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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136652
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】粉末材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20230922BHJP
   B22F 10/14 20210101ALI20230922BHJP
   C22C 29/08 20060101ALI20230922BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230922BHJP
   B22F 10/64 20210101ALN20230922BHJP
   C22C 1/051 20230101ALN20230922BHJP
【FI】
B22F1/00 Q
B22F10/14
C22C29/08
B33Y70/00
B22F10/64
C22C1/05 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042442
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208568
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 孔一
(74)【代理人】
【識別番号】100204526
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100139240
【弁理士】
【氏名又は名称】影山 秀一
(72)【発明者】
【氏名】小野 晃
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ティー スーン
(72)【発明者】
【氏名】河田 与志則
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AB02
4K018AB07
4K018AD06
4K018BA04
4K018BC12
(57)【要約】
【課題】巣の発生を抑制した粉末造型法に用いる粉末材料の提供
【解決手段】Coを8~16質量%、遊離したCを0.50質量%以下含み、残部がWCと不可避不純物からなる組成であり、
前記粒子状粉末は、
前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記粒子状粉末全体のC含有量の平均値よりも0.05質量%以上高い1以上の粒子状粉末からなる第1の粒子状粉末群と
前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記平均値よりも0.05質量以上低い1以上の粒子状粉末からなる第2の粒子状粉末群を有し、
前記第1の粒子状粉末群の質量%と前記第2の粒子状粉末群の質量%の和は50質量%以上であって、(前記第1の粒子状粉末群の質量%)/(前記第2の粒子状粉末群の質量%)=2/7~7/2である粉末材料とその製造方法
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末造型法に用いる粒子状粉末であって、
Coを8~16質量%、遊離したCを0.50質量%以下含み、残部がWCと不可避不純物からなる組成であり、
前記粒子状粉末は、
前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記粒子状粉末全体のC含有量の平均値よりも0.05質量%以上高い1以上の粒子状粉末からなる第1の粒子状粉末群と
前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記平均値よりも0.05質量以上低い1以上の粒子状粉末からなる第2の粒子状粉末群を有し、
前記第1の粒子状粉末群の質量%と前記第2の粒子状粉末群の質量%の和は50質量%以上であって、(前記第1の粒子状粉末群の質量%)/(前記第2の粒子状粉末群の質量%)=2/7~7/2であり、
ことを特徴とする粉末造型法に用いる粒子状粉末。
【請求項2】
CrをCrに換算して0.1~1.0質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の粉末造型法に用いる粒子状粉末。
【請求項3】
前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記粒子状粉末全体のC含有量の平均値よりも0.05質量%未満高く、または、0.05質量%未満低い1以上の粒子状粉末からなる第3の粒子状粉末群を50質量%未満更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の粉末造型法に用いる粒子状粉末。
【請求項4】
前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記平均値よりも0.05質量%以上高い1以上の高炭素量粉末と、
前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記平均値よりも0.05質量以上低い1以上の低炭素量粉末との和が50質量%以上を占めるように、
(前記高炭素量粉末の質量)/(前記低炭素量粉末の質量)=2/7~7/2に混合することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の粉末造型法に用いる粒子状粉末の製造方法。
【請求項5】
前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記粒子状粉末全体のC含有量の平均値よりも0.05質量%未満高く、または、0.05質量%未満低い1以上の中炭素量粉末からなる第3の粒子状粉末群を50質量%未満で混合する請求項4に記載の粉末造型法に用いる粒子状粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末造型法に用いる粉末材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉末造型法は粉末を用いて三次元物体を製造する方法であって、製造する三次元物体の断面に対応する形状の薄い層(粉末床)の粉末を焼結または接合することを繰り返して、目標とする三次元物体を製造するものである。
【0003】
この粉末造型法では、粉末床へレーザ等の熱源となるビームを照射し粉末を焼結させる方法と、粉末床へバインダ(結合材)を噴射してこのバインダを固めるバインダジェット法がある。
そして、粉末造型法に使用される粉末材料の性能向上のために種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、粉末材料が二次粒子の形態を有している粒子を含み、前記二次粒子は、第1の一次粒子であるコア粒子の表面に、第2の一次粒子である微粒子が静電引力により付着して構成されており、かつ、平均粒子径が1μm以上100μm以下の前記コア粒子用の原料粉と、平均粒子径が1nm以上500nm以下の前記微粒子用の原料粉とがブレンドされることで構成されており、さらに、金属材料、セラミック材料およびサーメットからなる群から選択される少なくとも一種の材料を有する粉末材料が記載され、該粉末材料は流動性に優れているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-154925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記事情や前記提案を鑑みてなされたものであって、三次元積層造形体において、巣の発生を抑制した粉末造型法、特に、バインダジェット法に用いる粉末(粒子状粉末)、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る粉末造型法に用いる粒子状粉末は、
Coを8~16質量%、遊離したCを0.50質量%以下含み、残部がWCと不可避不純物からなる組成であり、
前記粒子状粉末は、
前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記粒子状粉末全体のC含有量の平均値よりも0.05質量%以上高い1以上の粒子状粉末からなる第1の粒子状粉末群と
前記WCとこのWCのCを含むおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記平均値よりも0.05質量%以上低い1以上の粒子状粉末からなる第2の粒子状粉末群を有し、
前記第1の粒子状粉末群の質量%と前記第2の粒子状粉末群の質量%の和は50質量%以上であって、(前記第1の粒子状粉末群の質量%)/(前記第2の粒子状粉末群の質量%)=2/7~7/2である。
【0008】
本発明の実施形態の係る粉末材料は次の(1)、(2)の事項を1以上満足してもよい。
(1)CrをCrに換算して0.1~1.0質量%含むこと。
(2)前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記粒子状粉末全体のC含有量の平均値よりも0.05質量%未満高く、または、0.05質量%未満低い1以上の粒子状粉末からなる第3の粒子状粉末群を50質量%未満更に含むこと。
【0009】
本発明の実施形態に係る粒子状粉末の製造方法は、
前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記平均値よりも0.05質量%以上高い1以上の高炭素量粉末と、
前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記平均値よりも0.05質量以上低い1以上の低炭素量粉末との和が50質量%以上を占めるように、
(前記高炭素量粉末の質量)/(前記低炭素量粉末の質量)=2/7~7/2に混合するものである。
【0010】
本発明の実施形態に係る粒子状粉末の製造方法は、次の(3)の事項を満足してもよい。
【0011】
(3)前記WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記粒子状粉末全体のC含有量の平均値よりも0.05質量%未満高く、または、0.05質量%未満低い1以上の中炭素量粉末からなる第3の粒子状粉末群を50質量%未満で混合すること。
【発明の効果】
【0012】
前記実施形態に係る粉末造型法に用いる粒子状粉末をバインダジェット法に使用すると、巣の発生が抑制され機械的特性に優れた積層造形体を得ることができる。また、前記実施形態に係る粉末造型法に用いる粒子状粉末の製造法によれば、前記粒子状粉末を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者は、バインダジェット法において生じやすい、三次元積層体の機械的特性を低下させる巣を抑制する手段を鋭意検討した。その結果、焼結に当って加圧を行っても、巣の発生を完全に抑制することが困難であることが判明した。そこで、粉末材料の組成を工夫することによって巣の発生を抑制できないかと考えた。そして、2以上の温度で順次焼結が行われれば、巣の発生を抑制できると考え、本発明に至った。
【0014】
以下では、本発明の実施形態の粉末材料について詳細に説明する。
本明細書および特許請求の範囲において、「粒子状粉末」とは、一次粒子が三次的に凝集した二次粒子、および、前記二次粒子中のCoが当該二次粒子に含まれる粒子を結合した粒子をいう。
一次粒子とは、粉末材料を構成している構成要素のうち、外観から粒状物として認識できる最小の単位であって、二次粒子を構成する。
【0015】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を「L~M」(L、Mは共に数値)で表現するときは、「L以上、M以下」と同義であって、その範囲は上限値(M)および下限値(L)を含んでおり、上限値(M)のみに単位が記載されているときは、上限値(M)と下限値(L)の単位は同じである。
【0016】
1.粒子状粉末の組成
粒子状粉末の組成について説明する。
【0017】
(1)Co
Coは、8質量%以上、16質量%以下が好ましい。この範囲の含有量であれば、バインダジェット法により、粉末材料を適切に結合させることができる。
【0018】
(4)遊離したC
遊離したCとは、WCに由来するC、選択的に含まれるCrに由来するC以外のC、すなわち、後述する製造方法では、炭素材に由来するCをいう。なお、パラフィンに由来する炭素は、粉末造型時において揮発するため遊離した炭素に含めていない(遊離したCの測定対象外としている)。
【0019】
遊離したCは、このWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が粒子状粉末のC含有量の平均値(平均C含有量)よりも高い第1の粒子状粉末と、この平均値よりも低い第2の粒子状粉末とが含まれるようにするために、必ず含有させるもので(平均値より低い第2の粒子状粉末には含まれないこともある)、その含有量の上限は0.5質量%である。
このWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量には、WCのC量、遊離したC量の他に、選択的に含まれるCrに由来するCが含まれる。また、「粒子状粉末全体のC含有量」とは、「粉末全体に含まれるWC、Cr、遊離Cに由来するCの合計含有量」である。
【0020】
(1)WC
WCは粉末造型法に用いる粒子状粉末の主成分であって、この粒子状粉末を構成する第1の粒子状粉末群、第2の粒子状粉末群を構成する各粒子状粉末に含まれている。また、選択的に含まれる第3の粒子状粉末群を構成する各粒子状粉末にも含まれる。
【0021】
(2)Cr
Crは、Crに換算して0.1~1.0質量%含有されていてもよい(Crは含有されていなくてもよい)。Crが含有されると焼結性が向上する。
【0022】
2.粉末造型法に用いる粒子状粉末を構成する粒子状粉末
粉末造型法に用いる粒子状粉末は、WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が粒子状粉末のC含有量の平均値(粒子状粉末全体の平均C含有量)よりも0.05質量%以上高い粒子状粉末(粒子状粉末の集合体)の1以上から構成される第1の粒子状粉末群と、
WCとこのWCのCおよび前記遊離したCを含むC量の含有量が前記平均値よりも0.05質量%以上低い粒子状粉末(粒子状粉末の集合体)の1以上から構成される第2の粒子状粉末群が含有されることが好ましい。
【0023】
なお、後述する製造方法に従えば、各粒子状粉末(粒子状粉末の集合体)のC含有量は、広がりを持つ値ではなく、粒子状粉末(粒子状粉末の集合体)毎に一つの値である。
【0024】
2以上の温度で順次焼結が確実に行われ、前記目的を確実に達成できるために、以下の(1)~(2)の事項を満足することが好ましい。
【0025】
(1)第1の粒子状粉末群と第2の粒子状粉末群の合計の含有量は、粉末全体の50質量%以上、すなわち、第1の粒子状粉末群の質量%と前記第2の粒子状粉末群の質量%の和は50質量%以上であること。
すなわち、その合計の質量%が50質量%未満であれば、第1の粒子状粉末群の最低のC含有量と第2の粒子状粉末群の最高C含有量との間のC含有量を有する粒子状粉末(粒子状粉末の集合体)の1以上から構成される第3の粒子状粉末群を有していてもよい(第3の粒子状粉末のC含有量は、前記粒子状粉末全体のC含有量の平均値よりも0.05質量%未満高く、または、0.05質量%未満低い。そして、第3の粒子状粉末群は有していなくてもよい)。
【0026】
(2)この第1の粒子状粉末群と第2の粒子状粉末群との質量%比は、
(第1の粒子状粉末群の質量%)/(前記第2の粒子状粉末群の質量)=2/7~7/2
であること。
【0027】
4.粒子状粉末の製造方法
前記実施形態に係る粒子状粉末は、例えば、以下のようにして製造することができる。
(1)WC、Co、遊離C源(カーボンブラック、グラファイトなどの炭素材)、パラフィン(ろう材)、必要に応じてCrの各粉末を用意する。
【0028】
(2)第1の粒子状粉末群、第2の粒子状粉末群を作成すべく、1種以上の高い炭素量および1種以上の低い炭素量(炭素材の配合量はゼロであってもよい。すなわち、本実施形態に係る製造方法において、「平均値よりも低量のCとWCを含有した粉末」の「低量」とは炭素剤の配合がゼロであってもよい)となるように、炭素材を秤とる。そして、この炭素材と炭素材以外の前記各粉末を配合し、それぞれ、1以上の高炭素量粉末と低炭素量粉末を作成する。
【0029】
(3)それぞれ1種以上の高炭素量粉末と低炭素量粉末を、それぞれ、別々にアトライターで混合し、それぞれ1種以上の高炭素量混合粉と低炭素量混合粉とする。
(4)それぞれ1種以上の高炭素量混合粉と低炭素量混合粉とを、それぞれ別個に、噴霧造形してそれぞれ1種以上の高炭素量噴霧造形粉末と低炭素量噴霧造形粉末を得る。そして、それぞれの噴霧造形粉末を焼結し、解砕し、篩分けを行って、それぞれ1種以上の混合前高炭素量原料粉末と混合前低炭素量原料粉末を得る。
なお、焼結、解砕、篩い分けは必須でなく、噴霧造形を行った後のそれぞれ1種以上の高炭素量噴霧造形粉末と低炭素量噴霧造形粉末を、それぞれ1種以上の混合前高炭素量原料粉末と混合前低炭素量原料粉末としてもよい。
【0030】
(5)1種以上の混合前高炭素量原料粉末を混合し(それぞれの混合前高炭素量原料粉末の量は同一であってもなくてもよい)混合前高炭素量原料粉末集合体とし、また、1種以上の低炭素量原料粉末を混合し(それぞれの混合前低炭素量原料粉末の量は同一であってもなくてもよい)混合前低炭素量原料粉末集合体とする。
そして、混合前高炭素量原料粉末集合体と混合前低炭素量原料粉末集合体とを、質量比が2/7~7/2となるように混合し、第1の粒子状粉末群と第2の粒子状粉末群の混合体である本実施形態に係る粒子状粉末を製造する。
【実施例0031】
次に、実施例について説明する。本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0032】
1.実施例の粉末材料
以下の手順により、実施例の粒子状粉末を得た。
【0033】
(1)原料粉末
WC、Co、Cr、グラファイト、パラフィンを用意した。そして、高炭素原料粉末(2種)、低炭素量原料粉末(2種)、および、中炭素量原料粉末(2種)を得るべく、表1に示すようにC配合量が高配合量(2種)、低配合量(2種)、および、中配合量(2種)の6種のグラファイトそれぞれとWC粉末等の配合を行い、高炭素量1原料粉末、高炭素量2原料粉末、低炭素量1原料粉末、低炭素量2原料粉末、中炭素量1原料粉末、および、中炭素量2原料粉末とした。
なお、表1において、WC、Co、Crの合計を100質量%とし、グラファイトとパラフィンは、この100質量%の外数として配合している。
【0034】
(2)混合
高炭素量1原料粉末、高炭素量2原料粉末、低炭素量1原料粉末、低炭素量2原料粉末、中炭素量1原料粉末、および、中炭素量2原料粉末を、それぞれ、別々に超硬ボールと共にエチルアルコールを溶媒としてアトライターで6時間混合し、それぞれ、噴霧造形を行い、粒径がそれぞれ45μm以下の粒径のものを篩い分けして、高炭素量1噴霧造形粉末、高炭素量2噴霧造形粉末、低炭素量1噴霧造形粉末、低炭素量2噴霧造形粉末、中炭素量1噴霧造形粉末、中炭素量2噴霧造形粉末を作製した。
【0035】
(4)焼結と解砕
高炭素量1噴霧造形粉末、高炭素量2噴霧造形粉末、低炭素量1噴霧造形粉末、低炭素量2噴霧造形粉末、中炭素量1噴霧造形粉末、中炭素量2噴霧造形粉末のそれぞれを、1250℃で1時間焼結し、解砕・篩い分けし、それぞれ、混合前高炭素量1原料粉末、混合前高炭素量2原料粉末、混合前低炭素量1原料粉末、混合前中炭素量1原料粉末、および、混合前中炭素量2原料粉末を得た。
【0036】
(5)混合
混合前高炭素量1原料粉末、混合前高炭素量2原料粉末、混合前低炭素量1原料粉末、混合前低炭素量2原料粉末、混合前中炭素量1原料粉末、および、混合前中炭素量2原料粉末を表2で示す質量比となるように混合して、実施例の粉末状粒子(以下、実施例1~4という)を得た。
ここで、混合前高炭素量1原料粉末、混合前高炭素量2原料粉末は、混合前高炭素量原料粉末集合体(第1の粒子状粉末となる)を、混合前低炭素量1原料粉末、混合前低炭素量2原料粉末は、混合前低炭素量原料粉末集合体(第2の粒子状粉末となる)を、混合前中炭素量1原料粉末、混合前中炭素量2原料粉末は、混合前中炭素粉末集合体(第3の粒子状粉末となる)を、それぞれ、構成した。
【0037】
2.比較例の粉末材料
比較のために、前記(2)~(4)の工程を行い、(5)の工程では表2に示す質量比で混合して比較例の粉末状粉末(以下、比較例1~2という)を得た。比較例1は、炭素量の異なる中炭素量原料粉末のみを含み、粒子状粉末全体のC含有量の平均値よりも0.05質量%以上高い含有量および0.5質量%以下低い含有量の粒子状粉末を含まず、比較例2は、粒子状粉末全体のC含有量の平均値よりも0.05質量%以上高い含有量および0.5質量%以下低い含有量の粒子状粉末を含むものの両者の質量比は1:1であって、しかも、中炭素量原料粉末が60質量%を含むものであった。
【0038】
このようにして得た実施例1~4と比較例1~2の粒子状粉末について、粉末の組成、C含有量平均値、第1の粒子状粉末C含有量、第2の粒子状粉末のC含有量、および、第3の粒子状粉末のC含有量を表3に示す。粉末材料全体のC含有量は、および、各粒子状粉末のC含有量は、これら粒子状粉末を燃焼させ、発生した炭酸ガスの発生量をもとにC含有量を測定したものである。
【0039】
3.バインダジェット法を用いた造形
実施例1~4および比較例1~2の各粒子状粉末にバインダジェット法を適用して、16mm×16mm×6mmの直方体の造形を行った。造形後、窒素雰囲気中で200℃、4時間の硬化処理を行った。その後、ブラシと加圧空気を用いて余分な粉末を除去した。そして、室温から600℃まで水素中で昇温し脱バインダ処理を行った後、真空中で1480℃まで昇温し、60分保持した後冷却し、焼結体を得た。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
4.焼結体の巣の発生量
焼結体の巣の発生量を評価した。まず焼結体のそれぞれを任意の面で切断し、切断面を1μmのダイヤモンド砥石で研磨し、鏡面化した。その後、得られた鏡面を光学顕微鏡で50倍の写真を撮影し、得られた撮影画像を画像解析ソフトのimage-j(バージョン:1.530)を用いて2値化して、巣の面積率を算出した。画像内の巣の部分を画像処理にて抜き出すに当たり、巣部分と合金部分とを明確に判断するため、画像は0を白、255を黒の256階調のモノクロで表示し、下限は0、上限はピクセル単位に分割した画像中で最も頻度の高い色調の半分の値とした。結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
表4から明らかなように、実施例1~4の粉末材料を使用した造形体の巣の面積率は最大で2.4%であり、一方、比較例の粉末材料を使用した造形体の巣の面積率は最低でも4.1%であった。このことから明らかなように、実施例の粒子状粉末を使用すれば巣の発生が抑制されることがわかる。