、パノラマカメラ6で撮影する映像には、走行方向(x方向)の両方の壁9、10が写る。また、パノラマカメラ6で撮影する映像には、その奥方向に向かって延伸するかたちで、パノラマカメラ6が設置された走行体2が写る。走行体2の走行位置が変わると、パノラマカメラ6で撮影する映像も変化するが、ここで述べたものが写ることに変わりはない。
【0012】
なお、パノラマカメラ6に加えて、走行体2や横行台車3、或いは地上に、他のカメラを設置してもよい。本実施形態では、
図3(b)に示すように、横行台車3にカメラ11が設置され、吊具5a及び吊荷の様子を撮影するようにしている。
【0013】
また、
図1、
図3(b)に示すように、走行体2にはレーザ距離計12が設置され、軌条4の端部付近にはレーザ距離計12に対向するように反射板13が設置される。これらレーザ距離計12及び反射板13により、走行体2の走行位置を計測することができる。本実施形態では、レーザ距離計12及び反射板13が、本発明でいう走行位置計測手段として機能する。なお、レーザ距離計以外にも、例えばIRケーブルやICタグ等を用いて、走行位置計測手段を構成するようにしてもよい。
【0014】
また、
図3(b)に示すように、走行体2にはレーザ距離計14が設置され、横行台車3にはレーザ距離計14に対向するように反射板15が設置される。これらレーザ距離計14及び反射板15により、横行台車3の横行位置を計測することができる。本実施形態では、レーザ距離計14及び反射板15が、本発明でいう横行位置計測手段として機能する。なお、レーザ距離計以外にも、例えばIRケーブルやICタグ等を用いて、横行位置計測手段を構成するようにしてもよい。
【0015】
また、
図3(b)に示すように、巻上装置5には、吊具5aの巻上げや巻下げ時に相対回転する部位の一方に回転検出器16が、他方に反射マーク17が設置される。これら回転検出器16及び反射マーク17により、巻上装置5による吊具5aの高さ位置を計測することができる。本実施形態では、回転検出器16及び反射マーク17が、本発明でいう高さ位置計測手段として機能する。なお、回転検出器以外にも、例えばパルスジェネレータ等を用いて、高さ位置計測手段を構成するようにしてもよい。
【0016】
図5に、天井クレーン監視システムのネットワーク構成例を示す。
上述したように、天井クレーン1には、パノラマカメラ6が設置される。パノラマカメラ6は、ハブ29及び通信装置30を介して、遠隔操作室側の構成要素と無線通信を行う。
また、天井クレーン1には、カメラ11が設置される。カメラ11は、エンコーダ20、ハブ29及び通信装置30を介して、遠隔操作室側の構成要素と無線通信を行う。
また、天井クレーン1には、走行位置計測手段として機能するレーザ距離計12及び反射板13、横行位置計測手段として機能するレーザ距離計14及び反射板15、高さ位置計測手段として機能する回転検出器16及び反射マーク17が設置される。レーザ距離計12、レーザ距離計14、回転検出器16は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)18、ハブ29及び通信装置30を介して、遠隔操作室側の構成要素と無線通信を行う。
【0017】
一方、遠隔操作室には、パノラマカメラ6で撮影した映像を表示するディスプレイ21が設置される。パノラマカメラ6で撮影した映像を表示するディスプレイ21としては、ウルトラワイドモニタ等と呼ばれるワイドディスプレイが用いられる。ディスプレイ21は、デコーダ26、ハブ31及び通信装置32を介して、天井クレーン1側の構成要素と無線通信を行う。
また、遠隔操作室には、カメラ11で撮影した映像を表示するディスプレイ22が設置される。ディスプレイ22は、デコーダ25、ハブ31及び通信装置32を介して、天井クレーン1側の構成要素と無線通信を行う。
また、遠隔操作室には、走行体2の走行位置、横行台車3の横行位置、吊具5aの高さ位置等の情報を表示するディスプレイ23が設置される。ディスプレイ23は、コンピュータ27、ハブ31及び通信装置32を介して、天井クレーン1側の構成要素と無線通信を行う。
また、遠隔操作室には、遠隔操作のためのペンダントスイッチ等の操作器具24が設置される。操作器具24は、PLC28、ハブ31及び通信装置32を介して、天井クレーン1側の構成要素と無線通信を行う。現場である天井クレーン1側には、既設のペンダントスイッチ等の操作器具(不図示)があり、例えばPLCヘルシーチェックによる無線切断時等は、クレーン動作を停止し、現場での既設の操作器具による操作に自動で切り替えるようにする。
【0018】
なお、
図5に示すネットワーク構成は一例であり、図示したもの以外のカメラが設置されてもよい。複数台のカメラを使用する場合、遠隔操作室では、カメラ毎にディスプレイを設置するのが好ましい。
また、天井クレーン1にスピーカを設置し、遠隔操作室に設置されたマイクから拡声放送を行えるようにしてもよい。これにより、現場作業員への注意喚起等を行うことが可能になる。また、天井クレーン1に集音マイクを設置し、遠隔操作室に設置されたスピーカで再生するようにしてもよい。これにより、遠隔操作室で現場の雰囲気を確認することが可能になる。
【0019】
ここで、
図6を参照して、ディスプレイ23の表示例を説明する。
図6は、ディスプレイ23に表示する監視用画像60の例を示す図である。
図6に示すように、ディスプレイ23には、表示制御手段として機能するコンピュータ27の制御下で監視用画像60が表示される。
監視用画像60は、その中央部に、走行位置・横行位置を表示する表示領域61が配置される。また、表示領域61の左側に、主回路状況を表示する表示領域62が配置され、右側に、高さ位置を表示する表示領域63が配置される。
【0020】
主幹電源状態表示部64は、主幹電源のON/OFF状態を表示する。主幹電源状態表示部64は、例えばONの場合に点灯し、OFFの場合に消灯する。
操作場所状態表示部65は、操作場所切替スイッチの状態を表示する。操作場所状態表示部65は、例えば操作場所が地上の場合に点灯し、機上の場合に消灯する。
PLC通信状態表示部66は、地上と機上PLC間の通信状態を表示する。PLC通信状態表示部66は、例えば通信状態が正常に消灯し、異常の場合に点灯する。
【0021】
表示領域61において、平面視した建屋のレイアウトを模式的に表したマップ67が表示され、マップ67上に、走行体2を表す第1の表示パーツ68と、横行台車3を表す第2の表示パーツ69とが表示される。監視用画像60の上下方向が走行方向(x方向)に対応し、左右方向が横行方向(y方向)に対応する。レーザ距離計12、14及び反射板13、15により計測した走行体2の走行位置及び横行台車3の横行位置に基づいて、マップ67上で表示パーツ68、69が移動する。このように走行体2の走行位置及び横行台車3の横行位置をグラフィカルに表示する。
【0022】
マップ67の左隣には、走行位置表示部70が配置される。走行位置表示部70では、数値及びインジケータ表示により、走行体2の走行位置を表示する。走行体2の走行位置は、例えば走行方向のいずれか一方のエンド位置をスタート地点とした距離で表されるようにすればよい。走行体2の走行位置は、レーザ距離計12及び反射板13により計測され、その計測値が走行位置表示部70に反映される。
マップ67の下方には、横行位置表示部71が配置される。横行位置表示部71では、数値及びインジケータ表示により、横行台車3の横行位置を表示する。横行台車3の横行位置は、例えば横行方向のいずれか一方のエンド位置をスタート地点とした距離で表されるようにすればよい。横行台車3の走行位置は、レーザ距離計14及び反射板15により計測され、その計測値が横行位置表示部71に反映される。
なお、点線は、走行位置表示部70及び横行位置表示部71それぞれを構成する表示領域を示すための仮想線であり、監視用画像60に表示されるものではない。
【0023】
表示領域62において、主回路電流値表示部72では、数値及びメータ表示により、天井クレーン1の主回路電源の電流値を表示する。主回路電源の電流値は、不図示の電流計により計測され、その計測値が主回路電流値表示部72に反映される。
また、主回路電圧値表示部73では、数値及びメータ表示により、天井クレーン1の主回路電源の電圧値を表示する。主回路電源の電圧値は、不図示の電圧計により計測され、その計測値が主回路電圧値表示部73に反映される。
なお、点線は、主回路電流値表示部72及び主回路電圧値表示部73それぞれを構成する表示領域を示すための仮想線であり、監視用画像60に表示されるものではない。
【0024】
表示領域63において、フック高さ表示部74では、数値及びインジケータ表示により、吊具5aの高さ位置を表示する。巻上装置5よる吊具5aの高さ位置は、回転検出器16及び反射マーク17により計測され、その計測値がフック高さ表示部74に反映される。
なお、点線は、フック高さ表示部74を構成する表示領域を示すための仮想線であり、監視用画像60に表示されるものではない。
また、吊荷高さ表示部75では、数値表示により、吊荷の底辺の地上からの高さを表示する。吊荷の玉掛後、地切り確認完了時にボタン76が押されると、吊荷高さ表示部75の表示がセットされる。吊荷高さ表示部75に表示する数値は、例えばセンサ類に基づく数値としてよいし、ユーザが入力する数値としてもよい。
また、吊荷荷重表示部77では、数値表示により、吊荷荷重を表示する。吊荷荷重表示部77に表示する数値は、例えばセンサ類に基づく数値としてよいし、ユーザが入力する数値としてもよい。
【0025】
このように、天井クレーン1の状態を数値化して表示することにより、オペレータは、天井クレーン1の状態を正確に把握することができ、インチング等の精密な遠隔操作が可能となる。しかも、マップ67及び表示パーツ68、69を用いて、走行体2の走行位置、横行台車3の横行位置をグラフィカルに表示することにより、オペレータは、天井クレーン1の状態を視覚的、直感的に把握することができる。
【0026】
以上のようにした天井クレーン監視システムでは、天井クレーン1を遠隔操作するのに好適な映像をオペレータに提供することができる。
図4に示すように、パノラマカメラ6で撮影する映像は、機上の運転室目線での映像と同等であり、これを遠隔操作室にいるオペレータに提供することで、オペレータは、機上から肉眼で見るのに近いかたちで、天井クレーン1の状態、地上部への人の立入、資材や設備の状態を把握し、天井クレーン1及び天井クレーン1の周辺を監視することができる。
【0027】
しかも、パノラマカメラ6で撮影した映像を一台のワイドディスプレイ21に表示することで、シームレスな映像表示が可能である。例えばパノラマカメラ6で撮影した映像を複数台のディスプレイに分割して表示するのでは、ディスプレイ間の映像の重複箇所等の関係性を把握する必要があり、オペレータの思考処理に時間を要するおそれがある。それに対して、パノラマカメラ6で撮影した映像を一台のワイドディスプレイ21に表示することで、ディスプレイ間の映像の重複箇所等の関係性を把握する必要がなく、オペレータの負担を軽減させることができる。
【0028】
このように、遠隔操作室からも広範囲に見渡せることができ、天井クレーン1の状態、地上部への人の立入、資材や設備の状態について的確な状況判断ができ、機上の運転室からの操作と同等の操作性を確保して、遠隔操作の実用化が可能となる。
【0029】
なお、パノラマカメラ6としては、180°以上の水平視野角を有するものが好ましいが、180°未満の水平視野角を有するものでもよい。この場合、パノラマカメラ6で撮影する映像には、走行方向(x方向)の壁9、10の一方のみが写る、或いはいずれも写らないこともありえるが、それで足りるのであれば、180°未満の水平視野角を有するパノラマカメラ6でもよい。
【0030】
また、
図6に示すように、レーザ距離計12、14及び反射板13、15により計測した走行体2の走行位置の数値や横行台車3の横行位置の数値、回転検出器16及び反射マーク17により計測した吊具5aの高さ位置の数値を、例えばワイドディスプレイ21において、パノラマカメラ6で撮影した映像に重畳表示するかたちで表示するようにしてもよい。
【0031】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0032】
実施形態では、天井クレーン1が屋内(建屋内)に設置される例を述べたが、天井クレーン1が屋外に設置される場合にも本発明は適用可能である。パノラマカメラ6で撮影する映像には、走行体2の他方の端部2b側の壁8が写ると述べたが、天井クレーン1が屋外に設置される場合、壁は存在しない。そこで、次のようにパノラマカメラ6で撮影する映像を設定すればよい。すなわち、天井クレーン1が屋内及び屋外いずれに設置される場合でも、パノラマカメラ6で撮影する映像に、天井クレーン1の下方の置き場(屋内であれば床、屋外であれば地面)と、走行体2の他方の端部2bの端面位置における、横行方向(y方向)に対して垂直な仮想垂直面33(
図3(a)に示すxz平面33)とが写るように設定する。
【0033】
同様に、パノラマカメラ6で撮影する映像には、走行方向(x方向)の両方の壁9、10が写ると述べたが、天井クレーン1が屋外に設置される場合、壁は存在しない。そこで、次のようにパノラマカメラ6で撮影する映像を設定するのがよい。すなわち、天井クレーン1が屋内及び屋外いずれに設置される場合でも、パノラマカメラ6で撮影する映像に、走行方向の両エンド位置における、走行方向(x方向)に対して垂直な仮想垂直面34(
図1に示すyz平面34)が写るようにするがのよい。
【符号の説明】
【0034】
1:天井クレーン、2:走行体、3:横行台車、4:軌条、5:巻上装置、6:パノラマカメラ、7:置き場、12、14:レーザ距離計、13、15:反射板、16:回転検出器、17:反射マーク、21:ワイドディスプレイ、23:ディスプレイ、27:コンピュータ、60:監視用画像、68:第1の表示パーツ、69:第2の表示パーツ