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特開2023-136619複数のベアラを使用してデータを送受信するネットワーク装置、ユーザ端末、通信制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136619
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】複数のベアラを使用してデータを送受信するネットワーク装置、ユーザ端末、通信制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20230922BHJP
   H04W 92/24 20090101ALI20230922BHJP
   H04W 28/08 20230101ALI20230922BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W92/24
H04W28/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042390
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北辻 佳憲
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】1つのユーザ端末がデータ通信用の複数のベアラを確立することが可能なモバイル通信システムにおいて、より効率的なユーザ端末の収容を可能にすること。
【解決手段】ユーザ端末(UE)がデータ通信用に確立する複数のベアラのそれぞれを収容する基地局とゲートウェイ(GW)とを決定する、コアネットワークに配置されたネットワーク装置は、第1のUEから基地局を介してベアラの確立要求を受信し、記第1のUEから受信した確立要求に応じて、コアネットワーク内の複数のGWのうちからベアラを収容するための所定のGWを決定し、決定した所定のGWにベアラを確立するための所定のリソースの確保を指示し、第1のUEとは異なる第2のUEから受信したベアラの確立要求に応じて、所定のリソースを使用して第2のUEと所定のGWとの間の所定のベアラを確立するよう所定のGWに指示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末(UE)がデータ通信用に確立する複数のベアラのそれぞれを収容する基地局とゲートウェイ(GW)とを決定する、コアネットワークに配置されたネットワーク装置であって、
ベアラの確立要求を受信する受信手段と、
前記コアネットワーク内の複数のGWに収容されたベアラを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記複数のGWのうちの第1のGWと前記コアネットワーク内の複数の基地局のうちの第1の基地局との間に、UEに関連付けられない第1のベアラを確立するよう前記第1のGWに指示し、
前記受信手段で第1のUEからベアラの確立要求を受信したことに応じて、前記第1のベアラに関連付けて前記第1のUEと前記第1の基地局との間に所定のベアラを確立するよう前記第1の基地局に指示する
ことを特徴とするネットワーク装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記受信手段で前記第1のUEとは異なる第2のUEから接続要求を受信したことに応じて、前記第1のGWと、前記第1の基地局との間にベアラを確立するよう前記第1のGWに指示することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記受信手段でUEから接続要求を受信した場合に、前記複数のGWのうちの少なくとも1つと、前記複数の基地局とのうちの少なくとも1つの間に、UEに関連付けられない複数の前記第1のベアラを確立することを特徴とする請求項2に記載のネットワーク装置。
【請求項4】
前記複数のGWのそれぞれに生じている負荷を示す負荷情報を、各GWから取得する取得手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記取得手段によって取得した前記複数のGWのそれぞれの負荷に基づいて前記第1のベアラを確立する前記第1のGWおよび前記第1の基地局を決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のネットワーク装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記複数のGWのそれぞれが確保しているベアラを確立するためのリソースの量、
前記複数のGWのそれぞれが収容可能なUEの最大数、
前記複数のGWのそれぞれが収容しているUEの数、
前記複数のGWのそれぞれが収容しているUEの平均通信速度、
前記複数のGWのそれぞれが収容しているUEから所定の期間において受信したベアラの確立要求の頻度、
前記複数のGWのそれぞれが収容しているUEから所定の期間において受信したベアラの解放要求の頻度、
前記複数のGWのそれぞれが提供可能なデータ通信全体の最高通信速度、
前記複数のGWのそれぞれが現在提供しているデータ通信全体の通信速度、および
前記複数のGWのそれぞれと接続している基地局の数、
の少なくともいずれかに基づいて、UEに関連付けられないベアラの確立をいずれのGWに指示するかを決定することを特徴とする請求項4に記載のネットワーク装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1のUEと前記第1の基地局との間に前記所定のベアラを確立したあと、前記第1のUEから受信したベアラの解放要求に応じて、前記第1のベアラを解放するか否かを決定することを特徴とする請求項4または5に記載のネットワーク装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1のUEからベアラの解放要求を受信した場合に、前記第1のGWが確保している、UEに関連付けられていない前記第1のGWと前記複数の基地局との間のベアラの数に基づいて、前記第1のベアラを解放するか否かを判定することを特徴とする請求項6に記載のネットワーク装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記第1のGWが確保しているベアラを確立するためのリソースの量、
前記第1のGWが収容可能なUEの最大数、
前記第1のGWが収容しているUEの数、
前記第1のGWが収容しているUEの平均通信速度、
前記第1のGWが収容しているUEから所定の期間において受信したベアラの確立要求の頻度、
前記第1のGWが収容しているUEから所定の期間において受信したベアラの解放要求の頻度、
前記第1のGWが提供可能なデータ通信全体の最高通信速度
前記第1のGWが現在提供しているデータ通信全体の通信速度、および
前記第1のGWと接続している基地局の数、
の少なくともいずれかに基づいて、前記第1のベアラを解放するか否かを判定することを特徴とする請求項7に記載のネットワーク装置。
【請求項9】
前記負荷情報は、前記複数のGWのそれぞれの空きリンク容量、前記複数のGWのそれぞれが収容しているUEの数、前記複数のGWのそれぞれが確立しているアクティブベアラの数、前記複数のGWのそれぞれが確保している、UEに関連付けられていない前記第1のGWと基地局との間のベアラの数、の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項8に記載のネットワーク装置。
【請求項10】
ユーザ端末(UE)がデータ通信用に確立する複数のベアラのそれぞれを収容する基地局とゲートウェイ(GW)とを決定する、コアネットワークに配置されたネットワーク装置であって、
UEから基地局を介してベアラの確立要求を受信する受信手段と、
前記コアネットワーク内の複数のGWが収容するベアラを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記受信手段で第1のUEから受信したベアラの確立要求に応じて、前記複数のGWのうちからベアラを収容するための所定のGWを決定し、前記第1のUEと前記所定のGWとの間のベアラを確立するよう前記所定のGWに指示し、
ベアラを確立するための所定のリソースの確保を前記所定のGWに指示し、
前記第1のUEとは異なる第2のUEからベアラの確立要求を受信したことに応じて、前記所定のリソースを使用して前記第2のUEと前記所定のGWとの間の所定のベアラを確立するよう指示する
ことを特徴とするネットワーク装置。
【請求項11】
ベアラを確立するための前記所定のリソースは、前記コアネットワークにおける前記所定のGWのIPアドレス、もしくは占有通信帯域であることを特徴とする請求項10に記載のネットワーク装置。
【請求項12】
複数の基地局と複数のゲートウェイ(GW)とを含むコアネットワークに配置されたネットワーク装置の制御下でデータ通信用に複数のベアラを確立して通信するユーザ端末(UE)であって、
前記ネットワーク装置にベアラの確立要求を送信する送信手段と、
前記確立要求に応じて確立された前記複数のベアラを使用してデータ通信を行う通信手段と、
を備え、
前記ネットワーク装置は、
前記複数のGWのうちの第1のGWと前記複数の基地局のうちの第1の基地局との間に、UEに関連付けられない第1のベアラを確立するよう前記第1のGWに指示し、
第1のUEからベアラの確立要求を受信したことに応じて、前記第1のベアラに関連付けて前記第1のUEと前記第1の基地局との間に所定のベアラを確立するよう指示する
ことを特徴とするユーザ端末。
【請求項13】
ユーザ端末(UE)がデータ通信用に確立する複数のベアラのそれぞれを収容する基地局とゲートウェイ(GW)とを決定する、コアネットワークに配置されたネットワーク装置が実行する通信制御方法であって、
前記コアネットワーク内の複数のGWのうちの第1のGWと前記コアネットワーク内の複数の基地局のうちの第1の基地局との間に、UEに関連付けられない第1のベアラを確立するよう前記第1のGWに指示することと、
第1のUEからベアラの確立要求を受信したことに応じて、前記第1のベアラに関連付けて前記第1のUEと前記第1の基地局との間に所定のベアラを確立するよう前記第1の基地局に指示することと、
を含むことを特徴とする通信制御方法。
【請求項14】
ネットワーク装置が備えるコンピュータに、請求項13に記載の通信制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のベアラを使用してデータを送受信するネットワーク装置、ユーザ端末、通信制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信システム(移動体通信システム)において、ユーザ端末(UE)は、無線アクセスネットワーク(RAN)を経由して、コアネットワーク(モバイルコア)にアクセスする。モバイルコアは、ユーザデータの伝送を担うユーザプレーン(U-Plane)機能と、モビリティ管理やセッション管理等の制御を担う制御プレーン(C-Plane)機能を有する。モバイルコアのセッション制御機能は、ユーザセッション情報の管理、及び通信経路であるベアラの確立及び解放を行う。モバイルコアにおいて、ユーザデータの伝送はゲートウェイ(GW)によって行われる。ユーザ端末がデータ通信のために接続するGWの選択等のベアラ設定は、セッション制御機能によって行われる。なお、第5世代(5G)モバイル通信システムにおいて、GWは、「UPF(User Plane Function)」と称され、セッション制御機能は「SMF(Session Management Function)」と称される。非特許文献1及び2には、このようなモバイル通信システムが規定されている。
【0003】
将来のモバイル通信システムでは、転送されるユーザデータの大容量化が見込まれる。非特許文献3には、複数のベアラを用いて通信を行う技術が記載されている。このような技術は、大容量通信の実現のために活用されうる。このようなアーキテクチャにおいて、UEは、1つ以上の基地局と複数のベアラを確立して通信を行うことが想定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】3GPP TS 23.501 V17.0.0, "3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; System architecture for the 5G System (5GS); Stage 2 (Release 17)"
【非特許文献2】3GPP TS 23.502 V17.0.0, "3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Procedures for the 5G System (5GS); Stage 2 (Release 17)"
【非特許文献3】IEEE/ACM Transactions on Networking (Volume: 14, Issue: 6, Dec. 2006), "Multi-Path TCP: A Joint Congestion Control and Routing Scheme to Exploit Path Diversity in the Internet"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなモバイル通信システムにおいて、例えば、帯域の不足の検知に応じてベアラを逐次追加する場合、ベアラの確立に一定の時間を要するため、アプリケーションの通信等のデータ通信を開始するまでに時間がかかりうる。このため、モバイル通信システムは、UEが利用可能な複数のベアラを予め確立しておき、通信に使用しないベアラは非アクティブ状態(スタンバイ状態)に設定し、転送されるユーザデータの容量に応じてスタンバイ状態からアクティブ状態に遷移させたベアラを利用させることで、ユーザデータの容量の増加に低遅延時間で対応することができる。
【0006】
ここで、UEが要求するユーザデータの容量が大きくなり、確立しておく通信セッションの数が増えた場合、アイドル状態に設定されるベアラの数が大きくなり、ユーザデータを転送するゲートウェイによって収容可能なUEの数が小さくなる場合がある。
【0007】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、1つのユーザ端末がデータ通信用の複数のベアラを確立することが可能なモバイル通信システムにおいて、より効率的なユーザ端末の収容を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、ユーザ端末(UE)がデータ通信用に確立する複数のベアラのそれぞれを収容する基地局とゲートウェイ(GW)とを決定する、コアネットワークに配置されたネットワーク装置であって、
ベアラの確立要求を受信する受信手段と、
前記コアネットワーク内の複数のGWに収容されたベアラを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記複数のGWのうちの第1のGWと前記コアネットワーク内の複数の基地局のうちの第1の基地局との間に、UEに関連付けられない第1のベアラを確立するよう前記第1のGWに指示し、
前記受信手段で第1のUEからベアラの確立要求を受信したことに応じて、前記第1のベアラに関連付けて前記第1のUEと前記第1の基地局との間に所定のベアラを確立するよう前記第1の基地局に指示する
ことを特徴とするネットワーク装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、1つのユーザ端末がデータ通信用の複数のベアラを確立することが可能なモバイル通信システムにおいて、より効率的なユーザ端末の収容を可能にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】モバイル通信システムの構成例を示す図
図2】ベアラ制御部の機能構成例を示すブロック図
図3】ネットワークノードのハードウェア構成例を示すブロック図
図4】GWの機能構成例を示すブロック図
図5】ベアラ確立処理の一例を示すシーケンス図
図6】ベアラ情報管理部で管理されるベアラパラメータを示す図
図7】ベアラ解放処理の一例を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
本実施形態では、ユーザ端末(ユーザ装置)(UE)による大容量通信(例えば、UEに搭載されたアプリケーションによる大容量通信)を実現するために、モバイル通信システムは、UEが複数のベアラを確立して使用できるように構成される。本明細書において、ベアラとは、ゲートウェイ(GW)から基地局を経由してUEまでの通信経路の各区間を指す。
【0013】
また、本実施形態では、UEが確立できるベアラとして、2種類のベアラ(「アクティブベアラ」及び「スタンバイベアラ」)を定義する。「アクティブベアラ」は、データ伝送に使用されるベアラを示す。「スタンバイベアラ」は、ベアラとして確立されているがデータ伝送に使用できないベアラであって、アクティブ化が行われることでアクティブベアラへの切り替えが可能なベアラである。例えば、帯域が不足することが明らかになり、データ伝送用のベアラの追加が必要になった場合に、予め確立しておいたスタンバイベアラのアクティブ化が行われる。ベアラの確立を行う際には、後述するように、コアネットワーク内の複数のGWから、UEとの間で送受信されるデータのハンドリングを行う処理能力を有するGWを問い合わせる処理を行う必要がある。一方で、スタンバイベアラをアクティブ化する処理であれば、すでにGWが決まっており、コアネットワーク内の複数のGWに問い合わせを行う処理を省略することができる。これにより、ベアラを新たに確立するよりも、速やかにベアラの追加を行うことが可能である。なお、本実施形態では、同じ組み合わせの基地局-GW間に複数のベアラを確立してもよい。
【0014】
このように、UEごとに予め確立されるベアラの数が大きくなると、GWごとに確立されたベアラのうち、アクティブベアラの数が小さくなる場合がある。このような場合、GWの確立可能なベアラの数に対するスタンバイベアラの数が大きくなり、GWごとの送受信可能なユーザデータのスループットの低下や、GWごとに収容可能なUE数の低下が生じうる。
【0015】
このため、本実施形態に係る通信システムは、複数のUEに対して、GWと基地局との間のベアラを共用する。例えば、第1のUEからベアラの確立要求を受信した際に、第1のUEとGWとの間の通信経路を確立するとともに、所定の基地局とGWとの間の共用ベアラを追加で確立する。そして、第1のUEまたは所定の基地局に接続する他のUEからのベアラの確立要求を受信した際に、すでに確立している共用ベアラに対応付けてUE-基地局間のベアラを確立する。これによって、UEからベアラの確立要求を受信した後に、基地局-GW間のベアラを確立する遅延を低減することができる。また、これによって、UEごとに予めスタンバイベアラを確立しておかなくても、共用ベアラを使用してベアラを迅速に確立することができる。このため、GWがUEごとに予め保有しておくスタンバイベアラの数を低減することができる。また、共用ベアラは、解放を行った後、異なるUEに割り当てることができるため、UEごとに複数のスタンバイベアラを確立しておくよりGWの負荷を低減することができる。なお、本実施形態では所定のUEに専用されるベアラのタイプとして専用ベアラも確立される。専用ベアラは、アクティブ状態またはスタンバイ状態に関わらず、割り当てるUEが予め決まっているベアラである。
【0016】
<モバイル通信システムの構成>
図1は、本実施形態に係るモバイル通信システムの構成例を示している。図1に示すように、本実施形態のモバイルコア30には、移動管理機能(移動管理部)31、ベアラ制御機能(ベアラ制御部)32、及び複数のGW33が含まれる。本実施形態のベアラ制御部32は、複数の基地局に接続可能なUEに対して、当該UEがデータ通信用に確立する複数のベアラのそれぞれを収容する基地局とGWとを決定する、コアネットワーク(モバイルコア30)に配置されたネットワーク装置の一例である。
【0017】
モバイル通信システムは、複数の無線基地局(基地局)を備えている。なお、一例では、モバイル通信システムにセルフリーアーキテクチャが適用され、無線基地局の機能を提供する構成として、複数のアクセスポイント(AP)が適用されてもよい。複数の基地局20は、モバイルコア30に接続される。このため、UE10は、複数の基地局20に接続し、当該接続した基地局20を介してモバイルコア30にアクセスし、更にデータネットワーク40にアクセスすることが可能である。
【0018】
ベアラ制御部32は、ユーザセッション情報の管理、及び通信経路であるベアラの確立及び解放を行うように構成される。本実施形態では、ベアラ制御部32は、UE10がデータ伝送に使用するベアラを基地局20及びGW33に収容するように、ベアラの確立を行う。また、ベアラ制御部32は、UE10の接続時に確立する専用ベアラの本数の決定、確立する各ベアラの収容先の選択、及びベアラタイプの切り替えの判断を行うように構成される。また、ベアラ制御部32は、共用ベアラを確保すべきGW33の決定、GW33ごとに確保する共用ベアラの数の決定、GWごとに確保された共用ベアラの管理を行う。
【0019】
<ベアラ制御部32の構成>
図2は、ベアラ制御部32の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、ベアラ制御部32は、制御信号受信部201、GW決定部202、GW制御部203、およびベアラ情報管理部204、通信部205を備える。
【0020】
制御信号受信部201は、UE10から、接続要求、ベアラ確立要求、およびベアラ解放要求を含む制御信号を受信する。また、UE10からアイドル状態に遷移する通知を受信してもよい。接続要求は、UE10の電源投入時にモバイルコア30への接続を要求する信号である。本実施形態では、接続要求時に専用ベアラが確立されるため、ベアラ制御部32は接続要求をベアラの確立要求の1つとして扱う。ベアラ追加要求は、UE10がより高いスループットを要求する場合や、所定のアプリケーションの起動に応じて送信され、UE10への追加のベアラの確立を要求する信号であり、ベアラ確立要求の1つである。ベアラ解放要求は、スループットの要求が低くなった場合や、所定のアプリケーションの終了に応じて送信され、UE10に関連付けられたベアラの解放を要求する信号である。
【0021】
GW決定部202は、制御信号受信部201で受信した制御信号に基づいて、制御対象のGWを決定する。例えば、UE10から接続要求を受信した場合には、当該UE10を収容するGW33、すなわち専用ベアラを確立するGW33を決定し、後述する処理によって共用ベアラの確保を指示する場合には共用ベアラを確保させるGW33を決定する。また、例えばスタンバイ状態の専用ベアラを有しているUE10からベアラの確立要求を受信した場合は、スタンバイ状態の専用ベアラをアクティブ状態に遷移させるために、スタンバイ状態の専用ベアラを確保しているGW33を特定する。また、例えばスタンバイ状態の専用ベアラを有していないUE10からベアラの確立要求を受信した場合は、共用ベアラを確保しているGW33のいずれかに共用ベアラに対応付けてUEと基地局との間のベアラを確立するよう指示する。また、UE10から電源オフや機内モードオン状態に遷移する制御信号を受信する場合には、当該UE10についてアクティブ状態のすべての専用ベアラをスタンバイ状態にするとともにすべての共用ベアラを解放するようにしてもよい。
【0022】
GW制御部203は、GW決定部202で決定したGW33に専用ベアラまたは共用ベアラの制御を指示する。例えば、GW制御部203は、専用ベアラまたは共用ベアラの確立、解放、またはアクティブ状態あるいはスタンバイ状態への遷移を指示する。また、GW制御部203がUE10から共用ベアラの解放要求を受信した場合は、UE10と基地局20との間のベアラを解放するとともに、基地局20とGW33との間のベアラを解放するか維持するかを併せて指示する。また、GW制御部203は、GW決定部202で決定したGW33に共用ベアラの制御を指示する。例えば、GW制御部203は、共用ベアラの確保、解放を指示する。
【0023】
ベアラ情報管理部204は、専用ベアラまたは共用ベアラに関するパラメータを管理する。例えば、ベアラの識別子と関連付けて、ベアラを形成するネットワーク装置の識別子に関する情報、およびベアラの状態に関する情報を管理する。
【0024】
図6に、本実施形態に係るベアラ情報管理部204が管理するベアラ情報(ベアラパラメータ)を示す。
【0025】
ベアラに関するパラメータは、ベアラ識別情報(ID)601、UE ID602、基地局ID603、GW ID604、ステータス情報605、ベアラタイプ606を含む。ベアラ識別情報601は、コアネットワーク内でのベアラの識別子である。UE ID602は、ベアラが割当られているUEを示す識別情報であり、一例ではUE10のIPアドレスである。基地局ID603はUE ID602で示すUE10が接続している基地局20の識別子であり、一例では基地局のIPアドレスである。GW ID604はベアラを収容するGW33の識別情報であり、一例ではGW33のIPアドレス(インナーIPアドレス)である。ステータス情報605は、ベアラがアクティブ状態にあるか、スタンバイ状態にあるかを示す。ベアラタイプ606は、ベアラが専用ベアラであるか共用ベアラであるかを示す。
【0026】
エントリー611はアクティブ状態にある専用ベアラの例であり、エントリー612はスタンバイ状態にある専用ベアラの例であり、エントリー613はアクティブ状態にあるUE10への割り当てが行われている共用ベアラの例であり、エントリー614はスタンバイ状態にあるUE10への割り当てが行われている共用ベアラの例であり、エントリー615はUE10への割り当てが行われていない共用ベアラの例である。
【0027】
ここで、専用ベアラおよび共用ベアラは、UE10、基地局20、およびGW33の割当が行われている。このため、ベアラ識別情報(ID)601、UE ID602、基地局ID603、およびGW ID604が設定されている。専用ベアラおよび共用ベアラがアクティブ状態であるかスタンバイ状態であるかはステータス情報605によって特定することができる。
【0028】
一方、UE10への割り当てが行われていない共用ベアラはベアラ識別情報(ID)601、基地局ID603およびGW ID604が設定され、UE ID602には値が設定されない(NULL)または所定値(例えば0)に設定される。
【0029】
なお、図6の例では、専用ベアラか共用ベアラかを識別するためのフラグが追加でベアラに関するパラメータとして管理されてるものとして説明するが、GW ID604のIPアドレス範囲に基づいてベアラが専用ベアラであるか共用ベアラであるかを特定可能であってもよい。
【0030】
なお、GW33では、GW ID604が当該GW33と一致するベアラパラメータのみが管理されればよく、他のGW33のベアラパラメータは管理されなくてもよい。一方、ベアラ制御部32は、モバイルコア30内の複数のGW33のベアラパラメータを管理する。
【0031】
GW33とベアラ制御部32とはベアラごとに、GW ID604に対応するGWとベアラパラメータを共用する。これによって、GW33は共用ベアラがUE10への割り当てが行われているか否かを判断することができる。
【0032】
また、ベアラ制御部32は、以下の情報をストレージ304(図3)に保持する。
【0033】
-GW負荷情報
-NW構成(ネットワーク構成)情報
NW構成情報は、基地局20及び複数のGW33に関連するネットワーク構成情報の一例であり、例えば、NWトポロジ、無線リンク容量、及び基地局-GW間のリンク容量を含む。なお、基地局-GW間のリンク容量は静的に設定されうる。GW負荷情報は、GWの空き容量(空きリンク容量)を示す情報を含みうる。また、GW負荷情報は、GW33が現在収容しているUE10の数、GW33が現在収容しているベアラの数、GW33がUE10に提供しているユーザデータ通信の通信速度、およびGW33が確保している、UE10への割り当てが行われていない共用ベアラの数の少なくともいずれかを含みうる。なお、ベアラ制御部32は各GW33の収容可能なUE10の最大数、GW33が収容可能なベアラの最大数、GW33がUE10に提供しているユーザデータ通信の最大通信速度をNW構成情報として有してもよい、あるいは負荷情報として受信してもよい。
【0034】
また、ベアラ制御部32は、GW33に生じている負荷を示すGW負荷情報を、定期的に各GW33から取得して保持する。GW負荷情報の取得周期は、オペレータのポリシに従って設定される(例えば、30秒周期)。
【0035】
なお、ベアラ制御部32の各機能は、モバイルコア30内のネットワーク機能のいずれかに包含されてもよい。
【0036】
ベアラ制御部32は、汎用サーバとして構成される場合、一例として、図3に示されるようなハードウェア構成を有する。具体的には、ベアラ制御部32は、CPU301、ROM302、RAM303、HDD等の記憶装置(ストレージ)304、及び通信インタフェース(IF)305を備える。なお、ベアラ制御部32以外のネットワークノードも図3に示すハードウェア構成を有してもよい。
【0037】
ベアラ制御部32では、例えばROM302、RAM303及び記憶装置304のいずれかに格納された、上述の各機能を実現するプログラムがCPU301によって実行される。なお、CPU301は、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)等の1つ以上のプロセッサによって置き換えられてもよい。CPU301は、上述したプログラムを実行することで、図5および図7を参照して後述する通信制御方法を実行することができる。通信IF305は、CPU301による制御下で、外部装置との通信を行うための通信インタフェースである。ベアラ制御部32は、それぞれ接続先が異なる複数の通信IF305を有していてもよい。
【0038】
なお、ベアラ制御部32は、本明細書で説明する各機能を実行する専用のハードウェアを備えてもよいし、一部をハードウェアで実行し、プログラムを動作させるコンピュータでその他の部分を実行してもよい。また、全機能がコンピュータとプログラムにより実行されてもよい。
【0039】
<GWの構成>
図4は、GW33の機能構成例を示すブロック図である。GW33は、基地局20とデータネットワーク40との間のユーザデータの伝送に関連する既存機能(図示せず)に加えて、負荷監視部401、負荷通知部402、及び通信部403、ベアラ管理部404を有する。負荷監視部401は、GW33に生じている負荷を監視し、負荷を示す負荷情報を出力する。負荷通知部402は、負荷監視部401から出力される負荷情報を、所定の通知頻度でベアラ制御部32へ通知する。この通知頻度は、オペレータのポリシに従って設定される。ベアラ管理部404は、ベアラ制御部32から受信した制御信号に基づいてGW33が収容するUE10に対してベアラの確立及び解放を行う。また、ベアラ管理部404は、ベアラ制御部32から受信した制御信号に基づいてGW33が確立しているベアラの管理を行う。
【0040】
<UEの機能>
本実施形態のモバイル通信システムにおいて、UE10は下記の機能を有する。UE10は、例えばアプリケーション(以下、「アプリ」と称する。)による通信等の大容量通信を開始する際、1つ以上の基地局と複数のベアラを確立するベアラ確立要求を、モバイルコア30へ送信する。UE10は、送信する要求メッセージに以下の情報を含める。
【0041】
-所望のベアラ数
-UE10が接続可能な基地局のリスト
所望のベアラ数は、例えばUE10が要求する通信速度、またはUE10が要求する通信速度と現在の通信速度との差であってもよい。すなわち、ベアラ制御部32がベアラ確立要求を受信した際に、確立すべきベアラの数を特定できればよい。
【0042】
UE10が接続可能な基地局のリストは、UE10が受信した1つ以上の基地局20の識別情報および基地局から受信した参照信号強度などの通信品質を示す情報を含む。一例では、UE10が接続可能な基地局のリストは、UE10と基地局20との間のデータ伝送帯域を示す情報を含んでもよい。
【0043】
また、UE10は、起動時や機内モードオフ時に1つの基地局を介してコアネットワークへの接続要求を送信する。接続要求には、UE10の識別子を含む。接続要求を使用すると、ベアラ制御部32は、UE10に常設用のアクティブベアラとして1つ以上の専用ベアラを割り当てる。一例では、1つのアクティブ状態の専用ベアラと、1つ以上のスタンバイ状態の専用ベアラを割り当ててもよい。
【0044】
UE10は、ベアラの確立時に、モバイルコア30から、ベアラごとの通信速度期待値を受信し、それを保存する。UE10は、大容量通信を行うアプリケーションの起動など、現在のアクティブベアラによって保存済みの通信速度期待値を達成できないと判断した場合、モバイルコア30のベアラ制御部32に対して、その旨を通知する。この通知により、ベアラ制御部32は、(後述する図5の手順で)UE10についてのベアラの追加処理を開始する。
【0045】
また、UE10に搭載されているアプリ(以下、「端末アプリ」とも称する。)には、所望の通信速度が設定されている。端末アプリは、ベアラ確立要求の送信時に、UE10と連携して、所望の通信速度を示す情報を、要求メッセージに含めて送信する機能を有する。
【0046】
<ベアラ確立処理の流れ>
続いて、図5を参照して、本実施形態に係るモバイル通信システムにおけるUE10の接続処理およびベアラ追加処理について説明する。
【0047】
まずS501で、UE10は電源オンまたは機内モードオフなどをトリガとして、モバイル通信システムに接続するための接続要求を基地局20に送信する。接続要求は、基地局20から送信されるブロードキャスト信号を検出し、当該ブロードキャスト信号に含まれる基地局20に接続するためのパラメータを特定することができる。基地局20は、受信した接続要求をベアラ制御部32に転送する。
【0048】
続いて、ベアラ制御部32は、S502で常設用の専用ベアラを確立するために、GW33の負荷を問い合わせる。S503でGW33は、現在接続しているUE10の数など、上述した負荷情報を生成して、S504でベアラ制御部32に負荷情報を含む負荷情報応答を送信する。
【0049】
負荷情報を取得したベアラ制御部32は、S504で受信したGW33の負荷情報に基づいて、いずれのGW33にUE10を収容するかを決定する(S505)。例えば、S505ではベアラ制御部32は、空き容量(空きリンク容量)が小さい、現在収容しているUE10の数が小さい、現在収容しているベアラの数が小さい、UE10に提供しているユーザデータ通信の通信速度が小さいGW33にUE10を収容すると判定してもよい。
【0050】
続いて、S506で、ベアラ制御部32は、UE-基地局間のベアラの確立を求めるベアラ確立要求を基地局20へ送信する。このベアラ確立要求は、ベアラID、ベアラタイプ(アクティブベアラまたはスタンバイベアラ)、GWのID、及び通信速度期待値、を含む。なお、基地局20がベアラ確立要求を拒否する場合、以下のS507及びS508はスキップされる。
【0051】
S507で、基地局20は、ベアラ確立要求をUE10へ送信する。このベアラ確立要求は、ベアラID、およびベアラタイプを含む。UE10は、ベアラ確立要求を受信したタイミングで、ベアラIDを保存する。UE10が、保存した情報に基づいて、後述するベアラの解放要求を送信することができる。また、スタンバイベアラが確立された場合は、UE10によってベアラのアクティブ化要求の送信に使用されることができる。
【0052】
S508で、UE10は、受信したベアラ確立要求に従ってベアラの確立を試み、その結果を示すベアラ確立応答を基地局20へ送信する。ベアラの確立に成功した場合、このベアラ確立応答は、ベアラID及びベアラ確立結果を含む。UE10からのベアラ確立応答の受信に応じて、基地局20は、S509で、UE-基地局間のベアラ確立結果を示すベアラ確立応答をベアラ制御部32へ送信する。ここで、UE-基地局間のベアラ確立に失敗した場合、以下のS510及びS511はスキップされる。
【0053】
次にS510で、ベアラ制御部32は、基地局-GW間のベアラの確立を求めるベアラ確立要求をGW33へ送信する。このベアラ確立要求は、ベアラID、ベアラタイプ、及び基地局IDを含む。
【0054】
S511で、GW33は、受信したベアラ確立要求に従ってベアラの確立を試み、その結果を示すベアラ確立応答をベアラ制御部32へ送信する。ベアラの確立に成功した場合、このベアラ確立応答は、ベアラID、及びベアラ確立結果、を含む。GW33が原因となりベアラの確立に失敗した場合、ベアラ確立応答には、その旨を示す原因値(Cause Value)も含められる。
【0055】
ベアラを確立すると、ベアラ制御部32はS512でUE10にベアラが確立したことを通知する。S512の通知には、ベアラID及びベアラの確立結果を含む。
【0056】
このように、S506~S512のベアラ確立を行うことで、UE10はモバイル通信ネットワークに接続することができ、GW33を介して外部ネットワークとのデータ通信サービスの提供を受けることができる。
【0057】
なお、上述したように、UE10の接続時に専用ベアラが複数確立される場合には、S506~S512の処理が繰り返される。例えば、UE10の接続時に複数の専用ベアラが確立される場合、専用ベアラに対応するUE-基地局ごとにS506~S512の処理が繰り返される。ここでUE10の接続時に専用ベアラを複数確立する場合は、確立されたベアラはすべてスタンバイ状態に遷移されてもよい。また、UE10が複数のベアラを確立する場合は、複数の基地局20および複数のGW33の組み合わせを使用してもよい。
【0058】
続いて、S513で、ベアラ制御部32は、UE10が専用ベアラを確立したGW33について、共用ベアラの確立を指示するか否かを判定する。S513の処理では、いずれのGW33と、いずれの基地局との間に共用ベアラを確立するか否かを判定する処理を含む。例えば、S501の接続要求に基づいて専用ベアラが確立された基地局20およびGW33に、予備的な通信経路として共用ベアラを確立してもよい。上述したように、ベアラ制御部32がGW33に共用リソースの確保を指示するか否かは、以下のパラメータの組み合わせに基づいて決定されても良い。
【0059】
-収容しているUE当たりのベアラ数n
-GW33が現在収容しているUE10当たりの平均通信速度c
-GW33に収容可能なUEの上限数a
-GW33が現在収容しているUE10の数u
-GW33がUEに提供可能なデータ通信全体の最高通信速度t
-GW33が現在提供しているデータ通信全体の通信速度a
-GW33に接続している基地局数n
-所定の期間におけるUE10の接続頻度r
-所定の期間におけるGW33が収容しているUE10からベアラ確立要求が送信される頻度s
-所定の期間におけるGW33が収容しているUE10からベアラ解放要求が送信される頻度t
-GW33が収容しているベアラのうちのアクティブベアラの割合
-GW33が収容しているUE10への割り当てが行われていない共用ベアラの数
-基地局ごとのUE10への割り当てが行われていない共用ベアラの数
例えば、収容しているUEあたりのベアラ数nが大きい場合は、新たに接続したUEにも多くのベアラを確保する可能性が高いことが考えられる。このため、収容しているUEあたりのベアラ数nが所定の閾値より大きい場合には、共用ベアラの確立を指示すると判定してもよい。
【0060】
また、UE10当たりの合計通信速度の平均値cが大きい場合にも、新たに接続したUE10も通信速度が大きくなる可能性があると考えられる。このため、UE10当たりの合計通信速度の平均値cが所定の閾値より大きい場合には、共用ベアラの確立を指示すると判定してもよい。
【0061】
また、GW33に収容可能なUEの上限数aが大きな場合、GW33が現在収容しているUE10の数uが小さい場合には、GW33の負荷処理能力に余裕があると考えられる。このため、GW33に収容可能なUEの上限数aが所定の閾値より大きな場合、またはGW33が現在収容しているUE10の数uが所定の閾値より小さい場合には共用ベアラの確立を指示すると判定してもよい。同様に、GW33がUEに提供可能なデータ通信の最高通信速度tが所定の閾値より大きな場合、またはGW33が現在提供しているデータ通信の通信速度aが所定の閾値より小さな場合にも、ベアラ制御部32は共用ベアラの確立を指示すると判定してもよい。
【0062】
また、GW33に接続している基地局数nが所定の閾値より小さい場合、UE10の接続頻度rが所定の閾値より大きい場合、所定の期間においてGW33が収容しているUE10からベアラ確立要求が送信される頻度sが所定の閾値より大きい場合、所定の期間においてGW33が収容しているUE10からベアラ解放要求が送信される頻度tが所定の閾値より小さい場合、またはGW33が収容しているベアラのうちのアクティブベアラの割合が所定の閾値より大きい場合にも、共用ベアラの確立を要求される確立が高いと考えられる。このような場合、ベアラ制御部32は共用ベアラの確立を指示すると判定してもよい。
【0063】
また、一部の基地局にUE10への割り当てが行われていない多数の共用ベアラが確立されていた場合、ベアラ数の制限によって基地局20がUE10を収容できないなど、処理リソースを無駄にする可能性が生じうる。このため、ベアラ制御部32は、基地局20ごとにUE10への割り当てが行われていない共用ベアラの数が均等になるようにしてもよい。また、基地局20がGW33との間で確立可能なベアラの本数に対するUE10に割り当てられていない共用ベアラの数が所定の範囲内になるように共用ベアラを確立する基地局を決定してもよい。
【0064】
また、一例では、上述のパラメータを組み合わせてGW33ごとに、UEに割り当てられていない共用ベアラの数が決定されてもよい。例えば、GW33が予め確保しておく共用ベアラの下限数をlとして、GW33が確保しておくべきUE10に割り当てられていない共用ベアラの数b
= max[l, min{u,f(c-u)a(t-a)n/t}]
としてもよい。ここで、max[a,b]はaとbのうちの大きい値を選択する関数であり、min[a,b]はaとbのうちの小さい値を選択する関数である。なお、fはモバイル通信システムごとに決められる、共用ベアラを確保する量を規定する係数であり、一例では0<f<1である。
【0065】
続いて、S514で、ベアラ制御部32は、GW33に共用ベアラの確立を要求する。S514で送信される共用ベアラの確保指示には、ベアラ制御部32で決定されたベアラIDおよび基地局IDが含まれる。S514で共用ベアラの確保指示を受信したGW33は、共用ベアラの確立要求に含まれる基地局IDに対応する基地局と共用ベアラの確立を行い、S515で共用ベアラの確保応答をベアラ制御部32に送信する。確保応答には、確保した共用ベアラを示す情報を含める。例えば、共用ベアラとしてGW33のインナーIPアドレスを確保した場合には、確保したIPアドレスを通知してもよい。続いて、S516でベアラ制御部32およびGW33は確立したベアラを示す情報をベアラパラメータとして記憶し、ベアラ情報を更新する。S516の時点では、UE10への割り当てが行われていないため、図6のエントリー615に示すようにUE IDは設定されていない。また、GW33は、GW33の負荷情報のうち、GW33が確立しているベアラの数を増加させる。一例では、GW33は、確立した共用ベアラに基づいて負荷情報の他のパラメータを更新してもよい。例えば、GW33は、GW33の空きリンク容量から、確保した共用ベアラで提供可能な通信速度を減少させて負荷情報を更新してもよい。これによって、UE10の接続時にGW33側で共用ベアラに使用可能な通信帯域をあらかじめ確保することができる。
【0066】
その後、UE10は所定のアプリケーションの実行や、TCP通信のウィンドウサイズの増加が止まるなど、ベアラの追加の必要があると判定すると、S517でベアラ制御部32にベアラの追加要求を送信する。なお、上述したように、共用リソースを使用した共用ベアラは複数のUE10によって利用可能である。このため、本実施形態では、すでに接続済みのUE11によってベアラの追加要求が出されるものとして説明する。しかしながら、UE10によってベアラの追加要求が送信されてもよい。
【0067】
S517で送信されるベアラの追加要求には、UE11の識別情報が含まれる。一例では、ベアラの追加要求には、追加を要求するベアラの状態としてアクティブ状態およびスタンバイ状態のいずれかの状態を示す情報を含んでもよい。また、ベアラの追加要求には、UE11が追加を要求するベアラの本数を示す情報を含んでもよい。
【0068】
ベアラの追加要求を受信したベアラ制御部32は、S518でUE11とベアラを確立するGW33を決定する。一例では、UE11とすでに専用ベアラを確立しているGW33の負荷情報に基づいてUE11とベアラを確立するGW33を決定してもよい。別の例では、UE11とベアラを確立していないGW33から、GW33の負荷情報に基づいてUE11とベアラを確立するGW33を決定してもよい。別の例では、UE11が実行しているアプリケーションの種類に基づいてGW33を決定してもよい。
【0069】
なお、図5の例では、UE11はUE10と同じ基地局にベアラの追加要求を送信するものとして図示しているが、UE11はUE10とは異なる基地局21にベアラの追加要求を送信してもよい。この場合、UE11からのベアラの追加要求を受信した基地局21とGW33とがUEへの割り当てが行われていない共用ベアラを確保している場合には当該共用ベアラに対応付けて基地局21とUE11との間のベアラを確立することができる。
【0070】
続いて、ベアラ制御部32は決定したGW33のIDに対応付けられた共用ベアラのいずれかを選択し、ベアラIDを特定し、S519でS506~S512を参照して説明したベアラ確立処理を実行する。ここで、S519ではS514で確保した共用ベアラに対応するベアラパラメータのベアラIDを含むベアラ確立要求を送信することで、共用ベアラの確立をGW33に指示することができる。一例では、S519において、S510、S511に対応する処理は省略されてもよく、代わりにベアラ制御部32からGW33へベアラパラメータの更新を要求する制御信号が送信されてもよい。また、ベアラ制御部32は、基地局-GW33との間の共用ベアラを指定する情報を含めてUE-基地局間のベアラ確立要求を基地局20に送信する。これによって、基地局20は、UE-基地局間のベアラと基地局-GW間のベアラとを接続してIPトンネルを形成する。すなわち、ベアラ制御部32は、共用ベアラと関連付けてUE-基地局間のベアラを確立させることで、UE10と共用ベアラとの関連付けを行い、共用ベアラを使用した通信経路を確立することができる。
【0071】
これによって、共用ベアラを使用してUE10とGW33との間の通信経路を確立するよう指示することができる。すなわち、ベアラの確立要求を受信した後に、基地局とGWとの間のベアラを確立する処理を省略してUE10とGE33との間の通信経路を確立することができるため、処理遅延を抑えることができる。
【0072】
また、共有ベアラは、異なるUE10に使用することができる。このため、GW33およびベアラ制御部32はUEごとに確立しておくベアラの数を減らすことができる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係るベアラ制御部32は、UEとは関連付けられていない基地局-GW間のベアラをあらかじめ確立しておき、確立した後にUEからのベアラの確立要求を受信した場合に、UEとは関連付けられていない基地局-GW間のベアラと関連付けてUE-基地局間のベアラを確立するように基地局に指示する。これによって、UEからのベアラの確立要求を受信した後に基地局-GW間のベアラを確立するより低遅延でUEからGWまでの通信経路を確立することができる。また、UEごとにベアラをあらかじめ確立しておく構成と比較して、複数のUEで共用可能なベアラを使いまわすことができるため、GWが収容するベアラの数を低減することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、ベアラ制御装置32はGW33に共用ベアラを確立するか否かを、UE10から接続要求を受信したタイミングで実行するものとして説明した。しかしながら、ベアラ制御装置32は共用ベアラを確立するか否かを任意のタイミングで実行してもよく、例えばGW33から負荷情報を受信したタイミングで、負荷情報を送信したGW33について共用ベアラを確立するか否かを判定してもよいし。あるいは、ベアラ制御装置32はUE10からベアラの追加要求を受信した場合に共用ベアラを確立するか否かを判定してもよい。
【0075】
<ベアラ解放処理>
続いて、図7を参照してベアラ解放処理について説明する。
【0076】
まずS701で、UE10は電源オフまたは機内モードオン、所定のアプリケーションの終了などをトリガとして、ベアラ解放要求をベアラ制御部32に送信する。ベアラ解放要求は、UE10の識別情報を含む。また、一例ではベアラ解放要求は解放すべきベアラIDを含む。あるいは、すべてのベアラの解放を要求する制御信号が送信されてもよい。
【0077】
ベアラ解放要求を受信したベアラ制御部32は、S702でベアラ解放要求に基づいて解放するベアラと、ベアラを収容しているGW33とを特定する。例えば、S701でベアラIDを含む解放要求を受信した場合には、ストレージ304に記憶しているベアラパラメータに基づいてベアラIDに対応するGW33、基地局20、UE10を特定することができる。別の例では、UE10からの解放要求にはベアラIDを含まず、UE10の識別情報を含んでもよく、この場合、ベアラ制御部32は、UE10の識別情報と一致するUE IDをベアラパラメータに有するベアラを所定の順序でベアラを解放すると決定してもよい。例えば、共用ベアラを優先して解放してもよいし、GW33の負荷情報に基づいて高い負荷状態のGW33が収容しているベアラを優先して解放してもよい。S702以降の例では、共用ベアラを使用して確立されたベアラを解放すると判定した場合の処理について説明する。
【0078】
S702でUE10とGW33との間のベアラを解放すると決定した場合、ベアラ制御部32は共用ベアラをを解放するか、確保したままにするかを判定する。言い換えると、ベアラ解放要求を受信したベアラ制御部32は、UEからGWまでのすべての区間を解放するか、UEからGWまでの区間のうち、UEと基地局間の区間のみを解放するか否かを判定する。例えば、ベアラ制御部32は、解放が要求されたUE-基地局間のベアラに関連付けられている共用ベアラを収容しているGW33について、S513で説明したように、確保すべき共用ベアラの数を決定する。そして、現在確保している、UEに対応付けられていない共用ベアラの数が、確保すべき共用ベアラの数より大きい場合には、UE-基地局間のベアラおよびそれに関連付けられた共用ベアラを解放すると判定してもよい。一方、現在確保しており、UE-基地局間のベアラに関連付けられていない共用ベアラの量が、確保すべき共用ベアラの数以下である場合には、UE-基地局間のベアラを解放するが、共用ベアラを維持すると判定してもよい。
【0079】
以下、S704~S710の処理は、UE-基地局間のベアラを解放し、共用ベアラも解放すると判定した場合のベアラ解放処理Aであり、S714~S720の処理はUE-基地局間のベアラを解放するが、基地局-GW間の共用ベアラを維持すると判定した場合のベアラ解放処理Bである。
【0080】
S704でベアラ制御部32は基地局20にベアラ解放要求を送信する。ベアラ解放要求にはベアラIDが含まれる。基地局20は、S705でベアラIDに対応するUE10にベアラ解放要求を転送する。UE10は、ベアラ解放要求に応答するベアラ解放応答をS706で送信し、UE10に記憶されたベアラのリストの中からベアラ解放要求に含まれるベアラIDに対応するベアラ情報を消去することでベアラを解放する。基地局20はS707でベアラ解放応答をベアラ制御部32に送信する。これによって、UE-基地局間のベアラが解放される。
【0081】
続いて、S708でベアラ制御部32はベアラIDに関連付けられたGW33にベアラ解放要求を送信し、GW33がベアラの解放応答をS709でベアラ制御部32に送信する。
【0082】
S709で共用ベアラの解放応答を受信すると、ベアラ制御部32およびGW33は、ストレージ304に記憶しているベアラパラメータから、解放した共用ベアラに対応するエントリーを削除する。
【0083】
共用ベアラの解放を行うと、S710でベアラ制御部32はUE10にベアラの解放通知を送信する。
【0084】
続いて、S711~S712の処理はS701、S702と同様のため説明を省略する。S713で、ベアラ制御部32はUE-基地局間のベアラを解放するが、基地局-GW間の共用ベアラを維持すると決定する。この場合、S714~S720のベアラ解放処理Bが実行される。
【0085】
ベアラ解放処理BにおいてS714~S717の処理はベアラ解放処理AのS704~S707と同様のため説明を省略する。続いて、S718でベアラ制御部32はUE-基地局間のベアラを解放したことをGW33に通知する。通知を受信したGW33は、共用ベアラは解放しないまま、S719でGW33が通知応答をベアラ制御部32に送信する。この場合、ベアラ制御部32およびGW33は解放を要求されたベアラを図6の615に示すように、UEとの関連付けを解除するがエントリーは削除しない。
【0086】
S720でベアラ解放通知を受信したUE10は、UE10が記憶するベアラのリストから解放を要求した共用ベアラを削除する。これによって、UE10と基地局との間のベアラを対応付けを解除しながら、GW33側では共用ベアラを維持することができる。一例では、ベアラ制御部32およびGW33は通知に対応するベアラをスタンバイ状態に設定してもよい。
【0087】
<その他の実施形態>
上述の実施形態に係るネットワーク装置(ベアラ制御部32)は、コンピュータをネットワーク装置として機能させるためのコンピュータプログラムにより実現することができる。当該コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて配布が可能なもの、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0088】
本実施形態では、モバイルコアでは専用ベアラと共用ベアラとが確立可能であるものとして説明を行った。しかしながら、共用ベアラのみが確立可能であってもよい。このような場合、UE10から接続要求を受信したベアラ制御部32は、UE10とGW33との間に複数のベアラを確立し、UE10からベアラの解放要求を受信した場合には、各ベアラについて共用ベアラとして基地局-GW間のベアラを解放するか否かを判定し、他のUEからベアラの追加要求を受信した場合に、当該基地局-GW間のベアラに関連付けてUE-基地局間のベアラを確立してもよい。このような場合は、ベアラ制御部32およびGW33はベアラ情報としてベアラタイプを管理しなくてもよい。すなわち、ベアラ制御部32は共用ベアラをUE10から送信された接続要求に対して割り当ててもよいし、UE10から送信されたベアラの追加要求に対して割り当ててもよい。
【0089】
本実施形態では、ベアラ制御部32がGW33と所定の基地局20との間のUEに関連付けられていない共用ベアラを確立し、UE10からのベアラの確立要求に応じてUEを共用ベアラに関連付けてUE-基地局間のベアラを確立するものとして説明を行った。一例では、ベアラ制御部32は、基地局との間の共用ベアラを確立するために使用する共用リソースをあらかじめ確保しておき、UEからのベアラ確立要求に応じて、共用リソースを使用してベアラを確立してもよい。例えば、共用リソースは、IPアドレスおよび占有通信帯域の少なくともいずれかである。ベアラ制御部32は、ベアラIDを指定して共用リソースの確保指示を送信し、GW33はベアラIDに対応付けて確保したIPアドレスを応答としてベアラ制御部32に送信する。すなわち、図5のS514、S515において、共用リソースの確保指示の送信と、共用リソースの確保指示応答を交換する。そして、ベアラ制御部32およびGW33は、ベアラIDとIPアドレスとをベアラ情報として記憶する。この場合、共有リソースであるベアラIDとIPアドレスは、UE10および基地局20とは関連付けられていない。そして、ベアラ制御部32は共用リソースを使用すると判定すると、共用リソースに対応するベアラIDと、ベアラを確立する基地局20とを指定してGW33にベアラの確立要求を送信する。確立要求を受信したGW33は、確立要求で指定された基地局20と指定されたベアラIDのベアラを確立する。これによって、UE10からのベアラの確立要求に応じてベアラ制御部32がGW33の負荷情報を取得する時間を削減することができる。また、共用リソースを確保したままベアラを解放する場合には、GW33はベアラを解放するが、IPアドレスをベアラに割り当て済みであるとして記憶する、または通信帯域を使用中であるものとして記憶する。そして、共用リソースを使用してベアラの確立を指示された場合には当該リソースを使用してベアラを確立する。これによって、ベアラの確立要求を受信した場合にベアラ制御部32がGW33にベアラを確立するリソースがあるか確認する必要がなくなる。また、GW-基地局間で共用リソースを共用することができ、GW-基地局間で確立しておくベアラの数を削減することができる。
【0090】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
10:UE、20:AP、30:モバイルコア、31:移動管理機能、32:ベアラ制御部、33:GW
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7