(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136682
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】発電装置及び発電装置の装着方法
(51)【国際特許分類】
H02K 7/18 20060101AFI20230922BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H02K7/18 A
H02K7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042494
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】吉武 裕
(72)【発明者】
【氏名】永井 弘人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 亮汰
(72)【発明者】
【氏名】山田 遼太
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB02
5H607BB14
5H607CC03
5H607CC05
5H607DD03
5H607EE51
5H607FF21
(57)【要約】
【課題】歩行やジョギング等の様々な運動においても効率的に発電しつつ、装置の大型化を回避することが可能な発電装置及び発電装置の装着方法を提供する。
【解決手段】歩行発電装置100は、鉛直方向又は略鉛直方向に延びるアーム112と、このアーム112の上端側に設けられる錘114と、このアーム112の下端側に設けられるとともに錘114を回動可能に支持する支点部116とを有する振り子部110と、振り子部110の錘114の一方の側面部が当接可能に設けられる第1のばね130と、振り子部110の錘114の他方の側面部が当接可能に設けられる第2のばね132と、第1のばね130と第2のばね132との間で振り子部110の錘114が回動するときに電力を発生させる発電部120とを備える。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向又は略鉛直方向に延びるアームと、当該アームの上端側に設けられる物体と、当該アームの下端側に設けられるとともに前記物体を回動可能に支持する支点部と、を有する振り子部と、
前記振り子部の前記物体の一方の側面部が当接可能に設けられる第1の弾性部材と、
前記振り子部の前記物体の他方の側面部が当接可能に設けられる第2の弾性部材と、
前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材との間で前記振り子部の前記物体が回動するときに電力を発生させる発電部と、
を備える発電装置。
【請求項2】
前記発電部は、
前記振り子部の前記支点部に取り付けられる入力軸を有し、
前記振り子部の前記物体が前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材との間で回動したときに、前記支点部とともに前記入力軸が回動することで発電する
請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記物体は、磁石を含み、
前記発電部は、
前記磁石の一方の側面部が挿入可能であって、前記第1の弾性部材の外周を囲んで設けられる第1のコイルと、
前記磁石の他方の側面部が挿入可能であって、前記第2の弾性部材の外周を囲んで設けられる第2のコイルと、を有し、
前記第1のコイル及び前記第2のコイルは、前記振り子部の前記磁石が前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材との間で回動し、前記第1のコイル内及び前記第2のコイル内の磁界が変化したときに電力を発生させること
を特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項4】
鉛直方向又は略鉛直方向に延びるとともに前記振り子部の前記物体と前記第1の弾性部材又は前記第2の弾性部材との間に設けられるアームと、前記アームの下端側に設けられるとともに前記アームを回動可能に支持する支点部と、を有する回動機構を備え、
前記発電部は、
前記回動機構の前記支点部に取り付けられる入力軸を含み、前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材との間で回動する前記物体によって前記アームが回動し、前記支点部に取り付けられた前記入力軸が回動することで電力を発生させる発電機を有する
請求項1又は請求項2に記載の発電装置。
【請求項5】
前記振り子部において、前記振り子部の重心は、前記支点部の回転中心に対してユーザーの進行方向とは反対方向にオフセットされる
請求項1に記載の発電装置。
【請求項6】
前記振り子部の回動は、ユーザーの歩行又は走りにより発生させる
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の発電装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の発電装置をユーザーの脚の大腿部に装着する装着方法であって、
前記振り子部の前記アームの軸心を前記大腿部の軸心に対して所定の角度だけユーザーの進行方向に傾かせた状態でユーザーの前記大腿部に取り付ける、
発電装置の装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電装置及び発電装置の装着方法
に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、スマートフォン、タブレット等の携帯情報端末が世界中で普及しており、日常生活で必須なものとなっている。また、携帯情報端末の使用機会、使用時間の増加から、毎日のバッテリーの充電も欠かすことができないものとなっている。そのため、携帯情報端末の使用時間が長い人はモバイルバッテリーを携帯し、それから携帯情報端末への充電を行っている。しかし、充電の頻度にもよるが充電作業は面倒であり、ユーザーにとって負担である。そこで、面倒な充電作業からの解放を目的として、充電の回数を減らす又は充電をなくすことが可能な携帯情報端末の提供が望まれている。
【0003】
発電を自動で行う技術としては、以下に示す文献が開示されている。例えば、特許文献1には、ユーザーの歩行動作に応じて筐体を振り子のように回動させることで起電力を得る携帯端末装置が開示されている。また、特許文献2には、細長い円筒状のハウジング内にばねによって上下方向に移動可能に支持された磁性体と、磁性体の上下方向の変位に応じて電気エネルギーを発生させるコイルとを備えた電気エネルギー発生器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5166193号
【特許文献2】米国特許第7498682号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1等に開示される従来の携帯端末装置では、以下に示す問題があった。歩行やジョギング等の動作周期は、一般に約1Hzであり、その動作周期に携帯端末装置の固有振動数を1Hzに合わせるために、回転中心から重心点までの距離である振り子の長さを約25cm程度に設計する必要があり、装置全体が大型化してしまうという問題があった。また、歩行とジョギングでは、動作周期が若干相違しており、ジョギングの動作周期の方が歩行の動作周期よりも若干短くなっている。そのため、従来の装置で採用されている重力型の振り子では、両動作の周期に追従することができないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に開示される電気エネルギー発生器では、以下に示す問題があった。従来の発生器では、磁石を上下方向からばねで付勢するばね―質量系で構成されるため、発生器の固有振動数は一意に決まる。そのため、歩行やジョギング等のように動作周期が異なる場合に、両運動の動作周期に追従できないという問題があった。また、従来の発生器では、鉛直方向の振動のみを利用して発電するため、歩行やジョギング等の動作に伴う水平方向の外力を有効に活用することができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するものであり、歩行やジョギング等の様々な運動においても効率的に発電しつつ、装置の大型化を回避することが可能な発電装置及び発電装置の装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本開示は、鉛直方向又は略鉛直方向に延びるアームと、当該アームの上端側に設けられる物体と、当該アームの下端側に設けられるとともに前記物体を回動可能に支持する支点部と、を有する振り子部と、前記振り子部の前記物体の一方の側面部が当接可能に設けられる第1の弾性部材と、前記振り子部の前記物体の他方の側面部が当接可能に設けられる第2の弾性部材と、前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材との間で前記振り子部の前記物体が回動するときに電力を発生させる発電部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、振り子部を倒立型で構成するとともに振り子部の左右に第1の弾性部材及び第2の弾性部材を設けることで、ユーザーの歩行等の運動に応じて振り子部を継続して往復回動させることができ、振り子部の固有振動数もユーザーの運動の周期に合わせることができる。これにより、ユーザーの歩行等の運動の周期と振り子部の周期を一致させることで共振を利用することができ、振り子部を重力系で構成した場合よりも装置の大型化を図ることなく、大きな電力を得ることができる。また、歩行やジョギング等の動作に伴う鉛直方向の外力及び水平方向の外力を両者とも有効に活用するため、大きな電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】第1の実施の形態に係る歩行発電装置の平面図である。
【
図1B】第1の実施の形態に係る歩行発電装置の側面図である。
【
図2A】第2の実施の形態に係る歩行発電装置の平面図である。
【
図2B】第2の実施の形態に係る歩行発電装置の側面図である。
【
図3A】第3の実施の形態に係る歩行発電装置の平面図である。
【
図3B】第3の実施の形態に係る歩行発電装置の側面図である。
【
図4A】第4の実施の形態に係る歩行発電装置の平面図である。
【
図4B】第4の実施の形態に係る歩行発電装置の側面図である。
【
図5】第4の実施の形態に係る歩行発電装置をユーザーの大腿部に取り付けた状態を示す図である。
【
図6A】第4の実施の形態に係る歩行発電装置におけるユーザーの歩きの場合の発電部の出力波形を示すグラフである。
【
図6B】第4の実施の形態に係る歩行発電装置におけるユーザーの早歩きの場合の発電部の出力波形を示すグラフである。
【
図6C】第4の実施の形態に係る歩行発電装置におけるユーザーのジョギングの場合の発電部の出力波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態では、歩行発電装置の振り子部を構成する錘側及び磁石側を歩行発電装置の上側とし、振り子部を構成する支点部側を歩行発電装置の下側とする。また、歩行発電装置を構成する第1の取付板側を歩行発電装置の右側とし、第2の取付板側を歩行発電装置の左側とする。
【0012】
<第1の実施の形態>
(歩行発電装置100の構成例)
図1Aは第1の実施の形態に係る歩行発電装置100の平面図であり、
図1Bは
図1Aに示す歩行発電装置100の側面図である。
【0013】
歩行発電装置100は、歩行装置の一例であり、
図1A及び
図1Bに示すように、平面
視矩形状のベース板102と、第1の弾性部材の一例である第1のばね130と、第2の弾性部材の一例である第2のばね132と、振り子部110と、発電部120とを備える。
【0014】
ベース板102の表面側には、第1のばね130、第2のばね132及び振り子部110が設けられ、これらの部品が
図1Bの二点鎖線で示すケース180によって覆われている。ベース板102の上部右側面には表面方向に立ち上がる第1の取付板140が固着され、ベース板102の上部左側面には表面方向に立ち上がる第2の取付板142が固着されている。
【0015】
第1のばね130は、例えば圧縮ばねで構成され、所定のばね係数kを有する。第1のばね130の基端部は第1の取付板140の内面に取り付けられ、第1のばね130の先端部は錘114の右側方部に当接可能に設けられる。第1のばね130の先端部と錘114の右端面とは、振り子部110が鉛直方向の中立点で静止している場合、隙間g1だけ離間する。第1のばね130は、錘114が右方向θ1に回動したときに錘114の右端面が当接し、錘114の付勢力に応じて伸縮する。
【0016】
第2のばね132についても、第1のばね130と同様に、例えば圧縮ばねで構成され、所定のばね係数kを有する。第2のばね132の基端部は第2の取付板142の内面に取り付けられ、第2のばね132の先端部は錘114の左側方部に当接可能に設けられる。第2のばね132の先端部と錘114の左端面とは、振り子部110が鉛直方向の中立点で静止している場合、隙間g2だけ離間する。第2のばね132は、錘114が左方向θ2に回動したときに錘114の左端面が当接し、錘114の付勢力に応じて伸縮する。
【0017】
振り子部110は、アーム112と、物体の一例である錘114と、支点部116とを有する。アーム112は、所定の長さを有する棒状部材であって、鉛直方向又は略鉛直方向に延びる。錘114は、所定の質量を有する円柱体、あるいは直方体で構成され、その軸心がアーム112の長手方向に直交してアーム112の上端に固着されている。支点部116は、アーム112の下端に設けられるとともに、錘114及びアーム112を矢印の右方向θ1及び左方向θ2に回動(揺動)可能に支持する。支点部116には、後述する発電部120の入力軸124が嵌合される孔117が形成されている。このような構成により、本実施の形態の振り子部110では、質量である錘114が通常の振り子とは逆側の支点部116から離れた上端側に位置した倒立型の振り子を構成している。
【0018】
ベース板102の裏面側には、発電部120が固定されている。発電部120は、回転型の発電機であり、例えば入力軸124を有するギアード発電機により構成できる。発電部120に設けられる入力軸124は、ベース板102を裏面側から表面側(厚み方向)に貫通し、その先端側が支点部116の孔117に嵌合されている。これにより、発電部120の入力軸124は、振り子部110の左右方向の回動に応じて、振り子部110の支点部116とともに一体的に往復回動する。発電部120は、被充電器150に結線されており、入力軸124の回動に応じて発電して電力を被充電器150に充電する。被充電器150には、モバイルバッテリー及びバッテリーが搭載されたスマートフォン、携帯電話、タブレット等の情報処理端末が含まれる。
【0019】
(歩行発電装置100の動作例)
次に、第1の実施の形態に係る歩行発電装置100の動作例について説明する。なお、振り子部110は倒立型で不安定な姿勢であるため、外力が作用しない状態では錘114は左右のどちらかに倒れ、第1のばね130又は第2のばね132に当接して静止している。
【0020】
ユーザーが歩行又はランニングを開始すると、歩行発電装置100全体が上下方向の鉛直方向及び左右方向、前後方向の水平方向に振動する。歩行発電装置100の振動に伴い、ケース180内の振り子部110の錘114も左右方向に回動する。例えば、錘114が右方向θ1に回動すると、錘114の右端面が第1のばね130に当接して押圧する。これにより、第1のばね130が圧縮し、その反力(弾性力)によって錘114が左方向θ2に押し戻される。
【0021】
錘114が左方向θ2に回動すると、錘114の左端面が第2のばね132に当接して押圧する。これにより、第2のばね132が圧縮し、その反力(弾性力)によって錘114が右方向θ1に押し戻される。本実施の形態では、ユーザーが歩行中又はランニング中であるとき、振り子部110が倒立型で不安定であることに起因して、振り子部110が第1のばね130と第2のばね132との間を継続して往復移動する。
【0022】
振り子部110の錘114が支点部116を支点として左右方向に回動すると、発電部120の入力軸124も軸周りに回動する。これにより、発電部120を構成するギアード発電機が入力軸124の回動に応じて回転駆動し、運動エネルギーを電気エネルギーである電力に変換する。電気エネルギー(発生電圧)は、0Vを中心としてプラス側への数Vの電圧と、マイナス側への数Vの電圧とが、歩行発電装置100の振動、すなわち振り子部110の錘114の左右方向の回動に応じて交互に発生する。発生した交流電圧は、図示しない整流回路によって整流されて直流電圧として被充電器150に充電される。
【0023】
ここで、振り子部110の往復動作の固有振動数は、回転中心である入力軸124の中心から振り子部110の重心C1までの距離r、振り子部110全体の質量Wだけではなく、錘114と第1のばね130の隙間g1、錘114と第2のばね132との隙間g2、第1のばね130及び第2のばね132のばね定数k等によって決定される。本実施の形態の歩行発電装置100の固有振動数は1Hz付近になるのが好ましいことから、ばね定数k等は以下のように選定できる。
【0024】
一例として、距離r=0.05m、質量W=0.16kg、剛体としての慣性モーメントI=8×10-4Kgm2、錘114の振れ角が右方向θ1に13度、左方向θ2に13度とすると、錘114と第1のばね130との隙間g1=8度、錘114と第2のばね132との隙間g2=8度、第1のばね130及び第2のばね132のばね定数k=0.135Nm/radとしたとき、歩行発電装置100の固有振動数を1Hz付近にすることができる。
【0025】
第1の実施の形態によれば、振り子部110を倒立型で構成するとともに振り子部110の左右に第1のばね130及び第2のばね132を設けることで、ユーザーの歩行等の運動に応じて振り子部110が第1のばね130及び第2のばね132間を継続して往復回動する。ここで、ばね定数は、非接触状態においては負で、接触状態で正であり、振動一周期のばね定数は非接触状態と接触状態との平均値となる。平均ばね定数は接触状態の正のばねよりも小さな値となる。したがって、振り子部110をコンパクトに構成した場合でも、振り子部110の固有周期をほぼ1秒にできる。また歩行とジョギングでは、動作周期が若干相違しており、ジョギングの動作周期の方が歩行の動作周期よりも短い。一方で動作に伴う外力はジョギングの方が大きいため、錘114の振れ角が大きくなり、接触状態が長くなる。したがって、平均ばね定数が大きくなり、振り子部110の固有周期が短くなってジョギングの動作周期と合致する。よって、ユーザーの歩行等の運動状態により周期が異なったとしてもその周期と振り子部110の周期を一致させることで共振を利用することができ、振り子部110を重力系で構成した場合よりも装置の大型化を図ることなく、大きな電力を得ることができる。
【0026】
また、第1の実施の形態によれば、振り子部110を倒立型で構成することで、歩行やジョギングの運動で発生する水平方向及び鉛直方向の振動外力を有効に利用することができる。これにより、例えば、一方向である鉛直方向の振動外力のみを利用して発電する発電装置と比べて発電効率の向上を図ることができる。
【0027】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では歩行発電装置200の発電方式が電磁誘導型である点において、第1の実施の形態の回動型の発電方式である歩行発電装置100とは相違している。なお、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と共通する構成及び動作については、第1の実施の形態の説明を引用することで重複する説明を省略する。
【0028】
(歩行発電装置200の構成例)
図2Aは第2の実施の形態に係る歩行発電装置200の平面図であり、
図2Bは
図2Aに示す歩行発電装置200のA-A´線に沿った断面図である。
【0029】
歩行発電装置200は、歩行装置の一例であり、
図2A及び
図2Bに示すように、平面視矩形状のベース板202と、第1の弾性部材の一例である第1のばね230と、第2の弾性部材の一例である第2のばね232と、振り子部210と、発電部220とを備える。
【0030】
ベース板202の表面側には、第1のばね230、第2のばね232、振り子部210、発電部220が設けられ、これらの部品が
図2Bの二点鎖線で示すケース280によって覆われている。ベース板202の上部右側面には表面方向に立ち上がる第1の取付板240が固着され、ベース板202の上部左側面には表面方向に立ち上がる第2の取付板242が固着されている。
【0031】
第1のばね230は、例えば圧縮ばねで構成され、所定のばね係数kを有する。第1のばね230の基端部は第1の取付板240の内面に取り付けられ、第1のばね230の先端部は磁石214の右側方部に当接可能に設けられる。第1のばね230の先端部と磁石214の右端面とは、振り子部210が鉛直方向の中立点で静止している場合、隙間g1だけ離間する。第1のばね230は、磁石214が右方向θ1に回動したときに磁石214の右端面が当接し、磁石214の付勢力に応じて伸縮する。
【0032】
第2のばね232についても、第1のばね230と同様に、例えば圧縮ばねで構成され、所定のばね係数kを有する。第2のばね232の基端部は第2の取付板242の内面に取り付けられ、第2のばね232の先端部は磁石214の左側方部に当接可能に設けられる。第2のばね232の先端部と磁石214の左端面とは、振り子部210が鉛直方向の中立点で静止している場合、隙間g2だけ離間する。第2のばね232は、磁石214が左方向θ2に回動したときに磁石214の左端面が当接し、磁石214の付勢力に応じて伸縮する。
【0033】
振り子部210は、アーム212と、物体の一例である磁石214と、支点部216とを有する。アーム212は、所定の長さを有する棒状部材であって、鉛直方向又は略鉛直方向に延びる。磁石214は、例えば所定の質量を有する円柱体や直方体で構成され、その軸心がアーム212の長手方向に直交してアーム212の上端に固着されている。本実施の形態では、例えば、磁石214の右側をN極とし、磁石214の左側をS極とする。なお、磁石214の極性は逆であっても良い。支点部216は、アーム212の下端に設けられるとともに、磁石214及びアーム212を矢印の右方向θ1及び左方向θ2に回動可能に支持する。支点部216には、固定軸224が嵌合される孔217が形成されている。このような構成により、本実施の形態の振り子部210では、質量である磁石21
4が通常の振り子とは逆側の支点部216から離れた上端側に位置した倒立型の振り子を構成している。
【0034】
発電部220は、第1のコイル226及び第2のコイル228を有し、振り子部210の錘である磁石214の移動に伴う磁界の変化に基づいて誘導起電力を発生させる電磁誘導型の発電機で構成される。
【0035】
第1のコイル226は第1のばね230の外周を囲むように配置され、第1のコイル226の基端部が第1の取付板240の内面に取り付けられている。第1のコイル226の内側には、磁石214の右端側が移動可能に挿入される。第1のコイル226は、図示しない配線を介して被充電器250に結線されている。第1のコイル226では、磁石214の左右方向への往復移動に伴う磁界の変化により誘導起電力を発生し、被充電器250に電力を充電する。被充電器250には、モバイルバッテリー及びバッテリーが搭載されたスマートフォン、携帯電話、タブレット等の情報処理端末が含まれる。
【0036】
第2のコイル228は第2のばね232の外周を囲むように配置され、第2のコイル228の基端部が第2の取付板242の内面に取り付けられている。第2のコイル228の内側には、磁石214の左端側が移動可能に挿入される。第2のコイル228は、図示しない配線を介して被充電器250に結線されている。第2のコイル228でも、磁石214の左右方向への往復移動に伴う磁界の変化により誘導起電力を発生し、被充電器250に電力を充電する。
【0037】
なお、本実施の形態では、第1のコイル226及び第2のコイル228内に磁石214を挿入した状態としたが、第1のコイル226及び第2のコイル228内を貫く磁界を変化させることができれば、第1のコイル226及び第2のコイル228の近傍の位置に磁石214を配置する構成としても良い。また、発電機を2個で構成し、第1のコイル226で発生した電力と、第2のコイル228で発生した電力を別々の発電機に充電する構成としても良い。
【0038】
(歩行発電装置200の動作例)
次に、第2の実施の形態に係る歩行発電装置200の動作例について説明する。
【0039】
ユーザーが歩行又はランニングを開始すると、歩行発電装置200全体が上下方向である鉛直方向及び左右方向、前後方向である水平方向に振動する。歩行発電装置200の振動に伴い、振り子部210の磁石214が左右方向に回動する。
【0040】
具体的には、磁石214が右方向θ1に回動すると、磁石214のN極である右端側が第1のコイル226内を移動する。これにより、第1のコイル226内の磁界が変化(例えば増加)することで誘導起電力(誘導電流)が発生する。また、磁石214の右端面が第1のばね230に当接すると、第1のばね230が圧縮し、その反力によって磁石214が左方向θ2に押し戻される。つまり、磁石214の右端側が第1のコイル226内から離れる方向に移動する。この場合にも、第1のコイル226内の磁界が変化(例えば減少)するので誘導起電力が発生する。第1のコイル226で発生した誘導起電力は、図示しない整流回路によって整流されて直流電圧として被充電器250に充電される。
【0041】
第1のばね230によって押し戻された磁石214は、左方向θ2に回動し、S極である左端側が第2のコイル228内を移動する。これにより、第2のコイル228内の磁界が変化することで誘導起電力が発生する。また、磁石214の左端面が第2のばね232に当接すると、第2のばね232が圧縮し、その反力によって磁石214が右方向θ1に押し戻される。つまり、磁石214の左端側が第2のコイル228内から離れる方向に移
動する。この場合にも、第2のコイル228内の磁界が変化するので誘導起電力が発生する。第2のコイル228で発生した誘導起電力は、図示しない整流回路によって整流されて直流電圧として被充電器250に充電される。
【0042】
第2の実施の形態では、ユーザーが歩行中又はランニング中であるとき、振り子部210が倒立型で不安定であることに起因して、振り子部210が第1のばね230と第2のばね232との間を継続して往復移動する。これにより、左右に配置された第1のコイル226、第2のコイル228内のそれぞれで、磁界の変化による電磁誘導により、プラス側、マイナス側の電圧を交互に発生させることができる。また、上述したように、振り子部110をコンパクトに構成した場合でも、振り子部110の固有周期をほぼ1秒にできる。また歩行とジョギングで動作周期が若干相違しても、外力の大きさに応じて振り子部110の固有周期が変化して動作周期と合致する。よって、ユーザーの歩行等の運動状態により周期が異なったとしてもその周期と振り子部210の周期を一致させることで共振を利用することができ、振り子部210を重力系で構成した場合よりも装置の大型化を図ることなく、大きな電力を得ることができる。
【0043】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態の歩行発電装置300は2箇所の発電部を有する点において、第1の実施の形態の歩行発電装置100とは相違している。なお、第3の実施の形態において、第1の実施の形態と共通する構成及び動作については、第1の実施の形態の説明を引用することで重複する説明を省略する。
【0044】
(歩行発電装置300の構成例)
図3Aは第3の実施の形態に係る歩行発電装置300の平面図であり、
図3Bは
図3Aに示す歩行発電装置300の側面図である。
【0045】
歩行発電装置300は、歩行装置の一例であり、
図3A及び
図3Bに示すように、平面視矩形状のベース板302と、第1の弾性部材の一例である第1のばね330と、第2の弾性部材の一例である第2のばね332と、振り子部310と、発電部320A、320Bと、第1の回動機構360Aと、第2の回動機構360Bとを備える。
【0046】
ベース板302の表面側には、第1のばね330、第2のばね332、振り子部310、第1の回動機構360A及び第2の回動機構360Bが設けられ、これらの部品が
図3Bの二点鎖線で示すケース380によって覆われている。ベース板302の上部右側面には表面方向に立ち上がる第1の取付板340が固着され、ベース板302の上部左側面には表面方向に立ち上がる第2の取付板342が固着されている。
【0047】
第1のばね330は、例えば圧縮ばねで構成され、所定のばね係数kを有する。第1のばね330の基端部は第1の取付板340の内面に取り付けられ、第1のばね330の先端部は錘314の右側方に位置する。第1のばね330の先端部と錘314の右端面とは、振り子部310が鉛直方向の中立点で静止している場合、隙間g1だけ離間する。第1のばね330は、錘314が右方向θ1に回動したときに錘314の右端面によって押圧され、錘314の付勢力に応じて伸縮する。
【0048】
第2のばね332についても、第1のばね330と同様に、例えば圧縮ばねで構成され、所定のばね係数kを有する。第2のばね332の基端部は第2の取付板342の内面に取り付けられ、第2のばね332の先端部は錘314の左側方に位置する。第2のばね332の先端部と錘314の左端面とは、振り子部310が鉛直方向の中立点で静止している場合、隙間g2だけ離間する。第2のばね332は、錘314が左方向θ2に回動したときに錘314の左端面よって押圧され、錘314の付勢力に応じて伸縮する。
【0049】
振り子部310は、アーム312と、物体の一例である錘314と、支点部316とを有する。アーム312は、所定の長さを有する棒状部材であって、鉛直方向又は略鉛直方向に延びる。錘314は、例えば所定の質量を有する円柱体や直方体で構成され、その軸心がアーム312の長手方向に直交してアーム312の上端に固着されている。支点部316は、アーム312の下端に設けられるとともに、錘314及びアーム312を右方向θ1及び左方向θ2に回動可能に支持する。支点部316には、固定軸324が嵌合される孔317が形成されている。このような構成により、本実施の形態の振り子部310では、質量である錘314が通常の振り子とは逆側の支点部316から離れた上端側に位置した倒立型の振り子を構成している。
【0050】
発電部320Aは第1の回動機構360Aと対をなし、発電部320Bは第2の回動機構360Bと対をなす。
【0051】
第1の回動機構360Aは、振り子部310の右側方に配置され、第1のアーム362A及び第1の支点部366Aを有する。第1のアーム362Aは、所定の長さを有する棒状部材であって、鉛直方向又は略鉛直方向に延びる。第1のアーム362Aの上端は、第1のばね330の先端に固着されている。第1の支点部366Aは、第1のアーム362Aの下端に設けられるとともに、第1のアーム362Aを右方向θ1及び左方向θ2に回動可能に支持する。第1の支点部366Aには、後述する発電部320Aの入力軸324Aが嵌合される第1の孔367Aが形成されている。
【0052】
第2の回動機構360Bは、振り子部310の左側方に配置され、第2のアーム362B及び第2の支点部366Bを有する。第2のアーム362Bは、所定の長さを有する棒状部材であって、鉛直方向又は略鉛直方向に延びる。第2のアーム362Bの上端は、第2のばね332の先端に固着されている。第2の支点部366Bは、第2のアーム362Bの下端に設けられるとともに、第2のアーム362Bを回動可能に支持する。第2の支点部366Bには、後述する発電部320Bの入力軸324Bが嵌合される第2の孔367Bが形成されている。
【0053】
発電部320A及び発電部320Bは、ベース板302の裏面側に固定されている。発電部320A及び発電部320Bは、回転型の発電機であり、例えば第1の回動機構360A用及び第2の回動機構360B用の2個のギアード発電機で構成される。発電部320Aは、第1の回動機構360Aの第1の支点部366Aに取り付けられる入力軸324Aを有する。発電部320Bは、第2の回動機構360Bの第2の支点部366Bに取り付けられる入力軸324Bを有する。
【0054】
発電部320Aに設けられる入力軸324Aは、ベース板302の裏面側から表面側に貫通し、その先端側が第1の回動機構360Aの第1の孔367Aに嵌合されている。これにより、発電部320Aの入力軸324Aは、振り子部310の左右方向への回動に伴って、第1の回動機構360Aの第1の支点部366Aと一体的に往復回動する。
【0055】
同様に、発電部320Bに設けられる入力軸324Bは、ベース板302の裏面側から表面側に貫通し、その先端側が第2の回動機構360Bの第2の孔367Bに嵌合されている。これにより、発電部320Bの入力軸324Bは、振り子部310の左右方向への回動に伴って、第2の回動機構360Bの第2の支点部366Bと一体的に往復回動する。
【0056】
発電部320A及び発電部320Bは、入力軸324A及び入力軸324Bの往復回動により各ギアード発電機で発電する。発電部320A及び発電部320Bの各ギアード発
電機は、被充電器350に結線されており、発電した電力を被充電器350に充電する。被充電器350には、例えば、モバイルバッテリー及びバッテリーが搭載されたスマートフォン、携帯電話、タブレット等の情報処理端末が含まれる。
【0057】
(歩行発電装置300の動作例)
次に、第3の実施の形態に係る歩行発電装置300の発電時における動作例について説明する。なお、振り子部310の錘314は、中立点では不安定な状態であるため、外力が作用しない状態では右側の第1のばね330又は左側の第2のばね332に当接して静止している。
【0058】
ユーザーにより歩行又はランニングが開始されると、歩行発電装置300全体が上下方向である鉛直方向及び左右方向、前後方向である水平方向に振動する。これにより、振り子部310は不安定な状態であるため、振り子部310に振動外力が付与されることで、振り子部310の錘314が左右方向に回動する。
【0059】
具体的には、錘314が右方向θ1に回動すると、錘314の右端面が第1の回動機構360Aの第1のアーム362Aの先端に当接し、第1のアーム362A及び第1のばね330が右方向θ1に回動する。これにより、第1のばね330が圧縮し、その反力(弾性力)によって第1のアーム362A及び第1のばね330が左方向θ2に押し戻される。
【0060】
第1のばね330によって押し戻された第1のアーム362Aは左方向θ2に回動するとともに、第1のアーム362Aに当接した錘314も左方向θ2に回動する。これにより、第1の回動機構360Aでは、発電部320Aの入力軸324Aが軸周り往復回動することでギアード発電機が駆動し、運動エネルギーを電気エネルギーである電力に変換する。発生したプラス側及びマイナス側の電圧は、図示しない整流回路によって整流されて直流電圧として被充電器350に充電される。
【0061】
また、錘314が左方向θ2に回動すると、錘314の左端面が第2のアーム362Bの先端に当接し、第2のアーム362B及び第2のばね332が左方向θ2に回動する。これにより、第2のばね332が圧縮し、その反力(弾性力)によって第2のアーム362B及び第2のばね332が右方向θ1に押し戻される。
【0062】
第2のばね332によって押し戻された第2のアーム362Bは右方向θ1に回動するとともに、第2のアーム362Bに当接した錘314も右方向θ1に回動する。これにより、第2の回動機構360Bでは、発電部320Bの入力軸324Bが軸周りに往復回動することでギアード発電機が駆動し、運動エネルギーを電気エネルギーである電力に変換する。発生したプラス側及びマイナス側の電圧は、図示しない整流回路によって整流されて直流電圧として被充電器350に充電される。
【0063】
第3の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第3の実施の形態によれば、第1の回動機構360Aと第2の回動機構360Bの2箇所で発電を行うので、より発電効率を向上させることができる。また、振り子部310を支持する固定軸324を第1の実施の形態と同様にギアード発電機の回転軸(入力軸)として構成することで3箇所にて発電を行うようにしても良い。この場合には、2箇所で発電を行う場合と比べてさらに発電効率を向上させることができる。
【0064】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態では、振り子部410を構成するアームと錘を一体化して構成する点において、第1の実施の形態の振り子部110とは相違している。なお、第4の実施の形
態の歩行発電装置400は、第1の実施の形態の歩行発電装置100とは振り子部110のアーム112、錘114の形状が異なるのみで、その他の構成及び動作は共通するため、第1の実施の形態の説明を引用することで重複する説明を省略し、異なる構成部分についてのみ説明する。
【0065】
(歩行発電装置400の構成例)
図4Aは第4の実施の形態に係る歩行発電装置400の平面図であり、
図4Bは
図4Aに示す歩行発電装置400の側面図である。
【0066】
歩行発電装置400は、歩行装置の一例であり、
図4A及び
図4Bに示すように、平面視矩形状のベース板402と、振り子部410と、発電部420と、第1の弾性部材の一例である第1のばね430と、第2の弾性部材の一例である第2のばね432と、第1の取付板440と、第2の取付板442とを備える。ベース板402の表面側には、振り子部410、第1のばね430、第2のばね432等設けられ、これらの部品が
図4Bの二点鎖線で示すケース480によって覆われている。本実施の形態において、振り子部410は、錘とアームとが一体化した錘アーム414と、支点部416とを有する。錘アーム414全体の質量を増加させるとともに、質量を支点部416から離れた先端側に多く配置することにより、振り子部410の慣性モーメントを大きくすることができ、その結果、発電量を増加できる。また、歩行発電装置400には例えばモバイルバッテリー等の被充電器450が接続されており、いわゆる歩行発電機能付きバッテリーとしてユーザーに利用される。
【0067】
また、振り子部410の重心C1は、入力軸424の中心である回転中心C2に対してユーザーの進行方向Dとは反対方向にammだけオフセットしている。すなわち、歩行発電装置400では、振り子部410が振り子部410の重心C1と回転中心C2とが一致しない左右非対称の構造となっている。
【0068】
図5は、ユーザーの大腿部500の外面に歩行発電装置400を取り付ける装着方法を示す。本実施の形態では、歩行発電装置400は、例えばユーザーの脚の大腿部500にベルトやバンド等の取付手段600により着脱可能に取り付けることができる。このとき、歩行発電装置400の振り子部410の軸心S2を、大腿部500の軸心S1に対して進行方向Dに取り付け角度θだけ傾斜させて、錘アーム414が略鉛直方向に延びる状態でユーザーの大腿部500に取り付ける。この理由は、歩行中の大腿部は一般的に鉛直方向に対してユーザーの進行方向Dに所定の角度だけ傾いておりこれを、予め取り付け角度θだけ傾斜させて補正するためである。さらに振り子部410の重心C1と回転中心C2とを3~4mm程度オフセットさせることで、振り子部410の安定した往復動作を得ることができる。
【0069】
(歩行発電装置400の各運動時における発電結果例)
続けて、第4の実施の形態に係る歩行発電装置400をユーザーの脚に取り付けた状態で歩き等の運動した場合における発電結果について説明する。
【0070】
図5に示した歩行発電装置400では、取り付け角度θを約5度とし、オフセットaを3.5mmとした。歩行発電装置400をユーザーの被服のポケットに入る形態として、取り付け角度θがほぼ0度になる場合は、オフセットaをこれより大きな値にする。
【0071】
図6Aは、ユーザーの歩きの場合における歩行発電装置400の発電部420の出力波形を示すグラフである。
図6Bは、ユーザーの早歩きの場合における歩行発電装置400の発電部420の出力波形を示すグラフである。
図6Cは、ユーザーのジョギングの場合における歩行発電装置400の発電部420の出力波形を示すグラフである。なお、
図6
A~
図6Cにおいて、横軸は時間であり、縦軸は電圧である。
【0072】
図6Aに示すように、歩きの場合、歩行発電装置400の振動周期は約1秒、すなわち振動数は約1Hzとなり、一般的な人の歩きの振動周期と一致する。これにより、歩行発電装置400の振動周期とユーザーの歩きの振動周期とが共振することで、発生する電力が大きくなった。例えば、歩きの場合の電力は0.00407Wであった。
【0073】
また、
図6Bに示すように、早歩きの場合には、歩行発電装置400の振動周期が約1秒よりも短くなっている。また、
図6Cに示すように、ジョギングの場合には、早歩きの場合よりもさらに歩行発電装置400の振動周期が短くなっている。これらの場合、早歩き、ジョギング時は足のピッチ(歩数/分)が速くなり、振り子部410に付与されるユーザーの運動に基づく外力の振動周期が短くなる。しかし、その分、歩幅が大きくなり、歩行発電装置400の振り子部410に付与される外力も大きくなる。
【0074】
それに対して、倒立型の振り子部410では、振動の外力が大きくなると、振り子部410の振動、振幅が大きくなり、錘アーム414が左右の第1のばね430及び第2のばね432に接触している時間も長くなる。ここで、振動1周期あたりの平均ばね定数は、錘アーム414が第1のばね430等に接触していない間のばね定数であって負の値をとるばね定数Aと、錘アーム414が第1のばね430等に接触している間のばね定数であって正の値をとるばね定数Bとの平均値となる。
【0075】
早歩き、ジョギングの場合には、錘アーム414が第1のばね430等に接触している時間が長くなるため、ばね定数Bの占める割合が高くなり、平均ばね定数が大きくなることで、歩行発電装置400の振り子部410の固有振動の周期も短くなる。これにより、一般的な人の早歩き、ジョギング時の振動周期と、歩行発電装置400の振り子部410の振動周期とは略一致することになる。その結果、早歩き、ジョギング時においても、これらの運動の振動周期に歩行発電装置400の振動周期が追従することができ、共振状態が維持されることで大きな電力を得られることが分かった。例えば、早歩きの場合の電力は0.00572Wであり、ジョギングの場合の電力は0.00707Wであった。
【0076】
なお、第4の実施の形態の歩行発電装置400以外の歩行発電装置100,200,300についても、
図6A~
図6Cで示した結果と同様の結果を得ることができる。また、第4の実施の形態では、振り子部410の振動量を増加させることを目的として、歩行発電装置400をユーザーの脚の大腿部500に取り付けた例について説明したが、これに限定されることはない。例えば、歩行発電装置400をユーザーのズボンや上着のポケットに入れて使用してもよいし、ユーザーの腕等に取り付けても良い。この場合でも、ユーザーによる歩行等の運動により、歩行発電装置400において鉛直方向及び水平方向の振動が発生するので、所定の電力を得ることができる。
【0077】
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0078】
例えば、上述の実施の形態では、発電部120等で発電した電力をベース板102等の裏面に設けた被充電器150等に充電する構成としたが、バッテリーやスマートフォン等のバッテリーが内蔵された情報処理端末そのものを、振り子部110の錘114として構成しても良い。具体的には、
図4Aで示した歩行発電装置400において、錘アーム414をバッテリーで構成し、振り子部410の回動により発電部420で発電した電力を錘として機能するバッテリーに充電する。この場合には、錘を充電器で兼用できるので、装
置の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0079】
また、運動の一例としては、歩行、早歩き、ジョギングの他にも、例えば動作周期が歩行等と同じように約1Hzとなるような運動であれば良く、例えば上記動作周期の条件を満たす踊り等も含まれる。
【0080】
また、上記実施の形態では、錘114と第1のばね130との間、錘114と第2のばね132との間に隙間を設けているが、錘114が左右方向に往復移動できれば、錘114と第1のばね130及び第2のばね132とを隙間を設けない構成とし、各ばねのばね定数を小さくすることで、固有周期を約1秒としても良い。
【0081】
さらに、上述した実施の形態では、被充電器150,250,350,450をベース板102,202,302,402の裏面に取り付けた例について説明したが、これに限定されることはない。例えば、ケーブル等を用いて歩行発電装置100,200,300,400と被充電器150,250,350,450とを電気的に接続し、歩行発電装置100等で発電した電力をケーブル等を介して被充電器150等に充電するようにしても良い。また、公知のワイヤレス給電方式により歩行発電装置100,200,300,400で発電した電力を被充電器150,250,350,450に伝送して充電するようにしても良い。
【符号の説明】
【0082】
100,200,300,400 歩行発電装置(発電装置)
110,210,310,410 振り子部
120,220,320A,320B,420 発電部
124,324A,324B,424 入力軸(発電部)
150,250,350,450 被充電器
130,230,330,430 第1のばね(第1の弾性部材)
132,232,332,432 第2のばね(第2の弾性部材)
226 第1のコイル(発電部)
228 第2のコイル(発電部)
360A 第1の回動機構
360B 第2の回動機構