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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136675
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/24 20220101AFI20230922BHJP
   B60R 1/28 20220101ALI20230922BHJP
   B62D 11/08 20060101ALI20230922BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20230922BHJP
【FI】
B60R1/24
B60R1/28
B62D11/08 N
B60R1/26 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042474
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲本 雅之
【テーマコード(参考)】
3D052
【Fターム(参考)】
3D052AA01
3D052AA11
3D052BB18
3D052DD04
3D052EE01
3D052HH02
3D052JJ01
3D052JJ02
3D052JJ06
3D052JJ36
3D052JJ37
(57)【要約】
【課題】機体に搭載する原動機の動力をトランスミッションを介して左右のクローラ式走行装置に伝達すると共に、そのトランスミッションに備えるサイドクラッチを含む操向装置によって機体の進行方向を修正しながら自走する作業車両を、車両運搬車の荷台に作業者が安心して積み込むことができるようにする。
【解決手段】車両運搬車の荷台や、その荷台に設置された歩み板との相対的な傾きと偏りを見出す検出手段と、係る検出手段の検出結果に基づいて機体が車両運搬車の荷台に自走して積み込み可能かを判断して作業者にその可否を知らせる支援手段を設ける。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に搭載する原動機の動力をトランスミッションを介して左右のクローラ式走行装置に伝達すると共に、そのトランスミッションに備えるサイドクラッチを含む操向装置によって機体の進行方向を修正しながら自走する作業車両にあって、この作業車両には、車両運搬車の荷台や、その荷台に設置された歩み板との相対的な傾きと偏りを見出す検出手段と、係る検出手段の検出結果に基づいて機体が車両運搬車の荷台に自走して積み込み可能かを判断して作業者にその可否を知らせる支援手段を設けることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記検出手段は、2つのカメラモジュールが撮影した画像データを画像処理して、車両運搬車の荷台や歩み板との相対的な傾きと偏りを見出すことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記支援手段は、作業車両の機体寸法や車両運搬車の荷台や歩み板の寸法を参照して、機体が車両運搬車の荷台に自走して積み込み可能な傾きと偏りの最大値を演算し、また、この最大値を検出手段の検出値が超える場合には、積み込みが出来ない旨を作業者に報知することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記検出手段は、車両運搬車の荷台、或いは歩み板との相対的な距離を取得し、また、前記支援手段は、この得られた距離に基づいて機体の積み込みに関する必要な報知を行うことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の作業車両。
【請求項5】
前記支援手段としてモバイルコンピュータを用いて、このモバイルコンピュータから近距離無線通信を行って機体の自動制御装置に機体停止の指令を出すようにすることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の作業車両。
【請求項6】
前記支援手段は、車両運搬車の荷台や歩み板との相対的な傾きと偏りを無くすように、機体の自動制御装置にトランスミッションの操向装置を作動させながら行う自動走行の開始、及び終了の指令を出すようにすることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用や土木建設用等の作業車両に係り、詳しくは、機体に搭載する原動機の動力をトランスミッションを介して左右のクローラ式走行装置に伝達すると共に、そのトランスミッションに備えるサイドクラッチを含む操向装置によって機体の進行方向を修正しながら自走する作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用や土木建設用等の作業車両は、圃場や建設現場等への移動のためにトラックやトレーラー等の車両運搬車(積載車)に積み込んで運搬することが慣用されている。そして、この車両運搬車への作業車両の積み込み、或いは積み降ろしの際には、車両運搬車の荷台がスライドする機能を搭載したセーフティーローダーを用いれば、比較的安心感をもって荷積み荷降ろしの作業を行うことができる。
【0003】
しかし、このようなセーフティーローダーを用意できない場合は、車両運搬車の荷台後部に2つの歩み板(道板、ラダーレール)を路面との間に設置した後、車載する作業車両を自走させて荷台に積み込んだり積み降ろしを行うことになる。そして、この場合に、特に歩み板から荷台に移動する際に作業車両は大きくピッチングするため作業車両の搭乗者に不安を与えてしまう。
【0004】
そこで、このような作業車両の積み込みや積み降ろしの際には、作業者が降車して作業車両を無人で自走させることが推奨されている。また、荷台への作業車両の自走にあたっては、走行装置の左右クローラが歩み板から踏み外さないようにしなければならないと共に、荷台に至った作業車両がそのまま転落したり、荷台の側面に取り付けられているあおりや前面板に衝突等しないように自走させる必要がある。
【0005】
一方、アユミと走行部(クローラ)との位置関係が分かり辛く、不安を感じながら輸送手段へのコンバインの積み降ろしをしなければならなく、安全性や作業性が悪いという問題を解決する方法として、カメラで撮像したアユミと走行部の画像を操縦部のモニタに表示させ、それにより運転者はモニタを見ながらアユミと走行部の位置関係を把握しながら、コンバインを安心して正確かつ容易にアユミ上を走行させながら輸送手段に積み込むことができるようにすることが提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0006】
なお、この特許文献1では、モニタに走行部の予測進路を表示する、予測進路表示手段を備えることによって、運転者は、モニタに表示される走行部の予測進路を目安として操縦部から運転することができ、コンバインを安心して正確かつ容易にアユミ上を走行させながら輸送手段に積み込むことができるとしている。
【0007】
さらに、運搬車の荷台と地面との間に架け渡された左・右梯子状部材を走行車両の左右の走行クローラが走行する際に、走行車両の左右両側に左・右倣いセンサを設け、この左・右倣いセンサの左・右梯子状部材の外側端部の検出あるいは離脱検出情報に基づき走行車両の左右の走行クローラを左右に操向制御する自動操向制御手段を設けることが提案されている(特許文献3参照)。
【0008】
そして、コンバインを運搬車の荷台上に自動的に積み込むことができることを課題として、積載アシスト開始スイッチのON操作に基づいて、運搬車の荷台に対面する位置まで自動的に走行移動した後、積載用板登坂制御手段によって運搬車の荷台上へ向かって移動し、荷台積載面積測定手段によって荷台長及び荷台幅が機体の長さと幅より大きい場合にのみ荷台上へ移動し、荷台上の積載位置に到達した後に走行を自動停止する制御手段を設けることが提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-171457号公報
【特許文献2】特開2015-104375号公報
【特許文献3】特開2004-314822号公報
【特許文献4】特開2019-205413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように作業車両、特にコンバインのように機体に搭載する原動機の動力をトランスミッションを介して左右のクローラ式走行装置に伝達すると共に、そのトランスミッションに備えるサイドクラッチを含む操向装置によって機体の進行方向を修正しながら自走する作業車両にあっては、稲や麦等の刈取作業を行う圃場への移動や逆に圃場から車庫への帰還のために車両運搬車に作業車両を積み込んで運搬する際に、作業者が降車して作業車両を無人で自走させて荷台に積み込むことが推奨される。
【0011】
そして、その場合、積み込みを行う作業者は、車両運搬車を駐車させてタイヤに歯止めをかけると共に、対となる2つの歩み板を荷台から引き出して歩み板の先端に設けるフックを荷台の後部に嵌めたり、ボルトで固定して荷台の後部と路面との間に歩み板が不測に外れないように掛け渡して設置する、或いは、車両運搬車に常設する歩み板を後方に向けて倒して設置する。また、このような準備を終えると作業者は作業車両に乗車して、作業車両が荷台の後部や歩み板に向かうように路上を走行させる。
【0012】
さらに、ここで補助作業者がいれば、作業車両の左右クローラが2つの歩み板に適切に臨むように作業車両の進行方向の修正指示を作業者に与えて誘導する。また、作業車両が地上に接地する歩み板の先端に至ると、作業者は一旦、作業車両から降車して、その後は無人で作業車両を歩み板上を登坂させて荷台上に自走させる。そして、作業車両が荷台の所定位置に至ると作業者が駐車ブレーキレバー等を操作して作業車両を停止させる。
【0013】
なお、コンバインにあっては、刈取作業にあって左クローラが未刈地側となる作物を踏み倒さないようにするために左右のクローラ式走行装置を機体の左右中心から既刈地側となる右側にオフセットして配置している。そのため、2つの歩み板を荷台の左右方向の中心から対称となるように離して設置すると、この歩み板を登坂したコンバインが荷台の左右中心から外れて荷台に至ることになる。
【0014】
従って、コンバインを荷台の左右中心に積み込みたければ、歩み板の荷台の後部への設置位置をオフセット量等に基づいて変更しなければならない。また、歩み板上を登坂する前に2つの歩み板の中央に左右クローラが臨んでいたとしても、コンバインの進行方向が歩み板や荷台に対して傾いていれば、歩み板上を登坂する際にクローラが歩み板を踏み外して転落する虞があるから、作業車両は歩み板や荷台に対してその左右方向の偏り(左右方向の位置ズレ)が少なくて進行方向における傾きも少ないことが積み込みにおいて重要となる。
【0015】
一方、このような作業車両の車両運搬車への積み降ろしを安全に行うために特許文献1~4等に記載されているような種々の提案がなされている。しかし、それぞれの提案内容では物足りない不十分さが感じ取れて改善の余地が残されている。例えば、前述の特許文献1においては、モニタに走行部の予測進路を表示する予測進路表示手段を備え、運転者はモニタに表示される走行部の予測進路を目安として操縦部から運転することができると記載されているが、この予測進路はどのように予測するのか記載されていないので不明とする他ない。
【0016】
また、特許文献2においては、俯瞰映像に示されるクローラ部の位置から前方又は後方に延長した画像である仮想延長部が歩み板と平行であるか、及び、仮想延長部が歩み板を通っているかを確認するだけで、クローラ部と歩み板の位置関係が適切か否かを判断することができるとしているが、クローラ部と歩み板の位置関係が適切か否かの判断は作業者の映像の目視に任せられることとなって、その判断に誤りがないか保証するものではない。
【0017】
さらに、特許文献3においては、左・右梯子状部材を走行車両の左右の走行クローラが走行する際に、左・右倣いセンサの左・右梯子状部材の外側端部の検出あるいは離脱検出情報に基づき走行車両の左右の走行クローラを左右に操向制御して、走行車両の走行クローラが梯子状部材から踏み外さないようにする。
【0018】
しかし、走行車両が梯子状部材を登坂している際に走行伝動経路中に設けたサイドクラッチを入切して操向制御すると、サイドクラッチを切ることによって動力伝達が断たれた一方の走行クローラが走行車両の重力に基づく下降しようとする力によって不測に回転して、走行車両の進行方向の修正に狂いを生じさせてしまい、寧ろ走行クローラの梯子状部材からの踏み外しを助長させる虞があって、歩み板上の登坂においては作業車両の操向制御は極力避けなければならない。
【0019】
また、特許文献4においては、前述のようにコンバインを運搬車の荷台上に自動的に積み込むことができるように、アシスト開始スイッチのON操作に基づいて、運搬車の荷台に対面する位置まで自動的に走行移動した後、積載用板登坂制御手段によって運搬車の荷台上へ向かって移動し、荷台積載面積測定手段によって荷台長及び荷台幅が機体の長さと幅より大きい場合にのみ荷台上へ移動し、荷台上の積載位置に到達した後に走行を自動停止する制御手段を設ける。
【0020】
しかし、ここに記載されている運搬車の荷台に対面する位置まで自動的に走行移動させると見做される走行制御手段15や、積載用板上を登坂させる積載用板登坂制御手段13、或いは、荷台長及び荷台幅を測定するものと勘案される荷台積載面積測定手段14についての具体的な構成や構造については、その説明が省かれているためにその実施の可否や課題を検討することができない。
【0021】
そこで、本発明は、前述のような状況に鑑み、機体に搭載する原動機の動力をトランスミッションを介して左右のクローラ式走行装置に伝達すると共に、そのトランスミッションに備えるサイドクラッチを含む操向装置によって機体の進行方向を修正しながら自走する作業車両を、車両運搬車の荷台に作業者が安心して積み込むことができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の作業車両は、上記課題を解決するため第1に、機体に搭載する原動機の動力をトランスミッションを介して左右のクローラ式走行装置に伝達すると共に、そのトランスミッションに備えるサイドクラッチを含む操向装置によって機体の進行方向を修正しながら自走する作業車両にあって、この作業車両には、車両運搬車の荷台や、その荷台に設置された歩み板との相対的な傾きと偏りを見出す検出手段と、係る検出手段の検出結果に基づいて機体が車両運搬車の荷台に自走して積み込み可能かを判断して作業者にその可否を知らせる支援手段を設けることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の作業車両は第2に、前記検出手段は、2つのカメラモジュールが撮影した画像データを画像処理して、車両運搬車の荷台や歩み板との相対的な傾きと偏りを見出すことを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明の作業車両は第3に、前記支援手段は、作業車両の機体寸法や車両運搬車の荷台や歩み板の寸法を参照して、機体が車両運搬車の荷台に自走して積み込み可能な傾きと偏りの最大値を演算し、また、この最大値を検出手段の検出値が超える場合には、積み込みが出来ない旨を作業者に報知することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の作業車両は第4に、前記検出手段は、車両運搬車の荷台、或いは歩み板との相対的な距離を取得し、また、前記支援手段は、この得られた距離に基づいて機体の積み込みに関する必要な報知を行うことを特徴とする。
【0026】
そして、本発明の作業車両は第5に、前記支援手段としてモバイルコンピュータを用いて、このモバイルコンピュータから近距離無線通信を行って機体の自動制御装置に機体停止の指令を出すようにすることを特徴とする。
【0027】
そのうえ、本発明の作業車両は第6に、前記支援手段は、車両運搬車の荷台や歩み板との相対的な傾きと偏りを無くすように、機体の自動制御装置にトランスミッションの操向装置を作動させながら行う自動走行の開始、及び終了の指令を出すようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の作業車両によれば、車両運搬車の荷台や、その荷台に設置された歩み板との相対的な傾きと偏りを見出す検出手段と、係る検出手段の検出結果に基づいて機体が車両運搬車の荷台に自走して積み込み可能かを判断して作業者にその可否を知らせる支援手段を設けるから、作業車両が歩み板を登坂して車両運搬車の荷台に適切に積み込むことができるか否かを、検出手段と支援手段を用いて判断して、その可否を作業者に知らせるので、作業者や補助作業者の目視に任せることなく、作業車両を安心して荷台へ積み込むことができる。
【0029】
なお、係る検出手段と支援手段に基づく車両運搬車の荷台への積み込みの可否は、作業車両が歩み板上を登坂する前に報知する。そのため、積み込みができない場合は作業車両が歩み板に乗り上げる前に停止させて、その後に作業車両を路上において後進させ、さらに、再び作業車両を前進走行させて再トライすることができる。
【0030】
また、この積み込みの可否は、作業車両がサイドクラッチを含む操向装置によって機体の進行方向を修正することがない、作業車両の直進走行を前提として判断する。そのため、サイドクラッチの切断操作等によって不測に進行方向が急激に変更される結果、クローラが歩み板を踏み外してしまうといった虞を極力無くして、左右のサイドクラッチを共に入りとして左右のクローラが同速で駆動される直進状態で自走させるものであるから、荷台への積み込みにあたって作業者が事前に降車していても差し支えない。
【0031】
また、前記検出手段は、2つのカメラモジュールが撮影した画像データを画像処理して、車両運搬車の荷台や歩み板との相対的な傾きと偏りを見出すようにすると、2つのカメラモジュールによって車両運搬車の荷台や歩み板を含む画像と同時に、これらとの間の距離をカメラ間距離とカメラの焦点距離及び視差に基づいて演算して求めることができる。そして、カメラモジュールと車両運搬車の荷台や歩み板との距離を計測することができたら、作業車両と車両運搬車の荷台や歩み板との相対的な傾きと偏りも演算して見出すことができる。
【0032】
さらに、前記支援手段は、作業車両の機体寸法や車両運搬車の荷台や歩み板の寸法を参照して、機体が車両運搬車の荷台に自走して積み込み可能な傾きと偏りの最大値を演算し、また、この最大値を検出手段の検出値が超える場合には、積み込みが出来ない旨を作業者に報知するから、作業車両と車両運搬車の荷台や歩み板との相対的な傾きと偏りが全くないことを積み込み可否の判断条件とする訳ではないので、その条件を弾力的に運用して作業車両を荷台に積み込み易くすることができる。
【0033】
また、前記検出手段は、車両運搬車の荷台、或いは歩み板との相対的な距離を取得し、また、前記支援手段は、この得られた距離に基づいて機体の積み込みに関する必要な報知を行う。そのため、作業車両が例えば歩み板の先端に所定距離近づくと、サイドクラッチを含む操向装置を用いた機体の方向修正操作を禁じて、その後の作業車両と車両運搬車の荷台や歩み板との相対的な傾きと偏りを確定させて、滞りなく歩み板上の登坂に移行させることができる。また、このタイミングで作業者の降車を促してもよい。
【0034】
そして、前記支援手段としてモバイルコンピュータを用いて、このモバイルコンピュータから近距離無線通信を行って機体の自動制御装置に機体停止の指令を出すようにすると、作業車両が自走して荷台に至った際に、作業車両を自動制御装置によって停止させることができる。そして、この場合に作業者が事前に作業車両から降車していてモバイルコンピュータを手元においていれば、作業車両から離れた位置から遠隔操作によって作業車両を荷台の所定位置にタイミングよく停止させることができる。
【0035】
そのうえ、前記支援手段は、車両運搬車の荷台や歩み板との相対的な傾きと偏りを無くすように、機体の自動制御装置にトランスミッションの操向装置を作動させながら行う自動走行の開始、及び終了の指令を出すようにすると、不慣れな作業者であっても自動制御装置によって作業車両を車両運搬車の荷台に適切に積み込みことができる位置に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】コンバインの正面図である。
図2】コンバインの側面図である。
図3】コンバインの平面図である。
図4】操縦部の平面図である。
図5】走行動力伝達図である。
図6】コンバインを積み込む車両運搬車に歩み板を設置した状態を示す斜視図である。
図7】車両運搬車へのコンバインの積み込みを支援するシステムの説明図である。
図8】支援システムのブロック図である。
図9】荷台及び歩み板並びに機体寸法の要求(設定)画面である。
図10】操縦部に設けるモニタの平面図である。
図11】荷台や歩み板との傾きや偏りを求める説明図である。
図12】コンバインを荷台に積み込み可能な最大傾きの説明図である。
図13】コンバインが歩み板上を適正に登坂可能な最大傾きの説明図である。
図14】コンバインを荷台に積み込み可能な最大偏りの説明図である。
図15】コンバインが歩み板上を適正に登坂可能な最大偏りの説明図である。
図16】支援システムの工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の作業車両を構成するコンバインについて図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示すように稲や麦を刈取って穀粒(穀物)を収穫する6条刈りの自脱型コンバイン1は、略矩形状に枠組みする機体フレーム(機体)2の下方に走行フレーム3を介して左右のクローラ式走行装置4を設ける。なお、左右のクローラ式走行装置4は、トランスミッションケース5の左右から延出する駆動軸6に取付ける駆動スプロケット7と、走行フレーム3に軸支するアイドルホイール8及びトラックローラ9と、これらに巻回するゴムクローラ10を備える。
【0038】
また、機体フレーム2の機体前進方向の右側前部には、略直方体状に枠組みする運転フレーム11を一体的に連結し、この運転フレーム11及びその後方のエンジンルームの前部寄り上方にかけて操縦部12を設ける。なお、操縦部12はフロア13の後方に運転席14を設け、また、フロア13の前部にはフロントコンソール(前部操作盤)15を、フロア13と運転席14の左側にはサイドコンソール(側部操作盤)16を設け、さらに、キャビン17で操縦部12を覆っている。
【0039】
また、機体フレーム2の左側前部から操縦部12の前方にかけて刈取装置18を図示しない油圧シリンダによって昇降自在に設ける。そして、刈取装置18は、その前端下部に設ける分草体(デバイダ)19とナローガイド20によって、圃場の立毛穀稈を刈取穀稈と未刈取穀稈とに区分けし、左右の分草体19の間に入った刈取穀稈を引起装置21によって引起し、その後、突起付き掻込ベルトとスターホイールで構成する掻込装置22で寄せ集めながら穀稈の株元をレシプロ方式の刈刃装置23によって切断する。
【0040】
さらに、刈刃装置23によって切断して刈取った穀稈は、掻込装置22のスターホイールで後方に送り、また、後方に送った穀稈は株元搬送装置24と穂先搬送装置25、並びに扱深さ搬送装置26や補助搬送装置によって更に後方に揚上搬送して、脱穀フイードチェーン27に引き継がせる。さらに、脱穀フイードチェーン27を備える脱穀装置28は、刈取装置18の後方の機体フレーム2の左側に設ける。
【0041】
そして、この脱穀装置28はその上方を覆うシリンダーカバー29の下方に扱室と処理室を設ける。この内、扱室には刈取装置18から搬送してきた穀稈を扱口に沿って搬送する脱穀フイードチェーン27とその挟持レール30、扱歯を備える扱胴とその受網等を設ける。また、処理室は扱胴の後端穂先側より機体の後方に向かうように扱室に併設し、扱室で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する処理胴とその処理網を設ける。
【0042】
一方、扱室と処理室の下方には選別室を設ける。この選別室には揺動運動する揺動流板、1番ラセン及び2番ラセン、唐箕ファン及び吸引ファン等を設け、扱室や処理室の受網等より漏下した穀粒等を揺動流板上において選別し、選別した穀粒は1番ラセンから揚穀装置31を介してグレンタンク(穀粒タンク)32に移送し、藁屑等が混じった2番物は2番ラセンから2番還元装置を介して揺動流板上に戻す。
【0043】
また、揺動流板の終端に至った藁屑、吸引ファンに捕捉された藁屑、或いは処理胴の終端から排出された藁屑は、脱穀装置28後方の機外に排出する。さらに、脱穀処理を完了して扱室から排出する排稈は、排藁搬送装置によってディスク型カッター33に向けて搬送し、さらに、ディスク型カッター33は、排藁搬送装置で搬送してきた排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出する。
【0044】
そして、前述のグレンタンク32は、脱穀装置28の揚穀装置31によって移送してきた穀粒が満杯になると、排出オーガ34により機外のコンテナ等に放出する。なお、排出オーガ34は、その縦ラセン筒34aを油圧モータによって旋回可能になすと共に、先端側の縦ラセン筒34bを油圧シリンダ35によって上下揺動自在になして、機体上の収納姿勢から機体後方の排出姿勢に変更することができる。
【0045】
また、グレンタンク32の前方で操縦部12の下方から後方に設ける原動部について説明すると、原動部は機体フレーム2の右側から中央寄りにかけて枠組して立設するカバーフレーム36を備え、このカバーフレーム36に周囲を覆う複数のカバーを取り付け、その内部をエンジンルームに構成する。また、このエンジンルームには、左右のクローラ式走行装置4、刈取装置18や脱穀装置28等の機体の各部を駆動するディーゼルエンジンで構成する原動機37とこの原動機37の冷却水を冷やすラジエータ等のエンジン補器類を収容する。
【0046】
そして、係る原動機37によって駆動する左右のクローラ式走行装置4に至る動力伝達系について簡単に説明すると、図5に示すように原動機37の出力プーリ38とトランスミッションケース5の上部に設ける主変速装置を構成する静油圧式無段変速装置(HST)39の入力プーリ40に走行ベルト41を巻き掛け、この走行ベルト41に設けるベルトテンションクラッチを構成する走行クラッチ42は、原動機37からHST39への動力伝達を断続する。
【0047】
また、HST39によって変速された動力はトランスミッションに伝達され、そのトランスミッションケース5に設ける歯車式の副変速装置43は路上走行と作業走行に適した回転数に変速する。また、トランスミッションケース5に4つのモードを備える操向装置を設け、その第1は、センターギヤ44と左右のサイドクラッチギヤ45に夫々サイドクラッチを構成するドッグクラッチを設けて、この一方のドッグクラッチの噛み合いを外すことによってそれ以降の動力伝達を断つ。
【0048】
第2は、サイドクラッチの噛み合いを外したサイドクラッチギヤ45を、ブレーキクラッチ46、減速クラッチ47、湿式クラッチ48を介して制動させてそれ以降の回転を停止させる。第3は、サイドクラッチの噛み合いを外したサイドクラッチギヤ45を、減速クラッチ49、減速クラッチ47、湿式クラッチ48を介して駆動してそれ以降の回転数を減らす。第4は、サイドクラッチの噛み合いを外したサイドクラッチギヤ45を、スピンクラッチ50、湿式クラッチ48を介して駆動してそれ以降を逆回転させる。
【0049】
そして、左右のサイドクラッチギヤ45は、さらに終減速歯車51を介して左右の駆動軸6を駆動するよう連係し、この駆動軸6に取付ける駆動スプロケット7は前述のように左右のクローラ式走行装置4を駆動する。なお、図4に示すように操縦部12には、係る走行系に関わる走行クラッチ42と一方の湿式クラッチ48を兼用する駐車ブレーキを共に作動させる駐車ブレーキペダル52、減速クラッチ47とスピンクラッチ50の切換操作と副変速装置43の切換を行う副変速レバー53、HST39の変速を行う主変速レバー54、また、操向装置を電気油圧制御によって操作するマルチステアリングレバー55等を設ける。
【0050】
以上、コンバイン1の概要について説明したが、次にコンバイン1をトラック等の車両運搬車に積み込んで運搬する際の支援システムについて説明すると、図6に示すようにコンバイン1を積み込む荷台56を備えるトラックは、平坦で硬い路面に停止させ、駐車ブレーキをかけ、エンジンを停止し、変速を1速かバックに入れ、タイヤに歯止めをかける。また、歩み板57は、コンバイン1の重量に耐える強度、幅、トラックの荷台高さの4倍以上の長さのある滑り止めやフック付きのものを使用し、歩み板57の間隔は左右クローラ10に合わせて荷台56の後部に平行に外れないように設置する。
【0051】
そして、このように対となる2つの歩み板57の上をコンバイン1の左右クローラ10が踏んで、トラックの荷台56に向けて登坂して最終的に荷台56の上にコンバイン1を積み込む際に、クローラ10が歩み板57を踏み外すと登坂が困難となるばかりでなく、コンバイン1が転落して損傷する虞がある。
【0052】
また、歩み板57上を登坂している場合に走行クラッチ、走行変速、並びに操向等の操作を行うと急にコンバイン1が方向転換して前述の転落の虞が高まるので、当該操作は行わないようにする必要がある。さらに、歩み板57から荷台56に移る際にコンバイン1がピッチングして急に姿勢が変わるので、作業者は積み込みに当たって降車して離れて見守ることが望ましく、また、確実に荷台にコンバイン1が乗ったことを確認してコンバイン1に近づくようにする。
【0053】
以上、コンバイン1の荷台56への積み込み作業を行う場合の注意事項の一端について説明したが、コンバイン1が歩み板57上を転落することなく登坂して、トラックの荷台56に確実に積み込むことができるようにするためには、図7に示ようにコンバイン1がトラックの荷台56や歩み板57に対して傾くことなく平行に真っすぐ自走すること、また、左右クローラ10が左右の歩み板57に対して左右方向に偏ることなく歩み板57の中央を通過することが大切である。
【0054】
そこで、コンバイン1のトラックの荷台56への積み込みを支援するシステムは、コンバイン1が歩み板57を登坂してトラックの荷台56に適切に積み込むことができるか否かを、前述の傾きと偏りを検出することによって判断して、その可否を作業者にタイムリーに知らせることを主眼とする。そのため、コンバイン1の傾きと偏りを検出することができるように2つカメラを平行に離して設ける所謂、ステレオカメラ方式のCCDカメラモジュール(カメラ)58をコンバイン1に設け、また、このステレオカメラモジュール58で機体前方を撮影することによってトラックの荷台56や歩み板57を写した画像データを取得する。
【0055】
なお、このステレオカメラ58は、操縦部12を覆うキャビン17のインナールーフの下方に水平となるように取り付け、また、左右のカメラ58の内、右側のカメラ58でもよいが実施形態の場合は、コンバイン1の前進方向の左側となるカメラ58の光軸が、右クローラ10の左右中心上、詳しくは駆動スプロケット7が位置する右クローラ10上になるように設ける。そのため、左カメラ58が撮影した画像は、図7の左カメラ画像のように上部寄りに荷台56の後端が直線となる線分として写り、また、画像の下部寄りに左右の歩み板57の各先端が直線となる線分として写ることになる。
【0056】
ここで、積み込みを支援するシステムの全体を図8に示すブロック図に基づいて説明すると、メインECU59はコンバイン1の各部を制御する電子制御ユニットであって、例えば、操向装置を電気油圧制御によって操作するマルチステアリングレバー55の左右揺動操作量をリミットスイッチやポテンショメータの入力信号によって得て、左右のサイドクラッチギヤ45を油圧シリンダを介して左右移動させることによって、そのドッグクラッチを入り切り制御してコンバイン1の操向を行ったり、或いは後述する機体の停止指令が出されると駐車ブレーキペダル52を油圧シリンダを介して作動させて、走行クラッチ42の切りと駐車ブレーキ48をかけるといった制御を行う。
【0057】
また、前述のステレオカメラ58が撮影した画像データに基づいて画像処理を行って傾きや偏りを演算するIP-ECU60は、コンバイン1の後方を撮像する単眼カメラで構成するバックカメラ61や近距離無線通信モジュール62を備えて、スマートフォン、タブレット端末、或いはノートパソコンといったモバイルコンピュータ63と無線通信可能に設け、このモバイルコンピュータ63は、予めインストールする支援システムのアプリケーションソフトウェアによって支援システムの全体をサポートする。
【0058】
さらに、DISPLAY-ECU64は、フロントコンソール15に設けるタッチパネルや操作ボタンスイッチ付きの液晶ディスプレイによって構成するモニタ65を制御し、例えば、図10に示すようにカメラボタン66を押すと通常の回転計や速度表示等に替えて左カメラ58やバックカメラ61の映像を表示させることができる。そして、これらの電子制御ユニット59、60、64はコントローラーエリアネットワーク(CAN)で結ばれているので、必要に応じて各々の制御情報を各ECUで共有することができる。
【0059】
次に、前述の支援システムを用いてコンバイン1の荷台56や歩み板57に対する傾きや偏りを検出する方法について説明すると、先ず図9に示すようにコンバイン1をこれから積み込むトラックの荷台56や歩み板57の寸法(長さ、幅、高さ等)を、モバイルコンピュータ63の支援システムのアプリケーションソフトウェアを起動させて、その設定画面において入力する。また、コンバイン1のクローラ10位置を含む必要な寸法や、ステレオカメラ58の設置高さや画素数等もここで入力するか、又は予め初期設定を行った際に記憶した値を読み出してその後の演算に用いる。
【0060】
また、図11は、トラックの荷台56とその荷台56の後部に2つの歩み板57を設置してコンバイン1をトラックに積み込む際の特に、コンバイン1の荷台56や歩み板57に対する傾きαを演算するための説明用の平面図と側面図であって、コンバイン1に設けるステレオカメラの左右のカメラ58は共にトラックの荷台56の後部寄りから歩み板57の地上に接地する先端部を撮影している。
【0061】
そして、ここで左カメラ58が撮影している画像データ(例えば、256階調グレースケール)をIP-ECU60は、先ずハフ変換を用いて画像内の線分を検出してその線分の座標を配列に格納する。また、この格納した配列の中で荷台56の後端となる線分の座標を例えば、略水平方向を向く線分中でその長さが最も長いもの、或いは、図7に示すように左上を原点0として右側をx軸、また、下方をy軸とした画像の座標系において、最小x0と最大x1の座標有するものを抽出して、その線分の座標((x0,y0)、(x1,y1))を求める。
【0062】
一方、IP-ECU60は、ステレオカメラを用いた視差から距離を求めるという一般的に知られている原理に基づいて取得した測距データ群から、左カメラ58が撮影している画像の中の荷台56後端の線分に該当する座標(x0,y0)における距離LLと座標(x1,y1)における距離LRを取得する。そして、この荷台56の左右後端との距離LL、LR、また、既知の荷台56の幅Wに基づいてカメラ視線におけるコンバイン1の傾きα’を演算することができ、さらに、荷台56の高さH1 とステレオカメラ58の設置高さH0 に基づいて、この傾きα’をコンバイン1が走行する平面上(路上)に置換してコンバイン1の傾きαを演算する。
【0063】
ところで、図12に示す歩み板57における走行路を平面に展開して示す説明図のように、コンバイン1が路上から歩み板57上を登坂して荷台56の中央となる所定位置に自走する場合に、コンバイン1が荷台56の左右に設けるあおりに当接して損傷したり、又は荷台56の左右からはみ出したりすることがなく積み込むことができる最大の傾きβは演算によって求めることができる。
【0064】
すなわち、傾きβを演算によって求めるために必要な荷台56の幅W、高さH1 、ステレオカメラ58の設置高さH0 、コンバイン1の全幅W0 、全長L0 、荷台56の後端からコンバイン1の後端までの距離L1 、歩み板57の長さL3 が既知で、しかも、歩み板57の接地する先端とカメラ58を設けるコンバイン1が走行する平面上(路上)における距離L4 は前述の荷台56の左右後端との距離LL、LRに基づいて演算することができるから(図11参照)、これらの値に基づいて傾きβを演算することができる。
【0065】
また、図13に示す歩み板57における走行路を平面に展開して示す説明図のように、コンバイン1が路上から歩み板57上を登坂する場合に、コンバイン1のクローラ10が歩み板57を踏み外すことなく自走することができる最大の傾きβは、歩み板57の幅W1 と長さL3 が既知であるから、演算によって求めることができる。
【0066】
さらに、図14に示す歩み板57における走行路を平面に展開して示す説明図中の、左カメラ58が撮影している画像の図から明らかな通り、この図中の右側歩み板57の画像処理した線分は、例えば、格納した前述の配列の中で歩み板57が左右にあることから、その線分がy軸において最大となるか、2番目の線分を対象として、その内、x軸における座標位置がより上回るものを抽出して、これを右側歩み板57の線分の座標((x0,y0)、(x1,y1))として取得することができる。
【0067】
また、この歩み板57の幅W1 は既知であり、さらに、歩み板57の左右中心は左右端から例えば半分であるのであれば、そのx軸における座標は(x0+(x1-x0)/2)であると見做すことができる。そして、左カメラ58の光軸が位置するx軸における座標(x)は横撮像素子数の半分であることから、カメラ58の仕様から予め取得して既知である。そのため、コンバイン1の荷台57や歩み板57に対する偏りXはこれらの値から演算して求めることができる。
【0068】
一方、コンバイン1の傾きがβの時に、コンバイン1が路上から歩み板57上を登坂して荷台56の中央となる所定位置に自走する場合に、コンバイン1が荷台57の左右に設けるあおりに当接して損傷したり、又は荷台57の左右からはみ出したりすることがなく積み込むことができる最大の偏りγは、図12に示す場合と同様に図14において演算によって求めることができ、従って、コンバイン1の傾きがαで偏りがXであると検出された際に、この偏りXが傾きαをβの代わりに代入して演算した最大の偏りγを超えていれば、荷台57へのコンバイン1の積み込みは出来ないと判断することができる。
【0069】
さらに、図15に示す歩み板57における走行路を平面に展開して示す説明図のように、コンバイン1が路上から歩み板57上を登坂する際に、コンバイン1の傾きがαで偏りがXであると検出された場合に、コンバイン1のクローラ10が歩み板57を踏み外すことなく自走することができるか否かは、コンバイン1が右側に傾いている際と、逆に左側に傾いている際に分けて比較することによって判断することができる。
【0070】
従って、以上説明した事項から明らかなように、コンバイン1に設けるステレオカメラ58によって撮影した画像データからコンバイン1の荷台56や歩み板57に対する傾きαと偏りXを測定することができ、また、この得られた傾きαと偏りXに基づいて、コンバイン1が自走して路上から歩み板57上を登坂して荷台56の中央となる所定位置に支障なく積み込むことができるか否かを総合的に判断することができる。
【0071】
なお、図12図15を用いて説明した積み込み可否の各判断においては、荷台56の後端となる線分があおりの幅を含むのか、含まないのか明らかにしていないが、起立するあおりによってその線分の長さに影響があれば、荷台56の幅から左右のあおりの幅を差し引くことも必要となる。また、左右の歩み板57の間隔は左右のクローラ10の間隔と等しく、また、荷台56の後端に真っすぐ平行に設置することを前提として演算を行っているが、実際には多少の傾き等が発生することが考えられ、その点、左右の歩み板57の間隔や傾き、或いは取付位置を考慮した校正が必要になり、さらに、これらを勘案して前述の最大傾きや偏りに安全率を乗じて判断してもよい。
【0072】
次に、コンバイン1のトラックの荷台56への積み込み作業における支援システムの役割について纏めて説明すると、図16は支援システムの工程図を示し、先ず作業者はモバイルコンピュータ63の支援システムを起動させて、呼び出した設定画面(図9参照)において前述のコンバイン1の機体寸法やステレオカメラ58の設置高さ等に誤りがないか確認する。次に、トラックの荷台56や歩み板57の寸法を入力する。
【0073】
そして、この場合にトラックの荷台長が、コンバイン1の全長L0に荷台56後端から積み込むコンバイン1の後端に至る予定する設定長さL1を加えた長さ(L0+L1)より短ければ、荷台56の前壁にコンバイン1が衝突してしまうから不適合であり、また、荷台幅Wよりコンバイン1の全幅W0が長ければ、これも荷台56として不適合であるから、このような場合はモバイルコンピュータ63の音声警報によってその旨を作業者に報知する。
【0074】
また、歩み板57の幅W1がクローラ10幅より相当広ければ特に問題はないが、あまり広くなければ左右のクローラ10の中心間隔やコンバイン1の左右端からのクローラ10の位置を示した上で、この左右のクローラ10がその中心を通るように左右の歩み板57の適正な設置位置を、荷台56の左右端からの長さ表示等によって指示する。そして、作業者がこれに基づいて適正な位置に左右の歩み板57を設置したならば、その完了の合図をモバイルコンピュータ63に送る。
【0075】
そして、この確認が取れたらモバイルコンピュータ63は、DISPLAY-ECU64に対してモニタ65に左カメラ58映像を表示するように指示し、また、作業者にコンバイン1をトラックの荷台56に向かうように音声案内を行う。また、その後にトランスミッションの回転センサ等の検出に基づいてメインECU59からコンバイン1の前進走行が開始されたことが伝えられると、モバイルコンピュータ63はIP-ECU60にステレオカメラ58の撮影した画像データを画像処理するように開始指示する。
【0076】
そこで、IP-ECU60は、画像処理してトラックの荷台56後端と歩み板57の先端部の線分の座標が得られた場合に、ステレオカメラ58の測距や各部の寸法に基づいて、コンバイン1の荷台56や歩み板57に対する傾きαと偏りXを演算し(図11図14参照)、また、その結果をモバイルコンピュータ63に、画像処理の終了が伝えられるまで連続して伝え続ける。
【0077】
一方、モバイルコンピュータ63は、この傾きαと偏りXに基づいて前述のようにコンバイン1の荷台56に対する積み込みの可否を判定し、自らのディスプレイに傾きαと偏りX、そして、積み込みの可否を随時、更新しながら表示する。また、モバイルコンピュータ63は、IP-ECU60から送られてくるコンバイン1の荷台56や歩み板57との距離LL、LR、L4を監視する。そして、この距離が予め定めた所定距離を切ったと判定するとコンバイン1の進行方向の修正を行う操向の禁止を作業者に音声で伝える。
【0078】
つまり、マルチステアリングレバー55によって例えば、左右何れかのサイドクラッチをひとたび切り操作して、その後にこの切り操作を解除しても、サイドクラッチを構成するドッグクラッチは、その両者の回転がうまく合って凹凸の歯形が互いに噛み合うことによって初めてクラッチが接続することになるから、コンバイン1の積み込みにあたっては、コンバイン1の直進時の進行方向を見定めるために操向禁止を指示して所定距離の様子見の走行を要求する。
【0079】
そして、この様子見の走行を終えてコンバイン1が荷台56や歩み板57に十分に近づいたと判定すると、モバイルコンピュータ63はコンバイン1の荷台56に対する積み込みの可否の最終判定を行って、積み込みが不可であれば再トライを作業者に指示して最初からやり直すように促す。なお、その場合に再トライのためにコンバイン1が一旦後進するのであれば、モバイルコンピュータ63からDISPLAY-ECU64に対してモニタ65にバックカメラ61映像を表示するように指示させてもよい。
【0080】
一方、最終判定において積み込みが可能であれば、モバイルコンピュータ63は作業者に降車を促すと共に、そのままコンバイン1を自走させて荷台56への積み込みの開始を指示する。また、モバイルコンピュータ63はこの最終判定を終えるとIP-ECU60に画像処理の終了を指示する。さらに、その後、コンバイン1が自走して荷台56の所定の積み込み位置に至ると、これを見守っていた作業者がモバイルコンピュータ63に対してコンバイン1の停止を指示する。
【0081】
そこで、モバイルコンピュータ63はメインECU59に対して機体停止の指示を出し、これによりメインECU59は、駐車ブレーキペダル52を油圧シリンダを介して作動させて、走行クラッチ42を切ると共に、駐車ブレーキ48をかけてコンバイン1を速やかに停止させる。
【0082】
また、停止させたコンバイン1は、その後にコンバイン1に搭乗した作業者が主変速レバー54を中立位置に戻した後に、モバイルコンピュータ63に対してコンバイン1の停止の解除を指示する。そのため、駐車ブレーキペダル52の油圧作動は解かれて、また、その代わりに作業者は駐車ブレーキペダル52を自ら踏んでロックを施し、さらに、エンジン37を切って降車する。そして、これをもってモバイルコンピュータ63の支援ソフトウェアを終了させる。
【0083】
なお、前述の積み込み支援の工程において、コンバイン1の荷台56や歩み板57に対する傾きαと偏りXが演算して得られたら、モバイルコンピュータ63がメインECU59に対してトランスミッションの操向装置を作動させながら行う自動走行の開始を指示し、これによりメインECU59は、サイドクラッチの断続操作等に基づいて、トラックの荷台56や歩み板57に対する傾きαと偏りXが共に無くなるようにフィードバック制御を行わせてもよい。但し、このような自動走行はコンバイン1の進行方向の修正を行う操向禁止の報知と同時に終了させる必要がある。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが例えば、左右のクローラ式走行装置をそれぞれ油圧モータで駆動して、作業車両の進行方向の修正を左右の油圧モータの回転数の差によって行うものでは、サイドクラッチを元々備えないものではあるが、このような作業車両を車両運搬車に積み込む場合であっても、本発明を応用して支援システムを構成することができる。また、実施形態においては、作業車両の荷台や歩み板に対する傾きや偏りをステレオカメラを用いて見出す(検出する)ようになしたが、レーザー光を使って測距等を行うライダーや、その他の3次元計測機器を用いてこれらの検出を行ってもよく、本発明は、前述の実施形態に必ずしも限定するものではない。
【符号の説明】
【0085】
1 コンバイン(作業車両)
4 クローラ式走行装置
56 車両運搬車の荷台
57 歩み板
58 ステレオカメラ(検出手段)
59 メインECU(支援手段)
60 IP-ECU(検出手段)
63 モバイルコンピュータ(支援手段)
α 傾き
X 偏り
β 傾きの最大値
γ 偏りの最大値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16