(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136739
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】アキシャルギャップモータ、送風機、送風機を備えた電気機器及びファンモジュール
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20230922BHJP
F04D 29/18 20060101ALI20230922BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H02K5/16 Z
F04D29/18 101
H02K7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042593
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】514036900
【氏名又は名称】WOLONGモーター制御技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】塚田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】玉村 周平
(72)【発明者】
【氏名】フ フェン
【テーマコード(参考)】
3H130
5H605
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB26
3H130AB43
3H130AB45
3H130AB52
3H130AC11
3H130AC26
3H130AC30
3H130BA24D
3H130BA24G
3H130BA97G
3H130CB01
3H130CB05
5H605BB05
5H605BB14
5H605BB20
5H605CC03
5H605CC04
5H605CC05
5H605EA12
5H605EA29
5H605EB10
5H605EB17
5H605EB18
5H605EB39
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC05
5H607FF04
(57)【要約】
【課題】本開示は、アキシャルギャップモータにおいて、磁気吸引力による負荷がロータとの接続箇所に集中するのを低減する。
【解決手段】
固定子巻線を巻装したステータコアを含むステータと、前記ステータに対向して周方向に配置された複数のマグネットを保持するロータと、前記ロータの中央を貫通し、前記ステータに固定された固定軸と、前記固定軸に固定された第1のベアリングと、前記第1のベアリングに付勢力を与える弾性部材とを備え、前記ステータコアと前記マグネットとは引き合うものであり、前記弾性部材は、前記ロータと前記ステータとを遠ざける方向に力を加えるものであるアキシャルギャップモータ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子巻線を巻装したステータコアを含むステータと、
前記ステータに対向して周方向に配置された複数のマグネットを保持するロータと、
前記ロータの中央を貫通し、前記ステータに固定された固定軸と、
前記固定軸に固定された第1のベアリングと、
前記第1のベアリングに付勢力を与える弾性部材とを備え、
前記ステータコアと前記マグネットとは引き合うものであり、
前記弾性部材は、前記ロータと前記ステータとを遠ざける方向に力を加えるものであるアキシャルギャップモータ。
【請求項2】
固定子巻線を巻装したステータコアを含むステータと、
前記ステータに対向して周方向に配置された複数のマグネットを保持するロータと、
前記ロータの中央を貫通し、前記ステータに固定された固定軸と、
前記固定軸に固定された第1のベアリングと、
前記第1のベアリングと離間して前記ステータ側に配置され、前記固定軸に固定された第2のベアリングと、
前記固定軸に固定された第1の固定部材と、
前記第1のベアリングと前記第1の固定部材との間に配置された弾性部材とを備え、
前記ロータは、中央部で前記第2のベアリングを保持し、
前記弾性部材の一端は前記第1の固定部材と接触し、前記弾性部材の他端は前記第1のベアリングと接触して、前記弾性部材は、前記第1のベアリングを前記第2のベアリングから遠ざける方向に力を加えるものであるアキシャルギャップモータ。
【請求項3】
前記第1の固定部材と離間して前記ステータ側に配置され、前記固定軸に固定された第2の固定部材を有し、
前記第2の固定部材は、前記第2のベアリングを介して、前記ロータを前記固定軸に保持させる請求項2に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項4】
前記弾性部材は、バネである請求項1乃至3のいずれかに記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のアキシャルギャップモータのロータの一部と、前記第1のベアリングの外輪とに接合された羽根車とを有する送風機。
【請求項6】
前記羽根車は、タ-ボファン、シロッコファン又は軸流ファンの羽根の形状である請求項5に記載の送風機。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の送風機と、前記送風機に電力を供給する電源とを搭載した電気機器。
【請求項8】
固定子巻線を巻装したステータコアを含むステータに対向して周方向に配置された複数のマグネットを保持するロータと、
前記ロータの中央を貫通し、前記ステータに接合する固定軸と、
前記固定軸に接合された第1のベアリングと、
前記第1のベアリングと離間して配置され、前記固定軸に接合された第2のベアリングと、
固定軸に接合された第1の固定部材と、
前記第1のベアリングと前記第1の固定部材との間に配置され、前記第1のベアリングに付勢力を与える弾性部材と、
前記ロータと、前記第1のベアリングとに接合された羽根車とを備え、
前記ロータは、中央部で前記第2のベアリングを保持し、
前記弾性部材の一端は前記第1の固定部材と接触し、前記弾性部材の他端は前記第1のベアリングと接触して、前記弾性部材は、前記第1のベアリングを前記第2のベアリングから遠ざける方向に力を加えるものであるファンモジュール。
【請求項9】
前記第1の固定部材と離間して前記ステータ側に配置され、前記固定軸に固定された第2の固定部材を有し、
前記第2の固定部材は、前記第2のベアリングを介して、前記ロータを前記固定軸に保持させる請求項8に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項10】
前記弾性部材は、バネである請求項8又は9に記載のファンモジュール。
【請求項11】
前記羽根車は、タ-ボファン、シロッコファン又は軸流ファンの羽根の形状である請求項8乃至10のいずれかに記載のファンモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アキシャルギャップモータのベアリングにかかるスラスト力を緩和するように改良されたアキシャルギャップモータ、送風機、送風機を備えた電気機器及びファンモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップモータに関して、シングルロータシングルステータの組合せでは軸方向の磁気力によるベアリングへのスラスト力が大きく働くモータである。それを回避するために、ダブルロータシングルステータ又はシングルロータダブルステータとすることで、軸方向の磁気力をキャンセルして、ベアリングへのスラスト力を低減、又は0とすることができる。
【0003】
しかし、シングルロータシングルステータのアキシャルギャップモータは、容易に組立てることが可能であるという利点がある。
又、アキシャルギャップモータは、ファンモジュールへの小型化に貢献できるモータである。アキシャルギャップモータは、回転軸の方向でエアギャップ面積が確保できるため、薄型化でも高トルクを発揮できるモータであるので、特にターボファン型のファンモジュールの小型化を図ることができる。
【0004】
エアコン、換気扇などの送風機は、送風ファンを片側で保持したモータを有した構成が一般的である。特許文献1では、アキシャルギャップモータを用いて、送風機の小型化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7は、従来技術の送風機1の全体構成を模式的に表す斜視図である。
送風機1において、羽根車20(インペラとも言う)がアキシャルギャップモータ2に装着されている。送風機1は、筐体の一部であるモータ支持部材30に取付けられている。
図7において、羽根車20は、ターボファンの羽根の形状をしている。尚、羽根車20は、シロッコファン又は軸流ファンにも適用できる。
図8は、
図7の分解斜視図である。
モータ設置部材30には、アキシャルギャップモータ2が装着可能なように、開口部31が設けられている。アキシャルギャップモータ2は、開口部31に嵌まり込み、モータ取付部材40とモータ設置部材30とがネジで締め付けられて、アキシャルギャップモータ2がモータ設置部材30に固定される。
【0007】
図9は、特許文献1のアキシャルギャップモータ2の構成を模式的に表す断面図である。
アキシャルギャップモータ2は、ステータ3と、ロータ10と、回転軸50とを備えている。ステータ3とロータ10とは、回転軸50の方向に隙間を開けて、対向している。ロータ10と回転軸50とは接合され、一体として回転する。
ロータ10は、ステータ3に対向し、ステータ3と隙間を開けて、周方向に配置された複数のマグネット11を保持している。
【0008】
ステータ3は、固定子巻線5と、ステータコア4と、ステータ基盤17とを備えている。
ステータ基盤17は、第1のベアリング6と、ロータ10側に配置された第2のベアリング7を保持している。第1のベアリング6と第2のベアリング7との間には隙間を有し、ロータ10が振動しないように、ロータ10を回転軸50に保持している。
ステータ3は、アキシャギャップモータ2の筐体であるモータケース41の上面と接合し、第1のベアリング6と第2のベアリング7を介して、回転軸50と接続しているので、回転はしない。
【0009】
ロータ10は、モータケース41の下面とは、隙間を開けて離接しており、回転可能となっている。
ロータ10は、固定子巻線5に電圧が印可されると、ステータコア4から回転磁界が発生し、その回転磁界により、ロータ10が回転する。
【0010】
マグネット11とステータコア4との間には、磁気吸引力が働く。この磁気吸引力は、例えば、300Nにも及ぶ。特許文献1は、ロータ10と回転軸50とが接合している箇所に、磁気吸引力による負荷が集中し、ロータ10と回転軸50とが損傷してしまうという課題を有していた。
本開示は、アキシャルギャップモータにおいて、磁気吸引力による負荷がロータとの接続箇所に集中するのを低減することを図る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様に係るアキシャルギャップモータは、
固定子巻線を巻装したステータコアを含むステータと、
前記ステータに対向して周方向に配置された複数のマグネットを保持するロータと、
前記ロータの中央を貫通し、前記ステータに固定された固定軸と、
前記固定軸に固定された第1のベアリングと、
前記第1のベアリングに付勢力を与える弾性部材とを備え、
前記ステータコアと前記マグネットとは引き合うものであり、
前記弾性部材は、前記ロータと前記ステータとを遠ざける方向に力を加えるものである。
【0012】
本開示の別の態様に係るアキシャルギャップモータは、
固定子巻線を巻装したステータコアを含むステータと、
前記ステータに対向して周方向に配置された複数のマグネットを保持するロータと、
前記ロータの中央を貫通し、前記ステータに固定された固定軸と、
前記固定軸に固定された第1のベアリングと、
前記第1のベアリングと離間して前記ステータ側に配置され、前記固定軸に固定された第2のベアリングと、
前記固定軸に固定された第1の固定部材と、
前記第1のベアリングと前記第1の固定部材との間に配置された弾性部材とを備え、
前記ロータは、中央部で前記第2のベアリングを保持し、
前記弾性部材の一端は前記第1の固定部材と接触し、前記弾性部材の他端は前記第1のベアリングと接触して、前記弾性部材は、前記第1のベアリングを前記第2のベアリングから遠ざける方向に力を加えるものである。
【0013】
本開示の一態様に係るケーシングモジュールは、
固定子巻線を巻装したステータコアを含むステータに対向して周方向に配置された複数のマグネットを保持するロータと、
前記ロータの中央を貫通し、前記ステータに接合する固定軸と、
前記固定軸に接合された第1のベアリングと、
前記第1のベアリングと離間して配置され、前記固定軸に接合された第2のベアリングと、
固定軸に接合された第1の固定部材と、
前記第1のベアリングと前記第1の固定部材との間に配置され、前記第1のベアリングに付勢力を与える弾性部材と、
前記ロータと、前記第1のベアリングとに接合された羽根車とを備え、
前記ロータは、中央部で前記第2のベアリングを保持し、
前記弾性部材の一端は前記第1の固定部材と接触し、前記弾性部材の他端は前記第1のベアリングと接触して、前記弾性部材は、前記第1のベアリングを前記第2のベアリングから遠ざける方向に力を加えるものである。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様のアキシャルギャップモータ、そのアキシャルギャップモータを備えた送風機、及びその送風機を備えた電気機器によれば、磁気吸引力による負荷がロータとの接続箇所に集中するのを低減することができる。
本開示の一態様のファンモジュールによれば、磁気吸引力による負荷がロータとの接続箇所に集中するのを低減することができる。又、羽根車とロータとを一体化したファンモジュールを用いることで、送風機の組立が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一態様である実施形態1における送風機の構成を模式的に表す断面図である。
【
図2】実施形態1の送風機の原理を模式的に表す原理図である。
【
図3】実施形態1の送風機の構成を模式的に表す分解図である。
【
図4】実施形態2のファンモジュールを模式的に表す断面図である。
【
図5】実施形態2のファンモジュールを組込んだ送風機を表す模式的な断面図である。
【
図6】本開示の一態様である電気機器を模式的に表す図であり、(a)は4方向型室内機の全体を模式的に表す斜視図であり、(b)は4方向型室内機を模式的に表す分解斜視図である。
【
図7】従来技術の送風機の全体構成を模式的に表す斜視図である。
【
図8】従来技術の送風機の構成を模式的に表す分解斜視図である。
【
図9】従来技術の送風機の構成を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示のより具体的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。尚、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
(実施形態1)
【0017】
以下、本開示の一態様を示す送風機1について図面を用いて説明する。
図1は、実施形態1の送風機1の構成を模式的に表す断面図である。
本開示の送風機1の全体構成を模式的に表す斜視図は、
図7と同様である。
送風機1は、アキシャルギャップモータ2とケーシンング23とを備えている。ケーシンング23は、羽根車20とインペラベース21とを備え、風を発生させるものである。
アキシャルギャップモータ2は、ステータ3と、ロータ10と、固定軸8とを備えている。ステータ3とロータ10とは、固定軸8を中心として取り付けられている。ステータ3とロータ10とは、固定軸8の方向に隙間を開けて対向している。
ステータ3とロータ10とは、ステータ3とロータ10とが分離できる分離型が主とするが、分離できなくてもよい。
固定軸8は、ステータ3と接合して回転しない構造で、上下の移動もしない構造である。
図1と
図9との大きな構成の違いは、
図9の回転軸50は回転するが、
図1の固定軸8は、回転しないことである。
【0018】
ロータ10は、周方向に配置された複数のマグネット11を保持している。複数のマグネット11は、ステータ3と対向し、ステータ3と隙間を開けて配置されている。
第1のベアリング6と第2のベアリング7とは、固定軸8方向に隙間を有して固定軸8に接合されている。第2のベアリング7は、ロータ10側に配置されている。
第1のベアリング6と第2のベアリング7との距離は任意に設定可能であるので、第1のベアリング6と第2のベアリング7との距離を大きく確保すると、ケーシンング23の振動を低減することが可能である。
第1のベアリング6及び第2のベアリング7は深溝形を想定しているが、アンギュラ形など他のベアリングにも適用することができる。
【0019】
インペラベース21は、羽根車20を保持するもので、円錐形状である。インペラベース21は、円筒形状でもよい。インペラベース21は、金属製が好ましい。
図1に示す様に、インペラベース21は、ロータ10の一部及び第1のベアリング6の外輪に固定されている。インペラベース21とロータ10とは、ネジ、ビス、接着剤またはそれらと同等のもので固定され、一体として同じ回転をする。インペラベース21とケーシング23とは、一体成型されていてもよい。インペラベース21が回転することで、ケーシング23も同様に回転する。
羽根車20は、シロッコファン、ターボファン、又は軸流ファンの羽根である。特に、羽根車20は、ターボファンの羽根が好ましい。羽根車20は、樹脂製であるが、金属製でもよい。
【0020】
ケーシング23は、ロータ10を内部に収納できるように、内部が空洞になっている。ロータ10がケーシング23の内部に位置することで、送風機1の薄型化を実現している。
ステータ3は、固定子巻線5と、ステータコア4と、モータ取付部材40とを備えている。ステータコア4とマグネット11とは、隙間を開けて対向している。ステータコア4は、圧粉鉄心であっても、電磁鋼板の鉄心であってもよい。
モータ取付部材40は、モータ設置部材30に取り付けられている(
図7参照)。
【0021】
第1の固定部材13と第2の固定部材14とは、固定軸8に接続されている。第2の固定部材14は、第1の固定部材13と離間してステータ3側に配置されている。
第2のベアリング7は、第1の固定部材13と第2の固定部材14との間に配置されている。
固定軸8がステータ3にしっかりと固定される様に、第2の固定部材14は、固定軸8の一端から一定の距離を確保して、固定軸8に設けられている。又、第2の固定部材14は、第2のベアリング7の内輪と接触している。第2の固定部材14は、ステータ3と接触し、ロータ10がステータ3と接触するのを防止している。
第1の固定部材13と第2の固定部材14とは、Eリングが好ましい。
ロータ10は、中央部で第2のベアリング7の外輪と接合し、固定軸8方向で、固定軸8に固定されている。
【0022】
弾性部材15は、第1の固定部材13と第1のベアリング6との間に配置されており、固定軸8から抜けない構造である。弾性部材15の一端は、第1の固定部材13と接触し、弾性部材15の他端は第1のベアリング6の内輪と接触している。
ロータ10のマグネット11は、ステータコア4に磁気吸引されるので、ロータ10は、ステータ3に引き寄せられる。そして、第2のベアリング7がステータ3に引き寄せられる。この磁気吸引力は、例えば、300Nにも及ぶ。
弾性部材15は、第1のベアリング6に付勢力を与え、この磁気吸引力を低減するものである。弾性部材15は、例えば、バネ、波型ワッシャ-、ゴムなどである。弾性部材15は、特にバネが好ましい。
【0023】
ロータ10は、固定子巻線5に電圧が印可されると、ステータコア4から回転磁界が発生し、その回転磁界により、ロータ10が回転する。
ロータ10がステータコア4の回転磁界力によって回転することで、羽根車20も回転することが可能となる。そして、第1のベアリング6と第2のベアリング7によって、アキシャルギャップモータ2の固定軸8を中心に、羽根車20は回転運動を行うことが可能となる。
アキシャルギャップモータ2を使用することで、送風機1の薄型化を行うことが可能となる。
【0024】
図2は、実施形態1の送風機1の原理を模式的に表す原理図である。
アキシャルギャップモータ2において、矢印1に示すように、マグネット11とステータコア4との間で、固定軸8の方向に磁気吸引力が発生し、ロータ10がステータ3に引き寄せられる。本開示の対策を行わない場合には、磁気吸引力の大きさは約300N程度となり、
図2の第2のベアリング7の内輪を点線で囲む箇所、つまりロータ10と接続する箇所である第2のベアリング7の内輪と、第2の固定子部材14とに、磁気吸引力が集中する。
第2のベアリング7に深溝形タイプのベアリングを用いても、300Nの力に耐えることが難しい。
【0025】
そこで、本開示では、弾性部材15を用いて、磁気吸引力(矢印1)とは逆向きの矢印2のように、第1のベアリング6の内輪を押し返す力を発生させる。
第1のベアリング6の内輪が矢印2の力で押し返えされると、矢印2の力は、第1のベアリング6の外輪(
図2の第1のベアリング6の上面を点線で囲む箇所)を押し上げ、インペラベース21を伝って、矢印3のように、ロータ10を押し返えす力となる。
つまり、弾性部材15で、ロータ10を矢印3の力で矢印1とは逆向きの方向に押し返すことになる。
【0026】
矢印2の力は、弾性部材15のバネの強さ及び第1の固定子部材13と第1のベアリング6の内輪との距離によって調整することが可能であり、矢印2の力は矢印1の半分程度の力が望ましい。本開示では、矢印2の力は、例えば、150N程度に調整されている。矢印3の力は、矢印2の力と同じである。
本開示では、第2のベアリング7の内輪への負荷は、矢印1の力(300N)から矢印3(150N)を引いた値の150Nと半分になり、負荷を軽減することができる。
【0027】
実施形態1の送風機1によれば、弾性部材15により、第1のベアリング6を第2のベアリング7から遠ざける方向に、150Nの力を加えて、磁気吸引力による負荷を軽減することができる。その結果、磁気吸引力による負荷がロータ10との接続箇所に集中するのを低減することができる。
【0028】
又、実施形態1の送風機1は、転がり寿命時間を延ばすことが可能である。
ベアリングの寿命は、一般的に基本定格寿命Lで表される。
基本定格寿命をL、基本定格荷重(ベアリング固有の値)をC、ベアリングへの荷重をPとすると、基本定格寿命Lは、以下の式1で表される。
基本定格寿命L=(C/P)^3 ・・・(式1)
【0029】
実施形態1では、ベアリングへの荷重Pを半分にすることができるので、基本定格寿命Lを、2^3=8倍にすることができる。
例えば、本開示のような300Nの荷重の場合、空調機器で使用される一般的な6201型のベアリングの転がり寿命は、約5万時間程度である。よって、300Nから150Nに負荷を半分に低減することで、転がり寿命時間Lを約40万時間とすることができ、ベアリングの寿命を大幅に向上させることができる。
【0030】
図3は、実施形態1の送風機1の模式的な分解図である。
図3に示す様に、送風機1は、ユニット1(U1)、ユニット2(U2)、ユニット3(U3)の3つのユニットに分解できる。
ユニット1(U1)は、ケーシング23である。ユニット3(U3)は、ステータ3である。ユニット2(U2)は、残りのロータ10、固定軸8、第1のベアリング6、第2のベアリング7、第1の固定子部材13、第2の固定子部材14、弾性部材15などの固定軸8周りの構成を含むものである。
送風機1の組立て方法は、以下の2つの方法で行われる。
(方法1)
まず、ユニット3(U3)の軸穴25に、ユニット2(U2)の固定軸8を挿入する。 次に、ユニット2(U2)のロータ10の一部及び第1のベアリング6の外輪と、ユニット1(U1)のケーシング23の内側を接合する。
(方法2)
まず、ユニット2(U2)のロータ10の一部及び第1のベアリング6の外輪と、ユニット1(U1)のケーシング23の内側を接合する。
次に、ユニット3(U3)の軸穴25に、ユニット2(U2)の固定軸8を挿入する。
上記態様によれば、送風機1をユニット化することで、送風機1を容易に組立てることが可能である。
(実施形態2)
【0031】
図4は、実施形態2のファンモジュール35を表す模式的な断面図である。
ファンモジュール35は、
図3のケーシング23であるユニット1(U1)と、ロータ10を含むユニット2(U2)とを一体化して組合せたものである。このようにすることで、ファンモジュール35とステータ3であるユニット3(U3)とを別々に出荷することができ、出荷先でファンモジュール35とユニット3(U3)組み立てることができる。
【0032】
ファンモジュール35とユニット3(U3)とが別々に出荷された場合のファンモジュール35とユニット3(U3)との組立て方法について、説明する。
図5は、実施形態2のファンモジュール35を組込んだ送風機1を表す模式的な断面図である。
図5に示す様に、ユニット3(U3)のステータ3の軸穴25に、ファンモジュール35の固定軸8を挿入する。軸穴25と反対側のステータ3の側面(裏面)からネジ37を挿入して、固定軸8を締め付け、固定する。
上記態様によれば、ファンモジュール35とステータ3とを容易に組合せて、送風機1を容易に組立てることが可能である。
(実施形態3)
【0033】
本開示にかかる電気機器の一例として、4方向型室内機101の構成を実施形態3として、説明する。
図6は、4方向型室内機101を一例とした電気機器を模式的に表す図であり、
図6(a)は4方向型室内機101の全体を模式的に表す斜視図であり、
図6(b)は4方向型室内機101を模式的に表す分解斜視図である。
図6(a)に示すように、4方向型室内機101は、筐体111と、空気の吸入と排出とを行う換気蓋115とを備えている。
図6(b)は、筐体111と換気蓋115とを分離させた斜視図である。
図6(b)に示すように、筐体111の内部に、実施形態1又は実施形態2のアキシャルギャップモータ108と、実施形態1又は実施形態2のケーシング112と、電源120と、熱交換器(図示せず)とを有する。ケーシング112は、ターボファン1の羽根を備えている。アキシャルギャップモータ108と、ケーシング112とで、送風機1(ターボファン1)が構成している。
【0034】
図6(b)に示す様に、ターボファン1は、中央の開口部から空気を吸入し、周囲の4方向に空気を排出するものである。熱交換器(図示せず)は、ターボファン1の周囲に配置され、上記空気と熱交換を行うものである。熱交換器により、室内の空気は、冷房又は暖房の空気に変換される。
【0035】
電源120は、筐体111の内部に配置され、アキシャルギャップモータ108と電気的に接続されている。
電源120は、例えば、室内用の100V又は200VのAC電源から電力を供給し、アキシャルギャップモータ108に電力を供給するものである。電源120は、上記AC電源の電力から、電圧の振幅、周波数、交流から直流、パルス幅などの電力に変換するインバータ回路を含む。尚、電源120は、上記変換を行わない場合を含む。その場合、電源120は、AC電源の入力端子として機能する。
本開示にかかる電気機器は、上記送風機1を用いることで、磁気吸引力による負荷がロータとの接続箇所に集中するのを低減することができる。又、電気機器は、小型化を実現できる。
【0036】
尚、実施形態1~3に係る発明は、矛盾が生じない限り、置き換えたり、組合せたりすることができる。
【0037】
以上のように、本開示は、以下の項目に記載のアキシャルギャップモータ、送風機、送風機を備えた電気機器及びファンモジュールを含む。
【0038】
〔項目1〕
固定子巻線を巻装したステータコアを含むステータと、
前記ステータに対向して周方向に配置された複数のマグネットを保持するロータと、
前記ロータの中央を貫通し、前記ステータに固定された固定軸と、
前記固定軸に固定された第1のベアリングと、
前記第1のベアリングに付勢力を与える弾性部材とを備え、
前記ステータコアと前記マグネットとは引き合うものであり、
前記弾性部材は、前記ロータと前記ステータとを遠ざける方向に力を加えるものであるアキシャルギャップモータ。
上記態様によれば、アキシャルギャップモータにおいて、弾性部材を用いることで、磁気吸引力による負荷がロータとの接合箇所に集中するのを低減することができる。
【0039】
〔項目2〕
固定子巻線を巻装したステータコアを含むステータと、
前記ステータに対向して周方向に配置された複数のマグネットを保持するロータと、
前記ロータの中央を貫通し、前記ステータに固定された固定軸と、
前記固定軸に固定された第1のベアリングと、
前記第1のベアリングと離間して前記ステータ側に配置され、前記固定軸に固定された第2のベアリングと、
前記固定軸に固定された第1の固定部材と、
前記第1のベアリングと前記第1の固定部材との間に配置された弾性部材とを備え、
前記ロータは、中央部で前記第2のベアリングを保持し、
前記弾性部材の一端は前記第1の固定部材と接触し、前記弾性部材の他端は前記第1のベアリングと接触して、前記弾性部材は、前記第1のベアリングを前記第2のベアリングから遠ざける方向に力を加えるものであるアキシャルギャップモータ。
上記態様によれば、アキシャルギャップモータにおいて、第1のベアリングと、第1のベアリングと離間して配置された第2のベアリングと、弾性部材とを用いることで、磁気吸引力による負荷がロータとの接合箇所に集中するのを低減することができ、ロータを安定して回転できる。
【0040】
〔項目3〕
前記第1の固定部材と離間して前記ステータ側に配置され、前記固定軸に固定された第2の固定部材を有し、
前記第2の固定部材は、前記第2のベアリングを介して、前記ロータを前記固定軸に保持させる項目2に記載のアキシャルギャップモータ。
上記態様によれば、アキシャルギャップモータにおいて、第1の固定部材と第2の固定部材とを用いることで、ロータとステータとの接触を回避できる。
【0041】
〔項目4〕
前記弾性部材は、バネである項目1乃至3のいずれかに記載のアキシャルギャップモータ。
上記態様によれば、アキシャルギャップモータにおいて、弾性部材にバネを用いることで、弾性部材は、省スペースで、固定軸に容易に取付けられる。
【0042】
〔項目5〕
項目1乃至4のいずれかに記載のアキシャルギャップモータのロータの一部と、前記第1のベアリングの外輪とに接合された羽根車をさらに有する送風機。
上記態様によれば、羽根車をロータの一部と、第1のベアリングの外輪とに接合することで、羽根車はロータと一体化して安定して回転できる。
【0043】
〔項目6〕
前記羽根車は、タ-ボファン、シロッコファン又は軸流ファンの羽根の形状である項目5に記載の送風機。
上記態様によれば、羽根車をタ-ボファン、シロッコファン又は軸流ファンの羽根の形状とすることで、効率よく風を発生できる。
【0044】
〔項目7〕
項目1乃至6のいずれかに記載の送風機と、前記送風機に電力を供給する電源とを搭載した電気機器。
上記態様によれば、前記送風機を備えた電気機器において、弾性部材を用いることで、磁気吸引力による負荷がロータとの接合箇所に集中するのを低減することができる。又、電気機器の小型化を図ることができる。
【0045】
〔項目8〕
固定子巻線を巻装したステータコアを含むステータに対向して周方向に配置された複数のマグネットを保持するロータと、
前記ロータの中央を貫通し、前記ステータに接合する固定軸と、
前記固定軸に接合された第1のベアリングと、
前記第1のベアリングと離間して配置され、前記固定軸に接合された第2のベアリングと、
固定軸に接合された第1の固定部材と、
前記第1のベアリングと前記第1の固定部材との間に配置され、前記第1のベアリングに付勢力を与える弾性部材と、
前記ロータと、前記第1のベアリングとに接合された羽根車とを備え、
前記ロータは、中央部で前記第2のベアリングを保持し、
前記弾性部材の一端は前記第1の固定部材と接触し、前記弾性部材の他端は前記第1のベアリングと接触して、前記弾性部材は、前記第1のベアリングを前記第2のベアリングから遠ざける方向に力を加えるものであるファンモジュール。
上記態様によれば、ファンモジュールにおいて、弾性部材を用いることで、磁気吸引力による負荷がロータとの接合箇所に集中するのを低減することができる。又、ファンモジュールとステータとを別々に出荷し、出荷先でそれらを容易に組立てることができる。
【0046】
〔項目9〕
前記第1の固定部材と離間して前記ステータ側に配置され、前記固定軸に固定された第2の固定部材を有し、
前記第2の固定部材は、前記第2のベアリングを介して、前記ロータを前記固定軸に保持させる項目8に記載のアキシャルギャップモータ。
上記態様によれば、ファンモジュールにおいて、第1の固定部材と第2の固定部材とを用いることで、ロータと固定軸とを一体化することができる。
【0047】
〔項目10〕
前記弾性部材は、バネである項目8又は9に記載のファンモジュール。
上記態様によれば、ファンモジュールにおいて、弾性部材にバネを用いることで、弾性部材は、省スペースで、固定軸に容易に取付けられる。
【0048】
〔項目11〕
前記羽根車は、タ-ボファン、シロッコファン又は軸流ファンの羽根の形状である項目8乃至10のいずれかに記載のファンモジュール。
上記態様によれば、羽根車をタ-ボファン、シロッコファン又は軸流ファンの羽根の形状とすることで、効率よく風を発生できる。
【符号の説明】
【0049】
1 送風機
2 アキシャルギャップモータ
3 ステータ
4 ステータコア
5 固定子巻線
6 第1のベアリング
7 第2のベアリング
8 固定軸
10 ロータ
11 マグネット
13 第1の固定部材
14 第2の固定部材
15 弾性部材
20 羽根車
21 インペラベース
23 ケーシング
25 軸穴
35 ファンモジュール
101 エアコン室外機
120 電源