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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136732
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20230922BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20230922BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20230922BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20230922BHJP
   C04B 35/569 20060101ALI20230922BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D46/00 302
F01N3/022 C
C04B38/00 303Z
C04B35/569
C04B37/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042585
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】三輪 勇樹
【テーマコード(参考)】
3G190
4D019
4D058
4G019
4G026
【Fターム(参考)】
3G190BA26
3G190CA03
3G190CA13
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019BD01
4D019CA01
4D019CB04
4D058JA38
4D058JA39
4D058JB06
4D058KB15
4D058SA08
4G019FA12
4G019FA13
4G026BA14
4G026BB14
4G026BE04
4G026BF04
4G026BF05
4G026BF44
4G026BG02
4G026BH13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】排ガス処理の初期において圧力損失が低く、PMが堆積しても上昇しにくいハニカムフィルタの提供。
【解決手段】目封止部分を有するハニカムフィルタで、排ガス導入セルは、第1排ガス導入セル12とセル断面積が該セルより大きい第2排ガス導入セル14からなり、排ガス排出セル11の断面積は、第2排ガス導入セルの断面積と同じか大きく、排ガス排出セル及び排ガス導入セルの断面は多角形で、第1排ガス導入セルと排ガス排出セルが対面する辺の長さL1が、第2排ガス導入セルと排ガス排出セルが対面する辺の長さL2よりも長く、セル隔壁13は、第1及び第2排ガス導入セルを隔てる第1セル隔壁13a、第1排ガス導入セル及び排ガス排出セルを隔てる第2セル隔壁13b、第2排ガス排出セル及び排ガス排出セルを隔てる第3セル隔壁13cを含み、第1セル隔壁の厚さTaは、第2セル隔壁及び第3セル隔壁の厚さTb、Tcよりも薄い。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、排ガス入口側の端部が開口され、かつ、排ガス出口側の端部が目封止された排ガス導入セルと、
排ガス出口側の端部が開口され、かつ、排ガス入口側の端部が目封止された排ガス排出セルとを備えてなり、前記排ガス導入セル及び前記排ガス排出セルの長手方向に垂直方向の断面形状は、目封止部分を除き前記排ガス入口側の端部から前記排ガス出口側の端部にかけて、それぞれのセルにおいて同じであるハニカムフィルタであって、
前記排ガス排出セルの周囲全体に、多孔質のセル隔壁を隔てて前記排ガス導入セルが隣接してなり、前記排ガス導入セルは、第1排ガス導入セルとセルの長手方向に対して垂直方向の断面の断面積が該第1排ガス導入セルより大きい第2排ガス導入セルの2種類からなり、かつ、
前記排ガス排出セルのセルの長手方向に対して垂直方向の断面の断面積は、前記第2排ガス導入セルのセルの長手方向に対して垂直方向の断面の断面積と同じであるかそれよりも大きく形成されており、
セルの長手方向に垂直な断面に関し、前記排ガス排出セル及び前記排ガス導入セルは、いずれも多角形からなり、前記第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、前記排ガス排出セルと対面している辺の長さが、前記第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、前記排ガス排出セルと対面している辺の長さよりも長く、
前記セル隔壁は、隣り合う前記第1排ガス導入セル及び前記第2排ガス導入セルを隔てる第1セル隔壁と、前記第1排ガス導入セル及び前記排ガス排出セルを隔てる第2セル隔壁と、前記第2排ガス排出セル及び前記排ガス排出セルを隔てる第3セル隔壁とを含み、
前記第1セル隔壁の厚さは、前記第2セル隔壁の厚さ及び前記第3セル隔壁の厚さよりも薄いことを特徴とするハニカムフィルタ。
【請求項2】
セルの長手方向に垂直な断面に関し、
前記第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、排ガス排出セルと対面している辺の長さは、前記第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、前記排ガス排出セルと対面している辺の長さの0.8倍以下である請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
セルの長手方向に垂直な断面に関し、
前記排ガス排出セルは、八角形であり、前記第1排ガス導入セルは四角形であり、前記第2排ガス導入セルは、八角形である請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
セルの長手方向に垂直な断面に関し、
前記第2排ガス導入セルの断面積は、前記排ガス排出セルの断面積と同じであり、
前記第1排ガス導入セルの断面積は、前記第2排ガス導入セルの断面積の20~50%である請求項1~3のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
セルの長手方向に垂直な断面に関し、
前記排ガス排出セルの断面形状は八角形であり、前記第1排ガス導入セルの断面形状は四角形であり、前記第2排ガス導入セルの断面形状は八角形であり、
前記第2排ガス導入セルと前記排ガス排出セルの断面形状は互いに合同であるとともに、
前記排ガス排出セルの周囲にはセル隔壁を隔てて前記第1排ガス導入セルと前記第2排ガス導入セルとがそれぞれ4つずつ交互に配置されて前記排ガス排出セルを包囲してなり、
また、前記排ガス排出セルを包囲している4つの前記第2排ガス導入セルの断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、前記排ガス排出セルの断面形状からなる図形領域を通過する2本の線分の交点は、前記排ガス排出セルの断面形状である八角形の幾何学的な重心と一致してなり、
かつ、前記4つの第2排ガス導入セルの断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、前記排ガス排出セルの断面形状からなる図形領域を通過しない4本は、四角形を構成し、その各辺の中点は前記排ガス排出セルを包囲している4つの前記第1排ガス導入セルの断面形状である各四角形の幾何学的な重心と一致するように、
前記排ガス排出セル、前記第1排ガス導入セル及び前記第2排ガス導入セルがそれぞれ配置されてなるとともに、
前記排ガス排出セルの断面形状を構成する辺において、前記第2セル隔壁を隔てて第1排ガス導入セルと対面する辺と、前記第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺において、前記第2セル隔壁を隔てて排ガス排出セルと対面する辺とは平行であり、
前記排ガス排出セルの断面形状を構成する辺において、前記第3セル隔壁を隔てて前記第2排ガス導入セルと対面する辺と、前記第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺において、前記第3セル隔壁を隔てて排ガス排出セルと対面する辺とは平行であり、また、前記第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺において、前記第1セル隔壁を隔てて前記第2排ガス導入セルと対面する辺と、前記第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺において、前記第1セル隔壁を隔てて前記第1排ガス導入セルと対面する辺とは平行である請求項3又は4に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記排ガス導入セルは、第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルのみからなる請求項1~5のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記ハニカムフィルタは、
前記排ガス排出セル、前記第1排ガス導入セル及び前記第2排ガス導入セルを有し、外周に外周壁を有する複数のハニカム焼成体が接着材層を介して接着されることにより形成されている請求項1~6のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
前記ハニカムフィルタは、ハニカム焼成体から構成されてなり、前記ハニカム焼成体は、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素からなる請求項7に記載のハニカムフィルタ。
【請求項9】
前記第1セル隔壁の厚さは、0.05~0.25mmである請求項1~8のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項10】
前記第2セル隔壁の厚さは、0.15~0.46mmである請求項1~9のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項11】
前記第3セル隔壁の厚さは、0.15~0.46mmである請求項1~10のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項12】
前記第1セル隔壁の厚さに対する前記第2セル隔壁の厚さの比は、1.2~6.0である請求項1~11のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項13】
前記第1セル隔壁の厚さに対する前記第3セル隔壁の厚さの比は、1.2~6.0である請求項1~12のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項14】
前記セル隔壁の気孔率は、30~65%である請求項1~13のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項15】
前記セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径は、5~25μmである請求項1~14のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【請求項16】
外周には、外周コート層が形成されている請求項1~15のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、スス等のパティキュレート(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境又は人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、CO、HC又はNOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境又は人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、内燃機関と連結されることにより排ガス中のPMを捕集したり、排ガスに含まれるCO、HC又はNOx等の排ガス中の有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、コージェライトや炭化ケイ素等の多孔質セラミックからなるハニカム構造のフィルタ(ハニカムフィルタ)が種々提案されている。
【0004】
また、これらのハニカムフィルタでは、内燃機関の燃費を改善し、圧力損失の上昇に起因する運転時のトラブル等をなくすために、初期の圧力損失が低いハニカムフィルタや、所定量のPMが堆積した際に圧力損失の上昇割合が低いハニカムフィルタが種々提案されている。
【0005】
このようなハニカムフィルタを開示した発明として、特許文献1が挙げられる。
図6は、特許文献1に係るハニカムフィルタを模式的に示す排ガス入口側の端面図である。
【0006】
特許文献1には、図6に示すように、排ガス入口側の端部が開口され且つ排ガス出口側の端部が目封止された排ガス導入セル(12、14)と、排ガス出口側の端部が開口され且つ排ガス入口側の端部が目封止された排ガス排出セル11とを備えるハニカム焼成体(ハニカムフィルタ)510が開示されている。
排ガス排出セルは、セルの長手方向に垂直な断面の断面形状が四角形の第1排ガス導入セル12と、セルの長手方向に垂直な断面の断面形状が八角形の第2排ガス導入セル14とからなる。
また、排ガス排出セルの長手方向に垂直な断面形状は八角形であり、第2排ガス導入セル14の長手方向に垂直な断面形状と同じ形状である。
ハニカム焼成体510では、排ガス排出セル11の周囲全体に、第1排ガス導入セル12及び第2排ガス導入セル14とが交互に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2013/187444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、このように排ガス排出セル及び排ガス導入セルとを配置することにより、排ガスの流れを均一かつスムーズにし、初期において圧力損失が低く、PMが堆積しても圧力損失が上昇しにくくなることを教示している。
しかし、内燃機関の燃費をさらに向上させるため、初期圧力損失をさらに低減させたいという要望があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、排ガス処理の初期において圧力損失がさらに低く、PMが堆積しても圧力損失が上昇しにくいハニカムフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特許文献1に記載のハニカム焼成体では、PMは、第1排ガス導入セルと排ガス排出セルとの間のセル隔壁、第2排ガス導入セルと排ガス排出セルとの間のセル隔壁、及び、第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルとの間のセル隔壁の順にPMが堆積する。つまり、第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルとの間のセル隔壁がPMの捕集に関与するのは、ある程度時間が経った後であり、第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルとの間のセル隔壁は、排ガス処理の初期においてPM捕集に殆ど関与できていない。
本発明者は、排ガス処理の初期の段階で、それぞれの隔壁のガス通過流速の差を小さくすることで、第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルとの間のセル隔壁にもPMが堆積され、初期圧力損失を低減すると推定できた。この推定に基づき、本発明者は本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明のハニカムフィルタは、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁を備え、排ガス入口側の端部が開口され、かつ、排ガス出口側の端部が目封止された排ガス導入セルと、排ガス出口側の端部が開口され、かつ、排ガス入口側の端部が目封止された排ガス排出セルとを備えてなり、上記排ガス導入セル及び上記排ガス排出セルの長手方向に垂直方向の断面形状は、目封止部分を除き上記排ガス入口側の端部から上記排ガス出口側の端部にかけて、それぞれのセルにおいて同じであるハニカムフィルタであって、上記排ガス排出セルの周囲全体に、多孔質のセル隔壁を隔てて上記排ガス導入セルが隣接してなり、上記排ガス導入セルは、第1排ガス導入セルとセルの長手方向に対して垂直方向の断面の断面積が該第1排ガス導入セルより大きい第2排ガス導入セルの2種類からなり、かつ、上記排ガス排出セルのセルの長手方向に対して垂直方向の断面の断面積は、上記第2排ガス導入セルのセルの長手方向に対して垂直方向の断面の断面積と同じであるかそれよりも大きく形成されており、セルの長手方向に垂直な断面に関し、上記排ガス排出セル及び上記排ガス導入セルは、いずれも多角形からなり、上記第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、上記排ガス排出セルと対面している辺の長さが、上記第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、上記排ガス排出セルと対面している辺の長さよりも長く、上記セル隔壁は、隣り合う上記第1排ガス導入セル及び上記第2排ガス導入セルを隔てる第1セル隔壁と、上記第1排ガス導入セル及び上記排ガス排出セルを隔てる第2セル隔壁と、上記第2排ガス排出セル及び上記排ガス排出セルを隔てる第3セル隔壁とを含み、上記第1セル隔壁の厚さは、上記第2セル隔壁の厚さ及び上記第3セル隔壁の厚さよりも薄いことを特徴とする。
【0012】
本発明のハニカムフィルタでは、第1セル隔壁の厚さは、上記第2セル隔壁の厚さ及び上記第3セル隔壁の厚さよりも薄い。
そのため、排ガスが第2セル隔壁及び第3セル隔壁を通過する際の抵抗が比較的大きくなり、排ガスが第2セル隔壁及び第3セル隔壁を通過しにくくなる。
従って、当該ハニカムフィルタを用いた排ガス処理の初期において、第1セル隔壁の厚さが、第2セル隔壁の厚さ及び第3セル隔壁の厚さと同じ厚さである場合に比べ、排ガスが、第1セル隔壁を通過しやすくなる。そのため、排ガス処理の初期において、第1セル隔壁もフィルタとして機能を発揮することができる。
その結果、本発明のハニカムフィルタにおいて、初期圧力損失を低減することができると推定される。
【0013】
本発明のハニカムフィルタでは、セルの長手方向に垂直な断面に関し、上記第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、排ガス排出セルと対面している辺の長さは、上記第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺のうち、上記排ガス排出セルと対面している辺の長さの0.8倍以下であることが望ましい。
このような比であると、排ガスが、排ガス排出セルと第1排ガス導入セルとを隔てる第2セル隔壁をより通過し易くなり、PM堆積前の圧力損失を効果的に抑制することができる。
上記比が、0.8を超えると、両辺の長さに大きな差がなくなるため、初期の圧力損失を低く抑えるのが難しくなる。
【0014】
本発明のハニカムフィルタでは、セルの長手方向に垂直な断面に関し、上記排ガス排出セルは、八角形であり、上記第1排ガス導入セルは四角形であり、上記第2排ガス導入セルは、八角形であることが望ましい。
上記構成のハニカムフィルタでは、排ガス処理の初期の圧力損失を効果的に抑制することができるとともに、PMが堆積する表面積を大きくとることが可能となり、圧力損失を低く保つことができる。
【0015】
本発明のハニカムフィルタでは、セルの長手方向に垂直な断面に関し、上記第2排ガス導入セルの断面積は、上記排ガス排出セルの断面積と同じであり、上記第1排ガス導入セルの断面積は、上記第2排ガス導入セルの断面積の20~50%であることが望ましい。
上記構成のハニカムフィルタでは、排ガス排出セルの容積が小さくなりすぎないため、排ガス導入セルから排ガス排出セルへのガス通過抵抗及び排ガス排出セルを通過する際の抵抗を小さくすることができ、圧力損失を効果的に抑制することができる。
第1排ガス導入セルの断面積が第2排ガス導入セルの断面積の20%未満であると、第1排ガス導入セルの断面積が小さくなりすぎ、ろ過面積が小さくなるため、圧力損失が高くなり易い。一方、第1排ガス導入セルの断面積が第2排ガス導入セルの断面積の50%を超えると、排ガス排出セルの容積が小さくなりすぎるため、圧力損失を低くすることが難しくなる。
【0016】
本発明のハニカムフィルタでは、セルの長手方向に垂直な断面に関し、上記排ガス排出セルの断面形状は八角形であり、上記第1排ガス導入セルの断面形状は四角形であり、上記第2排ガス導入セルの断面形状は八角形であり、上記第2排ガス導入セルと上記排ガス排出セルの断面形状は互いに合同であるとともに、上記排ガス排出セルの周囲にはセル隔壁を隔てて上記第1排ガス導入セルと上記第2排ガス導入セルとがそれぞれ4つずつ交互に配置されて上記排ガス排出セルを包囲してなり、また、上記排ガス排出セルを包囲している4つの上記第2排ガス導入セルの断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、上記排ガス排出セルの断面形状からなる図形領域を通過する2本の線分の交点は、上記排ガス排出セルの断面形状である八角形の幾何学的な重心と一致してなり、かつ、上記4つの上記第2排ガス導入セルの断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、上記排ガス排出セルの断面形状からなる図形領域を通過しない4本は、四角形を構成し、その各辺の中点は上記排ガス排出セルを包囲している4つの上記第1排ガス導入セルの断面形状である各四角形の幾何学的な重心と一致するように、上記排ガス排出セル、上記第1排ガス導入セル及び上記第2排ガス導入セルがそれぞれ配置されてなるとともに、上記排ガス排出セルの断面形状を構成する辺において、上記第2セル隔壁を隔てて上記第1排ガス導入セルと対面する辺と、上記第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺において、上記第2セル隔壁を隔てて排ガス排出セルと対面する辺とは平行であり、上記排ガス排出セルの断面形状を構成する辺において、上記第3セル隔壁を隔てて上記第2排ガス導入セルと対面する辺と、上記第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺において、上記第3セル隔壁を隔てて排ガス排出セルと対面する辺とは平行であり、また、上記第1排ガス導入セルの断面形状を構成する辺において、上記第1セル隔壁を隔てて上記第2排ガス導入セルと対面する辺と、上記第2排ガス導入セルの断面形状を構成する辺において、上記第1セル隔壁を隔てて上記第1排ガス導入セルと対面する辺とは平行であることが望ましい。
ハニカムフィルタがこのような構成であると、上記本発明の効果を好適に発揮することができる。
【0017】
本発明のハニカムフィルタでは、上記排ガス導入セルは、第1排ガス導入セルと第2排ガス導入セルのみからなることが望ましい。
このようなハニカムフィルタは、排ガス導入セルとしての実効的な面積が大きくなり、PMを薄く広く堆積させることができる。
【0018】
本発明のハニカムフィルタは、上記排ガス排出セル、上記第1排ガス導入セル及び上記第2排ガス導入セルを有し、外周に外周壁を有する複数のハニカム焼成体が接着材層を介して接着されることにより形成されていることが望ましい。
ハニカムフィルタがこのような構成であると、1つのハニカム焼成体に応力が生じた場合でも、その応力が接着材層により緩和され、他のハニカム焼成体に伝わりにくくなる。つまり、ハニカムフィルタに生じた応力を緩和させることができる。その結果、ハニカムフィルタが損傷することを防ぐことができる。
【0019】
本発明のハニカムフィルタは、ハニカム焼成体から構成されてなり、上記ハニカム焼成体は、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素からなることが望ましい。
炭化ケイ素及びケイ素含有炭化ケイ素は、耐熱性に優れた材料である。このため、上記構成のハニカムフィルタは、耐熱性に優れたハニカムフィルタとなる。
【0020】
本発明のハニカムフィルタでは、上記第1セル隔壁の厚さは、0.05~0.25mmであることが望ましい。
第1セル隔壁の厚さがこのような範囲であると、排ガス処理の初期において、排ガスが第1セル隔壁を通過しやすくなり、圧力損失を低減することができる。
第1セル隔壁の厚さが0.05mm未満であると、強度が低くなり破損しやすくなる。
第1セル隔壁の厚さが0.25mm以上であると、排ガスが第1セル隔壁を通過しにくくなり、排ガス処理の初期の圧力損失が低減されにくくなる。
【0021】
本発明のハニカムフィルタでは、上記第2セル隔壁の厚さは、0.15~0.46mmであることが望ましい。
また、本発明のハニカムフィルタでは、上記第3セル隔壁の厚さは、0.15~0.46mmであることが望ましい。
このような厚さのセル隔壁は、充分な機械的強度を有するとともに、圧力損失の増加を効果的に抑制することができる。
【0022】
本発明のハニカムフィルタでは、上記第1セル隔壁の厚さに対する上記第2セル隔壁の厚さの比は、1.2~6.0であることが望ましい。
また、本発明のハニカムフィルタでは、上記第1セル隔壁の厚さに対する上記第3セル隔壁の厚さの比は、1.2~6.0であることが望ましい。
上記比が、1.2未満であると、排ガスが第1セル隔壁を通過する際の抵抗と、排ガスが第2セル隔壁又は第3セル隔壁を通過する際の抵抗の差が小さくなり、排ガス処理の初期において、排ガスが第1セル隔壁を通過しにくくなる。その結果、排ガス処理の初期の圧力損失が低減されにくくなる。
上記比が、6.0を超えると、第1セル隔壁が薄くなりすぎるか、第2セル隔壁又は第3セル隔壁が厚くなりすぎる。
第1セル隔壁が薄くなりすぎる場合は、強度が低くなり、ハニカムフィルタが破損しやすくなる。
第2セル隔壁又は第3セル隔壁が厚すぎる場合は、排ガスが第2セル隔壁又は第3セル隔壁を通過しにくくなり、圧力損失が大きくなる。
【0023】
本発明のハニカムフィルタでは、上記セル隔壁の気孔率は、30~65%であることが望ましい。
気孔率をこのように設定することにより、セル隔壁は、排ガス中のPMを良好に捕集することができ、かつ、セル隔壁に起因する圧力損失の上昇を抑制することができる。
セル隔壁の気孔率が30%未満である場合、セル隔壁の気孔の割合が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過しにくくなり、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁の気孔率が65%を超える場合、セル隔壁の機械的特性が低くなり、再生時等において、クラックが発生し易くなる。
【0024】
本発明のハニカムフィルタでは、上記セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径は、5~25μmであることが望ましい。
平均気孔径が上記範囲であると、圧力損失の増加を抑制しながら、高い捕集効率でPMを捕集することができる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が5μm未満であると、気孔が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が25μmを超えると、気孔径が大きくなりすぎるので、PMの捕集効率が低下してしまう。
【0025】
本発明のハニカムフィルタでは、外周には、外周コート層が形成されていることが望ましい。
外周コート層は、内部のセルを機械的に保護する役割を果たす。そのため、圧縮強度等の機械的特性に優れたハニカムフィルタとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図2A図2Aは、本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aに示すハニカム焼成体の排ガス入口側の端面図である。
図2C図2Cは、図2Aに示すハニカム焼成体のA-A線断面図である。
図3A図3Aは、従来のハニカムフィルタを用いて排ガスを浄化する際の初期における、排ガスの流れの一例を模式的に示すハニカムフィルタの排ガス入口側の端面の一部拡大図である。
図3B図3Bは、従来のハニカムフィルタを用いて排ガスを浄化する際の中期における、排ガスの流れの一例を模式的に示すハニカムフィルタの排ガス入口側の端面の一部拡大図である。
図3C図3Cは、従来のハニカムフィルタを用いて排ガスを浄化する際の後期における、排ガスの流れの一例を模式的に示すハニカムフィルタの排ガス入口側の端面の一部拡大図である。
図4A図4Aは、本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタを用いて排ガスを浄化する際の初期における、排ガスの流れの一例を模式的に示すハニカムフィルタの排ガス入口側の端面の一部拡大図である。
図4B図4Bは、本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタを用いて排ガスを浄化する際の中期及び後期における、排ガスの流れの一例を模式的に示すハニカムフィルタの排ガス入口側の端面の一部拡大図である。
図5図5は、流入ガスがセル隔壁を通過する際の流速シミュレーション結果を示すグラフである。
図6図6は、特許文献1に係るハニカムフィルタを模式的に示す排ガス入口側の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明のハニカムフィルタの一例である第1実施形態について、図面を用いて詳述する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図2Aは、本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタを構成するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図である。
図2Bは、図2Aに示すハニカム焼成体の排ガス入口側の端面図である。
図2Cは、図2Aに示すハニカム焼成体のA-A線断面図である。
【0028】
図1に示すハニカムフィルタ20では、複数個のハニカム焼成体10が接着材層15を介して結束されてセラミックブロック18を構成し、このセラミックブロック18の外周には、排ガスの漏れを防止するための外周コート層16が形成されている。なお、外周コート層16は、必要に応じて形成されていればよい。
【0029】
ハニカムフィルタ20では、複数個のハニカム焼成体10が接着材層15を介して結束されている。そのため、1つのハニカム焼成体10に応力が生じた場合でも、その応力が接着材層15により緩和され、他のハニカム焼成体10に伝わりにくくなる。つまり、ハニカムフィルタ20に生じた応力を緩和させることができる。その結果、ハニカムフィルタ20が損傷することを防ぐことができる。
接着材層15は、無機バインダと無機粒子とを含む接着材ペーストを塗布、乾燥させたものである。接着材層15は、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
接着材層15の厚さは、0.5~2.0mmが望ましい。
【0030】
外周コート層16は、内部のセルを機械的に保護する役割を果たす。そのため、ハニカムフィルタ20は、圧縮強度等の機械的特性に優れる。
なお、外周コート層16の材料は、接着材層15の材料と同じであることが望ましい。外周コート層16の厚さは、0.1~3.0mmが望ましい。
【0031】
なお、ハニカム焼成体10は、四角柱形状であるが、図2Aに示すように、端面における角部が曲線形状となるように面取りが施されており、これにより角部に熱応力が集中し、クラック等の損傷が発生するのを防止している。上記角部は、直線形状となるように面取りされていてもよい。
【0032】
図2Aに示すハニカム焼成体10は、排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質のセル隔壁13を備え、排ガス入口側の端部10aが開口され、かつ、排ガス出口側の端部10bが目封止された排ガス導入セル(符号12及び14で示すセル)と、排ガス出口側の端部10bが開口され、かつ、排ガス入口側の端部10aが目封止された排ガス排出セル11とを備えてなる。
【0033】
なお、本発明のハニカムフィルタでは、排ガス導入セル及び排ガス排出セルを目封じする、目封止材は、ハニカム焼成体と同じ材料であることが望ましい。
【0034】
ハニカムフィルタ20では、排ガス導入セル(符号12及び14で示すセル)及び排ガス排出セル11の長手方向に垂直方向の断面形状は、目封止部分を除き排ガス入口側の端部10aから排ガス出口側の端部10bにかけて、それぞれのセルにおいて同じである。
【0035】
図2Bに示すように、ハニカム焼成体10では、断面が八角形状の排ガス排出セル11の周囲全体に、断面が四角形の第1排ガス導入セル12と断面が八角形状の第2排ガス導入セル14とが隣接している。
第1排ガス導入セル12と第2排ガス導入セル14とは、排ガス排出セル11の周囲に交互に配置されており、第2排ガス導入セル14の断面積が第1排ガス導入セル12の断面積より大きく、排ガス排出セル11の断面積は、第2排ガス導入セル14の断面積と同じである。
また、このハニカム焼成体10の外周には、外周壁17が形成されている。
第1排ガス導入セル12の断面形状は四角形であり、第2排ガス導入セル14と排ガス排出セル11の断面形状は、いずれも八角形であり、互いに合同である。
【0036】
すなわち、ハニカム焼成体10では、セルの長手方向に垂直な断面に関し、排ガス排出セル11の断面形状は八角形であり、第1排ガス導入セル12の断面形状は四角形であり、第2排ガス導入セル14の断面形状は八角形であり、第2排ガス導入セル14と排ガス排出セル11の断面形状は互いに合同である。
そして、排ガス排出セル11の周囲にはセル隔壁13を隔てて第1排ガス導入セル12と第2排ガス導入セル14とがそれぞれ4つずつ交互に配置されて排ガス排出セル11を包囲してなる。
また、排ガス排出セル11を包囲している4つの第2排ガス導入セル14の断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、排ガス排出セル11の断面形状からなる図形領域を通過する2本の線分の交点は、排ガス排出セル11の断面形状である八角形の幾何学的な重心と一致してなり、かつ、4つの第2排ガス導入セル14の断面形状である各八角形の幾何学的な重心を結ぶ仮想的な線分のうち、排ガス排出セル11の断面形状からなる図形領域を通過しない4本は、四角形を構成し、その各辺の中点は排ガス排出セル11を包囲している4つの第1排ガス導入セル12の断面形状である各四角形の幾何学的な重心と一致する。
【0037】
また、ハニカム焼成体10では、角部以外の外周壁17の厚さが均一になるように、セルの長手方向に垂直な断面における外周壁17に隣接する排ガス導入セルの外周壁に接する辺は、外周壁17の外壁をなす辺と平行かつ直線的に形成されている。
従って、外周壁17に隣接する第2排ガス導入セル14Aの断面は、一部がカットされているため、八角形から六角形に変化している。第1排ガス導入セル12Aの形状断面は、一部カットされた形状でもよいが、第1排ガス導入セル12の断面形状と合同であることが望ましい。
【0038】
ハニカム焼成体10の角部に存在する第2排ガス導入セル14Bは、八角形から、曲線からなる面取り部40を有する略五角形に変化している。図2Bに示す第2排ガス導入セル14Bの面取り部40は、面取り部分が曲線を有するように面取りされているが、面取り部分が直線となるように面取りされていてもよい。
【0039】
排ガス排出セル11と第2排ガス導入セル14とは、同じ八角形の形状を有しているが、この八角形は、重心に対して点対称であり、4つの長辺と、4つの短辺とが交互に配置されており、長辺と短辺とのなす角度が135°である。
【0040】
ハニカム焼成体10では、第1排ガス導入セル12の断面形状を構成する辺のうち、排ガス排出セル11と対面している辺の長さLが、第2排ガス導入セル14の断面形状を構成する辺のうち、排ガス排出セル11と対面している辺の長さLよりも長い。
【0041】
また、ハニカム焼成体10では、セル隔壁13は、隣り合う第1排ガス導入セル12及び第2排ガス導入セル14を隔てる第1セル隔壁13aと、第1排ガス導入セル12及び排ガス排出セル11を隔てる第2セル隔壁13bと、第2排ガス導入セル14及び排ガス排出セル11を隔てる第3セル隔壁13cとを含む。
【0042】
つまり、第2セル隔壁13bを隔てて対面する、第1排ガス導入セル12の断面形状を構成する辺と排ガス排出セル11の断面形状を構成する辺とは平行である。また、第3セル隔壁13cを隔てて対面する、排ガス排出セル11の断面形状を構成する辺と第2排ガス導入セル14の断面形状を構成する辺とは平行である。そして、第1セル隔壁13aを隔てて対面する、第1排ガス導入セル12の断面形状を構成する辺と第2排ガス導入セル14の断面形状を構成する辺とは平行である
【0043】
ハニカム焼成体10では、第1セル隔壁13aの厚さTaは、第2セル隔壁13bの厚さTb及び第3セル隔壁13cの厚さTcよりも薄い。
【0044】
ここで、ハニカム焼成体10に排ガスが流入してPMが捕集される場合について説明する。
図2Cに示すように、第1排ガス導入セル12及び第2排ガス導入セル14(図2Cにおいては図示していない)に流入した排ガスG(図2C中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス排出セル11と第1排ガス導入セル12又は第2排ガス導入セル14とを隔てるセル隔壁13を通過した後、排ガス排出セル11から流出するようになっている。排ガスGがセル隔壁13を通過する際に、排ガス中のPM等が捕集されるため、セル隔壁13は、フィルタとして機能する。
【0045】
ハニカム焼成体10では、第1排ガス導入セル12の長手方向に垂直な断面の形状と、第2排ガス導入セル14の長手方向に垂直な断面の形状とは異なる。
そのため、第1排ガス導入セル12から排ガス排出セル11へ排ガスが通過する際の抵抗と、第2排ガス導入セル14から排ガス排出セル11へ排ガスが通過する際の抵抗とは異なる。つまり、第1排ガス導入セル12から排ガス排出セル11への排ガスの通過しやすさと、第2排ガス導入セル14から排ガス排出セル11への排ガスの通過しやすさとは異なる。
【0046】
また、セル隔壁13に堆積したPM等は、排ガスGがセル隔壁13を通過する際の抵抗になる。そのため、PMの堆積量も、第1排ガス導入セル12又は第2排ガス導入セル14から排ガス排出セル11への排ガスの通過しやすさに影響する。
つまり、経時的なPMの堆積により、第1排ガス導入セル12又は第2排ガス導入セル14から排ガス排出セル11への排ガスの通過しやすさが変化する。
【0047】
ここで、セル隔壁の厚さが均一である従来のハニカムフィルタにおいて、セル隔壁を通過する排ガスの流れについて説明する。
図3Aは、従来のハニカムフィルタを用いて排ガスを浄化する際の初期における、排ガスの流れの一例を模式的に示すハニカムフィルタの排ガス入口側の端面の一部拡大図である。
図3Bは、従来のハニカムフィルタを用いて排ガスを浄化する際の中期における、排ガスの流れの一例を模式的に示すハニカムフィルタの排ガス入口側の端面の一部拡大図である。
図3Cは、従来のハニカムフィルタを用いて排ガスを浄化する際の後期における、排ガスの流れの一例を模式的に示すハニカムフィルタの排ガス入口側の端面の一部拡大図である。
【0048】
図3A図3Cに示す従来のハニカム焼成体510は、第1セル隔壁513a、第2セル隔壁513b及び第3セル隔壁513cからなるセル隔壁513が均一な厚さである以外は、上記ハニカム焼成体10と同じ構成である。
【0049】
図3Aに示すように、排ガスがハニカム焼成体510に流入すると、入口側の端部10aが開口している第1排ガス導入セル12と第2排ガス導入セル14に流れ込む。排ガスは、フィルタ内の流れ易い部分から流れる。
ハニカム焼成体510では、第1排ガス導入セル12の断面形状を構成する辺のうち、排ガス排出セル11と対面している辺の長さLが、第2排ガス導入セル14の断面形状を構成する辺のうち、排ガス排出セル11と対面している辺の長さLよりも長いので、排ガス排出セル11と第1排ガス導入セル12とを隔てる第2セル隔壁513bの表面積は、排ガス排出セル11と第2排ガス導入セル14とを隔てる第3セル隔壁513cの表面積よりも大きいこととなり、排ガスは、第2セル隔壁513bをより通過し易く、排ガス処理の初期においては、第1セル隔壁513bの表面にPMが堆積する。
【0050】
次に、図3Bに示すように、PMが第2セル隔壁513bの第1排ガス導入セル12の内壁表面にある程度の量堆積すると、第1排ガス導入セル12の断面積が小さいため、PMが厚く堆積する。その結果、PMの堆積に起因する抵抗が増加し、排ガスが第2セル隔壁513bを通過しにくくなる。
このような状況になると、上記したように、排ガスは、排ガス排出セル11と第2排ガス導入セル14とを隔てる第3セル隔壁513cを通過し(主流路のスイッチ)、第3セル隔壁513cの表面にもPMが堆積する。
【0051】
次に、排ガスは、セル隔壁の中をかなり自由に通過することができるので、図3Cに示すように、第1排ガス導入セル12と第2排ガス導入セル14とを隔てる第1セル隔壁513aの内部も通過し、排ガス排出セル11に流れるようになる。この場合、排ガスは、第2排ガス導入セル14側から第1セル隔壁513aに侵入するとともに、第1排ガス導入セル12側からも第1セル隔壁513aに侵入することとなる。
【0052】
なお、排ガスが、第1セル隔壁513aの内部を通って排ガス排出セル11に到達する場合、排ガスの移動距離が長くなるので、排ガスが通過する際の抵抗が大きくなる。
そのため、ハニカム焼成体510において排ガスが第1セル隔壁513aの内部を通るのは、第2セル隔壁513b及び第3セル隔壁513cにPMが堆積し、これらのセル隔壁を排ガスが通る際の抵抗が上昇した後である。
つまり、排ガスを浄化する際の初期において、第1セル隔壁513aの内部を通って排ガス排出セル11に到達する排ガスの量は少ないと言える。そのため、排ガスを浄化する際の初期において、PMを捕集するためのフィルタとして第1セル隔壁513aは充分に機能を発揮できていないと言える。
【0053】
次に、上記ハニカム焼成体10において、セル隔壁を通過する排ガスの流れについて説明する。
図4Aは、本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタを用いて排ガスを浄化する際の初期における、排ガスの流れの一例を模式的に示すハニカムフィルタの排ガス入口側の端面の一部拡大図である。
図4Bは、本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタを用いて排ガスを浄化する際の中期及び後期における、排ガスの流れの一例を模式的に示すハニカムフィルタの排ガス入口側の端面の一部拡大図である。
【0054】
ハニカム焼成体10では、第1セル隔壁13aの厚さTaは、第2セル隔壁13bの厚さTb及び第3セル隔壁13cの厚さTcよりも薄い。
そのため、排ガスが第2セル隔壁13b及び第3セル隔壁13cを通過する際の抵抗が比較的大きくなり、排ガスが第2セル隔壁13b及び第3セル隔壁13cを通過しにくくなる。
従って、図4Aに示すように、排ガスは、排ガス処理の初期においても第1セル隔壁13aの内部を通過し、排ガス排出セル11に流入することができる。また、排ガス処理の初期においては、排ガスは、第2セル隔壁13bを通過して排ガス排出セル11に流入することになる。
そのため、PMは、第1セル隔壁13a及び第2セル隔壁13bに堆積する。
【0055】
その後、PMが第1セル隔壁13a及び第2セル隔壁13bにある程度堆積すると、図4Bに示すように、排ガスは、第3セル隔壁13cを通過して排ガス排出セル11に流入する。
【0056】
その後、PMは、第1セル隔壁13a、第2セル隔壁13b及び第3セル隔壁13cに均一に堆積していくことになる。
【0057】
このように、ハニカム焼成体10では、排ガス処理の初期において、第1セル隔壁13aもフィルタとして機能を発揮することができる。
その結果、ハニカム焼成体10において、初期圧力損失を低減することができると推定される。
【0058】
本明細書において、「長さ」、「厚さ」、「断面積」等の測定は、電子顕微鏡写真を用いて行うことが望ましい。電子顕微鏡写真の撮影は、例えば、電子顕微鏡(FE-SEM:日立ハイテクノロジーズ社製 高分解能電界放出形走査電子顕微鏡 S-4800)にて行うことができる。
また、電子顕微鏡写真の拡大倍率は、セルを構成するセル隔壁の表面(内壁)の粒子や気孔の凹凸が、セルの断面形状の特定や、辺の長さ、隔壁厚さ及びセルの断面積の計測に支障にならない程度の倍率であり、かつセルの断面形状の特定や、辺の長さ、セル隔壁の厚さ及びセルの断面積の計測が可能となる倍率を採用することが必要であり、拡大倍率30倍の電子顕微鏡写真を用いて計測することが最適である。
すなわち、上述したセルの長さやセル隔壁の厚さの定義に基づき、電子顕微鏡写真のスケールを利用してセルの各辺の長さを測定して、その値を求め、断面積については、得られたセルの長さ等の値に基づき、算術的に求める。また、断面積について算術的に計測することが煩雑な場合は、電子顕微鏡写真のスケールから単位面積に相当する正方形(スケール長さを1辺とする正方形)を切り取り、この重量を測定、一方でセルの断面形状に沿ってセル断面を切り取り(多角形の場合に頂点部分が曲線となっている場合にはその曲線に沿って切り取り)、その切り取った部分の重量を測定する。重量比率からセルの断面の断面積を計算することができる。
【0059】
また、このような人手による計測の他に、電子顕微鏡写真を画像データとして取り込むか、電子顕微鏡から直接取り込んだ画像データを用い、写真のスケールを入力して、電子的な計測に置き換えて測定することも可能である。もちろん、人手による計測方法も電子化した計測方法も電子顕微鏡画像のスケールに基づいた計測であって、同一原理に基づいており、両者の計測結果に齟齬が発生しないことは言うまでもない。
【0060】
電子的な計測としては、画像解析式粒度分布ソフトウェア(株式会社マウンテック(Mountech)製)MAC-View (Version3.5)なる計測ソフトウェアを用いることができる。このソフウェアでは電子顕微鏡写真をスキャナーで取り込むか、電子顕微鏡から直接取り込んだ画像データを用い、当該写真のスケールを入力し、セルの内壁に沿って範囲を指定することで断面積を計測できる。また、画像中の任意の点間距離も電子顕微鏡写真のスケールを基に計測できる。
電子顕微鏡によりセル断面を撮影する際には、セルの長手方向に垂直にフィルタを切断し、その切断面が入るように、1cm×1cm×1cmのサンプルを準備し、サンプルを超音波洗浄するか、もしくは樹脂で包埋して、電子顕微鏡写真を撮影する。樹脂による包埋を行っても、セルの辺の長さ及びセル隔壁の厚さの計測には影響を与えない。
【0061】
ハニカム焼成体10では、セルの長手方向に垂直な断面に関し、第2排ガス導入セル14の断面形状を構成する辺のうち、排ガス排出セル11と対面している辺の長さLは、第1排ガス導入セル12の断面形状を構成する辺のうち、排ガス排出セル11と対面している辺の長さLの0.8倍以下であることが望ましく、0.1~0.7倍であることがより望ましい。
このような比であると、排ガスが、排ガス排出セル11と第1排ガス導入セル12とを隔てる第2セル隔壁をより通過し易くなり、PM堆積前の圧力損失を効果的に抑制することができる。
上記比が、0.8を超えると、両辺の長さに大きな差がなくなるため、排ガス処理の初期の圧力損失を低く抑えるのが難しくなる。
【0062】
ハニカム焼成体10では、セルの長手方向に垂直な断面に関し、第1排ガス導入セル12の断面積は、第2排ガス導入セル14の断面積の20~50%であることが望ましく、25~45%であることがより望ましい。
このような割合であると、排ガスが第1排ガス導入セル12を通過する際の抵抗と第2排ガス導入セル14を通過する際の抵抗に差をつけることができ、圧力損失を効果的に抑制することができる。
排ガス排出セルの容積が小さくなりすぎないため、排ガス導入セルから排ガス排出セルへのガス通過抵抗及び排ガス排出セルを通過する際の抵抗を小さくすることができ、圧力損失を効果的に抑制することができる。
第1排ガス導入セルの断面積が第2排ガス導入セルの断面積の20%未満であると、第1排ガス導入セルの断面積が小さくなりすぎ、ろ過面積が小さくなるため圧力損失が高くなり易い。一方、第1排ガス導入セルの断面積が第2排ガス導入セルの断面積の50%を超えると、排ガス排出セルの容積が小さくなりすぎるため、圧力損失を低くすることが難しくなる。
【0063】
ハニカム焼成体10では、第1セル隔壁13aの厚さは、0.05~0.25mmであることが望ましい。
第1セル隔壁13aの厚さがこのような範囲であると、排ガス処理の初期において、排ガスが第1セル隔壁13aを通過しやすくなり、圧力損失を低減することができる。
第1セル隔壁の厚さが0.05mm未満であると、強度が低くなり破損しやすくなる。
第1セル隔壁の厚さが0.25mm以上であると、排ガスが第1セル隔壁を通過しにくくなり、排ガス処理の初期の圧力損失が低減されにくくなる。
【0064】
本発明のハニカムフィルタでは、上記第2セル隔壁の厚さは、0.15~0.46mmであることが望ましい。
また、本発明のハニカムフィルタでは、上記第3セル隔壁の厚さは、0.15~0.46mmであることが望ましい。
このような厚さのセル隔壁は、充分な機械的強度を有するとともに、圧力損失の増加を効果的に抑制することができる。
【0065】
ハニカム焼成体10では、第1セル隔壁13aの厚さに対する第2セル隔壁13bの厚さの比は、1.2~6.0であることが望ましく、1.5~5.0であることがより望ましい。
また、第1セル隔壁13aの厚さに対する第3セル隔壁13cの厚さの比は、1.2~6.0であることが望ましく、1.5~5.0であることがより望ましい。
上記比が、1.2未満であると、排ガスが第1セル隔壁を通過する際の抵抗と、排ガスが第2セル隔壁又は第3セル隔壁を通過する際の抵抗の差が小さくなり、排ガス処理の初期において、排ガスが第1セル隔壁を通過しにくくなる。その結果、排ガス処理の初期の圧力損失が低減されにくくなる。
上記比が、6.0を超えると、第1セル隔壁が薄くなりすぎるか、第2セル隔壁又は第3セル隔壁が厚くなりすぎる。
第1セル隔壁が薄くなりすぎる場合は、強度が低くなり、ハニカムフィルタが破損しやすくなる。
第2セル隔壁又は第3セル隔壁が厚すぎる場合は、排ガスが第2セル隔壁又は第3セル隔壁を通過しにくくなり、圧力損失が大きくなる。
【0066】
ハニカム焼成体10では、セル隔壁13の気孔率は、30~65%であることが望ましい。
気孔率をこのように設定することにより、セル隔壁13は、排ガス中のPMを良好に捕集することができ、かつ、セル隔壁13に起因する圧力損失の上昇を抑制することができる。
セル隔壁の気孔率が30%未満である場合、セル隔壁の気孔の割合が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過しにくくなり、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁の気孔率が65%を超える場合、セル隔壁の機械的特性が低くなり、再生時等において、クラックが発生し易くなる。
【0067】
ハニカム焼成体10では、セル隔壁13に含まれる気孔の平均気孔径は、5~25μmであることが望ましい。
平均気孔径が上記範囲であると、圧力損失の増加を抑制しながら、高い捕集効率でPMを捕集することができる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が5μm未満であると、気孔が小さすぎるため、排ガスがセル隔壁を通過する際の圧力損失が大きくなる。
セル隔壁に含まれる気孔の平均気孔径が25μmを超えると、気孔径が大きくなりすぎるので、PMの捕集効率が低下してしまう。
【0068】
なお、本明細書において、「セル隔壁の気孔径」及び「セル隔壁の気孔率」は水銀圧入法にて接触角を130°、表面張力を485mN/mの条件で測定した値を意味する。
【0069】
ハニカム焼成体10の材料は、多孔質材から構成されていれば特に限定されないが、ハニカム焼成体10の構成材料としては、例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック、ケイ素含有炭化ケイ素等が挙げられる。これらのなかでは、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素が好ましい。炭化ケイ素及びケイ素含有炭化ケイ素は、耐熱性に優れた材料である。このため、炭化ケイ素、又は、ケイ素含有炭化ケイ素からなるハニカム焼成体10は耐熱性に優れる。
なお、ケイ素含有炭化ケイ素は、炭化ケイ素に金属ケイ素が配合されたものであり、炭化ケイ素を60wt%以上含むケイ素含有炭化ケイ素が好ましい。
【0070】
ハニカム焼成体10の断面におけるセルの単位面積あたりの数は、31~93個/cm(200~600個/inch)であることが望ましい。
【0071】
次に、本発明の第一実施形態に係るハニカムフィルタの製造方法について説明する。
なお、以下においては、セラミック粉末として、炭化ケイ素を用いる場合について説明する。
【0072】
(1)セラミック粉末とバインダとを含む湿潤混合物を押出成形することによってハニカム成形体を作製する成形工程を行う。
具体的には、まず、セラミック粉末として平均粒子径の異なる炭化ケイ素粉末と、有機バインダと、液状の可塑剤と、潤滑剤と、水とを混合することにより、ハニカム成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0073】
上記湿潤混合物には、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等の造孔剤を添加してもよい。
バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。これらの中では、アルミナバルーンが望ましい。
【0074】
続いて、上記湿潤混合物を押出成形機に投入し、押出成形することにより所定の形状のハニカム成形体を作製する。
この際、図2Bに示すセル構造(セルの形状およびセルの配置)を有する断面形状が作製されるような金型を用いてハニカム成形体を作製する。
【0075】
(2)ハニカム成形体を所定の長さに切断し、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させた後、所定のセルに封止材となる封止材ペーストを充填して上記セルを目封止する目封止工程を行う。
ここで、封止材ペーストとしては、上記湿潤混合物を用いることができる。
【0076】
(3)ハニカム成形体を脱脂炉中、300~650℃に加熱し、ハニカム成形体中の有機物を除去する脱脂工程を行った後、脱脂されたハニカム成形体を焼成炉に搬送し、2000~2200℃に加熱する焼成工程を行うことにより、図2A図2Cに示したようなハニカム焼成体を作製する。
なお、セルの端部に充填された封止材ペーストは、加熱により焼成され、目封止材となる。
また、切断工程、乾燥工程、目封止工程、脱脂工程および焼成工程の条件は、従来からハニカム焼成体を作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0077】
(4)支持台上で複数個のハニカム焼成体を接着材ペーストを介して順次積み上げて結束する結束工程を行い、ハニカム焼成体が複数個積み上げられてなるハニカム集合体を作製する。
接着材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機粒子とからなるものを使用する。また、上記接着材ペーストは、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
【0078】
上記接着材ペーストに含まれる無機粒子としては、例えば、炭化物粒子、窒化物粒子等が挙げられる。具体的には、炭化ケイ素粒子、窒化ケイ素粒子、窒化ホウ素粒子等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機粒子の中では、熱伝導性に優れる炭化ケイ素粒子が望ましい。
【0079】
上記接着材ペーストに含まれる無機繊維及び/又はウィスカとしては、例えば、シリカ-アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ等からなる無機繊維及び/又はウィスカ等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機繊維の中では、アルミナファイバが望ましい。また、無機繊維は、生体溶解性ファイバであってもよい。
【0080】
さらに、上記接着材ペーストには、必要に応じて酸化物系セラミックを成分とする微小中空球体であるバルーンや、球状アクリル粒子、グラファイト等を添加してもよい。バルーンとしては特に限定されず、例えば、アルミナバルーン、ガラスマイクロバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーン等が挙げられる。
【0081】
(5)次に、ハニカム集合体を加熱することにより接着材ペーストを加熱固化して接着材層とし、四角柱状のセラミックブロックを作製する。
接着材ペーストの加熱固化の条件は、従来からハニカムフィルタを作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0082】
(6)セラミックブロックに切削加工を施す切削加工工程を行う。
具体的には、ダイヤモンドカッターを用いてセラミックブロックの外周を切削することにより、外周が略円柱状に加工されたセラミックブロックを作製する。
【0083】
(7)略円柱状のセラミックブロックの外周面に、外周コート材ペーストを塗布し、乾燥固化して外周コート層を形成する外周コート層形成工程を行う。
ここで、外周コート材ペーストとしては、上記接着材ペーストを使用することができる。なお、外周コート材ペーストとして、上記接着材ペーストと異なる組成のペーストを使用してもよい。
なお、外周コート層は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて設ければよい。
外周コート層を設けることによって、セラミックブロックの外周の形状を整えて、円柱状のハニカムフィルタとすることができる。
以上の工程によって、ハニカム焼成体を含む本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタを作製することができる。
【0084】
上記工程では、切削工程を行うことにより所定形状のハニカムフィルタを作製していたが、ハニカム焼成体を作製する工程において、外周全体に外周壁を有する複数形状のハニカム焼成体を作製し、それら複数形状のハニカム焼成体を接着材層を介して組み合わせることにより円柱等の所定形状となるようにしてもよい。この場合には、切削工程を省略することができる。
【0085】
(その他の実施形態)
本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタでは、複数のハニカム焼成体が集合して形成された、いわゆる集合型のハニカムフィルタであったが、本発明のハニカムフィルタは、1つのハニカム焼成体からなる、いわゆる一体型ハニカムフィルタであってもよい。
【0086】
本発明の第1実施形態に係るハニカムフィルタでは、ハニカム焼成体の外周壁が、角部以外で一定の厚さであり、ハニカム焼成体の最外周にある排ガス導入セルの断面の形状が一部カットされていた。
しかし、本発明のハニカムフィルタでは、ハニカム焼成体の最外周にある排ガス導入セルの断面形状はカットされておらず、外周壁の厚さが一定の厚さでなくてもよい。
【実施例0087】
(実施例1)
平均粒子径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合し、得られた混合物に対して、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)0.8重量%、グリセリン1.3重量%、造孔材(アクリル樹脂)1.9重量%、オレイン酸2.8重量%、及び、水13.2重量%を加えて混練して湿潤混合物を得た後、押出成形する成形工程を行った。
本工程では、図2A図2Cに示したハニカム焼成体10と同様の形状であって、セルの目封止をしていない生のハニカム成形体を作製した。
【0088】
次いで、マイクロ波乾燥機を用いて上記生のハニカム成形体を乾燥させることにより、ハニカム成形体の乾燥体を作製した。その後、ハニカム成形体の乾燥体の所定のセルに封止材ペーストを充填してセルの目封止を行った。
具体的には、排ガス入口側の端部及び排ガス出口側の端部が図2Bに示す位置で目封止されるようにセルの目封止を行った。
なお、上記湿潤混合物を封止材ペーストとして使用した。セルの目封止を行った後、封止材ペーストを充填したハニカム成形体の乾燥体を再び乾燥機を用いて乾燥させた。
【0089】
続いて、セルの目封止を行ったハニカム成形体の乾燥体を400℃で脱脂する脱脂処理を行い、さらに、常圧のアルゴン雰囲気下2200℃、3時間の条件で焼成処理を行った。
これにより、実施例1に係るハニカム焼成体を作製した。
【0090】
実施例1において、第1排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、辺の長さが0.94mm×0.97mmの長方形であった。
実施例1において、第2排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.04mmの長辺と、長さが0.30mmの短辺とが4つづつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
実施例1において、排ガス排出セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.01mmの長辺と、長さが0.30mmの短辺とが4つづつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
実施例1に係るハニカム焼成体において、第1セル隔壁の厚さは、0.15mmであり、第2セル隔壁の厚さは、0.18mmであり、第3セル隔壁の厚さは、0.18mmであった。
【0091】
実施例1に係るハニカム焼成体は、気孔率が45%、平均気孔径が15μm、大きさが36.4mm×36.4mm×177.8mm、セルの数(セル密度)が300個/inchであった。
出来上がったハニカム焼成体を、SiC粒子、シリカゾル、アルミナファイバの混合物からなる接着剤ペーストを用いて複数個結束させ、外周を加工し、外周に接着剤ペーストと同じ材料からなるコート層を設けて、φ330.2mm×177.8mmの円筒状のハニカムフィルタを作製した。
【0092】
(実施例2)
製造されるハニカム焼成体の構造を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に実施例2に係るハニカムフィルタを製造した。
実施例2に係るハニカム焼成体において、第1排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、辺の長さが0.91mm×1.02mmの長方形であった。
実施例2に係るハニカム焼成体において、第2排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.03mmの長辺と、長さが0.34mmの短辺とが4つづつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
実施例2に係るハニカム焼成体において、排ガス排出セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが0.92mmの長辺と、長さが0.34mmの短辺とが4つづつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
実施例2に係るハニカム焼成体において、第1セル隔壁の厚さは0.10mmであり、第2セル隔壁の厚さは0.21mmであり、第3セル隔壁の厚さは0.21mmであった。
【0093】
(実施例3)
製造されるハニカム焼成体の構造を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に実施例3に係るハニカムフィルタを製造した。
実施例3に係るハニカム焼成体において、第1排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、辺の長さが0.88mm×1.07mmの長方形であった。
実施例3に係るハニカム焼成体において、第2排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが0.82mmの長辺と、長さが0.52mmの短辺とが4つづつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
実施例3に係るハニカム焼成体において、排ガス排出セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.02mmの長辺と、長さが0.24mmの短辺とが4つづつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
実施例3に係るハニカム焼成体において、第1セル隔壁の厚さは0.05mmであり、第2セル隔壁の厚さは0.24mmであり、第3セル隔壁の厚さは0.24mmであった。
【0094】
(比較例1)
製造されるハニカム焼成体の構造を以下のように変更した以外は、実施例1と同様に比較例1に係るハニカムフィルタを製造した。
比較例1に係るハニカム焼成体において、第1排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、辺の長さが0.95mmの正方形であった。
比較例1に係るハニカム焼成体において、第2排ガス導入セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.05mmの長辺と、長さが0.28mmの短辺とが4つづつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
比較例1に係るハニカム焼成体において、排ガス排出セルの長手方向に垂直な断面の形状は、長さが1.05mmの長辺と、長さが0.28mmの短辺とが4つづつ交互に配置されてなる八角形であった。なお、長辺と短辺とのなす角の角度は135°であった。
比較例1に係るハニカム焼成体において、第1セル隔壁の厚さ、第2セル隔壁の厚さ及び第3セル隔壁の厚さは、均一な0.17mmであった。
【0095】
(流入カスがセル隔壁を通過する際の流速シミュレーション)
実施例1~3及び比較例1に係るハニカムフィルタを用い、各ハニカムフィルタの排ガス入口側の端部から排ガス出口側の端部かけて所定の位置における第1セル隔壁、第2セル隔壁及び第3セル隔壁におけるガス通過流速をシミュレートした。シミュレートに用いたソフトは、「STAR-CCM+」であった。
シミュレーションの条件としては、流入ガスの温度を、380℃、流入ガスの流量を、1700kg/hrとした。
【0096】
次に、各測定位置(ハニカムフィルタの排ガス入口側からの所定の距離の位置)における、ガス通過流速の最大値とガス通過流速の最小値の差を算出した。
そして、横軸をハニカムフィルタの排ガス入口側端部からの距離とし、縦軸をガス通過流速の最大値と最小値との差とした座標に、シミュレーション結果をプロットし図5とした。
図5は、流入ガスがセル隔壁を通過する際の流速シミュレーション結果を示すグラフである。
【0097】
図5に示すように、実施例1~3に係るハニカムフィルタでは、比較例1のハニカムフィルタに比べて、各測定位置でのガス通過流速差が小さいことがわかる。これは、PM堆積前の初期からセル隔壁全体をフィルタとして有効に利用できていることを示しており、そのため、圧力損失が低下すると考えられる。
【符号の説明】
【0098】
10、510 ハニカム焼成体
10a 排ガス入口側の端部
10b 排ガス出口側の端部
11 排ガス排出セル
12、12A 第1排ガス導入セル
13 セル隔壁
13a 第1セル隔壁
13b 第2セル隔壁
13c 第3セル隔壁
14、14A、14B 第2排ガス導入セル
15 接着材層
16 外周コート層
17 外周壁
18 セラミックブロック
20 ハニカムフィルタ
40 面取り部
210 圧力損失測定装置
211 ディーゼルエンジン
212 排ガス管
213 金属ケーシング
214 圧力計

図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6