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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136585
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】前方監視システム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20230922BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230922BHJP
   G06V 20/58 20220101ALI20230922BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20230922BHJP
【FI】
B61L23/00 A
G06T7/00 650B
G06V20/58
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042337
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】清水 拓
(72)【発明者】
【氏名】小田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 究
【テーマコード(参考)】
5H161
5J084
5L096
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161MM05
5H161MM12
5H161NN12
5J084AA04
5J084AA13
5J084AA14
5J084AB20
5J084AC02
5J084BA03
5J084BA48
5J084CA22
5J084CA26
5J084CA70
5J084EA22
5L096AA06
5L096BA02
5L096CA02
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA51
5L096JA03
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】 センサで取得した軌道に対応する点群が不完全である場合でも、安定して軌道を認識することのできる前方監視システムを提供する。
【解決手段】 センサ出力から敷設面点群を除去する敷設面点群除去部と、除去した残りに含まれる情報である物体の断面形状に対し、コンピュータがメモリに記憶された軌道断面と比較することにより第1軌道候補物体を抽出する第1絞り込み部と、第1軌道候補物体の幅と軌道断面の幅を比較することにより第2軌道候補物体を検出する第2絞り込み部と、第2軌道候補物体を含む軌道物体を補完することにより軌道を認識する軌道曲線補完部と、を有し、センサ出力は、軌道に対応する点群と、軌道の敷設面に対応する点群と、を含んでおり、敷設面点群除去部は、センサ出力から物体の情報を抽出し、軌道曲線補完部は、抽出された物体を軌道と認識し、その近辺に障害物の有無判定を支援する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を案内する軌道を捉えるセンサと、そのセンサ出力を処理するコンピュータと、を備えた前方監視システムであって、
前記センサ出力から敷設面点群を除去する敷設面点群除去部と、
前記除去した残りに含まれる情報である物体の断面形状に対し、前記コンピュータがメモリに記憶された軌道断面と比較することにより第1軌道候補物体を抽出する第1絞り込み部と、
前記第1軌道候補物体の幅と前記軌道断面の幅を比較することにより第2軌道候補物体を検出する第2絞り込み部と、
前記第2軌道候補物体を含む軌道物体を補完することにより前記軌道を認識する軌道曲線補完部と、
を有し、
前記センサ出力は、前記軌道に対応する点群と、前記軌道の敷設面に対応する点群と、を含んでおり、
前記敷設面点群除去部は、前記センサ出力から物体の情報を抽出し、
前記軌道曲線補完部は、前記抽出された物体の情報に基づいて、前記敷設面から突出した物体を軌道と認識し、
前記認識された前記軌道の近辺に走行障害物が有るか無いかの判定を支援する情報を出力する、
前方監視システム。
【請求項2】
前記軌道は複数のレールで構成され、
前記敷設面は地面であり、
前記敷設面点群除去部は、地面点群除去部であり、
前記第1軌道候補物体は、第1複数レール候補物体を含む複数物体であり、
前記第1絞り込み部は、前記複数物体の断面寸法とレール断面寸法を比較することにより前記第1複数レール候補物体を抽出し、
前記第2絞り込み部は、前記第1複数レール候補物体間の寸法と複数レール間の寸法を比較することにより第2レール候補物体を検出し、
前記軌道曲線補完部は、前記第2レール候補物体を含む複数の物体を補完することによりレールを検出するレール曲線補完部である、
請求項1に記載の前方監視システム。
【請求項3】
前記第1絞り込み部は、
レール断面寸法に基づいて作成される第1不完全テンプレートを有し、
該第1不完全テンプレートは、レール断面の縦横最大寸法に基づいて作成される長方形又は任意形状であり、
前記複数物体の断面寸法が、前記第1不完全テンプレートの範囲内である前記複数物体を、第1複数レール候補物体として抽出する、
請求項2に記載の前方監視システム。
【請求項4】
前記第1絞り込み部は、
レール断面形状に基づいて作成される第2不完全テンプレートを有し、
前記複数物体を構成する点群と、前記第2不完全テンプレートと、の適合率が所定値以上である複数物体を、第1複数レール候補物体として抽出する、
請求項2に記載の前方監視システム。
【請求項5】
前記第2絞り込み部は、
軌道軸予測線より前記第1複数レール候補物体の複数の代表位置を求め、
該複数の代表位置間の距離が、複数レール間の寸法に基づいて求められる所定距離である第1レール候補物体を第2レール候補物体とする、
請求項2に記載の前方監視システム。
【請求項6】
前記移動体は鉄道の車両であり、
所定区間より前記車両に近い1つ前の区間のレール検出結果を用いて作成した第1レール候補線に対し、所定範囲の前記第2レール候補物体を第3レール候補物体として抽出する第3絞り込み部をさらに有する、
請求項2に記載の前方監視システム。
【請求項7】
前記第3絞り込み部は、
前記所定区間より1つ前の区間に存在する複数の前区間レール物体を
左方のレール物体を含む左レールペアと、
右方のレール物体を含む右レールペアと、
に分離し、
前記所定区間より前記車両に近い1つ前の区間のレール検出結果と、前記左レールペアと、を用いて作成した左レール候補線に対し、所定範囲から前記第2レール候補物体を抽出し、
前記所定区間より前記車両に近い1つ前の区間のレール検出結果と、前記右レールペアと、を用いて作成した右レール候補線に対し、所定範囲から前記第2レール候補物体を抽出する、
請求項6に記載の前方監視システム。
【請求項8】
軌道軸予測線より求められる軌道軸推定位置に基づいて作成される複数の第2レール候補線と、
前記第2レール候補物体又は前記第2レール候補物体を構成する第2レール候補点群と、
の距離に基づいて作成される目的関数が最小である第2レール候補線を抽出し、
前記第2レール候補線と所定距離範囲から前記第2レール候補物体を第4レール候補物体として抽出する、
第4絞り込み部をさらに有する、
請求項2に記載の前方監視システム。
【請求項9】
前記第4絞り込み部は、
前記第2レール候補物体から前記第4レール候補物体を除外して他レール候補物体とし、
前記複数の第2レール候補線と、
前記他レール候補物体又は前記他レール候補物体を構成する他レール候補物体点群と、
の距離に基づいて作成される目的関数が所定値以下の他レール候補線を抽出し、
該他レール候補線と所定距離内の他レール候補物体を前記第4レール候補物体と認識する、
請求項8に記載の前方監視システム。
【請求項10】
所定範囲より1つ前の範囲における地面高さに対し、
所定範囲の地面高さが不連続に上昇した場合は前記軌道に交差する道路、又は前記敷設面を兼用する道路として検知し、
前記地面点群除去部が検出した地面より下方に突出した物体を抽出する、
請求項2に記載の前方監視システム。
【請求項11】
前記レールの途中に転てつ機がある場合の開通方向を判定可能であり、
左レールペアに対応する左レールペア点群の進行方向最近傍位置と、
右レールペアに対応する右レールペア点群の進行方向最近傍位置と、
の距離が所定値以上ならば、
左レールペア点群の進行方向最近傍位置と、
右レールペア点群の進行方向最近傍位置と、
のうち前記車両より遠隔な左レールペアの幅から右レールペアの幅を引いた差分を求め、
前記差分が正の値の場合は左レールが開通と判定し、
前記差分が負の値の場合は右レールが開通と判定する、
請求項7に記載の前方監視システム。
【請求項12】
左レールが開通であると判定された場合は、それ以降の区間に対し左レールのみをレール検出し、
右レールが開通であると判定された場合は、以降の区間に対し右レールのみをレール検出する、
請求項11に記載の前方監視システム。
【請求項13】
前記センサは、取得点群がレイヤ単位で整理され、
前記センサの取り付け位置及び取り付け角度は、
想定される軌道方向に対するレイヤ方向の角度が所定範囲である、
請求項1に記載の前方監視システム。
【請求項14】
レールに沿って走行する車両に設置されるセンサと、
該センサにより取得した情報に基づいてレールを検出するレール検出部と、
該レール検出部により検出したレールに基づいて所定範囲を設定し、
該所定範囲内の障害物を検出する障害物判定部と、
を有する、
請求項2~13の何れか1項に記載の前方監視システム。
【請求項15】
移動体を案内する軌道を捉えたセンサ出力をコンピュータで処理した情報に基づく前方監視方法であって、
前記コンピュータは、メモリに記憶されたプログラムを実行して形成された各機能部が情報処理することにより、
敷設面点群除去部が、前記軌道に対応する点群を含む前記センサ出力より検出された敷設面から突出した物体を抽出し、
第1絞り込み部が、前記物体の断面形状と、前記メモリに記憶された軌道断面と、を比較することにより第1軌道候補物体を抽出し、
第2絞り込み部が、前記第1軌道候補物体の幅と、前記軌道断面の幅と、を比較することにより第2軌道候補物体を検出し、
軌道曲線補完部が、検出された前記第2軌道候補物体を含む軌道物体を補完することにより前記軌道を検出し、
検出された前記軌道の近辺に走行障害物が有るか無いかの判定を支援する前方監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は前方監視システム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走行する車両の前方を監視する技術では、車両走行に支障となる物体を検出して対応するため、自車走行領域の推定が必要である。自車走行領域は軌道に沿った立体として定義することができる。このような走行領域推定のため、センサによるレール検出方法が、特許文献1~3において提案されている。
【0003】
特許文献1では、センサ出力としてのカメラ画像データと、予め用意されたレールのテンプレート画像データやレールの輝度値の基準分布データと、をマッチングさせることにより、レール位置を推定する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2では、軌道幅方向の所定範囲にわたって測距可能な測距センサから得られた測距データを用い、その測距データを処理して軌道の軌道幅方向におけるエッジを検出し、検出されたエッジ位置に基づいて軌道を推定する方法が開示されている。
【0005】
特許文献3では、位置推定手段で取得した経路情報や軌間を基に探索範囲を決定して抽出した点群と、レールテンプレートの点群と、をマッチングさせることにより、レール位置を確定させるほか、複数種類のテンプレートから適切なテンプレート選択することにより、正しくマッチングしてレール位置を確定させる方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-006788号公報
【特許文献2】特開2020-155047号公報
【特許文献3】特開2016-212031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のカメラ画像によるレール検出では、夜間の性能低下が不可避である。また、特許文献2のレーザーレーダで形成される測距センサは、地上高が軌道と変わりない地上子のようなものを含める3つ以上の物体が検出された場合、軌道を正確に識別することは難しい。
【0008】
特許文献3の方法において、三次元レーザーレーダを用いても、自己位置が不定、又は不正確である場合、レール検出に失敗する可能性がある。また、レールの表面は鏡面反射率が高いため、レール頭頂面に照射されたレーザーが鏡面反射してセンサに戻って来ず、レール頭頂面の点群が抜け落ちるため、正しいマッチングが困難になる。また、形状が不完全なテンプレートを選択してマッチングしても、レール以外の物体にマッチすれば、レール位置の確定が困難である。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、センサで取得した軌道に対応する点群が不完全である場合でも、安定して軌道を認識することのできる前方監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、移動体を案内する軌道を捉えるセンサと、そのセンサ出力を処理するコンピュータと、を備えた前方監視システムであって、センサ出力から敷設面点群を除去する敷設面点群除去部と、除去した残りに含まれる情報である物体の断面形状に対し、コンピュータがメモリに記憶された軌道断面と比較することにより第1軌道候補物体を抽出する第1絞り込み部と、第1軌道候補物体の幅と軌道断面の幅を比較することにより第2軌道候補物体を検出する第2絞り込み部と、第2軌道候補物体を含む軌道物体を補完することにより軌道を認識する軌道曲線補完部と、を有し、センサ出力は、軌道に対応する点群と、軌道の敷設面に対応する点群と、を含んでおり、敷設面点群除去部は、センサ出力から物体の情報を抽出し、軌道曲線補完部は、抽出された物体の情報に基づいて、敷設面から突出した物体を軌道と認識し、認識された軌道の近辺に走行障害物が有るか無いかの判定を支援する情報を出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、センサで取得した軌道に対応する点群が不完全である場合でも、安定して軌道を認識することのできる前方監視システムを提供できる。これによれば、障害物判定における誤判定や未判定を低減するために、高精度のレール検出情報を出力し、車両運行の安全性を高めるための支援ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係る前方監視システム(以下、「本システム」ともいう)による代表的な障害探知例を示す斜視図である。
図2】実施例1の本システムの処理手順等を示すフローチャートである。
図3】本システムに適用する座標系の説明図である。
図4】実施例1の本システムで軌道中心推定を説明するための平面図である。
図5】実施例1の本システムで物体抽出方法を説明するための正面断面図である。
図6】実施例1の本システムでレール断面寸法による絞り込み処理を説明するための正面断面図である。
図7】実施例1の本システムでレール間寸法による絞り込み処理を説明するための正面断面図である。
図8】本発明の実施例2に係る本システム(実施例1以外も「本システム」という)の処理手順等を示すフローチャートである。
図9】実施例2の本システムで軌道予測線による絞り込み処理を説明するための平面図である。
図10】実施例2の本システムで曲線及び分岐に対応した軌道予測線による絞り込み処理を説明するための平面図である。
図11】実施例3の本システムでレール断面寸法による絞り込み処理を説明するための正面断面図である。
図12】実施例4の本システムで軌道予測線による絞り込み処理を説明するための平面図である。
図13】実施例5の本システムで物体抽出方法を説明するための正面断面図である。
図14】実施例6の本システムで物体抽出方法を説明するための正面断面図である。
図15】実施例7の本システムで分岐判定方法を説明するための平面図である。
図16】実施例8の本システムでセンサ設置方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例1~実施例8について図面を参照して説明する。なお、本発明はそれらの実施例に限定されない。以下、2本のレールで基本構成された軌道を代表例とし、本システムによる安定したレール(軌道)検出について説明する。本システムは、この代表例とは異なる軌道形態の新交通システムやモノレールにも適用できる。なお、本システムは、鉄道の駅間を運転する列車のほか、駅構内や車両基地内を移動する車両にも適用され、これら適用対象の全てをここでは車両という。
【実施例0014】
図1は、本システム10による代表的な障害探知例を示す斜視図である。本システム10は、図1の障害探知例に示すような軌道40に案内されて走行する移動体(以下、「車両」ともいう)20の安全運行を支援するものである。本システム10は、前方監視センサ101、物体検出部103、レール検出部104、障害物判定部105より構成され、これらを車上装置としいて車両20に搭載して構成されるが、センサ101以外は不図示の地上設備としても良い。
【0015】
本システム10の各機能部は、コンピュータがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより形成される処理機能であり、視覚的に識別されるものでないため不図示のものも有る。そのため「~部」は、説明の便宜上の呼称であり、それに代えた「~処理」といった呼称でも実質同様の意味に解釈される。コンピュータは、1チップマイコンで足りるが、パーソナルコンピュータ等でも構わない。また、通信機能を利用して運行管理部、その他の地上設備に具備されたコンピュータの一部を兼用しても構わない。
【0016】
本システム10は、前方監視センサ101が取得したデータをコンピュータで処理して障害物判定する。すなわち、本システム10、及びそれを用いた前方監視方法(以下、「本方法」ともいう)は、前方監視センサ101にレーザーレーダを採用し、それによって取得した点群の中から地面より突出した点群を抽出してまとめた物体単位に対し、レール40の外形特徴(以下、「寸法特性」ともいう)に当て嵌まる物体をレール40だと推定する。
【0017】
物体検出部103は、車両前方の物体位置を推定し、レール検出部104は車両前方のレール40の位置を推定する。つぎに障害物判定部105は、レール位置推定結果に基づいて車両走行領域50を推定し、物体位置推定結果が車両走行領域50内か否かを判定する。
【0018】
前方監視センサ(以下、「センサ」又は「レーザーレーダ」ともいう)101は、車両20に設置されて、前方の点群情報を取得する。物体検出部103は、センサ101のセンサ出力に基づいて、車両20の前方の物体位置を推定する。物体検出部103は、センサ101と、それとは異なる性質の第2前方監視センサ102と、少なくとも何れかのデータを用いて物体を検出しても良い。
【0019】
第2前方監視センサ102は、センサ101と同様の目的で、冗長性を持たせるために、性質の異なるセンサ102として、例えば、カメラやミリ波レーダ等が挙げられる。レール検出部104は、センサ101の点群情報を入力とし、車両前方のレール40を検出する機能を有する。
【0020】
障害物判定部105は、物体検出部103とレール検出部104の結果に基づいて、検出した物体が障害物であるか否かを判定する機能を有する。より具体的には、物体の位置が図1の物体301のように、車両走行領域50の範囲内であれば、車両走行の支障になるため、障害物判定部105が障害物であると判定する。逆に、図1の物体302のように、車両走行領域50の範囲外であれば、車両走行の支障とならないため、障害物判定部105が障害物ではないと判定する。
【0021】
車両走行領域50とは、車両20が今後走行する二次元又は三次元の領域である。車両走行領域50に存在する物体301は、車両20との衝突リスクがあるとみなし、障害物と判定する。車両走行領域50の算出方法の一例として、レール検出結果を用いて2本のレール40の中間線を軌道軸501として求め、その軌道軸501から距離502だけ離れた領域までを車両走行領域50とする方法がある。距離502は、例えば、建築限界や車両限界等の法定基準に基づいて計算すると良い。
【0022】
つぎに、本システム10の動作を説明する。図2は、図1の本システム10の処理手順等を示すフローチャートであり、点群データD101と、点群座標データ取得処理S101と、軌道中心点推定処理S102と、区間内点群抽出処理S103と、地面点群除去処理を伴う物体抽出処理S104と、レール断面寸法による絞込み処理S105(第1絞り込み)と、レール間寸法による絞込み処理S106(第2絞り込み)と、所定点群処理完了したか否か?の判断S107と、レール曲線補完処理S108と、レール推定曲線D102と、を示している。
【0023】
以下、これらの各処理はS符号のみで示す。この図2において、特にS101~S108は、レール検出部104の動作を明示している。なお、S107がYesならS108へ進み、NoならS102へ戻る。レール検出部104は、まずS101により、センサ101から入力される点群データD101を取得し、図3で定義する車両固定三次元xyz座標系Σ0(以下、「座標系Σ0」と略す)に変換する。
【0024】
図3は、本システム10に適用する座標系Σ0の定義についての説明図である。座標系Σ0は、レール40に沿った方向のx軸と、枕木方向のy軸と、天頂方向のz軸と、を有する右手座標系である。さらに原点Oは、x原点を車両前面位置とし、y原点を車両前面のy方向中点とし、z原点を車両台枠(不図示)のz方向最下面位置と規定する。
【0025】
本システム10は、以降の処理S102~S106において、推定軌道中心に基づいて検査区間を定義し、検査区間内の点群を用いてレール40を検出し、レール検出結果を用いて、つぎの検査区間の軌道中心点を推定する、という動作を車両近傍から遠方まで繰り返すことにより、その範囲にあるレール40を全て検出する。検査区間とは、推定軌道中心点を起点として一定距離範囲の領域であり、レール40、又はx軸に沿って、概ね等間隔に定義される。
【0026】
図4は、実施例1の本システム10による軌道中心点推定処理S102を説明するための平面図である。S102における推定軌道中心及び検査区間の算出方法は、図4(G20)に示すように、車両20に対して最近傍の場合と、そうでない場合図4(G21)とで異なる。
【0027】
まず、車両最近傍の場合(G20)、座標系Σ0におけるy原点は、2本のレール40の間であることが多い。さらに、車両20に対するレール40のz方向位置の変動要因は、空気ばね等の懸架装置による車両20の上下動程度である。そのため、車両20とレール40のz方向の相対位置は、概ね一定と見なせる。
【0028】
したがって、本システム10は、推定軌道中心のy座標をy=0とし、z座標については、車両20の静止時におけるレール頭頂面のz位置とし、x位置をx=0とすることにより、A0を起点とした一定範囲を定義する。本システム10は、このような座標の定義において、左右レール40を含む点群の座標を取得(以下、単に「取得」という)することができる。
【0029】
車両最近傍の場合における検査区間の定義については、図4(G20)のように、A0を起点とし、yの正負方向に距離Dy0だけ離れた位置までと、xの正方向に距離Dx0だけ離れた位置までと、を含む領域とすればよい。
【0030】
つぎに図4(G21)を用い、最近傍より奥の位置における推定軌道中心Aiの算出方法を説明する。推定軌道中心Aiは、図4(G21)のように、左右レール検出結果G211の中点とする。この推定軌道中心Aiは、検査区間Diより車両20に近く、検査区間Diに対して1つ手前の検査区間Di-1における左右レール検出結果G211の中点である。
【0031】
左右レール検出結果G211は、検査区間Di-1における左右レール検出結果の代表点の組で良い。あるいは、左右レール検出結果の代表点に対応する点群における、左レール40の最遠方点と、右レール40の最遠方点と、の組を左右レール検出結果G211としても良い。
【0032】
検査区間Diの算出方法については、図4(G21)のように、検査区間Diに対応する座標系Σiを定義し、推定軌道中心Aiを起点とし、その起点Aiからyiの正負方向に距離Dyiと、xiの正方向に距離Dxiと、それぞれの距離までを含む領域とすればよい。
【0033】
座標系Σiの向きについては、座標系Σ0と各軸が平行であっても良い。あるいは、座標系Σ0に対して回転させても良い。回転させる場合、検査区間D0,D1,…,Di-1(図16参照)におけるレール検出結果に基づいて、軌道軸予測線yi=ciの原点Aiを作成する。その原点Aiにおいて検出された曲線レールとの接線方向がxi軸となる。
【0034】
このように回転させた座標系のyi軸は、レール40がカーブしている場合、座標系Σ0のy軸よりもレール40の枕木方向と平行に近い。軌間は枕木方向のレール間距離と概ね等しいことから、後段の処理で行う軌間を用いたレール候補絞り込み処理を行う場合、複数レール候補のy方向距離よりも、前段で絞り込まれたレール候補のyi方向距離を用いる方がより正確であることが見込まれる。以上がS102の動作である。
【0035】
つぎに、S103により、S102で算出された検査区間に存在する点群を、レール40を含む区間内点群として抽出する。さらに、S104により、区間内点群の中で地面に相当する点群を除去し、地面より突出した複数物体Coi(図5)を検出する。
【0036】
図5は、実施例1の本システム10で物体抽出方法を説明するための正面断面図であり、図2のS104における地面点群の除去方法、及び地面より突出した複数物体Coiを検出する方法を説明するための図である。図5に示すように、まずS104では、Σi座標系のyi軸と、zi軸と、よりなる二次元平面に、●及び〇で示す区間内点群を投影する。つぎにS104では、地面に相当する〇を繋いだ直線又は曲線lgiを識別する。
【0037】
本システム10は、図5において、さらに直線又は曲線lgiとのzi方向距離が閾値Δzg以下の点群と、直線又は曲線lgiよりもzi座標が小さい点群とを、区間内点群から除去する。これにより、本システム10は、地面に相当する〇で示した点群を除去し、地面より突出している●で示した点群Cpiを抽出することができる。
【0038】
本システム10は、直線又は曲線lgiについて、例えば、地面より突出している点群と比べて、地面に相当する点群の点数の方が多い傾向にあることに着目し、地面より突出している点群Cpiを外れ値として除去する曲線算出方法を用いても曲線lgi等を検出しても良い。あるいは、既知の点数の延長線上にある単回帰直線として、直線又は曲線lgiを検出しても良い。
【0039】
つぎに、地面より突出した複数物体Coiの算出方法を説明する。本システム10は、地面より突出した複数物体Coiについて、地面より突出している点群Cpiを点間距離でグルーピングし、複数物体単位にまとめることによって求める。例えば、点群Cpiの点間距離が所定の閾値D以下の点は、同一物体を構成するとみなすことにより、グルーピングを行う方法がある。以上がS104の動作である。
【0040】
つぎに、本システム10の第1絞り込み処理(S105,S106)のうち、図6に示すS105を説明する。図6は、レール断面寸法による絞り込み処理(S105)を説明するための正面断面図である。S105では、複数物体Coiの中からレール断面の寸法特性を有する物体を抽出し、第1レール候補物体Co1iを取得する。
【0041】
図2図8(S105)及び図6に示すように、本システム10は、レール断面の寸法特性を模擬した第1不完全テンプレートT1(図6)を用いて、第1絞り込み処理(S105)を行う。すなわち、本システム10は、複数物体Coiの中で、第1不完全テンプレートT1の範囲に収まる物体は、レール断面の寸法特性を有するとみなし、第1レール候補物体Co1iを抽出する。
【0042】
第1不完全テンプレートT1は、レール断面の寸法に基づいて作成される図形であり、例えば、レール断面の縦横最大寸法にマージンを加算した長方形である。また、第1不完全テンプレートT1の下辺の中点は、地面に相当する直線又は曲線lgi上に位置づけられた設定とする。その設定であれば、本システム10は、レール断面と同様の寸法を有する第1レール候補物体Co1iを抽出する。このとき、本システム10は、第1不完全テンプレートT1を用いてセンサ出力を処理する。第1不完全テンプレートT1は、地面から浮いている点群の中からノイズを除去する効果がある。
【0043】
また、本システム10は、レール断面の輪郭を完成させるには欠損のあるレール点群であっても、第1不完全テンプレートT1の範囲内とみなすように認識できる。よって、本システム10によれば、特許文献3で課題となっていた頭頂面レール部分が欠けている点群についても、レール候補として残すことにより、レール40として安定した認識ができる。以上がS105の動作である。つぎに、第1レール候補物体Co1i間の距離と軌間を比較することにより、レール間寸法による絞り込み処理(S106)を行い、第2レール候補物体Co2i(図9)を抽出する。
【0044】
図7は、実施例1の本システム10により、レール40の軌間寸法による絞り込み処理(図2及び図8のS106であり、本発明でいう第2絞り込みに相当)を説明するための正面断面図である。本システム1は、複数の第1レール候補物体Co1i相互の実測距離が、既知の軌間にマッチするか否かを比較する。まず、軌間は左レール40内側と、右レール40内側と、の距離であることから、第1レール候補物体Co1iにおける、レール40内側と考えられる位置を算出する必要がある。
【0045】
そこで、本システム10は、図7のように、推定軌道中心Aiを通り、zi軸に平行な軌道中心線yi=Ciを作成し、その軌道中心線yi=Ciに対し、yi座標が大きい物体を左レール物体、yi座標が小さい物体を右レール物体とみなし。すなわち、本システム10は、yi座標が全てCiより大きい第1レール候補物体Co1iを左レール40と推定される物体Co1i(l)とし、yi座標が全てCiより小さい第1レール候補物体Co1iを右レール40と推定される物体Co1i(r)とする。
【0046】
なお、本システム10は、物体Co1iの中で、yi座標がCiを跨るものについて、レール40であるはずがないと判断して除外する。つぎに、本システム10は、左レール40と推定される物体Co1i(l)のyi方向最小値を物体Co1i(l)Aの代表点とし、右レール40と推定される物体Co1i(r)のyi方向最大値を物体Co1i(r)の代表点とすることにより、左右レール40の内側の点候補を求めることができる。
【0047】
最後に、本システム10は、全ての物体Co1i(l)と物体Co1i(r)の組に対し、代表点の距離が軌間に基づいて作成した距離範囲内である組を抽出し、第2レール候補物体Co2i(図9)とする。第2レール候補物体Co2iは、右レール物体Co12i(r)と左レール物体Co12i(l)との一対をなす。
【0048】
ここで、図7を用いて、右レール物体Co12i(r)と、左レール物体Co12i(l)の抽出方法を説明する。図7の例示において、左レール物体は、Co1i(l)Aと、Co1i(l)Bと、の2つであり、右レール物体はCo1i(r)で1つである。
【0049】
左側の物体Co1i(l)Aの代表点Cr1i(l)Aと、右側の物体Co1i(r)の代表点Cr1i(r)と、の距離は軌間に等しいとの認定範囲内である。また、中間よりも左寄りの物体Co1i(l)Bの代表点Cr1i(l)Bと、物体Co1i(r)の代表点Cr1i(r)と、の距離は近過ぎて認定範囲外である。この図7で例示したような場合、本システム10は、物体Co1i(l)Aを左レール物体Co12i(l)、物体Co1i(r)を右レール物体Co12i(r)と認定する。
【0050】
本システム10は、軌間による第2絞り込み処理を行うことにより、第1絞り込み処理によって抽出された第1レール候補物体Co1iの中で、レール断面と同様の縦横寸法や地面からの高さを有し、かつレール40ではない物体をさらに除去することができるため、レール検出の成功率が向上し、より安定したレール検出が可能となる。以上がS106の動作である。
【0051】
つぎにS107により、処理対象の点群に対して処理が完了しているかを判定し、処理が完了していない場合はS102に戻り、つぎの検査区間Di+1に対しても第2レール候補物体Co2i+1(r)を算出する。処理が完了した場合はS108に移行し、S108においてレール検出結果を算出する。S108では、各検査区間D0,D1,…,Dn(図16参照)において算出した全ての第2レール候補物体Co2i,Co120,Co121…,Co12nを補完することにより結び、レール検出結果を出力する。
【0052】
第2レール候補物体Co2i(図9)の補完は、左右レール40それぞれに対して行う。すなわち、本システム10は、各検査区間D0、D1,…,Dnにおける全ての右レール物体Co20(r),Co21(r),…,Co2n(r)を用いて補完曲線を求めることにより、右レール曲線を抽出する。
【0053】
同様に、本システム10は、各検査区間における全ての左レール物体Co20(l),Co21(l),…,Co2n(l)を用いて補完曲線を求めることにより、左レール曲線を抽出する。右レール曲線と左レール曲線を統合し、レール検出結果であるレール推定曲線D102(図2)として出力する。
【実施例0054】
実施例2では、実施例1の構成に対して軌道予測線による絞り込み部を追加して高性能化したレール検出方法について、図8図10を用いて説明する。図8の本システム10は、レール検出性能のノイズ耐性を向上し、かつ、分岐における左右レールペアの検出もできる。
【0055】
図8は本システム10で軌道予測線による絞り込み処理、特にレール検出部104の動作を示すフローチャートである。実施例2(図8)では、実施例1(図2)のS106とS107との間に、軌道予測線による絞り込み処理S109(本発明でいう第3絞り込み)が追加されている。このS109では、レール間寸法による絞り込み部が出力した第2レール候補物体Co2iを、軌道予測線を用いて、さらなる絞り込み処理と分岐の判定を行い、第3レール候補物体Co3iを出力する。
【0056】
軌道予測線とは、現在の検査区間Diより前の検査区間D0,D1,…,Di-1のレール検出結果を用いて算出される、検査区間Diにおけるレール40の推定位置を表す直線又は曲線である。
【0057】
図9は、実施例2の本システム10で軌道予測線による絞り込み処理S109を説明するための平面図である。図9において、軌道予測線の作成方法、及び軌道予測線による第2レール候補物体Co2iの絞り込み処理S109を例示する。まず、軌道予測線の算出方法はつぎのとおりである。
【0058】
すなわち、本システム10は、現在の検査区間Diより前の区間D0,D1,…,Di-1において算出された第3レール候補物体Co30,Co31,…,Co3i-1に含まれる左レール物体Co30(l),Co31(l),…,Co3i-1(l)を補完する。
【0059】
また、本システム10は、左レール40の補完線Spl(l)の外挿線Sple(l)算出する。また、本システム10は、右レール物体Co30(r),Co31(r),…,Co3i-1(r)を補完することにより算出された右レール40の補完線Spl(r)の外挿線Sple(r)を、軌道予測線として作成する。
【0060】
実施例2の本システム10は、軌道予測線算出のために、現在の検査区間Diの前後の区間D0,D1,…,Di-1の第3レール候補物体も使用しているが、検査区間Diより手前L点(不図示)の区間Di-L,…,Di-1のみを用いてもよい。
【0061】
つぎに、第2レール候補物体Co2iの絞り込み処理を説明する。検査区間Diにおいて、外挿線Sple(l),Sple(r)との距離が閾値Δyr以内である第2レール候補物体Co2iを、第3レール候補物体Co3iとして抽出する。この時、実施例2のように、抽出された物体の個数が左レール物体Co3i(l)で1個、右レール物体Co3i(r)で1個の場合は分岐が発生していないと判定する。
【0062】
図10は、実施例2の本システム10で曲線及び分岐に対応した軌道予測線による絞り込み処理を説明するための平面図である。一方、図10のように抽出された物体の個数が左レール物体Co3i(l)で2個(G31)、右レール物体Co3i(r)で2個(G32)の場合、本システム10は、分岐が発生していると判定する。また、本システム10は、第3レール候補物体Co3iにおいて、左レールペアP3i(p=l)と右レールペアP3i(p=r)で区別する。
【0063】
実施例2では、検査区間Diにおいて、第3レール候補物体Co3iのうち、左レールペアP3i(p=l)に属する左レール物体をCo3i(l,p=l)と呼び、右レール物体をCo3i(r,p=l)呼ぶ。また、検査区間Diにおいて、右レールペアP3i(p=r)に属する左レール物体をCo3i(l,p=r)と呼び、右レール物体をCo3i(r,p=r)と呼ぶ。さらに、分岐が発生していない区間においては、p=r,p=lの表記を省略し、左レール物体をCo3i(l)、右レール物体をCo3i(r)と呼ぶ。
【0064】
検査区間Diで分岐判定が行われた場合、つぎの検査区間Di+1は左レールペアを推定するための検査区間Di+1(p=l)と、右レールペアを推定するための検査区間Di+1(p=r)に分けてレール検出する。具体的には、左レールペアの検査区間Di+1(p=l)では、S102における軌道中心点は左レールペアの左レール候補物体Co3i(l,p=l)と左レールペアの右レール候補物体Co3i(r,p=l)に基づいて行う。
【0065】
さらに、S109では、検査区間D0,D1,…,Diと、左レールペア検査区間Di(p=l)において検出した第3レール候補物体Co3iと、を用いて軌道予測線を算出する。右レールペアの検査区間Di+1(p=r)におけるS102の軌道中心点は、右レールペアの左レール候補物体Co3i(l,p=r)と、右レールペアの右レール候補物体Co3i(r,p=r)と、に基づいて算出する(S102)。
【0066】
さらに、S109では、検査区間D0,D1,…,Diと、右レールペア検査区間Di(p=r)において検出した第3レール候補物体Co3iを用い、軌道予測線を算出する。
【0067】
実施例2において、レール曲線補完部は、第2レール候補物体Co20、Co21,…,Co2i,Co2nではない。レール曲線補完部は、各検査区間で算出した第3レール候補物体Co30,Co21,…,Co2nに対し、左レール40、右レール40それぞれに対して曲線補完処理し、レール検出結果としてレール推定曲線を出力する(S107)。
【0068】
S109において、検査区間Diにおいて分岐が存在すると判定された場合、つぎの第1~第4に示す対象それぞれに対して曲線補完処理し、レール検出結果としてレール推定曲線を出力する。
【0069】
第1の対象は、左レールペアの左レール候補物体Co30(l),Co31(l),…,Co3b-1(l),Co3b(l,p=l),…,Co3n(l,p=l)である。
【0070】
第2の対象は、右レール候補物体Co30(r),Co31(r),…,Co3b-1(r),Co3b(r,p=l),…Co3n(r,p=l)である。
【0071】
第3の対象は、右レールペアの左レール候補物体Co30(l),Co31(l),…,Co3b-1(l),Co3b(l,p=r),…,Co3n(l,p=r)である。
【0072】
第4の対象は、右レール候補物体Co30(r),Co31(r),…,Co3b-1(r),Co3b(r,p=r),…,Co3n(r,p=r)である。
【0073】
軌道予測線による絞り込み処理を追加することにより、第2レール候補物体Co2iに含まれる、軌間と同様の幅を有するレール40以外の物体ペアを除外することができ、レール検出の成功率をさらに向上させることができ、より安定したレール検出が可能となる。
【0074】
また、レール40分岐判定処理を追加することによりレール40の分岐が発生した場合においてもレール検出を行うことができ、安定したレール検出が可能となる。さらに、左レールペアと右レールペアに分けて検出を行っていることから、他の手段によって分岐の開通方向が与えられた場合、開通方向のレール40のみを検出することも可能である。
【実施例0075】
実施例3では、実施例1又は実施例2のレール断面寸法による絞り込み処理を行うS105(本発明でいう第1絞り込み)において、レール断面の縦横最大寸法に基づいて作成され、長方形形状を有する第1不完全テンプレートではなく、レール断面形状の一部を再現した第2不完全テンプレートを用い、第1レール候補物体Co1を抽出する。
【0076】
図11は、実施例3の本システム10でレール断面寸法による絞り込み処理を説明するための正面断面図である。すなわち、図11は、実施例3における第2不完全テンプレートの定義(G40)、及び第2不完全テンプレートと、検査区間Diにおける点群をyizi平面に投影した図(G41)である。
【0077】
第2不完全テンプレートは、レール40に対応する点群に欠損が生じる可能性を想定し、レール断面の一部形状に基づいて作成される。例えば、レール側面に照射されるレーザーは、レーザーレーダ101に帰ってくる傾向にある性質に着目されている。そのため、図11(G40)のように、レール40の側面のみを再現した点群Tp1,Tp2が第2不完全テンプレートを構成する。つまり、ンシステム10では、点群Tp1を第2不完全テンプレートTo2Aとし、点群Tp2を第2不完全テンプレートToBとする。
【0078】
また、図11(G41)のように第2不完全テンプレートT2Aの形状に基づいてレール物体To2A、第2不完全テンプレートTo2Bの形状に基づいてレール物体To2Bを設定する。実施例3では、レール物体To2A,To2Bの形状を、長方形形状とする。
【0079】
つぎに検査区間Diにおいて、第2不完全テンプレートT2A,T2Bを用いて第1レール候補物体Co1iを抽出する方法について説明する。まず、第2不完全テンプレートT2Aをyizi平面上でスライドさせ、各yizi位置において複数物体Coiを構成する点群との類似度を算出し、類似度が所定の閾値以上である第2不完全テンプレートT2Aの位置を複数抽出する。さらに、複数抽出した第2不完全テンプレートT2Aに対応する複数のレール物体To2Aを、第1レール候補物体Co1iとする。
【0080】
さらに、第2不完全テンプレートBをyizi平面上でスライドさせ、各yizi位置において複数物体Coiを構成する点群との類似度を算出し、類似度が所定の閾値以上である第2不完全テンプレートT2Bの位置を複数抽出する。さらに、複数抽出した第2不完全テンプレートT2Bに対応する複数のレール物体To2Bを、第1レール候補物体Co1iに加える。
【0081】
以上が実施例3におけるレール断面寸法による絞り込み処理S105の動作である。実施例3により、レール40に対応する点群に欠損がある場合においても、テンプレートマッチングに失敗することなく、レール候補の位置を複数抽出することができることから、安定したレール検出が可能となる。
【0082】
また、実施例3の本システム10は、レール形状に類似した物体が複数存在する場合に、レール40ではない物体のみにマッチングするレール検出の失敗を防止する。実施例3の本システム10は、まず、第2不完全テンプレートを用いてレール40に対応する点群を含む複数レール候補を抽出することにより、他の物体にのみマッチングする現象を回避する。実施例3の本システム10は、さらに後段の処理により、例えば軌間といったレール形状特性等を用いて絞り込むことにより、レール点群をより高精度に抽出できる。
【実施例0083】
実施例4では、検査区間においてレール形状が滑らかに変化することに着目した。これを応用した実施例4では、実施例2とは異なる軌道予測線及び分岐判定方法を説明する。図12は、実施例4の本システム10で軌道予測線による絞り込み処理(本発明でいう第4絞り込み処理)を説明するための平面図である。すなわち、図12の(G50),(G51)は、本システム10において、検査区間Di内で軌道予測線を用いた第3レール候補物体Co3iを抽出する方法を示す図である。図12において、(G50)は検査区間Di内に分岐が発生していない場合を示し、(G51)は検査区間Diに分岐が発生している場合を示している。
【0084】
実施例4の本システム10は、まず、yizi座標系において、検査区間Diの推定軌道中心点Aiよりyiの正負方向にΔDだけ離れた座標を算出し、yi正方向にΔD離れた点をSbi(l)、yi負方向にΔDだけ離れた点をSbi(r)とする。つぎに、本システム10は、点Sbi(l)を通る直線lb(l)と、点Sbi(r)を通り、直線lb(l)に平行な直線lb(r)について、第2レール候補物体Co2iを構成する点群Cp2iが最もマッチするパラメータを算出する。
【0085】
ここで、本システム10は、lb(l)と点群Cp2iとの距離の和に、lb(r)と点群Po2iとの距離の和を加算したものを目的関数Iとして求める。直線lb(l)の傾きaに対する目的関数Iについて、図12(G50)のように分岐が発生していない場合、点群Cp2iと最もマッチする直線lb(l)及び直線lb(r)は1通りであるため、目的関数Iは単一の極小値を有すると考えられる。
【0086】
一方、(G51)のように分岐が発生している場合、点群Cp2iとよく一致する直線lb(l)及び直線lb(r)は2通りあることから、目的関数Iは2つの極小値を有すると考えられる。そこで、本システム10は、目的関数Iの極小値を求め、所定値を下回る極小値が1つの場合、分岐は発生していないと判定し、極小値となる直線lb(l)の傾きaoptを算出する。
【0087】
一方、所定値を下回る極小値が2つの場合、分岐が発生していると判定し、極小値となる直線lb(l)の傾きaのうち、値が大きい方を左レールペアに対応する直線の傾きaopt(p=l)と規定し、値が小さい方を左レールペアに対応する直線の傾きaopt(p=r)と規定する。以降、第3レール候補物体の抽出方法を説明する。
【0088】
まず、図12(G50)のように分岐が発生していない場合、aoptを有する直線lb(l,a=aopt)と所定距離内の点群を、第3レール候補物体Co3iにおける左レール物体Co3i(l)、に対応する点群Cp3i(l)であると規定する。また、aoptを有する直線lb(r)と所定距離内の点群を第3レール候補物体Co3iにおける右レール物体Co3i(r)、に対応する点群Cp3i(r)であると規定する。
【0089】
つぎに、本システム10は、点群Cp3i(l)より左レール物体Co3i(l)を求めるとともに、点群Cp3i(r)より右レール物体Co3i(r)も求める。その結果、本システム10は、第3レール物体Co3iを検出する。より具体的なCo3i(l),Co3i(r)の算出方法について、本システム10は、点群Cp3i(l)を距離でグルーピングした結果の物体群をCo3i(l)と規定し、点群Cp3i(r)を距離でグルーピングした結果の物体群をCo3i(r)と規定すると良い。また、点群Cp3i(l)そのものを物体Co3i(l)と規定し、点群Cp3i(r)そのものを物体Co3i(r)と規定しても良い。
【0090】
また、(G51)のように分岐が発生している場合、左レールペアについては、aopt(p=l)を有する直線lb(l,p=l,a=aopt)と所定距離内の点群を、第3レール候補物体Co3iにおける左レール物体Co3i(l,p=l)、に対応する点群Cp3i(l,p=l)であると規定する。また、aopt(p=l)を有する直線lb(r,p=l,a=aopt)と所定距離内の点群を第3レール候補物体Co3iにおける右レール物体Co3i(r,p=l)、に対応する点群Cp3i(r,p=l)であると規定する。
【0091】
つぎに、本システム10は、点群Cp3i(l,p=l)より、左レール物体Co3i(l,p=l)を求め、同様に点群Cp3i(r,p=l)より、左レール物体Co3i(r,p=l)を求めることにより、左レールペアの第3レール候補物体Co3i(p=l)を検出する。
【0092】
右レールペアについては、aopt(p=r)を有する直線lb(l,p=r)と、所定距離内の点群とを、第3レール候補物体Co3iにおける左レール物体Co3i(l,p=r)に対応する点群Cp3i(l,p=r)であると規定し、aopt(p=r)を有する直線lb(r,p=r)と所定距離内の点群を第3レール候補物体Co3iにおける右レール物体Co3i(r,p=r)に対応する点群Cp3i(r,p=r)であると規定する。
【0093】
つぎに、本システム10は、点群Cp3i(l,p=r)より右レール物体Co3i(l,p=r)を求め、同様に点群Cp3i(r,p=r)より右レール物体Co3i(r,p=r)を求めることにより、右レールペアの第3レール候補物体Co3i(p=r)を検出する。
【0094】
実施例4の本システム10は、レール形状が滑らかに変化することに着目したものである。そのため、本システム10は、レール40ではないがレール40幅と同様の間隔で配置された第2レール候補物体Co2iがレール40に近接している場合にも、分岐が存在すると誤判定することを防ぐことができる。その結果、本システム10は、より安定したレール検出が可能となる。
【0095】
また、実施例4の本システム10において、直線lb(l)と直線lb(r)を用いたが、これに限らず曲線であっても良い。例えば、点Sbi(l)を通る二次曲線cb(l)と、点Sbi(r)を通り、曲線cb(l)に平行な二次曲線cb(r)と、について、本システム10は、第2レール候補物体Co2iを構成する点群Cp2iが最もマッチするパラメータを算出するような方法を採用して良い。
【実施例0096】
実施例5では、図13に示すように、路面電車の軌道敷面のほか踏切等において、レール頭頂面のみが露出し、それ以外の部分が埋もれている場合のレール検出方法を説明する。すなわち、実施例5の本システム10は、地面点群除去S104における処理を追加することにより、軌道敷面に対してレール40が突出していない場合でも物体検出を可能にする。
【0097】
図13は、実施例5の本システム10で物体抽出方法を説明するための正面断面図である。すなわち、図13は、実施例5における地面点群除去方法を表す図である。踏切等で軌道(レール)40に交差する道路、又は路面電車の軌道40を兼用する道路(以下、代表して「踏切等」という)の路面はレール40の頭頂面と概ね一致しているため、地面検出を利用して地面よりも上の物体を抽出した場合、何も抽出することができない。
【0098】
このような課題に対し、踏切等における地面高さは、踏切等侵入前後と比較して急に変化することと、踏切等をyizi断面で見た場合にレール側面の一部には点群がある性質に着目し、レール40を含む点群からなる物体を検出する。
【0099】
まず、検査区間Diにおいて地面推定によって算出した地面高さziから、検査区間Di-1の地面推定によって算出した地面高さzi-1を引いた値Δzgを取る。Δzgは地面高さが急に変化しなければ0に近い値を取り、検査区間Diで初めて踏切等に進入した場合にはΔzg>>0となる。そこで、Δzgが閾値を超過した場合は検査区間Diが踏切等に進入したと検知し、以降の処理を行う。
【0100】
本システム10は、検査区間Diにおいて、直線又は曲線lgiとのzi方向距離が閾値Δzg以下の点群と、直線又は曲線lgiよりもzi座標が大きい点群を区間内点群から除去することにより、地面に相当する点群を除去し、地面より下方向に突出している点群Cpiを抽出することができる。なお、点群Cpiを用いて複数物体Coiの算出する方法は、実施例1に記載の方法である。実施例5の本システム10によれば、レール40の頭頂面と同様の高さに交差道路等が存在する踏切等においてもレール検出を行うことができる。
【実施例0101】
実施例6では、レール40が踏切等や路面電車の軌道敷内に存在する場合における、実施例5とは異なるレール検出方法を説明する。実施例6では、踏切等において、車輪が通過する位置にのみ溝があることに着目し、溝を検知することによりレール40を含む複数物体Coiの検出を行う。まず検査区間Diにおける踏切等の判定方法については、実施例5と同様である。
【0102】
つぎに検査区間Diが踏切等であると判定された場合、実施例6においてはyizi平面に点群を投影した上でグルーピングを実施し、グループ間のy方向距離が所定範囲に収まっていれば、車輪が通過する溝であると判定する。
【0103】
図14は、実施例6において、溝を検知することによりレール40を含む複数物体Coiの検出する方法示す正面断面図である。図14の場合、グループCoiAとグループCoiBとのグループ間距離がw1、グループCoiBとグループCoiCとのグループ間距離がw2であるとし、これらw1,w2(以下、符号のみでも同じ)が車輪幅を参考に設定した値の範囲内であれば、車輪が通過する溝であると判定する。
【0104】
本システム10は、w1,w2が車輪を通過させる溝であると判定された後、その溝が左右どちら側のレール40に沿うものかについて、推定軌道中心Aiのyi座標Ciを用いて判定する。本システム10は、溝のyi座標がCiより大きければ、左レール40に対応すると判定し、グループを溝より左に設定し、複数物体Coiのうちの1つとする。同様に、本システム10は、溝のyi座標がCiより小さければ右レール40に対応すると判定し、グループを溝より右に設定し、複数物体Coiのうちの1つとする。
【0105】
図14の場合、w1に対応する溝のyi座標は、Ciより大きいため左レール40に対応し、グループを溝より左に設定し、複数物体Coiのうちの1つとする。w2に対応する溝のyi座標は、Ciより小さいため右レール40に対応し、グループを溝より右に設定し、複数物体Coiのうちの1つとする。グループの寸法は、レール断面の縦横寸法に基づいて予め設定する。実施例6の本システム10によれば、踏切等において、レール側面の点群を直接には取得できない場合でも、溝さえ検出すればレール40を含む物体まで検出できるのでレール検出が可能となる。
【実施例0106】
実施例7は、分岐が発生している場合に、分岐の開通方向を推定する分岐開通方向推定処理を追加したものである。分岐開通方向推定処理は、レール曲線補完S108の直前に追加され、レール曲線補完S108に開通方向の情報も送信する。レール曲線補完S108で左レールペアと右レールペアの補完処理を実施したのち、レール検出結果と開通方向の情報を、レール推定曲線として出力する。
【0107】
図15は、実施例7の本システムで分岐判定方法を説明するための平面図である。すなわち、図15は、実施例7における分岐開通方向の推定方法を表す図である。実施例7では実施例2又は実施例4に記載された方法によって推定した第3レール候補物体の情報を用いる。具体的には、検査区間D0,D1,…,Dn(p=l)における左レールペア全点群Cp3(p=l)と、検査区間D0,D1,…,Dn(p=r)における右レールペア全点群Cp3(p=r)を用いる。
【0108】
まず、左レールペア全点群Cp3(p=l)の進行方向最近傍位置xmin(p=l)と右レールペア全点群Cp3(p=r)の進行方向最近傍位置xmin(p=r)を求める。車両前方に分岐のトングレール40が存在する場合、右レールペア又は左レールペアはトングレール40以降に存在することになるため、xmin(p=l)とxmin(p=r)は同一ではなくなる。
【0109】
そこでxmin(p=l)とxmin(p=r)が所定距離以上離れている場合、xmin(p=l)とxmin(p=r)のうち車両より遠い位置をトングレール40先端位置とみなすことができる。つぎに、トングレール40先端位置における左レールペアの左右レール40幅と、右レールペアの左右レール40幅を算出する。
【0110】
左右レール40幅の算出方法は、例えば、レールペア全点群Cp3のうち、トングレール40先端位置とx座標が最も近い左レール40の点と右レール40の点をそれぞれ算出し、左レール40の点と右レール40の点との差分の絶対値を左右レール40幅とする方法がある。
【0111】
さらに、左レールペアの左右レール40幅から右レールペアの左右レール40幅を引いた値Dtrを開通方向判定値として求める。開通方向判定値が正の値であれば左レールペアが開通し、負の値であれば右レールペアが開通しているとみなすことができる。
【0112】
以上が実施例7における分岐の開通方向を判定する方法である。また、必要に応じて、開通方向のレールペアのみをレール曲線補完S108に送信する。以上の方法により、分岐が発生した場合に左右のどちらに開通しているかを判定することが可能となり、開通している分岐のみ検出する必要があるシステムの場合、より安定したレール検出が可能となる。
【実施例0113】
実施例8では、レーザーレーダ101がレール40の点群を多く捉えられるような取り付け設定について説明する。図16は、実施例8の本システム10でセンサ101設置方法を説明するための平面図である。すなわち、図16は、レーザーレーダ101の設置角度に対するレール物体の検出可能な範囲を表す図であり、G61が実施例8により推奨する設置方法である。
【0114】
図16(G60)の場合、レーザーレーダ101が取得する地面に相当する点群は、レイヤ構造L0となっており、検査区間D2においてレイヤ構造L0と曲線レールRとのなす角が0度に近い値となる。そのように設定された場合の本システム10は、レール40に対応する点群を取得することができず、検査区間D2におけるレール検出ができない。
【0115】
一方、地面に相当する点群が図16(G61)のようなレイヤ構造L1となるように、レーザーレーダ101を設置した場合、検査区間D2においてレイヤ構造L1と、曲線レールRと、のなす角が0度から離れた状態に維持される。そのように設定された本システム10は、レール40に対応する点群を取得することができ、検査区間D2におけるレール検出が可能となる。
【0116】
そこで、実施例8の本システム10は、レーザーレーダ101の取り付け位置や取り付け角度が、運行時に想定されるレール曲線と、地面に照射されるレイヤ構造と、のなす角度の大きさを所定値以上に設定される。実施例8の本システム10は、車両20がカーブに差し掛かっても、車両20から遠い前方までレール検出を維持できるので、より安定したレール検出が可能となる。なお、レイヤ構造L0,L1とは、レーザーレーダ101におけるレーザー照射のスイープ(sweep)動作の軌跡を意味する。
【0117】
[補足]
レール検出を行う方法は2種類に大別される。1つ目の方法では、車両の自己位置推定結果と、レール敷設位置の緯度経度が明示された地図と、を照合することにより、位置推定結果より車両前方のレール検出を行う。その方法は、レール検出精度が自己位置推定精度に依存する。そのため、自己位置が不定となる領域ではレール検出が難しい、という課題がある。本システム10は、その課題を解決できる2つ目の方法を採用した。
【0118】
2つ目の方法では、車両に搭載したセンサ101がレール40を含む車両前方のデータを取得し、センサ出力から車両前方のレール40を抽出して、その所在を認識する。このセンサ101によるレール検出方法は、自己位置推定精度に依存せず、レール40を検出できる。
【0119】
以下、本システム10の主要構成、作用及び効果について総括する。
[1]図1図3及び図8に概略を示す本システム10は、移動体20を案内する軌道40を捉えるセンサ101と、そのセンサ出力を処理して監視情報を高精度化するコンピュータと、を備えた前方監視システムである。本システム10は、敷設面点群除去部と、第1絞り込み部と、第2絞り込み部と、軌道曲線補完部と、を有する。
【0120】
センサ出力は、軌道40に対応する点群と、軌道40の敷設面に対応する点群と、を含んでいる。敷設面点群除去部は、センサ出力から敷設面点群を除去することにより、物体の情報を抽出する。その結果、敷設面点群除去部は、軌道40の敷設面から突出した物体を抽出する。
【0121】
第1絞り込み部は、物体の断面形状に対しコンピュータのメモリに記憶された軌道断面を比較することにより第1軌道候補物体を抽出する。第2絞り込み部は、第1軌道候補物体の幅と、軌道断面の幅と、を比較することにより、第2軌道候補物体を検出する。軌道曲線補完部は、第2軌道候補物体を含む軌道物体を補完し、点をつないで輪郭を推定することにより軌道40を認識する。
【0122】
本システム10は、このように認識された軌道40の位置情報を、運行主体又は監視主体(以下、「運行主体等」ともいう)へ提供する。それを受けた運行主体等は、移動体20に対する走行障害物301が有るか無いかの判定を支援される。本システム10によれば、センサ101で取得した軌道40に対応する点群が不完全である場合でも、安定して軌道40の所在を辿るように認識できる。つまり、本システム10は、軌道40の所在を高精度で認識することにより、運行主体等の監視を支援する効果がある。
【0123】
[2]上記[1]の本システム10における軌道40は、例えば2本一対であるような複数のレール40で構成されると良い。このレール40は、長距離輸送の用途に限定されず、数百mの短距離を移動する移動体20の一例として、ガントリークレーン(gantry crane)等の起重機も含まれる。本システム10は、図6図7図9及び図11に示すような形態となる。
【0124】
敷設面は地面、例えば、図6の曲線lgiを含む面である。敷設面点群除去部は、地面点群除去部である。第1軌道候補物体は、第1レール候補物体Co1iを含む複数物体であるが、図6に示すような、方形(四角形)に限らない。第1絞り込み部は、複数物体の断面寸法に対しコンピュータのメモリに記憶されたレール断面寸法を比較することにより第1複数レール候補物体を抽出する。第2絞り込み部は、第1複数レール候補物体間の寸法と複数レール間の寸法、例えば軌間を比較することにより第2レール候補物体Co2iを検出する。
【0125】
軌道曲線補完部は、第2レール候補物体Co2iを含む複数の物体を補完することによりレール40を検出する。この形態の本システム10は、センサ101で取得したレール40に対応する点群が不完全である場合でも、移動体20が走行する路線に敷設されている実際のレール40がコンピュータのメモリに記憶されており、断面寸法をセンサ出力と比較するので、安定してレール40を認識できる。
【0126】
[3]上記[2]の本システム10において、第1絞り込み部は、図6に示すようなレール断面寸法に基づいて作成される第1不完全テンプレートを有すると良い。この第1不完全テンプレートは、レール断面の縦横最大寸法に基づいて作成される長方形(基本)又は任意形状であると良い。本システム10は、複数物体の断面寸法が、第1不完全テンプレートの範囲内である複数物体を、第1複数レール候補物体として抽出すると良い。この形態の本システム10は、第1不完全テンプレートで候補を絞り込むので、ある程度の確からしさで、レール40を検出できる。
【0127】
[4]上記[2]の本システム10において、第1絞り込み部は、実施例3の図11に示すようなレール断面形状に基づいて作成される第2不完全テンプレートを有すると良い。この本システム10は、複数物体により構成する点群と、第2不完全テンプレートとの適合率が所定値以上である複数物体を、1対のレール40である第1複数レール候補物体として抽出すると良い。
【0128】
この形態の本システム10は、第1絞り込み部の第2不完全テンプレートでさらに絞り込まれて向上した確からしさでレール40を検出できる。図11に示す第2不完全テンプレートは、頭頂面以外の錆びた側面の方がレーザーレーダを反射し易い鉄道レール40の特性を逆に利用して、特徴的なレール側面の形状を捉えることにより、検出精度を高めたものである。
【0129】
[5]上記[2]の本システム10において、第2絞り込み部は、図7及び図8に示す軌道軸予測線yi=ciより第1複数レール候補物体の複数の代表位置を求めると良い。その複数の代表位置間の距離が、複数レール間の寸法(軌間)に基づいて求められる(図8のS106)所定距離である第1レール候補物体Co1iを、第2レール候補物体Co2iとすれば良い。この形態の本システム10は、第2絞り込み部により、例えば、コンピュータのメモリに記憶されている軌間に適合する第2レール候補物体Co2iを、高い可能性でレール40だと推定できる。
【0130】
[6]上記[2]の本システム10において、図1のように移動体20を鉄道の車両20に特化した形態でも良い。この形態の本システム10は、図2及び図8で説明する第3絞り込み部をさらに有する。その第3絞り込み部は、所定区間より車両20に近い位置のレール検出結果を用いて作成した第1レール候補線に対し、所定範囲の第2レール候補物体Co2iを、第3レール候補物体Co3iとして抽出すれば良い。鉄道の車両20に適用される形態の本システム10は、実用性を考慮して、十分な確からしさでレール40を検出できる。
【0131】
[7]上記[6]の本システム10において、第3絞り込み部は、所定区間より1つ前の区間において、前区間レール物体が複数存在する場合、図9及び図10で説明する処理を行う。すなわち、第3絞り込み部は、前区間レール候補物体を、左方のレール物体を含む左レールペアと、右方のレール物体を含む右レールペアに分離する。
【0132】
この形態の本システム10は、所定区間より車両20に近い1つ前の区間のレール検出結果と、左レールペアを用いて作成した左レール候補線に対して、所定範囲の第2レール候補物体Cp2iを抽出する。同様に、本システム10は、所定区間より車両20に近い1つ前の区間のレール検出結果と、右レールペアを用いて作成した右レール候補線に対して、所定範囲の第2レール候補物体Cp2iを抽出する。このように、2本のレール40を平行に敷設された鉄道の車両20に特化した形態の本システム10は、十分な確からしさで2本のレール40を検出できる。
【0133】
[8]上記[2]の本システム10において、第4絞り込み部をさらに有すると良い。この第4絞り込み部は、図12のG50に示すように、第2レール候補線と所定距離内の第2レール候補物体Cp2iを、第4レール候補物体として抽出する。第4レール候補物体は、複数の第2レール候補線と、第2レール候補物体Cp2iと、の距離に基づいて作成される最小の目的関数として抽出される。
【0134】
複数の第2レール候補線は、軌道軸予測線yi=ciより求められる軌道軸推定位置に基づいて作成される。ここで、第2レール候補物体Cp2iの代わりに、それを構成する第2レール候補点群を用いても良い。この形態の本システム10は、第4絞り込み部により、敷設された2本のレール40の軌間を計測することにより、曲線区間であっても高精度にレール40を検出できる。
【0135】
[9]上記[8]の本システム10において、第4絞り込み部は、図12のG51に示すように、第2レール候補物体Cp2iから第4レール候補物体を除外して他レール候補物体としても良い。この形態の本システム10は、複数の第2レール候補線と、他レール候補物体と、の距離に基づいて作成される目的関数が所定値以下である他レール候補線を抽出すれば良い。
【0136】
ここで、他レール候補物体の代わりに、それを構成する他レール候補物体点群を用いても良い。本システム10は、抽出された他レール候補線と、所定距離の他レール候補物体を、第4レール候補物体に加える機能をさらに有しても良い。この形態の本システム10は、敷設された2本のレール40の他に、転てつ機を構成するトングレールがあれば、第4絞り込み部により、軌道軸推定位置から短距離に位置することにより検出できる。
【0137】
[10]上記[2]における本システム10は、実施例5の図13と、実施例6の図14に示すように、所定範囲より1つ前の範囲における地面高さに対し、地面点群除去部が検出した地面より下方に突出した物体を抽出しても良い。また、本システム10は、所定範囲の地面高さが不連続に上昇した場合、そのように上昇した地面は、軌道に交差する道路、又は軌道の敷設面を兼用する道路として検知すれば良い。すなわち、この形態の本システム10は、路面電車の軌道敷面のほか、踏切等でレール頭頂面のみが露出して、それ以外の部分が埋もれている場合にも、レール検出できる。
【0138】
[11]上記[7]において、本システム10は、図15に示すように、つぎの基準で転てつ機があると判定する。すなわち、本システム10は、左レールペアに対応する左レールペア全点群Cp3(p=l)の進行方向最近傍位置xmin(p=l)と、右レールペアに対応する右レールペア全点群Cp3(p=r)の進行方向最近傍位置xmin(p=r)と、の相対位置が所定距離以上離れている場合、本システム10は、転てつ機があると判定する。
【0139】
また、本システム10は、左レールペア点群の進行方向最近傍位置xmin(p=l)と、右レールペア点群の進行方向最近傍位置xmin(p=r)と、のうち、車両20より遠隔な区間において、左レールペアの幅から右レールペアの幅を引いた差分を求める。本システム10は、その結果に応じて、差分が正の値の場合は左レール40が開通と判定し、差分が負の値の場合は右レール40が開通と判定する。このような形態の本システム10は、レール40に転てつ機がある場合の開通方向を判定可能である。
【0140】
[12]上記[11]の本システム10は、左レール40が開通であると判定された場合、以降の区間は左レール40のみをレール検出する。右レール40が開通であると判定された場合、以降の区間は右レール40のみをレール検出する。このような形態の本システム10は、転てつ機の開通区間と判定された側のみをレール検出するので、無駄が少なくて監視効率が良い。
【0141】
[13]図16のレイヤ構造L0,L1及びそのスイープ状態に示すように、上記[1]の本システム10において、センサ101は、取得点群がレイヤ単位で整理されていると良い。そのセンサ101の取り付け位置及び取り付け角度について、想定される軌道方向とレイヤ方向が、レール検出を維持できる所定の角度範囲内であると良い。このような形態の本システム10は、移動体20がカーブに差し掛かった場合においても、移動体20から離れた位置におけるレール検出を高精度で維持できて、より安定したレール検出が可能となる。
【0142】
[14]上記[2]~[13]の本システム10において、図1に示すように、センサ101は、レール40に沿って走行する車両20に設置されており、さらにレール検出部104と、障害物判定部105と、を有すると良い。また、レール検出部104は、センサ101により取得した情報に基づいてレール40を検出する。
【0143】
障害物判定部105は、レール検出部104により検出したレール40に基づいて設定される所定範囲の障害物301を検出する。このような形態の本システム10は、車両20に対する走行障害物301が有るか無いかを判定し、その情報を運行主体等へ提供する。それを受けた運行主体等は、安全運行を支援される。
【0144】
本方法は、つぎのように総括できる。
[15]図2及び図8にも例示するように、本方法は、移動体を案内する軌道40を捉えたセンサ出力をコンピュータで処理した情報を用いる前方監視方法であって、そのコンピュータは、メモリに記憶されたプログラムを実行して形成された各機能部が情報処理することにより、つぎの処理を行う。
【0145】
まず、センサ101が捉えた点群(D101)から軌道40の敷設面を検出する(S101~S103)。つぎに、敷設面点群除去部が、検出された敷設面から突出した物体を抽出する(S104)。つぎに、第1絞り込み部が、抽出された物体の断面形状と、コンピュータに記憶された軌道断面と、を比較することにより、第1軌道候補物体を抽出する(S105)。検出された第1軌道候補物体の幅と、軌道断面の幅とを、第2絞り込み部が比較することにより第2軌道候補物体を検出する(S106)。
【0146】
検出された第2軌道候補物体を含む軌道物体を、軌道曲線補完部が補完する(S108)ことにより、軌道40(D102)をより正確に認識する。このような認識に基づく軌道40の位置情報を運行主体等へ提供する。その結果、それらの運行主体等は、移動体の前方近辺に走行障害物301が有るか無いかを検出し易く支援される。本方法によれば、センサ101で取得した軌道40に対応する点群が不完全である場合でも、安定して軌道40を認識できる。このような本方法は、軌道40を高精度に認識した情報を出力し、運行主体等に安全運行を支援できる。
【符号の説明】
【0147】
10…前方監視システム、20…車両(移動体)、40…レール40、50…車両走行領域、101…前方監視センサ、103…物体検出部、104…レール検出部、105…障害物判定部、301…車両前方の物体(例えば、人等の障害物)、Co1i…第1レール候補物体、Cp2i…第2レール候補物体、Co3i…第3レール候補物体、Ai…推定軌道中心、Cp3(p=l)…左レールペア全点群、Cp3(p=r)…右レールペア全点群、D0~D2…検査区間、点群データD101…点群データD101、D102…レール推定曲線、To2A,To2B…第2不完全テンプレート、Tp1,Tp2…(レール40の側面のみを再現した)点群、O…原点、xmin(p=l)…左レールペア全点群の進行方向最近傍位置、xmin(p=r)…右レールペア全点群の進行方向最近傍位置、w1,w2…グループ間距離、yi…軌道中心線、yi=ci…軌道軸予測線、Σ0…車両固定三次元xyz座標系(座標系Σ0)、Δzg…閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16