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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013660
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】セメント組成物の打設管理方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20230119BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230119BHJP
   B28B 13/02 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E04G21/04 102
G01M99/00 Z
B28B13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118006
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】神代 泰道
(72)【発明者】
【氏名】都築 正則
【テーマコード(参考)】
2E172
2G024
4G055
【Fターム(参考)】
2E172CA19
2E172HA03
2G024AD34
2G024BA11
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
4G055AA01
4G055CA19
(57)【要約】
【課題】セメント組成物の流速を精度良く把握して、コンクリートの打設を管理すること。
【解決手段】傾斜部を流れるセメント組成物の流動方向に、所定の距離を離間して配された第1測定計、及び、第2測定計の各測定結果に基づいて、前記セメント組成物の高さの経時変化を示す波形を取得する波形取得ステップと、前記第1測定計の測定結果から得られる前記波形、及び、前記第2測定計の測定結果から得られる前記波形の位相差と、前記所定の距離とに基づいて、前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の速度を算出する速度算出ステップと、を有することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜部を流れるセメント組成物の流動方向に、所定の距離を離間して配された第1測定計、及び、第2測定計の各測定結果に基づいて、前記セメント組成物の高さの経時変化を示す波形を取得する波形取得ステップと、
前記第1測定計の測定結果から得られる前記波形、及び、前記第2測定計の測定結果から得られる前記波形の位相差と、前記所定の距離とに基づいて、前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の速度を算出する速度算出ステップと、
を有することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセメント組成物の打設管理方法であって、
前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の断面積と、前記セメント組成物の前記速度とに基づいて、単位時間あたりに前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の流量である体積流量速度を算出するステップを有することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【請求項3】
請求項2に記載のセメント組成物の打設管理方法であって、
所定の期間、及び、前記所定の期間の前記体積流量速度に基づいて、前記所定の期間に前記傾斜部を流れた前記セメント組成物の量を取得するステップを有することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のセメント組成物の打設管理方法であって、
前記体積流量速度を算出するステップにおいて、
前記第1測定計と前記第2測定計の少なくとも一方の測定結果から取得した、前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の高さに関する情報と、前記傾斜部の断面形状とに基づいて、前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の前記断面積を取得することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【請求項5】
請求項4に記載のセメント組成物の打設管理方法であって、
前記セメント組成物の高さに関する情報として、所定の時間における前記第1測定計の測定結果に基づく前記高さと、前記所定の時間における前記第2測定計の測定結果に基づく前記高さとの平均値を、前記所定の時間毎に取得することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載のセメント組成物の打設管理方法であって、
前記波形取得ステップにおいて、前記第1測定計の測定結果、及び、前記第2測定計の測定結果のそれぞれにノイズ成分の除去処理を施し、ノイズ成分が除去された前記波形の位相差を取得することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【請求項7】
請求項6に記載のセメント組成物の打設管理方法であって、
前記ノイズ成分の除去処理では、前記第1測定計の測定結果と前記第2測定計の測定結果のそれぞれに高速フーリエ変換を施してピーク周波数を取得し、それぞれの前記ピーク周波数に基づいて、前記第1測定計の測定結果に対応する、ノイズ成分が除去された前記波形である第1波形と、前記第2測定計の測定結果に対応する、ノイズ成分が除去された前記波形である第2波形を取得することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【請求項8】
請求項7に記載のセメント組成物の打設管理方法であって、
前記第1波形と前記第2波形の少なくとも一方から所定の時刻における前記セメント組成物の高さを取得し、当該高さと、前記傾斜部の断面形状とに基づいて、前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の断面積を取得し、
前記断面積と、前記所定の時刻における前記セメント組成物の前記速度とに基づいて、単位時間あたりに前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の流量である、前記所定の時刻の体積流量速度を、逐次算出するステップを有することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【請求項9】
請求項1から5の何れか1項に記載のセメント組成物の打設管理方法であって、
前記波形の位相差は、前記第1測定計の測定結果である前記波形の特定点と、前記第2測定計の測定結果である前記波形の同じ前記特定点との位相差であることを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載のセメント組成物の打設管理方法であって、
前記第1測定計、及び、前記第2測定計は、前記流動方向に直交する方向の位置が重複するように配されていることを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物の打設管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート(セメント組成物の一例)は、現場において、生コン車のシュートからポンプ車のホッパに送り出された後、ホースや配管を介して打設箇所まで圧送されることが多い。そのため、特許文献1では、ポンプの打設回数をカウントし、ポンプの1回の打設により送出されるコンクリートの容量を乗算することにより、コンクリートの打設量(打込み量:m)を記録する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭56-15464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、生コン車のシュートから打設箇所に送出されるコンクリートの流れが直接測定されていないので、打込み量の測定精度が不十分である。
一方、コンクリートの打設現場では、例えばシュートを流れるコンクリートの流速(m/s)を精度良く把握し、その流速に基づいてコンクリートの打込み速度(m/s)や打込み量(m)等をより正確に管理しながらコンクリートを打設することが求められている。例えば、CFT造(充填鋼管コンクリート造)の施工時には、コンクリートの打込み速度の細やかな管理が求められている。また、無駄なくコンクリートを発注するために、より正確なコンクリートの打込み量の測定が求められている。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、セメント組成物の流速をより精度良く把握して、コンクリートの打設を管理することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、傾斜部を流れるセメント組成物の流動方向に、所定の距離を離間して配された第1測定計、及び、第2測定計の各測定結果に基づいて、前記セメント組成物の高さの経時変化を示す波形を取得する波形取得ステップと、前記第1測定計の測定結果から得られる前記波形、及び、前記第2測定計の測定結果から得られる前記波形の位相差と、前記所定の距離とに基づいて、前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の速度を算出する速度算出ステップと、を有することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セメント組成物の流速を精度良く把握して、コンクリートの打設を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】コンクリートの打設方法の一例を示す概略説明図である。
図2】測定部30の概略構成図である。
図3図3A及び図3Bは、第1測定計31及び第2測定計32によるコンクリートの高さの測定方法の説明図である。
図4】コンクリート50の打設管理方法のフロー図である。
図5図5Aは、第1測定計31の測定結果である第1実測波形を示すグラフであり、図5Bは、第2測定計32の測定結果である第2実測波形を示すグラフである。
図6図6Aは、第1実測波形の周波数解析の結果を示すグラフであり、図6Bは、第2実測波形の周波数解析の結果を示すグラフである。
図7】第1実測波形及び第2実測波形からノイズを除去した結果を示すグラフである。
図8】コンクリート50の流速の算出方法の説明図である。
図9】コンクリート50の打込み速度の算出方法の説明図である。
図10】コンクリート50の打込み量の算出方法の説明図である。
図11図11A及び図11Bは、測定計31,32がコンクリート50に含まれる骨材51Aを検知する状態の説明図である。
図12】第1実測波形及び第2実測波形における特定点PA,PBを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
傾斜部を流れるセメント組成物の流動方向に、所定の距離を離間して配された第1測定計、及び、第2測定計の各測定結果に基づいて、前記セメント組成物の高さの経時変化を示す波形を取得する波形取得ステップと、前記第1測定計の測定結果から得られる前記波形、及び、前記第2測定計の測定結果から得られる前記波形の位相差と、前記所定の距離とに基づいて、前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の速度を算出する速度算出ステップと、を有することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【0010】
このようなセメント組成物の打設管理方法によれば、傾斜部を流れるセメント組成物を実際に測定した結果に基づいて、セメント組成物の流速を精度良く算出できる。精度の良いセメント組成物の流速に基づいて、打設工事を細やかに管理できる。
【0011】
かかるセメント組成物の打設管理方法であって、前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の断面積と、前記セメント組成物の前記速度とに基づいて、単位時間あたりに前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の流量である体積流量速度を算出するステップを有することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【0012】
このようなセメント組成物の打設管理方法によれば、精度の良いセメント組成物の流速に基づいて、精度の良い体積流量速度を算出できる。よって、体積流量速度(打込み速度)の細やかな管理が求められる工事(例えばCFT造の施工)において品質を担保できる。
【0013】
かかるセメント組成物の打設管理方法であって、所定の期間、及び、前記所定の期間の前記体積流量速度に基づいて、前記所定の期間に前記傾斜部を流れた前記セメント組成物の量を取得するステップを有することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【0014】
このようなセメント組成物の打設管理方法によれば、精度の良いセメント組成物の流速、及び、体積流量速度に基づいて、セメント組成物の量(打込み量)を取得できる。よって、セメント組成物の発注を無駄なく行うことができる。
【0015】
かかるセメント組成物の打設管理方法であって、前記体積流量速度を算出するステップにおいて、前記第1測定計と前記第2測定計の少なくとも一方の測定結果から取得した、前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の高さに関する情報と、前記傾斜部の断面形状とに基づいて、前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の前記断面積を取得することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【0016】
このようなセメント組成物の打設管理方法によれば、傾斜部を流れるセメント組成物の高さを実際に測定した結果に基づいて、より精度の良い体積流量速度を算出できる。また、セメント組成物の流速(波形の位相差)を求めるために用いた測定計の結果を、セメント組成物の断面積を求めるためにも用いることができる。
【0017】
かかるセメント組成物の打設管理方法であって、前記セメント組成物の高さに関する情報として、所定の時間における前記第1測定計の測定結果に基づく前記高さと、前記所定の時間における前記第2測定計の測定結果に基づく前記高さとの平均値を、前記所定の時間毎に取得することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【0018】
このようなセメント組成物の打設管理方法によれば、所定の時間毎に変化するセメント組成物の断面積に基づいて、より精度の良い体積流量速度を算出できる。また、所定の時間において、第1測定計が測定したセメント組成物の高さと、第2測定計が測定したセメント組成物の高さの両方が加味されるため、より精度の良い体積流量速度を算出できる。
【0019】
かかるセメント組成物の打設管理方法であって、前記波形取得ステップにおいて、前記第1測定計の測定結果、及び、前記第2測定計の測定結果のそれぞれにノイズ成分の除去処理を施し、ノイズ成分が除去された前記波形の位相差を取得することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【0020】
このようなセメント組成物の打設管理方法によれば、ノイズ成分が除去された波形に基づいて、波形の位相差を正確に求めやすくなる。
【0021】
かかるセメント組成物の打設管理方法であって、前記ノイズ成分の除去処理では、前記第1測定計の測定結果と前記第2測定計の測定結果のそれぞれに高速フーリエ変換を施してピーク周波数を取得し、それぞれの前記ピーク周波数に基づいて、前記第1測定計の測定結果に対応する、ノイズ成分が除去された前記波形である第1波形と、前記第2測定計の測定結果に対応する、ノイズ成分が除去された前記波形である第2波形を取得することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【0022】
このようなセメント組成物の打設管理方法によれば、ノイズ成分が除去された波形に基づいて、波形の位相差を正確に求めやすくなる。
【0023】
かかるセメント組成物の打設管理方法であって、前記第1波形と前記第2波形の少なくとも一方から所定の時刻における前記セメント組成物の高さを取得し、当該高さと、前記傾斜部の断面形状とに基づいて、前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の断面積を取得し、前記断面積と、前記所定の時刻における前記セメント組成物の前記速度とに基づいて、単位時間あたりに前記傾斜部を流れる前記セメント組成物の流量である、前記所定の時刻の体積流量速度を、逐次算出するステップを有することを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【0024】
このようなセメント組成物の打設管理方法によれば、ノイズ成分が除去された波形に基づいて、所定の時刻におけるセメント組成物の高さを取得しやすくなり、その高さに基づくセメント組成物の体積流量速度をより精度良く算出できる。
【0025】
かかるセメント組成物の打設管理方法であって、前記波形の位相差は、前記第1測定計の測定結果である前記波形の特定点と、前記第2測定計の測定結果である前記波形の同じ前記特定点との位相差であることを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【0026】
このようなセメント組成物の打設管理方法によれば、ノイズ除去処理が行われないため、セメント組成物の流速が高速に算出される。
【0027】
かかるセメント組成物の打設管理方法であって、前記第1測定計、及び、前記第2測定計は、前記流動方向に直交する方向の位置が重複するように配されていることを特徴とするセメント組成物の打設管理方法。
【0028】
このようなセメント組成物の打設管理方法によれば、第1測定計と第2測定計がセメント組成物の同じ部位を検知しやすくなる。よって、第1測定計の測定結果による波形と第2測定計の測定結果による波形の形状が近くなり、波形の位相差を正確に求めやすくなる。
【0029】
===実施形態===
<コンクリートの打設について>
図1は、コンクリートの打設方法の一例を示す概略説明図である。図1では、コンクリートの打設現場に、生コン車10と、ポンプ車20が配車されている。なお、生コン車のことを、ミキサー車、トラックアジテータともいう。
【0030】
生コン車10は、コンクリートの製造プラントで受け渡されたコンクリートの材料を練り混ぜながら打設現場まで搬送する車である。生コン車10は、ドラム12とシュート14(傾斜部に相当)を備えている。
【0031】
ドラム12は、生コンクリート(以下、単にコンクリートともいう)を積載するための略円筒状の容器である。ドラム12は、生コン車10の走行中も常に回転し続けてコンクリートの材料を練り混ぜる。これにより、骨材や水の分離を防ぎ、コンクリートを均質に保っている。
【0032】
シュート14は、ドラム12内のコンクリートを目的の荷降位置へ導く(吐出する)ための部材であり、ドラム12の後方において傾斜を有して設けられている。また、本実施形態のシュート14には、測定部30(後述)が設けられている。
【0033】
ポンプ車20は、生コン車10によって現場に輸送されたコンクリートを打設場所まで圧送するための車である。ポンプ車20は、ホッパ22と、ポンプ24と、コンクリート供給管26を備えている。
【0034】
ホッパ22は、ポンプ車20の後方に設けられており、生コン車10のシュート14と対向するように配置される。そして、ホッパ22は、生コン車10のシュート14から吐出されたコンクリートを受け取る。ホッパ22に受け渡されたコンクリートは、ポンプ24の駆動により、コンクリート供給管26を通って、型枠などに打設される。
【0035】
<測定部30について>
図2は、測定部30の概略構成図である。図3A及び図3Bは、第1測定計31及び第2測定計32によるコンクリートの高さの測定方法の説明図である。
【0036】
測定部30は、生コン車10のシュート14に設けられ、シュート14を流れるコンクリートの高さ(天端高さ)を測定するものである。本実施形態の測定部30は、シュート14に着脱可能であり、配車された生コン車10のシュート14に取り付けることができる。ただし、これには限らず、生コン車10のシュート14に測定部30が予め取り付けられていてもよい。また、シュート14以外の部材(コンクリートが流れる傾斜部)に測定部30を取り付けてもよい。
【0037】
測定部30は、第1測定計31と、第2測定計32と、第1固定具33と、第2固定具34と、一対のマグネットスタンド35と、可動支持具36と、を備えている。ここで、シュート14において、コンクリートが流れる方向を流動方向と称し、流動方向に直交する方向を幅方向と称す。第1固定具33は、可動支持具36からシュート14の幅方向に延びて配置された鋼材である。第2固定具34は、細長い平板(鉄板等)であり、流動方向に沿うように配され、長手方向の一端部(図2では流動方向の上流側端部)が第1固定具33に固定されている。一対のマグネットスタンド35は、第2固定具34の上に載置され、それぞれが第1測定計31及び第2測定計32を保持する。
【0038】
可動支持具36は、不図示の台車と、台車の上に載置された鉛直方向に延びる鋼材(36)とを有し、鋼材(36)に第1固定具33が固定されている。可動支持具36の移動に伴って、第1固定具33、第2固定具34、第1測定計31、及び、第2測定計32も移動する。ゆえに、可動支持具36の位置を調整することで、シュート14の所望の位置に第1測定計31及び第2測定計32を設置できる。また、万力等を用いてシュート14に測定部30が固定されないため、シュート14から測定部30を取り外す作業が容易となり、他の生コン車のシュートに測定計30を設置する作業も容易となる。但し、これに限定されず、シュート14に固定するタイプの測定計30であってもよい。
【0039】
第1測定計31及び第2測定計32は、シュート14を流れるコンクリートの流動方向に、所定の距離Wを離間して配され、シュート14を流れるコンクリート50の高さを測定する。そのため、第1測定計31及び第2測定計32は、シュート14を流れるコンクリートと対向するように、マグネットスタンド35に取り付けられている。また、本実施形態では、第1測定計31の方が第2測定計32よりも流動方向の上流側に設けられている。
【0040】
第1測定計31及び第2測定計32としてはレーザー変位計34が挙げられる。レーザー変位計34は、レーザー照射部(不図示)と反射レーザー受信部(不図示)とを有し、レーザー照射部から照射されて測定対象物によって反射されたレーザーを、反射レーザー受信部で受信することによって、測定対象物までの距離を測定するものである。なお、以下の説明では、第1測定計31と第2測定計32を合わせて、測定計31,32ともいう。
【0041】
コンクリートの高さを測定するためには、まず、図3Aに示すように、シュート14にコンクリートが流れていない状態で、各測定計31,32からシュート14の底面までの距離(シュート14の底面に直交する方向の距離)d1,d2を測定しておく。その後、図3Bに示すように、シュート14にコンクリート50が流れている状態で、各測定計31,32がコンクリート50の表面までの距離d11,d21を測定する。そして、各測定計31,32からシュート14までの距離d1,d2から、測定結果d11,d21を減ずる。そうすることで、各測定計31,32が対向するコンクリートの高さh1(=d1-d11),h2(=d2-d21)が得られる。
【0042】
===第1実施形態:コンクリート50の打設管理方法===
図4は、コンクリート50の打設管理方法のフロー図である。図5Aは、第1測定計31の測定結果である第1実測波形を示すグラフであり、図5Bは、第2測定計32の測定結果である第2実測波形を示すグラフである。図6Aは、第1実測波形の周波数解析の結果を示すグラフであり、図6Bは、第2実測波形の周波数解析の結果を示すグラフである。図7は、第1実測波形及び第2実測波形からノイズを除去した結果を示すグラフである。図8は、コンクリート50の流速の算出方法の説明図である。図9は、コンクリート50の打込み速度の算出方法の説明図である。図10は、コンクリート50の打込み量の算出方法の説明図である。
【0043】
まず、コンクリート50の打設現場に生コン車10が到着すると、作業員は生コン車10のシュート14に測定部30を着装する(S01)。なお、予め測定部30を生コン車10のシュート14に取り付けておいてもよい。また、第1測定計31及び第2測定計32は、その測定結果を処理する端末40(PC、タブレット端末、スマートフォン等)と有線又は無線により通信可能に接続されている。端末40の制御部(CPU)は、記憶部に記憶されているプログラムに従って以下の動作を実行する。また、図示しないが、端末40はデータロガを介して測定計31,32の測定結果を取り込んでもよい。
【0044】
コンクリート50の打込みを開始する前に、図3Aに示すように、第1測定計31からシュート14の底面までの距離d1と、第2測定計32からシュート14の底面までの距離d2を測定する(S02)。
【0045】
コンクリート50の打込みが開始すると同時に、図3Bに示すように、各測定計31,32はコンクリート50までの距離d11,d12の測定を開始する(S03)。端末40の制御部は、各測定計31,32の測定結果d11,d12を取得し、その測定結果d11,d21を、予め測定していたシュート14の底面までの距離d1,d2からを減じて、コンクリート50の高さh1,h2を算出する。
【0046】
そして、端末40の制御部は、第1測定計31の測定結果として、図5Aに示すように、第1測定計31と対向するコンクリート50の高さh1の経時変化を示す波形(第1実測波形)を取得する。同様に、端末40の制御部は、第2測定計32の測定結果として、図5Bに示すように、第2測定計32と対向するコンクリート50の高さh2の経時変化を示す波形(第2実測波形)を取得する。図5A及び図5Bのグラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はコンクリート50の高さh1,h2を示す。
【0047】
次に、端末40の制御部は、第1測定計31の測定結果(第1実測波形)、及び、第2測定計32の測定結果(第2実測波形)のそれぞれにノイズ成分の除去処理を施す。そして、端末40の制御部は、図7に示すように、ノイズ成分が除去された、コンクリート50の高さh1,h2の経時変化を示す波形を取得する(S05:波形取得ステップ)。図7のグラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸はコンクリート50の高さh1,h2を示す。
【0048】
端末40の制御部は、ノイズ成分の除去処理として、第1測定計31の測定結果(第1実測波形)と第2測定計32の測定結果(第2実測波形)のそれぞれに高速フーリエ変換を施して、図6A及び図6Bに示すように周波数解析を行う。図6A及び図6Bのグラフにおいて、横軸は周波数を示し、縦軸は波形の振幅と相関する値を示す。周波数解析を行った結果、縦軸の値が最も大きくなるピーク周波数(支配的な周波数)を取得する。ピーク周波数は、コンクリート50の高さの変化に大きく影響する振動の周波数(コンクリート50の高さの振幅を大きくする振動の周波数)である。
【0049】
本実施形態では、シュート14にコンクリート50を供給するドラム12の回転による振動が、コンクリート50の高さの変化に大きく影響すると考えられる。第1測定計31及び第2測定計32は、共に、ドラム12の回転の影響を受けたコンクリート50の高さを測定する。そのため、図6A及び図6Bに示すように、第1実測波形のピーク周波数と、第2実測波形のピーク周波数は、ほぼ同値となっている。そして、第1実測波形(図5A)及び第2実測波形(図5B)には、ドラム12の回転によるコンクリート50の高さの周期的な変化に、ポンプ車20等の振動やコンクリート50に含まれる骨材51によるコンクリート50の高さの変化がノイズ成分として加わっていると考えられる。
【0050】
端末40の制御部は、それぞれのピーク周波数に基づいて、図7に示すように、第1測定計31の測定結果(第1実測波形)に対応する、ノイズ成分が除去された第1ノイズ除去波形(第1波形に相当)と、第2測定計32の測定結果(第2実測波形)に対応する、ノイズ成分が除去された第2ノイズ除去波形(第2波形に相当)を取得する。本実施形態では、第1ノイズ除去波形、及び、第2ノイズ除去波形を正弦波で表す。
【0051】
次に、端末40の制御部は、第1ノイズ除去波形、及び、第2ノイズ除去波形の位相差を取得し、その位相差と、流動方向における第1測定計31と第2測定計32の設置間隔(図3Aに示す所定の距離W)とに基づいて、シュート14を流れるコンクリート50の速度(流速(m/s))を算出する(S06:速度算出ステップ)。
【0052】
例えば、図8に示すように、所定の時間ΔT毎(例えば5秒毎や10秒毎等)に、端末40の制御部が、波形の位相差を取得して、コンクリート50の流速を算出するように設定するとよい。波形の位相差は、第1ノイズ除去波形と第2ノイズ除去波形において、例えば、最大値となる点での差から求めたり、最小値となる点での差から求めたり、同じ高さとなる点での差から求めたりするとよい。この時に1周期以上離れた波形部分に基づいて位相差を取得しないように、第1測定計31と第2測定計32の設置間隔Wを離し過ぎないようにする。そうすることで、正確に位相差が求められる。
【0053】
具体的に、N°の位相差が得られた場合、第1ノイズ除去波形と第2ノイズ除去波形の少なくとも一方の周波数f(例えば両周波数の平均値)に基づく1周期の時間「1/f(s)」に「位相差N°/360°」を乗じることで、位相差の時間(s)が求められる。そして、測定計31,32の設置間隔W(m)を位相差の時間(s)で除することで、コンクリート50の流速(m/s)が算出される。
【0054】
なお、端末40の制御部がノイズ成分の除去処理(高速フーリエ変換)を実施する時間間隔は、コンクリート50の流速(波形の位相差)を算出する時間間隔ΔTと同じであってもよいし、ΔTと異なっていてもよい。
【0055】
次に、端末40の制御部は、所定の時間ΔT毎に算出されたコンクリート50の流速(m/s)に基づいて、コンクリート50の打込み速度(m/s)を算出する(S07)。打ち込み速度(m/s)は、単位時間(s)あたりにシュート14を流れるコンクリート50の流量(m)である体積流量速度(m/s)である。
【0056】
図9に示すように、シュート14を流れるコンクリート50の高さh1,h2によって、コンクリート50の断面積A(m)が変わり、シュート14を流れるコンクリート50の流量(m)が変わってくる。そこで、端末40の制御部は、シュート14を流れるコンクリート50の断面積A(m)と、コンクリート50の流速(m/s)とに基づいて、打込み速度(m/s)を算出する。また、シュート14を流れるコンクリート50の断面積A(m)は、シュート14を流れるコンクリート50の高さに関する情報(詳細は後述)と、シュート14の断面形状とに基づいて取得する。
【0057】
例えば、端末40の記憶部に、コンクリート50の種々の高さに対応した断面積Aのテーブルを記憶させて、端末40の制御部は、コンクリート50の高さに関する情報を取得すると、テーブルを参照して対応する断面積A(m)を取得する方法が挙げられる。その他、端末40の記憶部に、断面積Aを算出するための関数式を記憶させて、端末40の制御部は、コンクリート50の高さに関する情報を取得すると、関数式を用いて断面積A(m)を算出するようにしてもよい。なお、図9では断面形状が半円形状であるシュート14を示すが、シュート14の断面形状は特に限定されるものではない。
【0058】
そして、端末40の制御部は、コンクリート50の断面積A(m)に、所定の時間ΔT毎に算出されるコンクリート50の流速(m/s)を乗じることで、打込み速度(m/s)を算出する。なお、打ち込み速度(m/s)を算出する時間間隔は、コンクリート50の流速(m/s)を算出する時間間隔ΔTと同じであってもよいし、ΔTと異なっていてもよい。
【0059】
次に、端末40の制御部は、所定の期間、及び、その所定の期間の打込み速度(体積流量速度:m/s)に基づいて、所定の期間にシュート14を流れたコンクリート50の量である打込み量(m)を取得する(S08)。コンクリート50の打込み量(m)は、打込み速度(m/s)に打ち込み時間(s)を乗じることで算出される。
【0060】
なお、所定の期間とは、コンクリート50の打設期間である。コンクリート50の打設期間としては、例えば、生コン車10からコンクリート50の吐出が完了するために要した期間や、対象の型枠にコンクリート50の打設が完了するために要した期間、或いは、生コン車10からコンクリート50の吐出を開始したタイミングや対象の型枠にコンクリート50の打設を開始したタイミングから現在の時刻までの期間等を例示できる。
【0061】
例えば、図10に示す所定の期間(ta~ti)において、所定の時間ΔT毎に打込み速度(m/s)が算出されたとする。その場合、打込み量(m)の取得を開始するタイミング(ta)から、所定の時間ΔT毎に、所定の時間ΔT(s)と、その所定の時間ΔT(s)の打込み速度(m/s)を乗じた打込み量(m)を順次積算していくとよい。具体的には、時刻ta~時刻tbまでの間の打込み速度V(tb)に所定の時間ΔTを乗じた打込み量「V(tb)×ΔT」を算出し、その打込み量に、次の時刻tb~時刻tcまでの打込み量「V(tc)×ΔT」を加算するというように、時刻tiまで順次積算していく。
【0062】
ただし、上記に限定されない。例えば、所定の期間(ta~ti)の打込み量(m)を算出するために、所定の期間(ta~ti)に算出された打込み速度の平均値V(ave)を求め、所定の期間の時間(s)を乗じて打込み量としてもよい。その他、所定の期間(ta~ti)に算出された打込み速度の所定値(最大値や、最小値や、最大値と最小値の中間値等)に、所定の期間の時間(s)を乗じて打込み量としてもよい。
【0063】
以上のように、本実施形態では、コンクリート50の流動方向に、所定の距離Wを離間して配された第1測定計31、及び、第2測定計32の各測定結果に基づいて、コンクリート50の高さの経時変化を示す波形(図7)を取得する。そして、第1測定計31の測定結果から得られる波形、及び、第2測定計32の測定結果から得られる波形の位相差と、所定の距離Wとに基づいて、シュート14を流れるコンクリート50の流速(m/s)を算出し、コンクリート50の打設を管理する。
【0064】
つまり、生コン車10のドラム12の回転等の影響を受けてコンクリート50の高さが経時変化することを利用し、上流側の第1測定計31が検知したコンクリート50の部位が所定の距離Wを流れた後に、下流側の第2測定計32にも検知されるようにする。そうすることで、第1測定計31の測定結果から得られる波形と、第2測定計32の測定結果から得られる波形は、ほぼ同形状となり、それらの波形は、第1測定計31と第2測定計32の間をコンクリート50が流れる時間だけずれて、位相差を持って表れる。よって、測定計31,32の設置間隔Wを波形の位相差で除することで、コンクリート50の流速(m/s)が算出される。
【0065】
このように本実施形態では、シュート14を流れるコンクリート50を実際に測定した結果に基づいて、精度良くコンクリート50の流速(m/s)が算出される。そして、精度良く算出されたコンクリート50の流速(m/s)に基づいて、コンクリート50の打込み速度(m/s)や打込み量(m)も精度良く算出される。したがって、細やかなコンクリート50の打込み速度の管理が求められる工事(例えばCFT造の施工)においても品質を担保できる。また、精度良く算出された打込み量に基づいて、無駄なくコンクリートを発注することができる。
【0066】
また、コンクリート50は時間の経過と共に流動性が低下するため、精度良く算出されたコンクリート50の流速に基づいて、コンクリート50の流動性(品質)の評価を行ってもよい。コンクリート50が硬くなり、コンクリート50が流れ難くなると(流動性が低下すると)、流速が遅くなる。そこで、例えば、コンクリート50の流動性の低下により不具合(充填不良、豆板、配管閉塞等)が生じる恐れのある閾値を設定し、コンクリート50の流速と閾値の比較によって、コンクリート50の流動性の評価を行うとよい。
【0067】
また、本実施形態とは異なり、作業員が手動で、コンクリートの吐出が完了した生コン車の台数や打設完了した型枠の数を数えたり、型枠内に充填されたコンクリートの高さをスケールで測定したりした結果に基づいて、コンクリートの打込み量(m)を取得する方法がある。そして、作業員が、生コン車がコンクリートを吐出するのに要した時間や、型枠にコンクリートを打設するのに要した時間を測定し、打込み速度を算出する方法がある。
【0068】
上記の方法に対して、本実施形態では、コンクリート50の流速、打込み速度、打込み量を精度良く算出できる。さらに、流速等の情報を、コンクリート50の打設途中にも確認できる。例えば、端末40の制御部が、表示部(ディスプレイ等)に、現時刻におけるコンクリート50の高さ、流速、打込み速度、打込み量の結果を表示させたり、図7図10のようにコンクリート50の高さ、流速、打込み速度、打込み量の経時変化を示す波形を表示させたりするとよい。そうすることで、現場の作業員等は、上記の情報をリアルタイミングで確認でき、より細やかな工事の管理を行える。
【0069】
また、本実施形態では、シュート14に測定計31,32と端末40を設置した後は、コンクリート50の流速等の情報が自動に算出される。そのため、作業員の手間を省くことができ、工事を簡素化できる。また、上記のように作業員が打込み量等を手動で算出する方法に比べて、コンクリート50の流速等の情報が高速に算出される。
【0070】
また、上記のように作業員が打込み量等を手動で算出した場合、作業員が工事関係者に連絡しなければならず、手間とタイムロスが生じる。これに対して、本実施形態では、端末40が算出したコンクリート50の流速等の情報を、端末40が有する通信機能を利用して、工事関係者の別の端末に自動で送信したり、工事関係者が所望のタイミングで端末40にアクセスして情報を取得したりできる。よって、作業員の手間をさらに省くことができる。
【0071】
また、本実施形態では、測定対象物までの距離を測定するレーザー変位計(第1測定計31及び第2測定計32)を用いて、コンクリート50の流速を算出する。そのため、例えば、コンクリート50の表面をカメラで撮影して流速等を測定する場合に比べて、低コストに実現できる。
【0072】
また、本実施形態では、第1測定計31の測定結果(図5Aの第1実測波形)、及び、第2測定計32の測定結果(図5Bの第2実測波形)のそれぞれにノイズ成分の除去処理(高速フーリエ変換)を施す。そして、ノイズ成分が除去された第1ノイズ除去波形と第2ノイズ除去波形(図7)の位相差に基づいて、コンクリート50の流速を算出する。そのため、ノイズ成分が除去された波形に基づいて位相差を正確に求めやすくなり、コンクリート50の流速がより精度良く算出される。
【0073】
ただし、ノイズ成分の除去処理の方法は、高速フーリエ変換に限られない。例えば、複数の波形を平均値化することによってノイズ成分を除去する方法が挙げられる。その場合、第1測定計31及び第2測定計32の各位置において、シュート14の幅方向(流動方向に直交する方向)に測定計を複数並べ、幅方向に並ぶ複数の測定計の測定結果を平均値化して得られる波形を、ノイズ成分が除去された波形として適用するとよい。その他、第1測定計31又は第2測定計32から得られた1つの波形において、各測定結果を近傍のいくつかの測定結果と共に平均値化して平滑化した波形を、ノイズ成分が除去された波形として適用する方法が挙げられる。
【0074】
また、図2に示すように、第1測定計31、及び、第2測定計32は、コンクリート50の流動方向に直交する幅方向の位置が重複するように配されていることが望ましい。そうすることで、第1測定計31と第2測定計32はコンクリート50の同じ部位と時間差で対向し、その部位の高さを検知する。そのため、第1測定計31の測定結果から得られる波形と、第2測定計32の測定結果から得られる波形とが、より近い形状の波形となる。ゆえに、位相差を正確に求めやすくなり、コンクリート50の流速がより精度良く算出される。
【0075】
また、本実施形態では、シュート14を流れるコンクリート50の断面積Aと、コンクリート50の流速とに基づいて、コンクリート50の打込み速度を算出する。このとき、コンクリート50の断面積A(コンクリート50の高さ)を一定の値とし、その一定の断面積A(m)に、所定の時間ΔT毎に算出されるコンクリート50の流速(m/s)を乗じて、打込み速度(m/s)を算出してもよい。この場合にも、シュート14を流れるコンクリート50を実際に測定して得られたコンクリート50の流速(m/s)に基づくため、精度良く打込み速度が算出される。
【0076】
好ましくは、第1測定計31と第2測定計32の少なくとも一方の測定結果から、シュート14を流れるコンクリート50の高さに関する情報を取得し、その高さに関する情報と、シュート14の断面形状とに基づいて、コンクリート50の断面積Aを取得するとよい。
【0077】
そうすることで、シュート14を流れるコンクリート50の実際の高さに基づいて、シュート14を流れるコンクリート50の断面積Aが算出されるため、より精度良くコンクリート50の打込み速度が算出される。
【0078】
また、コンクリート50の流速を算出するために用いた測定計31,32の結果を、シュート14を流れるコンクリート50の断面積Aを取得するために用いる。そのため、コンクリート50の流速を算出するための測定計と、コンクリート50の断面積Aを取得するための測定計を別に設ける場合に比べて、低コストにて実現できる。
【0079】
また、より好ましくは、コンクリート50の高さに関する情報として、所定の時間ΔTにおける第1測定計31の測定結果に基づく高さと、所定の時間ΔTにおける第2測定計32の測定結果に基づく高さとの平均値を、所定の時間ΔT毎に取得して、シュート14を流れるコンクリート50の断面積Aを取得するとよい。そうすることで、所定の時間ΔT毎に変化するコンクリート50の断面積Aに基づいて、より精度良くコンクリート50の打込み速度が算出される。また、第1測定計31と第2測定計32の平均値を用いることで、所定の時間ΔTにおいて、第1測定計31が対向したコンクリート50の部位の高さと、第2測定計32が対向したコンクリート50の部位の高さの両方が加味されるため、より精度良くコンクリート50の打込み速度が算出される。
【0080】
コンクリート50の高さに関する情報を取得する時間間隔である「所定の時間」は、コンクリート50の打設期間を短く区切った時間(例えば5秒や10秒等)である。コンクリート50の打設期間としては、前述したように生コン車10からコンクリート50の吐出が完了するために要する期間や、対象の型枠にコンクリート50の打設が完了するために要する期間等を例示できる。また、所定の時間は、上記のようにコンクリート50の流速(m/s)を算出する時間間隔ΔTと同じであってもよいし、ΔTとは異なっていてもよい。また、所定の時間毎に更新される高さの情報に基づいて、断面積A、及び、打ち込み速度も、所定の時間毎に更新するとよい。
【0081】
また、第1測定計31の測定結果に基づく高さ、及び、第2測定計32の測定結果に基づく高さとしては、例えば、所定の時間ΔTに測定計31,32が測定した高さ(全て又は一部)の平均値や、所定の時間ΔTに測定計31,32が測定した高さのうちの所定値(最大値、最小値、最大値と最小値の中間値等)を例示できる。又は、所定の時間ΔTの中間の時刻(ΔT/2)に測定計31,32が測定した高さであってもよい。
【0082】
また、上記のように所定の時間ΔT毎にコンクリート50の高さ及び断面積Aを更新して打込み速度を算出するに限られない。例えば、打設工事の初期において、第1測定計31と第2測定計32の少なくとも一方の測定結果から取得したコンクリート50の高さに基づく断面積Aを利用し続けて、打込み速度を算出してもよい。
【0083】
また、第1ノイズ除去波形と第2ノイズ除去波形の少なくとも一方から所定の時刻(例えば図8の時刻t3)におけるコンクリート50の高さ(例えばh1(t3)とh2(t3)の平均値等)を取得し、当該高さと、シュート14の断面形状とに基づいて、シュート14を流れるコンクリート50の断面積Aを取得してもよい。そして、その断面積Aと、その所定の時刻におけるコンクリート50の流速(つまり時刻t3が含まれる所定の時間ΔT(t0~t3)における流速)とに基づいて、その所定の時刻(t3)における打込み速度を逐次算出するとよい。つまり、所定の時刻とは、打込み速度を算出する時間間隔Δt毎の時刻(例えば図8のt2、t3、t4…)である。
【0084】
ノイズ成分を除去した波形を取得する場合、その波形を用いて(その波形を表す関数式を用いて)、所定の時刻におけるコンクリート50の高さを取得しやすくなる。そのため、より短い時間間隔(例えば、図8に示すように、コンクリート50の流速を算出する時間間隔ΔTよりも短い時間間隔Δt)にて、打込み速度を算出しやすくなる。そうすると、コンクリート50の高さの変化がより細かく加味された精度の良い打込み速度を算出できる。
【0085】
ただし、上記に限定されず、ノイズ成分が除去される前の測定結果(実測値)をコンクリート50の高さに関する情報として、断面積Aを取得するようにしてもよい。
【0086】
また、流動方向にシュート14の断面形状が変化する場合がある。例えば、流動方向の下流側に向かって先細りする形状のシュート14等がある。その場合、流動方向における第1測定計31と第2測定計32の中間点でのシュート14の断面形状に基づいて、コンクリート50の断面積Aを取得するとよい。そうすることで、より精度良く打込み速度が算出される。
【0087】
===第2実施形態:打設管理方法===
図11A及び図11Bは、測定計31,32がコンクリート50に含まれる骨材51Aを検知する状態の説明図である。図12は、第1実測波形及び第2実測波形における特定点PA,PBを示す図である。
【0088】
第1実施形態ではノイズ成分が除去された波形に基づいて波形の位相差を求めていたが、第2実施形態ではノイズ成分を含む実測波形に基づいて波形の位相差を求める。
【0089】
例えば、コンクリート50に含まれる骨材51A(コンクリート50の表面に露出している骨材51A)を測定計31が検知すると、その時のコンクリート50の高さが高くなる。図12示す波形の特定点PA,PBのように波形の一部が突出し、波形に特徴的な変化をする部位が現れる。図11Aに示すように第1測定計31が或る骨材51Aを検知した後、図11Bに示すように第2測定計32も同じ骨材51Aを検知した場合、第1実測波形と第2実測波形には同じ形状の突出部分が現れる。
【0090】
そこで、端末40の制御部は、第1測定計31の測定結果である第1実測波形の特定点PA(特徴的な変化をする部位)と、第2測定計32の測定結果である第2実測波形の同じ特定点PB(同じ変化をする部位)とを特定するとよい。そして、端末40の制御部は、その特定点PA,PBにおける位相差と、測定計31,32の設置間隔Wに基づいて、コンクリート50の流速を算出する。
【0091】
この場合も、シュート14を流れるコンクリート50を実際に測定した結果に基づいて、精度の良いコンクリート50の流速が得られる。また、第2実施形態ではノイズ除去処理が行われないため、より高速にコンクリート50の流速が得られる。
【0092】
また、測定計31,32が同じ骨材を検知した場合の波形の形状を機械学習したAI機能を端末40に搭載してもよい。そうすることで、2つの波形から同じ特定点を精度良く特定でき、より精度良くコンクリート50の流速(波形の位相差)を算出できる。
【0093】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0094】
前述の実施形態では、セメント組成物としてコンクリートを例示したが、他のセメント組成物(例えばモルタル等)であってもよい。
【0095】
また、前述の実施形態では、生コン車10のシュート14を流れるコンクリートの流速等を測定していたが、シュート14には限られず、傾斜している部材にコンクリートを流して同様の測定をしてもよい。例えば、生コン車10のシュート14と、ポンプ車20のホッパ22との間に、傾斜面(傾斜部に相当)を有する部材を配置し、当該部材に測定部30を設けて、傾斜面を流れるコンクリートの流速等を測定してもよい。
【0096】
また、流動方向に間隔を空けて少なくとも2つの測定計(レーザー変位計)が配されていればよいが、流動方向に間隔を空けて3つ以上の測定計を並べて配置してもよい。その場合、3つ以上の波形の位相差と、各測定計の距離とに基づいて、より精度良くコンクリート50の流速等が算出される。
【符号の説明】
【0097】
10 生コン車、12 ドラム、14 シュート、
20 ポンプ車、22 ホッパ、24 ポンプ、26 コンクリート供給管、
30 測定部、31 第1測定計、32 第2測定計、
33 第1固定具、34 第2固定具、35 マグネットスタンド、
36 可動支持具、
40 端末、
50 コンクリート、51 骨材、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11
図12