(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136559
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】環状配電線の配線方法、及び環状配電線
(51)【国際特許分類】
H02J 3/26 20060101AFI20230922BHJP
H02H 3/28 20060101ALI20230922BHJP
H02B 13/035 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
H02J3/26
H02H3/28 R
H02B13/035 311A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042297
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 真稔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和文
【テーマコード(参考)】
5G017
5G066
【Fターム(参考)】
5G017HH06
5G066AB01
5G066GA02
5G066HA08
(57)【要約】
【課題】環状配電線に発生する循環電流を抑制する。
【解決手段】異なる複数の相の電線から構成され各電線が整列してなる環状の配電線の配線方法であって、環状の配電線の第1の線路部分における、複数の相の電線の整列順と、第1の線路部分と対向する側の第2の線路部分における、複数の相の電線の整列順とを逆にする、ことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の相の電線から構成され各前記電線が整列してなる環状の配電線の配線方法であって、
前記環状の配電線の第1の線路部分における、前記複数の相の電線の整列順と、前記第1の線路部分と対向する側の第2の線路部分における、前記複数の相の電線の整列順とを逆にする、
ことを特徴とする、環状配電線の配線方法。
【請求項2】
前記環状の配電線に対して電流が流入する側の、前記配電線の線路部分における前記複数の相の電線の整列順と、前記環状の配電線を流れた電流が流出する側の、前記配電線の線路部分における前記複数の相の電線の整列順とを逆にする、
ことを特徴とする、請求項1に記載の環状配電線の配線方法。
【請求項3】
異なる複数の相の電線から構成され各前記電線が整列してなる環状の配電線であって、
前記環状の配電線の第1の線路部分における、前記複数の相の電線の整列順と、前記第1の線路部分と対向する側の第2の線路部分における、前記複数の相の電線の整列順とが逆である、
ことを特徴とする、環状配電線。
【請求項4】
前記環状の配電線に対して電流が流入する側の、前記配電線の線路部分における前記複数の相の電線の整列順と、前記環状の配電線を流れた電流が流出する側の、前記配電線の線路部分における前記複数の相の電線の整列順とが逆である、
ことを特徴とする、請求項3に記載の環状配電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状配電線の配線方法、及び環状配電線に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所に設けられる母線(例えば、三相3線の配電線)の構成には、様々な種類のものが提案されている。このうち環状母線は、地絡事故等のリスクに対する対応力に優れ信頼性の高い母線の構成として知られている。
【0003】
変電所の環状母線では、変圧器から流入した電流が当該環状母線を流れて送電線へと送電されるが、この環状母線を流れる電流の経路は、環状母線の回路構成、変圧器又は送電線の構成、又は電流若しくは電圧の変化によって変わることになる。これに伴い、環状母線を流れる電流のうちで、変圧器から送電線へと流れずに環状母線を循環する電流(循環電流、又は零相循環電流)が生じることがある。循環電流が発生すると、循環母線内にある保護リレーが誤動作して遮断器のトリップに至る可能性がある。したがって、循環電流がなるべく生じないようにすることが変電所のオペレーションにおいて重要である。
【0004】
循環電流は、電流が循環する回路において発生する可能性がある現象である。この点、開閉器における循環電流を抑制する方法については、例えば特許文献1に、補助CTの2次側を交差接続した交差接続線が入力端子に接続され、かつ複数のCTの2次側を直列接続した横流補償線が出力端子に接続された横流検出補償器を備え、この横流検出補償器は、母線、配電線並びに開閉器内を還流する横流を検出すると、CTの2次側に現れる前記横流に対応する電流成分を打ち消すように、補償電流を前記横流補償線へ供給する電力系統の横流補償制御システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、変電所の循環母線において発生する循環電流に対しては有効な手段がないのが現状であった。
【0007】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、環状配電線に発生する循環電流を抑制することが可能な環状配電線の配線方法、及び環状配電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するための本発明の一つは、異なる複数の相の電線から構成され各前記電線が整列してなる環状の配電線の配線方法であって、前記環状の配電線の第1の線路部分における、前記複数の相の電線の整列順と、前記第1の線路部分と対向する側の第2の線路部分における、前記複数の相の電線の整列順とを逆にする、ことを特徴とする。
【0009】
本発明者らは、循環母線の線路部分における各相の電線の整列順と、上記線路部分と対向する側の線路部分における各相の電線の整列順とを逆にすることで、循環母線に発生する循環電流を抑制することができることを発見した。このように、本発明の環状の配電線の配線方法によれば、環状配電線に発生する循環電流を抑制することができる。
【0010】
また、前述の目的を達成するための本発明の一つは、環状の配電線の配線方法であって、前記環状の配電線に対して電流が流入する側の、前記配電線の線路部分における前記複数の相の電線の整列順と、前記環状の配電線を流れた電流が流出する側の、前記配電線の線路部分における前記複数の相の電線の整列順とを逆にする、ことを特徴とする。
【0011】
このように、環状配電線に対して電流が流入する側の線路部分における各相の電線の整列順と、環状配電線を流れた電流が流出する側の線路部分における各相の電線の整列順とを逆にすることで、循環母線に発生する循環電流をより確実に抑制することができる。
【0012】
また、前述の目的を達成するための本発明の一つは、異なる複数の相の電線から構成され各前記電線が整列してなる環状の配電線であって、前記環状の配電線の第1の線路部分における、前記複数の相の電線の整列順と、前記第1の線路部分と対向する側の第2の線路部分における、前記複数の相の電線の整列順とが逆である、ことを特徴とする。
【0013】
また、前述の目的を達成するための本発明の一つは、環状の配電線であって、前記環状の配電線に対して電流が流入する側の、前記配電線の線路部分における前記複数の相の電線の整列順と、前記環状の配電線を流れた電流が流出する側の、前記配電線の線路部分における前記複数の相の電線の整列順とが逆である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、環状配電線に発生する循環電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態における環状配電線である循環母線の構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態の循環母線の配線構成の一例を示した図である。
【
図3】
図2に示した循環母線を側方(第1線路部の側)から見た図である。
【
図4】本実施例においてXTAPに対して設定した循環母線の回路図である。
【
図5】従来ケース及び発明ケースにおける、各開閉器における電流の実効値及び位相の値を示した図である。
【
図6】従来ケース及び発明ケースのそれぞれにおいて開閉器に発生した循環電流(零相電流)の値を示した図である。
【
図7】従来ケース及び発明ケースのそれぞれにおいて開閉器に発生した循環電流(零相電流)の値を示した図である。
【
図8】従来の循環母線の配線構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る環状配電線の配線方法、及び環状配電線について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における環状配電線である循環母線の構成の一例を示す図である。この循環母線10は、環状の配電線であり、例えば変電所に設けられる。循環母線10には、複数の変圧器20からの電線21(高圧側)及び複数の送電線30(低圧側)が接続している。なお、送電線30は、不図示の需要家等に接続される。
【0018】
循環母線10は、変圧器20側の甲母線11と、送電線30側の乙母線12と、甲母線11の一端側と乙母線12の一端側との間を接続する第1線路部13と、甲母線11の他端側と乙母線12の他端側との間を接続する第2線路部14とによって構成されている。なお、以下では、循環母線10における第1線路部13の側を第1の側、第2線路部14の側を第2の側という。
【0019】
本実施形態では、甲母線11及び乙母線12はそれぞれ、循環母線10における長軸方向の線路を構成し、互いに対向する位置に配置される。また、第1線路部13及び第2線路部14はそれぞれ、循環母線10における短軸方向の線路を構成し、互いに対向する位置に配置される。
【0020】
高圧側の各変圧器20からの電線21は、甲母線11上の所定位置と乙母線12上の所定位置との間を架橋している架橋電線15上に接続している。この架橋電線15の接続部より甲母線11側の架橋電線15上の所定位置、及び、架橋電線15の接続部より乙母線12側の架橋電線15上の所定位置にはそれぞれ断路器16が設けられている。
【0021】
低圧側の各送電線30は、甲母線11上の所定位置と乙母線12上の所定位置との間を架橋している架橋電線17上の接続部に接続している。この架橋電線17の接続部より甲母線11側の架橋電線17上の所定位置、及び、架橋電線17の接続部より乙母線12側の架橋電線17上の所定位置にはそれぞれ断路器18が設けられている。
【0022】
さらに、甲母線11上の所定位置、乙母線12上の所定位置、第1線路部13上の所定位置、及び第2線路部14上の所定位置にはそれぞれ遮断器19が設けられている。
【0023】
以上の構成において、循環母線10の甲母線11には変圧器20からの電気が流入し、流入した電流は循環母線10のいずれかの線路を流れ、その後、乙母線12から送電線30側に流出する。
【0024】
ここで、例えば作業員が、循環母線10に循環電流が発生して異常が生じたことを確認した場合、その異常発生部に近い遮断器19を操作して当該異常発生部付近の電流を遮断し、また、架橋電線15、17における断路器16、18の切り替え作業を行うことで、当該異常発生部付近の線路を用いずに、変圧器20から循環母線10を経て送電線30へと送電される電流の経路を確保することができる。しかしながら、このような作業は非常に煩雑であり、循環電流がなるべく起きないようにすることが望まれる。
【0025】
次に、
図2は、本実施形態の循環母線10の配線構成の一例を示した図である。この循環母線10は、互いに略平行に整列して配置された三相3線の電線からなる。具体的には、循環母線10は、第一相の電線51(赤)、第二相の電線52(白)、及び第三相の電線53(青)の3線からなる。
【0026】
ここで、従来であれば、第一相の電線51(赤)、第二相の電線52(白)、及び第三相の電線53(青)の並び方向は甲母線11と乙母線12とで同じである。例えば、
図8に示すように、循環母線10の甲母線11及び乙母線12の双方の場合について、第一相の電線51(赤)、第二相の電線52(白)、及び第三相の電線53(青)はこの順に高圧側(変圧器20側)から低圧側(送電線30側)の方向に向かって整列される。
【0027】
また、第一相の電線51(赤)、第二相の電線52(白)、及び第三相の電線53(青)の並び方向も、第1線路部13及び第2線路部14で同じである。例えば、
図8に示すように、循環母線10の第1線路部13及び第2線路部14の双方の場合について、第一相の電線51(赤)、第二相の電線52(白)、及び第三相の電線53(青)はこの順に第1の側から第2の側に向かって整列される。
【0028】
しかし、本実施形態の循環母線10では、第一相の電線51(赤)、第二相の電線52(白)、及び第三相の電線53(青)の並び方向を、甲母線11と乙母線12とで逆にするものとする。
【0029】
すなわち、例えば、
図2に示すように、循環母線10の甲母線11における3線は、第一相の電線51(赤)、第二相の電線52(白)、及び第三相の電線53(青)の順に、高圧側(変圧器20側)から低圧側(送電線30側)の方向に向かって整列されるが、循環母線10の乙母線12における3線は、第三相の電線53(青)、第二相の電線52(白)、及び第一相の電線51(赤)の順に、高圧側(変圧器20側)から低圧側(送電線30側)の方向に向かって整列される。すなわち、各電線の整列順を、甲母線11と乙母線12とで逆にする。
【0030】
なお、上記では、赤-白-青の並びと、青-白-赤の並びにする場合を述べたが、その他の色のパターンであってもよい(例えば、青-白-赤の並びと、赤-白-青の並びとする)。
【0031】
さらに、本実施形態の循環母線10では、第一相の電線51(赤)、第二相の電線52(白)、及び第三相の電線53(青)の並び方向を、第1線路部13と第2線路部14と逆にするものとする。
【0032】
例えば、
図2に示したように、循環母線10の第1線路部13における3線は、第一相の電線51(赤)、第二相の電線52(白)、及び第三相の電線53(青)の順に、第1の側から第2の側に向かって整列されるが、循環母線10の第2線路部14における3線は、第三相の電線53(青)、第二相の電線52(白)、及び第一相の電線51(赤)の順に、第1の側から第2の側に向かって整列される。すなわち、各電線の整列順を、第1線路部13と第2線路部14とで逆にする。
【0033】
なお、上記では、赤-白-青の並びと、青-白-赤の並びにする場合を述べたが、その他の色のパターンであってもよい(例えば、青-白-赤の並びと、赤-白-青の並びとする)。
【0034】
なお、
図3は、
図2に示した循環母線10を側方(第1線路部13の側)から見た図である。循環母線10は、変電所の敷地3に立設された支持部材32によって支持されることで、循環母線10から所定高さに固定される。循環母線10のなす面は、敷地3の面と略平行に設定される。
【0035】
具体的には、循環母線10の甲母線11は、第一相の電線51(赤)、第二相の電線52(白)、及び第三相の電線53(青)の順に、高圧側(変圧器20の側)から低圧側(送電線30の側)に向かって、敷地31の面と略平行に整列される。また、循環母線10の乙母線12は、第三相の電線53(青)、第二相の電線52(白)、及び第一相の電線51(赤)の順に、高圧側(変圧器20の側)から低圧側(送電線30の側)に向かって、敷地31の面と略平行に整列される。
【0036】
このように、循環母線10の第1の線路部分(甲母線11、第1線路部13)における各相の電線の整列順と、上記線路部分と対向する側の第2の線路部分(乙母線12、第2線路部14)における各相の電線の整列順とを逆にすることで、循環母線に発生する循環電流を抑制することができる。これにより、作業員が循環電流の発生に起因して遮断器19や断路器16、18の操作をするといった煩雑な対応作業をする頻度を減少させることができる。
【0037】
<実施例>
次に、本発明者らは、以上の配線構成を採用した循環母線を用いることで循環電流を抑制できることを、以下のようなシミュレーションモデルを構築及び実行することにより明らかにした。
【0038】
本発明者らが使用したシミュレーションモデルは、瞬時値解析プログラムであるXTAP(登録商標)(財団法人電力中央研究所)である。XTAPに搭載されているインピーダンス計算プログラムであるXTLCに対して電線配置を入力して回路の各素子のインピーダンスを求め、求めたインピーダンスをXTAPに入力することで、循環母線に生じる循環電流を求めた。
【0039】
図4は、本実施例においてXTAPに対して設定した循環母線の回路図である。この循環母線300は、第1の電流源301及び第2の電流源302(それぞれ変圧器を想定)からの電線が接続するとともに、第3の電流源303及び第4の電流源304への電線(需要家への送電線を想定)が接続する甲母線310と、第5の電流源305への電線(需要家への送電線を想定)が接続する乙母線315と、甲母線310の一方側と乙母線315の一方側とを接続する第1架橋線320と、甲母線310の他方側と乙母線315の他方側とを接続する第2架橋線325とからなる。また、甲母線310上の所定位置と乙母線315上の所定位置とを接続する接続線326は、第6の電流源306への電線(需要家への送電線を想定)と接続する。これらの電流源により、循環母線300に流入し又は循環母線300から流出する電流が模擬される。
【0040】
また、甲母線310上には開閉器360が設けられ、乙母線315上には開閉器370が設けられ、第1架橋線320上には開閉器350が設けられ、第2架橋線325上には開閉器340が設けられる。
【0041】
また、第1の電流源301からの電線361上には、開閉器332が設けられる。第2の電流源302からの電線362上には、開閉器331が設けられる。第3の電流源303への電線363上には、開閉器344が設けられる。第4の電流源304への電線364上には、開閉器342が設けられる。第5の電流源305への電線365上には、開閉器343が設けられる。第6の電流源306への電線366上には、開閉器341が設けられる。
【0042】
以上の回路構成に基づき、三相3線の配電線である循環母線300を従来のように配線した場合(以下、従来ケースという)と、本実施形態に係る配線を採用した場合(以下、発明ケースという)とをそれぞれ設定した。そして、従来ケース及び発明ケースのそれぞれについて、各電流源から電流を流し、流した電流が循環母線300をどのように流れるかをシミュレーションした。
【0043】
具体的には、従来ケースでは、まず、循環母線300の甲母線310及び乙母線315のそれぞれにおける第一相の電線(赤)、第二相の電線(白)、及び第三相の電線(青)をこの順に、第1の電流源301等の側(変電所側を想定)の側から第5の電流源305等の側(送電線側を想定)に向かって整列するように設定した。また、循環母線300の第1架橋線320及び第2架橋線325のそれぞれにおける第一相の電線(赤)、第二相の電線(白)、及び第三相の電線(青)をこの順に、第1架橋線320の側(第1の側を想定)から第2架橋線325の側(第2の側を想定)に向かって整列するように設定した。
【0044】
発明ケースでは、循環母線300の甲母線310における第一相の電線(赤)、第二相の電線(白)、及び第三相の電線(青)をこの順に、第1の電流源301等の側(変電所側を想定)の側から第5の電流源305等の側(送電線側を想定)に向かって整列するように設定した。一方、循環母線300の乙母線315においては、第三相の電線(青)、第二相の電線(白)、及び第一相の電線(赤)をこの順に、第1の電流源301等の側(変電所側を想定)の側から第5の電流源305等の側(送電線側を想定)に向かって整列するように設定した。
【0045】
また、発明ケースでは、循環母線300の第1架橋線320における第一相の電線(赤)、第二相の電線(白)、及び第三相の電線(青)をこの順に、第1架橋線320の側(第1の側を想定)から第2架橋線325の側(第2の側を想定)に向かって整列するように設定した。一方、循環母線300の第2架橋線325においては、第三相の電線(青)、第二相の電線(白)、及び第一相の電線(赤)をこの順に、第1架橋線320の側(第1の側を想定)から第2架橋線325の側(第2の側を想定)に向かって整列するように設定した
【0046】
図5に、従来ケース及び発明ケースにおける、各開閉器における電流の実効値及び位相の値を示す。図中で、「lm」は電流の実効値を示し(単位はA)、「Ph」は位相(単位はdeg)を示す。開閉器の数字は、上記で説明した開閉器に付した図面の符号に対応する。また、「a」、「b」、「c」はそれぞれ、循環母線300の第一相、第二相、及び第三相をそれぞれ示す。これらの設定により、循環母線300に流入し又は循環母線300から流出する電流を模擬した。
【0047】
また、
図6に、従来ケース及び発明ケースのそれぞれにおいて開閉器360に発生した循環電流(零相電流)の値を示した。同図に示すように、従来ケースでは226.39mAの循環電流が発生したのに比べて、発明ケースでは、半分以下の102.59mAの循環電流に抑えることができた。
【0048】
このように、循環母線において、甲母線における3線(3相)の並びと乙母線における3線(3相)の並びとを逆にし、さらに、一方の架橋線における3線(3相)の並びと他方の架橋線における3線(3相)の並びとを逆にすることで、循環電流が顕著に減少することがわかった。
【0049】
以上のように、本実施形態の環状配電線及び環状配電線の配線方法は、循環母線10の線路部分(甲母線11、第1線路部13)における各相の電線の整列順と、上記線路部分と対向する側の線路部分(乙母線12、第2線路部14)における各相の電線の整列順とを逆にすることで、循環母線に発生する循環電流を抑制することができる。
【0050】
特に本実施形態の環状配電線及び環状配電線の配線方法は、循環母線10に対して電流が流入する側の甲母線11における各相の電線の整列順と、循環母線10を流れた電流が流出する側の線路部分である乙母線12における各相の電線の整列順とを逆にすることで、循環母線に発生する循環電流をより確実に抑制することができる。
【0051】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0052】
例えば、本実施形態では変電所における循環母線の場合を説明したが、変電所以外の施設での環状の配電線であっても本発明は適用可能である。
【0053】
また、本実施形態では循環母線は三相3線であるものとしたが、それ以外の方式、すなわち異なる複数の相の電線から構成され各電線が整列してなる配電線(例えば、三相4線式)であっても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 循環母線
11 甲母線
12 乙母線
13 第1線路部
14 第2線路部
20 変圧器
30 送電線