(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136786
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】散水システム
(51)【国際特許分類】
H02S 40/42 20140101AFI20230922BHJP
B05B 12/12 20060101ALI20230922BHJP
H02S 50/00 20140101ALI20230922BHJP
【FI】
H02S40/42
B05B12/12
H02S50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042668
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】森 豊
(72)【発明者】
【氏名】原田 真宏
【テーマコード(参考)】
4F035
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
4F035AA01
4F035BB16
4F035BB35
5F151JA15
5F151JA30
5F151KA03
5F251JA15
5F251JA30
5F251KA03
(57)【要約】
【課題】簡易な構成によりインバランスの低減を図ることが可能な散水システムを提供する。
【解決手段】太陽光を利用して発電可能な太陽光パネル2に対して散水を行う散水装置10と、太陽光パネル2の温度を計測可能なパネル温度計20と、予め決定された太陽光パネル2の計画上の発電量である計画発電量と、散水装置10による散水が行われない場合の太陽光パネル2の発電量である未調整発電量と、を取得可能な情報取得部(制御装置30)と、計画発電量と未調整発電量とに基づいて、計画発電量及び未調整発電量の差分を補填可能な調整後発電量を算出し、調整後発電量と太陽光パネル2の温度とに基づいて、太陽光パネル2が調整後発電量で発電するように、散水装置10の散水条件を決定する散水条件決定部(制御装置30)と、散水条件に基づいて散水を行うように散水装置10を制御する散水制御部(制御装置30)と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を利用して発電可能な太陽光発電部に対して散水を行う散水装置と、
前記太陽光発電部の温度を計測可能な温度計測部と、
予め決定された前記太陽光発電部の計画上の発電量である計画発電量と、前記散水装置による散水が行われない場合の前記太陽光発電部の発電量である未調整発電量と、を取得可能な情報取得部と、
前記計画発電量と前記未調整発電量とに基づいて、前記計画発電量及び前記未調整発電量の差分を補填可能な調整後発電量を算出し、前記調整後発電量と前記太陽光発電部の温度とに基づいて、前記太陽光発電部が前記調整後発電量で発電するように、前記散水装置の散水条件を決定する散水条件決定部と、
前記散水条件に基づいて散水を行うように前記散水装置を制御する散水制御部と、
を具備する、
散水システム。
【請求項2】
前記情報取得部は、
所定の単位時間の前半である観測期間における前記未調整発電量を取得し、
前記散水条件決定部は、
前記計画発電量及び前記未調整発電量の差分を、前記単位時間の後半である調整期間において補填可能なように、前記調整後発電量を算出する、
請求項1に記載の散水システム。
【請求項3】
前記散水条件決定部は、
前記太陽光発電部の発電量と、前記太陽光発電部の温度と、の関係を示す第一特性データに基づいて、前記調整後発電量で前記太陽光発電部を発電可能な温度である調整後温度を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の散水システム。
【請求項4】
前記散水条件決定部は、
前記太陽光発電部の温度と、前記散水条件と、の関係を示す第二特性データに基づいて、前記太陽光発電部の温度が前記調整後温度となる前記散水条件を決定する、
請求項3に記載の散水システム。
【請求項5】
前記散水条件には、散水量が含まれ、
前記散水装置は、
前記散水量を調節可能な散水量調節装置を具備し、
前記散水制御部は、
前記散水量調節装置を制御することで、前記太陽光発電部を前記調整後発電量で発電させる、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の散水システム。
【請求項6】
前記散水条件には、散水温度が含まれ、
前記散水装置は、
前記散水温度を調節可能な温度調節装置を具備し、
前記散水制御部は、
前記温度調節装置を制御することで、前記太陽光発電部を前記調整後発電量で発電させる、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の散水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電部に対して散水を行う散水システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電パネル装置を用いた発電に関する技術が公知となっている。太陽光発電パネル装置を用いた発電事業(太陽光発電事業)においては、発電計画と発電実績との差であるインバランスの費用負担が求められる場合がある。このため、インバランスを低減可能なシステムが求められる。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、太陽光を用いて発電可能な太陽光発電システムと、太陽光発電システムによって発電された電力を利用して水素を製造可能な水素製造システムと、を備えた電源システムが記載されている。特許文献1に記載の電源システムにおいては、太陽光発電システムの発電電力の余剰電力を用いて、水素製造システムを運転させることにより、インバランスの低減を図っている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明は煩雑な構成が必要となるため、簡易な構成によりインバランスの低減を図ることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、簡易な構成によりインバランスの低減を図ることが可能な散水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、太陽光を利用して発電可能な太陽光発電部に対して散水を行う散水装置と、前記太陽光発電部の温度を計測可能な温度計測部と、予め決定された前記太陽光発電部の計画上の発電量である計画発電量と、前記散水装置による散水が行われない場合の前記太陽光発電部の発電量である未調整発電量と、を取得可能な情報取得部と、前記計画発電量と前記未調整発電量とに基づいて、前記計画発電量及び前記未調整発電量の差分を補填可能な調整後発電量を算出し、前記調整後発電量と前記太陽光発電部の温度とに基づいて、前記太陽光発電部が前記調整後発電量で発電するように、前記散水装置の散水条件を決定する散水条件決定部と、前記散水条件に基づいて散水を行うように前記散水装置を制御する散水制御部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記情報取得部は、所定の単位時間の前半である観測期間における前記未調整発電量を取得し、前記散水条件決定部は、前記計画発電量及び前記未調整発電量の差分を、前記単位時間の後半である調整期間において補填可能なように、前記調整後発電量を算出するものである。
【0010】
請求項3においては、前記散水条件決定部は、前記太陽光発電部の発電量と、前記太陽光発電部の温度と、の関係を示す第一特性データに基づいて、前記調整後発電量で前記太陽光発電部を発電可能な温度である調整後温度を算出するものである。
【0011】
請求項4においては、前記散水条件決定部は、前記太陽光発電部の温度と、前記散水条件と、の関係を示す第二特性データに基づいて、前記太陽光発電部の温度が前記調整後温度となる前記散水条件を決定するものである。
【0012】
請求項5においては、前記散水条件には、散水量が含まれ、前記散水装置は、前記散水量を調節可能な散水量調節装置を具備し、前記散水制御部は、前記散水量調節装置を制御することで、前記太陽光発電部を前記調整後発電量で発電させるものである。
【0013】
請求項6においては、前記散水条件には、散水温度が含まれ、前記散水装置は、前記散水温度を調節可能な温度調節装置を具備し、前記散水制御部は、前記温度調節装置を制御することで、前記太陽光発電部を前記調整後発電量で発電させるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、インバランスの低減を図ることができる。
【0016】
請求項2においては、より効果的にインバランスの低減を図ることができる。
【0017】
請求項3においては、太陽光発電部の温度と発電量との関係に基づいて調整後温度を算出することで、好適な散水条件を決定することができる。
【0018】
請求項4においては、太陽光発電部の温度と散水条件との関係に基づいて、好適な散水条件を決定することができる。
【0019】
請求項5においては、散水量を調節することにより、太陽光発電部を所望の出力で動作させことができる。
【0020】
請求項6においては、散水温度を調節することにより、太陽光発電部を所望の出力で動作させことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る散水システムの構成を示した模式図。
【
図2】(a)パネル温度と太陽光パネルの出力との関係を示すグラフ。(b)散水量と散水温度とパネル温度変化との関係を示すグラフ。
【
図3】散水システムの制御態様を示したフローチャート。
【
図4】本実施形態に係る制御の様子を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る散水システム1の構成について説明する。
【0023】
本実施形態に係る散水システム1は、太陽光パネル2に対して散水を行うことで、太陽光パネル2の出力を制御するものである。散水システム1及び太陽光パネル2は、所定の事業者(以下、「当該事業者」とも称する)の施設(工場等)に設けられる。
【0024】
太陽光パネル2は、太陽光を利用して発電可能なものである。太陽光パネル2により得られる電力は、再生可能エネルギー(RE)である太陽光に由来するものである。太陽光パネル2は、例えば、施設(工場等)の屋根等の日当たりの良い場所に設置される。太陽光パネル2は、太陽光を受け易い傾斜角度となるように、適宜の支持具を用いて設置される。
【0025】
当該事業者の施設には、太陽光パネル2により得られる電力を充放電可能な蓄電池や、上記電力を適宜変換可能なパワコン(パワーコンディショナ)、上記蓄電池及びパワコンの動作を制御可能なEMS(エネルギーマネジメントシステム)が設けられている。なお
図1では、蓄電池、パワコン及びEMSの図示は省略している。EMSは、図示せぬ各種センサを用いて、太陽光パネル2の出力(発電量)や蓄電池の充電量等の情報を取得することができる。
【0026】
ここで、電力の同時同量達成のため、当該事業者においては、事前に計画された発電計画と、実績値としての発電量とを、30分単位のデマンド期間(単位時間)において一致させる必要がある。仮に計画上の発電量(計画発電量)と実際の発電量(実測発電量)とが一致しない(インバランスが発生した)場合、当該事業者にはペナルティ(事後的な料金精算)が課せられる場合がある。
【0027】
しかしながら、太陽光パネル2を用いた発電は、当該太陽光パネル2の温度に応じて出力が変動するため、実測発電量が予想(計画)通りにならない場合がある。このため、実測発電量が計画発電量を下回ったり、超過することでインバランスが生じることが想定される。
【0028】
本実施形態に係る散水システム1は、太陽光パネル2に対して散水を行うことにより、太陽光パネル2の出力を制御することで、インバランスの低減を図ることができる。散水システム1は、主として散水装置10、パネル温度計20及び制御装置30を具備する。
【0029】
散水装置10は、太陽光パネル2に対して散水を行うものである。散水装置10は、太陽光パネル2への散水を実行可能な位置(例えば太陽光パネル2の近傍)に設置される。散水装置10は、雨水等を利用した散水を実行可能である。散水装置10は、水処理装置11、貯水タンク12、ポンプ13、散水部14及び温度調節装置15を具備する。
【0030】
水処理装置11は、雨水を散水に利用できるように濾過等の処理を行うものである。水処理装置11は、雨水や太陽光パネル2に散水された水を受ける装置(例えば雨樋)にパイプを介して接続される。
【0031】
貯水タンク12は、水処理装置11によって処理された水を貯水するものである。貯水タンク12は、水処理装置11にパイプを介して接続される。
【0032】
ポンプ13は、貯水タンク12に貯水された水を揚水するものである。ポンプ13は、電力により動作する。ポンプ13は、貯水タンク12にパイプを介して接続される。
【0033】
散水部14は、ポンプ13により揚水された水を、太陽光パネル2に対して散水(散布)する部分である。散水部14は、太陽光パネル2の上方に設置される。散水部14は、ポンプ13にパイプを介して接続される。
【0034】
温度調節装置15は、散水部14により散水される水の温度(散水温度)を任意の温度に調節可能なものである。温度調節装置15は、ポンプ13と散水部14とを接続するパイプの途中に設けられる。温度調節装置15は、例えば水道水を利用して散水部14に供給される水を冷却することができる。なお、温度調節装置15としては、上述した構成に限定されず、例えば適宜の熱交換器を用いた温度調節を行う構成としてもよく、水の温度を調節可能な種々の装置を採用可能である。また、温度調節装置15としては、水の冷却だけでなく、昇温可能な装置を採用可能である。
【0035】
上述の如き散水装置10のポンプ13を動作させることで、太陽光パネル2に対する散水を行い、太陽光パネル2の温度を調節(例えば冷却)することができる。太陽光パネル2に散水された水は、水処理装置11により処理された後、再度散水に利用可能である。また、散水装置10は、太陽光パネル2の温度調節だけでなく、太陽光パネル2の上に積もった雪の融雪(消雪)や、太陽光パネル2の表面の洗浄等にも利用可能である。
【0036】
パネル温度計20は、太陽光パネル2の温度(パネル温度)を計測可能なものである。パネル温度計20は、適宜の支持具を用いて、太陽光パネル2の温度(例えばパネル表面の温度)を計測可能に設置される。パネル温度計20としては、接触式のものや非接触式のもの等、太陽光パネル2の温度を計測可能な種々の温度計(温度センサ)を採用可能である。
【0037】
制御装置30は、各種の情報の処理が可能なものである。制御装置30は、ポンプ13、温度調節装置15及びパネル温度計20と電気的に接続されている。制御装置30としては、例えばEMSを採用してもよく、EMS以外の種々の制御装置を採用してもよい。制御装置30は、ポンプ13及び温度調節装置15の動作(出力)の制御を実行することができる。また、制御装置30は、パネル温度計20の計測結果を取得することができる。
【0038】
また、制御装置30は、適宜の通信手段を介して外部の機器との通信を行うことで、太陽光パネル2による発電に関するデータ(発電所データ)を取得することができる。発電所データには、計画発電量のデータと、太陽光パネル2による実測発電量のデータ等が含まれる。実測発電量のデータは、例えば、太陽光パネル2に接続されたEMSから取得可能である。
【0039】
また、制御装置30は、以下の太陽光パネル2の特性に関するデータ(特性データ)を取得可能である。特性データには、「パネル温度‐出力特性」、「散水量‐散水温度‐パネル温度特性」及び「その他の特性」が含まれる。
【0040】
「パネル温度‐出力特性」は、太陽光パネル2のパネル温度と、太陽光パネル2の出力(kWh)と、の関係を示すデータである。
図2(a)に示すように、太陽光パネル2は、パネル温度が低下する程出力が増加し、パネル温度が上昇する程出力が低下する特性を有する。
【0041】
「散水量‐散水温度‐パネル温度特性」は、太陽光パネル2に対して散水される水の量である「散水量」と、散水される水の温度である「散水温度」と、太陽光パネル2の温度の変化を示す「パネル温度の変化」と、の関係を示すデータである。ここで、「パネル温度の変化」とは、太陽光パネル2に散水を行った場合の、散水前のパネル温度に対する相対的なパネル温度の変化(散水前のパネル温度に対して何℃上昇又は低下したか)を示すものである。また、「散水温度」は、散水を行う前のパネル温度に対する相対的な温度(パネル温度に対して何℃高い又は低いか)を示すものである。
図2(b)では、散水温度を異ならせた複数(6つ)のパターンごとに、散水量とパネル温度の変化との関係を示している。
【0042】
図2(b)に示すように、太陽光パネル2は、散水温度が比較的低い場合(下側の3つのパターンでは)、散水量が増加する程パネル温度が低下する特性を有する。この場合は、散水温度が低い程パネル温度が大きく低下する。また、太陽光パネル2は、散水温度が比較的高い場合(上側の3つのパターンでは)、散水量が増加する程パネル温度が上昇する特性を有する。この場合は、散水温度が高い程パネル温度が大きく上昇する。
【0043】
「その他の特性」は、太陽光パネル2の状態等の特性を示すデータである。その他の特性としては、例えば、太陽光パネル2の傾斜量に基づく水の流れ方(速度等)や、太陽光パネル2の材質、太陽光パネル2の経年劣化や、季節ごとの出力の傾向等が含まれる。なお、その他の特性としては、上述した例に限定されず、太陽光パネル2の状態等の特性を示す種々のデータを採用可能である。
【0044】
上述の如き散水システム1(制御装置30)は、インバランスが生じると予想される場合に、散水装置10による散水を行うことで太陽光パネル2の出力を調整し、インバランスの低減を図る処理を実行可能である。
【0045】
本実施形態では、太陽光パネル2により発電された電力が取り引きされる単位時間(例えば30分)内において、太陽光パネル2の出力を調整する。具体的には、
図4に示すように、制御装置30は、電力の取引対象の単位時間の前半(例えば15分間)の「観測期間」において、太陽光パネル2の実測発電量を観測(取得)する。また、制御装置30は、単位時間の後半(例えば15分間)の「調整期間」において、散水装置10による散水を行い、太陽光パネル2の出力(発電量)を調整してインバランスの低減を図る制御を行う。
【0046】
なお、
図4では、太陽光パネル2の計画発電量、散水による調整が行われない場合の太陽光パネル2の発電量(後述する未調整発電量)及び散水による調整が行われた場合の太陽光パネル2の発電量(後述する調整後発電量)をそれぞれ示している。
図4では、計画発電量、未調整発電量及び調整後発電量の瞬時値(ある時刻における値)を、破線、実線及び一点鎖線の折れ線グラフで示している。また、
図4では、各発電量の積算値(瞬時値を積算した値)を、棒グラフで示している。
【0047】
ここで、
図4に示す計画発電量は、予め決定された計画上の発電量を示すものである。また、未調整発電量は、散水による調整が行われない場合の発電量である。ここで、観測期間における未調整発電量は、太陽光パネル2が実際に発電した発電量(実測発電量)であり、調整期間における未調整発電量は、観測期間の実測発電量に基づいて予想(算出)された発電量である(後述するステップS11、S12を参照)。また、調整後発電量は、散水による調整が行われる場合の発電量である。調整後発電量は、観測期間における未調整発電量(実測発電量)及び計画発電量に基づいて算出される(後述するステップS13を参照)。
【0048】
以下では、散水システム1が実行する制御について、
図3及び
図4を用いて具体的に説明する。本制御は、単位時間(本実施形態では30分)が開始するタイミングで実行される。
【0049】
ステップS10において、制御装置30は、観測期間(15分間)において、太陽光パネル2の実測発電量(観測期間における未調整発電量)を取得する。ステップS10において、制御装置30は、太陽光パネル2の実測発電量の瞬時値を、所定の時間間隔ごと(例えば3分ごと)に取得する。ステップS10の処理は、観測期間の終了まで行われる。制御装置30は、ステップS10の処理を行った後、ステップS11の処理に移行する。
【0050】
ステップS11において、制御装置30は、ステップS10において取得した、観測期間における未調整発電量(実測発電量)の瞬時値の平均値を算出する。
図4に示すように、観測期間における太陽光パネル2の未調整発電量(実線で示す折れ線グラフ)は、一定の発電量である計画発電量(破線で示す折れ線グラフ)を下回っている。従って、観測期間における太陽光パネル2の未調整発電量の平均値は、計画発電量を下回っている。制御装置30は、ステップS11の処理を行った後、ステップS12の処理に移行する。
【0051】
ステップS12において、制御装置30は、ステップS11において算出された未調整発電量(実測発電量)の平均値に基づいて、「予想積算値」を算出する。ここで、「予想積算値」とは、調整期間(単位時間の後半)において、散水による調整が行われない場合に太陽光パネル2が発電すると予想される発電量の積算値である。予想積算値は、観測期間の終了時点における未調整発電量(実測発電量)の積算値に、ステップS11における未調整発電量の平均値を積算して算出される。
【0052】
より詳細には、制御装置30は、調整期間において、太陽光パネル2がステップS11において算出した平均値(瞬時値)で発電すると仮定(予想)すると共に、この場合における調整期間の未調整発電量の積算値を予想積算値として算出する。また、制御装置30は、予想積算値を、計画発電量の積算値と比較する。
【0053】
図4に示すように、調整期間の終了時点における未調整発電量の積算値は、計画発電量の積算値を下回っている。このことから、
図4に示す例においては、計画発電量に対して未調整発電量が不足することによるインバランスが生じることが予想される。制御装置30は、ステップS12の処理を行った後、ステップS13の処理に移行する。
【0054】
ステップS13において、制御装置30は、計画発電量に対する未調整発電量の不足分を調整期間において補填可能な「調整後発電量」の算出を行うと共に、太陽光パネル2が調整後発電量で発電するように、散水装置10を制御する。以下では、ステップS13において制御装置30が実行する処理の詳細を説明する。
【0055】
まず、制御装置30は、「調整後発電量」の瞬時値を算出する。具体的には、制御装置30は、予想積算値と、計画発電量の積算値と、に基づいて、調整期間の終了時点における未調整発電量(実測発電量)の不足分を無くすために、調整期間において必要な発電量(調整後発電量の瞬時値)を算出する。
図4に示すように、調整後発電量の瞬時値は、計画発電量を上回っている。
【0056】
次に、制御装置30は、太陽光パネル2が調整後発電量の瞬時値で発電するように、散水装置10の動作を制御する。散水装置10の動作の制御は、調整後発電量の瞬時値と、特性データ(「パネル温度‐出力特性」、「散水量‐散水温度‐パネル温度特性」及び「その他の特性」)と、に基づいて決定される。
【0057】
具体的には、制御装置30は、「パネル温度‐出力特性」のデータに基づいて、調整後発電量の瞬時値で太陽光パネル2を発電可能なパネル温度(調整後パネル温度)を算出する(
図2(a)を参照)。
【0058】
また、制御装置30は、「散水量‐散水温度‐パネル温度特性」のデータに基づいて、太陽光パネル2のパネル温度を、上記調整後パネル温度にする(下げる)ために必要な散水量及び散水温度を算出する(
図2(b)を参照)。上記散水量及び散水温度の算出は、「散水量‐散水温度‐パネル温度特性」のデータと、調整後パネル温度と、パネル温度計20の計測結果と、を用いて算出可能である。なお、上記算出において、例えば「その他の特性」に含まれるデータを考慮して上記散水量及び散水温度の算出を行うようにしてもよい。
【0059】
また、制御装置30は、上記算出した散水量及び散水温度となるように、散水装置10のポンプ13及び温度調節装置15の動作を制御する。このようにして、上記条件で、太陽光パネル2に対する散水装置10の散水を行うことができる。制御装置30は、ステップS13の処理を行った後、本制御を終了する。
【0060】
以上、散水システム1が実行する制御について説明した。なお、本実施形態に係る制御は一例であり、散水システム1が実行する制御は上述した例に限定されるものではなく、任意の処理を追加又は変更してもよい。また、上記説明で例示した具体的な数値は一例であり、任意に変更することが可能である。
【0061】
上述の如き散水システム1によれば、太陽光パネル2に対する散水の制御を行い、太陽光パネル2のパネル温度を低下させることで、太陽光パネル2を所望の出力(調整後発電量)で動作させて、不足する発電量を調整期間において補填することができる。これにより、取引対象となる単位時間内において、インバランスの低減を図ることができる。また、散水システム1によれば、例えば水素製造システム等の煩雑な構成の装置を用いてインバランスの低減を図るものとは異なり、簡易な構成によりインバランスの低減を図ることができる。
【0062】
以上の如く、本実施形態に係る散水システム1は、
太陽光を利用して発電可能な太陽光発電部(太陽光パネル2)に対して散水を行う散水装置10と、
前記太陽光発電部(太陽光パネル2)の温度を計測可能な温度計測部(パネル温度計20)と、
予め決定された前記太陽光発電部(太陽光パネル2)の計画上の発電量である計画発電量と、前記散水装置10による散水が行われない場合の前記太陽光発電部(太陽光パネル2)の発電量である未調整発電量と、を取得可能な(ステップS10)情報取得部(制御装置30)と、
前記計画発電量と前記未調整発電量とに基づいて、前記計画発電量及び前記未調整発電量の差分を補填可能な調整後発電量を算出し、前記調整後発電量と前記太陽光発電部(太陽光パネル2)の温度とに基づいて、前記太陽光発電部(太陽光パネル2)が前記調整後発電量で発電するように、前記散水装置10の散水条件を決定する(ステップS11~S13)散水条件決定部(制御装置30)と、
前記散水条件に基づいて散水を行うように前記散水装置10を制御する散水制御部(制御装置30)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、インバランスの低減を図ることができる。すなわち、計画発電量と、未調整発電量と、太陽光発電部(太陽光パネル2)の温度と、に基づいて太陽光発電部(太陽光パネル2)に対する散水の制御を行い、太陽光発電部(太陽光パネル2)の温度を調整することで、太陽光発電部(太陽光パネル2)を所望の出力(調整後発電量)で動作させことができる。これにより、インバランスの低減を図ることができる。
【0063】
また、情報取得部(制御装置30)は、
所定の単位時間の前半である観測期間における前記未調整発電量を取得し、
前記散水条件決定部(制御装置30)は、
前記計画発電量及び前記未調整発電量の差分を、前記単位時間の後半である調整期間において補填可能なように、前記調整後発電量を算出するものである。
このように構成することにより、より効果的にインバランスの低減を図ることができる。すなわち、電力の取引対象となる単位時間内において、計画発電量及び未調整発電量の差分を補填することができ、より効果的にインバランスの低減を図ることができる。
【0064】
また、前記散水条件決定部(制御装置30)は、
前記太陽光発電部(太陽光パネル2)の発電量と、前記太陽光発電部(太陽光パネル2)の温度と、の関係を示す第一特性データ(パネル温度‐出力特性)に基づいて、前記調整後発電量で前記太陽光発電部(太陽光パネル2)を発電可能な温度である調整後温度(調整後パネル温度)を算出するものである。
このように構成することにより、太陽光発電部(太陽光パネル2)の温度と発電量との関係に基づいて、調整後温度(調整後パネル温度)を算出することで、好適な散水条件を決定することができる。
【0065】
また、前記散水条件決定部(制御装置30)は、
前記太陽光発電部(太陽光パネル2)の温度と、前記散水条件と、の関係を示す第二特性データ(散水量‐散水温度‐パネル温度特性)に基づいて、前記太陽光発電部(太陽光パネル2)の温度が前記調整後温度(調整後パネル温度)となる前記散水条件を決定するものである。
このように構成することにより、太陽光発電部(太陽光パネル2)の温度と散水条件との関係に基づいて、好適な散水条件を決定することができる。
【0066】
また、前記散水条件には、散水量が含まれ、
前記散水装置10は、
前記散水量を調節可能な散水量調節装置(ポンプ13)を具備し、
前記散水制御部(制御装置30)は、
前記散水量調節装置(ポンプ13)を制御することで、前記太陽光発電部(太陽光パネル2)を前記調整後発電量で発電させるものである。
このように構成することにより、散水量を調節することにより、太陽光発電部(太陽光パネル2)を所望の出力(調整後発電量)で動作させことができる。
【0067】
また、前記散水条件には、散水温度が含まれ、
前記散水装置10は、
前記散水温度を調節可能な温度調節装置15を具備し、
前記散水制御部(制御装置30)は、
前記温度調節装置15を制御することで、前記太陽光発電部(太陽光パネル2)を前記調整後発電量で発電させるものである。
このように構成することにより、散水温度を調節することにより、太陽光発電部(太陽光パネル2)を所望の出力(調整後発電量)で動作させことができる。
【0068】
なお、本実施形態に係る太陽光パネル2は、本発明に係る太陽光発電部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る制御装置30は、本発明に係る情報取得部、散水条件決定部、散水制御部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るパネル温度‐出力特性は、本発明に係る第一特性データの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る散水量‐散水温度‐パネル温度特性は、本発明に係る第二特性データの実施の一形態である。
また、本実施形態に係るポンプ13は、本発明に係る散水量調節装置の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る調整後パネル温度は、本発明に係る調整後温度の実施の一形態である。
【0069】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0070】
例えば、散水システム1に、太陽光パネル2を含めるようにしてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、太陽光パネル2の出力を増加させるために、散水により太陽光パネル2を冷却する例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、太陽光パネル2の出力を低下させるために、散水により太陽光パネル2を昇温するようにしてもよい。この場合は、例えば温度調節装置15により昇温させた水を散水するようにしてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、太陽光パネル2のパネル温度を調整する際に、「パネル温度‐出力特性」及び「散水量‐散水温度‐パネル温度特性」に基づいて算出された散水条件(散水量、散水温度)で、散水装置10の動作の制御を行う例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、太陽光パネル2のパネル温度や、太陽光パネル2の発電量が所望の値となるように、パネル温度計20やパワコン(EMS)の検出値に基づいたフィードバック制御により散水装置10の動作を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 散水システム
2 太陽光パネル
10 散水装置
20 パネル温度計
30 制御装置