(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136695
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】電気的接触子及び電気的接続装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20230922BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20230922BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20230922BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01R1/067 B
G01R1/073 D
G01R31/26 J
H01L21/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042517
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】福士 輝夫
【テーマコード(参考)】
2G003
2G011
4M106
【Fターム(参考)】
2G003AA10
2G003AG03
2G003AG12
2G011AA15
2G011AB01
2G011AC14
2G011AE03
2G011AF07
4M106AA01
4M106DD03
4M106DD09
4M106DD10
4M106DD18
4M106DD23
(57)【要約】
【課題】基板の微細な粗さや傾きがある表面に電気的接触子を接合する際、基板表面の粗さ等の影響を和らげて、基板面に平行に接合することができるようにする。
【解決手段】本発明は、基板表面に据え付けられる板状の電気的接触子であって、被検査体の電極と電気的に接触する接触部と、接触部の一端と連結する梁部と、梁部を支持する本体支持部と、基板表面に形成された配線と接触可能であり、前記基板表面に接合する接合部とを備え、接合部が、基板表面の微細な表面粗さ及び又は傾きを吸収する緩衝部を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に据え付けられる板状の電気的接触子であって、
被検査体の電極と電気的に接触する接触部と、
前記接触部の一端と連結する梁部と、
前記梁部を支持する本体支持部と、
前記基板表面に形成された配線と接触可能であり、前記基板表面に接合する接合部と
を備え、
前記接合部が、前記基板表面の微細な表面粗さ及び又は傾きを吸収する緩衝部を有する
ことを特徴とする電気的接触子。
【請求項2】
前記接合部の前記緩衝部が、当該電気的接触子の基材を、前記基板表面側とその反対側で交互に折り返して蛇腹状に形成した複数の折り返し部を有し、前記複数の折り返し部のそれぞれが、前記基板表面の微細な表面粗さ及び又は傾きを吸収する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気的接触子。
【請求項3】
前記接合部は、当該接合部の長手方向の一方の端部と他方の端部の両方又は少なくとも一方に、前記基板表面に対する当該接合部の接合を保持する保持部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気的接触子。
【請求項4】
検査装置と、被検査体の電極に接触する複数の接触子との間を電気的に接続する電気的接続装置において、
基板と、
前記基板の一方の端部側に設けられ、前記被検査体の前記電極に対して接触する複数の接触子と
を備え、
前記接触子が、請求項1~3のいずれかに記載の電気的接触子を有することを特徴とする電気的接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接触子及び電気的接続装置に関し、例えば、半導体ウェハ上に形成された半導体集積回路等の電気的検査を行なう検査装置に用いられる電気的接触子に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ上に形成された半導体集積回路(以下、「被検査体」とも呼ぶ。)の電気的特性を検査する際、プローブカード等の電気的接続装置を、テストヘッダに取り付けた検査装置(「テスタ」とも呼ぶ。)が用いられる。
【0003】
プローブカードの一方の面(例えば下面)には、複数の電気的接触子(以下、「プローブ」とも呼ぶ。)が装着されており、被検査体の検査の際に、各電気的接触子の先端部が、被検査体の対応する電極端子に電気的に接触する。その後、検査装置からの電気信号が各電気的接触子を介して各被検査体に供給され、また各被検査体からの信号が各電気的接触子を介して検査装置側に取り込まれることで、各被検査体の電気的検査が行なわれる。
【0004】
従来、プローブカードの一方の面に複数の電気的接触子を装着させる際、
図9に例示するように、プローブカードの基板95に取り付ける部分である電気的接触子91の接合部を基板95の面側に向けて、プローブカードの基板95の面に対して電気的接触子91が垂直方向に起立するように、電気的接触子91を基板95の面に置く。そして、図中の上側から下側に向けて(すなわち、電気的接触子91側から基板95側に向けた方向に)一定の荷重を加えた状態で、電気的接触子91の接合部を半田等で覆うようにして、電気的接触子91の接合部とプローブカードの基板95の面との間を半田等で固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2007/086147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数の電気的接触子を据えるプローブカード基板の表面は、必ずしもフラットではなく、基板が僅かに撓んでいたり、基板表面に微妙な凹凸があったりする。したがって、プローブカード基板に電気的接触子を置く際、基板面に対して、電気的接触子の接合部が浮いたり傾いたりしてしまい、その状態のまま電気的接触子をプローブカード基板に接合してしまうと、電気的接触子の先端の高さにバラツキが生じたり、被検査体の電極端子に対する位置ずれが生じたりしてしまう。その結果、被検査体の電気的検査にも影響が生じ得る。
【0007】
そのため、本発明は、上述した課題に鑑み、基板の微細な粗さがある表面に電気的接触子を接合する際、基板表面の粗さの影響を和らげて、基板面に平行に接合することができる電気的接触子及び電気的接続装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、第1の本発明は、基板表面に据え付けられる板状の電気的接触子であって、被検査体の電極と電気的に接触する接触部と、接触部の一端と連結する梁部と、梁部を支持する本体支持部と、基板表面に形成された配線と接触可能であり、前記基板表面に接合する接合部とを備え、接合部が、基板表面の微細な表面粗さ及び又は傾きを吸収する緩衝部を有することを特徴とする。
【0009】
第2の本発明は、検査装置と、被検査体の電極に接触する複数の接触子との間を電気的に接続する電気的接続装置において、基板と、基板の一方の端部側に設けられ、被検査体の電極に対して接触する複数の接触子とを備え、接触子が、第1の本発明の電気的接触子を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プローブカード基板の不均衡な表面にプローブを接合する際、基板表面の不均衡さを和らげて接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態において、プローブ基板の配線基板に据える電気的接触子の構成例を示す構成図である。
【
図2】実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
【
図3】実施形態に係る電気的接触子の配線基板への接合を説明する説明図である。
【
図4】傾斜している基板面に電気的接触子を接合する場合を説明する説明図である。
【
図5】凸凹の基板面に電気的接触子を接合する場合を説明する説明図である。
【
図6】撓んでいる基板面に電気的接触子を接合する場合を説明する説明図である。
【
図7】実施形態に係る電気的接触子の変形例を示す構成図である。
【
図8】実施形態に係る電気的接触子の変形例を示す構成図である。
【
図9】従来の微細な凹凸や撓んでいる基板面への電気的接触子の接合を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)実施形態
以下、本発明に係る電気的接触子及び電気的接続装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)電気的接続装置
まず、実施形態に係る複数の電気的接触子を据える電気的接続装置の構成例を、
図2を参照しながら説明する。
【0014】
図2は、この実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
図2では、電気的接続装置3の主要な構成部材を図示しているが、これらの構成部材に限定されず、実際の電気的接続装置は、
図2に図示しない構成部材も有する。
【0015】
図2において、この実施形態に係る電気的接続装置3は、平板状の配線基板41と、配線基板41と電気的に接続される電気的接続ユニット42と、電気的接続ユニット42と電気的に接続すると共に、被検査体2の電極端子51と電気的に接続する複数の電気的接触子1が装着されたプローブ基板43と、を備える。
【0016】
電気的接続装置3は、図示しない検査装置(テスター)のテストヘッドに装着されるものである。被検査体2をプローブ基板43に向けて押圧し、プローブ基板43の各電気的接触子1の先端部と被検査体2の電極端子51とを電気的に接触させる。そして、検査の際に、図示しない検査装置(テスタ)からの電気信号が各電気的接触子1を介して被検査体2の電極端子51に電気信号を供給され、さらに被検査体2の電極端子51からの電気信号が各電気的接触子1を介してテスタに与えられる。このようにして、テスタは、被検査体2の電気特性を捉えることで被検査体2の電気的検査を行なう。
【0017】
検査対象である被検査体2はチャックトップ5の上面に載置される。チャックトップ5は、水平方向のX軸方向、水平面上においてX軸方向に対して垂直なY軸方向、水平面(X-Y平面)に対して垂直なZ軸方向に位置調整が可能であり、さらに、Z軸回りのθ方向に回転姿勢を調整可能である。被検査体2の電気的検査を実施する際には、上下方向(Z軸方向)に昇降可能なチャックを移動させて、被検査体2の電極端子51をプローブ基板43の各電気的接触子1の先端部に電気的に接触させるため、電気的接続装置3のプローブ基板43の下面と、チャックトップ5上の被検査体2とが相対的に近づくように移動させる。
【0018】
[配線基板]
配線基板41は、例えばポリイミド等の樹脂材料で形成されたものであり、例えば略円形板状に形成されたプリント基板等である。配線基板41の上面の周縁部には、テスタのテストヘッド(図示しない)と電気的に接続する多数の電極端子(図示しない)が配置されている。また、配線基板41の下面には、図示しない配線パターンが形成されており、配線パターンの接続端子と、電気的接続ユニット42に設けられている複数の接続子(図示しない)の上端部とが電気的に接続するようになっている。
【0019】
配線基板41は様々な構成をとることができるが、例えば以下のような構成をとることができる。例えば、配線基板41の上面には、テストヘッドと電気的に接続する電極端子が形成され、配線基板41の下面には、電気的接続ユニット42の各接続子と電気的に接続する配線パターンが形成され、更に、配線基板41の内部には配線回路が形成されている。配線基板41の下面の配線パターンと、配線基板41の上面の電極端子とは、配線基板41内部の配線回路を介して接続可能となっている。したがって、配線基板41内の配線回路を介して、電気的接続ユニット42の各接続子と、テストヘッドとの間で電気信号を導通させることができる。なお、配線基板41の上面には、被検査体2の電気的検査に必要な複数の電子部品も配置されている。
【0020】
[電気的接続ユニット]
電気的接続ユニット42は、例えばポゴピン等のような複数の接続子を有している。電気的接続装置3の組み立て状態では、各接続子の上端部を、配線基板41の下面の配線パターンの接続端子に電気的に接続され、また各接続子の下端部を、プローブ基板43の上面に設けられたパッドに接続される。電気的接触子1の先端部が被検査体2の電極端子51に電気的に接触するので、被検査体2の電極端子51は、電気的接触子1及び接続子を通じて、テスタと電気的に接続される。
【0021】
[プローブ基板]
プローブ基板43は、複数の電気的接触子1を有する基板であり、略円形若しくは多角形(例えば16角形等)に形成されたものである。電気的接続装置3にプローブ基板43が装着される際、プローブ基板43は、その周縁部をプローブ基板支持部18により支持される。プローブ基板43に組み込まれる電気的接触子1は、例えば、カンチレバー型プローブ等を用いることができるが、これに限定されるものではない。被検査体(半導体集積回路)2の数や、各被検査体2の電極端子51の数等に応じた数の電気的接触子1が、プローブ基板43に組み込まれる。
【0022】
プローブ基板43は様々な構成をとることができるが、
図2ではその一例を示している。例えば、プローブ基板43は、例えばセラミック板等で形成される基板部材431と、基板部材431の下面に形成された配線基板432とを有する。
【0023】
セラミック基板である基板部材431の内部には、板厚方向に貫通する多数の導電路(図示しない)が形成されたものとしてもよい。基板部材431の上面にはパッドが形成されており、基板部材431内の導電路の一端が、当該基板部材431の上面の対応する配線パターンの接続端子と接続するように形成されている。基板部材431の下面では、基板部材431内の導電路の他端が、配線基板432の上面に設けられた接続端子と接続されるように形成されている。
【0024】
配線基板432は、例えばポリイミド等の合成樹脂部材で形成された基板である。配線基板432の一方の面(例えば、下面)には複数の電気的接触子1のそれぞれと接合している。配線基板432の一方の面に接続している電気的接触子1は、電気的接続ユニット42を介して、配線基板41の対応する接続端子と電気的に接続している。
【0025】
(A-1-2)電気的接触子の構成
次に、実施形態に係る電気的接触子1の構成を図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、実施形態において、プローブ基板43の配線基板432に据える電気的接触子1の構成例を示す構成図である。
【0027】
図1において、実施形態に係る電気的接触子1は、接合部10、本体支持部11、第1アーム部13、第2アーム部14、台座部15、接触部16を有する。
【0028】
電気的接触子1は、例えば金属等の導電性部材で形成されており、配線基板432の表面に形成された配線45と、被検査体2の電極端子51との間で電気信号を導通する。例えば、電気的接触子1の接合部10が、配線基板432の配線45と接触するように接合されて、配線基板432に電気的接触子1が据え付けられる。被検査体2の検査時に、電気的接触子1の接触部16が被検査体2の電極端子51と電気的に接触して、電気的接触子1が、配線45と被検査体2の電極端子51との間で電気信号を導通する。
【0029】
電気的接触子1は、例えば、メッキ加工、エッチング、リソグラフィ等のMEMSプロセス技術により形成することができ、電気的接触子1は、全体の厚さを同じ又は同程度で形成された板状部材である。また、電気的接触子1の寸法は、被検査体2の電極端子51の大きさや電極端子51間の間隔等に応じて決められるので特に限定されないが、例えば電気的接触子1の左右方向(長手方向)の寸法(長さ)は数mm程度とすることができる。
【0030】
電気的接触子1は、カンチレバー型プローブである。すなわち、接触部16が被検査体2の電極端子51と電気的に接触する際に、電極端子51側から接触部16側に向けて接触荷重が作用し、その接触荷重により、本体支持部11側と連結している第1アーム部13及び第2アーム部14が弾性変形し、第1アーム部13及び第2アーム部14が接触部16を弾性的に支持する。このように、カンチレバー型の電気的接触子1は、接触部16と電極端子51との接触荷重を抑制しながら、接触部16と電極端子51とを確実に電気的に接触させることができる。
【0031】
[本体支持部]
本体支持部11は、接合部10側から上方に向けて(配線基板432から被検査体2側に向けて)延びた部分である。本体支持部11は、接触部16が被検査体2の電極端子51に接触した際に生じる接触荷重により弾性変形する、第1アーム部13及び第2アーム部14を支持する部分である。
【0032】
[第1アーム部及び第2アーム部]
第1アーム部13及び第2アーム部14の一端は、本体支持部11と連結し、第1アーム部13及び第2アーム部14の他端は、台座部15と連結している。第1アーム部13及び第2アーム部14は、接触部16の電極端子51への接触時に、接触部16を弾性的に支持する部分である。第1アーム部13及び第2アーム部14は、接触荷重による接触部16の上下方向の移動量や、オーバードライブによる左右方向のスクラブ量を調整する部分である。
【0033】
図1では、電気的接触子1が2本のアーム部(第1アーム部13及び第2アーム部14)を備える場合を例示するが、アーム部の本数はこれに限定されず、また、接触部16を弾性的に支持可能であればアーム部の形状は限定されない。
【0034】
[台座部]
台座部15は、第1アーム部13及び第2アーム部14の各他端と連結すると共に、接触部16を備える部分である。
【0035】
[接触部]
接触部16は、台座部15の上部に設けられ、接触部16の先端部161が被検査体2の電極端子51と電気的に接触する。
【0036】
[接合部]
接合部10は、プローブ基板43の配線基板432に取り付けられる部分である。
【0037】
電気的接触子1を配線基板432に接合する際、電気的接触子1の接合部10側を、配線基板432の基板面に向けて、配線基板432の基板面に対して電気的接触子1が垂直に起立した状態となるようにして、基板面に接合部10を置く。このとき、配線基板432上の配線45に、接合部10が接触するようにする。
【0038】
その後、接合部10と配線45とを確実に接触させるため、上側から下側に向けて(電気的接触子1の接触部16側から配線基板432側に向けて)一定の荷重で、電気的接触子1の接合部10を基板面に押し付け、その状態で、半田等の接合材Sを用いて、電気的接触子1の接合部10と配線基板432の基板面とを接合する。
【0039】
このとき、
図3に例示するように、電気的接触子1の接合部10を、半田等の接合材Sで覆うようにして、電気的接触子1の接合部10と配線基板432とを接合する。
【0040】
ここで、
図1に示すように、電気的接触子1の接合部10は、略台形の形状である基端部106と、電気的接触子1全体の長手方向に延びた接合保持部103と、接合保持部103の一方の端部側にある第1保持部101と、接合保持部103の他方の端部側にある第2保持部102と、配線基板432の微細な粗さのある表面の凹凸を吸収する緩衝部104とを有する。
【0041】
基端部106は、本体支持部11と接合保持部103とを連結する部分であり、略台形形状としている。
【0042】
接合保持部103は、基端部106と連結し、第1保持部101から第2保持部102まで延びる板状部材であり、接合部10の長手方向を保持するものである。
【0043】
第1保持部101及び第2保持部102は、接合部10の右端部及び左端部の保持するものである。第1保持部101及び第2保持部102は、接合保持部103側に折り返し部105の長さよりも短い略矩形の部材としている。略矩形の第1保持部101及び第2保持部102の下方側(配線基板432の基板面側)に接合材Sが回り込み溜まることで、強固に接合できる。
【0044】
緩衝部104は、配線基板432の基板面に対して直接接触する部分であり、不均衡な基板面の凹凸や傾斜等を吸収する部分である。すなわち、緩衝部104は、配線基板432の基板面の僅かな凹凸や傾斜等の影響を和らげて、配線基板432の基板面に対して、接合部10の浮きや傾き等を抑えることができる。
【0045】
緩衝部104の構造は、様々な構造を適用できる。例えば、
図1に示すように、緩衝部104は、第1保持部101から第2保持部102までの長手方向において、第1保持部101に一体的に連なった板状部材を、配線基板432側に向けて所定の長さだけ延ばし、その後板状部材を折り返して、折り返した板状部材を接合保持部103側に向けて延ばし、更に板状部材を折り返して、折り返した板状部材を配線基板432側に向けて延ばす。このように、基板側と接合保持部103側の折り返しを、第1保持部101から第2保持部102までの長手方向で複数回繰り返し、複数の折り返し部105を有する蛇腹状の緩衝部104とする。
【0046】
これにより、一定の荷重を加えて、配線基板432の基板面に、接合部10を押し付けたとき、基板面側から接合部10側の力(反力)により、折り返し部105のそれぞれが独立して弾性変形するので、基板面に粗さや撓み等があっても、基板面の凹凸や傾斜等を吸収することができる。
【0047】
そして、この状態で、半田等の接合材Sを用いて接合する。このとき、接合材Sで接合部10を覆うようにして接合すると、基板面に押し付けられて弾性変形した状態のまま折り返し部105が接合される。
【0048】
さらに、接合部10における折り返し部105の間隙は、板状部材を突き抜いた貫通部分である。したがって、貫通している折り返し部105の間隙に、接合材Sが入り込んだ状態で、接合材Sが固化するので、弾性変形した状態の折り返し部105を保持したまま、接合部10を強固に接合することができる。
【0049】
その結果、微細な粗さがある基板面に対して凹凸や傾斜等の影響を和らげて電気的接触子1を起立させることができ、複数の電気的接触子1の先端部161の高さのバラツキ及び位置ずれを軽減できる。
【0050】
図4は、傾斜している基板面に電気的接触子1を接合する場合を説明する説明図である。
【0051】
図4において、配線基板432の基板面は、右側(電気的接触子1の第1保持部101側)になるほど位置が高くなる傾斜となっている場合を例示している。この例の場合、一定の荷重を加えて、配線基板432の基板面に、接合部10を押し付けたとき、基板面の位置が一番高い折り返し部105(すなわち、第1保持部101に一番近い折り返し部105)に、強い力(反力)が作用する。そのため、第1保持部101に一番近い折り返し部105は大きな弾性変形をする。また他の折り返し部105も、傾斜する基板面の位置に応じた程度の弾性変形をする。したがって、接合部10は基板面の傾斜を吸収する。
【0052】
図5は、凸凹の基板面に電気的接触子1を接合する場合を説明する説明図である。
【0053】
図5において、配線基板432の基板面は、不規則な凸凹とする。この例の場合、基板面が凸となっている部分に接触する折り返し部105は、二股となっている各部材に力(反力)が作用して、接合保持部103側に移動する変形をする。また、基板面が凹となっている部分に接触する折り返し部105は、各部材に作用する力(反力)は微小のため小さな変形となる。このように、基板面の凹凸に応じて複数の折り返し部105が弾性変形して、接合部10は基板面の凹凸を吸収する。
【0054】
図6は、撓んでいる基板面に電気的接触子1を接合する場合を説明する説明図である。
【0055】
図6において、配線基板432の基板面は、概ね、第1保持部101から第2保持部102までの中央部が窪んでおり、その中央部から第1保持部101、及び第2保持部102に向けて徐々に基板の位置が高くなっているものとする。この例の場合、基板面の位置が高くなっている第1保持部101側、及び第2保持部102側に一番近い折り返し部105に、強い力(反力)が作用する。そのため、第1保持部101側、及び第2保持部102側に一番近い折り返し部105が、比較的大きな弾性変形をして、窪んでいる基板面に接触している折り返し部105は、比較的小さな変形となる。このように、基板面の撓みに応じて、複数の折り返し部105が弾性変形して、接合部10は基板面の撓みを吸収する。
【0056】
(A-2)変形例
(A-2-1)
図7(A)及び7(B)は、実施形態に係る電気的接触子の変形例を示す構成図である。
【0057】
図7(A)において、第1の変形例の電気的接触子1Aの第1保持部101A及び第2保持部102Aが、上述の実施形態の電気的接触子1の第1保持部101及び第2保持部102と異なる。
【0058】
第1保持部101Aは、略矩形の板部材で形成されているが、接合保持部103から配線基板432側に延びる部分の長さが、
図1の第1保持部101の長さよりも長い。すなわち、第1保持部101Aは、配線基板432側に延びる下垂部1011を有する。また同様に、第2保持部102Aも下垂部1021を有する。なお、下垂部1011及び1021の長さは、特に限定されない。
【0059】
このように、第1保持部101A及び第2保持部102Aが、下垂部1011及び1021を有することにより、接合材Sで接合する際に、下垂部1011及び1021が接合部10Aを保持することができるので、接合部10Aを安定して配線基板432に接合させることができる。
【0060】
また、
図7(B)において、第2の変形例の電気的接触子1Bの第1保持部101B及び第2保持部102Bは、湾曲の板部材で形成される。つまり、第1保持部101Bは、所定の縦幅長の板部材である接合保持部103から一体的に連続して、接合保持部103と同じ縦幅長で湾曲し、その後、第1保持部101Bは折り返し部105に一体的に連続して連結している。また、第2保持部102Bも、第1保持部101Bと同様に形成されている。
【0061】
湾曲している第1保持部101B及び第2保持部102Bの中央部分には、間隙が生じ得るので、接合材Sで接合する際に、湾曲している間隙にも接合材Sが入り込むことで強固に接合部10Bを接合することができる。
【0062】
なお、
図7(B)では、第1保持部101B及び第2保持部102Bが、湾曲している場合を例示したが、湾曲に限らず、所定の縦幅長の板材である第1保持部101B及び第2保持部102Bが、三角形状、四角形状に折れ曲がっているものでもよい。
【0063】
(A-2-2)
図8は、実施形態に係る電気的接触子の変形例を示す構成図である。
【0064】
図8に例示する電気的接触子1Cの緩衝部104Cは、折り返し部105の数が4個と少なくして、隣接する折り返し部105の間隔を大きく空けている。
【0065】
つまり、
図8の緩衝部104Cのように、隣接する折り返し部105の間隔を空けて、折り返し部105の数を少なくしても、緩衝部104Cは配線基板432の微細な凹凸や傾斜等の影響を和らげることができ、配線基板432の微細な凹凸や傾斜等を吸収することができる。また、隣接する折り返し部105の間を空けているので、接合材Sがしっかりと入り込むので、接合をより強固にできる。
【0066】
なお、緩衝部104Cの折り返し部105の数は、特に限定されず、隣接する折り返し部105の間隔は、均等であってもよいし、又は均等でなくてもよい。
【0067】
また、
図8では、接合部10Cが、第1保持部101A及び第2保持部102Aを備える場合を例示しているが、
図8の第1保持部101A及び第2保持部102Aに代えて、湾曲している第1保持部101B及び第2保持部102Bとしてもよい。
【0068】
(A-3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、電気的接触子を据え付ける基板面に凹凸があったり傾いていても、電気的接触子の接合部に緩衝部を備えることにより、基板面の微細な凹凸や傾斜等に追従して、電気的接触子の接合部を基板面に平行に起立させることができる。その結果、電気的接触子の高さのバラツキを軽減でき、被検査体の電極端子に対する位置ずれも軽減できる。
【0069】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形例を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0070】
(B-1)上述した実施形態の電気的接触子1は、接合部10の長手方向の一方の端部及び他方の端部に、第1保持部101及び第2保持部102を設けるものとした。しかし、接合部10は、第1保持部101と第2保持部102とのいずれか一方だけを備えるものとしてもよい。すなわち、接合部10の長手方向の一方の端部又は他方の端部のいずれか一方にのみ、保持部(第1保持部101又は第2保持部102)を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1(1A、1B、1C)…電気的接触子、2…被検査体、3…電気的接続装置、5…チャックトップ、10(10A、10B、10C)…接合部、11…本体支持部、13…第1アーム部、14…第2アーム部、15…台座部、16…接触部、18…プローブ基板支持部、41…配線基板、42…電気的接続ユニット、43…プローブ基板、45…配線、51…電極端子、101(101A、101B、101C)…第1保持部、102(102A、102B、102C)…第2保持部、104及び104C…緩衝部、105…折り返し部、106…基端部、107a及び107b…貫通孔、161…先端部、1011及び1012…下垂部。