(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136566
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】アルミニウム合金中空押出部材
(51)【国際特許分類】
B21C 23/00 20060101AFI20230922BHJP
B21C 23/08 20060101ALI20230922BHJP
B60J 5/00 20060101ALN20230922BHJP
【FI】
B21C23/00 A
B21C23/08 A
B60J5/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042307
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 聡
(72)【発明者】
【氏名】江口 慎司
【テーマコード(参考)】
4E029
【Fターム(参考)】
4E029AA06
4E029MB02
(57)【要約】
【課題】ユーザの品質誤認が抑制される溶着部を有するアルミニウム合金中空押出部材の提供。
【解決手段】本発明のアルミニウム合金中空押出部材1は、押出成形時の押出方向に対応した長手方向に延び、かつ前記長手方向に対して垂直に切断した断面が多角形状を含む中空体と、前記断面を周回する方向において前記中空体がN個(Nは2以上の整数)の部分に区分けされるように各々が前記長手方向に沿って延びるN個の溶着部とを有するアルミニウム合金中空押出部材であって、前記中空体は、各々が所定の厚みを有する板状をなし、かつ各々が前記断面の各辺をなすように配されるM個(Mは3以上の整数)の壁部と、各々が前記断面の各角をなすように配され、かつ各々が互いに隣り合った前記壁部同士を繋ぐM個の接続部とを有し、前記溶着部のうち少なくとも1個は、前記断面において、前記接続部に割り当てられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形時の押出方向に対応した長手方向に延び、かつ前記長手方向に対して垂直に切断した断面が多角形状を含む中空体と、前記断面を周回する方向において前記中空体がN個(Nは2以上の整数)の部分に区分けされるように各々が前記長手方向に沿って延びるN個の溶着部とを有するアルミニウム合金中空押出部材であって、
前記中空体は、
各々が所定の厚みを有する板状をなし、かつ各々が前記断面の各辺をなすように配されるM個(Mは3以上の整数)の壁部と、
各々が前記断面の各角をなすように配され、かつ各々が互いに隣り合った前記壁部同士を繋ぐM個の接続部とを有し、
前記溶着部のうち少なくとも1個は、前記断面において、前記接続部に割り当てられるアルミニウム合金中空押出部材。
【請求項2】
N≦Mであり、N個の前記溶着部のすべてが前記接続部に割り当てられている請求項1に記載のアルミニウム合金中空押出部材。
【請求項3】
前記中空体は、M個の前記壁部の内側の空間を仕切る板状の仕切り壁部を有する請求項1又は請求項2に記載のアルミニウム合金中空押出部材。
【請求項4】
前記中空体は、前記長手方向が湾曲するように曲げられている請求項1~請求項3の何れか一項に記載のアルミニウム合金中空押出部材。
【請求項5】
前記壁部に、前記溶着部が形成されていない請求項1~請求項4の何れか一項に記載のアルミニウム合金中空押出部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金中空押出部材に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金の中空状の押出成形品であるアルミニウム合金中空押出部材は、軽量かつ高強度な部材であるため、様々な技術分野において広く用いられている。例えば、衝撃吸収等を目的とした自動車用部材(例えば、ドアビーム)として、断面が矩形状をなした中空状のアルミニウム合金中空押出部材が用いられている。
【0003】
この種のアルミニウム合金中空押出部材は、例えば、押出成形の一種であるポートホール押出法によって製造される。ポートホール押出法は、ブリッジにより分割された複数のポートホールの先端中心部にマンドレル部を有する雄型と、ダイス部とその周りにチャンバーを有する雌型とを組み合わせたポートホールダイスを用いる方法である。ポートホールダイスにビレットが押し込まれると、そのビレットは、雄型の複数のポートホールによって押出方向に沿って複数に分断される。ビレットが分断されて形成された複数の部材は、雄型のマンドレル部と雌型のダイス部との隙間から、マンドレル部を取り囲むように押し出される際に、溶着一体化される。そして、溶着一体化した状態の部材の内面がマンドレル部で成形される共に、その外面がダイス部で成形されることで、中空状のアルミニウム合金中空押出部材が得られる。このようなポートホール押出法は、肉厚を均一に維持し易く、しかも比較的、製造コストを低く抑えられるため、アルミニウム合金中空押出部材の製造に多く用いられる。
【0004】
ところで、ポートホール押出法によって製造されたアルミニウム合金中空押出部材には、必然的に、押出方向(長手方向)に沿って溶着部が形成される(特許文献1,2)。この溶着部は、製造時において、ビレットが分断されて形成された複数の部材同士が、溶着一体化することで形成されたものである。例えば、アルミニウム合金中空押出部材が、一対の板状のフランジと一対の板状のウエブとを有する長手状の中空体の場合、溶着部は、長手方向に沿って真っ直ぐにフランジの板面や、ウエブの板面に形成される(特許文献1,2)。なお、アルミニウム合金中空押出部材を、長手方向に対して垂直に切断した断面において、溶着部は、フランジの板厚方向やウエブの板厚方向に沿って真っ直ぐにそれらを横切るように形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6322329号公報
【特許文献2】特許第6452878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アルミニウム合金中空押出部材を使用するユーザが、アルミニウム合金中空押出部材に形成された溶着部を見た場合に、溶着部付近がその他の部分よりも強度的に劣っていないにも拘わらず、直感的に、溶着部付近がその他の部分よりも強度的に劣っているかのように誤認してしまうことがあった。さらに、製品のうちの目立つ部位に溶着部が形成されていると、製品全体が強度的に劣っているかのように誤認してしまうことがあった。
【0007】
本発明の目的は、ユーザの品質誤認が抑制される溶着部を有するアルミニウム合金中空押出部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 押出成形時の押出方向に対応した長手方向に延び、かつ前記長手方向に対して垂直に切断した断面が多角形状を含む中空体と、前記断面を周回する方向において前記中空体がN個(Nは2以上の整数)の部分に区分けされるように各々が前記長手方向に沿って延びるN個の溶着部とを有するアルミニウム合金中空押出部材であって、前記中空体は、各々が所定の厚みを有する板状をなし、かつ各々が前記断面の各辺をなすように配されるM個(Mは3以上の整数)の壁部と、各々が前記断面の各角をなすように配され、かつ各々が互いに隣り合った前記壁部同士を繋ぐM個の接続部とを有し、前記溶着部のうち少なくとも1個は、前記断面において、前記接続部に割り当てられるアルミニウム合金中空押出部材。
【0009】
<2> N≦Mであり、N個の前記溶着部のすべてが前記接続部に割り当てられている前記<1>に記載のアルミニウム合金中空押出部材。
【0010】
<3> 前記中空体は、M個の前記壁部の内側の空間を仕切る板状の仕切り壁部を有する前記<1>又<2>に記載のアルミニウム合金中空押出部材。
【0011】
<4> 前記中空体は、前記長手方向が湾曲するように曲げられている前記<1>~<3>の何れか1つに記載のアルミニウム合金中空押出部材。
【0012】
<5> 前記壁部に、前記溶着部が形成されていない前記<1>~<4>の何れか1つに記載のアルミニウム合金中空押出部材。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザの品質誤認が抑制される溶着部を有するアルミニウム合金中空押出部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1に係るアルミニウム合金中空押出部材の斜視図
【
図3】車両用ドアのドアビームとして使用したアルミニウム合金中空押出部材の説明図
【
図4】長手方向に対して垂直に切断した実施形態2に係るアルミニウム合金中空押出部材の部分断面図
【
図5】長手方向に対して垂直に切断した実施形態3に係るアルミニウム合金中空押出部材の部分断面図
【
図6】長手方向に対して垂直に切断した実施形態4に係るアルミニウム合金中空押出部材の部分断面図
【
図7】長手方向に対して垂直に切断した実施形態5に係るアルミニウム合金中空押出部材の部分断面図
【
図8】実施形態6に係るアルミニウム合金中空押出部材の斜視図
【
図10】実施形態7に係るアルミニウム合金中空押出部材の斜視図
【
図11】比較例1に係るアルミニウム合金中空押出部材の斜視図
【
図12】比較例2に係るアルミニウム合金中空押出部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態1>
本発明の実施形態1に係るアルミニウム合金中空押出部材1を、
図1~
図3を参照しつつ説明する。
図1は、実施形態1に係るアルミニウム合金中空押出部材1の斜視図であり、
図2は、
図1のα-α線断面図である。アルミニウム合金中空押出部材1は、ポートホール押出法により製造されるアルミニウム合金製の断面視四角形状の中空部材(所謂、角筒パイプ)である。ポートホール押出法は、周知の通り、押出成形の一種であり、ブリッジにより分割された複数のポートホールの先端中心部にマンドレル部を有する雄型と、ダイス部とその周りにチャンバーを有する雌型とを組み合わせたポートホールダイスを用いる方法である。
【0016】
アルミニウム合金中空押出部材1は、押出成形時の押出方向に対応した長手方向Lに延び、かつ長手方向Lに対して垂直に切断した断面2aが四角形状(正方形状)(多角形状の一例)をなす中空体2と、断面2aを周回する方向において中空体2が4個(N個の一例。Nは、2以上の整数)の部分に区分けされるように各々が長手方向に沿って延びる4個(N個の一例。Nは、2以上の整数)の溶着部3とを有する。
【0017】
中空体2は、各々が所定の厚みを有する板状をなし、かつ各々が断面2aの各辺をなすように配される4個(M個の一例。Mは3以上の整数)の壁部4と、各々が前記断面2aの各角をなすように配され、かつ各々が互いに隣り合った壁部4同士を繋ぐ4個(M個の一例。Mは3以上の整数)の接続部5とを有する。また、中空体2は、4個の壁部4で囲まれた内側に、長手方向に延びた中空部6を有する。なお、本実施形態の場合、N≦Mである。
【0018】
図2に示されるアルミニウム合金中空押出部材1の断面2aにおいて、4個の壁部4のうち、上側に配されるものを「第1壁部41」、下側に配されるものを「第2壁部42」、左側に配されるものを「第3壁部43」、右側に配されるものを「第4壁部44」と称する。
【0019】
第1壁部41及び第2壁部42は、
図1等に示されるように、各々が水平方向に延びつつ上下方向において、互いに間隔を保ちつつ平行に配される。また、第3壁部43及び第4壁部44は、
図1等に示されるように、各々が上下方向に延びつつ左右方向において、互いに間隔を保ちつつ平行に配される。
【0020】
本実施形態の場合、第1壁部41及び第2壁部42の各厚み(板厚)は、第3壁部43及び第4壁部44の各厚み(板厚)と同じに設定されている。なお、他の実施形態においては、本発明の目的を損なわない限り、第1壁部41及び第2壁部42の各厚み(板厚)が、第3壁部43及び第4壁部44の各厚み(板厚)よりも小さく設定されてもよいし、第1壁部41及び第2壁部42の各厚み(板厚)が、第3壁部43及び第4壁部44の各厚み(板厚)よりも大きく設定されてもよい。また、各壁部4の厚みが互いに異なっていてもよい。
【0021】
また、本実施形態の場合、第1壁部41及び第2壁部42の短手方向(長手方向に垂直な方向)の各長さは、第3壁部43及び第4壁部44の短手方向の各長さと同じに設定されている。なお、他の実施形態においては、第1壁部41及び第2壁部42の短手方向の各長さが、第3壁部43及び第4壁部44の短手方向の各長さよりも長く設定されてもよいし(つまり、断面が横長の矩形状であってもよいし)、第1壁部41及び第2壁部42の短手方向の各長さが、第3壁部43及び第4壁部44の短手方向の各長さよりも短く設定されてもよい(つまり、断面が縦長の矩形状であってもよい)。
【0022】
また、
図2に示されるアルミニウム合金中空押出部材1の断面2aにおいて、4個の接続部5のうち、左上角をなすと共に、互いに隣り合った第1壁部41と第3壁部43とを接続するものを「第1接続部51」、右上角をなすと共に、互いに隣り合った第1壁部41と第4壁部44とを接続するものを「第2接続部52」、左下角をなすと共に、互いに隣り合った第3壁部43と第2壁部42とを接続するものを「第3接続部53」、右下角をなすと共に、互いに隣り合った第4壁部44と第2壁部42とを接続するものを「第4接続部54」と称する。
【0023】
なお、
図2において、説明の便宜上、各壁部4と各接続部5との境界が破線で示されている。例えば、第1壁部41と第1接続部51との境界L1は、第1壁部41に隣接する第3壁部43の内壁面43aの延長上にあり、第3壁部43と第1接続部51との境界L2は、第3壁部43に隣接する第1壁部41の内壁面41aの延長上にある。また、第1壁部41と第2接続部52との境界L3は、第1壁部41に隣接する第4壁部44の内壁面44aの延長上にあり、第4壁部44と第2接続部52との境界L4は、第4壁部44に隣接する第1壁部41の内壁面41aの延長上にある。
【0024】
また、第2壁部42と第3接続部53との境界L5は、第2壁部42に隣接する第3壁部43の内壁面43aの延長上にあり、第3壁部43と第3接続部53との境界L6は、第3壁部43に隣接する第2壁部42の内壁面42aの延長上にある。また、第2壁部42と第4接続部54との境界L7は、第2壁部42に隣接する第4壁部44の内壁面44aの延長上にあり、第4壁部44と第4接続部54との境界L8は、第4壁部44に隣接する第2壁部42の内壁面42aの延長上にある。
【0025】
図2に示されるように、アルミニウム合金中空押出部材1の断面2aは、4個の壁部4と、4個の接続部5とにより、全体として正方形状をなしている。
【0026】
なお、本実施形態のアルミニウム合金中空押出部材1は、後述するようにドアビームとして利用されるものである。
【0027】
このようなアルミニウム合金中空押出部材1の断面2aにおいて、4個の溶着部3は、各々が壁部4の厚み方向に対して傾斜すると共に、全体として放射状をなすように、接続部5毎に1つずつ割り当てられる。つまり、このようなアルミニウム合金中空押出部材1では、4個(N個)の溶着部3のうち少なくとも1個は、断面2aにおいて、接続部5に割り当てられていると言える。特に、本実施形態の場合、N≦Mであり、4個(N個)の溶着部3のすべてが4個(M個)の接続部5に割り当てられている。
【0028】
溶着部3は、ポートホール押出法によって製造されたアルミニウム合金中空押出部材1に必然的に形成される製造痕である。製造時において、ビレット(アルミニウム合金ビレット)が、雄型の複数のポートホールによって押出方向に沿って複数に分断される。そのビレットが分断されて形成された複数の部材は、雄型のマンドレル部と雌型のダイス部との隙間から、マンドレル部を取り囲むように押し出される際に、溶着一体化される。このように製造時において、溶着一体化した部分が、最終的な押出成形品であるアルミニウム合金中空押出部材1に、溶着部3として形成される。
【0029】
各溶着部3は、対応する接続部5において、中空体2の内側にある隣り合った壁部4の境界部分から、中空体2の外側にある接続部5の角部に向かうように、壁部4の厚み方向に対して傾斜しつつ延びている。
【0030】
第1接続部51に形成される溶着部3(第1溶着部31)は、断面視した状態において、第1接続部51を斜めに横切るように形成される。第1溶着部31のうち、中空体2の内側に配される端部31aは、第1壁部41と第3壁部43との境界部分に配され、中空体2の外側に配される端部31bは、第1接続部51の角部51bに配される。
【0031】
第2接続部52に形成される溶着部3(第2溶着部32)は、断面視した状態において、第2接続部52を斜めに横切るように形成される。第2溶着部32のうち、中空体2の内側に配される端部32aは、第1壁部41と第4壁部43との境界部分に配され、中空体2の外側に配される端部32bは、第2接続部52の角部52bに配される。
【0032】
第3接続部53に形成される溶着部3(第3溶着部33)は、断面視した状態において、第3接続部53を斜めに横切るように形成される。第3溶着部33のうち、中空体2の内側に配される端部33aは、第2壁部42と第3壁部43との境界部分に配され、中空体2の外側に配される端部33bは、第3接続部53の角部53bに配される。
【0033】
第4接続部54に形成される溶着部3(第4溶着部34)は、断面視した状態において、第4接続部54を斜めに横切るように形成される。第4溶着部34のうち、中空体2の内側に配される端部34aは、第2壁部43と第4壁部44との境界部分に配され、中空体2の外側に配される端部34bは、第4接続部54の角部54bに配される。
【0034】
このような4個の溶着部3により、アルミニウム合金中空押出部材1は、四角形状(正方形状)の断面2aを周回する方向において、中空体2が4個の部分S1,S2,S3,S4に区分けされる。部分S1は、第1壁部41、第1接続部51の一部及び第2接続部52の一部からなり、部分S2は、第4壁部44、第2接続部52の他の一部及び第4接続部54の一部からなる。また、部分S3は、第2壁部42、第3接続部の一部及び第4接続部の他の一部からなり、部分S4は、第3壁部43、第1接続部51の他の一部及び第3接続部の他の一部からなる。なお、区分けされた各部分S1,S2,S3,S4は、それぞれ溶着部3を界面としつつ、互いに一体的に接続されている。
【0035】
また、中空体2の外側に配される各溶着部3の各端部31b,32b,33b,34bは、それぞれ対応する接続部5の各角部51b,52b,53b,54bに配されている。そのため、各溶着部3の各端部31b,32b,33b,34bは、アルミニウム合金中空押出部材1を外側から見た際に、溶着部3が目立たなくなっている。なお、他の実施形態においては、接続部5の各角部を面取りしてそれらを、丸みを帯びた形としつつ、そのような各角部に各溶着部3の各端部31b,32b,33b,34bを配置してもよい。
【0036】
なお、各溶着部3を、上述したような中空体2の所望の箇所に配置するために、製造時に使用するポートホールダイスの形状(例えば、雄型のポートホールの形状等)が、適宜、設定される。ポートホールダイスの形状を、適宜、設定する技術は、周知であり、本明細書では、その詳細説明を省略する。
【0037】
図3は、車両用ドアのドアビームとして使用したアルミニウム合金中空押出部材1の説明図である。
図3には、車幅方向で切断されたアルミニウム合金中空押出部材1等の断面構成が示される。なお、
図3の左右方向が、車幅方向に対応する。
図3に示されるように、ドアビームであるアルミニウム合金中空押出部材1は、車両用ドア内に設けられたインナパネル12に、取り付けられている。インナパネル12は、車両用ドアの内部において上下方向に沿う形で設けられており、それの車室外側を向く面12aに、アルミニウム合金中空押出部材1が取付手段10を利用して取り付けられる。
図3の左側が、車室側(車室内側)であり、
図3の右側が車室外側である。アルミニウム合金中空押出部材1が備える上下方向に沿って延びた一対の壁部4(第1壁部41及び第2壁部42)が車幅方向に並ぶように配されると共に、その一方の壁部4(第2壁部42)が車室内側に配され、他方の壁部4(第1壁部41)が車室外側に配される。そして、車室内側に配される壁部4(第2壁部42)がインナパネル12に対して、取付手段(例えば、ボルト及びナット)10を利用して固定されることにより、アルミニウム合金中空押出部材1がインナパネル12に固定される。車室内側に配される壁部4(第2壁部42)の略中央に、厚み方向に貫通する孔部11があり、その孔部11と、インナパネル12を厚み方向に貫通する形で設けられた孔部13とに、取付手段12が挿通する形で取り付けられる。このような状態のアルミニウム合金中空押出部材1において、左右方向に延びた一対の壁部4(第3壁部43及び第4壁部44)は、上下方向で平行に並ぶように配される。
【0038】
このようにドアビームとして使用したアルミニウム合金中空押出部材1は、車両の側面衝突時における衝撃を吸収することができる。なお、アルミニウム合金中空押出部材1をインナパネル12に取り付ける際に、作業者(ユーザ)は、溶着部3の存在を気にすることなく、アルミニウム合金中空押出部材1の取付作業を行うことができる。
【0039】
本実施形態の溶着部3は、断面視した状態において、中空体2の内側にある隣り合った壁部4の間の境界部分と、中空体2の外側にある接続部5の角部とを結ぶように形成されている。例えば、第1溶着部31は、互いに隣り合った第1壁部41と第3壁部43との間の境界部分と、第1接続部51の角部51bとを結ぶように形成されている。
【0040】
このように中空体2の外側において、各溶着部3の端部を、対応する各接続部5の角部に配置することにより、アルミニウム合金中空押出部材1を外側から見た際に、溶着部3を目立たなくすることができる。溶着部3が目立ちやすくなるアルマイト処理したアルミニウム合金中空押出部材1においても品質誤認を抑制できる。
【0041】
なお、隣り合った壁部4の間の境界部分と接続部5の角部とを結ぶように、溶着部3を形成することは、上述したように、溶着部3を目立たなくする等の観点より、好ましいものの、製造上等の都合で、溶着部3を目立たせずに、接続部5に形成される溶着部3の位置が、多少、変更される場合がある。以下、
図4~
図7を参照しつつ、実施形態1の溶着部3の形成位置が変更された、他の実施形態について説明する。
【0042】
<実施形態2>
実施形態2は、実施形態1の変形例であるアルミニウム合金中空押出部材1Aに関するものである。
図4は、長手方向に対して垂直に切断した実施形態2に係るアルミニウム合金中空押出部材1Aの部分断面図である。実施形態2のアルミニウム合金中空押出部材1Aは、実施形態1と同様の構成の中空体2を備える。
図4において、中空体2の各構成については、実施形態1と同様の符号が付されている。本実施形態の場合、溶着部3Aの形成位置が実施形態1のものと異なっている。ここでは、第1溶着部3Aが第1接続部51に形成される位置が変更されている場合を例に挙げて説明する。
【0043】
第1溶着部31Aは、アルミニウム合金中空押出部材1Aを断面視した状態において、第1接続部51を斜めに横切るように、壁部4の厚み方向に対して傾斜しつつ延びているものの、中空体2の外側に位置する溶着部3Aの端部31Abの位置が、実施形態1と異なっている。具体的には、端部31Abは、第1接続部51の角部51bを外れて、第1壁部41寄り(短手方向の内側寄り)に位置するように形成されている。つまり、端部31Abは、
図4において上側を向く第1接続部51の表面上に形成されている。なお、中空体2の内側に位置する第1溶着部31Aの端部31Aaの位置は、実施形態1と同様、第1壁部41と第3壁部43との境界部分にある。
【0044】
本実施形態のように、中空体2の外側に配される第1溶着部31A(溶着部3A)の端部31Abが、第1接続部51の表面上に形成されていても、その第1溶着部31Aは、例えば、壁部4(第1壁部41)の表面上に形成されている場合と比べて、目立ち難く、アルミニウム合金中空押出部材1Aの強度低下や破断を引き起こす原因と誤認され難いと言える。
【0045】
本実施形態のような溶着部3Aは、中空体2の4個の接続部5の全てに形成されてもよいし、少なくとも1つの接続部5に形成されてもよい。
【0046】
<実施形態3>
実施形態3は、実施形態1の変形例であるアルミニウム合金中空押出部材1Bに関するものである。
図5は、長手方向に対して垂直に切断した実施形態3に係るアルミニウム合金中空押出部材1Bの部分断面図である。実施形態3のアルミニウム合金中空押出部材1Bは、実施形態1と同様の構成の中空体2を備える。
図5において、中空体2の各構成については、実施形態1と同様の符号が付されている。本実施形態の場合、溶着部3Bの形成位置が実施形態1のものと異なっている。ここでは、第1溶着部3Bが第1接続部51に形成される位置が変更されている場合を例に挙げて説明する。
【0047】
第1溶着部31Bは、アルミニウム合金中空押出部材1Bを断面視した状態において、第1接続部51を斜めに横切るように、壁部4の厚み方向に対して傾斜しつつ延びているものの、中空体2の外側に位置する溶着部3Bの端部31Bbの位置が、実施形態1と異なっている。具体的には、端部31Bbは、第1接続部51の角部51bよりも、下側にある第1接続部51の端面に位置するように形成されている。なお、中空体2の内側に位置する第1溶着部31Bの端部31Baの位置は、実施形態1と同様、第1壁部41と第3壁部43との境界部分にある。
【0048】
本実施形態のように、中空体2の外側に配される第1溶着部31B(溶着部3B)の端部31Bbが、第1接続部51の側方に配される端面上に形成されていても、その第1溶着部31Bは、例えば、壁部4(第3壁部43)の表面上に形成されている場合と比べて、目立ち難く、アルミニウム合金中空押出部材1Bの強度低下や破断を引き起こす原因と誤認され難いと言える。
【0049】
なお、本実施形態のような溶着部3Bは、中空体2の4個の接続部5の全てに形成されてもよいし、少なくとも1つの接続部5に形成されてもよい。
【0050】
<実施形態4>
実施形態4は、実施形態1の変形例であるアルミニウム合金中空押出部材1Cに関するものである。
図6は、長手方向に対して垂直に切断した実施形態4に係るアルミニウム合金中空押出部材1Cの部分断面図である。実施形態4のアルミニウム合金中空押出部材1Cは、実施形態1と同様の構成の中空体2を備える。
図6において、中空体2の各構成については、実施形態1と同様の符号が付されている。本実施形態の場合、溶着部3Cの形成位置が実施形態1のものと異なっている。ここでは、第1溶着部3Cが第1接続部51に形成される位置が変更されている場合を例に挙げて説明する。
【0051】
第1溶着部31Cは、アルミニウム合金中空押出部材1Cを断面視した状態において、第1接続部51を斜めに横切るように、壁部4の厚み方向に対して傾斜しつつ延びているものの、中空体2の内側に位置する溶着部3Cの端部31Caの位置が、実施形態1と異なっている。具体的には、端部31Caは、第1壁部41と第4壁部43との境界部分から外れて、第1壁部41の内壁面41aに形成されている。なお、中空体2の外側に位置する第1溶着部31Cの端部31Cbの位置は、実施形態1と同様、第1接続部51の角部51bにある。
【0052】
本実施形態のように、中空体2の内側に配される第1溶着部31C(溶着部3C)の端部31Caが、第1壁部41の内壁面41a上に形成されていても、その第1溶着部31Cの端部31Caは、外部からは視認され難い(つまり、目立ち難い)と言える。
【0053】
なお、本実施形態のような溶着部3Cは、中空体2の4個の接続部5の全てに形成されてもよいし、少なくとも1つの接続部5に形成されてもよい。
【0054】
<実施形態5>
実施形態5は、実施形態1の変形例であるアルミニウム合金中空押出部材1Dに関するものである。
図7は、長手方向に対して垂直に切断した実施形態5に係るアルミニウム合金中空押出部材1Dの部分断面図である。実施形態5のアルミニウム合金中空押出部材1Dは、実施形態1と同様の構成の中空体2を備える。
図7において、中空体2の各構成については、実施形態1と同様の符号が付されている。本実施形態の場合、溶着部3Dの形成位置が実施形態1のものと異なっている。ここでは、第1溶着部3Dが第1接続部51に形成される位置が変更されている場合を例に挙げて説明する。
【0055】
第1溶着部31Dは、アルミニウム合金中空押出部材1Dを断面視した状態において、第1接続部51を斜めに横切るように、壁部4の厚み方向に対して傾斜しつつ延びているものの、中空体2の内側に位置する溶着部3Dの端部31Da及び中空体2の外側に位置する溶着部3Dの端部31Dbの各位置が、実施形態1のものとそれぞれ異なっている。具体的には、端部31Daは、第1壁部41と第4壁部43との境界部分から外れて、第3壁部43の内壁面43aに形成されている。また、端部31Dbは、第1接続部51の角部51bを外れて、第1壁部41寄り(短手方向の内側寄り)に位置するように形成されている。つまり、端部31Dbは、
図7において上側を向く第1接続部51の表面上に形成されている。
【0056】
本実施形態のように、中空体2の内側に配される第1溶着部31D(溶着部3D)の端部31Daが、第3壁部43の内壁面43a上に形成されていても、実施形態4と同様、その第1溶着部31Dの端部31Daは、外部からは視認され難い(つまり、目立ち難い)と言える。また、中空体2の外側に配される第1溶着部31D(溶着部3D)の端部31Dbが、第1接続部51の表面上に形成されていても、実施形態2の場合と同様、目立ち難く、アルミニウム合金中空押出部材1Dの強度低下や破断を引き起こす原因と誤認され難いと言える。
【0057】
なお、本実施形態のような溶着部3Dは、中空体2の4個の接続部5の全てに形成されてもよいし、少なくとも1つの接続部5に形成されてもよい。
【0058】
<実施形態6>
次いで、本発明の実施形態7に係るアルミニウム合金中空押出部材1Fを、
図8及び
図9を参照しつつ説明する。
図8は、実施形態6に係るアルミニウム合金中空押出部材1Fの斜視図であり、
図9は、
図8のβ-β線断面図である。本実施形態のアルミニウム合金中空押出部材1Fは、ポートホール押出法による押出成形時の押出方向に対応した長手方向Lに延び、かつ長手方向Lに対して垂直に切断した断面が矩形状(長方形状)の筒体21Fと、その筒体21Fの内側の空間(中空部)6Fを仕切る板状の仕切り壁部(中リブ)22Fとを有する中空体2Fを備える。
【0059】
中空体2Fのうち、筒体21Fは、各々が所定の厚みを有する板状をなし、かつ各々が矩形状(多角形状の一例)の断面2Faの各辺をなすように配される4個の壁部4Fと、各々が矩形状の断面2Faの各角をなすように配され、かつ各々が互いに隣り合った壁部4F同士を繋ぐ4個の接続部5Fとを有する。
【0060】
また、アルミニウム合金中空押出部材1Fは、断面2Faを周回する方向において中空体2Fの筒体21Fが4つの部分に区分けされるように各々が長手方向Lに沿って延びる4個の溶着部3Fと、仕切り壁部22Fを上下方向で2つに分けるように長手方向Lに沿って延びる1つの溶着部30Fとを有する。
【0061】
溶着部30Fは、長手方向Lに延びる形で、アルミニウム合金中空押出部材1F(筒体21F)の外側に現れるものではない。仕切り壁部22Fは、4個の壁部4Fの内側の空間(中空部)6を仕切るように筒体21Fに設けられている。仕切り壁部22Fは、板状であり、第3壁部43Fと第4壁部44Fとの間において、それらに対して平行に配されている。また、仕切り壁部22Fは、第1壁部41F及び第2壁部42Fに対して垂直に配されるように、第1壁部41Fと第2壁部42Fとの間に形成されている。
【0062】
4個の溶着部3Fは、アルミニウム合金中空押出部材1F(中空体2Fの筒体21F)の断面2Faにおいて、各々が壁部4Fの厚み方向に対して傾斜すると共に、全体として放射状をなすように、接続部5F毎に1つずつ割り当てられている。
【0063】
溶着部30Fは、仕切り壁部22Fを、第1壁部41F側と第2壁部42F側とに2つに分けるように形成されている。溶着部30Fの位置は、上下方向の中央に設定されている。つまり、溶着部3Fは、仕切り壁部22Fを上下方向において、同じ大きさで2つに分かれるように設定されている。この溶着部30Fは、中空体2Fの断面2Fa(端面)において、板状をなした仕切り壁部22Fの厚み方向に沿って形成されている。溶着部30Fは、中空体2Fが仕切り壁部22Fを含む場合に、4個の溶着部3Fと共に、中空体2F全体を4個の部分に区分けするものである。
【0064】
なお、仕切り壁部22Fにおける溶着部30Fの位置は、中央に限られず、例えば、
図9において、仕切り壁部22F中に示される破線等で示されるように、本発明の目的を損なわない限り、上下方向における任意の位置で設定されてもよい。
【0065】
このように本実施形態においても、中空体2Fの外側において、各溶着部3Fの端部を、対応する各接続部5Fの角部に配置することにより、アルミニウム合金中空押出部材1Fを外側から見た際に、溶着部3Fを目立たなくすることができる。また、本実施形態のように、中空体2Fが仕切り壁部22Fを含んでもよい。
【0066】
なお、本実施形態の各溶着部3Fについても、上述した実施形態1の各変形例等のように、本発明の目的を損なわない限り、形成位置が適宜、変更されてもよい。
【0067】
<実施形態7>
次いで、本発明の実施形態8に係るアルミニウム合金中空押出部材1Gを、
図10を参照しつつ説明する。
図10は、実施形態8に係るアルミニウム合金中空押出部材1Gの斜視図である。本実施形態のアルミニウム合金中空押出部材1Gは、いわゆる3ポートタイプであり、製造時に、ビレット(アルミニウム合金ビレット)が、雄型の複数のポートホールによって押出方向に沿って3に分断されるものである。
【0068】
アルミニウム合金中空押出部材1Gは、ポートホール押出法による押出成形時の押出方向に対応した長手方向Lに延び、かつ長手方向に対して垂直に切断した断面が矩形状をなす中空体2Gと、断面を周回する方向において中空体2Gが3個の部分に区分けされるように各々が長手方向Lに沿って延びる複数の溶着部3Gとを有する。中空体2Gの内側に、長手方向Lに延びた空間(中空部)6Gがある。
【0069】
中空体2Gは、各々が所定の厚みを有する板状をなし、かつ各々が矩形状の断面の各辺をなすように配される4個の壁部4Gと、各々が矩形状の断面の各角をなすように配され、かつ各々が互いに隣り合った壁部4G同士を繋ぐ4個の接続部5Gとを有する。
【0070】
3個の溶着部3Gのうち、少なくとも2個の溶着部3G(第1溶着部31G、第2溶着部32G)は、断面において、各々が壁部4Gの厚み方向に対して傾斜すると共に、互いに隣り合った接続部5G同士について接続部5G毎に1つずつ割り当てられる。そして更に、3個の溶着部3Gのうち、少なくとも1個の溶着部3G(第3溶着部33G)は、4個の壁部4Gのうち、互いに隣り合った接続部5G同士の間に配される壁部4G(第1壁部41G)と対向する対向壁部42G(第2壁部42G)に割り当てられる。
【0071】
4個の壁部4Gのうち、第1壁部41G、第3壁部43G及び第4壁部44には、外側から視認可能な、長手方向Lに延びた溶着部3Gは形成されていない。ただし、第2壁部42Gには、上述したように、長手方向Lに延びた溶着部3G(第3溶着部33G)が形成されている。第2壁部42Gの溶着部3は、
図10に示されるように、第2壁部42Gを厚み方向に横切るように形成されている。なお、3個の溶着部3Gは、全体として放射状をなすように、配されている。このような本実施形態においても、溶着部3Gを目立たなくすることができる。なお、接続部5に形成される各溶着部3G(第1溶着部31G、第2溶着部32G)についても、上述した実施形態1の各変形例等のように、本発明の目的を損なわない限り、形成位置が適宜、変更されてもよい。
【0072】
<比較例1>
次いで、本発明の比較例1に係るアルミニウム合金中空押出部材1Pを、
図11を参照しつつ説明する。
図11は、比較例1に係るアルミニウム合金中空押出部材1Pの斜視図である。アルミニウム合金中空押出部材1Pは、実施形態1等と同様、ポートホール押出法により製造されるものであり、断面視矩形状の中空体2Pを備えている。中空体2Pは、4個の板状の壁部4Pと、4個の接続部5Pとで構成され、その内側に長手方向Lに延びた空間(中空部)6Pがある。
【0073】
また、アルミニウム合金中空押出部材1Pは、4個の壁部4Pに、それぞれ1つずつ溶着部3Pが形成される。溶着部3Pは、断面視した際に、壁部4Pの厚み方向に沿うように形成される。また、溶着部3Pは、長手方向Lに沿って直線状に形成される。
【0074】
比較例1のアルミニウム合金中空押出部材1Pでは、壁部4Pの表面(外壁面)に溶着部3Pが現れるため、溶着部3Pがアルミニウム合金中空押出部材1Pの強度低下や破断を引き起こす原因と誤認される可能性がある。
【0075】
このような誤認は、溶着部3Pの形成位置を、壁部4Pにおいて適宜、変更しても、溶着部3Pが壁部4Pに形成される限り、起こり得ると言える。例えば、各壁部4P(第1壁部41P、第2壁部42P、第3壁部43P、第4壁部44P)において、それぞれ破線で示される複数の位置の何れかに各溶着部3Pの形成位置が変更されても、それらの溶着部3Pは、目立ち易く、アルミニウム合金中空押出部材1Pの外側から容易に視認される。しかも、それらの溶着部3Pは、すべて壁部4Pのみに形成され、壁部4P同士を互いに垂直に繋ぐ部分である接続部5Pに形成されるものではないため、アルミニウム合金中空押出部材1Pの強度低下や破断を引き起こすものと誤認され易いと言える。
【0076】
各壁部4Pに存在する破線の位置を各溶着部3Pの形成位置として選択する限りにおいてアルミニウム合金中空押出部材1Pの強度低下や破断を引き起こすものと誤認され易くなる。そのため、壁部4Pから選択される溶着部3Pの個数や溶着部3Pが形成される壁部4Pの個数を少なくすることが望ましい。
図10の第2壁部42Gのように、いずれかの壁部4Pから溶着部3Pの形成位置を選択する場合には、他の壁部4Pよりも視認されにくい壁部4Pを優先して溶着部3Pを形成することが望ましい。ここで、視認されにくい壁部4Pとは、アルミニウム合金中空押出部材1Pを取り付けた製品において外側に露出しない壁部4P(例えば製品に対する取付面や接着面)であってもよいし、表面積が小さい壁部4Pであってもよいし、アルマイト処理が施されない壁部4Pであってもよい。
【0077】
<比較例2>
次いで、本発明の比較例2に係るアルミニウム合金中空押出部材1Qを、
図12を参照しつつ説明する。
図12は、比較例2に係るアルミニウム合金中空押出部材1Qの斜視図である。比較例2のアルミニウム合金中空押出部材1Qは、比較例1のアルミニウム合金中空押出部材1Pに対して、長手方向Lが湾曲するように曲げ加工が施されたものである。
【0078】
このような比較例2のアルミニウム合金中空押出部材1Qでも、比較例1と同様、壁部4Qの表面(外壁面)に溶着部3Qが現れるため、溶着部3Qがアルミニウム合金中空押出部材1Qの強度低下や破断を引き起こす原因と誤認される可能性がある。このような誤認は、曲げ加工の中立軸の位置や、残留応力のピーク位置等に関係なく、起こり得るものである。
【0079】
また、このような誤認は、溶着部3Qの形成位置を、壁部4Qにおいて適宜、変更しても、溶着部3Qが壁部4Qに形成される限り、起こり得ると言える。例えば、各壁部4Q(第1壁部41Q、第2壁部42Q、第3壁部43Q、第4壁部44Q)において、それぞれ破線で示される複数の位置の何れかに各溶着部3Qの形成位置が変更されても、それらの溶着部3Qは、目立ち易く、アルミニウム合金中空押出部材1Qの外側から容易に視認される。しかも、それらの溶着部3Qは、すべて壁部4Qのみに形成され、壁部4Q同士を互いに垂直に繋ぐ部分である接続部5Qに形成されるものではないため、アルミニウム合金中空押出部材1Qの強度低下や破断を引き起こすものと誤認され易いと言える。
【0080】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0081】
(1)上記実施形態1等で例示したアルミニウム合金中空押出部材は、ドアビーム以外の用途で用いられてもよい。
【0082】
(2)アルミニウム合金中空押出部材に使用される材料(アルミニウム合金)としては、ポートホール押出法で製造可能であれば、特に制限はない。また、アルミニウムを材料としてもよい。
【0083】
(3)上記実施形態1等で例示したアルミニウム合金中空押出部材は、適宜、加工が施されてもよい。例えば、アルミニウム合金中空押出部材の中空体は、長手方向が湾曲するように曲げ加工が施されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…アルミニウム合金中空押出部材、2…中空体、2a…断面、3…溶着部、4…壁部、5…接続部、6…中空部、L…長手方向