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特開2023-136741電磁波試験装置、及び電磁波試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136741
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】電磁波試験装置、及び電磁波試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/10 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G01R29/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042598
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】濱本 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】緑 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】栗原 弘
(57)【要約】
【課題】ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる電磁波試験装置を提供する。
【解決手段】反射箱と、反射箱内に設置され、反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、反射箱内に設置され、第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と第1アンテナとの間に接続され、第1アンテナに給電する給電装置と、グラウンド電位を有する部材と第1アンテナとの間に接続されるダミーロードと、第2アンテナから電磁波が放射されている場合における第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有する第1電力損失抑制部と、第1アンテナの接続先をダミーロードと第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第1切替部を含む切替部と、を備える電磁波試験装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射箱と、
前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、
前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、
グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、
前記グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続されるダミーロードと、
前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有する第1電力損失抑制部と、
前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードと前記第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第1切替部を含む切替部と、
を備える電磁波試験装置。
【請求項2】
前記第1電力損失抑制部は、開放端である、
請求項1に記載の電磁波試験装置。
【請求項3】
前記第1電力損失抑制部は、終端抵抗である、
請求項1に記載の電磁波試験装置。
【請求項4】
前記第1電力損失抑制部は、前記グラウンド電位を有する部材である、
請求項1に記載の電磁波試験装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記第1アンテナの接続先を前記給電装置と前記第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第3切替部を更に含む、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の電磁波試験装置。
【請求項6】
反射箱と、
前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、
前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、
グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、
前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有し、開放端と異なる第2電力損失抑制部と、
前記第1アンテナの接続先を前記給電装置と前記第2電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第2切替部を含む切替部と、
を備える電磁波試験装置。
【請求項7】
前記第2電力損失抑制部は、終端抵抗である、
請求項6に記載の電磁波試験装置。
【請求項8】
前記第2電力損失抑制部は、前記グラウンド電位を有する部材である、
請求項6に記載の電磁波試験装置。
【請求項9】
前記インピーダンスは、前記許容値に応じて予め決められた第1閾値未満の第1インピーダンス、又は、前記許容値に応じて予め決められた第2閾値以上の第2インピーダンスであり、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも高い値である、
請求項1から8のうちいずれか一項に記載の電磁波試験装置。
【請求項10】
前記第1インピーダンスは、前記許容値と、前記反射箱の表面積に対する前記第1アンテナの表面積の比と、前記第1アンテナの特性インピーダンスとに基づく第1条件を満たすインピーダンスであり、
前記第2インピーダンスは、前記許容値と、前記反射箱の表面積に対する前記第1アンテナの表面積の比と、前記第1アンテナの特性インピーダンスとに基づく第2条件を満たすインピーダンスである、
請求項9に記載の電磁波試験装置。
【請求項11】
前記第1条件は、以下の式(1)により表され、
【数1】
前記第2条件は、以下の式(2)により表され、
【数2】
は、前記許容値を示し、
は、前記反射箱の表面積に対する前記第1アンテナの表面積の比を示し、
は、前記第1アンテナの特性インピーダンスを示す、
請求項10に記載の電磁波試験装置。
【請求項12】
前記第1条件は、以下の式(3)により表され、
【数3】
前記第2条件は、以下の式(4)により表され、
【数4】
は、前記許容値を示し、
は、前記反射箱の表面積に対する前記第1アンテナの表面積の比を示し、
は、前記第1アンテナの特性インピーダンスを示す、
請求項10に記載の電磁波試験装置。
【請求項13】
反射箱と、
前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、
前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、
グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、
前記グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続されるダミーロードと、
予め決められたインピーダンスを有する第1電力損失抑制部と、
予め決められたインピーダンスを有する第2電力損失抑制部と、
前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードと前記第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第1切替部と、前記第1アンテナの接続先を前記給電装置と前記第2電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第2切替部とを含む切替部と、
を備え、
前記第1電力損失抑制部のインピーダンスと前記第2電力損失抑制部のインピーダンスとの合成インピーダンスは、前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスである、
電磁波試験装置。
【請求項14】
前記第1電力損失抑制部及び前記第2電力損失抑制部は、開放端である、
請求項13に記載の電磁波試験装置。
【請求項15】
前記第1電力損失抑制部及び前記第2電力損失抑制部は、終端抵抗である、
請求項13に記載の電磁波試験装置。
【請求項16】
前記第1電力損失抑制部及び前記第2電力損失抑制部は、前記グラウンド電位を有する部材である、
請求項13に記載の電磁波試験装置。
【請求項17】
前記合成インピーダンスは、前記許容値に応じて予め決められた第1閾値未満の第1インピーダンス、又は、前記許容値に応じて予め決められた第2閾値以上の第2インピーダンスであり、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも高い値である、
請求項13から16のうちいずれか一項に記載の電磁波試験装置。
【請求項18】
前記第1インピーダンスは、前記許容値と、前記反射箱の表面積に対する前記第1アンテナの表面積の比と、前記第1アンテナの特性インピーダンスとに基づく第1条件を満たすインピーダンスであり、
前記第2インピーダンスは、前記許容値と、前記反射箱の表面積に対する前記第1アンテナの表面積の比と、前記第1アンテナの特性インピーダンスとに基づく第2条件を満たすインピーダンスである、
請求項17に記載の電磁波試験装置。
【請求項19】
前記第1条件は、以下の式(5)により表され、
【数5】
前記第2条件は、以下の式(6)により表され、
【数6】
は、前記許容値を示し、
は、前記反射箱の表面積に対する前記第1アンテナの表面積の比を示し、
は、前記第1アンテナの特性インピーダンスを示す、
請求項18に記載の電磁波試験装置。
【請求項20】
前記第1条件は、以下の式(7)により表され、
【数7】
前記第2条件は、以下の式(8)により表され、
【数8】
は、前記許容値を示し、
は、前記反射箱の表面積に対する前記第1アンテナの表面積の比を示し、
は、前記第1アンテナの特性インピーダンスを示す、
請求項18に記載の電磁波試験装置。
【請求項21】
前記切替部に接続を切り替えさせる操作を受け付ける操作部、
を更に備える請求項1から20のうちいずれか一項に記載の電磁波試験装置。
【請求項22】
前記切替部に接続を切り替えさせる制御装置、
を更に備える請求項1から20のうちいずれか一項に記載の電磁波試験装置。
【請求項23】
反射箱と、前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、前記グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続されるダミーロードと、前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有する第1電力損失抑制部と、前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードと前記第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第1切替部を含む切替部とを備える電磁波試験装置を用いた電磁波試験方法であって、
前記第1アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードに切り替え、前記第2アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1アンテナの接続先を前記第1電力損失抑制部に切り替える、
電磁波試験方法。
【請求項24】
反射箱と、前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有し、開放端と異なる第2電力損失抑制部と、前記第1アンテナの接続先を前記給電装置と前記第2電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第2切替部を含む切替部とを備える電磁波試験装置を用いた電磁波試験方法であって、
前記第1アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1アンテナの接続先を前記給電装置に切り替え、前記第2アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1アンテナの接続先を前記第2電力損失抑制部に切り替える、
電磁波試験方法。
【請求項25】
反射箱と、前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、前記グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続されるダミーロードと、第1電力損失抑制部と、第2電力損失抑制部と、前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードと前記第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第1切替部と、前記第1アンテナの接続先を前記給電装置と前記第2電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第2切替部とを含む切替部と、を備える電磁波試験装置を用いた電磁波試験方法であって、
前記第1電力損失抑制部のインピーダンスと前記第2電力損失抑制部のインピーダンスとの合成インピーダンスは、前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスであり、
前記電磁波試験方法は、
前記第1アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1切替部によって前記第1アンテナの接続先を前記第1電力損失抑制部から前記ダミーロードに切り替えるとともに、前記第2切替部によって前記第1アンテナの接続先を前記第2電力損失抑制部から前記給電装置に切り替え、
前記第2アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1切替部によって前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードから前記第1電力損失抑制部に切り替えるとともに、前記第2切替部によって前記第1アンテナの接続先を前記給電装置から前記第2電力損失抑制部に切り替える、
電磁波試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波試験装置、及び電磁波試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射箱を用いて放射イミュニティ試験を行う電磁波試験装置についての研究、開発が行われている。放射イミュニティ試験は、供試体として反射箱内に設置された電子機器に対して均一で強度が強い電界を印加し、当該電子機器が正常に動作するか否かを確認する試験のことである。なお、本明細書において、電界は、磁界、電界のいずれかに読み替えられてもよい。
【0003】
反射箱は、金属製の空洞共振器と、空洞共振器内に電磁波を放射するアンテナ装置と、アンテナ装置から放射された電磁波を攪拌する電磁攪拌器とにより構成される。そして、反射箱は、空洞共振器内における電磁波の共振現象により、供試体に印加される電界を発生させる。このようにして発生した電界の強度の分布には、空洞共振器の寸法に起因した強度のばらつきが現れてしまう。すなわち、空洞共振器によって発生させた電界の強度の分布は、不均一な分布となってしまう。このため、電磁攪拌器は、空洞共振器内の電磁波を攪拌し、空洞共振器によって発生させた電界の強度の分布を均一な分布に近づける。これにより、反射箱は、試験品質の高い放射イミュニティ試験をユーザに行わせることができる。本明細書では、説明の便宜上、このように反射箱内における共振現象を用いて放射イミュニティ試験を行う方法を、反射箱法と称して説明する。
【0004】
反射箱法において、空洞共振器の共振周波数は、空洞共振器の寸法に反比例することが知られている。このため、反射箱法による放射イミュニティ試験では、反射箱内において共振現象を用いて発生させる電界の周波数を低くするほど、反射箱の容積を大きくしなければならなかった。
【0005】
一方、反射箱の代わりに電波暗室を用いた放射イミュニティ試験では、電波暗室内において、低周波数帯の電界が電子機器に印加される。低周波数帯は、反射箱として機能する最低周波数(Lowest Usable Frequency;LUF)未満の周波数帯、反射箱の最低次の共振周波数(すなわち、第1共振周波数)未満の周波数帯等のことである。このような低周波数帯の電界を用いた放射イミュニティ試験を反射箱内において行おうとすると、反射箱の寸法は、10km程度となってしまう。このような寸法の反射箱は、設置する場所の自由度を制限してしまうため、望ましくない。このため、近年、反射箱には、低周波数帯を用いた放射イミュニティ試験を行える装置を有し、且つ、電気機器を入れることができる程度の大きさであることが望まれてきていた。
【0006】
反射箱内において低周波数帯を用いた放射イミュニティ試験を行える装置としては、伝送線路システム(Transmission Line System;TLS)と呼ばれる装置が知られている。伝送線路システムとしては、TEM(Transverse Electro-Magnetic)プレートアンテナ、ストリップライン等のアンテナから電界を電子機器へ印加する装置等が知られている。本明細書では、説明の便宜上、伝送線路システムを用いて放射イミュニティ試験を行う方法を、伝送線路システム法と称して説明する。
【0007】
ここで、伝送線路システムを反射箱内に設置し、反射箱法と伝送線路システム法とを組み合わせて行う放射イミュニティ試験では、反射箱法のみによる放射イミュニティ試験と比較して、反射箱の大きさの増大を抑制しつつ、より広い周波数帯の電界を、強度を均一にして電子機器へ印加することができる(非特許文献1参照)。このため、近年、伝送線路システムを反射箱内に設置し、反射箱法と伝送線路システム法との組み合わせにより放射イミュニティ試験が行われることが増えてきている。本明細書では、説明の便宜上、反射箱法と伝送線路システム法との組み合わせにより放射イミュニティ試験を行う方法を、ハイブリッド法と称して説明する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Myron L. Crawford, Mark T. Ma, John M. Ladbury, Bill F. Riddle, "Measurement and Evaluation of a TEM/Reverberating chamber", NIST Technical Note 1342, July, 1990.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ハイブリッド法では、高周波数帯を用いた放射イミュニティ試験を行う場合、空洞共振器内に設置されたアンテナ装置から電磁波を放射する。高周波数帯は、反射箱として機能する最低周波数以上の周波数帯、反射箱の最低次の共振周波数(すなわち、第1共振周波数)以上の周波数帯等のことである。また、ハイブリッド法では、低周波数帯を用いた放射イミュニティ試験を行う場合、アンテナ装置からの電磁波の放射を止め、空洞共振器内に設置された伝送線路システムから電子機器へ電界を印加する。
【0010】
しかしながら、ハイブリッド法では、高周波数帯を用いた放射イミュニティ試験を行う場合において、アンテナ装置から放射した電磁波の一部が、電子機器へ電界を印加していない伝送線路システムにより電力として受信されてしまうことがあった。これは、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失を増大させてしまうため望ましいことではない。
【0011】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる電磁波試験装置、及び電磁波試験方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、反射箱と、前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、前記グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続されるダミーロードと、前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有する第1電力損失抑制部と、前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードと前記第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第1切替部を含む切替部と、を備える電磁波試験装置である。
【0013】
また、本発明の一態様は、反射箱と、前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有し、開放端と異なる第2電力損失抑制部と、前記第1アンテナの接続先を前記給電装置と前記第2電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第2切替部を含む切替部と、を備える電磁波試験装置である。
【0014】
また、本発明の一態様は、反射箱と、前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、前記グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続されるダミーロードと、予め決められたインピーダンスを有する第1電力損失抑制部と、予め決められたインピーダンスを有する第2電力損失抑制部と、前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードと前記第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第1切替部と、前記第1アンテナの接続先を前記給電装置と前記第2電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第2切替部とを含む切替部と、を備え、前記第1電力損失抑制部のインピーダンスと前記第2電力損失抑制部のインピーダンスとの合成インピーダンスは、前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスである、電磁波試験装置である。
【0015】
また、本発明の一態様は、反射箱と、前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、前記グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続されるダミーロードと、前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有する第1電力損失抑制部と、前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードと前記第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第1切替部を含む切替部とを備える電磁波試験装置を用いた電磁波試験方法であって、前記第1アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードに切り替え、前記第2アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1アンテナの接続先を前記第1電力損失抑制部に切り替える、電磁波試験方法である。
【0016】
また、本発明の一態様は、反射箱と、前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有し、開放端と異なる第2電力損失抑制部と、前記第1アンテナの接続先を前記給電装置と前記第2電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第2切替部を含む切替部とを備える電磁波試験装置を用いた電磁波試験方法であって、前記第1アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1アンテナの接続先を前記給電装置に切り替え、前記第2アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1アンテナの接続先を前記第2電力損失抑制部に切り替える、電磁波試験方法である。
【0017】
また、本発明の一態様は、反射箱と、前記反射箱内に設置され、前記反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、前記反射箱内に設置され、前記第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続され、前記第1アンテナに給電する給電装置と、前記グラウンド電位を有する部材と前記第1アンテナとの間に接続されるダミーロードと、第1電力損失抑制部と、第2電力損失抑制部と、前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードと前記第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第1切替部と、前記第1アンテナの接続先を前記給電装置と前記第2電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第2切替部とを含む切替部と、を備える電磁波試験装置を用いた電磁波試験方法であって、前記第1電力損失抑制部のインピーダンスと前記第2電力損失抑制部のインピーダンスとの合成インピーダンスは、前記第2アンテナから電磁波が放射されている場合における前記第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスであり、前記電磁波試験方法は、前記第1アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1切替部によって前記第1アンテナの接続先を前記第1電力損失抑制部から前記ダミーロードに切り替えるとともに、前記第2切替部によって前記第1アンテナの接続先を前記第2電力損失抑制部から前記給電装置に切り替え、前記第2アンテナから電磁波を放射する場合、前記第1切替部によって前記第1アンテナの接続先を前記ダミーロードから前記第1電力損失抑制部に切り替えるとともに、前記第2切替部によって前記第1アンテナの接続先を前記給電装置から前記第2電力損失抑制部に切り替える、電磁波試験方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る電磁波試験装置1の構成の一例を示す図である。
図2】第2アンテナ121に入力するRF信号の周波数の変化に対する受信電力比の変化の一例を示す図である。
図3】第2アンテナ121に入力するRF信号の周波数の変化に対する電界強度比の変化の一例を示す図である。
図4】Zを変化させた場合の受信電力比の変化の一例を示す図である。
図5】Zを変化させた場合の電界強度比の変化の一例を示す図である。
図6】第2アンテナ121に入力するRF信号の周波数の変化に対する電界強度比の変化の他の例を示す図である。
図7】電磁波試験装置1を用いてハイブリッド法による放射イミュニティ試験を行う方法の流れの一例を示す図である。
図8】第1アンテナ111と第1電力損失抑制部113との接続態様の変形例を示す図である。
図9】ストリップラインに接続された第1アンテナ111の様子の一例を示す図である。
図10】セプテムに接続された第1アンテナ111の様子の一例を示す図である。
図11】複数の導線、複数の平板等によって構成される第1アンテナ111の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下では、説明を簡略化するため、グラウンド電位を有する複数の部材同士の電位差がない又は略ない場合について説明する。また、以下の説明において、電界は、磁界と読み替えられてもよく、電磁界と読み替えられてもよい。また、以下では、説明の便宜上、電界の強度を、単に電界強度と称して説明する。
【0021】
<電磁波試験装置の構成>
まず、図1を参照し、実施形態に係る電磁波試験装置1の構成について説明する。図1は、実施形態に係る電磁波試験装置1の構成の一例を示す図である。
【0022】
電磁波試験装置1は、放射イミュニティ試験が行われる対象となる電子機器を供試体TMとして、供試体TMに対する放射イミュニティ試験を行う装置である。放射イミュニティ試験は、供試体TMに対して均一で強度が強い電界を印加し、供試体TMが正常に動作するか否かを確認する試験のことである。以下では、一例として、供試体TMが、図1に示した自動車である場合について説明する。なお、供試体TMとして放射イミュニティ試験が行われる対象となる電子機器は、電気制御が行われる機器であれば、如何なる機器であってもよい。このため、供試体TMは、自動車に代えて、ドライブレコーダー、多機能携帯電話端末(スマートフォン)、携帯電話端末、各種のコンピュータ等の電気制御が行われる他の機器であってもよい。
【0023】
また、電磁波試験装置1は、ハイブリッド法により、放射イミュニティ試験を行う。ハイブリッド法は、反射箱法と伝送線路システム(Transmission Line System;TLS)法との組み合わせにより放射イミュニティ試験を行う方法のことである。反射箱法は、反射箱内における共振現象を用いて放射イミュニティ試験を行う方法のことである。伝送線路システム法は、伝送線路システムを用いて放射イミュニティ試験を行う方法である。そして、伝送線路システムは、TEM(Transverse Electro-Magnetic)プレートアンテナ、ストリップライン等のアンテナから電界を電子機器へ印加する装置のことである。
【0024】
電磁波試験装置1は、反射箱10と、第1試験装置11と、第2試験装置12と、電磁攪拌器13と、情報処理装置14を備える。
【0025】
反射箱10は、供試体TMを収容可能な金属製の筐体として構成された空洞共振器である。以下では、一例として、反射箱10が、図1に示したように、内部に供試体TMを収容可能な直方体形状の金属製の空洞共振器である場合について説明する。なお、反射箱10の形状は、直方体形状に代えて、供試体TMを収容可能な他の形状であってもよい。ただし、反射箱10の形状は、反射箱10の共振周波数を算出し易くなるため、直方体形状であることが望ましい。以下では、説明の便宜上、反射箱10の最低次の共振周波数を、第1共振周波数と称して説明する。
【0026】
第1試験装置11は、伝送線路システムである。すなわち、電磁波試験装置1において、第1試験装置11は、伝送線路システム法による放射イミュニティ試験を供試体TMに対して行う装置である。
【0027】
第1試験装置11は、第1アンテナ111と、ダミーロード112と、第1電力損失抑制部113と、第1給電装置114と、第2電力損失抑制部115と、切替部116と、第1制御装置117を備える。また、切替部116は、第1切替部SW1と、第2切替部SW2を備える。
【0028】
第1アンテナ111は、反射箱10の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させるアンテナである。また、第1アンテナ111は、伝送線路システムにおいて利用可能なアンテナである。第1アンテナ111は、例えば、TEMプレートアンテナである。なお、第1アンテナ111は、TEMプレートアンテナに代えて、ストリップライン、セプテム等の伝送線路システムに利用可能な他のアンテナであってもよい。なお、TEMプレートアンテナは、平行平板の漏れ電界を使用することにより、供試体TMに電界を印加する装置である。第1アンテナ111は、第1給電装置114からRF(Radio Frequency)信号を取得し、取得したRF信号に応じた電磁波を放射する。第1アンテナ111は、例えば、反射箱10内の領域のうち供試体TMが設置される作業領域の直上に位置するように、反射箱10の天井に設置される。この場合、第1アンテナ111は、重力方向に向かって反射箱10を見た場合において、作業領域の全体を含むように反射箱10の天井に設置される。これにより、第1アンテナ111は、反射箱10内において、天井から床面に向かって作業領域内の供試体TMへ電界を印加することができる。なお、第1アンテナ111は、作業領域へ電界を印加可能な他の位置に設置される構成であってもよい。
【0029】
ダミーロード112は、グラウンド電位を有する第1グラウンド部材と第1アンテナ111との間に接続される抵抗素子である。以下では、一例として、ダミーロード112のインピーダンスは、第1アンテナ111の特性インピーダンスと整合されている場合について説明する。なお、ダミーロード112のインピーダンスは、第1アンテナ111の特性インピーダンスと整合されていなくてもよいが、第1アンテナ111の特性インピーダンスと整合されている方が、電力損失が低減されるため望ましい。
【0030】
第1電力損失抑制部113は、第2試験装置12によって反射箱法による放射イミュニティ試験が行われる場合において第2アンテナ121から放射される電磁波の一部が第1アンテナ111により受信されることによって電力損失が増大してしまうことを抑制する部材である。より具体的には、第1電力損失抑制部113は、当該場合における第1アンテナ111による電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有する部材である。第1電力損失抑制部113の詳細については、後述する。なお、当該場合における第1アンテナ111による電力損失は、当該場合において第1アンテナ111が消費した電力によって表される構成であってもよく、当該場合において第1アンテナ111による反射箱10内の電界強度の低下量によって表されてもよい。
【0031】
第1給電装置114は、第1アンテナ111に給電する給電装置である。より具体的には、第1給電装置114は、反射箱10の第1共振周波数未満の周波数のRF信号を第1アンテナ111に出力する。図1に示した例では、第1給電装置114は、情報処理装置14により制御される。この場合、第1給電装置114は、情報処理装置14からの要求に応じた当該周波数のRF信号を第1アンテナ111に出力可能な構成であれば、如何なる構成であってもよい。なお、第1給電装置114は、情報処理装置14により制御される構成に代えて、ユーザからの操作を受け付ける操作部を備え、当該操作部から受け付けた操作に応じた当該周波数のRF信号を第1アンテナ111に出力可能な構成であってもよい。第1給電装置114は、グラウンド電位を有する第2グラウンド部材と第1アンテナ111との間に接続される。なお、第2グラウンド部材は、第1グラウンド部材と同じ部材であってもよく、第1グラウンド部材と異なる部材であってもよい。
【0032】
第2電力損失抑制部115は、第2試験装置12によって反射箱法による放射イミュニティ試験が行われる場合において第2アンテナ121から放射される電磁波の一部が第1アンテナ111により受信されることによって電力損失が増大してしまうことを抑制する部材である。より具体的には、第2電力損失抑制部115は、当該場合における第1アンテナ111による電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有する部材である。第2電力損失抑制部115の詳細については、後述する。なお、第2電力損失抑制部115は、第1電力損失抑制部113と一体に構成されてもよい。以下では、一例として、第2電力損失抑制部115が、第1電力損失抑制部113と別体である場合について説明する。
【0033】
第1切替部SW1は、第1アンテナ111の接続先をダミーロード112と第1電力損失抑制部113とのいずれかに切り替える装置である。第1切替部SW1は、第1アンテナ111の接続先をダミーロード112と第1電力損失抑制部113とのいずれかに切り替え可能な構成であれば、如何なる構成であってもよい。図1に示した例では、第1切替部SW1は、第1制御装置117からの要求に応じて、第1アンテナ111の接続先をダミーロード112と第1電力損失抑制部113とのいずれかに切り替えるスイッチング素子(例えば、リレースイッチ、電界効果トランジスタ等)である。なお、第1切替部SW1は、第1アンテナ111の接続先をダミーロード112と第1電力損失抑制部113とのいずれかに切り替える操作を受け付ける操作部を備え、当該操作部から受け付けた操作に応じて、第1アンテナ111の接続先をダミーロード112と第1電力損失抑制部113とのいずれかに切り替える構成であってもよい。この場合、当該操作部は、例えば、ボタン、レバー等であるが、これらに限られるわけではない。
【0034】
第2切替部SW2は、第1アンテナ111の接続先を第1給電装置114と第2電力損失抑制部115とのいずれかに切り替える装置である。第2切替部SW2は、第1アンテナ111の接続先を第1給電装置114と第2電力損失抑制部115とのいずれかに切り替え可能な構成であれば、如何なる構成であってもよい。図1に示した例では、第2切替部SW2は、第1制御装置117からの要求に応じて、第1アンテナ111の接続先を第1給電装置114と第2電力損失抑制部115とのいずれかに切り替えるスイッチング素子(例えば、リレースイッチ、電界効果トランジスタ等)である。なお、第2切替部SW2は、第1アンテナ111の接続先を第1給電装置114と第2電力損失抑制部115とのいずれかに切り替える操作を受け付ける操作部を備え、当該操作部から受け付けた操作に応じて、第1アンテナ111の接続先を第1給電装置114と第2電力損失抑制部115とのいずれかに切り替える構成であってもよい。この場合、当該操作部は、例えば、ボタン、レバー等であるが、これらに限られるわけではない。
【0035】
第1制御装置117は、切替部116に接続を切り替えさせる装置である。より具体的には、第1制御装置117は、第1切替部SW1を制御し、第1アンテナ111の接続先を、ダミーロード112と第1電力損失抑制部113とのいずれかに切り替えさせる。また、第1制御装置117は、第2切替部SW2を制御し、第1アンテナ111の接続先を、第1給電装置114と第2電力損失抑制部115とのいずれかに切り替えさせる。図1に示した例では、第1制御装置117は、情報処理装置14からの要求に応じて、このような接続の切り替えを切替部116に行わせる。なお、第1制御装置117は、切替部116に接続の切り替えを行わせる操作を受け付ける操作部を備え、当該操作部から受け付けた操作に応じて、切替部116に接続の切り替えを行わせる構成であってもよい。
【0036】
また、第1制御装置117は、電磁攪拌器13も制御する。図1に示した例では、第1制御装置1117は、電磁攪拌器13を制御し、電磁攪拌器13を回転させる。これにより、第1制御装置117は、電磁攪拌器13に反射箱10内の電磁波を攪拌させることができる。図1に示した例では、第1制御装置117は、情報処理装置14からの要求に応じて、電磁攪拌器13の制御を行う。なお、第1制御装置117は、電磁攪拌器13の制御を行う操作を受け付ける操作部を備え、当該操作部から受け付けた操作に応じて、電磁攪拌器13の制御を行う構成であってもよい。なお、第1制御装置117は、情報処理装置14と一体に構成されてもよい。
【0037】
第2試験装置12は、反射箱法による放射イミュニティ試験を供試体TMに対して行う装置である。
【0038】
第2試験装置12は、第2アンテナ121と、第2給電装置122と、第2制御装置123を備える。
【0039】
第2アンテナ121は、反射箱10の第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させるアンテナである。第2アンテナ121は、当該電磁波を放射可能なアンテナであれば、如何なる構成のアンテナであってもよい。第2アンテナ121は、第2給電装置122からRF信号を取得し、取得したRF信号に応じた電磁波を放射する。第2アンテナ121は、反射箱10内に設置される。反射箱10内において第2アンテナ121が設置される位置は、反射箱10内の領域のうち前述の作業領域の外の領域の位置であれば、如何なる位置であってもよい。第2アンテナ121は、第2給電装置122からRF信号を取得し、取得したRF信号に応じた電磁波を放射する。
【0040】
第2給電装置122は、第2アンテナ121に給電する給電装置である。より具体的には、第2給電装置122は、反射箱10の第1共振周波数以上の周波数のRF信号を第2アンテナ121に出力する。図1に示した例では、第2給電装置122は、情報処理装置14により制御される。この場合、第2給電装置122は、情報処理装置14からの要求に応じた当該周波数のRF信号を第2アンテナ121に出力可能な構成であれば、如何なる構成であってもよい。なお、第2給電装置122は、情報処理装置14により制御される構成に代えて、ユーザからの操作を受け付ける操作部を備え、当該操作部から受け付けた操作に応じた当該周波数のRF信号を第2アンテナ121に出力可能な構成であってもよい。第2給電装置122は、グラウンド電位を有する第3グラウンド部材と第2アンテナ121との間に接続される。なお、第3グラウンド部材は、第1グラウンド部材と同じ部材であってもよく、第1グラウンド部材と異なる部材であってもよい。また、第3グラウンド部材は、第2グラウンド部材と同じ部材であってもよく、第2グラウンド部材と異なる部材であってもよい。
【0041】
第2制御装置123は、電磁攪拌器13を制御する制御装置である。図1に示した例では、第2制御装置123は、電磁攪拌器13を制御し、電磁攪拌器13を回転させる。これにより、第2制御装置123は、電磁攪拌器13に反射箱10内の電磁波を攪拌させることができる。図1に示した例では、第2制御装置123は、情報処理装置14からの要求に応じて、電磁攪拌器13の制御を行う。なお、第2制御装置123は、電磁攪拌器13の制御を行う操作を受け付ける操作部を備え、当該操作部から受け付けた操作に応じて、電磁攪拌器13の制御を行う構成であってもよい。また、第2制御装置123は、第1制御装置117と情報処理装置14とのうちのいずれか一方又は両方と一体に構成されてもよい。
【0042】
電磁攪拌器13は、反射箱10内に設置され、反射箱10内の電磁波を攪拌する。これにより、反射箱10は、前述の作業領域内の電界強度のばらつきを小さくすることができる。電磁攪拌器13は、反射箱10内の電磁波を攪拌可能な構成であれば、如何なる構成であってもよい。図1に示した例では、電磁攪拌器13は、軸体と、軸体に沿って並ぶように軸体に設けられた平板矩形状の4枚の攪拌翼と、軸体を回転させる駆動部とを備えている。この場合、電磁攪拌器13は、第1制御装置117と第2制御装置123とのそれぞれにより制御され、軸体とともに回転する当該4枚の攪拌翼によって反射箱10内の電磁波を攪拌する。従って、第1制御装置117と第2制御装置123とのそれぞれは、当該駆動部を制御し、当該軸体を回転させる。なお、電磁攪拌器13は、第1試験装置11に備えられる構成であってもよく、第2試験装置12に備えられる構成であってもよい。
【0043】
情報処理装置14は、ユーザから受け付けた操作に応じて、第1給電装置114と、第1制御装置117と、第2給電装置122と、第2制御装置123とのそれぞれを制御する。情報処理装置14は、例えば、ノートPC(Personal Computer)、デスクトップPC、ワークステーション、タブレットPC、多機能携帯電話端末、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)等の情報処理装置であるが、これらに限られるわけではない。
【0044】
情報処理装置14は、有線又は無線により、第1給電装置114と、第1制御装置117と、第2給電装置122と、第2制御装置123とのそれぞれと通信可能に接続される。ただし、放射イミュニティ試験の性質上、情報処理装置14は、有線により、第1給電装置114と、第1制御装置117と、第2給電装置122と、第2制御装置123とのそれぞれと通信可能に接続される方が望ましい。
【0045】
<反射箱法において第1アンテナにより発生する電力損失>
以下、反射箱法において第1アンテナ111により発生する電力損失について説明する。
【0046】
反射箱法では、電磁波試験装置1は、第1共振周波数以上の電磁波を第2アンテナ121から放射させる。これにより、電磁波試験装置1は、反射箱10内における電磁波の共振現象により、供試体TMに印加される電界を発生させる。この際、第1アンテナ111は、反射箱10内の電磁波を受信してしまう。
【0047】
反射箱10内の電磁波が第1アンテナ111に受信された場合、且つ、第1アンテナ111が第1給電装置114とダミーロード112との少なくとも一方の部材に接続されている場合、第1アンテナ111は、当該部材を介して、グラウンド電位を有する部材へと電流を流してしまう。このため、電磁波試験装置1において、反射箱法による放射イミュニティ試験が行われる場合における第1アンテナ111による電力損失は、受信電力比によって表すことができる。受信電力比は、第2アンテナ121へRF信号として入力された電力と、第1アンテナ111が受信した電力(すなわち、第1アンテナ111が消費した電力)との比のことである。
【0048】
ここで、図2は、第2アンテナ121に入力するRF信号の周波数の変化に対する受信電力比の変化の一例を示す図である。ただし、図2は、第1アンテナ111にダミーロード112のみを接続し、且つ、第2アンテナ121から電磁波を放射させた場合の受信電力比を、当該周波数を変化させながら測定した結果の一例である。図2に示したグラフの縦軸は、受信電力比を示す。また、当該グラフの横軸は、第2アンテナ121に入力されたRF信号の周波数を示す。図2に示した例では、受信電力比の周波数平均は、0.16である。すなわち、図2は、第1アンテナ111にダミーロード112のみが接続されている場合の電磁波試験装置1では、第2アンテナ121へRF信号として入力された電力のうちの16%の電力が損失されてしまうことを示している。なお、図示しないが、第1アンテナ111に第1給電装置114のみが接続されている場合の電磁波試験装置1でも、受信電力比の周波数平均は、0.16程度となることが測定されている。そして、第1アンテナ111にダミーロード112と第1給電装置114との両方が接続されている場合の電磁波試験装置1では、受信電力比の周波数平均は、0.32程度となることが測定されている。これは、直感的には、第1アンテナ111から電流が流れる経路が2倍になったことに起因する結果であると考えられる。従って、電磁波試験装置1では、当該場合、第2アンテナ121へRF信号として入力された電力のうちの約32%の電力が損失されてしまうことが分かっている。
【0049】
一方、反射箱10内の電磁波が第1アンテナ111に受信された場合、第1アンテナ111は、反射箱10内の電界強度を低下させてしまう。このため、電磁波試験装置1において、反射箱法による放射イミュニティ試験が行われる場合における第1アンテナ111による電力損失は、電界強度比によっても表すことができる。電界強度比は、第1アンテナ未設置状態の反射箱10内において第2アンテナ121から電磁波を放射させた場合の当該反射箱10内の電界強度に対する、第1アンテナ設置状態の反射箱10内において第2アンテナ121から電磁波を放射させた場合の当該反射箱10内の電界強度の比のことである。なお、第1アンテナ未設置状態は、反射箱10の状態のうち第1アンテナ111が設置されていない状態のことである。また、第1アンテナ設置状態は、反射箱10の状態のうち第1アンテナ111が設置されており、且つ、第1アンテナ111にダミーロード112及び第1給電装置114が設置されている状態のことである。
【0050】
ここで、図3は、第2アンテナ121に入力するRF信号の周波数の変化に対する電界強度比の変化の一例を示す図である。ただし、図3では、電界強度比を、偏差によって表している。図3に示したグラフの縦軸は、偏差によって表された電界強度比を示す。また、当該グラフの横軸は、第2アンテナ121に入力されたRF信号の周波数を示す。図3に示した例では、電界強度比の周波数平均は、-2.1[dB]である。これは、第1アンテナ未設置状態の反射箱10内において第2アンテナ121から電磁波を放射させた場合の当該反射箱10内の電界強度に対して、第1アンテナ設置状態の反射箱10内において第2アンテナ121から電磁波を放射させた場合の当該反射箱10内の電界強度が20[%]程度低いことを示している。すなわち、これは、第1アンテナ111にダミーロード112と第1給電装置114との両方が接続されている場合の電磁波試験装置1では、第2アンテナ121からの電磁波の放射によって反射箱10内に発生した電界のうちの20[%]が、第1アンテナ111によって電力として損失されてしまうことを意味している。
【0051】
以上のように、反射箱法による放射イミュニティ試験を行う場合における第1アンテナ111による電力損失は、受信電力比、電界強度比のそれぞれによって表すことができる。そして、このような電力損失の原因は、第1アンテナ111が、ダミーロード112と第1給電装置114とのそれぞれを介してグラウンド電位を有する部材へ電流を流してしまうことである。そこで、電磁波試験装置1は、当該場合、切替部116を制御し、第1アンテナ111の接続先を、ダミーロード112及び第1給電装置114のそれぞれから、第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115のそれぞれへと切り替える。これにより、電磁波試験装置1は、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験のうちの反射箱法による放射イミュニティ試験において、第1アンテナ111による電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。すなわち、電磁波試験装置1は、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、第1アンテナ111による電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。これは、第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115のそれぞれが、第1アンテナ111による電力損失の増大を抑制するからである。そこで、以下では、第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115のそれぞれが、第1アンテナ111による電力損失の増大を抑制する理由について説明する。
【0052】
<第1アンテナによる電力損失が抑制される理由>
以下、第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115のそれぞれが、第1アンテナ111による電力損失の増大を抑制する理由について説明する。以下では、この理由の説明のため、ダミーロード112、第1給電装置114、第1電力損失抑制部113、第2電力損失抑制部115のそれぞれが第1アンテナ111に接続されておらず、且つ、変数Zによって表されるインピーダンスを有する抵抗素子Xが第1アンテナ111とグラウンド電位を有する部材との間に接続されている場合について説明する。この場合、前述の受信電力比及び電界強度比は、Zの値に応じて変化する。また、以下では、一例として、第1アンテナ111の特性インピーダンスZが、50[Ω]である場合について説明する。
【0053】
図4は、Zを変化させた場合の受信電力比の変化の一例を示す図である。ただし、図4では、受信電力比が、100分率によって表されている。図4に示したグラフの縦軸は、100分率によって表された受信電力比を示す。また、当該グラフの横軸は、Zの値を示す。また、当該グラフ上にプロットされた曲線は、理論計算により算出された受信電力比についての曲線である。図4に示した例では、受信電力比は、Zが50[Ω]の場合に最大となっている。これは、この一例において、Zが50[Ω]の場合、第1アンテナ111の特性インピーダンスと、抵抗素子Xのインピーダンスとが整合するからである。この場合、受信電力比は、Zが50[Ω]よりも小さくなるほど小さくなり、且つ、Zが50[Ω]よりも大きくなるほど小さくなる。ここで、電磁波試験装置1の製造者は、当該グラフを事前の実験等によって得ることにより、受信電力比が予め決められた第1許容値以下となるように、Zの値を決定することができる。例えば、当該グラフが事前の実験等によって得られたグラフと見做した上で、第1許容値を10[%]とすると、当該製造者は、当該グラフに基づいて、Zの値を、X1以下の値、又は、X2以上の値として決定することができる。X1は、当該グラフにおいて、受信電力比が10[%]となる2つのZの値のうちの小さい方の値であり、4[Ω]である。また、X2は、当該グラフにおいて、受信電力比が10[%]となる2つのZの値のうちの大きい方の値であり、615[Ω]である。
【0054】
従って、抵抗素子Xに代えて、第1電力損失抑制部113、第2電力損失抑制部115のそれぞれを第1アンテナ111に接続した場合、且つ、第1電力損失抑制部113のインピーダンスと第2電力損失抑制部115のインピーダンスとの合成インピーダンスがX1以下の第1インピーダンスI11である場合、反射箱法による放射イミュニティ試験を行うと、電磁波試験装置1は、受信電力比を、第1許容値以下に抑えることができる。また、抵抗素子Xに代えて、第1電力損失抑制部113、第2電力損失抑制部115のそれぞれを第1アンテナ111に接続した場合、且つ、当該合成インピーダンスがX2以上の第2インピーダンスI12である場合も、反射箱法による放射イミュニティ試験を行うと、電磁波試験装置1は、受信電力比を、第1許容値以下に抑えることができる。すなわち、電磁波試験装置1は、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。
【0055】
なお、抵抗素子Xに代えて、第1電力損失抑制部113を第1アンテナ111に接続した場合(すなわち、第1電力損失抑制部113を第1アンテナ111に接続し、且つ、第2電力損失抑制部115を第1アンテナ111に接続しない場合)、第1電力損失抑制部113のインピーダンスを第1インピーダンスI11又は第2インピーダンスI12とすることにより、電磁波試験装置1は、反射箱法による放射イミュニティ試験おける受信電力比を、第1許容値以下に抑えることができる。また、抵抗素子Xに代えて、第2電力損失抑制部115を第1アンテナ111に接続した場合(すなわち、第2電力損失抑制部115を第1アンテナ111に接続し、且つ、第1電力損失抑制部113を第1アンテナ111に接続しない場合)、第2電力損失抑制部115のインピーダンスを第1インピーダンスI11又は第2インピーダンスI12とすることにより、電磁波試験装置1は、反射箱法による放射イミュニティ試験おける受信電力比を、第1許容値以下に抑えることができる。従って、電磁波試験装置1は、第1電力損失抑制部113と第2電力損失抑制部115とのいずれか一方を抵抗素子Xに代えて第1アンテナ111に接続した場合であっても、第1アンテナ111による電力損失として受信電力比が表す電力損失を、第1許容値以下に抑えることができる。
【0056】
一方、図5は、Zを変化させた場合の電界強度比の変化の一例を示す図である。ただし、図5では、電界強度比が、100分率によって表されている。図5に示したグラフの縦軸は、100分率によって表された電界強度比を示す。また、当該グラフの横軸は、Zの値を示す。また、当該グラフ上にプロットされた曲線は、理論計算により算出された電界強度比についての曲線である。図5に示した例では、電界強度比は、Zが50[Ω]の場合に最小となっている。これは、前述した通り、この一例において、Zが50[Ω]の場合、第1アンテナ111の特性インピーダンスと、抵抗素子Xのインピーダンスとが整合するからである。この場合、電界強度比は、Zが50[Ω]よりも小さくなるほど大きくなり、且つ、Zが50[Ω]よりも大きくなるほど大きくなる。ここで、電磁波試験装置1の製造者は、当該グラフを事前の実験等によって得ることにより、電界強度比が予め決められた第2許容値以上となるように、Zの値を決定することができる。例えば、当該グラフが事前の実験等によって得られたグラフと見做した上で、第2許容値を90[%]とすると、当該製造者は、Zの値を、X3以下の値、又は、X4以上の値として決定することができる。X3は、図5に示した例において、電界強度比が90[%]となる2つのZの値のうちの小さい方の値であり、9[Ω]である。また、X4は、図5に示した例において、電界強度比が90[%]となる2つのZの値のうちの大きい方の値であり、255[Ω]である。
【0057】
従って、抵抗素子Xに代えて、第1電力損失抑制部113、第2電力損失抑制部115のそれぞれを第1アンテナ111に接続した場合、且つ、第1電力損失抑制部113のインピーダンスと第2電力損失抑制部115のインピーダンスとの合成インピーダンスがX3以下の第1インピーダンスI21である場合、反射箱法による放射イミュニティ試験を行うと、電磁波試験装置1は、第1アンテナ111による電力損失として電界強度比が表す電力損失を、第2許容値以上に抑えることができる。また、抵抗素子Xに代えて、第1電力損失抑制部113、第2電力損失抑制部115のそれぞれを第1アンテナ111に接続した場合、且つ、当該合成インピーダンスがX4以上の第2インピーダンスI22である場合も、反射箱法による放射イミュニティ試験を行うと、電磁波試験装置1は、第1アンテナ111による電力損失として電界強度比が表す電力損失を、第2許容値以上に抑えることができる。すなわち、電磁波試験装置1は、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。
【0058】
なお、抵抗素子Xに代えて、第1電力損失抑制部113を第1アンテナ111に接続した場合(すなわち、第1電力損失抑制部113を第1アンテナ111に接続し、且つ、第2電力損失抑制部115を第1アンテナ111に接続しない場合)、第1電力損失抑制部113のインピーダンスを第1インピーダンスI21又は第2インピーダンスI22とすることにより、電磁波試験装置1は、反射箱法による放射イミュニティ試験おける電界強度比を、第2許容値以上に抑えることができる。また、抵抗素子Xに代えて、第2電力損失抑制部115を第1アンテナ111に接続した場合(すなわち、第2電力損失抑制部115を第1アンテナ111に接続し、且つ、第1電力損失抑制部113を第1アンテナ111に接続しない場合)、第2電力損失抑制部115のインピーダンスを第1インピーダンスI21又は第2インピーダンスI22とすることにより、電磁波試験装置1は、反射箱法による放射イミュニティ試験おける電界強度比を、第2許容値以上に抑えることができる。従って、電磁波試験装置1は、第1電力損失抑制部113と第2電力損失抑制部115とのいずれか一方を第1アンテナ111に接続した場合であっても、第1アンテナ111による電力損失として電界強度比が表す電力損失を、第2許容値以上に抑えることができる。
【0059】
ここで、第1電力損失抑制部113のインピーダンスと第2電力損失抑制部115のインピーダンスとの合成インピーダンスを第1インピーダンスI11又は第1インピーダンスI21とする場合、第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115のそれぞれは、当該合成インピーダンスが第1インピーダンスI11又は第1インピーダンスI21となるようなインピーダンスを有する抵抗素子であってもよく、当該合成インピーダンスが第1インピーダンスI11又は第1インピーダンスI21となるようなインピーダンスを有する他の回路素子であってもよく、グラウンド電位を有する第4グラウンド部材であってもよい。第4グラウンド部材は、第1グラウンド部材~第3グラウンド部材のうちの一部又は全部と同じ部材であってもよく、第1グラウンド部材~第3グラウンド部材の全部と異なる部材であってもよい。また、当該合成インピーダンスを第2インピーダンスI12又は第2インピーダンスI22とする場合、第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115のそれぞれは、当該合成インピーダンスが第2インピーダンスI12又は第2インピーダンスI22となるようなインピーダンスを有する抵抗素子であってもよく、当該合成インピーダンスが第2インピーダンスI12又は第2インピーダンスI22となるようなインピーダンスを有する他の回路素子であってもよく、開放端であってもよい。このように構成することにより、第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115は、第1アンテナ111による電力損失の増大を抑制することができる。
【0060】
また、第1電力損失抑制部113のインピーダンスを第1インピーダンスI11又は第1インピーダンスI21とする場合、第1電力損失抑制部113は、第1インピーダンスI11又は第1インピーダンスI21を有する抵抗素子であってもよく、当該合成インピーダンスが第1インピーダンスI11又は第1インピーダンスI21となるようなインピーダンスを有する他の回路素子であってもよく、グラウンド電位を有する第4グラウンド部材であってもよい。第4グラウンド部材は、第1グラウンド部材~第3グラウンド部材のうちの一部又は全部と同じ部材であってもよく、第1グラウンド部材~第3グラウンド部材の全部と異なる部材であってもよい。また、第1電力損失抑制部113のインピーダンスを第2インピーダンスI12又は第2インピーダンスI22とする場合、第1電力損失抑制部113は、第2インピーダンスI12又は第2インピーダンスI22を有する抵抗素子であってもよく、当該合成インピーダンスが第2インピーダンスI12又は第2インピーダンスI22となるようなインピーダンスを有する他の回路素子であってもよく、開放端であってもよい。このように構成することにより、第1電力損失抑制部113は、第1アンテナ111による電力損失の増大を抑制することができる。
【0061】
また、第2電力損失抑制部115のインピーダンスを第1インピーダンスI11又は第1インピーダンスI21とする場合、第2電力損失抑制部115は、第1インピーダンスI11又は第1インピーダンスI21を有する抵抗素子であってもよく、当該合成インピーダンスが第1インピーダンスI11又は第1インピーダンスI21となるようなインピーダンスを有する他の回路素子であってもよく、グラウンド電位を有する第5グラウンド部材であってもよい。第5グラウンド部材は、第1グラウンド部材~第4グラウンド部材のうちの一部又は全部と同じ部材であってもよく、第1グラウンド部材~第4グラウンド部材の全部と異なる部材であってもよい。また、第2電力損失抑制部115のインピーダンスを第2インピーダンスI12又は第2インピーダンスI22とする場合、第2電力損失抑制部115は、第2インピーダンスI12又は第2インピーダンスI22を有する抵抗素子であってもよく、当該合成インピーダンスが第2インピーダンスI12又は第2インピーダンスI22となるようなインピーダンスを有する他の回路素子であってもよく、開放端であってもよい。このように構成することにより、第2電力損失抑制部115は、第1アンテナ111による電力損失の増大を抑制することができる。
【0062】
以上のように、抵抗素子Xに代えて第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115を備え、且つ、切替部116を備えることにより、電磁波試験装置1は、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。なお、前述の第1インピーダンスI11,第2インピーダンスI12、第1インピーダンスI21、第2インピーダンスI22の決定方法は、事前の実験等によって図4図5のそれぞれに示したグラフを得る必要がある方法であり、設計段階において使える方法ではない。そこで、上記のX1~X4のうちX3及びX4を決定する方法として、理論式を用いた方法を採用することもできる。このような方法は、設計段階からX3をZについての第1閾値(すなわち、第1インピーダンスI21についての第1閾値)、X4をZについての第2閾値(すなわち、第2インピーダンスI22についての第2閾値)として特定することができるため、現物合わせによる方法よりも汎用性が高く有用である。なお、この理論式により第1閾値及び第2閾値を決定する方法では、第1アンテナ111による電力損失として電界強度比が表す電力損失を第2許容値以上に抑えるためのインピーダンスとして、第1電力損失抑制部113のインピーダンスと第2電力損失抑制部115のインピーダンスとの合成インピーダンスが満たすべき条件が得られる。以下では、説明の便宜上、第1電力損失抑制部113のインピーダンスと第2電力損失抑制部115のインピーダンスとの合成インピーダンスを、単に合成インピーダンスと称して説明する。
【0063】
<第1閾値及び第2閾値を理論式から決定する方法>
以下、第1閾値及び第2閾値を理論式から決定する方法について説明する。ここでも、この方法の説明のため、ダミーロード112、第1給電装置114、第1電力損失抑制部113、第2電力損失抑制部115のそれぞれが第1アンテナ111に接続されておらず、且つ、変数Zによって表されるインピーダンスを有する抵抗素子Xのみが第1アンテナ111に接続されている場合について説明する。そして、抵抗素子Xは、更に、グラウンド電位を有する部材に接続されている場合について説明する。また、以下でも、一例として、第1アンテナ111の特性インピーダンスZが、50[Ω]である場合について説明する。また、以下では、説明の便宜上、ZをZによって正規化した正規化インピーダンスを、Z’によって示す。
【0064】
まず、電磁気学によると、第1アンテナ111の特性インピーダンスと抵抗素子Xのインピーダンスとの不整合による反射係数Γは、Z’を用いて以下の式(1)のように表される。
【0065】
【数1】
【0066】
このため、第1アンテナ111から抵抗素子Xへ透過する電力についての透過電力係数Sは、反射係数Γを用いて、以下の式(2)のように表される。
【0067】
【数2】
【0068】
そして、消費電力比rlossは、Γ=0である場合(すなわち、第1アンテナ111による電力損失が最大となる場合)における受信電力比rと、透過電力係数Sとを用いて以下の式(3)のように表される。
【0069】
【数3】
【0070】
しかし、第1アンテナ111から電流が流れる経路が2つある場合(すなわち、第1アンテナ111が第1アンテナ111と第1給電装置114とのそれぞれと接続されている場合)、前述した通り、受信電力比rが2倍になる。このため、当該場合、第1アンテナ111の消費電力比rlossも、2倍になる。従って、実効電力比rPnetは、以下の式(4)のように表される。
【0071】
【数4】
【0072】
ここで、反射箱法では、反射箱10は、共振現象により、反射箱10内において均一な強度の電界を発生させる。そこで、反射箱10の壁面と、第1アンテナ111とのそれぞれに一様な強度の電界が印加されると仮定すると、アンテナの実効面積の考え方に基づいて、反射箱10の壁面により受信される電力が当該壁面の表面積に比例し、第1アンテナ111により受信される電力が第1アンテナ111の表面積に比例すると考えることができる。その結果、上記の式(4)は、第1面積比rS_refと第2面積比rとに基づいて、以下の式(5)のようにスケーリング可能なように書き換えることができる。ここで、第1面積比rS_refは、基準となる受信電力比を有する反射箱の表面積に対する第1アンテナ111の表面積の比である。第2面積比は、第1閾値及び第2閾値を決定する対象となる反射箱の表面積に対する第1アンテナ111の表面積の比である。これにより、第1閾値及び第2閾値を決定する対象となる反射箱を利用した場合の実効電力比rPnetを、第1面積比rS_refと第2面積比rとに基づくスケーリングによって得ることができる。なお、本実施形態では、ある反射箱の表面積は、当該反射箱の内側の表面積のことである。また、本実施形態では、第1アンテナ111の表面積は、第1アンテナ111の放射素子を覆う最大の平面の面積のことである。
【0073】
【数5】
【0074】
上記の式(5)が表す実効電力比rPnetの平方根は、以下の式(6)のように、電界強度比rを表す。
【0075】
【数6】
【0076】
このように導出される上記の式(1)~(6)により、反射箱10内の電界強度比rを、Zと関係付けることができる。具体的には、上記の式(5)を式(6)に代入することにより、以下の式(7)が得られる。
【0077】
【数7】
【0078】
また、上記の式(7)を式(3)に代入することにより、以下の式(8)が得られる。
【0079】
【数8】
【0080】
また、上記の式(8)を式(2)に代入してからΓについて解くことにより、以下の式(9)が得られる。
【0081】
【数9】
【0082】
そして、上記の式(9)を式(1)に代入してからZ’について解くことにより、以下の式(10)が得られる。
【0083】
【数10】
【0084】
ここで、上記の式(10)は、式(10)の両辺にZを乗算することにより、以下の式(11)、式(12)のようにZについての式に変形することができる。このようにして、反射箱10内の電界強度比rを、Zと関係付けることができる。なお、式(11)では、式(11)のZを前述の第1閾値として扱うため、「=」を「≧」に書き換えている。また、式(12)でも、式(12)のZを前述の第2閾値として扱うため、「=」を「≦」に書き換えている。
【0085】
【数11】
【0086】
【数12】
【0087】
上記の式(11)及び式(12)は、前述の第2許容値としたい所望の電界強度比rを得たい場合において、Zが満たすべき条件を示す式である。以下では、説明の便宜上、式(11)が示す条件を、第1条件と称して説明する。そして、第1条件を満たすZの最大値が、前述の第1閾値である。すなわち、第1条件を満たすZが、前述の第1インピーダンスI21である。なお、第1条件は、より具体的には、第2許容値と、反射箱10の表面積に対する第1アンテナ111の表面積の比rと、第1アンテナ111の特性インピーダンスZとに基づく条件である。また、以下では、説明の便宜上、式(12)が示す条件を、第2条件と称して説明する。そして、第2条件を満たすZの最小値が、前述の第2閾値である。すなわち、第2条件を満たすZが、前述の第2インピーダンスI22である。なお、第2条件も、より具体的には、第2許容値と、反射箱10の表面積に対する第1アンテナ111の表面積の比rと、第1アンテナ111の特性インピーダンスZとに基づく条件である。
【0088】
第1閾値及び第2閾値を理論式から決定する方法では、このようにして導出される式(11)を用いて第1閾値を決定し、式(12)を用いて第2閾値を決定する。これら2つの閾値は、上記の式(4)の導出において、第1アンテナ111から電流が流れる経路が2つであることが既に考慮されているため、第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115それぞれのインピーダンスに対する閾値として利用することができる。
【0089】
ここで、例えば、図2に示した受信電力比の周波数平均0.16が、rS_ref=0.039の反射箱において得られた値であった場合、式(11)及び式(12)は、以下の式(13)及び式(14)のようになる。
【0090】
【数13】
【0091】
【数14】
【0092】
そして、第2許容値としたい所望の電界強度比rが90[%]である場合、式(13)及び式(14)は、以下の式(15)及び式(16)のようになる。
【0093】
【数15】
【0094】
【数16】
【0095】
なお、反射箱10内の電界強度の低下は、第2給電装置122の電力容量に影響を与える。このため、反射箱10内の電界強度の低下量は、第2給電装置122の出力誤差を考慮し、10[%]以下であることが望ましい。反射箱10内の電界強度の低下量が10[%]以下であることは、第2許容値が90[%]以上であることを意味する。すなわち、上記の例において、第2許容値としたい所望の電界強度比rを90[%]とすることは、実際の設計思想的に妥当である。ただし、第2許容値としたい所望の電界強度比rは、90[%]より小さい値であってもよく、90[%]より大きい値であってもよい。
【0096】
また、式(11)~式(16)のいずれにおいても値を代入していない第2面積比rは、前述した通り、第1閾値及び第2閾値を決定する対象となる反射箱の表面積に対する第1アンテナ111の表面積の比である。このため、第2面積比rには、例えば、反射箱10の表面積に対する第1アンテナ111の表面積が代入される。また、基準となる受信電力比を有する反射箱は、受信電力比を測定済みの反射箱であれば、如何なる反射箱であってもよい。このため、第1面積比rS_refは、反射箱10の表面積に対する第1アンテナ111の表面積であってもよい。
【0097】
以上のようにして、電磁波試験装置1の製造者は、設計段階において、式(11)及び式(12)の組み合わせ、式(13)及び式(14)の組み合わせ、式(15)及び式(16)の組み合わせのうちのいずれかの組み合わせに基づいて、第1閾値及び第2閾値を決定することができる。その結果、当該製造者は、第1閾値以下の第1インピーダンスI21と第2閾値以上の第2インピーダンスI22とのうちのいずれかが合成インピーダンスとなるように第1電力損失抑制部113のインピーダンスと第2電力損失抑制部115のインピーダンスとを決定することができる。そして、このようにして決定されたインピーダンスを有する第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115を備える電磁波試験装置1は、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。
【0098】
ここで、第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115のそれぞれが第1アンテナ111と接続させてから、第2アンテナ121に入力するRF信号の周波数を変化させながら、第2アンテナ121から電磁波を放射させると、電界強度比は、図6に示すように変化する。図6は、第2アンテナ121に入力するRF信号の周波数の変化に対する電界強度比の変化の他の例を示す図である。ただし、図6では、電界強度比を、偏差によって表している。図6に示したグラフの縦軸は、偏差によって表された電界強度比を示す。また、当該グラフの横軸は、第2アンテナ121に入力されたRF信号の周波数を示す。図6に示した例では、電界強度比の周波数平均は、-0.3[dB]である。すなわち、図6に示したグラフは、切替部116によって第1電力損失抑制部113及び第2電力損失抑制部115のそれぞれを第1アンテナ111と接続させると、偏差によって表された電界強度比が、ダミーロード112及び第1給電装置114のそれぞれと第1アンテナ111とが接続されている場合と比較して、低下することを明確に示している。従って、電磁波試験装置1は、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。
【0099】
<電磁波試験装置を用いてハイブリッド法による放射イミュニティ試験を行う方法>
以下、図7を参照し、電磁波試験装置1を用いてハイブリッド法による放射イミュニティ試験を行う方法について説明する。図7は、電磁波試験装置1を用いてハイブリッド法による放射イミュニティ試験を行う方法の流れの一例を示す図である。以下では、説明の便宜上、電磁波試験装置1を用いてハイブリッド法による放射イミュニティ試験を行う人を、測定者と称して説明する。
【0100】
測定者は、情報処理装置14を操作し、情報処理装置14へ各種の情報を入力する(ステップS110)。図7では、ステップS110の手順を「情報入力」によって示している。ここで、当該各種の情報には、例えば、第1アンテナ111に入力するRF信号の周波数帯、第2アンテナ121に入力するRF信号の周波数帯、電磁攪拌器13の回転速度等の測定条件を示す情報が含まれている。なお、当該各種の情報には、他の情報が含まれてもよい。
【0101】
次に、測定者は、情報処理装置14を操作し、第1放射イミュニティ試験を開始させる(ステップS120)。ここで、第1放射イミュニティ試験は、伝送線路システム法による放射イミュニティ試験のことである。また、ステップS120において、測定者は、第1アンテナ111に電磁波を放射させるより前のタイミングにおいて、ステップS110において情報処理装置14に入力した回転速度と電磁攪拌器13の回転速度とが一致してから、第1アンテナ111が、ダミーロード112と第1給電装置114とのそれぞれと接続されるように、第1アンテナ111の接続先を切替部116に切り替させる。その後、測定者は、情報処理装置14を操作し、ステップS110において情報処理装置14に入力した周波数帯のRF信号の第1アンテナ111への入力を開始させる。
【0102】
次に、測定者は、供試体TMに生じる不具合の監視を開始する(ステップS130)。供試体TMに生じる不具合は、例えば、ディスプレイを有する供試体TMの場合におけるディスプレイ上の画像の乱れ、供試体TMへの電源からの電力供給の停止等であるが、これらに限られるわけではない。
【0103】
次に、測定者は、供試体TMに不具合が生じたか否かを判定する(ステップS140)。
【0104】
測定者は、供試体TMに不具合が生じていないと判定した場合(ステップS140-NO)、ステップS150に遷移する。
【0105】
一方、測定者は、供試体TMに不具合が生じたと判定した場合(ステップS140-YES)、供試体TMに生じた不具合を示す情報を記録する(ステップS220)。なお、ステップS220において当該情報を記録する方法は、当該情報を記録可能な如何なる方法であってもよい。ステップS220の処理が行われた後、測定者は、ステップS150に遷移する。
【0106】
ステップS150において、測定者は、ステップS120において開始した第1放射イミュニティ試験を終了させるか否かを判定する(ステップS150)。図7では、ステップS170の手順を「試験終了?」によって示している。ここで、測定者は、例えば、ステップS120において開始した第1放射イミュニティ試験が完了している場合、ステップS120において開始した第1放射イミュニティ試験を終了させると判定する。一方、測定者は、例えば、ステップS120において開始した第1放射イミュニティ試験が完了していない場合、ステップS120において開始した第1放射イミュニティ試験を終了させないと判定する。なお、ステップS150の判定は、他の方法により行われてもよい。
【0107】
測定者は、ステップS120において開始した第1放射イミュニティ試験を終了させないと判定した場合(ステップS150-NO)、ステップS140に遷移し、供試体TMに不具合が生じたか否かを再び判定する。
【0108】
一方、測定者は、ステップS120において開始した第1放射イミュニティ試験を終了させると判定した場合(ステップS150-YES)、第1放射イミュニティ試験を終了させる(ステップS160)。ここで、ステップS160において、測定者は、例えば、情報処理装置14を操作し、RF信号の第1アンテナ111への入力を終了させる。
【0109】
次に、測定者は、第2放射イミュニティ試験を開始する(ステップS170)。ここで、第2放射イミュニティ試験は、反射箱法による放射イミュニティ試験のことである。また、ステップS170において、測定者は、第2アンテナ121に電磁波を放射させるより前のタイミングにおいて、第1アンテナ111が、第1電力損失抑制部113と第2電力損失抑制部115とのそれぞれと接続されるように、第1アンテナ111の接続先を切替部116に切り替させる。その後、測定者は、情報処理装置14を操作し、ステップS110において情報処理装置14に入力した周波数帯のRF信号の第2アンテナ121への入力を開始させる。
【0110】
次に、測定者は、供試体TMに生じる不具合の監視を開始する(ステップS180)。
【0111】
次に、測定者は、供試体TMに不具合が生じたか否かを判定する(ステップS190)。
【0112】
測定者は、供試体TMに不具合が生じていないと判定した場合(ステップS190-NO)、ステップS200に遷移する。
【0113】
一方、測定者は、供試体TMに不具合が生じたと判定した場合(ステップS190-YES)、供試体TMに生じた不具合を示す情報を記録する(ステップS230)。なお、ステップS230において当該情報を記録する方法は、当該情報を記録可能な如何なる方法であってもよい。ステップS230の処理が行われた後、測定者は、ステップS200に遷移する。
【0114】
ステップS200において、測定者は、ステップS170において開始した第2放射イミュニティ試験を終了させるか否かを判定する(ステップS200)。図7では、ステップS200の手順を「試験終了?」によって示している。ここで、測定者は、例えば、ステップS170において開始した第2放射イミュニティ試験が完了している場合、ステップS170において開始した第2放射イミュニティ試験を終了させると判定する。一方、測定者は、例えば、ステップS170において開始した第2放射イミュニティ試験が完了していない場合、ステップS170において開始した第2放射イミュニティ試験を終了させないと判定する。なお、ステップS200の判定は、他の方法により行われてもよい。
【0115】
測定者は、ステップS170において開始した第2放射イミュニティ試験を終了させないと判定した場合(ステップS200-NO)、ステップS190に遷移し、供試体TMに不具合が生じたか否かを再び判定する。
【0116】
一方、測定者は、ステップS170において開始した第2放射イミュニティ試験を終了させると判定した場合(ステップS200-YES)、第2放射イミュニティ試験を終了させる(ステップS210)。ここで、ステップS210において、測定者は、例えば、情報処理装置14を操作し、RF信号の第2アンテナ121への入力を終了させる。そして、測定者は、図7に示したフローチャートの手順を終了させる。
【0117】
以上のように、測定者は、反射箱10と、反射箱10内に設置され、反射箱10の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナ111と、反射箱10内に設置され、当該第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナ121と、グラウンド電位を有する部材と第1アンテナ111との間に接続され、第1アンテナ111に給電する第1給電装置114と、グラウンド電位を有する部材と第1アンテナ111との間に接続されるダミーロード112と、第2アンテナ121から電磁波が放射されている場合における第1アンテナ111による電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有する第1電力損失抑制部113と、第1アンテナ111の接続先をダミーロード112と第1電力損失抑制部113とのいずれかに切り替える第1切替部SW1を含む切替部116とを備える電磁波試験装置1を用いたハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、第1アンテナ111から電磁波を放射する場合、第1アンテナ111の接続先をダミーロード112に切り替え、第2アンテナ121から電磁波を放射する場合、第1アンテナ111の接続先を第1電力損失抑制部113に切り替える。また、測定者は、当該放射イミュニティ試験において、第1アンテナ111から電磁波を放射する場合、第1アンテナ111の接続先を第1給電装置114に切り替え、第2アンテナ121から電磁波を放射する場合、第1アンテナ111の接続先を第2電力損失抑制部115に切り替える。これにより、当該放射イミュニティ試験は、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。
【0118】
なお、図7に示したフローチャートの手順は、ある1つの周波数の電界を供試体TMへ印加する放射イミュニティ試験に適用されてもよく、ある複数の周波数それぞれの電界を供試体TMへ印加する放射イミュニティ試験に適用されてもよい。
【0119】
また、上記において説明した電磁波試験装置1は、第1電力損失抑制部113と第2電力損失抑制部115とが一体に構成されている場合、図8に示したように、RF電力分配器118を備える構成であってもよい。図8は、第1アンテナ111と第1電力損失抑制部113との接続態様の変形例を示す図である。図8に示した例では、第1切替部SW1と第2切替部SW2のそれぞれと、第1電力損失抑制部113との間には、RF電力分配器118が接続される。このような構成であっても、電磁波試験装置1は、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。
【0120】
また、上記において説明した第1アンテナ111は、前述した通り、TEMプレートアンテナに代えて、図9に示したストリップラインであってもよい。図9は、ストリップラインに接続された第1アンテナ111の様子の一例を示す図である。ストリップラインは、平行平板の内部を使用して電界を供試体TMに印加するアンテナである。第1アンテナ111がストリップラインである場合、上記において説明したグラウンド電位を有する部材として、例えば、ケーブル、金属製の接地治具等を用いて反射箱10の床面を用いることが多い。
【0121】
また、上記において説明した第1アンテナ111は、前述した通り、TEMプレートアンテナに代えて、図10に示したセプテムであってもよい。図10は、セプテムに接続された第1アンテナ111の様子の一例を示す図である。第1アンテナ111がセプテムである場合、上記において説明したグラウンド電位を有する部材として、例えば、反射箱10の側面を用いることが多い。
【0122】
ここで、第1アンテナ111は、図11に示したように、平板状のアンテナに代えて、複数の導線、複数の平板等によって構成されるアンテナであってもよい。図11は、複数の導線、複数の平板等によって構成される第1アンテナ111の一例を示す図である。
【0123】
以上のように、実施形態に係る電磁波試験装置(上記において説明した例では、電磁波試験装置1)は、反射箱(上記において説明した例では、反射箱10)と、反射箱内に設置され、反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナ(上記において説明した例では、第1アンテナ111)と、反射箱内に設置され、第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナ(上記において説明した例では、第2アンテナ121)と、グラウンド電位を有する部材と第1アンテナとの間に接続され、第1アンテナに給電する給電装置(上記において説明した例では、第1給電装置114)と、グラウンド電位を有する部材と第1アンテナとの間に接続されるダミーロード(上記において説明した例では、ダミーロード112)と、第2アンテナから電磁波が放射されている場合における第1アンテナによる電力損失についての許容値(上記において説明した例では、第1許容値、第2許容値のそれぞれ)に応じたインピーダンス(上記において説明した例では、第1インピーダンスI11、第2インピーダンスI12、第1インピーダンスI21、第2インピーダンスI22のそれぞれ)を有する第1電力損失抑制部(第1電力損失抑制部113)と、第1アンテナの接続先をダミーロードと第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第1切替部(上記において説明した例では、第1切替部SW1)を含む切替部(上記において説明した例では、切替部116)と、を備える。これにより、電磁波試験装置は、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。
【0124】
また、電磁波試験装置では、第1電力損失抑制部は、開放端である、構成が用いられてもよい。
【0125】
また、電磁波試験装置では、第1電力損失抑制部は、終端抵抗である、構成が用いられてもよい。
【0126】
また、電磁波試験装置では、第1電力損失抑制部は、グラウンド電位を有する部材である、構成が用いられてもよい。
【0127】
また、電磁波試験装置では、切替部は、第1アンテナの接続先を給電装置と第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第3切替部(上記において説明した例では、第1切替部SW1)を更に含む、構成が用いられてもよい。
【0128】
また、電磁波試験装置は、反射箱と、反射箱内に設置され、反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、反射箱内に設置され、第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と第1アンテナとの間に接続され、第1アンテナに給電する給電装置と、第2アンテナから電磁波が放射されている場合における第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスを有し、開放端と異なる第2電力損失抑制部と、第1アンテナの接続先を給電装置と第2電力損失抑制部(上記において説明した例では、第2電力損失抑制部115)とのいずれかに切り替える第2切替部(上記において説明した例では、第2切替部SW2)を含む切替部と、を備える。これにより、電磁波試験装置は、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。
【0129】
また、電磁波試験装置では、第2電力損失抑制部は、終端抵抗である、構成が用いられてもよい。
【0130】
また、電磁波試験装置では、第2電力損失抑制部は、グラウンド電位を有する部材である、構成が用いられてもよい。
【0131】
また、電磁波試験装置では、インピーダンスは、許容値に応じて予め決められた第1閾値未満の第1インピーダンス、又は、許容値に応じて予め決められた第2閾値以上の第2インピーダンスであり、第2閾値は、第1閾値よりも高い値である、構成が用いられてもよい。
【0132】
また、電磁波試験装置では、第1インピーダンスは、許容値と、反射箱の表面積に対する第1アンテナの表面積の比と、第1アンテナの特性インピーダンスとに基づく第1条件を満たすインピーダンスであり、第2インピーダンスは、許容値と、反射箱の表面積に対する第1アンテナの表面積の比と、第1アンテナの特性インピーダンスとに基づく第2条件を満たすインピーダンスである、構成が用いられてもよい。
【0133】
また、電磁波試験装置では、第1条件は、上記の式(13)により表され、第2条件は、上記の式(14)により表され、rは、許容値を示し、rは、反射箱の表面積に対する第1アンテナの表面積の比を示し、Zは、第1アンテナの特性インピーダンスを示す、構成が用いられてもよい。
【0134】
また、電磁波試験装置では、第1条件は、上記の式(15)により表され、第2条件は、上記の式(16)により表され、rは、許容値を示し、rは、反射箱の表面積に対する第1アンテナの表面積の比を示し、Zは、第1アンテナの特性インピーダンスを示す、構成が用いられてもよい。
【0135】
また、電磁波試験装置は、反射箱と、反射箱内に設置され、反射箱の第1共振周波数未満の周波数の電磁波を放射させる第1アンテナと、反射箱内に設置され、第1共振周波数以上の周波数の電磁波を放射させる第2アンテナと、グラウンド電位を有する部材と第1アンテナとの間に接続され、第1アンテナに給電する給電装置と、グラウンド電位を有する部材と第1アンテナとの間に接続されるダミーロードと、予め決められたインピーダンスを有する第1電力損失抑制部と、予め決められたインピーダンスを有する第2電力損失抑制部と、第1アンテナの接続先をダミーロードと第1電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第1切替部と、第1アンテナの接続先を給電装置と第2電力損失抑制部とのいずれかに切り替える第2切替部とを含む切替部と、を備え、第1電力損失抑制部のインピーダンスと第2電力損失抑制部のインピーダンスとの合成インピーダンスは、第2アンテナから電磁波が放射されている場合における第1アンテナによる電力損失についての許容値に応じたインピーダンスである。これにより、電磁波試験装置は、ハイブリッド法による放射イミュニティ試験において、電力損失が増大してしまうことを抑制することができる。
【0136】
また、電磁波試験装置では、第1電力損失抑制部及び第2電力損失抑制部は、開放端である、構成が用いられてもよい。
【0137】
また、電磁波試験装置では、第1電力損失抑制部及び第2電力損失抑制部は、終端抵抗である、構成が用いられてもよい。
【0138】
また、電磁波試験装置では、第1電力損失抑制部及び第2電力損失抑制部は、グラウンド電位を有する部材である、構成が用いられてもよい。
【0139】
また、電磁波試験装置は、切替部に接続を切り替えさせる操作を受け付ける操作部、構成が用いられてもよい。
【0140】
また、電磁波試験装置は、切替部に接続を切り替えさせる制御装置(上記において説明した例では、第1制御装置117)、構成が用いられてもよい。
【0141】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【符号の説明】
【0142】
1…電磁波試験装置、10…反射箱、11…第1試験装置、12…第2試験装置、13…電磁攪拌器、14…情報処理装置、111…第1アンテナ、112…ダミーロード、113…第1電力損失抑制部、114…第1給電装置、115…第2電力損失抑制部、116…切替部、117…第1制御装置、118…RF電力分配器、121…第2アンテナ、122…第2給電装置、123…第2制御装置、SW1…第1切替部、SW2…第2切替部、TM…供試体、X…抵抗素子
図1
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図6
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