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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136796
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】接合構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/32 20060101AFI20230922BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H05K3/32 C
H05K3/34 508Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042685
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】水戸瀬 智久
(72)【発明者】
【氏名】池部 桐生
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 貴志
(72)【発明者】
【氏名】堀田 裕平
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AC02
5E319BB08
5E319BB09
5E319CC12
5E319GG03
(57)【要約】
【課題】カーケンダルボイドを抑制できる接合構造を提供する。
【解決手段】第2の金属層22の厚みは、第1の金属層21、金属間化合物層25、及び第2の金属層22の厚みの合計の50%以下である。これは、接合初期の状態でSnと金属間化合物を形成する金属の元素(Au)が接合構造100の中央部よりも広い範囲にまで存在することを意味する。この場合、Snと金属間化合物を形成する金属の元素の拡散のドライビングフォースとなる濃度勾配を小さくすることができ、カーケンダルボイドを抑制することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と配線基板とを接合した接合構造であって、
前記電子部品側から順に、
Snと金属間化合物を形成する金属を含む第1の金属層と、
Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層と、
Snを含む第2の金属層と、を備え、
前記第2の金属層の厚みは、前記第1の金属層、前記金属間化合物層、及び前記第2の金属層の厚みの合計の50%以下である、接合構造。
【請求項2】
前記第1の金属層は、Auを含む、請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記金属間化合物層は、前記配線基板の端子上に存在する、請求項1または2に記載の接合構造。
【請求項4】
前記配線基板の端子は、表面に形成されたNiを含む導電膜を有する、請求項1~3の何れか一項に記載の接合構造。
【請求項5】
前記第2の金属層の体積割合は、前記第1の金属層、前記金属間化合物層、及び前記第2の金属層の体積の合計の50%以下である、請求項1~4の何れか一項に記載の接合構造。
【請求項6】
前記第1の金属層の体積割合は、前記第1の金属層、前記金属間化合物層、及び前記第2の金属層の体積の合計の50%以下である、請求項1~5の何れか一項に記載の接合構造。
【請求項7】
電子部品と配線基板とを接合した接合構造であって、
前記電子部品側から順に、
Snと金属間化合物を形成する金属を含む第1の金属層と、
Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層と、を備え、
前記金属間化合物層は、前記配線基板の端子上に存在する、接合構造。
【請求項8】
前記配線基板の端子は、表面に形成されたNiを含む導電膜を有する、請求項7に記載の接合構造。
【請求項9】
電子部品と配線基板とを接合した接合構造であって、
Snと金属間化合物を形成する金属を含む第1の金属層と、
Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層と、
Snを含む第2の金属層と、を備え、
前記第2の金属層の体積割合は、前記第1の金属層、前記金属間化合物層、及び前記第2の金属層の体積の合計の50%以下である、接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子化が進み、それに伴い電子部品を基板に実装する技術の開発が進んでいる。例えば、これまで微細な電子部品の組立において、電子部品の端子に金を採用し、対向する配線基板側にはSnをメッキや薄膜成膜で施し、はんだ接合や拡散接合で接合を行っている。電子部品と配線基板をAuメッキとSnメッキで接合させる場合、接合界面には共晶反応によりAuとSnの金属間化合物が形成される傾向があった。Sn-Auはんだの課題の一つとして、Sn-Au系金属間化合物の脆さが挙げられる。その脆さを克服する方法として、金属間化合物が接合断面の面積分率として5~50%の割合で分散させる技術が開示されている(例えば特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-286531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、Snは融点が低いためSnを含む合金内では金属元素が拡散しやすい傾向にある。そのため金属間化合物が分散した組織では、Snとの金属間化合物を形成する元素がSnを含む合金中に拡散し、Snとの金属間化合物を形成する元素が存在していた箇所にカーケンダルボイドを生成する問題があった。
【0005】
本発明は、カーケンダルボイドを抑制できる接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る接合構造は、電子部品と配線基板とを接合した接合構造であって、電子部品側から順に、Snと金属間化合物を形成する金属を含む第1の金属層と、Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層と、Snを含む第2の金属層と、を備え、第2の金属層の厚みは、第1の金属層、金属間化合物層、及び第2の金属層の厚みの合計の50%以下である。
【0007】
本発明に係る接合構造において、第2の金属層の厚みは、第1の金属層、金属間化合物層、及び第2の金属層の厚みの合計の50%以下である。これは、接合初期の状態でSnと金属間化合物を形成する金属の元素が接合構造の中央部よりも広い範囲にまで存在することを意味する。この場合、Snと金属間化合物を形成する金属の元素の拡散のドライビングフォースとなる濃度勾配を小さくすることができ、カーケンダルボイドを抑制することができる。
【0008】
第1の金属層は、Auを含んでよい。AuはSnとの金属間化合物を形成し易く、かつAuはSnを含む層に拡散しやすいため、カーケンダルボイドができやすい金属の元素である。これに対し、本発明の構造を採用することで、Auを用いた場合であってもカーケンダルボイドを抑制することができる。
【0009】
金属間化合物層は、配線基板の端子上に存在してよい。配線基板の端子上にSnを含む金属間化合物層が存在することでSnとの金属間化合物を形成する金属の元素の濃度勾配が低く拡散が起き難くなり、カーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0010】
配線基板の端子は、表面に形成されたNiを含む導電膜を有してよい。Niを含む導電膜が配線基板の端子内部とSnとの金属間化合物を形成する金属の元素との反応を抑制することができる。これにより、Snとの金属間化合物を形成する金属の元素の拡散距離延伸を抑制することができ、カーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0011】
第2の金属層の体積割合は、第1の金属層、金属間化合物層、及び第2の金属層の体積の合計の50%以下であってよい。これにより、Snとの金属間化合物を形成する金属の元素が拡散しづらくなりカーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0012】
第1の金属層の体積割合は、第1の金属層、金属間化合物層、及び第2の金属層の体積の合計の50%以下であってよい。Snとの金属間化合物を形成する金属の元素を含む第1の金属層の体積を小さくすることで拡散する当該元素を少なくすることができ、カーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0013】
本発明に係る接合構造は、電子部品と配線基板とを接合した接合構造であって、電子部品側から順に、Snと金属間化合物を形成する金属を含む第1の金属層と、Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層と、を備え、金属間化合物層は、配線基板の端子上に存在する。
【0014】
本発明に係る接合構造は、共晶構造でなくSnとの金属間化合物を形成する金属を含む第1の金属層、及びSnを含む金属間化合物の積層構造である。また、金属間化合物層が、配線基板の端子上に達している。従って、拡散のドライビングフォースとなるSnとの金属間化合物を形成する金属の元素の濃度勾配を小さくすることができカーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0015】
配線基板の端子は、表面に形成されたNiを含む導電膜を有してよい。Niを含む導電膜が配線基板の端子内部とSnとの金属間化合物を形成する金属の元素との反応を抑制することができる。これにより、Snとの金属間化合物を形成する金属の元素の拡散距離延伸を抑制することができ、カーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0016】
本発明に係る接合構造は、電子部品と配線基板とを接合した接合構造であって、Snと金属間化合物を形成する金属を含む第1の金属層と、Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層と、Snを含む第2の金属層と、を備え、第2の金属層の体積割合は、第1の金属層、金属間化合物層、及び第2の金属層の体積の合計の50%以下であってよい。
【0017】
本発明に係る接合構造において、第2の金属層の体積割合は、第1の金属層、金属間化合物層、及び第2の金属層の体積の合計の50%以下である。これは、接合初期の状態でSnと金属間化合物を形成する金属の元素が接合構造の中央部よりも広い範囲にまで存在することを意味する。この場合、Snと金属間化合物を形成する金属の元素の拡散のドライビングフォースとなる濃度勾配を小さくすることができ、カーケンダルボイドを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カーケンダルボイドを抑制できる接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る接合構造を備える実装基板を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る接合構造が適用される配線基板を示す概略断面図である。
図3】接合構造の積層構造の一例を示す概略断面図である。
図4】接合構造の積層構造の一例を示す概略断面図である。
図5】SEM像の一例を示す図である。
図6】電子部品と配線基板との接合方法について説明するための図である。
図7】実施例及び比較例の測定結果を示す表である。
図8】接合構造の積層構造の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る接合構造100について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る接合構造100を備える実装基板1を示す概略断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る接合構造100が適用される配線基板3を示す概略断面図である。
【0021】
図1に示すように、実装基板1は、電子部品2と、配線基板3とを備える。実装基板1は、電子部品2を接合層40を介して配線基板3に実装することによって構成される。
【0022】
電子部品2は、本体部6と、一対の端子7と、を備える。本体部6は、電子部品2としての機能を発揮するための部材である。端子7は、本体部6の主面に形成された金属製の部分である。電子部品2は、例えばマイクロLEDなどによって構成される。マイクロLEDは、配線基板3からの入力に応じて発光する部品である。
【0023】
配線基板3は、基材8と、壁9と、一対の端子10と、を備える。基材8は、配線基板3の平板状の本体部である。壁9は、基材8の上面に形成された絶縁体によって形成された部材である。壁9の材料として、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂などの樹脂材料が採用される。特に好ましくは、壁9の材料として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が採用される。端子10は、基材8の主面に形成された金属製の部分である。端子10の材料として、Ni、Cu、Ti、Cr,Al、Mo、Pt,Auや、これらの少なくとも二つから選択される合金などが採用される。端子10は、表面に形成された導電膜12を有する。導電膜12の材料として、Ti,Cu,Ni,Al,Mo,Cr,Agなどの膜や金属粒子とバインダーを混ぜた膜などが採用される。
【0024】
Sn層20は、電子部品2の端子7と配線基板3の端子10とを接合するSnを含む層である。組立前においては、配線基板3は、導電膜12の上面に配置された状態の接合材4Aを備える(図2参照)。接合材4Aは、はんだとして機能する。組立時において、端子10と導電膜12と接合材4Aと端子7が積層された後にはんだ接合が行われる。
【0025】
壁9には、凹部11が形成される。凹部11は、壁9を貫通する貫通孔によって構成される。これにより、凹部11の底側では、基材8の上面が露出する。凹部11は、配線基板3の厚み方向からみて、矩形をなしている。端子7、端子10、導電膜12、及びSn層20は、壁9に形成された凹部11内に配置されることで、周囲を壁9によって囲まれる。端子7、端子10、導電膜12、及びSn層20と、凹部11の四方の内側面(すなわち、壁9の内側面)との間には、僅かな隙間が形成される。
【0026】
凹部11内において、電子部品2及びSn層20と、壁9との間には、構成材30が配置される。これにより、構成材50で支えることで、電子部品2が配線基板3から剥がれにくくすることができる。また、電子部品2やSn層20や端子7,10に加わる力が緩和され、信頼性を向上することができる。構成材50の材料として、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂やそれらの混合物、又は前記樹脂材料とSiOx、セラミックスなどの混合物が採用される。特に好ましくは、構成材50の材料として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が採用される。
【0027】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態に係る接合構造100についてより詳細に説明する。図3(a)の例では、接合構造100は、電子部品2側から順に、端子7、金属間化合物層25、接合材4、導電膜12、及び端子10を備える。接合構造100は、電子部品2側から順に、Snと金属間化合物を形成する第1の金属を含む第1の金属層21と、Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層25と、Snを含む第2の金属で構成される第2の金属層22を備える。ここでは、電子部品2の端子7が第1の金属層21に該当し、接合材4が第2の金属層22に該当する。金属間化合物層25は、端子7と接合材4との間に設けられ、Snを含む接合材と、第1の金属との金属間化合物で構成される。
【0028】
なお、以降の説明では、Auを含む端子7及びSn層20によって構成される積層構造を接合層40と称する場合がある。
【0029】
接合材4の第2の金属は、Snを含んでいてもよく、Snを含む合金によって構成されていてもよい。第2の金属は、Snの他、Snを低融点化させる元素を含んでもよい。Snを低融点化させる元素として、例えばBiなどがあげられる。
【0030】
端子7の第1の金属は、Au、Cu、Ni、Ag、Pdの何れかの金属、またはこれらの少なくとも二つから選択される合金である。第1の金属は、少なくともAuを含む金属であってよい。
【0031】
金属間化合物層25は、端子7の第1の金属が配線基板3側に拡散することによって形成される。金属間化合物層25は、端子7の第1の金属と接合材4のSnを含む第2の金属との金属間化合物によって構成される。ここでは、金属間化合物層25は、第1の層31と、第2の層32と、を備える。例えば、第1の層31は、AuSnによって構成される。第2の層32は、AuSnによって構成される。なお、端子10上(導電膜12上)において、一部に接合材4が形成され、一部に金属間化合物層25が存在していてもよい。
【0032】
図3(b)の例では、接合構造100は、電子部品2側から順に、端子7、金属間化合物層25、導電膜12、及び端子10を備える。また、端子7、及び金属間化合物層25の横側に接合材4が配置される。接合構造100は、電子部品2側から順に、Snと金属間化合物を形成する第1の金属を含む第1の金属層21と、Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層25と、を備える。金属間化合物層25は、配線基板3の端子10上に存在する。ここでは、端子10は上面に導電膜12を有しているため、金属間化合物層25は、導電膜12上に存在する。金属間化合物層25は、第1の層31と、第2の層32と、を備える。例えば、第1の層31は、AuSnによって構成される。第2の層32は、AuSnによって構成される。接合材4は、端子7まで及ぶような三角形状をなしているが、接合材4の形状は特に限定されず、どの層まで及ぶかも限定されない。
【0033】
なお、図8に示すように、接合材4は端子7と接触していなくてよい。図8(a)に示す例では、三角形の接合材4が端子7に対して横側にずれるように延びることで端子7に接触しないような位置関係になっている。図8(b)に示す例では、三角形の接合材4が端子7まで及んでいないことにより、端子7に接触しないような位置関係になっている。
【0034】
図4(a)の例では、図3の接合材4がすべて金属間化合物層25になっている。接合構造100は、電子部品2側から順に、端子7、金属間化合物層25、導電膜12、及び端子10を備える。接合構造100は、電子部品2側から順に、Snと金属間化合物を形成する第1の金属を含む第1の金属層21と、Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層25と、を備える。金属間化合物層25は、配線基板3の端子10上に存在する。金属間化合物層25は、第1の層31と、第2の層32と、を備える。例えば、第1の層31は、AuSnによって構成される。第2の層32は、AuSnによって構成される。
【0035】
図4(b)の例では、金属間化合物層25の構造が図4(a)と異なっている。接合構造100は、電子部品2側から順に、端子7、金属間化合物層25、導電膜12、及び端子10を備える。接合構造100は、電子部品2側から順に、Snと金属間化合物を形成する第1の金属を含む第1の金属層21と、Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層25と、を備える。金属間化合物層25は、配線基板3の端子10上に存在する。金属間化合物層25は、第3の層33を備える。例えば、第3の層33は、AuSn系の金属間化合物層25が形成され、例えば、AuSnによって構成される。
【0036】
次に、接合構造100の各層における厚み及び面積について説明する。以下の特定層における厚みの割合は、接合層40全体の厚みに対する特定層の厚みの割合を示す。また、特定層における体積の割合は、接合層40全体の体積に対する特定層の厚みの割合を示す。
【0037】
図3(a)に示す接合構造100において、接合材4(第2の金属層22)の厚みは、端子7(第1の金属層21)、金属間化合物層25、及び接合材4の厚みの合計の50%以下であることが好ましく、より好ましくは35%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。なお、下限値は特に限定されず、図4に示すように接合材4は消滅していてもよい。すなわち、接合材4(第2の金属層22)の厚みは、端子7(第1の金属層21)、金属間化合物層25、及び接合材4の厚みの合計の0%以上であればよい。
【0038】
接合材4(第2の金属層22)の体積割合は、端子7(第1の金属層21)、金属間化合物層25、及び接合材4の体積の合計の50%以下であることが好ましく、14%以下であることがより好ましい。なお、下限値は特に限定されず、図4に示すように接合材4は消滅していてもよい。
【0039】
端子7(第1の金属層21)の体積割合は、端子7(第1の金属層21)、金属間化合物層25、及び接合材4(第2の金属層22)の体積の合計の50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。下限値は特に限定されないが、端子7(第1の金属層21)の体積割合は、端子7(第1の金属層21)、金属間化合物層25、及び接合材4(第2の金属層22)の体積の合計の4%以上であることが好ましい。
【0040】
図3(b)に示す接合構造100において、接合材4(第2の金属層22)の体積割合は、端子7(第1の金属層21)、金属間化合物層25、及び接合材4の体積の合計の50%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましい。
【0041】
端子7(第1の金属層21)の体積割合は、端子7(第1の金属層21)、金属間化合物層25、及び接合材4(第2の金属層22)の体積の合計の50%以下であることが好ましく、27%以下であることがより好ましい。下限値は特に限定されないが、端子7(第1の金属層21)の体積割合は、端子7(第1の金属層21)、金属間化合物層25、及び接合材4(第2の金属層22)の体積の合計の4%以上であることが好ましい。
【0042】
図4(a)(b)に示す接合構造100において、端子7(第1の金属層21)の体積割合は、端子7(第1の金属層21)、及び金属間化合物層25の体積の合計の50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。下限値は特に限定されないが、端子7(第1の金属層21)の体積割合は、端子7(第1の金属層21)、及び金属間化合物層25の体積の合計の4%以上であることが好ましい。
【0043】
なお、図3及び図4の層構造は一例である。例えば、金属間化合物層25の層数は特に限定されない。例えば、金属間化合物層25は、AuSn層を更に含んでもよい。
【0044】
上述の接合構造100の各層における厚み及び面積の測定方法について図5(a)を参照して説明する。まず、得られた接合構造100の中央付近を配線基板3に垂直に切り出し、SEM-EDS測定による元素比率からそれぞれの層の相同定を行う。断面の電子部品2側の端子7が電子部品2の本体部6と接している断面の中点と、配線基板3側の接合層40が端子10(導電膜12)と接している断面の中点を直線Lで結ぶ、その直線Lがそれぞれの層を通る長さを層厚みとする。得られた各層の厚みの結果から上述の接合材4の厚みの割合を計算することができる。
【0045】
また、接合構造100の各層の面積は、SEM像における各層の面積を測定することによって算出することができる。得られた各層の面積の結果から、各層の体積を求め、それによって、上述の接合材4及び端子7の体積の割合を計算することができる。
【0046】
接合構造100の各層における厚みの測定方法として、最小二乗近似法で各層の境界を線分に近似し、その中点同士の距離を層厚みとして測定する方法を採用してよい。当該測定方法に基づいて、接合材4(第2の金属層22)の厚みが、端子7(第1の金属層21)、金属間化合物層25、及び接合材4の厚みの合計の50%以下であればよい。
【0047】
次に、図6を参照して、電子部品2と配線基板3との接合方法について説明する。まず、図6(a)に示すように、配線基板3の接合材4Aの上に、電子部品2の端子7を載せる。ここで、Snの融点を超える温度で長時間(数分)加熱を行うと全体が共晶構造となり接合構造100の金属間化合物層25が層状になり難い。従って、液相を生成しない固相拡散で処理温度、処理時間、加圧力を制御することで形成してもよく、液相接合で接合処理時の温度勾配を制御することで所望の積層構造を形成してもよい。例えば電子部品2側に加熱板61、配線基板3側に冷却板60を接触させ、第1の金属を含む第1の金属層21と、第2の金属を含む第2の金属層22の接触部のみを溶解させる。なおかつ、加熱温度を下げるとともに冷却温度を上げることで溶解する箇所を徐々に配線基板3側へ移動させることで共晶構造ではなく積層構造を得ることが出来るようになる(図4(b))。
【0048】
次に、本実施形態に係る接合構造100の作用・効果について説明する。
【0049】
本実施形態に係る接合構造100は、電子部品2と配線基板3とを接合した接合構造100であって、電子部品2側から順に、Snと金属間化合物を形成する金属を含む第1の金属層21と、Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層25と、Snを含む第2の金属層22と、を備える。第2の金属層22の厚みは、第1の金属層21、金属間化合物層25、及び第2の金属層22の厚みの合計の50%以下である。
【0050】
本実施形態に係る接合構造100において、第2の金属層22の厚みは、第1の金属層21、金属間化合物層25、及び第2の金属層22の厚みの合計の50%以下である。これは、接合初期の状態でSnと金属間化合物を形成する金属の元素(Au)が接合構造100の中央部よりも広い範囲にまで存在することを意味する。この場合、Snと金属間化合物を形成する金属の元素の拡散のドライビングフォースとなる濃度勾配を小さくすることができ、カーケンダルボイドを抑制することができる。
【0051】
第1の金属層21は、Auを含んでよい。AuはSnとの金属間化合物を形成し易く、かつAuはSnを含む層に拡散しやすいため、カーケンダルボイドができやすい金属の元素である。これに対し、本実施形態の構造を採用することで、Auを用いた場合であってもカーケンダルボイドを抑制することができる。
【0052】
金属間化合物層25は、配線基板3の端子10(導電膜12)上に存在してよい。配線基板3の端子10上にSnを含む金属間化合物層25が存在することでSnとの金属間化合物を形成する金属の元素の濃度勾配が低く拡散が起き難くなり、カーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0053】
配線基板3の端子10は、表面に形成されたNiを含む導電膜12を有してよい。Niを含む導電膜12が配線基板3の端子10内部とSnとの金属間化合物を形成する金属の元素との反応を抑制することができる。これにより、Snとの金属間化合物を形成する金属の元素の拡散距離延伸を抑制することができ、カーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0054】
第2の金属層22の体積割合は、第1の金属層21、金属間化合物層25、及び第2の金属層22の体積の合計の50%以下であってよい。これにより、Snとの金属間化合物を形成する金属の元素が拡散しづらくなりカーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0055】
第1の金属層21の体積割合は、第1の金属層21、金属間化合物層25、及び第2の金属層22の体積の合計の50%以下であってよい。Snとの金属間化合物を形成する金属の元素を含む第1の金属層21の体積を小さくすることで拡散する当該元素を少なくすることができ、カーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0056】
本実施形態に係る接合構造100は、電子部品2と配線基板3とを接合した接合構造100であって、電子部品2側から順に、Snと金属間化合物を形成する金属を含む第1の金属層21と、Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層25と、を備え、金属間化合物層25は、配線基板3の端子10上に存在する。
【0057】
本実施形態に係る接合構造100は、共晶構造でなくSnとの金属間化合物を形成する金属を含む第1の金属層21、及びSnを含む金属間化合物の積層構造である。また、金属間化合物層25が、配線基板3の端子10上に達している。従って、拡散のドライビングフォースとなるSnとの金属間化合物を形成する金属の元素の濃度勾配を小さくすることができカーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0058】
配線基板3の端子10は、表面に形成されたNiを含む導電膜12を有してよい。Niを含む導電膜12が配線基板3の端子10内部とSnとの金属間化合物を形成する金属の元素との反応を抑制することができる。これにより、Snとの金属間化合物を形成する金属の元素の拡散距離延伸を抑制することができ、カーケンダルボイドを抑制することが出来る。
【0059】
本実施形態に係る接合構造100は、電子部品2と配線基板3とを接合した接合構造100であって、Snと金属間化合物を形成する金属を含む第1の金属層21と、Snを含む金属間化合物で構成される金属間化合物層25と、Snを含む第2の金属層22と、を備え、第2の金属層22の体積割合は、第1の金属層21、金属間化合物層25、及び第2の金属層22の体積の合計の50%以下であってよい。
【0060】
本実施形態に係る接合構造100において、第2の金属層22の体積割合は、第1の金属層21、金属間化合物層25、及び第2の金属層22の体積の合計の50%以下である。これは、接合初期の状態でSnと金属間化合物を形成する金属の元素が接合構造内の広い範囲にまで存在することを意味する。この場合、Snと金属間化合物を形成する金属の元素の拡散のドライビングフォースとなる濃度勾配を小さくすることができ、カーケンダルボイドを抑制することができる。
【0061】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0062】
接合構造の各層の配置や大きさや数は特に限定されず、本発明の趣旨の範囲で適宜変更してもよい。
【0063】
[実施例]
図7を参照して、実施例1~8、及び比較例1,2について説明する。ただし、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。まず、実施例及び比較例に係る実装基板1の製造方法について説明する。電子部品2としてLEDを準備し、そのLEDにAuの端子7形成した。基板側のCuの端子10上にNiの導電膜12の電析層を形成したのち、導電膜12にSnの接合材4Aを形成した。電子部品2のAuの端子7と配線基板3のSnの接合材4Aを接触させた状態で、0.05~0.20MPaの加圧を行いながら配線基板3側は常に50℃になるように冷却板60を接触させつつ電子部品2側を300℃~310℃の加熱板61を接触させ接触面が反応し始めるところで適宜冷却板60の温度を上げ、加熱板61の温度を下げ、金属間化合物層25の厚みを制御し接合構造を得た。
【0064】
実施例1~6、及び比較例1,2は、温度制御を調整した点以外は、同じ条件で製造された。実施例7,8は、実施例2に対しSnの接合材4Aを電析する面積を5倍とし、接合材4Aの高さは同じになるよう電析時の電流を調整し形成した点以外は同じ条件で形成した。接合層40の各層の厚みは、SEM-EDS測定による元素比率からそれぞれの層の相同定を行い、SEM像から接合層40の各層の厚みを測定する前述の方法にて測定した。各層の厚みの接合層40全体に対する割合を図7に示す。また、SEM像から各層の面積を測定し、それに基づいて前述の方法にて第1の金属層21及び第2の金属層22の体積の接合層40全体の体積に対する割合を測定した。当該割合を図7に示す。次に、実施例1~8、及び比較例1,2の実装基板1を恒温恒湿試験に投入し、試験後の実装基板1の発光実験を行った後、接合層40の中央付近を配線基板3に垂直に切り出し断面のKV(カーケンダルボイド)の数を測定した。測定結果を図7に示す。なお、実施例1のSEM像を図5(a)に示し、比較例2のSEM像を図5(b)に示す。実施例1では、端子7の下側にAuSn層34が形成されている。
【0065】
比較例1では、金属間化合物層が0%であり、AuとSnが接合しておらず、試験前はAuとSnが接触し発光していたが試験後は接触部が離れ発光しなかったと考えられる。比較例2では、Auの拡散が不十分であり、KVが多く発生し接合層40が破断し発光しなかったと考えられる。実施例6は、試験前から少量であるがAuがSnへ拡散しており破断に至らず発光不良を抑えられたと考えられる。実施例2,4は、試験前からAuがSnへ拡散しており実施例6に比べ試験後KVの発生数が少なかったと考えられる。実施例1,3,5は、試験前から多くのAuがSnへ拡散しており、実施例2,4,6に比べ試験後KVの発生数が少なかったと考えられる。実施例7,8からSn合金の析出体積が増えても厚み比率が同じであれば本発明の効果が得られると考えられる。
【符号の説明】
【0066】
2…電子部品、3…配線基板、10…端子、12…導電膜、21…第1の金属層、22…第2の金属層、25…金属間化合物層、100…接合構造。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8