(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136656
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】骨処置用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/17 20060101AFI20230922BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61B17/17
A61B17/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042447
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】黒田 隆
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL07
4C160LL27
4C160LL42
(57)【要約】
【課題】術者の経験によらずにピン状部材を患者の骨に対して正確な位置及び方向で容易に刺入することができる骨処置用器具を提供する。
【解決手段】ガイド部材11は、ピン状部材10の刺入方向をガイドする。本体軸部材12は、ガイド部材11が取り付けられる。樹脂製の第1指標部材13及び第2指標部材14は、本体軸部材12に取り付けられ、ガイド部材11の位置を指標する。第1指標部材13は、本体軸部材12にガイド部材11と長手方向の異なる位置で取り付けられ、ガイド部材11を含む面S1に沿って延びる。第2指標部材14は、本体軸部材12にガイド部材11と長手方向の同じ位置で取り付けられ、面S1に垂直でガイド部材11を含む面S2に沿って延びる。第1指標部材13及び第2指標部材14の先端側に、ピン状部材10の位置を指標する金属指標部材15、16が配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の骨にピン状部材を刺入する処置を施す際に用いられる骨処置用器具であって、
金属材料で形成されているとともに、前記骨に刺入される前記ピン状部材が挿通され、前記ピン状部材の前記骨への刺入方向をガイドする筒状のガイド部材と、
長手方向を有する軸状に形成され、前記ガイド部材が前記長手方向とは異なる方向に延びる状態で取り付けられる本体軸部材と、
樹脂材料、木材、及び紙のいずれかで形成され、前記長手方向とは異なる方向に前記本体軸部材から延びる状態で前記本体軸部材にそれぞれ取り付けられるとともに、それぞれ前記ガイド部材の位置を指標する第1指標部材及び第2指標部材と、
を備え、
前記第1指標部材は、前記本体軸部材に対して、前記長手方向における前記ガイド部材が取り付けられる位置と異なる位置で、前記ガイド部材が延びる方向を含む面として規定される第1の面に沿って延びるように取り付けられ、
前記第1の面は、前記第1指標部材が延びる方向と前記ガイド部材が延びる方向とを含む面として規定され、
前記第2指標部材は、前記本体軸部材に対して、前記長手方向における前記ガイド部材が取り付けられる位置と同じ位置で、前記第1の面に対して垂直な面であって前記ガイド部材が延びる方向を含む面として規定される第2の面に沿って、前記ガイド部材が延びる方向とは異なる方向に延びるように取り付けられ、
前記第1指標部材及び前記第2指標部材のそれぞれには、前記本体軸部材から延びる先端側において、金属材料で形成され、前記ガイド部材に挿通されて前記骨に刺入される前記ピン状部材の位置を指標する金属指標部材が配置されていることを特徴とする、骨処置用器具。
【請求項2】
請求項1に記載の骨処置用器具であって、
前記第1指標部材の先端側において前記金属指標部材は複数配置され、当該第1指標部材に配置された複数の前記金属指標部材は、前記第1指標部材が延びる方向に沿って分散して並んで配置されていることを特徴とする、骨処置用器具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の骨処置用器具であって、
前記第2指標部材の先端側において前記金属指標部材は複数配置され、当該第2指標部材において配置された複数の前記金属指標部材は、前記第2指標部材が延びる方向に沿って分散して並んで配置されていることを特徴とする、骨処置用器具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の骨処置用器具であって、
前記本体軸部材は、前記ガイド部材が前記長手方向とは異なる方向に延びる状態で挿入されて取り付けられることを特徴とする、骨処置用器具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の骨処置用器具であって、
前記第2指標部材は、前記本体軸部材から片持ち状に延びる状態で前記本体軸部材に取り付けられることを特徴とする、骨処置用器具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の骨処置用器具であって、
前記第1指標部材は、前記本体軸部材に対して、前記ガイド部材が前記本体軸部材から延びる方向と平行な方向に沿って、前記本体軸部材から延びるように取り付けられることを特徴とする、骨処置用器具。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の骨処置用器具であって、
前記本体軸部材は、当該本体軸部材の周方向における複数個所において前記第2指標部材が取付け可能に設けられていることを特徴とする、骨処置用器具。
【請求項8】
請求項7に記載の骨処置用器具であって、
前記本体軸部材には、前記長手方向に垂直な方向に沿って出っ張るように広がるフランジ部が設けられ、前記フランジ部には、前記ガイド部材が挿通される挿通孔と、前記第2指標部材の端部が嵌め込まれることで前記第2指標部材が取り付けられる複数の取付け孔とが設けられていることを特徴とする、骨処置用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の骨にピン状部材を刺入する処置を施す際に用いられる骨処置用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折手術或いは骨穿孔術等の骨関節領域手術など、患者の骨に対して施される種々の手術においては、ピン、ドリル、或いはスクリュー等のピン状部材を患者の骨に刺入して患者の骨に挿入する処置がよく行われている。そして、骨にピン状部材を刺入する処置においては、ピン状部材が挿通されてピン状部材の骨への刺入方向をガイドするための筒状の部分或いは孔が設けられた部分を有する器具が用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3を参照)。尚、術者は、かかる器具を用い、X線透視下で骨へのピン状部材の刺入位置を確認しながら、骨に対してピン状部材を刺入する処置を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0276841号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0212405号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0021479号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者の骨にピン状部材を刺入する処置において、ピン状部材を骨に対して正確な位置で正確な方向に刺入することは、手術成績に関わる重要な要素であり、術者である外科医に必要とされる最も基本的な手術手技のひとつである。しかし、患者の骨に対してピン状部材を刺入する際、術者は、患者の正面方向及び側面方向のいずれから見た状態においても、ピン状部材を患者の骨に対して正確な位置及び方向で刺入する必要がある。このため、患者の骨に対してピン状部材を正確な位置及び方向で刺入する処置は難しく、術者は、経験に頼りながらフリーハンドで骨にピン状部材を刺入する処置を行っている。
【0005】
尚、特許文献1乃至特許文献3では、骨処置用器具において、ピン状部材と平行に延びるように配置されるアライメントバー、ガイドロッド、又は参照ピンといった部材が設けられ、術者が、これらの部材を参照しながら、ピン状部材を骨に対して刺入する処置を行う方法が開示されている。しかし、これらの骨処置用器具によると、一つの方向から見た状態でしかアライメントバー、ガイドロッド、又は参照ピンといった部材を参照することができず、結局、術者は、経験に頼りながらほぼフリーハンドに近い状態で骨にピン状部材を刺入する処置を行わざるを得ない状況にある。このため、X線透視下で確認しながらであっても、ピン状部材を骨に対して正確な位置及び方向で刺入するためには、術者は、試行錯誤しながらピン状部材を骨に対して何度も刺入し直さざるを得ない状況にある。
【0006】
術者の経験によらずにピン状部材を患者の骨に対して正確な位置及び方向で容易に刺入することが可能な骨処置用器具を実現することができれば、ピン状部材の骨への刺入回数を減らすことができる。これにより、手術精度の向上、手術時間の短縮、X線による被爆の減少を図ることができ、患者及び医療者の双方の利益の向上を図ることができる。また、術者の経験によらない安全で正確な手術手技の普及を図ることができ、医療水準の向上を図ることができる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、術者の経験によらずにピン状部材を患者の骨に対して正確な位置及び方向で容易に刺入することができる骨処置用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するための本発明に係る骨処置用器具は、患者の骨にピン状部材を刺入する処置を施す際に用いられる骨処置用器具に関する。そして、本発明に係る骨処置用器具は、金属材料で形成されているとともに、前記骨に刺入される前記ピン状部材が挿通され、前記ピン状部材の前記骨への刺入方向をガイドする筒状のガイド部材と、長手方向を有する軸状に形成され、前記ガイド部材が前記長手方向とは異なる方向に延びる状態で取り付けられる本体軸部材と、樹脂材料、木材、及び紙のいずれかで形成され、前記長手方向とは異なる方向に前記本体軸部材から延びる状態で前記本体軸部材にそれぞれ取り付けられるとともに、それぞれ前記ガイド部材の位置を指標する第1指標部材及び第2指標部材と、を備えている。更に、本発明に係る骨処置用器具においては、前記第1指標部材は、前記本体軸部材に対して、前記長手方向における前記ガイド部材が取り付けられる位置と異なる位置で、前記ガイド部材が延びる方向を含む面として規定される第1の面に沿って延びるように取り付けられ、前記第1の面は、前記第1指標部材が延びる方向と前記ガイド部材が延びる方向とを含む面として規定され、前記第2指標部材は、前記本体軸部材に対して、前記長手方向における前記ガイド部材が取り付けられる位置と同じ位置で、前記第1の面に対して垂直な面であって前記ガイド部材が延びる方向を含む面として規定される第2の面に沿って、前記ガイド部材が延びる方向とは異なる方向に延びるように取り付けられ、前記第1指標部材及び前記第2指標部材のそれぞれには、前記本体軸部材から延びる先端側において、金属材料で形成され、前記ガイド部材に挿通されて前記骨に刺入される前記ピン状部材の位置を指標する金属指標部材が配置されている。
【0009】
この構成によると、ガイド部材が本体軸部材の長手方向とは異なる方向に延びる状態で取り付けられた本体軸部材からガイド部材とは異なる位置で本体軸部材の長手方向とは異なる方向に延びる第1指標部材が、ガイド部材が延びる方向を含む第1の面に沿って延びてガイド部材の位置を指標するように構成される。即ち、ガイド部材が配置される面である第1の面に沿って第1指標部材も延びるように配置され、第1の面は、第1指標部材が延びる方向とガイド部材が延びる方向とを含む面として規定される。そして、上記構成の骨処置用器具を操作する術者が、第1指標部材とガイド部材とが配置される第1の面に沿って第1指標部材を見る場合、第1の面に沿った方向において、第1指標部材とガイド部材とが重なった状態で配置されることになる。このため、術者は、第1指標部材とガイド部材とが配置される第1の面を患者の正面方向に沿って配置し、第1の面に沿って第1指標部材を見るだけで、患者の正面方向において、第1指標部材が指標するガイド部材の位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。更に、術者は、第1指標部材を見るだけで、患者の正面方向において、第1指標部材によって指標されるガイド部材に挿通されるピン状部材の位置及び方向も術者の経験によらずに容易に把握することができる。
【0010】
更に、上記の構成によると、ガイド部材が本体軸部材の長手方向とは異なる方向に延びる状態で取り付けられた本体軸部材から本体軸部材の長手方向におけるガイド部材と同じ位置で本体軸部材の長手方向とは異なる方向に延びる第2指標部材が、第1の面に垂直でガイド部材が延びる方向を含む第2の面に沿って延びてガイド部材の位置を指標するように構成される。即ち、ガイド部材及び第1指標部材が配置される第1の面と垂直でガイド部材が配置される面である第2の面に沿って第2指標部材が延びるように配置される。そして、上記構成の骨処置用器具を操作する術者が、第1の面に垂直で第2指標部材とガイド部材とが配置される第2の面に沿って第2指標部材を見る場合、第2の面に沿った方向において、第2指標部材とガイド部材とが重なった状態で配置されることになる。このため、術者は、第1の面を患者の正面方向に沿って配置するとともに、第2指標部材とガイド部材とが配置される第2の面を患者の側面方向に沿って配置し、第2の面に沿って第2指標部材を見るだけで、患者の側面方向において、第2指標部材が指標するガイド部材の位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。更に、術者は、第2指標部材を見るだけで、患者の側面方向において、第2指標部材によって指標されるガイド部材に挿通されるピン状部材の位置及び方向も術者の経験によらずに容易に把握することができる。
【0011】
従って、上記の構成によると、術者は、第1の面を患者の正面方向に沿って配置するとともに第2の面を患者の側面方向に沿って配置し、患者の正面方向において第1指標部材を見て、次いで、患者の側面方向において第2指標部材を見ることができる。これだけで、術者は、患者の正面方向及び側面方向のいずれから見た状態においても、ガイド部材に挿通されて骨に刺入されるピン状部材の正確な位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。尚、手術中に術者によってピン状部材が患者の患部の骨に刺入される処置が行われる際には、まず、筒状のガイド部材の先端部が、患部の骨においてピン状部材が刺入される位置に配置される。このとき、ガイド部材の先端側の部分は、患者の軟部組織に挿入されて外部から隠れた状態となるが、術者は、患者の正面方向から第1の面に沿って第1指標部材を見て、次いで、患者の側面方向から第2の面に沿って第2指標部材を見て確認することができる。これにより、術者は、第1指標部材及び第2指標部材が指標するガイド部材の位置及び方向と、ガイド部材に挿通されたピン状部材が患部の骨に対して刺入される位置及び方向とを正確に且つ容易に把握することができる。
【0012】
また、上記の構成によると、第1指標部材はX線が透過する材料である樹脂材料、木材、及び紙のいずれかで形成されており、第1指標部材における本体軸部材から延びる先端側には、X線の透過を抑制する材料である金属材料で形成された金属指標部材が配置されている。このため、X線の透視下においても、術者は、第1指標部材とガイド部材とが配置される第1の面を患者の正面方向に沿って配置し、患者の正面方向の視点のX線の透視画像を見ることで、患者の骨の像と、第1指標部材の先端側に配置された金属指標部材の像とを容易に確認することができる。これにより、術者は、患者の正面方向において、第1指標部材の先端側に配置された金属指標部材が指標するピン状部材がガイド部材に挿通されて更に骨に対して刺入される位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。
【0013】
更に、上記の構成によると、第2指標部材はX線が透過する材料である樹脂材料、木材、及び紙のいずれかで形成されており、第2指標部材における本体軸部材から延びる先端側には、X線の透過を抑制する材料である金属材料で形成された金属指標部材が配置されている。このため、X線の透視下においても、術者は、第1の面を患者の正面方向に沿って配置するとともに、第2指標部材とガイド部材とが配置される第2の面を患者の側面方向に沿って配置し、患者の側面方向の視点のX線の透視画像を見ることで、患者の骨の像と、第2指標部材の先端側に配置された金属指標部材の像とを容易に確認することができる。これにより、術者は、患者の側面方向において、第2指標部材の先端側に配置された金属指標部材が指標するピン状部材がガイド部材に挿通されて更に骨に対して刺入される位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。
【0014】
従って、上記の構成によると、術者は、第1の面を患者の正面方向に沿って配置するとともに第2の面を患者の側面方向に沿って配置し、患者の正面方向のX線透視画像において第1指標部材の先端側に配置された金属指標部材の像を見て、次いで、患者の側面方向のX線透視画像において第2指標部材の先端側に配置された金属指標部材の像を見ることができる。これだけで、術者は、患者の正面方向及び側面方向のいずれから見た状態においても、ガイド部材に挿通されて骨に対して刺入されるピン状部材の正確な位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。
【0015】
上記のように、術者は、患者の正面方向及び側面方向のいずれから見た状態においても、ガイド部材に挿通されて骨に対して刺入されるピン状部材の正確な位置及び方向を把握すると、次いで、ピン状部材を骨に対して刺入する。このとき、まず、ピン状部材は、ガイド部材に挿通される。そして、ピン状部材は、ガイド部材によって骨への刺入方向がガイドされながら、骨に対して刺入される。このとき、術者は、経験によることなく、第1指標部材及びそれに配置された金属指標部材と第2指標部材及びそれに配置された金属指標部材とによって、患者の正面方向及び側面方向のいずれから見た状態においても、骨に対するピン状部材の刺入位置及び刺入方向を正確に把握することができている。そして、その上で、術者は、把握した刺入位置及び刺入方向に沿って正確にピン状部材を骨に対して容易に刺入することができる。よって、上記の構成の骨処置用器具により、術者は、その経験によらずに、ピン状部材を患者の骨に対して正確な位置及び方向で容易に刺入することができる。
【0016】
したがって、上記の構成によると、術者の経験によらずにピン状部材を患者の骨に対して正確な位置及び方向で容易に刺入することができる骨処置用器具を提供することができる。
【0017】
(2)前記第1指標部材の先端側において前記金属指標部材は複数配置され、当該第1指標部材に配置された複数の前記金属指標部材は、前記第1指標部材が延びる方向に沿って分散して並んで配置されていてもよい。
【0018】
この構成によると、術者は、第1の面を患者の正面方向に沿って配置し、患者の正面方向の視点のX線の透視画像を見た際に、患者の骨の像と、第1指標部材の先端側で分散して並んで配置された金属指標部材の像とを確認することができる。これにより、術者は、患者の正面方向において、ピン状部材がガイド部材に挿通されて更に骨に対して刺入される位置及び方向について、破線のように分散して並んだ金属指標部材の像として把握することができる。このため、術者は、ピン状部材が骨に対して刺入される位置及び方向を更に明瞭且つ容易に把握することができる。また、これにより、術者は、より安心して処置を行うことができる。
【0019】
(3)前記第2指標部材の先端側において前記金属指標部材は複数配置され、当該第2指標部材において配置された複数の前記金属指標部材は、前記第2指標部材が延びる方向に沿って分散して並んで配置されていてもよい。
【0020】
この構成によると、術者は、第1の面を患者の正面方向に沿って配置するとともに第2の面を患者の側面方向に沿って配置し、患者の側面方向の視点のX線の透視画像を見た際に、患者の骨の像と、第2指標部材の先端側で分散して並んで配置された金属指標部材の像とを確認することができる。これにより、術者は、患者の側面方向において、ピン状部材がガイド部材に挿通されて更に骨に対して刺入される位置及び方向について、破線のように分散して並んだ金属指標部材の像として把握することができる。このため、術者は、ピン状部材が骨に対して刺入される位置及び方向を更に明瞭且つ容易に把握することができる。また、これにより、術者は、より安心して処置を行うことができる。
【0021】
(4)前記本体軸部材は、前記ガイド部材が前記長手方向とは異なる方向に延びる状態で挿入されて取り付けられてもよい。
【0022】
この構成によると、ガイド部材を本体軸部材に対して挿入する簡素な構造で、ガイド部材を本体軸部材の長手方向とは異なる方向に延びる状態で本体軸部材に容易に取り付けることができる。
【0023】
(5)前記第2指標部材は、前記本体軸部材から片持ち状に延びる状態で前記本体軸部材に取り付けられてもよい。
【0024】
この構成によると、第2指標部材は、片持ち状に延びる状態で本体軸部材に取り付けられるため、第2指標部材の端部を本体軸部材に連結した構造で、第2指標部材が本体軸部材に取り付けられる。このため、第2指標部材の端部を本体軸部材に連結する簡素な構造で、第2指標部材を本体軸部材の長手方向とは異なる方向に本体軸部材から延びる状態で本体軸部材に容易に取り付けることができる。
【0025】
(6)前記第1指標部材は、前記本体軸部材に対して、前記ガイド部材が前記本体軸部材から延びる方向と平行な方向に沿って、前記本体軸部材から延びるように取り付けられてもよい。
【0026】
この構成によると、第1指標部材とガイド部材とが本体軸部から平行に延びるように設けられる。このため、術者は、ガイド部材を患者の側面方向から患者の患部の骨に向かって患者の軟部組織に挿入し、第1指標部材とガイド部材とが配置される第1の面を患者の正面方向に沿って配置した際に、第1指標部材を患者の側面方向と平行な方向に沿って配置することができる。即ち、第1指標部材を患者の正面側において患者の正面方向と垂直な方向に沿って延びた状態に配置することができる。このため、術者は、患者の正面方向において、第1指標部材が指標するガイド部材の位置及び方向を把握する際に、第1指標部材を患者の正面側で患者の体と略平行な方向に沿って容易に操作することができる。これにより、第1の面に沿って第1指標部材を見ながら患者の正面方向におけるガイド部材の位置及び方向を把握する際の操作性を更に向上させることができる。
【0027】
(7)前記本体軸部材は、当該本体軸部材の周方向における複数個所において前記第2指標部材が取付け可能に設けられていてもよい。
【0028】
この構成によると、本体軸部材の周方向における複数個所のうちのいずれかの箇所を選択して第2指標部材を本体軸部材に取り付けることができる。このため、患者の骨と、ピン状部材が患者の骨に対して刺入される位置及び方向との関係に応じて、第2指標部材による確認を行い易いように、本体軸部材から延びるガイド部材と第2指標部材との交差角度を適宜変更することができる。これにより、ピン状部材が患者の骨に対して刺入される位置及び方向の把握を更に容易にすることができる。
【0029】
(8)前記本体軸部材には、前記長手方向に垂直な方向に沿って出っ張るように広がるフランジ部が設けられ、前記フランジ部には、前記ガイド部材が挿通される挿通孔と、前記第2指標部材の端部が嵌め込まれることで前記第2指標部材が取り付けられる複数の取付け孔とが設けられていてもよい。
【0030】
この構成によると、本体軸部材において出っ張るように広がったフランジ部に対して、ガイド部材の挿通孔と、第2指標部材の取り付け用の複数の取付け孔とが設けられる。このため、第2指標部材の本体軸部材に対する取付け可能位置の設定の自由度を高くすることができ、本体軸部材から延びるガイド部材と第2指標部材との交差角度の選択肢の設定の自由度を高くすることができる。これにより、それぞれの患者の体格に応じて、ガイド部材と第2指標部材との交差角度をより柔軟に設定することができ、ピン状部材が患者の骨に対して刺入される位置及び方向の把握を更に容易にすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、術者の経験によらずにピン状部材を患者の骨に対して正確な位置及び方向で容易に刺入することができる骨処置用器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る骨処置用器具を示す斜視図である。
【
図5】骨処置用器具が用いられてピン状部材が骨に対して刺入されている状態を模式的に示す図である。
【
図6】骨処置用器具の一部を示す図であって、骨処置用器具のガイド部材と第2指標部材とを含む面での断面を含む図である。
【
図7】
図7(A)及び
図7(B)は、骨処置用器具の斜視図であって、
図7(A)は、骨処置用器具において規定される第1の面を説明するための図であり、
図7(B)は、骨処置用器具において規定される第2の面を説明するための図である。
【
図8】ピン状部材を骨に対して刺入する処置において骨処置用器具が用いられている状態を模式的に示す図である。
【
図9】ピン状部材を骨に対して刺入する処置において骨処置用器具が用いられている状態を模式的に示す図である。
【
図10】ピン状部材を骨に対して刺入する処置において骨処置用器具が用いられている状態を模式的に示す図である。
【
図11】ピン状部材を骨に対して刺入する処置において骨処置用器具が用いられている状態を模式的に示す図である。
【
図12】ピン状部材を骨に対して刺入する処置において骨処置用器具が用いられている状態を模式的に示す図であって、透過装置のモニターで見える透視画像を示す図である。
【
図13】ピン状部材を骨に対して刺入する処置において骨処置用器具が用いられている状態を模式的に示す図であって、透過装置のモニターで見える透視画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0034】
[骨処置用器具の概略]
図1は、本発明の一実施の形態に係る骨処置用器具1を示す斜視図である。
図2は、骨処置用器具1の分解斜視図である。
図3は、骨処置用器具1の平面図である。
図4は、骨処置用器具1の正面図である。
図1乃至
図4に示す骨処置用器具1は、骨折手術或いは骨穿孔術等の骨関節領域手術など、患者の骨に対して施される種々の手術において、広く用いられることができる。そして、骨処置用器具1は、患者の骨に対して施される種々の手術において、患者の骨にピン状部材を刺入する処置を施す際に用いられる。
【0035】
また、骨処置用器具1は、例えば、大腿骨近位部骨折手術或いは大腿骨頭壊死症の再生医療の手術において、患者の大腿骨にピン状部材を挿入する処置を施す際に、好適に用いられる。
図5は、骨処置用器具1が用いられてピン状部材10が大腿骨として構成される骨100(以下、骨100について大腿骨100とも称する)に対して刺入されている状態を模式的に示す図である。尚、
図5においては、大腿骨100における近位側の部分、及び、骨処置用器具1のみが図示されており、その他の要素については、図示が省略されている。即ち、
図5においては、患者の軟部組織、大腿骨100における近位側の部分以外の部分、及び、骨処置用器具1を操作する術者の図示は省略されている。
【0036】
例えば、大腿骨頭壊死症の再生医療の手術において骨処置用器具1が用いられる場合、骨処置用器具1は、ピン状部材10を患者の大腿骨100に対して刺入して大腿骨100に挿入する処置を行うために用いられる。骨処置用器具1が用いられることで、後述するように、ピン状部材10が患者の大腿骨100に対して正確な位置及び方向で刺入される。尚、大腿骨頭壊死症の再生医療の手術においては、ピン状部材10が大腿骨100に刺入されると、次いで、例えば、大腿骨100の一部が自家骨として採取され、更に、自家骨を含む骨組成物が大腿骨頭の圧潰部に供与される処置が行われる。大腿骨頭壊死症の再生医療の手術においては、大腿骨100に挿入されたピン状部材10は、自家骨の採取処置及び骨組成物の圧潰部への供与処置が行われる際にそれらの処置を行うための手術器具(図示せず)の動作をガイドするためのガイドピンとして用いられる。自家骨の採取処置及び骨組成物の圧潰部への供与処置が終了すると、ピン状部材10は、大腿骨100から抜去される。
【0037】
大腿骨頭壊死症の再生医療の手術において骨処置用器具1が用いられて大腿骨100へ刺入されるピン状部材10は、大腿骨100の外側部(がいそくぶ)から内側部(ないそくぶ)に向けて刺入され、大腿骨100に刺入されて仮固定される部材である。ピン状部材10は、例えば、金属材料で形成されている。そして、本実施形態で例示するピン状部材10は、先端が円錐状に尖った丸軸状に形成され、針状のピンとして構成されている。尚、ピン状部材10の太さは、大腿骨100に刺そうとした場合にピン状部材10がしなって大腿骨100に刺しこめないことを防ぐために、例えば、0.5mm以上に設定される。また、太すぎるとピン状部材10により生じた孔の自然修復に時間を要するため、ピン状部材10の太さは、例えば、4mm以下に設定される。尚、本実施形態では、骨処置用器具1が用いられることで大腿骨100へ刺入されるピン状部材10として、針状のピンの形態を例示しているが、この通りでなくてもよく、種々の形態のピン状部材に対して、骨処置用器具1が用いられてもよい。例えば、骨処置用器具1は、ドリル、或いはスクリュー等の形態のピン状部材が骨へ刺入される際に用いられてもよい。
【0038】
[骨処置用器具の詳細]
以下、骨処置用器具1の詳細について、更に詳しく説明する。
図1乃至
図5に示すように、骨処置用器具1は、ガイド部材11、本体軸部材12、第1指標部材13、第2指標部材14、複数の第1金属指標部材(金属指標部材)15、複数の第2金属指標部材(金属指標部材)16を備えて構成されている。
【0039】
ガイド部材11、第1指標部材13、及び第2指標部材14は、本体軸部材12に対して、着脱自在に取り付けられるように構成されている。複数の第1金属指標部材15は、第1指標部材13に配置されており、本実施形態では、第1指標部材13の内部に配置されている。複数の第2金属指標部材16は、第2指標部材に配置されており、本実施形態では、第2指標部材14の内部に配置されている。
【0040】
本体軸部材12、第1指標部材13、及び第2指標部材14は、X線が透過する材料である樹脂材料、木材、及び紙のいずれかで形成されている。尚、本実施形態では、本体軸部材12、第1指標部材13、及び第2指標部材14は、例えば、樹脂材料で形成されており、より具体的には、合成樹脂で形成されている。また、本体軸部材12、第1指標部材13、及び第2指標部材14が紙で形成される場合は、材料の紙としては、例えば、強化ダンボール或いは硬質紙が用いられる。また、ガイド部材11、複数の第1金属指標部材15、複数の第2金属指標部材16は、X線の透過を抑制する材料である金属材料で形成されており、例えば、ステンレス鋼で形成されている。
【0041】
[ガイド部材]
図6は、骨処置用器具1の一部を示す図であって、骨処置用器具1のガイド部材11と第2指標部材14とを含む面での断面を含む図である。
図1乃至
図6に示すガイド部材11は、患者の大腿骨100に刺入されるピン状部材10が挿通され、ピン状部材10の大腿骨100への刺入方向をガイドする筒状の部材として設けられている。ガイド部材11は、前述の通り、例えば、ステンレス鋼で形成されており、X線の透過を抑制する金属材料で形成されている。また、ガイド部材11は、直線状に延びる筒状の部材として設けられ、本実施形態では、細長い中空円筒状の部材として形成されている。
【0042】
図1、
図2、及び
図6を参照して、ガイド部材11は、後述する本体軸部材12の長手方向とは異なる方向に延びる状態で、本体軸部材12に設けられた挿通孔24に挿入され、本体軸部材12から片持ち状に延びた状態で本体軸部材12に取付けられるように構成されている。ガイド部材11には、直線状に延びる一方の端部側において、円筒状に拡径した部分である拡径部11aが設けられている。拡径部11aの外周には、オネジ部が形成されており、ガイド部材11が本体軸部材12の挿通孔24に挿入されて本体軸部材12に取り付けられる際に、挿通孔24の内周において部分的に形成されたメネジ部と螺合するように構成されている。即ち、ガイド部材11は、本体軸部材12の挿通孔24に挿入された状態で、拡径部11aのオネジ部が本体軸部材12の挿通孔24におけるメネジ部に螺合することで、本体軸部材12に取付けられるように構成されている。
【0043】
また、ガイド部材11における拡径部11aが設けられた端部には、摘み部11bが設けられている。摘み部11bは、ガイド部材11を本体軸部材12に対して螺合させて取り付ける際に術者によって摘まれて回転操作される操作部分として設けられている。また、摘み部11bは、ガイド部材11の端部において、拡径部11aよりもフランジ状に拡径した段付き部分として設けられており、ガイド部材11を本体軸部材12の挿通孔24において部分的に設けられたメネジ部に螺合させて取り付ける際に本体軸部材12の挿通孔24の縁部分と当接し、ガイド部材11を本体軸部材12に対して位置決めするように構成されている。
【0044】
図5及び
図6を参照して、中空円筒状に形成されて円形断面で直線状に延びるガイド部材11には、その長手方向に貫通するピン挿通孔11cが設けられている。ピン挿通孔11cは、ピン状部材10が挿通される孔として設けられ、円形断面でガイド部材11の長手方向に沿ってガイド部材11を貫通するように構成されている。このため、ピン挿通孔11cは、ガイド部材11における本体軸部材12に取り付けられる一方の端部側である基端側において開口している。そして、ピン挿通孔11cは、ガイド部材11における基端側と反対側の先端側においても開口している。
【0045】
また、ピン挿通孔11cの断面形状は、ピン状部材10の断面形状に対応している。即ち、ガイド部材11の内周面の形状は、ピン状部材10の外周面の形状に対応している。より詳細には、ガイド部材11の内周面の内径は、クリアランスが設けられ、ピン状部材10の外径よりも0.1mm~0.5mm程度大きくなるように設定されている。このような形状により、ガイド部材11は、ピン状部材10がスムーズに挿通されるとともに、ピン状部材10との間のガタつきが抑制されるように構成されている。
【0046】
また、
図1、
図2、及び
図6を参照して、ガイド部材11には、本体軸部材12に取り付けられた状態で本体軸部材12から片持ち状に延びる先端側の端部である先端部11dにおいて、先端側に向かって尖るように形成された部分としての突起が複数設けられている。複数の突起は、ガイド部材11の先端部11dにおいて、ピン挿通孔11cの開口の周方向に沿って並んで設けられている。そして、先端部11dの各突起は、例えば、先端側に向かってV字状の形状で徐々に薄くなるように形成され、その先端において刃先部分を有している。ガイド部材11の先端部11dが大腿骨100に対して当接する状態で配置されると、複数の突起は、その先端の刃先部分において、大腿骨100に対して食い込むようにして係合する。
【0047】
[本体軸部材]
図1乃至
図6に示す本体軸部材12は、直線状に延びる長手方向X1を有する軸状に形成され、ガイド部材11が本体軸部材12の長手方向X1に交際した状態で挿入されて取り付けられるように構成されている。また、本体軸部材12は、後述する第1指標部材13及び第2指標部材14も、本体軸部材12の長手方向X1とは異なる方向に延びる状態で取り付けられるように構成されている。尚、本体軸部材12の長手方向X1については、
図1、
図2、及び
図4において両端矢印X1で示している。また、本体軸部材12は、前述の通り、例えば、合成樹脂で形成されており、X線が透過する樹脂材料で形成されている。
【0048】
図1乃至
図6を参照して、本体軸部材12には、長手方向X1に沿って直列に並んで延びる第1軸部21及び第2軸部22と、第1軸部21及び第2軸部22の間に配置されたフランジ部23とが設けられている。第1軸部21、第2軸部22、及びフランジ部23は、一体に設けられ、第1軸部21、フランジ部23、及び第2軸部22の順番で、本体軸部材12の長手方向X1に沿って直列に並んで設けられている。
【0049】
第1軸部21は、長手方向X1に沿って細長く円柱状に延びる部分として設けられている。
図1乃至
図5を参照して、第1軸部21には、フランジ部23及び第2軸部22と一体に設けられる端部と反対側の端部において、後述する第1指標部材13が取り付けられる取付け孔21aが設けられている。取付け孔21aは、第1軸部21におけるフランジ部23及び第2軸部22と一体に設けられる端部と反対側の端部の外周面において第1軸部21の側方に向かって円形断面で開口した孔として設けられている。そして、取付け孔21aは、本体軸部材12の長手方向X1と直交する方向に向かって延びる孔として設けられている。第1指標部材13の端部が取付け孔21aに嵌合して嵌め込まれることで、第1指標部材13が第1軸部21に取り付けられる。
【0050】
第2軸部22は、長手方向X1に沿って細長く円柱状に延びる部分として設けられ、第1軸部21と長手方向X1に沿って直列に並んで設けられている。第2軸部22は、骨処置用器具1を操作する操作者である術者によって把持されるハンドル部分として設けられている。第2軸部22は、その円形断面の直径が、第1軸部21の円形断面の直径よりも大きく設定され、第1軸部21よりも太く形成されており、術者が把持し易い寸法に設定されている。
【0051】
図1乃至
図6を参照して、フランジ部23は、第1軸部21と第2軸部22との間に設けられ、本体軸部材12の長手方向X1に垂直な方向に沿って出っ張るように広がる部分として設けられている。フランジ部23は、略円盤状の部分として設けられ、略円盤状の外周部分には、180°以上の角度範囲に亘って延びる円弧状の外周部分23aと短く直線状に延びる平坦な外周部分23bとが設けられている。そして、フランジ部23には、ガイド部材11が挿通される挿通孔24と、後述する第2指標部材14を取り付けるための複数の取付け孔25a、25b及び複数の取付け孔26a、26bとが設けられている。
【0052】
フランジ部23の挿通孔24は、本体軸部材12の長手方向X1とは異なる方向に延びる状態で挿入されるガイド部材11が挿通される孔として設けられ、円形断面で本体軸部材12の長手方向X1に垂直な方向に沿ってフランジ部23を貫通するように構成されている。このため、挿通孔24は、フランジ部23の外周面にて、長手方向X1と垂直な方向の両側において開口している。また、
図6を参照して、挿通孔24には、フランジ部23を貫通して延びる一方の端部側において、段状に拡径した拡径孔部24aが設けられている。拡径孔部24aの内周にはメネジ部が形成されており、拡径孔部24aの内周のメネジ部は、ガイド部材11の拡径部11aの外周のオネジ部と螺合するように構成されている。ガイド部材11は、フランジ部23の挿通孔24に挿通された状態で、ガイド部材11の拡径部11aのオネジ部が挿通孔24の拡径孔部24aの内周のメネジ部に螺合することで、本体軸部材12に取り付けられる。
【0053】
フランジ部23における複数の取付け孔25a、25bは、後述の第2指標部材14の端部が嵌め込まれることで第2指標部材14が取り付けられる孔として設けられている。複数の取付け孔25a、25bは、患者の側面方向(患者の左右方向)における一方側の大腿骨100に対して骨処置用器具1を用いた処置が行われる際に第2指標部材14が取り付けられる孔として構成されている。例えば、複数の取付け孔25a、25bは、患者の側面方向における一方側である左側の大腿骨100に対して骨処置用器具1を用いた処置が行われる際に第2指標部材14が取り付けられる孔として構成されている。
【0054】
また、複数の取付け孔25a、25bのそれぞれは、フランジ部23における円弧状の外周部分23aにおいて円形断面で開口した孔として設けられている。そして、複数の取付け孔25a、25bは、本体軸部材12の周方向に沿って延びるフランジ部23の外周部分23aに沿って並んで開口するように配置されている。また、各取付け孔25a、25bは、本体軸部材12の長手方向X1と直交する方向に向かって延びる孔として設けられている。第2指標部材14が複数の取付け孔25a、25bに取り付けられる際には、術者によって選択された複数の取付け孔25a及び25bのうちのいずれかに対して第2指標部材14が取り付けられる。術者は、患者の大腿骨100とピン状部材10が患者の大腿骨100に対して刺入される位置及び方向との関係に応じて、第2指標部材14による確認を行い易くする観点から、複数の取付け孔25a及び25bのうちのいずれかを選択し、その選択した取付け孔25a又は25bに第2指標部材14を取り付ける。第2指標部材14の端部が取付け孔25a又は25bに嵌合して嵌め込まれることで、第2指標部材14が本体軸部材12に対してフランジ部23において取り付けられる。
【0055】
尚、本体軸部材12は、上記のように、フランジ部23の外周部分23aに沿って並んで開口する複数の取付け孔25a、25bが設けられており、複数の取付け孔25a、25bのいずれにおいても、第2指標部材14が取付け可能に構成されている。このため、本体軸部材12は、本体軸部材12の周方向における複数個所において第2指標部材14が取付け可能に設けられている。
【0056】
フランジ部23における複数の取付け孔26a、26bは、複数の取付け孔25a、25bと同様に、第2指標部材14の端部が嵌め込まれることで第2指標部材14が取り付けられる孔として設けられている。複数の取付け孔25a、25bは、患者の側面方向(患者の左右方向)における他方側の大腿骨100に対して骨処置用器具1を用いた処置が行われる際に第2指標部材14が取り付けられる孔として構成されている。例えば、複数の取付け孔26a、26bは、患者の側面方向における他方側である右側の大腿骨100に対して骨処置用器具1を用いた処置が行われる際に第2指標部材14が取り付けられる孔として構成されている。
【0057】
複数の取付け孔26a、26bは、フランジ部23において、フランジ部23を本体軸部材12の長手方向X1に沿って見た状態で、複数の取付け孔25a、25bに対して、挿通孔24の位置を中心とした線対称の位置に配置されている。また、複数の取付け孔26a、26bのそれぞれは、フランジ部23における円弧状の外周部分23aにおいて円形断面で開口した孔として設けられている。そして、複数の取付け孔26a、26bは、本体軸部材12の周方向に沿って延びるフランジ部23の外周部分23aに沿って並んで開口するように配置されている。また、各取付け孔26a、26bは、本体軸部材12の長手方向X1と直交する方向に向かって延びる孔として設けられている。第2指標部材14が複数の取付け孔26a、26bに取り付けられる際には、術者によって選択された複数の取付け孔26a及び26bのうちのいずれかに対して第2指標部材14が取り付けられる。術者は、患者の大腿骨100とピン状部材10が患者の大腿骨100に対して刺入される位置及び方向との関係に応じて、第2指標部材14による確認を行い易くする観点から、複数の取付け孔26a及び26bのうちのいずれかを選択し、その選択した取付け孔26a又は26bに第2指標部材14を取り付ける。第2指標部材14の端部が取付け孔26a又は26bに嵌合して嵌め込まれることで、第2指標部材14が本体軸部材12に対してフランジ部23において取り付けられる。
【0058】
尚、本体軸部材12は、上記のように、フランジ部23の外周部分23aに沿って並んで開口する複数の取付け孔26a、26bが設けられており、複数の取付け孔26a、26bのいずれにおいても、第2指標部材14が取付け可能に構成されている。このため、本体軸部材12は、本体軸部材12の周方向における複数個所において第2指標部材14が取付け可能に設けられている。
【0059】
[第1指標部材]
図7(A)及び
図7(B)は、骨処置用器具1の斜視図であって、
図7(A)は、骨処置用器具1において規定される第1の面S1を説明するための図であり、
図7(B)は、骨処置用器具1において規定される第2の面S2を説明するための図である。
図1乃至
図7に示す第1指標部材13は、本体軸部材12の長手方向X1とは異なる方向に本体軸部材12から片持ち状に延びる状態で本体軸部材12に取り付けられるとともに、ガイド部材11の位置を指標する部材として設けられている。また、第1指標部材13は、骨処置用器具1を操作する術者が患者の正面方向から骨処置用器具1を見た状態でガイド部材11の位置を指標するための部材として設けられている。第1指標部材13は、前述の通り、例えば、合成樹脂で形成されており、X線が透過する樹脂材料で形成されている。
【0060】
第1指標部材13は、円形断面で直線状に延びる棒状の部材として設けられている。第1指標部材13は、棒状に延びる一方の端部において、本体軸部材12の第1軸部21に設けられた取付け孔21aに嵌合して嵌め込まれることで、本体軸部材12に取り付けられるように構成されている。そして、第1指標部材13は、その端部が本体軸部材12の取付け孔21aに嵌合して取り付けられることで、本体軸部材12の長手方向X1とは異なる方向に本体軸部材12から片持ち状に延びる状態で本体軸部材12に取り付けられる。また、本体軸部材12において、第1指標部材13が取り付けられる取付け孔21aとガイド部材11が挿通される挿通孔24とは、本体軸部材12の長手方向X1に垂直な方向に沿って、互いに平行に延びるように設けられている。このため、第1指標部材13は、その端部が本体軸部材12の取付け孔21aに嵌合して取り付けられることで、本体軸部材12に対して、ガイド部材11が本体軸部材12から延びる方向と平行な方向に沿って、本体軸部材12から片持ち状に延びる状態で取り付けられるように構成されている。
【0061】
第1指標部材13は、上記のように、ガイド部材11が本体軸部材12から延びる方向と平行な方向に沿って本体軸部材12から延びるように本体軸部材に取り付けられる。更に、第1指標部材13は、本体軸部材12においてガイド部材11が取り付けられる位置であるフランジ部23の挿通孔24の位置に対して、本体軸部材12の長手方向X1における異なる位置である第1軸部21の端部の取付け孔21aの位置において、本体軸部材12に取り付けられる。このため、第1指標部材13は、本体軸部材12に対して、本体軸部材12の長手方向X1におけるガイド部材11が取り付けられる位置と異なる位置で、ガイド部材11が延びる方向を含む面として規定される第1の面S1に沿って延びるように取り付けられる。そして、第1の面S1は、第1指標部材13が延びる方向とガイド部材11が延びる方向とを含む面として規定される。尚、本実施形態では、第1指標部材13が延びる方向とガイド部材11が延びる方向とを含む面として規定される第1の面S1には、本体軸部材12の長手方向X1も含まれている。また、第1指標部材13は、第1の面S1において、本体軸部材12に対して、ガイド部材11が本体軸部材12から延びる側と同じ側において、延びるように設けられている。尚、第1指標部材13が延びる方向とガイド部材11が延びる方向とを含む面として規定される第1の面S1については、
図3及び
図4においては、二点鎖線S1にて模式的に示しており、
図7(A)においては、二点鎖線のハッチングで示す面領域S1として模式的に示している。
【0062】
また、
図3を参照して、第1指標部材13には、本体軸部材12に取り付けられた状態で本体軸部材12から片持ち状に延びる先端側において、中空円筒状に形成された筒状の部分が設けられている。このため、第1指標部材13には、本体軸部材12から延びる先端側において、第1指標部材13の長手方向に沿って円柱状の空間として延びる中空領域としての金属指標部材収容領域13aが設けられている。金属指標部材収容領域13aは、後述する複数の第1金属指標部材15を収容する領域を構成している。そして、第1指標部材13の先端側に設けられた金属指標部材収容領域13aには、複数の第1金属指標部材15が分散して配置される。また、第1指標部材13の先端側の端部には、金属指標部材収容領域13aの端部を塞ぐ蓋部材13bが嵌め込まれて固定されている。
【0063】
また、
図1乃至
図3及び
図5を参照して、第1指標部材13における本体軸部材12に取り付けられる端部側には、マーク13cが刻印されている。マーク13cは、例えば、円の形状を描いたマークとして第1指標部材13に刻印されている。そして、
図1、
図2及び
図4を参照して、本体軸部材12の第1軸部21における取付け孔21aの近傍には、マーク21bが刻印されている。マーク21bは、第1指標部材13に設けられたマーク13cに対応する形状のマークとして描かれており、円の形状を描いたマークとして第1軸部21に刻印されている。骨処置用器具1を操作する術者は、本体軸部材12に対して第1指標部材13を取り付ける際に、同じ円の形状を描いた第1指標部材13のマーク13cと第1軸部21の取付け孔21aの近傍のマーク21bとを参照して対応させることができる。これにより、術者は、マーク13cとマーク21bとを対応させ、迷うことなく、第1指標部材13を第1軸部21の取付け孔21aに対して容易に嵌め込んで取り付けることができる。
【0064】
[第2指標部材]
図1乃至
図7に示す第2指標部材14は、本体軸部材12の長手方向X1とは異なる方向に本体軸部材12から片持ち状に延びる状態で本体軸部材12に取り付けられるとともに、ガイド部材11の位置を指標する部材として設けられている。また、第2指標部材14は、骨処置用器具1を操作する術者が患者の側面方向から骨処置用器具1を見た状態でガイド部材11の位置を指標するための部材として設けられている。第2指標部材14は、前述の通り、例えば、合成樹脂で形成されており、X線が透過する樹脂材料で形成されている。
【0065】
第2指標部材14は、円形断面で直線状に延びる棒状の部材として設けられている。第2指標部材14は、棒状に延びる一方の端部において、本体軸部材12のフランジ部23に設けられた複数の取付け孔25a、25bのいずれか又は複数の取付け孔26a、26bのいずれかに嵌合して嵌め込まれることで、本体軸部材12に取り付けられるように構成されている。そして、第2指標部材14は、その端部が本体軸部材12の取付け孔25a、25b又は取付け孔26a、26bに嵌合して取り付けられることで、本体軸部材12の長手方向X1とは異なる方向に本体軸部材12から片持ち状に延びる状態で本体軸部材12に取り付けられる。
【0066】
また、
図2、
図3、及び
図6を参照して、第2指標部材14には、本体軸部材12に対して取り付けられる端部において、取付け用突起部14cが設けられている。取付け用突起部14cは、第2指標部材14の長手方向における一方の端部で縮径して円柱形状で突出した突起部として設けられている。そして、取付け用突起部14cは、本体軸部材12の取付け孔25a、25b又は取付け孔26a、26bに対して嵌合して嵌るように構成されている。第2指標部材14は、その端部の取付け用突起部14cが本体軸部材12のフランジ部23の取付け孔25a、25b又は取付け孔26a、26bに対して嵌め込まれることで、本体軸部材12に取り付けられる。即ち、第2指標部材14は、その端部が本体軸部材12に嵌合して連結されることで、本体軸部材12から片持ち状に延びる状態で本体軸部材12に取り付けられる。
【0067】
尚、本体軸部材12の長さ方向X1における取付け孔25a、25b、26a、及び26bの位置は、いずれも、本体軸部材12の長さ方向X1における挿通孔24の位置と同じ位置に設けられている。そして、取付け孔25a、25b、26a、及び26aは、いずれも、本体軸部材12のフランジ部23において、挿通孔24が延びる方向と交差する方向に沿って延びるように設けられている。更に、本体軸部材12において、取付け孔25a、25b、26a、及び26aは、いずれも、本体軸部材12の長手方向X1に垂直な方向に延びる挿通孔24と同様に、本体軸部材12の長手方向X1に垂直な方向に沿って延びるように設けられている。このため、第2指標部材14は、その端部が取付け孔25a、25b、26a、又は26bに嵌合して取り付けられることで、本体軸部材12の長さ方向X1におけるガイド部材11が取り付けられる位置と同じ位置で、ガイド部材11が延びる方向とは異なる方向に沿って、ガイド部材11と同様に、本体軸部材12の長手方向X1に垂直な方向に沿って延びるように、本体軸部材12に取り付けられる。
【0068】
第2指標部材14は、上記のように、本体軸部材12の長手方向X1におけるガイド部材11が取り付けられる位置と同じ位置で、ガイド部材11が延びる方向とは異なる方向に沿って延びるように、本体軸部材12に取付けられる。更に、第2指標部材14は、第1指標部材13が延びる方向とガイド部材11が延びる方向とを含む面である第1の面S1に沿って本体軸部材12の長手方向X1に垂直に延びるガイド部材11と同様に、本体軸部材12の長手方向X1に垂直に延びるように、本体軸部材12に取り付けられる。このため、第1指標部材13は、本体軸部材12に対して、本体軸部材12の長手方向X1におけるガイド部材11が取り付けられる位置と同じ位置で、第1の面S1に垂直な面であってガイド部材11が延びる方向を含む面として規定される第2の面S2に沿って、ガイド部材11が延びる方向とは異なる方向に延びるように取り付けられる。尚、第1の面S1に垂直な面であってガイド部材11が延びる方向を含む面として規定される第2の面S2については、
図4においては、二点鎖線S2で模式的に示しており、
図7(B)においては、二点鎖線のハッチングで示す面領域S2として模式的に示している。
【0069】
また、
図3を参照して、第2指標部材14には、本体軸部材12に取り付けられた状態で本体軸部材12から片持ち状に延びる先端側において、中空円筒状に形成された筒状の部分が設けられている。このため、第2指標部材14には、本体軸部材12から延びる先端側において、第2指標部材14の長手方向に沿って円柱状の空間として延びる中空領域としての金属指標部材収容領域14aが設けられている。金属指標部材収容領域14aは、後述する複数の第2金属指標部材16を収容する領域を構成している。そして、第2指標部材14の先端側に設けられた金属指標部材収容領域14aには、複数の第2金属指標部材16が分散して配置されている。また、第2指標部材14の先端側の端部には、金属指標部材収容領域14aの端部を塞ぐ蓋部材14bが嵌め込まれて固定されている。
【0070】
また、
図1乃至
図3及び
図5を参照して、第2指標部材14における本体軸部材12に取り付けられる端部側には、マーク14dが刻印されている。マーク14dは、例えば、四角形の形状を描いたマークとして第2指標部材14に刻印されている。そして、
図1及び
図2を参照して、本体軸部材12における取付け孔25a、25b、26a及び26bが設けられたフランジ部23の外周部分23aには、マーク23cが刻印されている。マーク23cは、第2指標部材14に設けられたマーク14dに対応する形状のマークとして描かれており、四角形の形状を描いたマークとして第2指標部材14に刻印されている。骨処置用器具1を操作する術者は、本体軸部材12に対して第2指標部材14を取り付ける際に、同じ四角形の形状を描いた第2指標部材14のマーク14dとフランジ部23のマーク23cとを参照して対応させることができる。これにより、術者は、マーク14dとマーク23cとを対応させ、迷うことなく、第2指標部材14をフランジ部23に設けられた取付け孔25a、25b、26a又は26bに対して容易に嵌め込んで取り付けることができる。
【0071】
[金属指標部材]
図1及び
図3に示す第1金属指標部材15及び第2金属指標部材16は、第1指標部材13及び第2指標部材14のそれぞれに配置され、ガイド部材11に挿通されて大腿骨100に刺入されるピン状部材10の位置を指標する本実施形態の金属指標部材として設けられている。また、第1金属指標部材15及び第2金属指標部材16は、前述の通り、例えば、ステンレス鋼で形成されており、X線の透過を抑制する金属材料で形成されている。
【0072】
第1金属指標部材15は、第1指標部材13に配置される金属指標部材として設けられ、本体軸部材12から片持ち状に延びる第1指標部材13の先端側において配置されている。第1金属指標部材15は、X線の透視下において、ガイド部材11に挿通されて大腿骨100に刺入されるピン状部材10の位置を指標するための金属指標部材として設けられている。また、第1金属指標部材15は、骨処置用器具1を操作する術者が、患者の正面方向の視点のX線の透視画像を見た際に、ガイド部材11の位置を指標するための金属指標部材として設けられている。
【0073】
第1金属指標部材15は、本実施形態では、円柱状の金属部材として設けられ、骨処置用器具1において複数設けられており、本体軸部材12から片持ち状に延びる第1指標部材13の先端側において、複数配置されている。第1指標部材13に配置された複数の第1金属指標部材15は、第1指標部材13が延びる方向に沿って分散して並んで配置されている。また、本実施形態では、複数の第1金属指標部材15は、第1指標部材13の先端側において、等間隔に並んで分散して配置されている。
【0074】
図3を参照して、複数の第1金属指標部材15は、第1指標部材13の先端側の内部に設けられた円柱状の金属指標部材収容領域13a内において第1指標部材13が延びる方向に沿って分散して並んで配置されている。円柱状の第1金属指標部材15の直径寸法は、第1指標部材13における円柱状の中空領域である金属指標部材収容領域13aの円形断面の直径寸法よりも少し小さい寸法或いは同等の寸法に設定されている。そして、第1金属指標部材15は、第1指標部材13の金属指標部材収容領域13a内に挿入されて収容されることで、第1指標部材13の先端側に配置されている。
【0075】
また、第1指標部材13の金属指標部材収容領域13a内には、複数の第1金属指標部材15とともに、複数のスペーサ部材27も分散して配置されている。スペーサ部材27は、X線が透過する樹脂材料である合成樹脂で形成され、円柱状の部材として形成されている。円柱状のスペーサ部材27の直径寸法は、第1指標部材13における円柱状の中空領域である金属指標部材収容領域13aの円形断面の直径寸法よりも少し小さい寸法或いは同等の寸法に設定されている。そして、スペーサ部材27は、第1指標部材13の金属指標部材収容領域13a内に挿入されて収容されることで、第1指標部材13の先端側に配置されている。
【0076】
上記のように、第1指標部材13の金属指標部材収容領域13a内には、複数の第1金属指標部材15とともに、複数のスペーサ部材27が配置されている。そして、複数の第1金属指標部材15及び複数のスペーサ部材27は、第1指標部材13の金属指標部材収容領域13a内において、第1金属指標部材15とスペーサ部材27とが順番に並んだ状態で配置されている。即ち、第1指標部材13の先端側の金属指標部材収容領域13a内においては、第1金属指標部材15とスペーサ部材27とが、第1指標部材13が延びる方向に沿って交互に並んで配置されている。このように、第1指標部材13の先端側においては、複数の第1金属指標部材15は、複数のスペーサ部材27と交互に並ぶことで、第1指標部材13が延びる方向に沿って分散して並んで配置されている。尚、第1指標部材13の先端側の端部には、金属指標部材収容領域13aを塞ぐ蓋部材13bが取り付けられていることで、複数の第1金属指標部材15及び複数のスペーサ部材27は、第1指標部材13の金属指標部材収容領域13aから脱落することなく、第1指標部材13内で保持されている。
【0077】
第2金属指標部材16は、第2指標部材14に配置される金属指標部材として設けられ、本体軸部材12から片持ち状に延びる第2指標部材14の先端側において配置されている。第2金属指標部材16は、X線の透視下において、ガイド部材11に挿通されて大腿骨100に刺入されるピン状部材10の位置を指標するための金属指標部材として設けられている。また、第2金属指標部材16は、骨処置用器具1を操作する術者が、患者の側面方向の視点のX線の透視画像を見た際に、ガイド部材11の位置を指標するための金属指標部材として設けられている。
【0078】
第2金属指標部材16は、本実施形態では、円柱状の金属部材として設けられ、骨処置用器具1において複数設けられており、本体軸部材12から片持ち状に延びる第2指標部材14の先端側において、複数配置されている。第2指標部材14に配置された複数の第2金属指標部材16は、第2指標部材14が延びる方向に沿って分散して並んで配置されている。また、本実施形態では、複数の第2金属指標部材16は、第2指標部材14の先端側において、等間隔に並んで分散して配置されている。
【0079】
図3を参照して、複数の第2金属指標部材16は、第2指標部材14の先端側の内部に設けられた円柱状の金属指標部材収容領域14a内において第2指標部材14が延びる方向に沿って分散して並んで配置されている。円柱状の第2金属指標部材16の直径寸法は、第2指標部材14における円柱状の中空領域である金属指標部材収容領域14aの円形断面の直径寸法よりも少し小さい寸法或いは同等の寸法に設定されている。そして、第2金属指標部材16は、第2指標部材14の金属指標部材収容領域14a内に挿入されて収容されることで、第2指標部材14の先端側に配置されている。
【0080】
また、第2指標部材14の金属指標部材収容領域14a内には、複数の第2金属指標部材16とともに、複数のスペーサ部材28も分散して配置されている。スペーサ部材28は、X線が透過する樹脂材料である合成樹脂で形成され、円柱状の部材として形成されている。円柱状のスペーサ部材28の直径寸法は、第2指標部材14における円柱状の中空領域である金属指標部材収容領域14aの円形断面の直径寸法よりも少し小さい寸法或いは同等の寸法に設定されている。そして、スペーサ部材28は、第2指標部材14の金属指標部材収容領域14a内に挿入されて収容されることで、第2指標部材14の先端側に配置されている。
【0081】
上記のように、第2指標部材14の金属指標部材収容領域14a内には、複数の第2金属指標部材16とともに、複数のスペーサ部材28が配置されている。そして、複数の第2金属指標部材16及び複数のスペーサ部材28は、第2指標部材14の金属指標部材収容領域14a内において、第2金属指標部材16とスペーサ部材28とが順番に並んだ状態で配置されている。即ち、第2指標部材14の先端側の金属指標部材収容領域14a内においては、第2金属指標部材16とスペーサ部材28とが、第2指標部材14が延びる方向に沿って交互に並んで配置されている。このように、第2指標部材14の先端側においては、複数の第2金属指標部材16は、複数のスペーサ部材28と交互に並ぶことで、第2指標部材14が延びる方向に沿って分散して並んで配置されている。尚、第2指標部材14の先端側の端部には、金属指標部材収容領域14aを塞ぐ蓋部材14bが取り付けられていることで、複数の第2金属指標部材16及び複数のスペーサ部材28は、第2指標部材14の金属指標部材収容領域14aから脱落することなく、第2指標部材14内で保持されている。
【0082】
[大腿骨へのピン状部材の刺入処置が行われる際の骨処置用器具の作動]
次に、骨処置用器具1が用いられて患者の大腿骨100に対してピン状部材10が刺入される処置が行われる際の骨処置用器具1の作動について説明する。尚、本実施形態では、患者の左側の大腿骨100に対してピン状部材10が刺入される処置が行われる際の骨処置用器具1の作動を例にとって説明する。また、本実施形態では、骨処置用器具1が用いられる前の段階の準備として、患者の大腿骨100の外側の軟部組織が切開されること等により、骨処置用器具1を大腿骨100の外側部100aに到達させる準備が完了している前提で説明する。さらに、本実施形態では、X線装置として構成される透過装置が、手術台に載せられた患者の股関節を患者の正面方向における前方側(仰臥した状態の患者に対して上方側)及び患者の側面方向(患者の左右方向)における左側から撮影するように配置されている前提で説明する。
【0083】
骨処置用器具1が用いられる際には、まず、ガイド部材11、第1指標部材13、及び第2指標部材14が、本体軸部材12に対して取り付けられる。即ち、ガイド部材11が挿通孔24に挿通されて螺合することで本体軸部材12に取り付けられ、第1指標部材13が取付け孔21aに嵌合することで本体軸部材12に取り付けられ、第2指標部材14が取付け孔25a、25b、26a、及び26bのいずれかに嵌合することで本体軸部材12に取り付けられる。尚、本実施形態では、第2指標部材14が取付け孔25aに嵌合することで本体軸部材12に取り付けられた形態を例示している。
【0084】
図8乃至
図11は、ピン状部材10を大腿骨100に対して刺入する処置において骨処置用器具1が用いられている状態を模式的に示す図である。尚、
図8は、骨処置用器具1が用いられている状態を患者の正面方向における前方側から斜めに見た状態を模式的に示している。
図9は、骨処置用器具1が用いられている状態を患者の側面方向における左側から斜めに見た状態を模式的に示している。
図10は、骨処置用器具1が用いられている状態を患者の正面方向における前方側から見た状態を模試的に示している。
図11は、骨処置用器具1が用いられている状態を患者の側面方向における左側から見た状態を模式的に示している。尚、
図8及び
図9においては、大腿骨100における近位側の部分、及び、骨処置用器具1のみが図示されており、その他の要素については、図示が省略されている。即ち、
図8及び
図9においては、患者の軟部組織、大腿骨100における近位側の部分以外の部分、及び、骨処置用器具1を操作する術者の図示は省略されている。また、
図10及び
図11においては、患者の大腿部の一部、及び、骨処置用器具1のみが図示されており、その他の要素については、図示が省略されている。
【0085】
図8乃至
図11を参照して、本体軸部材12にガイド部材11、第1指標部材13、及び第2指標部材14を取り付けた術者は、ガイド部材11の先端部11dを大腿骨100の外側部100aにおけるピン状部材10を刺入する位置に対して当接させる。尚、
図8乃至
図11では、ガイド部材11の先端部11dが大腿骨100の外側部100aのうち大転子100bの下側(患者の上下方向における下側)に配置された状態が図示されている。ガイド部材11の先端部11dを大腿骨100の外側部100aにおけるピン状部材10を刺入する位置に対して当接させると、術者は、第1指標部材13を患者の正面方向における前方に配置させ、第1指標部材13とガイド部材11とが配置される第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置させる。更に、第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置させた状態で、第2指標部材14を患者の側面方向における左側に配置させ、第2指標部材14とガイド部材11とが配置される第2の面S2を患者の側面方向に沿って配置させる。
【0086】
術者は、上記のように、第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置させ、第2の面S2を患者の側面方向に沿って配置させるように、骨処置用器具1を操作する。そして、
図10を参照して、術者は、第1指標部材13を患者の軟部組織101の外部から、第1指標部材13とガイド部材11とが配置される第1の面S1に沿って第1指標部材13を見ることで、患者の正面方向において、ガイド部材11の位置及び方向を確認しながら、ガイド部材11の位置及び方向を調整する。更に、
図11を参照して、術者は、第2指標部材14を患者の軟部組織101の外部から、本体軸部材12の長手方向X1に垂直で第2指標部材14が配置される第2の面S2に沿って第2指標部材14を見ることで、患者の側面方向において、ガイド部材11の位置及び方向を確認しながら、ガイド部材11の位置及び方向を調整する。このようにして、術者は、患者の正面方向及び側面方向の両方の方向において、ガイド部材11に挿通されるピン状部材10が大腿骨100に対して刺入される位置及び方向を確認しながら、ピン状部材10が刺入される位置及び方向を調整する。
【0087】
また、術者は、透過装置のモニターにおいても、
図10に示す視点と同様の視点の透視画像を見ることで、第1指標部材13に配置された第1金属指標部材15が指標するピン状部材10がガイド部材11に挿通されて更に大腿骨100に対して刺入される位置及び方向を確認しながらその位置及び方向を調整する。更に、術者は、透過装置のモニターにおいて、
図11に示す視点と同様の視点の透視画像を見ることで、第2指標部材14に配置された第2金属指標部材16が指標するピン状部材10がガイド部材11に挿通されて更に大腿骨100に対して刺入される位置及び方向を確認しながらその位置及び方向を調整する。
【0088】
図12及び
図13は、ピン状部材10を大腿骨100に対して刺入する処置において骨処置用器具1が用いられている状態を模式的に示す図であって、透過装置のモニター200で見える透視画像を示す図である。尚、
図12は、骨処置用器具1が用いられている状態を患者の正面方向における前方側から撮影した透視画像を示しており、
図10に示す状態を透過装置で撮影した結果が、
図12で示す透視画像として表示される。また、
図13は、骨処置用器具1が用いられている状態を患者の側面方向における左側から撮影した透視画像を示しており、
図11に示す状態を透過装置で撮影した結果が、
図13で示す透視画像として表示される。尚、
図12及び
図13と以下の説明とにおいては、骨処置用器具1の各部材及び大腿骨100の像としてモニター200に投影されている像については、対応する骨処置用器具1の各部材及び大腿骨100の符号の前に「M」を付した符号で表記することで、図示及び説明する。
【0089】
透過装置で撮影される透視画像においては、X線が透過する樹脂材料で形成された本体軸部材12、第1指標部材13、及び第2指標部材14の像は表示されず、X線の透過を抑制する金属材料で形成されたガイド部材11、第1金属指標部材15、及び第2金属指標部材16の像は表示される。このため、
図12を参照して、患者の正面方向における前方側から撮影した透視画像においては、大腿骨100の像M100と、ガイド部材11の像M11と、ガイド部材11に挿通されて更に大腿骨100に刺入されるピン状部材10の刺入位置及び刺入方向を指標する第1金属指標部材15の像M15とが、表示される。尚、第1金属指標部材15は、第1指標部材13において分散して並んで配置されている。このため、患者の正面方向から撮影した透視画像においては、第1金属指標部材15の像M15は、破線のように複数分散して並んだ状態で表示される。また、
図13を参照して、患者の側面方向における左側から撮影した透視画像においては、大腿骨100の像M100と、ガイド部材11の像M11と、ガイド部材11に挿通されて更に大腿骨100に刺入されるピン状部材10の刺入位置及び刺入方向を指標する第2金属指標部材16の像M16とが、表示される。尚、第2金属指標部材16は、第2指標部材14において分散して並んで配置されている。このため、患者の側面方向から撮影した透視画像においては、第2金属指標部材16の像M16は、破線のように複数分散して並んだ状態で表示される。
【0090】
術者は、第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置させ、第2の面S2を患者の側面方向に沿って配置させた状態で、透過装置のモニター200に表示される透視画像を確認する。まず、
図12を参照して、術者は、患者の正面方向から撮影した透視画像を見ることで、ガイド部材11の像M11の位置及び方向と、複数の第1金属指標部材15の像M15が並ぶ位置及び方向とを確認する。ガイド部材11の像M11と複数の第1金属指標部材15の像M15とによって、患者の正面方向の視点において、大腿骨100に対するガイド部材11の位置及び方向と、ガイド部材11に挿通されるピン状部材10が大腿骨100へと刺入される位置及び方向とが、示されることになる。術者は、患者の正面方向の透視画像を見て、像M11の位置及び方向と複数の像M15が並ぶ位置及び方向とを確認しながら、像M11及び像M15の位置及び方向が、目標とするピン状部材10の刺入位置及び刺入方向と重なるように、骨処置用器具1を操作し、ガイド部材11に挿通されるピン状部材10が大腿骨100に対して刺入される位置及び方向を調整する。
【0091】
更に、
図13を参照して、術者は、患者の側面方向から撮影した透視画像を見ることで、ガイド部材11の像M11の位置及び方向と、複数の第2金属指標部材16の像M16が並ぶ位置及び方向とを確認する。ガイド部材11の像M11と複数の第2金属指標部材16の像M16とによって、患者の側面方向の視点において、大腿骨100に対するガイド部材11の位置及び方向と、ガイド部材11に挿通されるピン状部材10が大腿骨100へと刺入される位置及び方向とが、示されることになる。術者は、患者の側面方向の透視画像を見て、像M11の位置及び方向と複数の像M16が並ぶ位置及び方向とを確認しながら、像M11及び像M16の位置及び方向が、目標とするピン状部材10の刺入位置及び刺入方向と重なるように、骨処置用器具1を操作し、ガイド部材11に挿通されるピン状部材10が大腿骨100に対して刺入される位置及び方向を調整する。
【0092】
上記のようにして、術者は、患者の正面方向の透視画像と側面方向の透視画像とを見ることで、患者の正面方向及び側面方向の両方の方向において、ガイド部材11に挿通されるピン状部材10が大腿骨100に対して刺入される位置及び方向を確認しながら、ピン状部材10が刺入される位置及び方向を調整する。
【0093】
ピン状部材10が大腿骨100に対して刺入される位置及び方向の調整が完了すると、術者は、骨処置用器具1の大腿骨100に対する位置及び姿勢を維持したまま、ガイド部材11にピン状部材10を挿通させ、ピン状部材10を大腿骨100に刺入する。このとき、術者は、患者の正面方向の透視画像において、ピン状部材10の像が、複数の第1金属指標部材15の像である複数の像M15と順番に重なることを確認しながら、ピン状部材10を大腿骨100に対して刺入する。更に、術者は、患者の側面方向の透視画像において、ピン状部材10の像が、複数の第2金属指標部材16の像である複数の像M16の一部と順番に重なることを確認しながら、ピン状部材10を大腿骨100に対して刺入する。このようにして、ピン状部材10は、大腿骨100に対して、上述のように確認されて調整された刺入位置及び刺入方向で、刺入される。
【0094】
ピン状部材10の大腿骨100への刺入が終了すると、ピン状部材10が大腿骨100に刺入された状態のまま、骨処置用器具1がピン状部材10から取り外される。即ち、ガイド部材11からピン状部材10が抜き出された状態となるように骨処置用器具1が患者から離れるように移動され、骨処置用器具1がピン状部材10から取り外される。これにより、患者の大腿骨100に対してピン状部材10を刺入する処置が完了する。尚、大腿骨100へのピン状部材10の刺入処置が終了すると、引き続き、手術における次の処置が患者に施される。
【0095】
[本実施形態の作用及び効果]
以上説明したように、本実施形態によると、ガイド部材11が本体軸部材12の長手方向X1とは異なる方向に延びる状態で取り付けられた本体軸部材12からガイド部材11とは異なる位置で本体軸部材12の長手方向X1とは異なる方向に延びる第1指標部材13が、ガイド部材11が延びる方向を含む第1の面S1に沿って延びてガイド部材11の位置を指標するように構成される。即ち、ガイド部材11が配置される面である第1の面S1に沿って第1指標部材13も延びるように配置され、第1の面S1は、第1指標部材13が延びる方向とガイド部材11が延びる方向とを含む面として規定される。そして、骨処置用器具1を操作する術者が、第1指標部材13とガイド部材11とが配置される第1の面S1に沿って第1指標部材13を見る場合、第1の面S1に沿った方向において、第1指標部材13とガイド部材11とが重なった状態で配置されることになる。このため、術者は、第1指標部材13とガイド部材11とが配置される第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置し、第1の面S1に沿って第1指標部材13を見るだけで、患者の正面方向において、第1指標部材13が指標するガイド部材11の位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。更に、術者は、第1指標部材13を見るだけで、患者の正面方向において、第1指標部材13によって指標されるガイド部材11に挿通されるピン状部材10の位置及び方向も術者の経験によらずに容易に把握することができる。
【0096】
更に、本実施形態によると、ガイド部材11が本体軸部材12の長手方向X1とは異なる方向に延びる状態で取り付けられた本体軸部材12から本体軸部材12の長手方向X1におけるガイド部材11と同じ位置で本体軸部材12の長手方向X1とは異なる方向に延びる第2指標部材14が、第1の面S1に垂直でガイド部材11が延びる方向を含む第2の面S2に沿って延びてガイド部材11の位置を指標するように構成される。即ち、ガイド部材11及び第1指標部材13が配置される第1の面S1と垂直でガイド部材11が配置される面である第2の面S2に沿って第2指標部材14が延びるように配置される。そして、骨処置用器具1を操作する術者が、第1の面S1に垂直で第2指標部材14とガイド部材11とが配置される第2の面S2に沿って第2指標部材14を見る場合、第2の面S2に沿った方向において、第2指標部材14とガイド部材11とが重なった状態で配置されることになる。このため、術者は、第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置するとともに、第2指標部材14とガイド部材11とが配置される第2の面S2を患者の側面方向に沿って配置し、第2の面S2に沿って第2指標部材14を見るだけで、患者の側面方向において、第2指標部材14が指標するガイド部材11の位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。更に、術者は、第2指標部材14を見るだけで、患者の側面方向において、第2指標部材14によって指標されるガイド部材11に挿通されるピン状部材10の位置及び方向も術者の経験によらずに容易に把握することができる。
【0097】
従って、本実施形態によると、術者は、第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置するとともに第2の面S2を患者の側面方向に沿って配置し、患者の正面方向において第1指標部材13を見て、次いで、患者の側面方向において第2指標部材14を見ることができる。これだけで、術者は、患者の正面方向及び側面方向のいずれから見た状態においても、ガイド部材11に挿通されて骨100に刺入されるピン状部材10の正確な位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。尚、手術中に術者によってピン状部材10が患者の患部の骨100に刺入される処置が行われる際には、まず、筒状のガイド部材の先端部が、患部の骨100においてピン状部材10が刺入される位置に配置される。このとき、ガイド部材11の先端側の部分は、患者の軟部組織101に刺入されて外部から隠れた状態となるが、術者は、患者の正面方向から第1の面S1に沿って第1指標部材13を見て、次いで、患者の側面方向から第2の面S2に沿って第2指標部材14を見て確認することができる。これにより、術者は、第1指標部材13及び第2指標部材14が指標するガイド部材11の位置及び方向と、ガイド部材11に挿通されたピン状部材10が患部の骨100に対して刺入される位置及び方向とを正確に且つ容易に把握することができる。
【0098】
また、本実施形態によると、第1指標部材13はX線が透過する材料である樹脂材料で形成されており、第1指標部材13における本体軸部材12から延びる先端側には、X線の透過を抑制する材料である金属材料で形成された第1金属指標部材15が配置されている。このため、X線の透視下においても、術者は、第1指標部材13とガイド部材11とが配置される第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置し、患者の正面方向の視点のX線の透視画像を見ることで、患者の骨100の像M100と、第1指標部材13の先端側に配置された第1金属指標部材15の像M15とを容易に確認することができる。これにより、術者は、患者の正面方向において、第1指標部材13の先端側に配置された第1金属指標部材15が指標するピン状部材10がガイド部材11に挿通されて更に骨100に対して刺入される位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。
【0099】
更に、本実施形態によると、第2指標部材14はX線が透過する材料である樹脂材料で形成されており、第2指標部材14における本体軸部材12から延びる先端側には、X線の透過を抑制する材料である金属材料で形成された第2金属指標部材16が配置されている。このため、X線の透視下においても、術者は、第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置するとともに、第2指標部材14とガイド部材11とが配置される第2の面S2を患者の側面方向に沿って配置し、患者の側面方向の視点のX線の透視画像を見ることで、患者の骨100の像M100と、第2指標部材14の先端側に配置された第2金属指標部材16の像M16とを容易に確認することができる。これにより、術者は、患者の側面方向において、第2指標部材14の先端側に配置された第2金属指標部材16が指標するピン状部材10がガイド部材11に挿通されて更に骨100に対して刺入される位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。
【0100】
従って、本実施形態によると、術者は、第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置するとともに第2の面S2を患者の側面方向に沿って配置し、患者の正面方向のX線透視画像において第1指標部材13の先端側に配置された第1金属指標部材15の像M15を見て、次いで、患者の側面方向のX線透視画像において第2指標部材14の先端側に配置された第2金属指標部材16の像M16を見ることができる。これだけで、術者は、患者の正面方向及び側面方向のいずれから見た状態においても、ガイド部材11に挿通されて骨100に対して刺入されるピン状部材10の正確な位置及び方向を術者の経験によらずに容易に把握することができる。
【0101】
上記のように、術者は、患者の正面方向及び側面方向のいずれから見た状態においても、ガイド部材11に挿通されて骨100に対して刺入されるピン状部材10の正確な位置及び方向を把握すると、次いで、ピン状部材10を骨100に対して刺入する。このとき、まず、ピン状部材10は、ガイド部材11に挿通される。そして、ピン状部材10は、ガイド部材11によって骨100への刺入方向がガイドされながら、骨100に対して刺入される。このとき、術者は、経験によることなく、第1指標部材13及びそれに配置された第1金属指標部材15と第2指標部材14及びそれに配置された第2金属指標部材16とによって、患者の正面方向及び側面方向のいずれから見た状態においても、骨100に対するピン状部材10の刺入位置及び刺入方向を正確に把握することができている。そして、その上で、術者は、把握した刺入位置及び刺入方向に沿って正確にピン状部材10を骨100に対して容易に刺入することができる。よって、骨処置用器具1により、術者は、その経験によらずに、ピン状部材10を患者の骨100に対して正確な位置及び方向で容易に刺入することができる。
【0102】
したがって、本実施形態によると、術者の経験によらずにピン状部材10を患者の骨100に対して正確な位置及び方向で容易に刺入することができる骨処置用器具1を提供することができる。
【0103】
また、本実施形態によると、術者は、第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置し、患者の正面方向の視点のX線の透視画像を見た際に、患者の骨100の像M100と、第1指標部材13の先端側で分散して並んで配置された第1金属指標部材15の像M15とを確認することができる。これにより、術者は、患者の正面方向において、ピン状部材10がガイド部材11に挿通されて更に骨100に対して刺入される位置及び方向について、破線のように分散して並んだ第1金属指標部材15の像M15として把握することができる。このため、術者は、ピン状部材10が骨100に対して刺入される位置及び方向を更に明瞭且つ容易に把握することができる。また、これにより、術者は、より安心して処置を行うことができる。
【0104】
また、本実施形態によると、術者は、第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置するとともに第2の面S2を患者の側面方向に沿って配置し、患者の側面方向の視点のX線の透視画像を見た際に、患者の骨100の像M100と、第2指標部材14の先端側で分散して並んで配置された第2金属指標部材16の像M16とを確認することができる。これにより、術者は、患者の側面方向において、ピン状部材10がガイド部材11に挿通されて更に骨100に対して刺入される位置及び方向について、破線のように分散して並んだ第2金属指標部材16の像M16として把握することができる。このため、術者は、ピン状部材10が骨100に対して刺入される位置及び方向を更に明瞭且つ容易に把握することができる。また、これにより、術者は、より安心して処置を行うことができる。
【0105】
また、本実施形態によると、ガイド部材11を本体軸部材12に対して挿入する簡素な構造で、ガイド部材11を本体軸部材12の長手方向とは異なる方向に延びる状態で本体軸部材12に容易に取り付けることができる。
【0106】
また、本実施形態によると、第2指標部材14は、片持ち状に延びる状態で本体軸部材12に取り付けられるため、第2指標部材14の端部を本体軸部材12に連結した構造で、第2指標部材14が本体軸部材12に取り付けられる。このため、第2指標部材14の端部を本体軸部材12に連結する簡素な構造で、第2指標部材14を本体軸部材12の長手方向とは異なる方向に本体軸部材12から延びる状態で本体軸部材12に容易に取り付けることができる。
【0107】
また、本実施形態によると、第1指標部材13とガイド部材11とが本体軸部材12から平行に延びるように設けられる。このため、術者は、ガイド部材11を患者の側面方向から患者の患部の骨100に向かって患者の軟部組織101に挿入し、第1指標部材13とガイド部材11とが配置される第1の面S1を患者の正面方向に沿って配置した際に、第1指標部材13を患者の側面方向と平行な方向に沿って配置することができる。即ち、第1指標部材13を患者の正面側において患者の正面方向と垂直な方向に沿って延びた状態に配置することができる。このため、術者は、患者の正面方向において、第1指標部材13が指標するガイド部材11の位置及び方向を把握する際に、第1指標部材13を患者の正面側で患者の体と略平行な方向に沿って容易に操作することができる。これにより、第1の面S1に沿って第1指標部材13を見ながら患者の正面方向におけるガイド部材11の位置及び方向を把握する際の操作性を更に向上させることができる。
【0108】
また、本実施形態によると、本体軸部材12の周方向における複数個所のうちのいずれかの箇所を選択して第2指標部材14を本体軸部材12に取り付けることができる。このため、患者の骨100と、ピン状部材10が患者の骨100に対して刺入される位置及び方向との関係に応じて、第2指標部材14による確認を行い易いように、本体軸部材12から延びるガイド部材11と第2指標部材14との交差角度を適宜変更することができる。これにより、ピン状部材10が患者の骨100に対して刺入される位置及び方向の把握を更に容易にすることができる。
【0109】
また、本実施形態によると、本体軸部材12において出っ張るように広がったフランジ部23に対して、ガイド部材11の挿通孔24と、第2指標部材14の取り付け用の複数の取付け孔25a、25b又は複数の取付け孔26a、26bとが設けられる。このため、第2指標部材14の本体軸部材12に対する取付け可能位置の設定の自由度を高くすることができ、本体軸部材12から延びるガイド部材11と第2指標部材14との交差角度の選択肢の設定の自由度を高くすることができる。これにより、それぞれの患者の体格に応じて、ガイド部材11と第2指標部材14との交差角度をより柔軟に設定することができ、ピン状部材10が患者の骨100に対して刺入される位置及び方向の把握を更に容易にすることができる。
【0110】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0111】
(1)前述の実施形態では、骨処置用器具が用いられてピン状部材が刺入される骨として大腿骨を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、大腿骨以外の骨に対してピン状部材を刺入する処置において用いられる骨処置用器具の形態が実施されてもよい。
【0112】
(2)前述の実施形態では、骨処置用器具が用いられて骨に刺入されるピン状部材として針状のピンの形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。骨処置用器具が用いられて骨に刺入されるピン状部材としては、針状のピンの形態以外の種々の形態のピン状部材であってもよく、例えば、ドリル、或いはスクリュー等の形態のピン状部材であってもよい。
【0113】
(3)前述の実施形態では、ガイド部材が本体軸部材に挿入されて本体軸部材に取り付けられる形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、ガイド部材が本体軸部材に対して挿入以外の態様で取り付けられる形態が実施されてもよい。例えば、本体軸部材において、ガイド部材が本体軸部材の長手方向とは異なる方向に延びる状態となるようにガイド部材を嵌め込むための溝が設けられ、その溝にガイド部材が嵌め込まれることで、ガイド部材が本体軸部材に取り付けられる形態が実施されてもよい。
【0114】
(4)前述の実施形態では、第1指標部材及び第2指標部材のそれぞれの先端側において金属指標部材が複数配置された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。第1指標部材の先端側において金属指標部材が1つのみ配置された形態が実施されてもよく、また、第2指標部材の先端側において金属指標部材が1つのみ配置された形態が実施されてもよい。
【0115】
(5)前述の実施形態では、金属指標部材が、第1指標部材及び第2指標部材の内部に配置された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。金属指標部材が、第1指標部材及び第2指標部材の表面に取り付けられた形態が実施されてもよい。例えば、金属指標部材が、第1指標部材及び第2指標部材の表面に設けられた凹部に嵌め込まれることで、第1指標部材及び第2指標部材に配置されている形態が実施されてもよい。また、金属指標部材が、薄い箔状に形成された金属材料で構成され、第1指標部材及び第2指標部材の表面に対して接着剤を用いて貼り付けられることで取り付けられる形態が実施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、患者の骨にピン状部材を刺入する処置を施す際に用いられる骨処置用器具として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0117】
1 骨処置用器具
10 ピン状部材
11 ガイド部材
12 本体軸部材
13 第1指標部材
14 第2指標部材
15 第1金属指標部材(金属指標部材)
16 第2金属指標部材(金属指標部材)
100 大腿骨(骨)