(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136779
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】硬貨画像センサ、硬貨識別装置、硬貨処理装置及び硬貨画像採取方法
(51)【国際特許分類】
G06V 10/14 20220101AFI20230922BHJP
【FI】
G06V10/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042657
(22)【出願日】2022-03-17
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】岩田 勝雄
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硬貨画像における硬貨の外周部のコントラストを改善し、かつ、硬貨画像センサを小型化して低コスト化を図ることができる硬貨画像センサを提供する。
【解決手段】硬貨Cの画像を採取する硬貨画像センサ1aであって、硬貨Cの表面に光を照射する光源部11と、光源部11から照射された光L1、L2のうち、硬貨の表面以外に向かう光L2の光路を変更して、硬貨の側方から硬貨に光を照射する光路変更部12と、硬貨からの反射光を受光する受光部13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨の画像を採取する硬貨画像センサであって、
前記硬貨の表面に光を照射する光源部と、
前記光源部から照射された光のうち、前記硬貨の表面以外に向かう光の光路を変更して、前記硬貨の側方から前記硬貨に光を照射する光路変更部と、
前記硬貨からの反射光を受光する受光部と、を備えることを特徴とする、硬貨画像センサ。
【請求項2】
前記光路変更部を複数備えることを特徴とする請求項1に記載の硬貨画像センサ。
【請求項3】
前記光路変更部が備える光路変更面が平面又は曲面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の硬貨画像センサ。
【請求項4】
前記光路変更部は、入射した光を反射させる反射部材であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の硬貨画像センサ。
【請求項5】
前記光路変更部は、入射した光を屈折させる屈折部材であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の硬貨画像センサ。
【請求項6】
前記光源部は前記硬貨の表面に線状の光線を照射することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の硬貨画像センサ。
【請求項7】
前記光源部は、発光素子と、棒線状の導光体とを備えていることを特徴とする請求項6に記載の硬貨画像センサ。
【請求項8】
前記光源部は、複数の発光素子を線状に並べてなることを特徴とする請求項6に記載の硬貨画像センサ。
【請求項9】
前記光路変更部の形状が、前記線状の光線の長手方向に対して傾いている形状であることを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載の硬貨画像センサ。
【請求項10】
前記受光部は、複数の受光素子を線状に並べたラインセンサであることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の硬貨画像センサ。
【請求項11】
前記光源部と前記受光部が設置される、一方の面が開口した箱状の筐体と、
前記筐体の開口に設けられた板状の透明部と、をさらに備え、
前記光路変更部は、前記透明部の前記硬貨が接触する面の反対側の面に配置されることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の硬貨画像センサ。
【請求項12】
前記光源部と前記受光部が設置される、一方の面が開口した箱状の筐体と、
前記筐体の開口に設けられた板状の透明部と、をさらに備え、
前記光源部が前記透明部に向けて線状の光線を照射し、
前記線状の光線の中央部の光成分は、前記透明部を透過して前記硬貨の表面に照射され、
前記線状の光線の少なくとも一方の端部に位置する光成分は、前記光路変更部によって光路が変更されて前記硬貨の側方から前記硬貨に照射されることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の硬貨画像センサ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の硬貨画像センサと、
前記硬貨画像センサで採取した硬貨画像を用いて硬貨の識別処理を行う識別部とを備えることを特徴とする硬貨識別装置。
【請求項14】
硬貨を搬送方向に沿って搬送する搬送部を備えており、
前記硬貨画像センサが備える光路変更部の形状が、前記搬送方向に対して傾いている形状であることを特徴とする請求項13に記載の硬貨識別装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の硬貨識別装置を備えることを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項16】
硬貨の画像を採取する硬貨画像採取方法であって、
光源部から前記硬貨の表面に対して光を照射し、
光路変更部において、前記光源部から照射された光のうち前記硬貨の表面以外に向かう光の光路を変更して、前記硬貨の側方から前記硬貨に光を照射し、
受光部において前記硬貨からの反射光を受光することを特徴とする、硬貨画像採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨画像センサ、硬貨識別装置、硬貨処理装置及び硬貨画像採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から硬貨に対して光を照射し、その反射光を受光することにより硬貨画像を取得し、得られた画像と予め処理機内の制御部に記憶されている真貨の基準画像であるテンプレートを比較することにより硬貨の識別が行われている。
【0003】
物体の画像を取得する方法として、スキャナやコピー機、FAXなどで用いられている、センサを一列に並べたタイプのラインセンサを用いて硬貨画像を帯状に取り込み、帯画像を並べて硬貨全体画像とする方法が知られている。
ラインセンサを用いると装置コストを抑えることが期待できるため、硬貨の画像を取り込むセンサとしてラインセンサを用いることが検討されている。
【0004】
特許文献1には、ラインセンサのセンサとセルフォックレンズの周辺に複数の光源を並べ、硬貨の周縁部に対して均一に光を照射するように構成された硬貨判別装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構成では、硬貨の周縁部に均一に光を照射するために多数の光源が必要となり、装置が大型化すると共に、コスト高になってしまうという課題があった。
【0007】
そこで、光源部から硬貨の表面に線状の光線を照射することにより装置の構成を簡略化することを試みた。この方式であると簡便な構造で硬貨の表面に光を照射して、ラインセンサにより画像を取得することができた。しかしながら、得られた硬貨画像における硬貨の外周部の画像がぼやけてしまうこと、言い換えると硬貨画像における硬貨の外周部のコントラストが不足することが問題となった。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、硬貨画像における硬貨の外周部のコントラストを改善し、かつ硬貨画像センサを小型化して低コスト化を図ることができる硬貨画像センサ、硬貨識別装置、硬貨処理装置及び硬貨画像採取方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、(1)本開示の硬貨画像センサは、硬貨の画像を採取する硬貨画像センサであって、前記硬貨の表面に光を照射する光源部と、前記光源部から照射された光のうち、前記硬貨の表面以外に向かう光の光路を変更して、前記硬貨の側方から前記硬貨に光を照射する光路変更部と、前記硬貨からの反射光を受光する受光部と、を備える。
【0010】
(2)上記(1)に記載の硬貨画像センサは、前記光路変更部を複数備えてもよい。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)に記載の硬貨画像センサは、前記光路変更部が備える光路変更面が平面又は曲面を有してもよい。
【0012】
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の硬貨画像センサにおいて、前記光路変更部は、入射した光を反射させる反射部材であってもよい。
【0013】
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の硬貨画像センサにおいて、前記光路変更部は、入射した光を屈折させる屈折部材であってもよい。
【0014】
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の硬貨画像センサにおいて、前記光源部は前記硬貨の表面に線状の光線を照射してもよい。
【0015】
(7)上記(6)に記載の硬貨画像センサにおいて、前記光源部は、発光素子と、棒線状の導光体とを備えていてもよい。
【0016】
(8)上記(6)に記載の硬貨画像センサにおいて、前記光源部は、複数の発光素子を線状に並べてなるものであってもよい。
【0017】
(9)上記(6)~(8)のいずれかに記載の硬貨画像センサにおいて、前記光路変更部の形状が、前記線状の光線の長手方向に対して傾いている形状であってもよい。
【0018】
(10)上記(1)~(9)のいずれかに記載の硬貨画像センサにおいて、前記受光部は、複数の受光素子を線状に並べたラインセンサであってもよい。
【0019】
(11)上記(1)~(10)のいずれかに記載の硬貨画像センサは、前記光源部と前記受光部が設置される、一方の面が開口した箱状の筐体と、前記筐体の開口に設けられた板状の透明部と、をさらに備え、前記光路変更部は、前記透明部の前記硬貨が接触する面の反対側の面に配置されていてもよい。
【0020】
(12)上記(1)~(11)のいずれかに記載の硬貨画像センサは、前記光源部と前記受光部が設置される、一方の面が開口した箱状の筐体と、前記筐体の開口に設けられた板状の透明部と、をさらに備え、前記光源部が前記透明部に向けて線状の光線を照射し、前記線状の光線の中央部の光成分は、前記透明部を透過して前記硬貨の主面に照射され、前記線状の光線の少なくとも一方の端部に位置する光成分は、前記光路変更部によって光路が変更されて前記硬貨の側方から前記硬貨に照射されてもよい。
【0021】
(13)本開示の硬貨識別装置は、上記(1)~(12)のいずれかに記載の硬貨画像センサと、前記硬貨画像センサで採取した硬貨画像を用いて硬貨の識別処理を行う識別部とを備える。
【0022】
(14)上記(13)に記載の硬貨識別装置は、硬貨を搬送方向に沿って搬送する搬送部を備えており、前記硬貨画像センサが備える光路変更部の形状が、前記搬送方向に対して傾いている形状であってもよい。
【0023】
(15)本開示の硬貨処理装置は、上記(13)又は(14)に記載の硬貨識別装置を備える。
【0024】
(16)本開示の硬貨画像採取方法は、硬貨の画像を採取する硬貨画像採取方法であって、光源部から前記硬貨の主面を含む領域に対して光を照射し、光路変更部において、前記光源部から照射された光のうち前記硬貨の主面以外の領域に向かう光の光路を変更して、前記硬貨の側方から前記硬貨に光を照射し、受光部において前記硬貨からの反射光を受光する。
【0025】
上記(16)に記載の硬貨画像採取方法においては、複数の光路変更部を用いてもよい。
また、光路変更部が備える光路変更面が平面又は曲面を有してもよい。
また、光路変更部が、入射した光を反射させる反射部材であってもよい。
また、光路変更部が、入射した光を屈折させる屈折部材であってもよい。
【0026】
上記(16)に記載の硬貨画像採取方法においては、光源部は硬貨の表面に線状の光線を照射してもよい。
また、光源部は、発光素子と、棒線状の導光体とを備えていてもよい。
また、光源部は、複数の発光素子を線状に並べてなっていてもよい。
また、光路変更部の形状が、線状の光線の長手方向に対して傾いている形状であってもよい。
また、受光部は、複数の受光素子を線状に並べたラインセンサであってもよい。
【0027】
上記(16)に記載の硬貨画像採取方法においては、光源部と受光部が設置される、一方の面が開口した箱状の筐体と、筐体の開口に設けられた板状の透明部と、をさらに備える硬貨画像センサを用いてもよく、光路変更部は、透明部の硬貨が接触する面の反対側の面に配置されていてもよい。
【0028】
上記(16)に記載の硬貨画像採取方法においては、光源部と受光部が設置される、一方の面が開口した箱状の筐体と、筐体の開口に設けられた板状の透明部と、をさらに備える硬貨画像センサを用いてもよく、光源部が透明部に向けて線状の光線を照射し、線状の光線の中央部の光成分を、透明部を透過して硬貨の表面に照射し、線状の光線の少なくとも一方の端部に位置する光成分の光路を光路変更部によって変更して硬貨の側方から硬貨に照射してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、硬貨画像における硬貨の外周部のコントラストを改善し、かつ硬貨画像センサを小型化して低コスト化を図ることができる硬貨画像センサ、硬貨識別装置、硬貨処理装置及び硬貨画像採取方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る硬貨画像センサの構成の一例を説明する斜視模式図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、硬貨の側面及びエッジ部の位置の一例を説明するための、硬貨の側面及びその周囲を含む硬貨の断面の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、硬貨の側方からの光照射の有無による硬貨画像の違いを示す写真である。
【
図4】
図4は、光路変更部の配置の一例を模式的に示す上面図である。
【
図5】
図5は、光路変更部の配置の別の例を模式的に示す上面図である。
【
図6】
図6は、光路変更部の配置の別の例を模式的に示す上面図である。
【
図7】
図7(a)は、光路変更部の一例としての反射部材であるプリズムを模式的に示す斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)に示すプリズムの側面図である。
【
図8】
図8(a)は、光路変更部の一例としての反射部材かつ屈折部材であるプリズムを模式的に示す斜視図であり、
図8(b)は
図8(a)に示すプリズムの側面図であり、
図8(c)は
図8(a)及び
図8(b)に示す光路変更部を硬貨画像センサ1eに配置する位置の例を模式的に示す上面図である。
【
図9】
図9(a)は、光路変更部の一例としての屈折部材である回折格子を模式的に示す斜視図であり、
図9(b)は
図9(a)に示す回折格子の側面図であり、
図9(c)は
図9(a)及び
図9(b)に示す光路変更部を硬貨画像センサ1fに配置する位置の例を模式的に示す上面図である。
【
図10】
図10(a)は、光路変更部の一例としての、光路変更面が曲面の反射部材であるプリズムを模式的に示す斜視図であり、
図10(b)に示す光路変更部を硬貨画像センサ1gに配置する位置の例を模式的に示す上面図である。
【
図11】
図11は、扇状の導光体を備える硬貨画像センサの例を模式的に示す斜視図である。
【
図12】
図12は、複数の発光素子を備える硬貨画像センサの例を模式的に示す斜視図である。
【
図13】
図13は、硬貨画像センサの一例を模式的に示す上面図である。
【
図15】
図15(a)は、光路変更部が設けられた透明部の一例を模式的に示す上面図であり、
図15(b)は
図15(a)に示す透明部のB-B線断面図である。
【
図16】
図16は、硬貨画像センサの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図17】
図17は、
図16に示す硬貨画像センサの構成の一例を説明する斜視分解模式図である。
【
図18】
図18は、硬貨識別装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図19】
図19は、硬貨識別装置の構成の例を模式的に示すブロック図である。
【
図20】
図20は、硬貨処理装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図21】
図21は、変位センサを備える硬貨画像センサの一例を模式的に示す上面図である。
【
図22】
図22は、変位センサによる硬貨の移動量の測定の一例を模式的に示す上面図である。
【
図23】
図23は、変位センサによる硬貨の移動量の測定の別の一例を模式的に示す上面図である。
【
図24】
図24(a)及び
図24(b)は、変位センサによる硬貨の移動量の測定を、経時的に示した一例を模式的に示す上面図である。
【
図25】
図25(a)及び
図25(b)は、変位センサによる硬貨の移動量の測定を、経時的に示した別の一例を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示に係る硬貨画像センサ、硬貨識別装置、硬貨処理装置及び硬貨画像採取方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下においては、貨幣としての硬貨を対象とする硬貨画像センサ、硬貨識別装置、硬貨処理装置及び硬貨画像採取方法を例として、本開示を説明するが、本開示の対象となる硬貨には、貨幣としての硬貨に加えて、遊技機で使用されるコインも含まれる。なお、以下の説明は、硬貨画像センサ、硬貨識別装置、硬貨処理装置及び硬貨画像採取方法の一例である。
【0032】
なお、以下の説明において、同一又は同様の機能を有する構成には同一の符号を異なる実施形態及び図面間で共通して適宜用い、その構成についての繰り返しの説明は適宜省略する。また、構造を説明する図面には、互いに直交するXYZ座標系を適宜示している。
【0033】
また、本明細書において、硬貨の表面とは、硬貨の表面(おもてめん)又は裏面(うらめん)のいずれか一方を意味する。硬貨の表面には、硬貨の側面は含まれない。
また、硬貨の表面は、受光部に対向する面である。
【0034】
(実施形態1)
図1を用いて、本実施形態に係る硬貨画像センサの構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る硬貨画像センサの構成の一例を説明する斜視模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る硬貨画像センサ1aは、硬貨Cの表面に光を照射する光源部11と、光源部11から照射されて硬貨Cで反射した反射光を受光する受光部13とを備えている。
硬貨画像センサは、例えば、硬貨Cを処理対象とする硬貨処理装置に搭載して用いることができる。識別対象となる硬貨Cは、XY平面内をX方向に搬送されてもよい。
【0035】
光源部11からは、硬貨Cの表面に向かう光L1と硬貨Cの表面以外に向かう光L2が照射される。光源部11から照射された直後の光L1の向きと光L2の向きは実質的に平行である。光源部11から照射され、光路変更部によりその光路が変更される前の光L2の向きは、光L1の向きと全く異なる向きというわけではない。
硬貨Cの表面に向かう光L1は硬貨Cの表面に照射されて硬貨Cの表面で反射する。光L1は線状の光線であり、硬貨Cにおいて光L1で照射された部分を参照符号R1で示す。
硬貨Cの表面以外に向かう光L2の光路が、光路変更部12によって変更され、硬貨Cの側方から硬貨Cに光が照射される。硬貨Cにおいて光L2で照射された部分を参照符号R2で示す。
本明細書において「側方から硬貨に光が照射される」とは、硬貨の側面及び/又はエッジ部を含む硬貨の周縁部に対して光を照射することを意味する。また、「側方から」とは、「搬送面(
図1のXY平面)において硬貨の搬送方向(
図1のX方向)に対する側方(Y方向)から」ともいえる。
また、側方からの照射は、硬貨の一方の側方(+Y方向)及び他方の側方(-Y方向)のうちの少なくとも一方からの照射であることを意味する。
【0036】
図2(a)及び
図2(b)は、硬貨の側面及びエッジ部の位置の一例を説明するための、硬貨の側面及びその周囲を含む硬貨の断面の一例を模式的に示す断面図である。
図2(a)及び
図2(b)には、硬貨の表面(おもてめん)Cf、硬貨の裏面Cb、硬貨の側面Cs、及び硬貨のエッジ部Ceを示している。
硬貨のエッジ部Ceは、硬貨の表面Cf及び硬貨の裏面Cbと硬貨の側面Csの交差部を含む領域である。
図2(a)には、角張った形状のエッジ部Ceの例を示している。
図2(b)には、丸みを帯びたエッジ部Ceの例を示している。
【0037】
図3(a)及び
図3(b)は、硬貨の側方からの光照射の有無による硬貨画像の違いを示す写真である。
図3(a)は、硬貨の右側側方からの光照射がされて得られた硬貨画像である。
図3(b)は、硬貨の側方からの光照射がされずに得られた硬貨画像である。
図3(a)では、硬貨画像の右側において硬貨の外周部が白く明瞭に映っており、コントラストが高くなっている。一方、
図3(b)では硬貨画像の右側において硬貨の外周部がぼやけており、コントラストが低くなっていることが分かる。
【0038】
このように、硬貨の表面以外に向かう光の光路が、光路変更部によって変更され、硬貨の側方から硬貨に光が照射されると、硬貨の周縁部に対して光源部から照射される光の光量を増加させることができる。そのため、硬貨画像における硬貨の外周部のコントラストが向上する。また、光源を増やす必要がなく、硬貨の表面に光を照射する光源部から照射される一部の光に対して光路変更部を設けるだけで当該効果が発揮されるので、装置の大型化や高いコストを必要としない。
【0039】
また、硬貨の表面以外に向かう光は、光源部から照射されるものの硬貨に照射されない光であるので、従来の硬貨画像センサにおいては利用されておらず、無駄になっていた光であるともいえる。この光を側方から硬貨に照射する光として利用するので、光量を増したり光源を増やしたりする必要は無く、効率及びコストに優れる。
【0040】
また、硬貨の側方から硬貨に光を照射することにより、硬貨画像における硬貨の外周部のコントラストが向上する。硬貨画像における硬貨の外周部のコントラストが向上すると、コントラストが向上した部分を測って硬貨の直径を計測することができるので、硬貨の直径の測定精度を向上させることができる。
【0041】
以下、再び
図1を参照して説明する。
光源部11からは、硬貨Cの表面に向かう光L1と硬貨Cの表面以外に向かう光L2が照射される。光源部11は硬貨の表面に線状の光線を照射してもよい。光源部11が硬貨Cの表面に線状の光線を照射する際に、その線状の光線の長さ(
図1中のY方向の長さ)が硬貨Cの直径よりも大きくてもよい。光源部11から照射される線状の光線の長さが硬貨Cの直径よりも大きいと、受光部の検出位置に硬貨の中心が達したときに硬貨Cの直径に相当する部分の光は硬貨Cの表面に向かう光L1となり、硬貨Cの直径に相当する部分からはみ出した部分の光が硬貨Cの表面以外に向かう光L2となる。硬貨Cの表面以外に向かう光L2の光路を光路変更部12によって変更することにより、硬貨Cの側方から硬貨Cに光を照射させ、硬貨の周縁部に対して光源部から照射される光の光量を増加させることができる。
【0042】
光源部11は、発光素子116と、棒線状の導光体115とを備えていてもよい。
図1に示す棒線状の導光体115は、棒状(直線状)の導光体である。
発光素子116は導光体115の2つの端面に対向するように設けられていてもよい。また、発光素子116は、導光体115の2つの端面のいずれか一方のみに配置されていてもよい。
【0043】
導光体は、透明な棒線状の光学部材であってもよく、棒線状の導光体は、発光素子からの光を導いて照射対象である硬貨に向けて棒線状の光を照射するものであり、発光素子から発せられる光を棒線状化する。
【0044】
発光素子としては、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子を使用することができる。発光素子として互いに異なる波長域の光を照射可能な複数のLEDを使用して、互いに異なる波長域の光(例えば、紫外光、赤色光、緑色光、青色光及び赤外光)を照射できるようになっていてもよい。
【0045】
受光部13としては、複数の受光素子を線状に並べたラインセンサを用いてもよい。すなわち、受光部13は、Y方向に一列に配列された複数の受光素子(受光画素)を備えていてもよく、リニアイメージセンサを構成していてもよい。
【0046】
次に、光路変更部の配置の例について説明する。
硬貨画像センサは、光路変更部を複数備えていてもよい。
また、光源部は硬貨の表面に線状の光線を照射するものであってもよく、光路変更部の形状が、線状の光線の長手方向に対して傾いていてもよい。
以下の
図4、
図5及び
図6に示す光路変更部の配置の例では、光路変更部が、光路変更部に入射した光を反射させる反射部材である。
【0047】
図4は、光路変更部の配置の一例を模式的に示す上面図である。
図4には、光源部としての導光体を2本備える硬貨画像センサ1bを示している。
硬貨画像センサ1bは、光路変更部を2つ(光路変更部12a、12c)備えており、光路変更部12a及び光路変更部12cはいずれも反射部材である。
【0048】
光路変更部12aは、光源部11aから照射された光の光路を変更させて、硬貨Cの一方の側方から硬貨に光を照射させる。
光路変更部12cも、光源部11aから照射された光の光路を変更させて、硬貨Cの他方の側方から硬貨に光を照射させる。
光路変更部12aと光路変更部12cは、線状の光線の長手方向に対して異なる方向(逆向き)に傾いている。線状の光線の長手方向は、
図4に領域R2で示す領域の長手方向に対応する。
このような光路変更部を2つ備えることにより、硬貨Cの両方の側方から光を照射させることができる。
光源部と光路変更部の位置関係は
図1に示す硬貨画像センサ1aと同じである。
【0049】
光源部11bから照射された光の光路は、光路変更部により変更されない。光源部11bから照射された光は、硬貨の表面に向かう光のみが利用される。
また、
図4に示す硬貨画像センサの構成においては、光源部は光源部11aのみであってもよい。
【0050】
図5は、光路変更部の配置の別の例を模式的に示す上面図である。
図5には、光源部としての導光体を2本備える硬貨画像センサ1cを示している。
硬貨画像センサ1cは、光路変更部を2つ(光路変更部12a、12b)備えており、光路変更部12a及び光路変更部12bはいずれも反射部材である。
【0051】
光路変更部12aは、光源部11aから照射された光の光路を変更させて、硬貨Cの一方の側方から硬貨に光を照射させる。
光路変更部12bは、光源部11bから照射された光の光路を変更させて、硬貨Cの他方の側方から硬貨に光を照射させる。
光路変更部12aと光路変更部12bは、線状の光線の長手方向に対して同じ方向に傾いている。線状の光線の長手方向は、
図5に領域R2で示す領域の長手方向に対応する。
光路変更部を2つ備えることにより、硬貨Cの両方の側方から光を照射させることができる。
【0052】
硬貨画像センサは、光路変更部を1つだけ備えていてもよい。
図6は、光路変更部の配置の別の例を模式的に示す上面図である。
図6には、光源部としての導光体を2本備える硬貨画像センサ1dを示している。
硬貨画像センサ1dは、光路変更部を1つ(光路変更部12a)備えており、光路変更部12aは反射部材である。
【0053】
光路変更部12aは、光源部11aから照射された光の光路を変更させて、硬貨Cの一方の側方から硬貨に光を照射させる。
光路変更部12aは、線状の光線の長手方向に対して傾いている
線状の光線の長手方向は、
図6に領域R2で示す領域の長手方向に対応する。
光路変更部を1つ備えることにより、硬貨Cの一方の側方から光を照射させることができる。光を照射させた側の硬貨画像における硬貨の外周部のコントラストを高めることができる。
【0054】
光源部11bから照射された光の光路は、光路変更部により変更されない。光源部11bから照射された光は、硬貨の表面に向かう光のみが利用される。
また、
図6に示す硬貨画像センサの構成においては、光源部は光源部11aのみであってもよい。
【0055】
図4、
図5及び
図6に示す硬貨画像センサの例では、光源部は硬貨の表面に線状の光線を照射することができるようになっており、光路変更部の形状が、線状の光線の長手方向に対して傾いている。光路変更部の形状が、線状の光線の長手方向に対して傾いていることによって、線状の光線の光路を硬貨の側方から光を照射できる向きに変更することができる。
【0056】
なお、
図4、
図5及び
図6に示す硬貨画像センサの例では光路変更部は反射部材として示したが、後述する屈折部材等の他の形態の光路変更部を用いてもよい。
【0057】
次に、光路変更部の他の形態の例について説明する。
光路変更部としては、光路変更部に入射した光を反射させる反射部材を使用することができる。また、光路変更部に入射した光を屈折させる屈折部材を使用することができる。また、光路変更部に入射した光を屈折させ、かつ、反射させる屈折反射部材を用いることもできる。
【0058】
光路変更部の具体的な部材としては反射部材としてのミラー、プリズム、屈折部材としての回折格子、プリズムを使用することができる。また、反射部材かつ屈折部材であるプリズムを使用することができる。
光路変更部が備える光路変更面は平面又は曲面を有していてもよい。
光路変更面は、光路変更部が反射部材である場合は反射面であり、光路変更部が屈折部材である場合は屈折面(入射面又は出射面)である。光路変更部が反射部材かつ屈折部材である場合は反射面及び屈折面である。
以下、光路変更部の例について説明する。
【0059】
以下に示す光路変更部に入射する光L2は、光源部から照射された光のうち硬貨の表面以外に向かう光である。
図7(a)は、光路変更部の一例としての反射部材であるプリズムを模式的に示す斜視図であり、
図7(b)は
図7(a)に示すプリズムの側面図である。
図7(a)に示す反射部材としてのプリズム21では、光路変更面である反射面21aは平面である。プリズム21に入射した光L2はプリズム21の反射面21aで反射してその光路が変更され、硬貨の側方から硬貨に照射される。
また、光路変更部が反射部材である場合、その形状はプリズムに限定されるものではなく、板状のミラー部材であってもよい。
図7(a)及び
図7(b)に示す反射部材である光路変更部を硬貨画像センサに配置する位置の例は、
図4、
図5及び
図6に示している。
【0060】
図8(a)は、光路変更部の一例としての反射部材かつ屈折部材であるプリズムを模式的に示す斜視図であり、
図8(b)は
図8(a)に示すプリズムの側面図である。
図8(c)は
図8(a)及び
図8(b)に示す光路変更部を硬貨画像センサ1eに配置する位置の例を模式的に示す上面図である。
【0061】
図8(a)に示す反射部材としてのプリズム22は、プリズム22bとプリズム22cが組み合わされてなり、プリズム22bとプリズム22cの境界面が反射面22aとなる。反射面22aは平面である。プリズム22に入射する光L2は入射側に位置するプリズム22cへの入射面22dで屈折し、反射面22aで反射し、プリズム22cからの出射面22eで屈折する。入射面22d及び出射面22eが屈折面である。
光路変更面は反射面22aと、屈折面である入射面22d及び出射面22eであり、いずれも平面である。
プリズム22に入射した光は、反射と屈折を組み合わせて光路が変更され、硬貨の側方から硬貨に照射される。
【0062】
図9(a)は、光路変更部の一例としての屈折部材である回折格子を模式的に示す斜視図であり、
図9(b)は
図9(a)に示す回折格子の側面図である。
図9(c)は
図9(a)及び
図9(b)に示す光路変更部を硬貨画像センサ1fに配置する位置の例を模式的に示す上面図である。
図9(a)及び
図9(b)に示す屈折部材としての回折格子23では、回折格子(スリット)は出射面23eに形成されているものとする。なお、回折格子(スリット)は入射面に形成されていてもよい。
光路変更面は回折格子が形成された面である出射面23eとする。出射面23eは平面である。回折格子23に入射した光は回折格子23で屈折してその光路が変更され、硬貨の側方から硬貨に照射される。
回折格子の形状は、矩形でもよく、1次回折強度の大きいブレーズ形状でもよい。
【0063】
図10(a)は、光路変更部の一例としての、光路変更面が曲面の反射部材であるプリズムを模式的に示す斜視図であり、
図10(b)に示す光路変更部を硬貨画像センサ1gに配置する位置の例を模式的に示す上面図である。
図10(a)に示すプリズム24は、反射面24aが曲面となっている。そのため、レンズ効果が生じて、プリズム24に入射した光が集光され、反射とともに光路が変更されて、硬貨の側方から硬貨に照射される。
光が集光されたところを、受光部の検出位置に硬貨の中心が達したときに硬貨の直径部分にすることにより、硬貨の直径の測定精度をより高めることができる。
光路変更部が曲面の反射部材である場合に、樹脂成形品を用いてもよい。
【0064】
光源部は、棒状の導光体を備えるものに限定されない。
以下、光源部の変形例について説明する。
光源部は、棒線状の導光体として、扇状の導光体を備えていてもよい。
図11は、扇状の導光体を備える硬貨画像センサの例を模式的に示す斜視図である。
図11には、光源部としての扇状の導光体を備える硬貨画像センサ1hを示している。
硬貨画像センサ1hは、光路変更部を2つ(光路変更部12a、12c)備えており、光路変更部12a及び光路変更部12cはいずれも反射部材である。
光源部11cからは、硬貨Cの表面に向かう光L1と硬貨Cの表面以外に向かう光L2が照射される。硬貨Cの表面以外に向かう光L2は、光路変更部12a、12cでそれぞれの光路が変更されて、硬貨Cの側方から硬貨Cに照射される。
【0065】
光源部は、複数の発光素子を線状に並べてなるものであってもよい。
図12は、複数の発光素子を備える硬貨画像センサの例を模式的に示す斜視図である。
図12には、光源部として複数の発光素子を備える硬貨画像センサ1iを示している。
硬貨画像センサ1iは、光路変更部を2つ(光路変更部12a、12c)備えており、光路変更部12a及び光路変更部12cはいずれも反射部材である。
発光素子として、硬貨Cの表面に向かう光L1を照射する発光素子14b、硬貨Cの表面以外に向かう光L2を照射する発光素子14a、14cを示している。
発光素子14b、14a、14cの数は特に限定されるものではない。発光素子14b、14a、14cの参照符号は代表して1つの発光素子にだけ付している。
【0066】
複数の発光素子が線状に並べられることにより、発光素子は全体として線状の光線を照射できる光源部となる。また、発光素子は直線状に並べられていてもよく、扇状等の曲線状に並べられていてもよい。
図12には扇状に発光素子が並べられた例を示している。
【0067】
発光素子14a、14cから照射され、硬貨Cの表面以外に向かう光L2は、光路変更部12a、12cでそれぞれの光路が変更されて、硬貨Cの側方から硬貨Cに照射される。
【0068】
(実施形態2)
本開示に係る硬貨画像センサは、光源部と受光部が設置される、一方の面が開口した箱状の筐体と、筐体の開口に設けられた板状の透明部と、をさらに備え、光路変更部は、前記透明部の硬貨が接触する面の反対側の面に配置されていてもよい。
図13は、硬貨画像センサの一例を模式的に示す上面図であり、
図14は、
図13に示す硬貨画像センサのY-Z面断面図である。
【0069】
図13及び
図14に示す硬貨画像センサ1jは、一方の面が開口した箱状の筐体119と、筐体119の開口に設けられた板状の透明部121とを備える。
また、筐体119内には光源部11a、光源部11b及び受光部13が設置されている。
透明部121に硬貨Cの表面が接触して硬貨Cが搬送される。
透明部121の硬貨が接触する面の反対側の面には光路変更部12a及び光路変更部12bが設けられている。
【0070】
光路変更部が設けられた透明部について説明する。
図15(a)は、光路変更部が設けられた透明部の一例を模式的に示す上面図であり、
図15(b)は
図15(a)に示す透明部のB-B線断面図である。
図15(a)には透明部121の第1面121aと第2面121bを示している。第1面121aが硬貨Cが接触する面(搬送面)であり、第1面121aと反対側の面である第2面121bに光路変更部12a及び光路変更部12bが配置されている。
【0071】
透明部121はサファイアガラス等のガラス(カバーガラス)であってもよい。また、光路変更部と透明部の材質は同じであってもよく異なっていてもよい。光路変更部をガラス又は透明樹脂等の材料で所定形状に作製して、光路変更部を透明部に接着することで一体化してもよい。
【0072】
透明部は、従来の硬貨画像センサが備える部材であり、硬貨Cの表面が透明部に接触して搬送される。透明部の硬貨が接触する面の反対側の面に光路変更部を設ける場合、光路変更部が硬貨の搬送を阻害しない。また、光路変更部を透明部に設ける場合、透明部を備える従来の硬貨画像センサにおいて透明部を交換するだけでよいので、装置構成が簡便である。そのため、低コストで硬貨画像における硬貨の外周部のコントラストを改善することができる。
【0073】
また、本開示に係る硬貨画像センサは、光源部と受光部が設置される、一方の面が開口した箱状の筐体と、筐体の開口に設けられた板状の透明部と、をさらに備え、光源部が透明部に向けて線状の光線を照射し、線状の光線の中央部の光成分は、透明部を透過して硬貨の表面に照射され、線状の光線の少なくとも一方の端部に位置する光成分は、光路変更部によって光路が変更されて硬貨の側方から硬貨に照射されていてもよい。
【0074】
図14には、光源部として光源部11aのみを示しており、光源部11aから照射されて透明部121を透過して硬貨の表面に照射される光L1と、硬貨の表面以外に向かう光L2を示している。
光源部11aから透明部121に向けて照射される光線は線状の光線であり、線状の光線の中央部の光成分が透明部121を透過して硬貨の表面に照射される光L1となる。線状の光線の端部に位置する光成分は硬貨の表面以外に向かう光L2であり、光路変更部によって光L2の光路が変更されて硬貨の側方から硬貨に照射される。
図14には、光源部11aから照射され、光路変更部12aで光路が変更される光L2を示している。
図13に示す硬貨画像センサ1jは
図14には図示しない光源部11bを備えている。
図13に示すように、光路変更部12bでは、この光源部11bから照射された光L2の光路が変更される。
図14では、光路変更部12bに関連する光路は示していない。
【0075】
(実施形態3)
図16は、硬貨画像センサの一例を模式的に示す斜視図であり、
図17は、
図16に示す硬貨画像センサの構成の一例を説明する斜視分解模式図である。
【0076】
図16及び
図17に示す硬貨画像センサ110は、2つの光源部111a、光源部111b、光路変更部12a、12b、受光部113及び基板114を備えている。光源部111a、111bは、それぞれ、棒線状の導光体115と、導光体115の各端面に対向し、複数波長の光をそれぞれ照射する複数種の発光素子116とを備え、硬貨Cの受光部113側の表面に、複数波長の光を順次照射する。各導光体115の両端部は、それぞれホルダ117に形成された孔に挿入されることによってホルダ117に保持され、各ホルダ117に隣接して発光素子116が実装された基板118が配置されている。集光レンズ112は、例えば、硬貨画像センサの主走査方向(Y方向)に複数のロッドレンズが配列されたロッドレンズアレイから構成され、光源部111a及び光源部111bから出射され、硬貨Cの表面で反射された光を集光する。これらの部材は、一方の面が開口した箱状の筐体119内に組み込まれ、筐体119の開口が板状の透明部121で覆われている。
透明部121の第2面121bに光路変更部12a及び光路変更部12bが配置されている。
受光部113は、例えば、硬貨画像センサの主走査方向(Y方向)に複数の受光素子(受光画素)が配列されたリニアイメージセンサを備えており、各受光素子は、光源部111a及び光源部111bが照射する複数波長の光の波長帯域に感度をもつ。
各受光素子には、例えば、少なくとも可視領域から波長1100nmの赤外領域まで感度をもつ、シリコン(Si)フォトダイオードを用いることができる。各受光素子は、筐体119の背面側に取り付けられる基板114上に実装されており、集光レンズ112によって集光された光を受光して、入射光量に応じた電気信号に変換して基板114に出力する。各受光素子は、光源部111a及び光源部111bによる各波長の光の照射タイミングに合わせて当該波長の光を受光する。基板114は、例えば、受光素子を駆動するための駆動回路と、受光素子からの信号を処理して出力するための信号処理回路とを含んでいる。基板114は、受光部113(各受光素子)の出力信号を増幅処理した後、デジタルデータにA/D変換した上で出力する。
筐体119には空気の流通用の通気孔123が複数形成されている。空気が流通することで透明部121の結露を防止することができる。
【0077】
(実施形態4)
本開示の硬貨画像センサは、硬貨識別装置及び硬貨処理装置に使用することができる。
以下には、本開示の硬貨画像センサを備える硬貨識別装置の例、及び当該硬貨識別装置を備える本開示の硬貨処理装置の例について説明する。
以下に説明する本開示の硬貨処理装置は、本開示の硬貨画像センサを備える硬貨識別装置を備えることから、本開示の硬貨画像センサを備える硬貨処理装置である。
図18は、硬貨識別装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図19は、硬貨識別装置の構成の例を模式的に示すブロック図である。
【0078】
図18に示す硬貨識別装置100は、搬送路の上流側から下流側に向かって順に、磁気検知センサ150、硬貨画像センサ110、正損検知センサ(光学検知センサ)160、燐光検知センサ170及び蛍光検知センサ180を備え、これら複数のセンサが一体化されたものである。
図18中の矢印は、搬送路を通過する硬貨Cの搬送方向を示している。
【0079】
硬貨識別装置において、硬貨画像センサの周辺には、他の各種センサが併設されてもよい。硬貨Cの各検知要素に対応して個別のセンサが配置されていることで、高精度な検知が可能となり、硬貨識別装置の識別能力(識別精度)が向上する。また、多種多様な硬貨Cについて金種判定が可能となり、グローバルに適用可能なセンサユニットとすることができる。更に、複数のセンサを複合一体化することによって、コスト低減及び省スペース化が図れる。硬貨画像センサ以外のセンサについては、硬貨識別装置の分野において一般的なセンサを適用可能であることから、詳細な説明は省略する。
【0080】
図18に示す硬貨識別装置100は、硬貨Cを搬送方向に沿って搬送する搬送部190を備えており、多数の硬貨を連続的に搬送して硬貨画像センサ110において連続的に硬貨画像を取得させることができるようになっていてもよい。
硬貨Cを搬送する搬送部190として、例えば、搬送路に沿って搬送面の上方(+Z方向側)に張られた搬送ベルト190aと、搬送ベルト190aに対して一定間隔で固定された搬送ピン190bが設けられた構成のものを使用することができる。
搬送ベルト190aは、プーリー、モータ等を備える駆動装置によって駆動される。円柱状の搬送ピン190bが硬貨Cの外縁部に接触し、搬送ベルト190aが移動することによって、硬貨Cは、一枚ずつ間隔を空けて搬送路を搬送される。なお、搬送部190の構成は、硬貨Cを搬送することができるものであれば図示した構成に限定されず、搬送ピン190bを省略して搬送ベルト190aのみとしてもよいし、搬送ピン190bの形状及び大きさを変更してもよい。搬送ピン190bが省略される場合には、搬送ベルト190aが硬貨Cの表面を押さえつつ硬貨Cとともに移動する。搬送ベルト190aを設けることにより、搬送路の表面や搬送ガイドに硬貨Cを接触させた状態で摺動させることができるので、硬貨画像センサ110等のセンサによる検出の精度を向上することができる。また、搬送ピン190bを設けることによっても、硬貨Cの搬送中の位置を規制することができるので、硬貨画像センサ110等のセンサによる検出の精度を向上することができる。硬貨Cは、搬送路の端部に片寄せされた状態で、搬送面を摺動することができる。
なお、本開示の硬貨画像センサを備える硬貨識別装置は、搬送されていない硬貨を撮像する装置であってもよい。
また、硬貨画像センサが備える光路変更部の形状が、搬送方向に対して傾いている形状であってもよい。
【0081】
また、
図19に示すように、硬貨識別装置100は、硬貨画像センサ110において取得した硬貨画像を使用して、硬貨Cの種類、真偽、正損(汚損)等を識別・判定するための識別部181及び記憶部182を備えていてもよい。
記憶部182は、処理対象の硬貨Cに関する硬貨情報を格納しており、硬貨Cの処理に伴い、硬貨画像センサ110で撮像された硬貨画像(識別処理用画像)を格納するものである。識別部181は、硬貨情報と識別処理用画像とを対比することにより、硬貨Cの種類、真偽、正損(汚損)等を識別・判定するものである。
【0082】
識別部の物理的な構成としては、例えば、各種の処理を実現するためのソフトウェアプログラム、当該ソフトウェアプログラムを実行するCPU(中央処理装置)、当該CPUによって制御される各種ハードウェア(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array))等を含むものが挙げられる。各部の動作に必要なソフトウェアプログラムやデータの保存には、記憶部や、別途専用に設けられたRAMやROM等のメモリ、ハードディスク等が利用される。
【0083】
記憶部の物理的な構成としては、例えば、揮発性又は不揮発性のメモリやハードディスク等の記憶装置が挙げられる。記憶部は、硬貨識別装置で行われる処理に必要な各種のデータを記憶するために利用される。
【0084】
本開示の硬貨画像センサを備える硬貨識別装置は、本開示の硬貨処理装置に使用することができる。
硬貨処理装置は、硬貨識別装置に加えて、硬貨の識別以外の機能を有する部分を備える。
硬貨処理装置は、硬貨の入出金処理、包装硬貨の生成、包装硬貨の出金処理などを行うように構成されている。なお、包装硬貨は、所定枚数(例えば50枚)の硬貨によって構成され、これらの所定枚数の硬貨は、包装材で包装されていてもよい。
【0085】
図20は、硬貨処理装置の一例を模式的に示す斜視図である。
硬貨処理装置2としては、筐体200内に硬貨識別装置100(
図20には図示せず)を備え、さらに、硬貨投入部201、リジェクト部206、返却箱207、出金箱210、回収部211、包装硬貨出金部231、包装硬貨一括箱232、包装硬貨投出部233等を備えている。
これらの構成部材は硬貨処理装置2の筐体200内に収納させることができる。
また、硬貨処理装置2は、筐体200の外に操作表示部260を備えていてもよい。
【0086】
硬貨投入部201は、処理対象の硬貨を投入する部分である。
リジェクト部206は、硬貨識別装置100において識別され、リジェクトすべきであると識別された硬貨(リジェクト硬貨)が導かれる部分である。
返却箱207は、返却すべき硬貨を収納するように構成されている。返却箱207は、硬貨処理装置2の筐体200に対して着脱可能に構成され、筐体200の前面から引き出し可能となっている。
出金箱210は、払い出される硬貨が収納される部分である。出金箱210は、硬貨処理装置2の筐体200に対して着脱可能に構成され、筐体200の前面から引き出し可能となっている。
回収部211は、回収すべき硬貨を収納する部分である。回収部211は、硬貨処理装置2の筐体200に対して着脱可能に構成され、筐体200の前面から引き出し可能となっている。
【0087】
包装硬貨出金部231は、包装硬貨(払い出すべき包装硬貨)を集積する部分である。包装硬貨出金部231には、硬貨処理装置2の筐体200の前面に開口する出金口が設けられ、その出金口にはシャッタが設けられている。そして、シャッタが開状態となることにより、操作者は、包装硬貨出金部231から包装硬貨を取り出すことができる。
包装硬貨一括箱232は、包装硬貨(払い出すべき包装硬貨)を集積する部分であり、包装硬貨出金部231よりも集積容量が大きくなっている。包装硬貨一括箱232は、硬貨処理装置2(具体的には筐体200)に対して着脱可能に構成されている。
包装硬貨投出部233は、包装硬貨を硬貨処理装置2の外部へ投出する部分である。
【0088】
操作表示部260は、操作者による操作が与えられ、その操作者による操作に応じて情報を入力するように構成されている。これにより、操作者は、硬貨処理装置2に各種処理を行わせることができる。
【0089】
ここまでの実施形態で説明した硬貨画像センサ、硬貨識別装置及び硬貨処理装置においては、受光部としてラインセンサを用いていてもよく、受光部としてエリアセンサを使用してもよい。
また、この硬貨画像センサ、硬貨識別装置及び硬貨処理装置を硬貨以外の対象物に対して使用してもよく、紙幣を含む紙葉類に対して用いてもよい。例えば紙幣の折れ券やしわ券の検出のために使用してもよい。
【0090】
以下には、硬貨画像センサに適用可能な他の実施形態の例について説明する
当該実施形態は、本開示の硬貨画像センサに適用されていてもよいし、本開示の硬貨画像センサ以外の硬貨画像センサに適用されていてもよい。
【0091】
(他の実施形態)
他の実施形態に係る硬貨画像センサは、硬貨の搬送面において硬貨の搬送方向に直交する方向に沿って並んだ複数の変位センサを備える。
当該複数の変位センサは、硬貨の搬送面を上面視して、硬貨の搬送方向に直交する向きを上下方向とした際に、硬貨の中心に対して上側及び下側にそれぞれ設けられていてもよい。
変位センサは、硬貨の中心に対して上側、下側及び中心付近の3箇所を含んで設けられていてもよい。
【0092】
搬送された硬貨に対して変位センサによる測定を行うことで、当該変位センサの位置での搬送方向に沿った移動量及び高さの移動量(浮き)を測定できる。
以下に、具体的な実施形態の例について説明する。
【0093】
図21は、変位センサを備える硬貨画像センサの一例を模式的に示す上面図である。
変位センサ300a、300bは、硬貨画像センサの筐体119に対して、搬送路の上流側に設けられている。また、変位センサ300a、300bは硬貨に対して上方(+Z方向側)に設けられている。
なお、
図16及び
図17に示す硬貨画像センサを使用することができる。
図21以降の各図には筐体119及び受光部113を示している。変位センサと合わせて使用する硬貨画像センサには光路変更部が設けられていなくてもよい。
【0094】
以下に示す図面での説明において、変位センサ300a、変位センサ300bによって測定された搬送方向に沿った移動量の大小を矢印での長さで示す。矢印の長さが長い方が測定された移動量が大きいものとする。
また、硬貨の移動は図中左から右(+X方向)に沿っているものとする。
硬貨Cは、搬送部190により搬送方向(X方向)に沿って搬送され、変位センサの下方(-Z方向)を通過する。
なお、変位センサによる単位時間当たりの移動量は[変位センサで測定した移動量/サンプリング周期]により求められる。
【0095】
図22は、変位センサによる硬貨の移動量の測定の一例を模式的に示す上面図である。
図22では、硬貨Cは回転せずに搬送方向に沿って移動をしており、変位センサ300a、変位センサ300bで測定された移動量は同じである。
【0096】
図23は、変位センサによる硬貨の移動量の測定の別の一例を模式的に示す上面図である。
図23では、硬貨Cは時計回りに回転しながら搬送方向に沿って移動している。この場合、変位センサ300aで測定された移動量が変位センサ300bで測定された移動量よりも小さくなる。
【0097】
図24(a)及び
図24(b)は、変位センサによる硬貨の移動量の測定を、経時的に示した一例を模式的に示す上面図である。
図24(a)は変位センサ300a、変位センサ300bを硬貨Cの先端が通過する時点を示しており、
図24(b)は変位センサ300a、変位センサ300bを硬貨Cの後端が通過する時点を示している。
図24(a)及び
図24(b)で測定される変位センサでの移動量が同じであるので、硬貨は等速直線運動をしているといえる。
【0098】
図25(a)及び
図25(b)は、変位センサによる硬貨の移動量の測定を、経時的に示した別の一例を模式的に示す上面図である。
図25(a)は変位センサ300a、変位センサ300bを硬貨Cの先端が通過する時点を示しており、
図25(b)は変位センサ300a、変位センサ300bを硬貨Cの後端が通過する時点を示している。
図25(a)で測定される変位センサ300a、変位センサ300bでの移動量が、
図25(b)で測定される300a、変位センサ300bでの移動量より小さいので、硬貨は加速されながら移動しているといえる。
【0099】
変位センサごとに移動量の違いがある場合、移動量に応じた画像補正(平行移動、回転角の算出と補正)を行うことにより、歪みのない画像を得ることができる。
【0100】
以上、図面を参照しながら各実施形態を説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本開示の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように、本開示は、硬貨画像における硬貨の外周部の画像のコントラストを改善するのに有用な技術である。
【符号の説明】
【0102】
1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1i,1j:硬貨画像センサ
2:硬貨処理装置
11、11a、11b、11c:光源部
12、12a、12b、12c:光路変更部
13:受光部
14a、14b、14c:発光素子
21、22、22b、22c、24:プリズム
21a、22a、24a:反射面
23:回折格子
22d:入射面(屈折面)
22e、23e:出射面(屈折面)
100:硬貨識別装置
110:硬貨画像センサ
111a、111b:光源部
112:集光レンズ
113:受光部
114:基板
115:導光体
116:発光素子
117:ホルダ
118:基板
119:筐体(硬貨画像センサの筐体)
121:透明部
121a:透明部の第1面(搬送面)
121b:透明部の第2面
123:通気孔
150:磁気検知センサ
160:正損検知センサ(光学検知センサ)
170:燐光検知センサ
180:蛍光検知センサ
181:識別部
182:記憶部
190:搬送部
190a:搬送ベルト
190b:搬送ピン
200:筐体(硬貨処理装置の筐体)
201:硬貨投入部
206:リジェクト部
207:返却箱
210:出金箱
211:回収部
231:包装硬貨出金部
232:包装硬貨一括箱
233:包装硬貨投出部
260:操作表示部
300a、300b:変位センサ
C:硬貨
Cb:硬貨の裏面
Ce:硬貨のエッジ部
Cf:硬貨の表面(おもてめん)
Cs:硬貨の側面
L1:硬貨の表面に向かう光
L2:硬貨の表面以外に向かう光
R1:硬貨が光L1で照射された部分
R2:硬貨が光L2で照射された部分