(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136749
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】不揮発性メモリ装置
(51)【国際特許分類】
G11C 16/26 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G11C16/26 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042613
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 省治
【テーマコード(参考)】
5B225
【Fターム(参考)】
5B225CA19
5B225CA28
5B225DA09
5B225EE02
5B225EE06
5B225FA02
5B225FA05
(57)【要約】
【課題】データの読み出し時にメモリ素子のプログラムの効果が減少することを抑制可能とする不揮発性メモリ装置を提供する。
【解決手段】不揮発性メモリ装置(1X)は、ドレイン側のサイドウォールにホットキャリアをトラップすることによりプログラム動作を実行可能であるメモリ素子(82)と、前記メモリ素子のゲートに接続される第1端と、前記メモリ素子の第1端に接続される第2端と、を有する第1MOSトランジスタ(72)と、前記第1MOSトランジスタおよび前記メモリ素子に流れる定電流を生成可能に構成される第1定電流源(6)と、前記第1MOSトランジスタの第1端に生じる電圧に基づきデータを読み出し可能に構成される読み出し部(13)と、を備える。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレイン側のサイドウォールにホットキャリアをトラップすることによりプログラム動作を実行可能であるメモリ素子と、
前記メモリ素子のゲートに接続される第1端と、前記メモリ素子の第1端に接続される第2端と、を有する第1MOSトランジスタと、
前記第1MOSトランジスタおよび前記メモリ素子に流れる定電流を生成可能に構成される第1定電流源と、
前記第1MOSトランジスタの第1端に生じる電圧に基づきデータを読み出し可能に構成される読み出し部と、
を備える、不揮発性メモリ装置。
【請求項2】
前記メモリ素子および前記第1MOSトランジスタは、NMOSトランジスタにより構成され、
前記メモリ素子のドレインと電源電圧の印加端との間にスイッチが接続される、請求項1に記載の不揮発性メモリ装置。
【請求項3】
前記読み出し部は、前記第1MOSトランジスタの第1端に生じる電圧を基準電圧と比較可能に構成されるコンパレータを有する、請求項1または請求項2に記載の不揮発性メモリ装置。
【請求項4】
前記読み出し部は、少なくとも1つのインバータを含み、かつ前記第1MOSトランジスタの第1端に生じる電圧が入力されるインバータ段を有する、請求項1または請求項2に記載の不揮発性メモリ装置。
【請求項5】
前記第1MOSトランジスタのゲートに接続されるゲートと、当該ゲートと短絡するドレインと、を有する第2MOSトランジスタと、
前記第2MOSトランジスタのソースと接続される第1抵抗と、
を備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の不揮発性メモリ装置。
【請求項6】
第2定電流源と、
第3定電流源と、
前記第2定電流源に第1ノードにおいて接続される第2抵抗と、
前記第1ノードに接続される第1入力端と、第2入力端と、前記第1MOSトランジスタのゲートに接続される出力端と、を有するアンプと、
第3抵抗と、
前記出力端に接続されるゲートと、前記第3定電流源に接続されるドレインと、前記第2入力端および前記第3抵抗に接続されるソースと、を有する第3MOSトランジスタと、
を備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の不揮発性メモリ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不揮発性メモリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トランジスタへのホットキャリア注入を利用した不揮発性メモリ装置がある。この種の不揮発性メモリ装置は、初期状態において特性が揃えられた第1および第2トランジスタをメモリ素子として備え、いずれか一方のトランジスタに対してのみホットキャリアを注入してトランジスタの特性を変化させる。その後のリード動作では、第1および第2トランジスタに共通のゲート電圧を供給したときのドレイン電流の大小関係に基づき、“0”のデータが記憶されているのか、“1”のデータが記憶されているのかを読み出す。例えば、第1トランジスタのドレイン電流のほうが小さい状態(第1トランジスタの特性が変化した状態)は“0”のデータが記憶されている状態に相当し、第2トランジスタのドレイン電流のほうが小さい状態(第2トランジスタの特性が変化した状態)は“1”のデータが記憶されている状態に相当する。
【0003】
なお、上記に関連する技術については、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、不揮発性メモリ装置では、メモリ素子であるトランジスタに対して特性を変化させるプログラム動作を実行した後に、メモリ素子からデータを読み出す場合に、プログラムの効果が減少することを抑制することが要望される。
【0006】
本開示は、データの読み出し時にメモリ素子のプログラムの効果が減少することを抑制可能とする不揮発性メモリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、本開示に係る不揮発性メモリ装置は、ドレイン側のサイドウォールにホットキャリアをトラップすることによりプログラム動作を実行可能であるメモリ素子と、
前記メモリ素子のゲートに接続される第1端と、前記メモリ素子の第1端に接続される第2端と、を有する第1MOSトランジスタと、
前記第1MOSトランジスタおよび前記メモリ素子に流れる定電流を生成可能に構成される第1定電流源と、
前記第1MOSトランジスタの第1端に生じる電圧に基づきデータを読み出し可能に構成される読み出し部と、を備える構成としている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る不揮発性メモリ装置によれば、データの読み出し時にメモリ素子のプログラムの効果が減少することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、比較例に係る不揮発性メモリ装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、データ素子のドレイン電流のゲート・ソース間電圧依存性を示す図である。
【
図3】
図3は、信号XRST、ラインLn1の電圧V1、ラインLn2の電圧V2の波形例を示すタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、プログラム動作時におけるメモリ素子への電圧印加の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に対応するメモリ素子の縦構造断面図である。
【
図6】
図6は、リード動作時におけるメモリ素子への電圧印加の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6に対応するメモリ素子の縦構造断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の第1実施形態に係る不揮発性メモリ装置の構成を示す図である。
【
図9】
図9は、プログラム動作時におけるメモリ素子への電圧印加の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、リード動作時におけるメモリ素子への電圧印加の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、
図7に示すメモリ素子におけるゲート・ソース間電圧-ドレイン電流特性を示す図である。
【
図14】
図14は、
図12に示すメモリ素子におけるゲート・ソース間電圧-ドレイン電流特性を示す図である。
【
図15】
図15は、本開示の第2実施形態に係る不揮発性メモリ装置の構成を示す図である。
【
図16】
図16は、本開示の第2実施形態の変形例に係る不揮発性メモリ装置の構成を示す図である。
【
図17】
図17は、本開示の第2実施形態の別の変形例に係る不揮発性メモリ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する不揮発性メモリ装置は、半導体集積回路として構成されてもよい。
【0011】
<1.比較例>
<1-1.比較例に係る不揮発性メモリ装置の構成>
ここでは、本開示の実施形態について説明する前に、比較例について説明する。比較例を説明することで、本開示の実施形態の意義が明らかになる。
【0012】
図1は、比較例に係る不揮発性メモリ装置100の構成を示す図である。不揮発性メモリ装置100は、第1リファレンス素子Mr1と、第2リファレンス素子Mr2と、第1リファレンス抵抗Rr1と、第2リファレンス抵抗Rr2と、第1データ素子Md1と、第2データ素子Md2と、センスアンプSAと、を備えている。さらに、不揮発性メモリ装置100は、スイッチSW1~SW4と、スイッチSWA,SWBと、PMOSトランジスタPMA~PMCと、を備えている。なお、
図1において、電源電圧VCC>電源電圧VDDであり、例えばVCC=+6.5V、VDD=+0.5Vである。
【0013】
第1データ素子Md1と第2データ素子Md2との組み合わせにより、“0”のデータまたは“1”のデータが記憶される。
【0014】
データ素子Md1,Md2およびリファレンス素子Mr1,Mr2は、ともにメモリ素子として構成され、より具体的にはNMOSトランジスタ(Nチャネル型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor))により構成される。メモリ素子は、ホットキャリア注入によりトランジスタの特性を変化させることでプログラム動作を実行可能な素子であり、OTP(One Time Programmable)素子とも称される。
【0015】
PMOSトランジスタ(Pチャネル型MOSFET)PMA,PMBからカレントミラーCMAが構成される。PMOSトランジスタPMA,PMBのソースは、電源電圧VCCの印加端に接続される。
【0016】
第1リファレンス素子Mr1のゲートは、PMOSトランジスタPMBのドレインに接続される。PMOSトランジスタPMBのドレインと第1リファレンス素子Mr1のドレインとの間には、スイッチSWAが接続される。第1リファレンス素子Mr1のソースは、第1リファレンス抵抗Rr1の一端に接続される。第1リファレンス抵抗Rr1の他端は、接地端(グランド電位の印加端)に接続される。
【0017】
第1データ素子Md1のゲートは、第1リファレンス素子Mr1のゲートに接続される。第1データ素子Md1のドレインは、センスアンプSAの一方の入力端に接続される。
【0018】
PMOSトランジスタPMA,PMCからカレントミラーCMBが構成される。PMOSトランジスタPMA,PMCのソースは、電源電圧VCCの印加端に接続される。
【0019】
第2リファレンス素子Mr2のゲートは、PMOSトランジスタPMCのドレインに接続される。PMOSトランジスタPMCのドレインと第2リファレンス素子Mr2のドレインとの間には、スイッチSWBが接続される。第2リファレンス素子Mr2のソースは、第2リファレンス抵抗Rr2の一端に接続される。第2リファレンス抵抗Rr2の他端は、接地端に接続される。
【0020】
第2データ素子Md2のゲートは、第2リファレンス素子Mr2のゲートに接続される。第2データ素子Md2のドレインは、センスアンプSAの他方の入力端に接続される。
【0021】
第1データ素子Md1のソースと第2データ素子Md2のソースは、スイッチSW1の一端に接続される。スイッチSW1の他端は、接地端に接続される。
【0022】
このように、第1リファレンスMr1と第1データ素子Md1、第2リファレンス素子Mr2と第2データ素子Md2とにより、それぞれカレントミラーが構成される。
【0023】
また、データ素子Md1のドレインは、スイッチSW3の一端に接続される。スイッチSW3の他端は、接地端に接続される。データ素子Md2のドレインは、スイッチSW2の一端に接続される。スイッチSW2の他端は、接地端に接続される。データ素子Md1のソースおよびデータ素子Md2のソースは、スイッチSW4の一端に接続される。スイッチSW4の他端は、電源電圧VCCの印加端に接続される。
【0024】
第1リファレンス抵抗Rr1と第2リファレンス抵抗Rr2は、抵抗値が同じである。データ素子Md1,Md2およびリファレンス素子Mr1,Mr2は、互いに同じ構造を有し、プログラム動作の実行前においては互いに同じ電気的特性を有する。プログラム動作の対象は、データ素子Md1,Md2である。従って、プログラム動作の実行前においては、データ素子Md1,Md2およびリファレンス素子Mr1,Mr2は互いに同じゲート閾値電圧を有する。
【0025】
ここで、スイッチSW1がオン状態、スイッチSW2~SW4がオフ状態、スイッチSWA,SWBがオン状態であるとする。第1データ素子Md1のVgs(ゲート・ソース間電圧)は、第1リファレンス素子Mr1のVgsに第1リファレンス抵抗Rr1の両端間に生じる電圧を付加した電圧となる。第2データ素子Md2のVgsは、第2リファレンス素子Mr2のVgsに第2リファレンス抵抗Rr2の両端間に生じる電圧を付加した電圧となる。
【0026】
これにより、データ素子Md1,Md2におけるプログラム動作の実行前においては、データ素子Md1,Md2に流れるドレイン電流Id1,Id2と、リファレンス素子Mr1,Mr2に流れるドレイン電流Ir1,Ir2との大小関係は、Id1>Ir1、Id2>Ir2となる。また、Ir1=Ir2であるため、Id1=Id2となる。従って、データ素子Md1,Md2に流れる電流に差がないため、データ不定となる。すなわち、本構成の不揮発性メモリ装置100では、データ素子Md1,Md2にプログラム動作を実行していない状態でのデータの初期値は設定されない。
【0027】
ここで、トランジスタについて、構造とは、トランジスタのサイズを含む概念であり、従って、任意の複数のトランジスタについて、構造が互いに同じであるとは、複数のトランジスタのサイズも互いに同じであることを意味する。或る複数のトランジスタの構造が互いに同じであるとき、当該複数のトランジスタに対してプログラム動作によるホットキャリア注入が行われていないのであれば、当該複数のトランジスタの電気的特性(ゲート閾値電圧などを含む)も互いに同じとなる。ただし、任意の複数のトランジスタの構造および電気的特性が同じであるとは、設計上、それらが同じであることを意味し、実際には誤差を含みうる(すなわち、同じとは誤差を含む概念であると解される)。
【0028】
不揮発性メモリ装置100では、データ素子Md1,Md2に記憶されたデータを読み出すためのリード動作と、データ素子Md1,Md2に記憶されるデータ(論理値)を書き換えるプログラム動作(ライト動作)を実行できる。リード動作時には、スイッチSW1がオン状態、スイッチSW2~SW4がオフ状態、スイッチSWA,SWBがオン状態となる。
【0029】
プログラム動作においては、データ素子Md1,Md2にホットキャリアを注入することでデータ素子Md1,Md2の電気的特性を変化させる。この変化により、データ素子Md1,Md2のゲート閾値電圧が上昇する。ここで、
図2において、実線波形INIは、プログラム動作の実行前におけるデータ素子Md1,Md2のドレイン電流のゲート・ソース間電圧依存性を表しており、点線波形PRGは、プログラム動作の実行後におけるデータ素子Md1,Md2のドレイン電流のゲート・ソース間電圧依存性を表している。このように、プログラム動作により、ゲート閾値電圧Vthが上昇する。
【0030】
プログラム動作は、データ素子Md1,Md2のゲートに電源電圧VCC、ソースにVCC、ドレインにグランド電位(0V)がそれぞれ印加されことで実行される。プログラム動作時には、スイッチSW1はオフ状態、スイッチSW2~SW4がオン状態、スイッチSWA,SWBがオフ状態となる。
【0031】
ドレイン電流Ir1,Ir2が供給される状態において、センスアンプSAは、リード動作においてデータ素子Md1,Md2の各ドレイン電流Id1,Id2の大小関係に基づき、記憶されたデータの値(論理値)に対応する出力信号Soutを出力する。
【0032】
プログラム動作実行前のデータ素子Md1,Md2のうち、プログラム動作の実行により第1データ素子Md1にホットキャリアが注入されることで、第1データ素子Md1のゲート閾値電圧が上昇する。これにより、プログラム動作の実行後において、第1データ素子Md1のゲート閾値電圧は第2データ素子Md2のゲート閾値電圧よりも高くなる。このため、ドレイン電流Id1,Id2の大小関係は、Id1<Id2となる。ドレイン電流Id1がドレイン電流Id2よりも小さい状態は、“0”のデータが記憶されている状態に相当する。このため、リード動作において、ドレイン電流Id1がドレイン電流Id2よりも小さいとき、センスアンプSAは、“0”のデータに対応する出力信号Sout(ローレベルのSout)を出力する。
【0033】
一方、プログラム動作実行前のデータ素子Md1,Md2のうち、プログラム動作の実行により第2データ素子Md2にホットキャリアが注入されることで、第2データ素子Md2のゲート閾値電圧が上昇する。これにより、プログラム動作の実行後において、第2データ素子Md2のゲート閾値電圧は第1データ素子Md1のゲート閾値電圧よりも高くなる。このため、ドレイン電流Id1,Id2の大小関係は、Id1>Id2となる。ドレイン電流Id1がドレイン電流Id2よりも大きい状態は、“1”のデータが記憶されている状態に相当する。このため、リード動作において、ドレイン電流Id1がドレイン電流Id2よりも大きいとき、センスアンプSAは、“1”のデータに対応する出力信号Sout(ハイレベルのSout)を出力する。
【0034】
図1に示すように、センスアンプSAは、PMOSトランジスタPM1,PM2と、スイッチS1,S2と、スイッチS3,S4と、インバータIV1~IV4と、を有する。
【0035】
PMOSトランジスタPM2のソースは、電源電圧VDDの印加端に接続される。PMOSトランジスタPM2のドレインは、ラインLn1に接続される。PMOSトランジスタPM2のゲートは、ラインLn2に接続される。ラインLn1は、第1データ素子Md1のドレインに接続される。ラインLn2は、第2データ素子Md2のドレインに接続される。
【0036】
PMOSトランジスタPM1のソースは、電源電圧VDDの印加端に接続される。PMOSトランジスタPM1のドレインは、ラインLn2に接続される。PMOSトランジスタPM1のゲートは、ラインLn1に接続される。
【0037】
電源電圧VDDの印加端とラインLn1との間には、スイッチS1が接続される。電源電圧VDDの印加端とラインLn2との間には、スイッチS2が接続される。
【0038】
インバータIV1の入力端は、ラインLn1に接続される。インバータIV1の出力端は、インバータIV2の入力端に接続される。インバータIV2の出力端は、インバータIV3の入力端に接続される。インバータIV3から出力信号Soutが出力される。
【0039】
ラインLn1と接地端との間には、スイッチS3が接続される。インバータIV1の出力に応じてスイッチS3のオンオフが制御される。ラインLn2と接地端との間には、スイッチS4が接続される。インバータIV4の入力端は、ラインLn2に接続される。インバータIV4の出力に応じてスイッチS4のオンオフが制御される。
【0040】
制御回路(図示せず)は、信号XRSTを出力可能であり、スイッチS1,S2のオンオフを制御する。
【0041】
ここで、
図3は、信号XRST、ラインLn1の電圧V1、ラインLn2の電圧V2の波形例を示すタイミングチャートである。
図3も参照して、センスアンプSAの動作について説明する。リード動作において、信号XRSTがローレベルとなる期間をプリチャージ期間と称し、ハイレベルとなる期間をリード期間と称する。
【0042】
信号XRSTがローレベルとなる期間であるプリチャージ期間においては、ドレイン電流Ir1,Ir2はオフとされ、スイッチS1,S2はオンとされる。これにより、PMOSトランジスタPM1,PM2のゲート・ソース間が短絡され、PMOSトランジスタPM1,PM2はオフとなる。また、オンとされたスイッチS1を介してラインLn1に正の電荷が供給され、電圧V1は電源電圧VDDのレベルに達する。オンとされたスイッチS2を介してラインLn2に正の電荷が供給され、電圧V2も電源電圧VDDのレベルに達する。なお、このとき、インバータIV1,IV4の出力はローレベルとなるので、スイッチS3,S4はオフとされる。
【0043】
そして、信号XRSTがローレベルからハイレベルに切り替えられてプリチャージ期間からリード期間へ移行すると、ドレイン電流Ir1,Ir2はオンとされ、スイッチS1,S2はオフとされる。ドレイン電流Id2が流れる場合、電圧V2が低下し、ドレイン電流Id1が流れる場合、電圧V1が低下する。
【0044】
第1データ素子Md1にプログラム動作を実行した後でのリード動作では、Id1=0であり、Id2>Id1であるため、電圧V2が低下する(
図3のV2(Id2>Id1))。電圧V2が閾値Thに達すると、インバータIV4の出力がローレベルからハイレベルに切り替わり、スイッチS4がオンに切り替えられる。これにより、電圧V2=0Vとなり、PMOSトランジスタPM2はオンとなり、電圧V1=VDDとなる。このとき、PMOSトランジスタPM1はオフとなる。従って、インバータIV3から出力される出力信号Soutは、ローレベルとなる。すなわち、出力信号Soutは、“0”が記憶されている状態を示す信号として出力される。
【0045】
一方、第2データ素子Md2にプログラム動作を実行した後でのリード動作では、Id2=0であり、Id2<Id1であるため、電圧V1が低下する。電圧V1が閾値Thに達すると、インバータIV1の出力がローレベルからハイレベルに切り替わり、スイッチS3がオンに切り替えられる。これにより、電圧V1=0Vとなり、PMOSトランジスタPM1はオンとなり、電圧V2=VDDとなる。このとき、PMOSトランジスタPM2はオフとなる。従って、インバータIV3から出力される出力信号Soutは、ハイレベルとなる。すなわち、出力信号Soutは、“1”が記憶されている状態を示す信号として出力される。
【0046】
<1-2.比較例の課題>
ここで、
図4は、プログラム動作時におけるメモリ素子MT(NMOSトランジスタ)への電圧印加を示す図である。
図5は、
図4に対応するメモリ素子MTの縦構造断面図である。メモリ素子MTは、上記のデータ素子Md1,Md2(
図1)に使用される。
【0047】
図4および
図5に示すように、プログラム動作時には、メモリ素子MTのゲートGに高電圧Vpp、ソースSに高電圧Vpp、ドレインDにグランド電位Vss(=0V)が印加される。高電圧Vppは、例えば+6.5Vであり、
図1の構成ではVpp=VCCである。
【0048】
このような電圧印加により、
図5に示す矢印のように、ゲートGの直下においてドレインDからソースS側へ流れるホットキャリア(電子)が発生する。ホットキャリアは、ゲートGに印加される高電圧Vpp(正の電圧)に引き込まれ、ゲートGの側面に沿って設けられるソースS側のサイドウォールSSwにトラップされる(トラップされたホットキャリアEを
図5に図示)。
【0049】
図6は、リード動作時におけるメモリ素子MT1,MT2(NMOSトランジスタ)への電圧印加を示す図である。
図7は、
図6に対応するメモリ素子MT1,MT2の縦構造断面図である。メモリ素子MT1,MT2は、上記のデータ素子Md1,Md2(
図1)に対応する。
【0050】
図6および
図7に示すように、リード動作時には、メモリ素子MT1,MT2の各ゲートGにゲート電圧Vg1,Vg2が印加され、各ドレインDにドレイン電圧Vd1,Vd2が印加され、各ソースにグランド電位Vs(=0V)が印加される。ゲート電圧Vg1,Vg2は、例えば2Vである。ドレイン電圧Vd1,Vd2は、例えば+0.5Vである。
【0051】
図6および
図7では、例としてメモリ素子MT1がプログラム動作の実行前の状態(未プログラム動作状態)、メモリ素子MT2がプログラム動作の実行後の状態である場合を示している。すなわち、メモリ素子MT2は、
図4および
図5に示すメモリ素子MTに相当する。
【0052】
図7に示すように、プログラム動作を実行された後のメモリ素子MT2においては、サイドウォールSSwにホットキャリアEがトラップされているため、サイドウォールSSwの直下にゲート電圧Vg2による電界が届かず、チャネルCN2はソースS側で途切れる。従って、ゲート閾値電圧が高くなり、ドレイン電流が流れにくい。
【0053】
一方、
図7に示すように、プログラム動作を実行されていないメモリ素子MT1は、オン状態となり、ドレイン電流が流れる。
【0054】
しかしながら、このような方法によりプログラム動作を実行するメモリ素子を不揮発性メモリ装置に使用する場合、
図1に示すように、メモリ素子のドレインにグランド電位を印加するためのスイッチSW2,SW3、メモリ素子のソースに高電圧を印加するためのスイッチSW4、およびソースに高電圧を印加するときにソースをグランド電位から遮断するためのスイッチSW1が必要であり、プログラム動作のための回路のサイズが大きくなる課題があった。特に、プログラム動作時において流れる大きなドレイン電流に対応するためにスイッチSW2~SW4のサイズを大きくする必要があった。
【0055】
<2.本開示の第1実施形態>
<2-1.本開示に係る不揮発性メモリ装置の構成>
上記のような課題を解決すべく、本開示の実施形態が実施される。以下、本開示の実施形態について説明する。
図8は、本開示の第1実施形態に係る不揮発性メモリ装置1の構成を示す図である。
【0056】
不揮発性メモリ装置1は、差動アンプ2と、駆動トランジスタ3と、カレントミラー4~8と、スイッチ9と、インバータ10,11と、スイッチ12と、を備えている。なお、スイッチ12はリード動作時にオフ状態である。また、
図8において、電源電圧VDDは、例えばVDD=+6.5Vである。
【0057】
差動アンプ2は、入力トランジスタ21,22と、PMOSトランジスタ23,24と、抵抗素子25と、を有している。入力トランジスタ21,22は、いずれもNMOSトランジスタにより構成される。入力トランジスタ21のゲートには、基準電圧Vrefが印加される。入力トランジスタ21のソースは、抵抗素子25の一端に接続される。入力トランジスタ21のドレインは、PMOSトランジスタ23のドレインに接続される。PMOSトランジスタ23のゲートとドレインは短絡される。PMOSトランジスタ23のソースは、電源電圧VDDの印加端に接続される。PMOSトランジスタ24のゲートは、PMOSトランジスタ23のゲートに接続される。PMOSトランジスタ24のソースは、電源電圧VDDの印加端に接続される。PMOSトランジスタ24のドレインは、入力トランジスタ22のドレインに接続される。入力トランジスタ22のソースは、抵抗素子25の一端に接続される。抵抗素子25の他端は、接地端に接続される。
【0058】
駆動トランジスタ3は、NMOSトランジスタにより構成される。PMOSトランジスタ24と入力トランジスタ22とが接続されるノードN1は、駆動トランジスタ3のゲートに接続される。駆動トランジスタ3のソースは、抵抗素子R1の一端に接続される。抵抗素子R1の他端は、接地端に接続される。駆動トランジスタ3と抵抗素子R1とが接続されるノードN2は、入力トランジスタ22のゲートに接続される。
【0059】
差動アンプ2において、入力トランジスタ21には、基準電圧Vrefに応じた電流I21が流れる。電流I21は、PMOSトランジスタ23,24により構成されるカレントミラーによりミラーリングされて、PMOSトランジスタ24を流れる電流I24とされる。入力トランジスタ22には、ノードN2に生じるセンス電圧Vsnsに応じた電流I22が流れる。電流I24とI22のバランスに応じて駆動トランジスタ3のゲートが駆動され、駆動トランジスタ3のオン抵抗が調整される。すなわち、差動アンプ2は、基準電圧Vrefとセンス電圧Vsnsとの差分に応じて駆動トランジスタ3のゲートを駆動する。これにより、センス電圧Vsnsは、基準電圧Vrefと一致するように制御される。差動アンプ2、駆動トランジスタ3、および抵抗素子R1により、センス電圧Vsnsを一定とする定電圧回路が構成される。
【0060】
カレントミラー4は、いずれもPMOSトランジスタにより構成される入力側トランジスタ41と出力側トランジスタ42とを有する。カレントミラー5は、いずれもPMOSトランジスタにより構成される入力側トランジスタ41と出力側トランジスタ51とを有する。カレントミラー6は、いずれもPMOSトランジスタにより構成される入力側トランジスタ41と出力側トランジスタ61とを有する。すなわち、カレントミラー4,5,6において入力側トランジスタ41は共通である。
【0061】
カレントミラー8は、リファレンス素子81と、データ素子82と、抵抗素子R2と、スイッチSW8と、を有する。リファレンス素子81およびデータ素子82は、いずれもNMOSトランジスタにより構成されるメモリ素子(OTP素子)である。先述したように、メモリ素子は、プログラム動作を実行可能な素子である。データ素子82が、プログラム動作の対象である。
【0062】
リファレンス素子81のゲートとドレインは、短絡される。リファレンス素子81のソースは、スイッチSW8の一端に接続される。スイッチSW8の他端は、抵抗素子R2の一端に接続される。抵抗素子R2の他端は、接地端に接続される。データ素子82のゲートは、リファレンス素子81のゲートに接続される。データ素子82のソースは、接地端に接続される。
【0063】
駆動トランジスタ3のドレインは、カレントミラー5(カレントミラー4,6)の入力側トランジスタ41に接続される。カレントミラー5の出力側トランジスタ51は、リファレンス素子81のドレインに接続される。
【0064】
データ素子82のドレインは、後述するカレントミラー7に含まれる出力側トランジスタ72を介してカレントミラー6の出力側トランジスタ61にノードN3で接続される。
【0065】
センス電圧Vsnsと抵抗素子R1により生成される電流I1は、カレントミラー5によりミラーリングされ、電流I2となる。スイッチSW8がオン状態で、電流I2は、リファレンス素子81と抵抗素子R2を流れる。データ素子82のVgsは、リファレンス素子81のVgsに抵抗素子R2の両端間に生じる電圧を付加した電圧となる。抵抗素子R2は、電圧を付加する電圧付加部の一例である。電圧付加部としては、抵抗素子に限らず、例えばMOSトランジスタにより構成してもよい。
【0066】
リファレンス素子81とデータ素子82は、同じ構造を有し、プログラム動作の実行前においては互いに同じ電気的特性を有する。従って、データ素子82にプログラム動作を実行する前の状態(リファレンス素子81およびデータ素子82ともに未プログラム動作状態)では、データ素子82に流れる電流I3は、I3>I2となる。
【0067】
一方、電流I1は、カレントミラー6によりミラーリングされ、電流I4となる。カレントミラー6の出力側トランジスタ61に流れる電流I4は、基準電流となる。すなわち、出力側トランジスタ61は、基準電流生成部の一例である。例えば、I1=I2=I4=1μAとすれば、データ素子82にプログラム動作を実行する前の状態で、例えばI3=3μAとなる。
【0068】
ノードN3は、インバータ10の入力端に接続される。インバータ11の入力端は、インバータ10の出力端に接続される。インバータ11の出力端から出力信号Soutが出力される。
【0069】
スイッチ9は、電源電圧VDD の印加端とノードN3との間に接続される。スイッチ9をオン状態としたリセット状態では、インバータ10の入力端の電圧がハイレベルに固定され、出力信号Soutはハイレベルに固定される。リセット状態からスイッチ9がオフ状態に切り替えられると、データ素子82にプログラム動作を実行する前の状態で、I3>I4となり、ノードN3に電流が引かれ、インバータ10の入力端の電圧がローレベルまで低下する。例えば上記の電流値の例の場合は、I3=3μA、I4=1μAであるため、ノードN3に2μAの電流が引かれる。これにより、インバータ11から出力される出力信号Soutは、ローレベルとなる。すなわち、出力信号Soutは、“0”が記憶されている状態を示す信号として出力される。
【0070】
一方、データ素子82にプログラム動作を実行した後の状態では、データ素子82のゲート閾値電圧が高くなり、I3=0となる。リセット状態からスイッチ9がオフ状態に切り替えられると、データ素子82にプログラム動作を実行した後の状態では、I4>I3となり、インバータ10の入力端の電圧はハイレベルに維持される。従って、インバータ11から出力される出力信号Soutは、ハイレベルとなる。すなわち、出力信号Soutは、“1”が記憶されている状態を示す信号として出力される。
【0071】
このように、本実施形態では、データ素子82にプログラム動作を実行する前の状態では、カレントミラー8により基準電流である電流I4よりも大きい電流I3を生成し、データ素子82にプログラム動作を実行した後の状態では、I3<I4としている。そして、インバータ10,11により電流I3,I4の大小関係を検知することで、1ビットのデータを読み出している。
【0072】
不揮発性メモリ装置1は、記憶回路1Aを有する。記憶回路1Aは、データ素子82と、出力側トランジスタ72と、出力側トランジスタ61と、スイッチ9と、インバータ10,11と、スイッチ12と、を有する。このように、本実施形態では、1ビット分のデータに対応する記憶回路1Aを小型化することが可能である。なお、不揮発性メモリ装置1は実際には複数ビット(例えば32ビット)に対応しており、記憶回路1Aは複数ビットのビットごとに設けられる。また、
図8に示す構成のうち記憶回路1A以外の構成は、複数ビットについて共通の回路(コモン回路)となる。
【0073】
また、本実施形態では、センス電圧Vsnsを一定とする定電圧回路、カレントミラー5、および抵抗素子R1,R2により、リファレンス素子81のVgsに付加する電圧を精度良く設定している。例えば、R2をR1の1/2の抵抗値とすることで、上記付加する電圧をVsnsの1/2とすることができる。
【0074】
また、スイッチ9を仮にノードN3と接地端との間に接続している場合は、リセット状態からスイッチ9をオフ状態に切り替えた場合に、データ素子82にプログラム動作を実行した後の状態では、基準電流である電流I4(例えば1μA)によりインバータ10の入力端の電圧がローレベルからハイレベルへ立ち上がる。これに対し、本実施形態では、スイッチ9を電源電圧VDDの印加端とノードN3との間に接続しているため、リセット状態からスイッチ9をオフ状態に切り替えた場合に、データ素子82にプログラム動作を実行する前の状態では、ノードN3に引かれる電流(I3-I4=例えば2μA)によりインバータ10の入力端の電圧がハイレベルからローレベルへ低下する。従って、ノードN3に引かれる電流がI4よりも大きいため、読み出し時間を短くすることができる。
【0075】
なお、
図8に示す構成に限らず、カレントミラー8においては、データ素子82のサイズをリファレンス素子81のサイズよりも大きくしてもよい(データ素子82のサイズ:リファレンス素子81のサイズ=M:1(M>1))。この場合、抵抗素子R2は不要である。このような構成によっても、データ素子82にプログラム動作を実行する前の状態で、電流I2よりも大きな電流I3を流すことが可能であり、I3>I4とすることができる。
【0076】
<2-1.プログラム動作>
ここで、本実施形態におけるメモリ素子に対するプログラム動作について述べる。
図9は、プログラム動作時におけるメモリ素子MT(NMOSトランジスタ)への電圧印加を示す図である。
図10は、
図9に対応するメモリ素子MTの縦構造断面図である。メモリ素子MTは、上記のデータ素子82(
図8)に使用される。
【0077】
図9および
図10に示すように、プログラム動作時には、メモリ素子MTのゲートGに高電圧Vpp、ドレインDに高電圧Vpp、ソースSにグランド電位Vss(=0V)が印加される。高電圧Vppは、例えば+6.5Vであり、
図8の構成ではVpp=VDDである。
【0078】
このような電圧印加により、
図10に示す矢印のように、ゲートGの直下においてソースSからドレインD側へ流れるホットキャリア(電子)が発生する。ホットキャリアは、ゲートGに印加される高電圧Vpp(正の電圧)に引き込まれ、ゲートGの側面に沿って設けられるドレインD側のサイドウォールDSwにトラップされる(トラップされたホットキャリアEを
図10に図示)。
【0079】
図11は、リード動作時におけるメモリ素子MT1,MT2(NMOSトランジスタ)への電圧印加を示す図である。
図12は、
図11に対応するメモリ素子MT1,MT2の縦構造断面図である。
【0080】
図11および
図12に示すように、リード動作時には、メモリ素子MT1,MT2の各ゲートGにゲート電圧Vg1,Vg2が印加され、各ドレインDにドレイン電圧Vd1,Vd2が印加され、各ソースにグランド電位Vs(=0V)が印加される。
【0081】
図11および
図12では、例としてメモリ素子MT1がプログラム動作の実行前の状態(未プログラム動作状態)、メモリ素子MT2がプログラム動作の実行後の状態である場合を示している。従って、メモリ素子MT2のドレイン・ソース間の電圧は、プログラム動作時には高電圧(Vpp)とし、リード動作時にはVd2(<Vpp)とし、リード動作時と同じ極性でプログラム動作時に広げる。
【0082】
ここで、
図13の左方は、先述した比較例に係るメモリ素子MT1(未プログラム動作状態)のゲート電圧Vgs-ドレイン電流Ids特性の一例を示し、
図13の右方は、先述した比較例に係るメモリ素子MT2(プログラム動作実行後の状態)のゲート電圧Vgs-ドレイン電流Ids特性の一例を示す。なお、
図13においては、ドレイン電圧Vdを変化させた場合の特性を示しており、Vd=0.1Vの場合を実線で、Vd=0.5Vの場合を破線で、Vd=1.0Vの場合を一点鎖線で示している。
【0083】
プログラム動作を実行後の状態であるメモリ素子MT2(
図7)においては、ソース側のサイドウォールSSwに電荷がトラップされているため、ソース側の抵抗が高くなり、ドレイン電圧Vdに依らず、未プログラム動作状態であるメモリ素子MT1と比べてドレイン電流が流れにくい。
図13に示すように、ドレイン電圧Vdに依らず、メモリ素子MT2のゲート閾値電圧Vth2は、メモリ素子MT1のゲート閾値電圧Vth1よりも高くなる。
【0084】
これに対して、
図14の左方は、本開示の実施形態に係るメモリ素子MT1(未プログラム動作状態)のゲート電圧Vgs-ドレイン電流Ids特性の一例を示し、
図14の右方は、本開示の実施形態に係るメモリ素子MT2(プログラム動作実行後の状態)のゲート電圧Vgs-ドレイン電流Ids特性の一例を示す。なお、
図14においては、ドレイン電圧Vdを変化させた場合の特性を示しており、Vd=0.1Vの場合を実線で、Vd=0.5Vの場合を破線で、Vd=1.0Vの場合を一点鎖線で示している。
【0085】
プログラム動作を実行後の状態であるメモリ素子MT2(
図12)において、Vd<1.0Vでピンチオフ(ドレインD付近におけるチャネル遮断)が生じる前の状態では、サイドウォールDSwにトラップされた電荷の影響を受けてドレイン電流が流れにくくなる。これにより、
図14に示すように、Vd=0.5V,0.1Vでは、メモリ素子MT2のドレイン電流は、メモリ素子MT1のドレイン電流より小さい。
図14に示すように、Vd=0.1Vでは、メモリ素子MT2のゲート閾値電圧Vth2は、メモリ素子MT1のゲート閾値電圧Vth1より高くなっている。
【0086】
一方、メモリ素子MT2において、Vd≧1.0Vでピンチオフが生じる状態では、サイドウォールDSwにトラップされた電荷の影響が見えなくなり、未プログラム動作状態であるメモリ素子MT1とほぼ同じドレイン電流となる。
【0087】
このように本実施形態では、比較例と異なり、ドレインD側に高電圧を印加することでプログラム動作を実行するが、リード動作時にドレイン電圧Vdを低電圧(例えば0.1V)とすれば、未プログラム動作状態と比べてドレイン電流を少なくすることができ、データの読み出しが可能となる。
【0088】
これにより、本実施形態では、
図8に示す不揮発性メモリ装置1の構成において、スイッチ12を設けている。スイッチ12の一端は、電源電圧VDDの印加端に接続される。スイッチ12の他端は、データ素子82のドレインに接続される。プログラム動作時には、スイッチ12をオン状態とすることで、データ素子82のドレインに高電圧(VDD)を印加することができる。なお、スイッチ12をオン状態とすることで、後述する出力側トランジスタ72をオフ状態とすることができる。リード動作時には、スイッチ12をオフ状態とする。また、プログラム動作時には、スイッチSW8をオフ状態とすることで、データ素子82のゲートに高電圧(VDD)を印加する。
【0089】
このように、本実施形態では、データ素子82に対してプログラム動作を実行するためのスイッチとしてスイッチ12を設ければよく、仮に先述した比較例に係るスイッチSW1~SW4(
図1)に相当するスイッチを設ける場合よりも、回路サイズを小さくすることができる。
【0090】
<2-3.低電圧制御>
次に、カレントミラー7について述べる。カレントミラー7は、データ素子82のドレイン電圧を低電圧に制御するために設けられる。カレントミラー7は、入力側トランジスタ71と、出力側トランジスタ72と、抵抗素子73と、を有する。
【0091】
入力側トランジスタ71および出力側トランジスタ72は、いずれもNMOSトランジスタにより構成される。入力側トランジスタ71のゲートとドレインは、短絡される。入力側トランジスタ71のドレインは、カレントミラー4の出力側トランジスタ42に接続される。入力側トランジスタ71のソースは、抵抗素子73の一端に接続される。抵抗素子73の他端は、接地端に接続される。出力側トランジスタ72のゲートは、入力側トランジスタ71のゲートに接続される。出力側トランジスタ72のソースは、データ素子82のドレインに接続される。出力側トランジスタ72のドレインは、ノードN3に接続される。
【0092】
電流I1は、カレントミラー4によりミラーリングされ、電流I5となる。電流I5は、入力側トランジスタ71および抵抗素子73を流れる。入力側トランジスタ71のVgsに対して、抵抗素子73の両端間に生じる電圧を付加した電圧から出力側トランジスタ72のVgsだけ低下した電圧が、データ素子82のドレイン電圧として印加される。
【0093】
本実施形態では、センス電圧Vsnsを一定とする定電圧回路、カレントミラー4、および抵抗素子R1,73により、抵抗素子R1と抵抗素子73の抵抗比を設定して抵抗素子73の両端間に生じる電圧を精度良く設定し、データ素子82のドレイン電圧を低電圧に精度良く制御することができる。
【0094】
<3.本開示の第2実施形態>
先述のように第1実施形態に係る構成(
図8)は、有用な技術であるが、以下説明するように改善される余地がある。
図8の構成においては、データ素子82がプログラム動作を実行された後の状態の場合、データ素子82に流れるドレイン電流が少なくなり、出力側トランジスタ72のVgsが小さくなるため、データ素子82のドレイン電圧が高くなる。このとき、
図14の右方に例を示したように、データ素子82のゲート閾値電圧Vthが低くなり、データ素子82のドレイン電流が増え、プログラム動作の効果が減少する可能性がある。
【0095】
このような点を改善すべく、以下のような第2実施形態が実施される。
図15は、本開示の第2実施形態に係る不揮発性メモリ装置1Xの構成を示す図である。本実施形態に係る不揮発性メモリ装置1Xの第1実施形態(
図8)との構成の差異は、出力側トランジスタ51、リファレンス素子81、スイッチSW8、および抵抗素子R2を設けず、データ素子82のゲートを出力側トランジスタ72のドレインにノードN4において接続したことである。
【0096】
また、本実施形態では、インバータ10,11(
図8)とは異なり、読み出し部13を設けている。読み出し部13は、コンパレータ131を有する。コンパレータ131の非反転入力端(+)は、ノードN3に接続される。コンパレータ131の反転入力端(-)は、基準電圧V13の印加端に接続される。コンパレータ131から出力信号Soutが出力される。
【0097】
本実施形態では、スイッチ12をオン状態とすることでデータ素子82のドレインに高電圧(VDD)を印加するとともに、データ素子82のゲートに高電圧(VDD)、データ素子82のソースにグランド電位を印加することで、プログラム動作が実行される。リード動作時にはスイッチ12はオフ状態である。
【0098】
リード動作時に、定電流である電流I1は、カレントミラー6によりミラーリングされて電流I4となる。電流I4は、出力側トランジスタ72およびデータ素子82を流れる。本実施形態では、データ素子82が未プログラム動作状態、プログラム動作実行後の状態で、電流I4が一定となるようにデータ素子82のゲート電圧、すなわちノードN4の電圧が制御される。
【0099】
データ素子82が未プログラム動作状態、プログラム動作実行後の状態で、電流I4が一定であるため、出力側トランジスタ72のVgsが一定となり、I5=I4であるため、抵抗素子73の両端間に生じる電圧がデータ素子82のドレイン電圧にコピーされ、当該ドレイン電圧が一定となる。
【0100】
上記のようにデータ素子82が未プログラム動作状態、プログラム動作実行後の状態でデータ素子82のドレイン電圧が変化しないため、
図14に示す例であれば、未プログラム動作状態(
図14左方)、プログラム動作実行後の状態(
図14の右方)のいずれの場合も、データ素子82が例えばVd=0.1V(実線)の特性となる。従って、プログラム動作実行後の状態の場合にプログラムの効果が減少することが抑制される。未プログラム動作状態、プログラム動作実行後の状態で同じ電流I4を流すようにデータ素子82のゲート電圧が制御されるため、当該ゲート電圧は、プログラム動作実行後の状態の場合に未プログラム動作状態の場合よりも高くなる(例えば、ゲート電圧が未プログラム動作状態:1.5V、プログラム動作実行後の状態:4V)。
【0101】
データ素子82のゲート電圧、すなわちノードN4(N3)の電圧は、コンパレータ131において基準電圧V13と比較され、比較結果として出力信号Soutが生成される。データ素子82が未プログラム動作状態の場合は出力信号Soutがローレベル、データ素子82がプログラム動作実行後の状態の場合は出力信号Soutがハイレベルとなり、データを読み出すことができる。
【0102】
なお、本実施形態の変形例として、読み出し部13は、
図16に示す不揮発性メモリ装置1Yのように、少なくとも1つのインバータ132,133を用いて構成されるインバータ段を有してもよい。これにより、読み出し部13における回路面積を低減することができる。ただし、コンパレータにより読み出し部13を構成するほうが設計がしやすい。
【0103】
<4.変形例>
図17は、第2実施形態の他の変形例に係る不揮発性メモリ装置1Zの構成を示す図である。
図17に示す不揮発性メモリ装置1Zは、読み出し部13、定電流源14A~14C、抵抗15、アンプ16、NMOSトランジスタ17、抵抗18、NMOSトランジスタ19、およびデータ素子20を備える。
【0104】
アンプ16の非反転入力端(+)は、定電流源14Aと抵抗15とが接続されるノードN11に接続される。アンプ16の出力端は、NMOSトランジスタ17のゲートに接続される。NMOSトランジスタ17のドレインは、定電流源14Bに接続される。NMOSトランジスタ17のソースは、抵抗18とノードN12において接続される。ノードN12は、アンプ16の反転入力端(-)に接続される。
【0105】
アンプ16の出力端は、NMOSトランジスタ19のゲートに接続される。NMOSトランジスタ19のドレインは、定電流源14CにノードN13において接続される。NMOSトランジスタ19のソースは、データ素子20のドレインに接続される。データ素子20のソースは、接地端に接続される。データ素子20のゲートは、NMOSトランジスタ19のドレインにノードN14において接続される。読み出し部13の入力端は、ノードN13に接続される。
【0106】
抵抗15,18の抵抗値は同じである。定電流源14A~14Cの定電流値は同じである。アンプ16による制御によりノードN12の電圧は、定電流源14Aおよび抵抗15によりノードN11に生じる電圧となるように制御される。
【0107】
データ素子20が未プログラム動作状態、プログラム動作実行後の状態で、定電流源14CからNMOSトランジスタ19およびデータ素子20を流れる電流が一定となるようにデータ素子20のゲート電圧、すなわちノードN14の電圧が制御される。NMOSトランジスタ19を流れる電流が一定であるため、NMOSトランジスタ17,19のVgsが同じとなり、抵抗18の両端間に生じる電圧がデータ素子20のドレイン電圧にコピーされる。これにより、データ素子20が未プログラム動作状態、プログラム動作実行後の状態でデータ素子20のドレイン電圧が変化しない。従って、データ素子20のプログラムの効果が減少することを抑制できる。読み出し部13は、ノードN13(N14)の電圧に基づきハイレベルまたはローレベルの出力信号Soutを出力する。
【0108】
また、アンプ16は出力インピーダンスが低いため、高速にNMOSトランジスタ17,19のゲート電圧を立ち上げることができる。従って、起動時間を短くすることができる。なお、定電流源14A,14Cによる定電流は、単独のトランジスタのみを駆動するため、大きな遅延にはつながらない。
【0109】
<5.その他>
本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0110】
例えば、リファレンス素子81およびデータ素子82は、NMOSトランジスタに限らず、PMOSトランジスタにより構成することも可能である。PMOSトランジスタにより構成する場合、リファレンス素子81およびデータ素子82以外の素子は適宜、接続関係およびトランジスタの種類等を変更される。
【0111】
<6.付記>
以上のように、例えば、本開示に係る不揮発性メモリ装置(1X)は、ドレイン側のサイドウォールにホットキャリアをトラップすることによりプログラム動作を実行可能であるメモリ素子(82)と、
前記メモリ素子のゲートに接続される第1端と、前記メモリ素子の第1端に接続される第2端と、を有する第1MOSトランジスタ(72)と、
前記第1MOSトランジスタおよび前記メモリ素子に流れる定電流を生成可能に構成される第1定電流源(6)と、
前記第1MOSトランジスタの第1端に生じる電圧に基づきデータを読み出し可能に構成される読み出し部(13)と、を備える構成としている(第1の構成、
図15)。
【0112】
また、上記第1の構成において、前記メモリ素子(82)および前記第1MOSトランジスタ(72)は、NMOSトランジスタにより構成され、前記メモリ素子のドレインと電源電圧(VDD)の印加端との間にスイッチ(12)が接続される構成としてもよい(第2の構成)。
【0113】
また、上記第1または第2の構成において、前記読み出し部(13)は、前記第1MOSトランジスタの第1端に生じる電圧を基準電圧(V13)と比較可能に構成されるコンパレータ(131)を有する構成としてもよい(第3の構成)。
【0114】
また、上記第1または第2の構成において、前記読み出し部(13)は、少なくとも1つのインバータ(132,133)を含み、かつ前記第1MOSトランジスタの第1端に生じる電圧が入力されるインバータ段を有する構成としてもよい(第4の構成、
図16)。
【0115】
また、上記第1から第4のいずれかの構成において、前記第1MOSトランジスタ(72)のゲートに接続されるゲートと、当該ゲートと短絡するドレインと、を有する第2MOSトランジスタ(71)と、前記第2MOSトランジスタのソースと接続される第1抵抗(73)と、を備える構成としてもよい(第5の構成)。
【0116】
また、上記第1から第4のいずれかの構成において、第2定電流源(14A)と、
第3定電流源(14B)と、
前記第2定電流源に第1ノード(N11)において接続される第2抵抗(15)と、
前記第1ノードに接続される第1入力端と、第2入力端と、前記第1MOSトランジスタ(19)のゲートに接続される出力端と、を有するアンプ(16)と、
第3抵抗(18)と、
前記出力端に接続されるゲートと、前記第3定電流源に接続されるドレインと、前記第2入力端および前記第3抵抗に接続されるソースと、を有する第3MOSトランジスタ(17)と、を備える構成としてもよい(第6の構成、
図17)。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本開示は、例えば、各種の半導体装置に搭載される不揮発性メモリ装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0118】
1,1X,1Y,1Z 不揮発性メモリ装置
1A 記憶回路
2 差動アンプ
3 駆動トランジスタ
4~8 カレントミラー
9 スイッチ
10,11 インバータ
12 スイッチ
13 読み出し部
131 コンパレータ
132,133 インバータ
14A~14C 定電流源
15 抵抗
16 アンプ
17 NMOSトランジスタ
18 抵抗
19 NMOSトランジスタ
20 データ素子
21,22 入力トランジスタ
23,24 PMOSトランジスタ
25 抵抗素子
41 入力側トランジスタ
42 出力側トランジスタ
51 出力側トランジスタ
61 出力側トランジスタ
71 入力側トランジスタ
72 出力側トランジスタ
73 抵抗素子
81 リファレンス素子
82 データ素子
100 不揮発性メモリ装置
CMA,CMB カレントミラー
DSw サイドウォール
IV1~IV4 インバータ
MT メモリ素子
MT1,MT2 メモリ素子
Md1 第1データ素子
Md2 第2データ素子
Mr1 第1リファレンス素子
Mr2 第2リファレンス素子
PM1,PM2 PMOSトランジスタ
PMA~PMC PMOSトランジスタ
R1,R2 抵抗素子
Rr1 第1リファレンス抵抗
Rr2 第2リファレンス抵抗
S1~S4 スイッチ
SA センスアンプ
SSw サイドウォール
SW1~SW4,SW8 スイッチ
SWA,SWB スイッチ