(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013661
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】トンネル用注入システム
(51)【国際特許分類】
E21D 11/00 20060101AFI20230119BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E21D11/00 A
E21D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118010
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】坂根 一聡
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155BA09
2D155JA05
2D155LA12
2D155LA13
2D155LA15
2D155LA16
2D155LA17
(57)【要約】
【課題】トンネルの周りの空間や地山へ充填材を注入するシステムにおいて、安価な構成で作業管理の利便性を高める。
【解決手段】トンネル用注入システム6のリモートコントロールユニット40のポンプ操作入力部41によって、運転開始、停止等のポンプ操作入力を受け付ける。制御基板31のポンプ制御部32aによって、ポンプ操作入力に応じて注入ポンプ11を制御する。
制御系20の注入センサ21,22によって、注入装置10における注入量又は注入圧を含む注入データを取得する。制御基板31のデータ中継部35を介して、スマートフォン等のコンピューターデバイス50によって、注入データをシリアルに受け取り、蓄積注入データとして記憶するとともに、蓄積注入データを所定タイミング又は出力指令に応じて出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの周りの空間又は地山へ充填材を注入するシステムであって、
注入ポンプと、該注入ポンプから延びる注入管と、該注入管の先端部に設けられたノズルを含む注入装置と、
前記注入装置を制御する制御系と、を備え、前記制御系が、
前記注入装置における注入量又は注入圧を含む注入データを取得する1又は複数の注入センサと、
前記注入ポンプの運転開始及び停止を含むポンプ操作入力を受け付けるポンプ操作入力部と、
前記ポンプ操作入力に応じて前記注入ポンプを制御するポンプ制御部と、前記注入データを受け取り、シリアルに出力するデータ中継部とを有する制御基板と、
前記データ中継部からの注入データをシリアルに受け取り、蓄積注入データとして記憶するとともに、前記蓄積注入データを所定タイミング又は出力指令に応じて出力するコンピューターデバイスと、
を含むことを特徴とするトンネル用注入システム。
【請求項2】
前記コンピューターデバイスが、前記制御基板と接続されたスマートフォン又はタブレットであることを特徴とする請求項1に記載のトンネル用注入システム。
【請求項3】
前記制御基板又は前記コンピューターデバイスが、前記注入量又は注入圧が設定値に達したか否かを前記注入データに基づいて判定する判定部と、前記設定値に達したと判定されたとき発報指令を出す発報指令部とを含み、
前記ポンプ操作入力部と、前記発報指令を受けて作動する発報部とが、携行可能なリモートコントロールユニットに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネル用注入システム。
【請求項4】
前記コンピューターデバイスが、前記設定値の設定入力部を含む請求項3に記載のトンネル用注入システム。
【請求項5】
前記リモートコントロールユニットには、前記注入量のリセット指令を受け付けるリセット入力部が設けられ、
前記コンピューターデバイスが、前記制御基板を介して受け取った時間的に隣接する2つのリセット指令の間の注入データを一群の蓄積注入データとして区画することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のトンネル用注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填材を注入するシステムに関し、特に、トンネルの周りの空間又は地山への注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
施工から長い年月が経ったトンネルにおいては、覆工背面に空洞が形成されている場合がある。新築トンネルにおいても工法によっては掘削孔と覆工との間に空隙が形成され得る。このようなトンネルの周りの空間(空洞、空隙)をそのままにすると、地山の崩落などを招くおそれがある。そこで、モルタルや発泡ウレタン等の充填材を前記空間に注入する作業が行われる(特許文献1、2等参照)。
【0003】
具体的には、注入ポンプから延びる注入管の先端のノズルを前記空間に臨ませて、注入ポンプを駆動する。注入作業中、流量計によって注入量を計測し、圧力計によって注入圧を計測する。計測信号は、チャートレコーダーに出力されてチャート紙に記録される。注入量や注入圧の計測値が所定に達したら、注入ポンプを停止する。
【0004】
山岳トンネル施工の補助工法においてトンネルの周りの地山に充填材を注入することも知られている(特許文献3等参照)。特許文献3においては。プログラマブルロジックコントローラ(PLC)を用いて注入作業の管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6360922号公報
【特許文献2】特開2003-35095号公報
【特許文献3】特開2021-080674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記計測信号を記録したチャート紙は、作業日報の作成や作業内容の管理に利用できる。しかし、保存、解析、編集等には不便である。運転中にチャート紙やインクを使い切ったり、チャート紙が歪んでいて送紙不能になったりする等の出力エラーも起きやすい。一方、特許文献3に開示されたPLC等を備えた高価な管理システムは、経済的に導入しづらい面もある。
本発明は、かかる事情に鑑み、トンネルの周りの空間や地山へ充填材を注入するシステムにおいて、安価な構成で作業管理の利便性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、トンネルの周りの空間又は地山へ充填材を注入するシステムであって、
注入ポンプと、該注入ポンプから延びる注入管と、該注入管の先端部に設けられたノズルを含む注入装置と、
前記注入装置を制御する制御系と、を備え、前記制御系が、
前記注入装置における注入量又は注入圧を含む注入データを取得する1又は複数の注入センサと、
前記注入ポンプの運転開始及び停止を含むポンプ操作入力を受け付けるポンプ操作入力部と、
前記ポンプ操作入力に応じて前記注入ポンプを制御するポンプ制御部と、前記注入データを受け取り、シリアルに出力するデータ中継部とを有する制御基板と、
前記データ中継部からの注入データをシリアルに受け取り、蓄積注入データとして記憶するとともに、前記蓄積注入データを所定タイミング又は出力指令に応じて出力するコンピューターデバイスと、を含むことを特徴とする。これによって、安価な構成で作業管理の利便性を高めることができる。
【0008】
前記コンピューターデバイスが、前記制御基板と接続されたスマートフォン又はタブレットであることが好ましい。これによって、安価なコンピューターデバイスを提供できる。ひいては注入システムを安価に構築できる。更に、コンピューターデバイスによる蓄積注入データの表示や設定値の設定入力が可能になる。
【0009】
前記制御基板又は前記コンピューターデバイスが、前記注入量又は注入圧が設定値に達したか否かを前記注入データに基づいて判定する判定部と、前記設定値に達したと判定されたとき発報指令を出す発報指令部とを含むことが好ましい。
前記ポンプ操作入力部と、前記発報指令を受けて作動する発報部とが、携行可能なリモートコントロールユニットに設けられていることが好ましい。
好ましくは、注入管の先端ノズルを操作する作業者が、リモートコントロールユニットを携行する。前記作業者は、リモートコントロールユニットによって、注入ポンプを遠隔操作できる。さらに、発報部の作動によって、注入量又は注入圧が設定値に達したことを把握できる。
【0010】
前記コンピューターデバイスが、前記設定値の設定入力部を含むことが好ましい。
前記リモートコントロールユニットには、前記注入量のリセット指令を受け付けるリセット入力部が設けられていることが好ましい。
前記リセット指令は、1の注入対象箇所への注入作業の開始又は終了の合図となる。
前記コンピューターデバイスが、前記制御基板を介して受け取った時間的に隣接する2つのリセット指令の間の注入データを一群の蓄積注入データとして区画することが好ましい。前記一群の蓄積注入データを、前記1の注入対象箇所に対するデータとして特定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トンネルの周りの空間や地山へ充填材を注入するシステムにおいて、安価な構成で作業管理の利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るトンネル用注入システムによって補修中のトンネルの断面図である。
【
図2】
図2は、前記トンネル用注入システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、前記トンネル用注入システムのスマートフォンの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、施工から長い年月が経過して、補修が必要となったトンネル1を示す。トンネル1の覆工3の背面と地山2との間には空洞4(トンネルの周りの空間)が形成されている。空洞4に充填材5を注入して、空洞4を埋めることによって、トンネル1を補修する。
【0014】
図1に示すように、補修には、トンネル用注入システム6が用いられている。注入システム6は、注入装置10と、制御系20を備えている。注入装置10は、注入ポンプ11と、注入管12と、ノズル13を含む。注入ポンプ11は、作業車7Aの荷台に搭載されている。注入ポンプ11の出口ポートからフレキシブルホースからなる注入管12が延びている。注入管12の先端部にノズル13が設けられている。充填材5が、注入ポンプ11から圧送され、注入管12を通って、ノズル13から吐出される。
【0015】
充填材5としては、例えば発泡ウレタンが用いられている。発泡ウレタンの原料のA液とB液が互いに別の注入ポンプから圧送されて合流される。
図1においては、片方の液用の注入管だけ、ないしは合流後の注入管だけを図示する。
【0016】
注入装置10は制御系20によって制御される。
図1に示すように、制御系20は、1又は複数の注入センサ21,22と、制御ユニット30と、リモートコントロールユニット40を含む。注入センサ21,22によって、充填材5の注入量、注入圧、注入流速等の注入データが取得される。注入センサ21,22は、注入管12に設けられているが、注入ポンプ11と注入管12との間に介在されていてもよく、ノズル13に設けられていてもよい。
【0017】
注入センサとしては、充填材5の注入流量(kg/min)ひいては注入量(kg)を計測する流量計21と、充填材5の注入圧(MPa)を計測する圧力計22が含まれる。A液用の注入管とB液用の注入管にそれぞれ注入センサが設けられていてもよい。注入管の流れ方向に離れて2つ以上の圧力計が設けられていてもよい。図示は省略するが、更に注入センサとして、充填材5の注入流速を計測する流速計が含まれていてもよい。
【0018】
図1に示すように、制御ユニット30は、作業車7Aの荷台に搭載された架台8に収容されている。好ましくは、制御ユニット30は、注入ポンプ11の駆動電流等の影響を受けないよう、注入ポンプ11から離して配置されている。
図2に示すように、制御ユニット30は、制御基板31と、スマートフォン50(コンピューターデバイス)を含む。制御基板31は、マイクロコントローラユニット(以下「MCU」と称す)32と、信号変換器33,34を含む。
【0019】
図2に示すように、MCU32は、ポンプ制御部32aとしての機能と、判定部32bとしての機能と、発報指令部32cとしての機能と、データ中継部35の主要部としての機能とを有している。ポンプ制御部32aとしてのMCU32には、リモートコントロールユニット40と、注入ポンプ11とが接続されている。MCU32(ポンプ制御部32a)は、リモートコントロールユニット40によるポンプ操作入力に応じて、注入ポンプ11を制御する。
【0020】
判定部32bとしてのMCU32は、充填材5の注入量及び注入圧の少なくとも一方が設定値に達したか否かを注入データに基づいて判定する。MCU32(判定部32b)のメモリーには、設定注入量(注入量の設定値)及び設定注入圧(注入圧の設定値)が記憶されている。設定注入量及び設定注入圧は、上書き、修正可能である。
発報指令部32cとしてのMCU32は、判定部32bによって注入量又は注入圧が設定値に達したと判定されたとき、発報指令を出す。
【0021】
図1に示すように、リモートコントロールユニット40は、作業者A,Bが携行可能である。好ましくは、高所作業車7Bに乗ってノズル13を操作する作業者Bがリモートコントロールユニット40を携行する。
図2に示すように、リモートコントロールユニット40には、入切ボタン41(ポンプ操作入力部)、リセットボタン42(リセット入力部)、ブザー43(発報部)等が設けられている。入切ボタン41は、注入ポンプ11の運転開始及び停止を含むポンプ操作入力を受け付ける。入切ボタン41は、好ましくはフリップフロップ式である。入切ボタン41に連なる信号線41cは、ポンプ制御部32aとしてのMCU32と接続されている。
【0022】
リセットボタン42は、リセット指令を受け付ける。リセットボタン42に連なる信号線42cは、判定部32b及びデータ中継部35としてのMCU32と接続されている。
発報指令部32cとしてのMCU32からの信号線43cが、ブザー43に接続されている。
【0023】
信号線41c,42c,43cは1本のケーブル44に収容されている。ケーブル44は、注入管12に這わされるように配線されていてよく、注入管12から離して配線されていてもよい。
なお、リモートコントロールユニット40と制御基板31とが、無線通信接続されていてもよい。
【0024】
図2に示すように、データ中継部35の主要部としてのMCU32には、注入センサ21,22と、スマートフォン50とが接続されている。注入センサ21,22とMCU32との間には、A/D変換器33が介在されている。MCU32とスマートフォン50とは、例えばUART/RS232C変換器34及びRS232C/USB変換ケーブル36を介して、有線接続されている。MCU32と変換器33,34とによって、データ中継部35が構成されている。データ中継部35は、注入センサ21,22からの注入データを受け取り、スマートフォン50へシリアルに出力する。
【0025】
図3に示すように、スマートフォン50は、CPU51と、記憶部52と、ディスプレイ53(表示入力部)と、通信部54を含む。記憶部52には、注入作業管理のためのプログラムの格納部52pと、蓄積注入データの格納部52dとが設けられている。CPU51が各プログラムにしたがって処理を実行する。プログラムとしては、注入データを受け取って蓄積するためのプログラム55a、設定注入量及び設定注入圧を設定するためのプログラム55b、蓄積注入データのリアルタイム表示、閲覧、送信などの出力のためのプログラム55c等を含む。
表示入力部53には、例えば注入状況表示53a、データ蓄積開始・終了ボタン53b、設定メニューボタン53c、閲覧メニューボタン53d等が表示される。
【0026】
トンネル用注入システム6によって、次のようにして、トンネル1の補修が行われる。
<事前処理>
予め、トンネル1を点検して、空洞4の位置(注入対象箇所)を確認する。
トンネル用注入システム6のスマートフォン50の表示入力部53の設定メニューボタン53cをタッチして、設定画面を表示させ、トンネル1の名称や場所等のトンネル特定情報、空洞4の位置等の注入対象箇所特定情報等を入力し、更には、空洞4に注入すべき充填材5の設定注入量及び設定注入圧の設定入力を行う。設定注入量は、空洞4の大きさの実測値又は推定値、並びに充填材5となる発泡ウレタンの発泡倍率から設定できる。このとき、スマートフォン50は設定入力部として機能する。設定注入量及び設定注入圧は、スマートフォン50からMCU32へ送られて、MCU32のメモリーに記憶される。
その後、作業者Aは、データ蓄積開始・終了ボタン53bをタッチする。これに応じて、スマートフォン50は、データ蓄積開始指令を受け付け、注入データの取得・蓄積モードに入る。
【0027】
<注入工程>
ノズル13側の作業者Bは、覆工3に開けた穴3cにノズル13を挿し込み、ノズル13の先端を空洞4に臨ませる。続いて、リモートコントロールユニット40の入切ボタン41を押下する。
入切ボタン41の押下によって、注入開始を指令するポンプ操作信号がリモートコントロールユニット40からMCU32へ出される。MCU32は、前記ポンプ操作信号に応じて、注入ポンプ11へ運転開始の制御信号を出す。これに応じて、注入ポンプ11が駆動される。これによって、充填材5が、注入ポンプ11から圧送され、注入管12を経て、ノズル13から空洞4内に注入される。
【0028】
<注入データ取得工程>
注入工程の実施期間中、流量計21によって瞬時の注入流量(kg/min)ひいては積算の注入量(kg)が計測されるとともに、圧力計によって注入圧(MPa)が計測される。これらの計測信号は、制御基板31へ送られ、A/D変換器33によってデジタル変換されたうえで、MCU32に入力される。MCU32(データ中継部35)は、これら注入量及び注入圧からなる注入データを現在時間の情報とともに、スマートフォン50へ送られる。スマートフォン50のCPU51は、受け取った注入データ及び時間情報を蓄積注入データとして、記憶部52の蓄積注入データ格納部52dに蓄積する。
【0029】
<蓄積注入データ出力(リアルタイム注入状況表示)>
好ましくは、CPU51は、注入作業中のトンネル1ないしは空洞4の蓄積注入データを用いて、リアルタイムの注入状況表示53aを作成して、ディスプレイ53に表示出力する。例えば、注入状況表示53aは、注入量及び注入圧の経時変化を表したグラフや、注入量及び注入圧等の注入データの数値を表記した表などを含む。これによって、作業者Aは、注入状況をリアルタイムで的確に把握することができる。スマートフォン50がチャートレコーダーの代わりになるから、従来のアナログ式のチャートレコーダーが不要となる。チャート紙やインクが切れて記録不能等となるおそれを解消できる。
【0030】
<注入管理>
併行して、判定部32bとしてのMCU32が、注入量及び注入圧の少なくとも一方が設定値に達したか否かを、注入データに基づいて判定する。注入量及び注入圧の何れかが設定値に達したときは、発報指令部32cとしてMCU32から発報指令がリモートコントロールユニット40のブザー35へ送られる。これを受けたブザー43が報知音を出力する。
【0031】
これによって、作業者Bは、注入量又は注入圧が設定値に達したことを把握できる。
好ましくは、注入量が設定値に達したときの報知音(出力)と、注入圧が設定値に達したときの報知音(出力)とを異ならせる。これによって、作業者Bは、注入量及び注入圧のうち、どれが設定値に達したのかを認識することができる。
【0032】
<注入終了工程>
作業者Bは、ブザー35の作動に応じて、入切ボタン41を押下する。これによって、注入停止のポンプ操作指令がリモートコントロールユニット40からMCU32へ出される。MCU32は、前記ポンプ操作指令に応じて、注入ポンプ11へ運転停止の制御信号を出す。これに応じて、注入ポンプ11の運転が停止され、充填材5の圧送が停止される。このようにして、空洞4を適量の充填材5で埋めることができる。充填材5の注入不足や過剰注入を防止できる。
【0033】
<リセット工程>
さらに、作業者Bは、リセットボタン42を押下する。これによって、リセット指令が、リモートコントロールユニット40からMCU32へ送られる。これを受けたMCU32は、メモリーの注入量の積算値をゼロにリセットする。
さらに、リセット指令信号は、データ中継部35を介して、スマートフォン50へ送られる。スマートフォン50のCPU51は、リセット指令信号をも蓄積注入データの1つとして記憶部52に記憶させる。
【0034】
トンネル1に複数の空洞4がある場合、前記事前処理の空洞特定情報入力、注入工程~注入終了・リセット工程を空洞4ごとに繰り返す。
スマートフォン50のCPU51は、時間的に隣接する2つのリセット指令の間に受け取った注入データを一群の蓄積注入データとして区画する。つまり、前回のリセット指令から今回のリセット指令までに取得した注入データは、空洞特定情報で特定された1の空洞4への注入データとして管理する。
【0035】
<データ蓄積終了工程>
トンネル1のすべての補修対象の空洞4への注入作業が終了したら、作業者Aが、スマートフォン50の表示入力部53のデータ蓄積開始・終了ボタン53bをタッチする。これによって、スマートフォン50のCPU51は、データ蓄積終了指令を受け付け、注入データの取得・蓄積モードを閉じる。
【0036】
<蓄積注入データ出力(閲覧)>
作業者Aや作業管理者が、表示入力部53の閲覧メニューボタン53dをタッチすると、閲覧メニュー(詳細図示省略)が開き、蓄積注入データを閲覧したいトンネル1及び空洞4を指定できる。指定は、トンネルの名称、場所、作業日時などの入力によって行うことができる。
【0037】
指定を受け付けたCPU51は、記憶部52の蓄積注入データ格納部52dから、指定されたトンネル1及び空洞4に関する蓄積注入データを読み込んで、ディスプレイ表示する。表示は、前記リアルタイムの注入状況表示53aと同様のグラフや表を含んでいてもよい。これによって、作業者Aや作業管理者は、補修済みのトンネル1及び空洞4についての注入作業状況を迅速かつ的確に把握して管理することができる。
【0038】
さらに好ましくは、閲覧メニューには、蓄積注入データを作業日報等の所定フォーマットの帳票形式で出力するメニューが設けられている。注入データをデジタルデータとして取得できるから編集が容易である。これによって、手作業で作業日報等を作成する必要が無く、作業者の負担を軽減できる。また、作業管理者は、作業状況を的確に管理することができる。
【0039】
<蓄積注入データ出力(送信)>
好ましくは、スマートフォン50のCPU51は、送信指令を受けて、又は所定タイミングで、記憶部52の蓄積注入データを管理パソコン60へ送信出力する。これによって、蓄積注入データを管理パソコン60にも記憶させて、管理パソコン60においても蓄積注入データを閲覧、編集等することができる。
所定タイミングとしては、リセット指令の受け取り時でもよく、データ蓄積終了指令の受け取り時でもよく、決まった時刻であってもよい。
管理パソコン60は、ノートパソコンでもよく、デスクトップパソコンでもよく、クラウドコンピューティングでもよい。
【0040】
<データ消去>
好ましくは、スマートフォン50のCPU51は、管理パソコン60への蓄積データの送信出力後、消去指令を受けて、又は自動的に、記憶部52の蓄積注入データを消去する。これによって、スマートフォン50の動作を軽くできる。
【0041】
トンネル用注入システム6によれば、コンピューターデバイスとしてスマートフォン50を用いることによって、安価な構成で的確に作業管理可能な注入システムを構築でき、作業管理の利便性を高めることができる。
【0042】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、本システムは、トンネルの躯体内の空隙やトンネルの周りの地山に充填材を注入する作業にも適用できる。トンネルの補修に限らず、新設中のトンネルの裏込めや、注入式フォアポーリングその他の補助工法等にも適用可能である。矢板工法で施工されたトンネルやシールドトンネルにおいて、掘削孔と覆工との間に形成された空隙(空間)に充填材を裏込めする作業にも適用可能である。
充填材は、ウレタン等の発泡性樹脂に限らず、モルタル、グラウト等であってもよい。
【0043】
判定部及び発報指令部の機能をスマートフォン50に持たせてもよい。すなわち、スマートフォン50が注入量又は注入圧が設定値に達したか否かを判定し、達したと判定されたときは、発報指令信号が、スマートフォン50からMCU32ひいてはデータ中継部35を経由して、ブザー43へ送られるようにしてもよい。
発報部は、ブザーに限らず、発光器であってもよい。
コンピューターデバイスは、スマートフォン50に限らず、タブレットでもよく、ノートパソコンでもよく、デスクトップパソコンでもよく、クラウドコンピューティングでもよい。
制御基板31とスマートフォン50等のコンピューターデバイスとは、有線接続に限らず無線接続されていてもよい。
リモートコントロールユニット40にポンプ操作入力部として、注入流量の調整つまみが設けられていてもよい。該調整つまみによって指定したボリュームのポンプ操作信号が、リモートコントロールユニット40からMCU32へ出され、これに応じて、MCU32が注入ポンプ11へ回転数の制御信号を出すようにしてもよい。注入ポンプ11には回転数を調整可能なインバーターが設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば覆工背面等に空洞が出来た古いトンネルの補修に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 トンネル
2 地山
4 空洞(トンネルの周りの空間)
5 充填材
6 トンネル用注入システム
10 注入装置
11 注入ポンプ
12 注入管
13 ノズル
20 制御系
21 流量計(注入センサ)
22 圧力計(注入センサ)
30 制御ユニット
31 制御基板
32 マイクロコントローラユニット(MCU)
32a ポンプ制御部
32b 判定部
32c 発報指令部
35 データ中継部
40 リモートコントロールユニット
41 入切ボタン(ポンプ操作入力部)
42 リセットボタン(リセット入力部)
43 ブザー(発報部)
50 スマートフォン(コンピューターデバイス)
53 表示入力部(ディスプレイ)
53a 注入状況表示
53b データ蓄積開始・終了ボタン
53c 設定メニューボタン
53d 閲覧メニューボタン
60 管理パソコン