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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136640
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/026 20060101AFI20230922BHJP
   A47C 7/44 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A47C3/026
A47C7/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042425
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000114385
【氏名又は名称】株式会社クオリ
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】長坂 典明
(72)【発明者】
【氏名】長谷田 未弦
【テーマコード(参考)】
3B084
3B091
【Fターム(参考)】
3B084GA02
3B091AA04
3B091AB03
3B091AC05
(57)【要約】
【課題】 体重感知式という機能を備えつつ、設計上の自由度を有し、且つ背凭れを後傾した際の着座者の着座姿勢を可能な限り適正な状態に保持し得る椅子を提供する。
【解決手段】 背もたれ4の傾倒に応じて座部2が上下動するようにした座部昇降機構を備え、当該座部昇降機構は、背凭れ支持部5の下端から前方に延出し受台部3内に位置させる可動アーム8と、受台部の後端よりに設けられ背凭れ支持部の傾動に同調して支持ベース6に対し可動アームを傾動可能に軸支する固定軸80と、受台部における固定軸よりも前方に位置し可動アームの傾動に伴い支持ベースに対し座受を上下方向へ移動可能に軸支する可動軸81と、支持ベースに形成され可動軸を上下に移動させる縦長の昇降長孔40と、座受に形成され固定軸を横方向へ摺動させる横長の第1摺動長孔53と、座受において昇降長孔と交差するように形成され可動軸を横方向へ摺動させる横長の第2摺動長孔54とからなっている。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部と、前記脚部の上方に配置される座部と、前記脚部と前記座部との間に位置し前記脚部に前記座部を支持するための受台部と、前記受台部に接続され背凭れを支持する背凭れ支持部と、前記背もたれの傾倒に応じて前記座部が上下動するようにした座部昇降機構とからなる椅子において、
前記受台部は、前記脚部の上方に固着される支持ベースと、前記座部の下方に固着される座受とを備え、
前記座部昇降機構は、前記背凭れ支持部の下端から前方に延出し前記受台部内に位置させる可動アームと、前記受台部の後端よりに設けられ前記背凭れ支持部の傾動に同調して前記支持ベースに対し前記可動アームを傾動可能に軸支する固定軸と、前記受台部における前記固定軸よりも前方に位置し前記可動アームの傾動に伴い前記支持ベースに対し前記座受を上下方向へ移動可能に軸支する可動軸と、前記支持ベースに形成され前記可動軸を上下に移動させる縦長の昇降長孔と、前記座受に形成され前記固定軸を横方向へ摺動させる横長の第1摺動長孔と、前記座受において前記昇降長孔と交差するように形成され前記可動軸を横方向へ摺動させる横長の第2摺動長孔と、前記受台部の前記可動軸よりも前方位置に設けられ前記座受の前端部を前記可動軸が移動する頂部よりも上方へ移動させる昇降手段とからなることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記昇降手段が前記支持ベースと前記座受とに軸支されたリンク部材であることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記昇降手段が前記支持ベース又は前記座受のいずれかに形成された縦長のガイド長孔と、前記支持ベース又は前記座受のいずれかに形成された軸孔と、前記昇降長孔と前記軸孔に枢支された枢軸とによって形成されていることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背もたれの傾倒に応じて座部が上下動するようにした座部昇降機構を備えた椅子である。
【背景技術】
【0002】
着座者が背凭れに凭れ掛かると背凭れが後傾するいわゆるロッキング機能を備えた椅子において、さらにこれを発展させた体重感知式と呼ばれるものが存在している。すなわち、着座者が背凭れに凭れ掛かった際に、その背凭れに掛かった体重を利用して座部を昇降させるタイプの椅子である。このような体重感知式の椅子は、背凭れの後傾に追随するように座部が昇降するため、背凭れが後傾するのみの一般的なロッキング椅子に比べて、背凭れの傾斜フィーリングが着座者の身体の違い(体重の軽重)に関係なく同様に感じられるという効果が得られる。
【0003】
そして、体重感知式のロッキング椅子の一般的なものとして、例えば、特許文献1に示されているようなものがあり、この椅子では、背凭れ支持杆9の補強部材12の下端部を第1の枢軸8によって支基6に枢着すると共に、背凭れ支持杆9の補強部材12の上端部を第4の枢軸33によって座支持部材31後部に枢着し、背凭れを後傾させると、第1の枢軸8を中心として座支持部材31が後上方に回動し、ひいては、座支持部材31に支持されている座7も後上方に移動するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-153868号公報
【0005】
ここで、特許文献1に示された体重感知式の椅子においては、座支持体31を昇降させるために背凭れ支持扞9の補強部材12を回動させる必要があるわけだが、そうすると、支基6内に、少なくとも第1の枢軸8と第4の枢軸33を半径とする円弧状に補強部材12を移動させるスペースを確保しなければならなくなり、どうしても支基6を含めた種々の点で設計上の制約を受けることになってしまう。また、補強部材2の回動のみによって座支持体31を昇降させるとするならば、単に補強部材2の回動範囲でしか座7の位置を調整し得ないので、背凭れを後傾した際の着座者の着座姿勢をより適正な状態に保持するにあたり限界が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべく、体重感知式という機能を備えつつ、設計上の自由度を有し、且つ背凭れを後傾した際の着座者の着座姿勢を可能な限り適正な状態に保持し得る椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明は、脚部と、前記脚部の上方に配置される座部と、前記脚部と前記座部との間に位置し前記脚部に前記座部を支持するための受台部と、前記受台部に接続され背凭れを支持する背凭れ支持部と、前記背もたれの傾倒に応じて前記座部が上下動するようにした座部昇降機構とからなる椅子において、前記受台部は、前記脚部の上方に固着される支持ベースと、前記座部の下方に固着される座受とを備え、前記座部昇降機構は、前記背凭れ支持部の下端から前方に延出し前記受台部内に位置させる可動アームと、前記受台部の後端よりに設けられ前記背凭れ支持部の傾動に同調して前記支持ベースに対し前記可動アームを傾動可能に軸支する固定軸と、前記受台部における前記固定軸よりも前方に位置し前記可動アームの傾動に伴い前記支持ベースに対し前記座受を上下方向へ移動可能に軸支する可動軸と、前記支持ベースに形成され前記可動軸を上下に移動させる縦長の昇降長孔と、前記座受に形成され前記固定軸を横方向へ摺動させる横長の第1摺動長孔と、前記座受において前記昇降長孔と交差するように形成され前記可動軸を横方向へ摺動させる横長の第2摺動長孔と、前記受台部の前記可動軸よりも前方位置に設けられ前記座受の前端部を前記可動軸が移動する頂部よりも上方へ移動させる昇降手段とからなることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る椅子において、前記昇降手段を前記支持ベースと前記座受とに軸支されたリンク部材とすることが可能である。
【0009】
また、本発明に係る椅子において、前記昇降手段を前記支持ベース又は前記座受のいずれかに形成された昇降長孔と、前記昇降長孔に枢支され該昇降長孔を移動する移動軸とによって形成することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、受台を構成する支持ベースに縦長の昇降長孔を設け、この昇降長孔に可動アームに枢支された可動軸を上下動させることで、座受を昇降させることができるため、当該部位の省スペース化を図ることができると共に、受台の設計の自由度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、座受に固定軸を横方向へ摺動させる横長の第1摺動長孔と、可動軸を横方向へ摺動させる第2摺動長孔を設けており、このうち第2摺動長孔は支持ベースの昇降長孔と交差していることから、座受は昇降すると同時に横方向へ移動することになる。従って、背凭れを後傾した際の着座者の着座姿勢を可能な限り適正な状態に保持することができる。すなわち、仮に座受によって座部を上動のみさせると、後傾した背凭れに対して着座者の背中が密着した適正な姿勢を取り得ない場合も起こり得るが、本発明によれば、座受によって座部が横方向にも移動するため、後傾した背凭れに対して着座者の背中が密着するように調整することが可能である。特に、椅子によって、座部や背もたれの形状や取付角度等が異なるが、本発明は、こうした種々の事情に応じて、昇降長孔、第1摺動長孔、第2摺動長孔の寸法、位置、傾き等を変化させることができるといった設計上の微調整も容易になし得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】着座者が背凭れを後傾させていない状態の椅子の側面図。
図2】着座者が背凭れを後傾させた状態の椅子を示す側面図。
図3】受台部の分解斜視図。
図4】受台部の平面図。
図5】受台部の側面縦断面図。
図6】受台部の座部昇降機構の動作を示す側面図及び側面縦断面図。
図7】座受の前端部を上方へ移動させる昇降手段の他の実施形態を示す受台部の側面図。
図8】背凭れの傾斜角度をロックする機構を説明する受台部の側面図及び側面縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る椅子の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は着座者が背凭れを後傾させていない状態の椅子の側面図、図2は着座者が背凭れを後傾させた状態の椅子を示す側面図、図3は受台部の分解斜視図、図4は受台部の平面図、図5は受台部の縦断面側面図、図6は受台部の座部昇降機構の動作を示す側面図及び縦断面側面図である。本実施形態の椅子は、脚部1と、脚部1の上方に配置される座部2と、脚部1と座部2との間に位置し脚部1に座部2を支持するための受台部3と、受台部3に接続され背凭れ4を支持する背凭れ支持部5と、背もたれ5の傾倒に応じて座部2が上下動するようにした座部昇降機構とによって概略構成されている。また、前述の受台部3はさらに、脚部1の上方に固着される支持ベース6と、座部2の下方に固着される座受7とを備えると共に、背凭れ支持部5の下端には、前方に延出し受台部3内に位置させる可動アーム8が形成されている。そして、これらの構成要素のうち、受台部3の支持ベース6及び座受7、背凭れ支持部5の下端に設けられた可動アーム8を組み合わせることで、背もたれ5の傾倒に応じて座部2を上下動可能にする座部昇降機構が形成されている。また、本実施形態の椅子が備える座部昇降機構は、座部2を単に上下動させるのみではなく、横方向への移動も可能に構成されている。さらに、本実施形態において説明する椅子は、座受7の前端部を上下動させるための昇降手段としてリンク部材9を備えている。なお、本実施形態の説明において、「後」とは、椅子の背凭れ4側を示し、「前」とは、その反対側、「右」「左」とは、椅子を「前」から見た際の「右」「左」を示すものとする。
【0014】
前記脚部1は、図1及び図2に示されているように、脚基部10の中心部に脚支柱11を設けて形成されている。具体的には、脚基部10は、筒状部10aの中央から外方へ延出するように放射状に配された複数の脚足10b,10b,・・・を有し、筒状部10aの中心に貫通孔を備えて形成されている。また、脚基部10の脚足10b,10b・・・の先端には、それぞれキャスター12,12・・・が装着されている。一方、脚支柱11は、パイプ状の部材であり、脚基部10の中心、すなわち、筒状部10aの貫通孔に挿入されて脚基部10の上下に突出するように支持されている。なお、脚支柱11は、図示はしないが内部にガススプリングを備えており、脚支柱11上端の釦11a(図5参照)が押圧されることにより、座部2に対する脚部1の高さを調節できるようになっている。
【0015】
前記座部2は、底板上に弾力性を有する発砲ウレタン等の素材によって形成されたクッションを取着し、そのクッションの上面を被覆するように張地を張設した一般的なものである。
【0016】
前記受台部3は、脚部1と座部2との間に位置するように設けられて脚部1に座部2を支持するためのもので、脚部1側に固着される支持ベース6と、座部2側に固着される座受7とによって形成されている。
【0017】
前記背凭れ支持部5は、背凭れ4を受台部3に接続して背凭れ4を支持しつつ椅子に装着する部材で、左右対称に形成された一対の支持部材15,15によって形成されている。具体的には、支持部材15は、上下方向に所定の長さを有する起立棹部15aと、起立棹部15aの上端から前方に所定長さ延出させた上部棹部15bと、起立棹部15aの下端から内側に所定長さ延出させ、さらにその内側端を前方に所定長さ延出させた下部棹部15cとによって形成されている。そして、左右の起立棹部15a,15aの上端部間に取付部材16を介して背凭れ4が装着されている。この背凭れ4は、背面板の前面に弾力性を有する発砲ウレタン等の素材によって形成されたクッションを取着し、そのクッションの上面を被覆するように張地を張設した一般的なものである。また、背凭れ支持部5の上部棹部15bは、着座者が肘を載せる肘掛けとしての役割を果たすことになる。ちなみに、この実施形態の椅子は、複数の棹状の部材を組み合わせて背凭れ支持部を形成しているが、これは一例で、例えば、背凭れ支持部を背凭れと一体化した板状に形成することも可能である。また、本実施形態の椅子のように、背凭れ支持部に肘掛けに相当する部位を必ず設けなければならないわけではない。
【0018】
前記支持ベース6は、脚部1の上方に固着される部材で、図3に示されているように、平面視矩形状のベース底板20と、ベース底板20の左右両側縁の各々から一体に起立させたベース側板21,21とによって形成されている。そして、図5に示されているように、ベース底板20の後半部の略中央部に支柱挿通孔22が穿設されており、また、ベース底板20の後半部上面に支柱挿通孔22を覆うように脚支柱取着部材23が固着されている。この脚支柱取着部材23は、前側板と後側板(ストッパー止め部)と天面板とからなる側面視下向きコ字形の部材で、このうち、天面板の中央部には支柱挿通孔24が穿設されている。また、天面板の前端部と前側板の上端部に亘り切欠き25が形成されている。そして、前述した脚支柱11の上端部が、ベース底板20の支柱挿通孔22と脚支柱取着部材23の支柱挿通孔24に挿通され、筒体26を介して支持ベース6に固着されている。他方、ベース底板20の前半部の上面には、ロックカム収容部材27が固着されている。このロックカム収容部材27は、前板(リンク当部)と後板と天板とからなる側面視下向きコ字形の部材で、このうち、天板の中央部にはロックカム挿入用スリット28が穿設されている。また、ロックカム収容部材27の上面に傾斜ロックベース29が取り付けられている。この傾斜ロックベース29は、前後方向の寸法がロックカム収容部材27と略同一で、且つベース側板21,21の間に収まるサイズに形成されている。また、傾斜ロックベース29の前後方向中央部には、上下に貫通する横長のロックカム挿入用スリット30が形成されている。さらに、傾斜ロックベース29の挿入用スリット30の前側には、上方へ突出する起立部31が形成されており、この起立部31の下端部分に前後に貫通する横長のロックプレート移動用スリット32が形成されている。そして、ロックプレート移動用スリット32にロックプレート33が摺動自在に取着されている。一方、前述のロックカム収容部材27内には、傾斜ロックカム34が設けられている。この傾斜ロックカム34は、その下部に後述するレバー部43のロックカム連結部材45を挿通させる筒部が形成されており、その上部はロック押え35を介してロックプレート33に取着されている。さらに、傾斜ロックベース29の前端部には、左右方向に貫通するリンク用軸孔36が穿設されている。また、傾斜ロックベース29の上面には、ロックプレート33を補強するための補強金具37が装着されている。さらに、ロックカム収容部材27の後板と脚支柱取着部材23の前側板との間にプッシュパイプ38が配置されている。このプッシュパイプ38は、下部に後述するレバー部43の回転ロッド46を挿通させる筒部が形成されており、その上部には、下部から後方へ向かって延出する側面視横向きL字形の押下片38aが設けられている。他方、左右各々のベース側板21,21には、その前端部にリンク部材9を軸支するための第1リンク軸用孔39,39、その中間部に後述する可動軸81を上下に移動させるための縦長の昇降長孔40,40、後端部に後述する固定軸80を軸支するための固定軸用孔41,41が穿設されている。また、昇降長孔40,40の下方にレバー挿入孔42,42が穿設されている。さらに、図示はしないが、左側のベース側板21の第1リンク軸用孔39の下方に連結部材挿通孔が穿設されている。また、左右各々のベース側板21,21の前端部の上部は、前側に向かって下傾しており、ベース側板21,21の前端と上端の境目部分は円弧状になっている。さらに、支持ベース6には、その前端部左側に位置するようにレバー部43が設けられている。このレバー部43は、脚部1の高さを調整する場合と、座部2の傾斜角度を所定位置に保持する場合のそれぞれに使用されるもので、傾斜角調整用摘子44aを備えた筒状のレバー本体44と、レバー本体44の基端部に装着されたロックカム連結部材45と、レバー本体の44の中心部に挿通された回転ロッド46と、レバー本体44の先端側から突出する回転ロッド46に嵌合させると共にレバー本体44の先端に回転自在に遊嵌されている脚部昇降摘子47とによって構成されている。そして、レバー部43は、その回転ロッド46をレバー挿入孔42,42に挿通させると共に、ロックカム連結部材45を連結部材挿入孔に挿通させて、支持ベース6に装着されている。また、レバー部43の回転ロッド46は、プッシュパイプ38の筒状部に貫通させており、レバー部43の脚部昇降摘子47を回転させることにより、プッシュパイプ38も回転するようになっている。そして、プッシュパイプ38が回転すると、その上部の押下片38aによって脚支柱11上端の釦11aが押圧されて、座部2に対する脚支柱11の高さ調節が可能になっている。また、レバー部43のロックカム連結部材45は、傾斜ロックカム34の筒部に挿通されていて、傾斜角調整用摘子44aを回転させると、これに連動して傾斜ロックカム34及ロックプレート33を移動させるようになっている。
【0019】
前記座受7は、座部2の下面に固着される部材で、左右に所定間隔を設けて位置する前後方向に長い矩形状の座部取付板48、48と、座部取付板48、48の各々の内側端から一体に垂下させた座受側板49,49と、これら座受側板49,49の前端部と後端部であり、左右の座受側板49,49の内側間に架け渡された丸棒状の横架部材50,50によって形成されている。また、左右の座部取付板48、48の前端部と後端部には、螺子挿通孔51,51・・・が穿設されており、この螺子挿通孔51,51・・・に螺子を挿入して座受7を座部2の底板下面に螺着している。さらに、左右の座受側板49,49の前端部には、後述する第2リンク軸84を挿通するための第2リンク軸用孔52,52が穿設されており、また、左右の座受側板49,49の前後方向略中央には、後述する可動軸81を横方向へ摺動させるための横長の第2摺動長孔53,53が穿設されており、左右の座受側板49,49の後端部には、後述する固定軸80を摺動させるための横長の第1摺動長孔54,54が穿設されている。なお、第1摺動長孔54,54と第2摺動長孔53,53は、前後方向に横並びに配置されており、このうち、第1摺動長孔54,54は、上側が凸となる円弧状であり、また、後方に向かってやや下傾している。一方、第2摺動長孔53,53は、下側が凸となる円弧状であり、前方に向かってやや下傾している。なお、左右の座受側板49,49の内寸は、前述した支持ベース6のベース側板21,21の内寸よりも若干長く設定されている。従って、座受7を支持ベース6の上側に配置させたとき、左右の座受側板49,49は、支持ベース6のベース側板21,21の外側に位置することになる。また、座受7の前後方向の長さは、支持ベース6の前後方向の長さよりも長く設定されている。従って、座受7を支持ベース6の上側に配置させたとき、座受7の前端及び後端のいずれもが支持ベース7の前端及び後端から食み出して位置することになる。ちなみに、この実施形態の座受7は、左右に一対存在する座部取付板48と座受側板49からなる部材を横架部材50,50によって一体化した例を示したが、座部取付板48と座受側板49からなる部材が左右に一対存在していれば、必ずしも両者を一体化しなくても、本発明の目的は達成できる。すなわち、座受は、少なくとも座部取付板と座受側板を備えた部材が左右に一対存在していればよい。
【0020】
前記可動アーム8は、背凭れ支持部5の下部棹部15cの前端部に連結される部材で、平面視矩形状の底板55と、底板55の左右両側縁の各々から一体に起立させた側板56,56とによって形成されている。そして、可動アーム8は、その前半部が受台部3内、具体的には支持ベース6と座受7の間に位置し、その後半部が受台部3の後方、具体的には、支持ベース6と座受7の後方へ突出するように配置されている。この可動アーム8の底板55の前半部には矩形状の開口57が開設されており、可動アーム8を受台3内に配置させた際、開口57から支持ベース6に固着された脚支柱11の上端部、及びプッシュパイプ38上部の押下片38aを突出させられるようになっている。また、底板20の後半部は、背凭れ支持部5の下部棹部15cを取り付けるための取付部になっており、この取付部に穿設されている複数の取付穴にボルトを挿通して凭れ支持部5と連結されている。また、底板20の前端部上面には傾斜ロック部材60が装着されている。この傾斜ロック部材60は、平面視矩形の凹状に形成されており、両側端部は後述する可動軸81を挿通支持する軸受61,61になっている。また、傾斜ロック部材60の前面には、複数の凹部62,62が形成されており、これら凹部62,62は、支持ベース6のロックプレート33を受け入れる部位になっている。また、傾斜ロック部材60の上面には、可動アーム8を補強するための補強金具63が装着されている。さらに、底板55の前後方向略中央部、具体的には、底板55の取付部の前端部下面に側面視三角形状の傾斜ストッパー65が装着されている。他方、可動アーム8の左右の側板56,56には、その前端部下方に後述する可動軸81を挿通するための可動軸用孔67,67が穿設されており、前後方向略中央上方に後述する固定軸80を挿通するための固定軸用孔68,68が穿設されている。これら可動軸用孔67と固定軸用孔68の位置関係としては、固定軸用孔68の方が可動軸用孔67よりも上方に位置するように設定されている。また、左右の側板56,56における固定軸用孔68,68よりもやや後方位置には、左右の側板56,56の内側に架け渡されるように丸棒状のバネ掛止部69が設けられている。さらに、左右の側板の56,56の固定軸用孔68,68の間に2つの捩りコイルバネ70,70が取り付けられている。具体的には、2つの捩りコイルバネ70,70を左右横並びに配置し、これらのコイル部に外側から2つの筒状バネ支え71,71を挿入し、且つ2つの筒状バネ支え71,71を中央で合体させることによって捩りコイルバネ70,70を装着している。なお、これら筒状バネ支え71,71は、その中心に固定軸80を挿通する貫通孔が形成されている。また、捩りコイルバネ70,70は、コイル部から後方に直線状に延びる自由端部がバネ掛止部69に掛止されており、コイル部から前方に直線状に延びる自由端部がバネ押え部材72によって固定されている。なお、バネ押さえ部材72は、その下端部を底板55の開口57に臨ませて支持ベース6に固着している。なお、この捩りコイルバネ70,70により、背凭れ4は、これに外力が加わらない限り、後傾していない通常の状態を維持することができる。ちなみに、この実施形態においては、可動アーム8の例として、背凭れ支持部5の下部棹部15cに別途装着する例を示したが、必ずこのようにする必要はなく、例えば、可動アームを背凭れ支持部の下部に連続させて背凭れ支持部と一体に形成してもよい。すなわち、可動アームは、背凭れ支持部と一体に形成されていても本発明の目的は達成できる。
【0021】
前記リンク部材9は、支持ベース6と座受7のそれぞれに軸支されて支持ベース6に対して座受7の前端部を上下動させる部材である。このリンク部材9は、所定の厚みを有し前側下方に嘴状の回り止め部9aが形成されていると共に、下端部の左右のそれぞれに後述する第1リンク軸83を挿通するための第1リンク軸受9bが形成され、上端部の左右のそれぞれに後述する第2リンク軸84を挿通するための第2リンク軸受9cが形成されている。また、リンク部材9の左右方向の長さは、支持ベース6の左右方向の外寸と略一致しているが、回り止め部9aの下端部からリンク部材9の後端にかけて薄厚にした細幅の薄厚部9dが形成されている。そして、この薄厚部9dによって、リンク部材9が回動した際、リンク部材9を支持ベース6のベース側板21の前側上端部を滑らかに摺動させることができるようになっている。
【0022】
以上のように、受台部3は支持ベース6と座受7とによって形成され、支持ベース6と座受7の内側に可動アーム8を内在させているが、これらに固定軸80、可動軸81を枢支することによって座部昇降機構が構成されることになる。すなわち、固定軸80が外側に位置する座受7の座受側板49の第1摺動長孔54、真ん中に位置する支持ベース6のベース側板21の固定軸用孔41、内側に位置する可動アーム8の側板56の固定軸用孔68にそれぞれ挿通されて枢支されている。また、可動軸81が外側に位置する座受7の座受側板49の第2摺動長孔53、真ん中に位置する支持ベース6のベース側板21の縦長の昇降長孔40、内側に位置する可動アーム8の側板56の可動軸用孔67に挿通されて枢支されている。そして、座受側板49の第1摺動長孔54が、ベース側板21の固定軸用孔41及び可動アーム8の側板56の固定軸用孔68と交差する位置にあり、座受側板49の第2摺動長孔53が、ベース側板21の昇降長孔40及び可動アーム8の側板56の可動軸用孔67と交差する位置にある。これによって、可動アーム8の傾動に伴って、座受7が固着されている座部2が上下方向に移動すると共に、左右方向へ移動することになる。なお、これについての詳細は後述する。また、本実施形態における椅子は、座部昇降機構の一部として支持ベース6に対して座受7の前端部を昇降させるための昇降手段が設けられている。すなわち、第1リンク軸83が外側に位置する支持ベース6の第1リンク軸用孔39、その内側に位置させたリンク部材9の第1リンク軸受9b、さらにその内側に位置する傾斜ロックベース29のリンク用軸孔36にそれぞれ挿通されて枢支されている。また、第2リンク軸84が外側に位置する座受7の座受側板49の第2リンク軸用孔52、その内側に位置させたリンク部材9の第2リンク軸受9cにそれぞれ挿通されて枢支されている。
【0023】
次に、上記のように構成された本実施形態の椅子の作用について説明する。図1及び図6(a)は、着座者が背凭れ4を後傾させていないノーマルな状態を示している。この状態において、背凭れ支持部6と連結されている可動アーム8は、支持ベース6の内側において、略水平な状態に保持されている。そして、受台部3の前後方向略中央であり、可動アーム8の前端部に枢支されている可動軸81は、支持ベース6のベース側板21の昇降長孔40の下端に位置し、座受7の座受側板49の第2摺動長孔53の後端に位置している。また、受台部3の後端部であり、可動アーム8の前後方向中央部に枢支されている固定軸80は、座受7の座受側板49の第1摺動長孔54の後端に位置している。さらに、受台部3の前端部において支持ベース6と座受7に枢支されているリンク部材9は、その回り止め部9aの内側(後側)が支持ベース6の前端に当接した状態になっている。そして、着座者が背凭れ4を背中で押すように体重を掛けると背凭れ4が後傾し、これに伴って、可動アーム8が固定軸80を支点として、その前側が上方へと回動する。すなわち、可動アーム8前端部の可動軸用孔67に枢支されている可動軸81が支持ベース6の昇降長孔40に沿って上方へと移動することで可動アーム8の前側が持ち上がるように移動する。この時、座受7の横長の第2摺動長孔53が支持ベース6の昇降長孔40と交差していることから、可動軸81の上動に伴って座受7の前後方向中央部も持ち上げられる。同時に、図6(b)及び図6(c)に示されているように、可動軸81が座受7の第2摺動長孔53を前方に向かって摺動すると共に、固定軸80が第1摺動長孔54を前方に向かって摺動するため、座受7は徐々に後方へと移動していくことになる。さらに、座受7の前端は、リンク部材9によって上方へと持ち上げられる。なお、リンク部材9が座受7の前端を持ち上げる際、リンク部材9の薄厚部9dより内側部分がベース側板21の円弧状の前側上端部及びその後側の傾斜を沿うように摺動するため、リンク部材9は、スムーズに上昇していくことになる。ちなみに、図6(b)では、可動アーム8が図6(a)のノーマルの状態から10度下傾しており、図6(c)では、可動アーム8が図6(a)のノーマルの状態から20度下傾している。そして、図6(c)の状態に至ると、可動アーム8の下面に設けられた傾斜ストッパー65が支持ベース6の脚支柱取着部材23の後側板(ストッパー止め部)に当接し、これ以上可動アーム8が回動しないようになっている。一方、着座者が背凭れ4に掛けていた体重を解放すれば、前述の動作と逆の動作によって、図6(a)のノーマルな状態に戻ることになる。このように本実施形態に示した椅子は、着座者が背凭れ4を背中で押すように体重を掛けると、それに応じて座部2が上昇するようになっている、すなわち、着座者の体重の増減に応じて背凭れ4を後傾させる力も変化させるいわゆる体重感知機能を備えている。もっとも、本実施形態の椅子は、単にそれのみならず、座部2の上昇に伴って、座部2が後方へと移動するようになっている。換言すれば、背凭れ4の後傾に追随するように座部2の上昇と座部2の後方移動が同時に起こるため、着座者が背凭れ4に寄り掛かって背凭れ4が後傾しても、座部2が移動して座部2に座っている着座者の体ごと後傾していく背凭れ4に近づいていくことになる。従って、着座者の背中は、背凭れ4がどの位置にあっても確実に背凭れ4に接した状態を維持することができる。
【0024】
図7は、座受7の前端部を上方へと移動させる昇降手段の他の実施形態を示すものである。なお、この実施形態のものは、前記実施形態のものと種々の点で構成が共通しているため、共通部分については同一符号を付して説明する。この昇降手段は、座受7の座受側板49,49の前端部に形成された縦長のガイド長孔90,90と、支持ベース6のベース側板21,21の前端部に穿設された軸孔に枢軸91を軸支して構成されている。また、ガイド長孔90は、その下端が前方に位置し上端が後方に位置する傾斜状になっており、且つ後側に凸となる円弧状になっている。そして、着座者が背凭れ4を後傾させると、可動アーム8の前端部が固定軸80を支点として上方へと回動し、座受7の前後方向中央部が持ち上げられるが、これに連動して枢軸91がガイド長孔90,90を下方に向かって摺動し、座受7の前端も持ち上げられていくことになる。すなわち、背凭れ4が後傾していない図7(a)の状態において、ガイド長孔90,90の上端に位置している固定軸91は、可動アーム8の前端部の上昇に伴って下方に向かうように位置が変化し、背凭れ4の後傾が最も深くなると、図7(c)に示されているように、ガイド長孔90,90の下端に位置することになる。この時、座受7の前端部が最も上方に持ち上げられた状態になる。
【0025】
次に、背凭れ4の傾斜角度をロックする機構について図8を参照しつつ説明する。図8(a)は、傾斜角度をロックしていない、すなわち、着座者が背凭れ4に凭れ掛かると、背凭れ4が自由に後傾し得る状態である。この状態において、支持ベース6の傾斜ロックベース29上のロックプレート33は、ロックプレート移動用スリット32内に位置し、その後端が傾斜ロックベース29の後端と面一、すなわち、傾斜ロックベース29から食み出していない。ここで、着座者が背凭れ4を後傾できない状態にロックしたいと考えた場合、まず、支持ベース6の左側の前後方向中央部にあるレバー部43の傾斜角調整用摘子44aを手で上方へ持ち上げる。これにより、傾斜角調整用摘子44aと一体のレバー本体44が時計回り方向に回転する。そして、図8(b)に示されているように、レバー本体44に連結されているロックカム連結部材45が後方へと移動する。さらに、ロックカム連結部材45と支持ベース6のロックカム収容部材27内で連結されている傾斜ロックカム34の下端部が後方へと移動する。この時、傾斜ロックカム34の中央部が軸支されていることから、傾斜ロックカム34の上端部は下端部とは逆方向、すなわち、前方へと移動する。そうすると、傾斜ロックカム34の上端部にロック押え35で取着されているロックプレート33も前方へと移動し、その後端が傾斜ロックベース29の後端から食み出して、可動アーム8の前端に位置する傾斜ロック部材60の上面に当接する。これにより、傾斜ロック部材60の上面がロックプレート33によって押さえつけられた状態になって、可動アーム8の上方への移動が規制されることになり、ひいては、背凭れ4の傾斜角度もロックされることになる。一方、着座者が背凭れ4を再び後傾可能な状態にしたいと考えた場合、前述の動作と逆の動作によって、図8(a)のフリーな状態に戻すことができる。なお、図8(b)は、背凭れ4が後傾していないノーマルな状態での傾斜角度のロックを示しているが、背凭れ4を所定角度後傾させた位置でロックすることも可能である。すなわち、着座者が背凭れ4を後傾させた状態で、レバー部43の傾斜角調整用摘子44aを手で上方へ持ち上げてやれば、可動アーム8の傾斜ロック部材60の凹部62にロックプレート33が嵌り込んで、その位置で背凭れ4の後傾をロックすることができる。
【0026】
なお、本発明における昇降長孔は、縦長に形成されていれば、その長さは自由に設定可能である。さらに、前記実施形態で示したように必ずしも円弧状の長孔でなく、直線状の長孔であっても良く、また、昇降長孔が傾いて形成されていても良い。同様に、第1摺動長孔及び第2摺動長孔も、横長に形成されていれば、その長さは自由に設定することが可能である。このように、本発明において、昇降長孔、第1摺動長孔及び第2摺動長孔を自由に設定し得るので、例えば、後傾した背凭れに対して着座者の背中が密着した適正な姿勢になるように微妙な調整が可能になる。また、例えば、昇降長孔の長さを短くすれば、受台の厚みを薄くして、受台をコンパクトなサイズに設計することも可能である。いずれにしても、本発明における座部昇降機構を採用すると、体重感知式という機能を備えつつ、設計上の自由度が増えると共に、背凭れを後傾した際の着座者の着座姿勢を可能な限り適正な状態に保持させることができる。また、前記実施形態では、背もたれを後傾させた際、座受の前端が高く座受の後端が低くなるように、昇降長孔、第1摺動長孔、第2摺動長孔を設定しているが、必ずこのような設定にしなければならないわけではなく、座受の前端を低く座受の後端を高くする設定や、座受の前端と座受の後端が同じ高さになるように設定することも可能である。また、前記実施形態におけるガイド長孔は、縦長に形成されていれば、その長さや傾きは自由に設定可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 脚部
2 座部
3 受台部
4 背凭れ
5 背凭れ支持部
6 支持ベース
7 座受
8 可動アーム
9 リンク部材
40 昇降長孔
53 第2摺動長孔
54 第1摺動長孔
80 固定軸
81 可動軸
90 ガイド長孔
91 枢軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8