(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136819
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
H02M3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042729
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】荒瀧 茂允
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB23
5H730BB43
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE08
5H730FG05
5H730XX15
(57)【要約】
【課題】主制御回路の最小パルス幅が原因で電流制限モードの制御が不能になってしまうという問題を容易に回避できるシンプルな構成のスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】主制御回路18が出力する駆動パルスVgは、駆動パルス伝送路52を介して主スイッチング素子12のゲートソース間に伝送される。主制御回路18は、スイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithに達すると、駆動パルスVgをローレベルに反転させる電流制限モードの制御を行う。駆動パルス伝送路52は、ゲートソース間を充放電するための充電経路28及び放電経路30と、充電経路28の中の、放電経路30の断続に影響しない位置に挿入されて、充電経路28を断続する補助スイッチング素子54と、そのオンオフを制御する補助制御回路56とを備える。補助制御回路56は、駆動パルスVgがハイレベルに転じた後、規定時間Tnが経過した時に補助スイッチング素子54をオンさせる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主スイッチング素子のスイッチング動作によって入力電圧を所定の出力電圧に変換して負荷に供給する電力変換回路と、前記主スイッチング素子のオンオフを制御するパルス電圧であって、所定の時比率でハイレベルとローレベルとを繰り返す駆動パルスを出力する主制御回路とを備え、
前記主スイッチング素子は、前記ゲート電圧がハイレベルの時にオンしローレベルの時にオフするNチャネルのMOS型FETで成り、前記主制御回路が出力する前記駆動パルスが駆動パルス伝送路を介してゲートソース間に伝送され、
前記主制御回路は、前記主スイッチング素子に流れるスイッチング電流の波高値が基準値に達すると、前記駆動パルスをハイレベルからローレベルに反転させて前記出力電圧を低下させる電流制限モードの制御を行うスイッチング電源装置において、
前記駆動パルス伝送路には、前記主スイッチング素子のゲート電圧をローレベルからハイレベルに上昇させる充電電流が流れる充電経路と、前記ゲート電圧をハイレベルからローレベルに低下させる放電電流が流れる放電経路と、前記充電経路の中の、前記放電経路の断続に影響しない位置に挿入されて、前記充電経路を断続する補助スイッチング素子と、前記補助スイッチング素子のオンオフを制御する補助制御回路とが設けられ、
前記補助制御回路は、前記駆動パルスがローレベルからハイレベルに転じた後、規定時間が経過した時に前記補助スイッチング素子をオンさせ、前記駆動パルスがハイレベルからローレベルに転じた時に前記補助スイッチング素子をオフさせることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記主制御回路は、前記スイッチング電流の波高値が前記基準値に達しない時は、前記出力電圧が目標値に保持されるように、前記駆動パルスのハイレベル及びローレベルの時間を決定する出力電圧安定化モードの制御を行い、前記スイッチング電流の波高値が前記基準値に達した時は、前記出力電圧の目標値に関係なく、前記電流制限モードの制御を行う請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記駆動パルス伝送路の前記充電経路の途中の位置、又は前記放電経路の途中の位置、又はその両方に、前記ゲート電圧の変化速度を調節するためのゲート抵抗が挿入されている請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記補助スイッチング素子は、エミッタが前記主制御回路の出力端に接続され、コレクタが前記充電経路の一端に接続されたPNP型のバイポーラトランジスタで成り、
前記補助制御回路は、前記補助スイッチング素子のベースエミッタ間に接続された補助コンデンサとベースコレクタ間に接続された補助抵抗とで構成される請求項1乃至3のいずれか記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記補助スイッチング素子は、ソースが前記主制御回路の出力端に接続され、ドレインが前記充電経路の一端に接続されたPチャネルのMOS型FETで成り、
前記補助制御回路は、前記補助スイッチング素子のゲートソース間に位置する補助コンデンサと、ゲートドレイン間に接続された補助抵抗とで構成され、前記補助コンデンサは、前記補助スイッチング素子のゲートソース間の寄生容量で成る、又は、前記寄生容量と当該寄生容量に並列接続されたコンデンサ素子とで成る請求項1乃至3のいずれか記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主スイッチング素子に流れるスイッチング電流の波高値が基準値を超えないようにする電流制限モードの制御を行うスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
<従来のスイッチング電源装置10>
従来、
図6に示すように構成されたスイッチング電源装置10があった。スイッチング電源装置10は、主スイッチング素子12のスイッチング動作によって入力電圧Viを出力電圧Voに変換して負荷14に供給する電力変換回路16を備えている。主スイッチング素子12は、ゲート電圧Vgがハイレベルの時にオンしローレベルの時にオフするNチャネルのMOS型FETで構成され、主スイッチング素子12のオンオフは、主制御回路18によって制御される。
【0003】
主制御回路18は、主スイッチング素子12のオンオフを制御するパルス電圧であって、所定の時比率でハイレベルとローレベルとを繰り返す駆動パルスVkを出力する回路である。この主制御回路18は2種類の制御を行う。1つは、主スイッチング素子12に流れるスイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithに達しない時、出力電圧Voが目標値Vrに保持されるように駆動パルスVkのハイレベル及びローレベルの時間を決定する制御である[出力電圧安定化モードの制御]。もう1つは、スイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithに達した時、過電流状態だと判断し、出力電圧Voの目標値Vrに関係なく、駆動パルスVkを強制的にハイレベルからローレベルに反転させて出力電圧Voを低下させる制御である[電流制限モードの制御(過電流保護の制御)]。各制御モードの内容については、スイッチング電源装置10の動作を説明する中で詳しく述べる。
【0004】
主制御回路18と主スイッチング素子12との間には駆動パルス伝送路20が設けられており、主制御回路18が出力した駆動パルスVkは、駆動パルス伝送路20を介して主スイッチング素子12のゲートソース間に伝送される。
【0005】
駆動パルス伝送路20は、カソードが主制御回路18の出力端に接続されたダイオード22と、ダイオード22の両端に並列接続されたゲート抵抗24と、ダイオード22のアノードと主スイッチング素子12のゲートとの間に接続されたゲート抵抗26と、これらを接続する配線パターンとで構成される。この駆動パルス伝送路20の場合、主スイッチング素子12のゲート電圧Vgをローレベルからハイレベルに上昇させる充電電流が流れる経路(充電経路28)は、主制御回路18の出力端から、ゲート抵抗24及び抵抗26を順に通って主スイッチング素子12のゲートに達する経路となる。また、ゲート電圧Vgをハイレベルからローレベルに低下させる放電電流が流れる経路(放電経路30)は、主スイッチング素子12のゲートから、ゲート抵抗26及びダイオード22を順に通って主制御回路18の出力端に達する経路となる。なお、ゲート抵抗24,26は、ゲート電圧Vgの変化速度を調整するための抵抗素子であり、抵抗値は非常に小さい値に設定される。
【0006】
次に、スイッチング電源装置10の動作を説明する。電力変換回路16がフライバックコンバータ(以下、FBコンバータ)の場合、スイッチング電源装置10は、
図7(a)及び
図8(a)~(c)に示す動作を行う。
【0007】
動作点Aは、負荷14が正常な時(インピーダンスが高い時)の動作点であり、出力電流Ioが規定値よりも小さくスイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithに達しないので、主制御回路18は、出力電圧Voが目標値Vrに保持されるようにする出力電圧安定化モードの制御を行う。つまり、出力電圧Voが目標値Vrに保持されるためにはゲート電圧Vgのハイレベルの時間t(Vgh)がTaである必要があるので、駆動パルスVkのハイレベルの時間t(Vkh)がTaに制御される。
【0008】
負荷14に何らかの異常が発生してインピーダンスが少し低下すると、出力電流Ioが少し増加し、動作点Bでスイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithとほぼ等しくなる。この動作点Bでは、出力電圧Voがほぼ目標値Vrなので、動作点Aと同様に、時間t(Vkh),t(Vgh)がTb≒Taに制御される。
【0009】
動作点Bからさらに負荷14のインピーダンスが低下すると、出力電流Ioが増加してスイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithを超えようとするので、主制御回路18は、スイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithを超えるのを阻止する電流制限モードの制御を開始し、時間t(Vkh),t(Vgh)が徐々に短くなる。そして、動作点C(Vo=Vc<Vr)では、時間t(Vkh),t(Vgh)がTc<Tbに制御され、動作点D(Vo=Vd<Vc)では時間t(Vkh),t(Vgh)がTd<Tcに制御される。出力電流Ioは、動作点Bから動作点Dまでの間、Vo-Io特性が概ね定電力カーブ(Vo・Io≒一定)になるように制限される。
【0010】
動作点Dでは、時間t(Vkh),t(Vgh)がTd=Tminとなっている。Tminは、主制御回路18が出力する駆動パルスVkの最小パルス幅(ハイレベルの時間の最小値)である。ここで、最小パルス幅Tminについて簡単に説明する。
【0011】
主制御回路18は、例えば市販品のカレントモードPWM制御ICを用いて構成することができるが、カレントモードPWM制御ICは、リーディングエッジブランキング機能を備えている場合が少なくない。リーディングエッジブランキング機能は、スイッチング電流Iswが流れ始めた時、電流検出用のコンパレータにヒゲ状のスイッチングノイズが侵入して制御系が誤動作するのを防止する機能であり、駆動パルスVkがローレベルからハイレベルに転じた直後の数十nsec~数百nsec程度の期間(ブランキング期間)、コンパレータの出力に関係なく駆動パルスVkをハイレベルに保持する動作を行う。したがって、主制御回路18がリーディングエッジブランキング機能を備えている場合、ブランキング期間が最小パルス幅Tminの主要因となる。また、使用する制御ICがリーディングエッジブランキング機能を備えていない場合でも、スイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithに達したことを検出した後、駆動パルスVkがハイレベルからローレベルに反転するまでの遅延時間が最小パルス幅Tminとなる。
【0012】
動作点Dから負荷14のインピーダンスがさらに低下すると、出力電流Ioが増加しようとするが、主制御回路18は時間t(Vkh),t(Vgh)をTe=Tminより短くすることができず、電流制限モードの制御が不能になる。つまり、動作点E(Vo=Ve<Vd)で電流制限モードの制御が成立するためには、時間t(Vgh)がTe<Td=Tminとなることが条件になるが、主制御回路18は、時間t(Vkh),t(Vgh)を最小パルス幅Tminよりも短くすることができないので、スイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithを超えて大きく増加し、出力電流Ioが定電力カーブから外れて急増してしまう。
【0013】
出力電流Ioがこれほど急増すると、電力変換回路16を構成する各素子の発熱が想定以上に大きくなり、さらには、スイッチング動作を行う各部のパワー半導体に過大なサージ電圧が発生する。そのため、各部品の放熱性を向上させたり、サージ電圧を吸収するスナバ回路を大幅に強化したりする等の特別な対策を行って、スイッチング電源装置10の安全を確保しなければならない。勿論、負荷14に過大な出力電流Ioが供給されることになるので、負荷14の安全性も懸念される。
【0014】
ここまで、スイッチング電源装置10の電力変換回路16がFBコンバータの場合の動作を説明したが、電力変換回路16がシングルエンディッドフォワードコンバータ(以下、SFコンバータ)の場合も、類似した動作になる。SFコンバータの場合、スイッチング電源装置10のVo-Io特性は
図7(b)のように表され、動作点A~Eの動作波形は
図8(a)~(c)とほぼ同じになる。
【0015】
SFコンバータの場合、FBコンバータの場合と異なり、動作点Bから動作点Dまでの間、出力電流Ioは、Vo-Io特性がほぼ定電流カーブ(Io≒一定)になるように制限される。しかし、動作点Dからさらに負荷14のインピーダンスが低下すると、主制御回路18の最小パルス幅Tminが原因で電流制限モードの制御が不能になるという点は同じであり、動作点E(Vo=Ve<Vd)では、スイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithを超えて大きく増加し、出力電流Ioが定電流カーブから外れて急増してしまう。したがって、電力変換回路16がSFコンバータの場合も、スイッチング電源装置10に特別な安全対策が必要であり、負荷14の安全性も懸念される。
【0016】
以上のように、従来のスイッチング電源装置10は、出力電圧Voが大きく低下した時、主制御回路18が駆動パルスVkのハイレベルの時間t(Vkh)を最小パルス幅Tmin以下にすることができず、ゲート電圧のハイレベルの時間t(Vgh)も最小パルス幅Tmin以下にならないので、電流制限モードの制御(過電流保護の制御)が不能になってしまうという問題があった。
【0017】
<従来のスイッチング電源装置32>
その他従来、
図9に示すように構成されたスイッチング電源装置32があった。スイッチング電源装置32は、上記のスイッチング電源装置10と同様の電力変換回路16及び主制御回路18を備えており、スイッチング電源装置10と異なるのは、上記の駆動パルス伝送路20と異なる構成の駆動パルス伝送路34が設けられている点である。
【0018】
駆動パルス伝送路34は、NPNトランジスタ38とPNPトランジスタ40とを組み合わせたトーテムポール型のバッファ回路で成り、NPNトランジスタ38は、コレクタが抵抗36を介して直流電圧Vccに接続され、ベースが主制御回路18の出力端に接続され、エミッタが主スイッチング素子12のゲートに接続されており、PNPトランジスタ40は、ベースが主制御回路18の出力端に接続され、エミッタが主スイッチング素子12のゲートに接続され、コレクタがグランドラインに接続されている。駆動パルス伝送路34の場合、主制御回路18が出力する駆動パルスVkは、トランジスタ38,40の各ベースエミッタ間のPN接合を介して主スイッチング素子12のゲートソース間に伝送されることになる。そして、主制御回路18の出力段の電流容量でゲート電圧Vgを高速変化させることが難しい場合でも(例えば、主スイッチング素子12のゲートソース間の寄生容量が非常に大きい時でも)、主制御回路18に代わってトランジスタ38,40が大きなコレクタ電流を流すことでゲート電圧Vgを高速変化させることができ、ゲート電圧Vg及び駆動パルスVkをほぼ相似な矩形波にすることが可能になる。
【0019】
その他、駆動パルス伝送路34には、抵抗36の両端に接続されたスイッチ素子42と、スイッチ素子42のオンオフを制御するスイッチ素子制御回路44とが設けられている。スイッチ素子制御回路44は、出力電圧Voを検出し、出力電圧Voが所定の値Vx(Vd<Vx<Vc)よりも高い時にスイッチ素子42をオン状態とし、低い時にスイッチ素子42をオフ状態にする制御を行う。
【0020】
この駆動パルス伝送路34の場合、主スイッチング素子12のゲート電圧Vgをローレベルからハイレベルに上昇させる充電電流が流れる経路(充電経路46)は、実質的に、電源電圧Vccから、抵抗36及びスイッチ素子42の並列回路とNPNトランジスタ38とを順に通って主スイッチング素子12のゲートに達する経路となる。また、ゲート電圧Vgをハイレベルからローレベルに低下させる放電電流が流れる経路(放電経路48)は、実質的に、主スイッチング素子12のゲートから、PNPトランジスタ40を通ってグランドラインに達する経路となる。
【0021】
なお、抵抗36は、NPNトランジスタ38が流すコレクタ電流を大幅に制限する働きをする素子であり、抵抗値は、一般的なゲート抵抗(例えば、スイッチング電源装置10のゲート抵抗24,26)よりも大きい値に設定される。詳しくは、スイッチング電源装置32の動作説明の中で述べる。
【0022】
次に、スイッチング電源装置32の動作を説明する。電力変換回路16がFBコンバータの場合、スイッチング電源装置32は、
図10(a)及び
図11(a)~(c)に示す動作を行う。動作点A~Cは、出力電圧Voが所定の値Vxよりも高くてスイッチ素子42がオンしており、抵抗36は回路動作に寄与しない。したがって、スイッチング電源装置32の動作は、上記のスイッチング電源装置10とほぼ同じになる。しかし、出力電圧Voが所定の値Vxよりも低下した動作点Dでは、スイッチ素子42がオフし、動作波形が
図11(b)のように変化する。
【0023】
ここで、
図11(b)に表した駆動パルスVkがハイレベルの時間t(Vkh)とゲート電圧Vgがハイレベルの時間t(Vgh)とを正確に定義する。前者の時間t(Vkh)は、主制御回路18が駆動パルスVkをハイレベルにしようとしている時間であり、駆動パルスVkが上昇し始めた時からローレベルに転じるまでの時間となる。一方、後者の時間t(Vgh)は、主スイッチング素子12がオンする時間のことであり、スイッチング電流Iswが流れる時間と等価である。この定義は、先に説明した
図8(b)においても同様に当てはまるものである。
【0024】
動作点Dでは、抵抗36によってNPNトランジスタ38が流すコレクタ電流(主スイッチング素子12のゲートソース間の充電電流)が大幅に制限される。そして、駆動パルスVkがローレベルからハイレベルに転じた後、ゲート電圧Vgが緩やかに上昇し、遅れ時間Txが経過した時に主スイッチング素子12のゲート閾値電圧Vthに達し、主スイッチング素子12がオンしてスイッチング電流Iswが流れる。したがって、動作点Dでは、ゲート電圧Vgがハイレベルの時間t(Vgh)がTd=Tminとなり、駆動パルスVkがハイレベルの時間t(Vkh)は、最小パルス幅Tminよりも長いTx+Tdとなる。つまり、動作点D(Vo=Vd)で電流制限モードの制御が成立するためには、時間T(Vgh)がTd=Tminとなることが条件になるが、主制御回路18は、時間t(Vkh)を最小パルス幅Tminよりも長い時間Tx+Tdに制御すればよいので、電流制限モードの制御を適切に実行することができる。
【0025】
さらに、動作点E(Vo=Ve<Vd)では、ゲート電圧Vgがハイレベルの時間t(Vgh)がTe<Td=Tminとなり、駆動パルスVkがハイレベルの時間t(Vkh)が、最小パルス幅Tminよりも長いTx+Teとなる。つまり、動作点E(Vo=Ve<Vd)で電流制限モードの制御が成立するためには、時間t(Vgh)がTe<Td=Tminになることが条件になるが、主制御回路18は、時間t(Vkh)を最小パルス幅Tminよりも長い時間Tx+Teに設定すればよいので、電流制限モードの制御を適切に実行することができる。したがって、出力電流Ioは、動作点Bから動作点Eまでの間、Vo-Io特性が概ね定電力カーブ(Vo・Io≒一定)になるように制限されることになる。
【0026】
このように、スイッチング電源装置32は、出力電圧Voが所定の値Vx(Vd<Vx<Vc)より低くなると、スイッチ素子42がオフして遅れ時間Txが発生するので、出力電圧Voが非常に低い動作点D~Eにおいても、電流制限モードの制御(過電流保護の制御)が可能になり、出力電流Ioが定電力カーブから外れて急増するのを回避することができる。
【0027】
ここまで、スイッチング電源装置32の電力変換回路16がFBコンバータの場合の動作を説明したが、電力変換回路16がSFコンバータの場合も、類似した動作になる。SFコンバータの場合、スイッチング電源装置32のVo-Io特性は
図10(b)のように表され、動作点A~Eの動作波形は
図11(a)~(c)とほぼ同じになる。そして、SFコンバータの場合もFBコンバータの場合と同様に、出力電圧Voが非常に低い動作点D~Eにおいても、電流制限モードの制御(過電流保護の制御)が可能になり、出力電流Ioが定電流カーブから外れて急増するのを回避することができる。
【0028】
以上のように、従来のスイッチング電源装置32によれば、上記のスイッチング電源装置10のような問題(出力電圧Voが大きく低下した時、主制御回路18の最小パルス幅Tminが原因で電流制限モードの制御(過電流保護の制御)が不能になってしまうという問題)を回避することができる。なお、スイッチング電源装置32の構成は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
従来のスイッチング電源装置10は、出力電圧Voが大きく低下した時、主制御回路18の最小パルス幅Tminが原因で電流制限モードの制御(過電流保護の制御)が不能になってしまうという問題があり、安全を確保するための特別な対策が必要になる。また、従来のスイッチング電源装置32は、上記のスイッチング電源装置10の問題をある程度は解決できるが、やはり、電源装置の安全確保の面で問題が残る。
【0031】
スイッチング電源装置32の場合、
図11(b)、(c)に示すように、動作点D~Eで十分な遅れ時間Txを発生させるため、抵抗値R36を大きい値に設定してゲート電圧Vgの立ち上がりを非常に緩やかにするので、主スイッチング素子12のターンオンの速度が大幅に低下し、クロス損失が非常に大きくなる。しかも、主スイッチング素子12がオンしている間、ゲート電圧Vgがゲート閾値電圧Vthを僅かに超えた電圧に留まるので、主スイッチング素子12のオン抵抗Ronが十分小さくなることができず、オン抵抗Ronによる導通損失も非常に大きくなる。
【0032】
したがって、スイッチング電源装置32においても、出力電圧Voが低下してスイッチ素子42がオフした時、主スイッチング素子12の損失が増加し発熱が想定以上に大きくなるので、スイッチング電源装置32の安全を確保するための特別な対策が必要になる。
【0033】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、主制御回路の最小パルス幅が原因で電流制限モードの制御が不能になってしまうという問題を容易に回避できるシンプルな構成のスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、主スイッチング素子のスイッチング動作によって入力電圧を所定の出力電圧に変換して負荷に供給する電力変換回路と、前記主スイッチング素子のオンオフを制御するパルス電圧であって、所定の時比率でハイレベルとローレベルとを繰り返す駆動パルスを出力する主制御回路とを備え、前記主スイッチング素子は、前記ゲート電圧がハイレベルの時にオンしローレベルの時にオフするNチャネルのMOS型FETで成り、前記主制御回路が出力する前記駆動パルスが駆動パルス伝送路を介してゲートソース間に伝送され、前記主制御回路は、前記主スイッチング素子に流れるスイッチング電流の波高値が基準値に達すると、前記駆動パルスをハイレベルからローレベルに反転させて前記出力電圧を低下させる電流制限モードの制御を行うスイッチング電源装置であって、
前記駆動パルス伝送路には、前記主スイッチング素子のゲート電圧をローレベルからハイレベルに上昇させる充電電流が流れる充電経路と、前記ゲート電圧をハイレベルからローレベルに低下させる放電電流が流れる放電経路と、前記充電経路の中の、前記放電経路の断続に影響しない位置に挿入されて、前記充電経路を断続する補助スイッチング素子と、前記補助スイッチング素子のオンオフを制御する補助制御回路とが設けられ、
前記補助制御回路は、前記駆動パルスがローレベルからハイレベルに転じた後、規定時間が経過した時に前記補助スイッチング素子をオンさせ、前記駆動パルスがハイレベルからローレベルに転じた時に前記補助スイッチング素子をオフさせるスイッチング電源装置である。
【0035】
前記主制御回路は、前記スイッチング電流の波高値が前記基準値に達しない時は、前記出力電圧が目標値に保持されるように、前記駆動パルスのハイレベル及びローレベルの時間を決定する出力電圧安定化モードの制御を行い、前記スイッチング電流の波高値が前記基準値に達した時は、前記出力電圧の目標値に関係なく、前記電流制限モードの制御を行う構成にしてもよい。
【0036】
前記駆動パルス伝送路の前記充電経路の途中の位置、又は前記放電経路の途中の位置、又はその両方に、前記ゲート電圧の変化速度を調節するためのゲート抵抗が挿入されていることが好ましい。
【0037】
また、前記補助スイッチング素子は、エミッタが前記主制御回路の出力端に接続され、コレクタが前記充電経路の一端に接続されたPNP型のバイポーラトランジスタで成り、前記補助制御回路は、前記補助スイッチング素子のベースエミッタ間に接続された補助コンデンサとベースコレクタ間に接続された補助抵抗とで構成されるようにすることができる。
【0038】
あるいは、前記補助スイッチング素子は、ソースが前記主制御回路の出力端に接続され、ドレインが前記充電経路の一端に接続されたPチャネルのMOS型FETで成り、前記補助制御回路は、前記補助スイッチング素子のゲートソース間に位置する補助コンデンサと、ゲートドレイン間に接続された補助抵抗とで構成され、前記補助コンデンサは、前記補助スイッチング素子のゲートソース間の寄生容量で成る、又は、前記寄生容量と当該寄生容量に並列接続されたコンデンサ素子とで成るようにすることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明のスイッチング電源装置は、駆動パルス伝送路の充電経路の中の所定の位置に補助スイッチング素子を挿入し、この補助スイッチング素子を適切なタイミングでオンさせるという独特な構成を備えているので、主制御回路の最小パルス幅が原因で電流制限モードの制御が不能になってしまうという問題を容易に回避することができる。また、補助スイッチング素子としてPNP型のバイポーラトランジスタやPチャネルのMOS型FETを使用することによって、補助スイッチング素子のオンオフを制御する補助制御回路は、コンデンサ素子や抵抗素子を用いてシンプル且つ安価に構成することができる。
【0040】
また、本発明の技術は非常に汎用性が高いものであり、様々な絶縁型コンバータ(フライバックコンバータ、シングルエンディッドフォワードコンバータ、ブリッジコンバータ、プッシュプルコンバータ等)や非絶縁型コンバータ(降圧チョッパ、昇圧チョッパ、昇降圧チョッパ等)に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明のスイッチング電源装置の一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す補助スイッチング素子及び補助制御回路の具体的な構成を示す回路図である。
【
図3】この実施形態のスイッチング電源装置の出力電圧-出力電流特性(Vo-Io特性)を示すグラフであって、電力変換回路がフライパックコンバータの場合のVo-Io特性のグラフ(a)、電力変換回路がシングルエンディッドフォワードコンバータの時のVo-Io特性のグラフ(b)である。
【
図4】この実施形態のスイッチング電源装置の動作点A~Eにおける動作を示す図であって、動作点A~Cにおける動作波形(a)、動作点Dにおける動作波形(b)、動作点Eにおける動作波形(c)である。
【
図5】
図2に示す補助スイッチング素子及び補助制御回路の変形例を示す回路図(a)、駆動パルス伝送路にゲート抵抗を挿入する場合の挿入位置の例を示すブロック図(b)である。
【
図6】従来のスイッチング電源装置の一形態を示すブロック図である。
【
図7】
図6のスイッチング電源装置の出力電圧-出力電流特性(Vo-Io特性)を示すグラフであって、電力変換回路がフライパックコンバータの場合のVo-Io特性のグラフ(a)、電力変換回路がシングルエンディッドフォワードコンバータの時のVo-Io特性のグラフ(b)である。
【
図8】
図6のスイッチング電源装置の動作点A~Eにおける動作を示す図であって、動作点A~Cにおける動作波形(a)、動作点Dにおける動作波形(b)、動作点Eにおける動作波形(c)である。
【
図9】従来のスイッチング電源装置の他の形態を示すブロック図である。
【
図10】
図9のスイッチング電源装置の出力電圧-出力電流特性(Vo-Io特性)を示すグラフであって、電力変換回路がフライパックコンバータの場合のVo-Io特性のグラフ(a)、電力変換回路がシングルエンディッドフォワードコンバータの時のVo-Io特性のグラフ(b)である。
【
図11】
図9のスイッチング電源装置の動作点A~Eにおける動作を示す図であって、動作点A~Cにおける動作波形(a)、動作点Dにおける動作波形(b)、動作点Eにおける動作波形(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明のスイッチング電源装置の一実施形態について、
図1~
図5に基づいて説明する。ここで、従来のスイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のスイッチング電源装置50は、上記の電力変換回路16及び主制御回路18と、上記の駆動パルス伝送路20とは構成が異なる駆動パルス伝送路52とを備えている。
【0043】
駆動パルス伝送路52は、駆動パルス伝送路20と同様の充電経路28、放電経路30及びゲート抵抗24,26を備えており、特徴的なのは、充電経路28の中の、ゲート抵抗24と主制御回路18の出力端との間の位置に補助スイッチング素子54が挿入され、さらに補助スイッチング素子54のオンオフを制御する補助制御回路56が設けられている点である。
【0044】
補助制御回路56は、駆動パルスVkがローレベルからハイレベルに転じた後、規定時間Tnが経過した時に補助スイッチング素子54をオンさせ、駆動パルスVkがハイレベルからローレベルに転じた時に補助スイッチング素子54をオフさせる制御を行う回路である。
【0045】
図2に示すように、補助スイッチング素子54は、エミッタが主制御回路18の出力端に接続され、コレクタがゲート抵抗24の一端に接続されたPNP型のバイポーラトランジスタで成り、補助制御回路56は、補助スイッチング素子54のベースエミッタ間に接続された補助コンデンサ58とベースコレクタ間に接続された補助抵抗60とで構成される。補助抵抗60の値は、ゲート抵抗24,26よりも十分大きい。
【0046】
図2に示す回路の動作を簡単に説明すると、駆動パルスVkがローレベルの時、補助コンデンサ58の電圧V58はほぼゼロボルトになり、補助スイッチング素子54はオフしている。そして、駆動パルスVkがローレベルからハイレベルに転じると、補助コンデンサ58、補助抵抗60、ゲート抵抗24,26、及び主スイッチング素子12のゲートソース間の寄生容量(図示せず)の経路に電流が流れ、電圧V58が緩やかに上昇する。そして、規定時間Tnが経過した時、電圧V58が補助スイッチング素子54のベースエミッタ間飽和電圧に達し、補助スイッチング素子54が素早くオンする。その後、駆動パルスVkがハイレベルからローレベルに転じると、電圧V58がほぼゼロボルトに低下し、補助スイッチング素子54がオフする。
【0047】
規定時間Tnは、補助コンデンサ58の値及び補助抵抗60の値を変更することによって容易に調整することができる。ただし、補助コンデンサ58の値は、主スイッチング素子12のゲートソース間の寄生容量の値との関係で、ある程度小さい値に設定する点に留意する。補助コンデンサ58の値を大きくし過ぎると、電圧V58が補助スイッチング素子54のベースエミッタ間飽和電圧に達しなくなるからである。
【0048】
次に、スイッチング電源装置50の動作を説明する。電力変換回路50がフライバックコンバータ(以下、FBコンバータ)の場合、スイッチング電源装置50は、
図3(a)及び
図4(a)~(c)に示す動作を行う。
【0049】
動作点Aは、負荷14が正常な時(インピーダンスが高い時)の動作点であり、出力電流Ioが規定値よりも小さくスイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithに達しないので、主制御回路18は、出力電圧Voが目標値Vrに保持されるようにする出力電圧安定化モードの制御を行う。つまり、出力電圧Voが目標値Vrに保持されるためにはゲート電圧Vgのハイレベルの時間t(Vgh)がTaである必要があるので、駆動パルスVkのハイレベルの時間t(Vkh)がTn+Taに制御される。
【0050】
負荷14に何らかの異常が発生してインピーダンスが少し低下すると、出力電流Ioが少し増加し、動作点Bでスイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithとほぼ等しくなる。この動作点Bでは、出力電圧Voがほぼ目標値Vrなので、動作点Aと同様に、時間t(Vgh)がTb≒Taになるように、時間t(Vkh)がTn+Tb≒Tn+Taに制御される。
【0051】
動作点Bからさらに負荷14のインピーダンスが低下すると、出力電流Ioが増加してスイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithを超えようとするので、主制御回路18は、スイッチング電流Iswの波高値が基準値Ithを超えるのを阻止する電流制限モードの制御を開始し、時間t(Vkh),t(Vgh)が徐々に短くなる。そして、動作点C(Vo=Vc<Vr)では、t(Vgh)がTc<Tbになるようにt(Vkh)がTn+Tcに制御され、動作点D(Vo=Vd<Vc)では、時間t(Vgh)がTd<Tcになるように時間t(Vkh)がTn+Tdに制御される。
【0052】
動作点Dでは、時間t(Vgh)がTd=Tminとなり、時間t(Vkh)は、最小パルス幅Tminよりも長いTn+Tdとなる。つまり、動作点D(Vo=Vd)で電流制限モードの制御が成立するためには、時間T(Vgh)がTd=Tminとなることが条件になるが、主制御回路18は、時間t(Vkh)を最小パルス幅Tminよりも長い時間Tn+Tdに制御すればよいので、電流制限モードの制御を適切に実行することができる。
【0053】
さらに、動作点E(Vo=Ve<Vd)では、時間t(Vgh)がTe<Td=Tminとなり、時間t(Vkh)が、最小パルス幅Tminよりも長いTn+Teとなる。つまり、動作点E(Vo=Ve<Vd)で電流制限モードの制御が成立するためには、時間t(Vgh)がTe<Td=Tminとなることが条件になるが、主制御回路18は、時間t(Vkh)を最小パルス幅Tminよりも長い時間Tn+Teに制御すればよいので、電流制限モードの制御を適切に実行することができる。したがって、出力電流Ioは、動作点Bから動作点Eまでの間、Vo-Io特性が概ね定電力カーブ(Vo・Io≒一定)になるように制限されることになる。
【0054】
このように、スイッチング電源装置50は、駆動パルスVkがハイレベルに転じた後、規定時間Tnが経過した時にゲート電圧Vgがハイレベルに転じる構成になっているので、出力電圧Voが非常に低い動作点D~Eにおいても、電流制限モードの制御(過電流保護の制御)が可能になり、出力電流Ioが定電力カーブから外れて急増するのを回避することができる。また、スイッチング電源50は、動作点D~Eにおいてもゲート電圧Vgの立ち上がりは非常に急峻で、素早くゲート閾値電圧Vthを通過して高い電圧に達するので、従来のスイッチング電源装置32のような問題(動作点D~Eで主スイッチング素子12のクロス損失や導通損失が急増するという問題)は発生しない。
【0055】
なお、規定時間Tnの長さは、最小パルス幅Tminの長さやその他の事情に鑑みて個別に設定されるが、例えば、1/2・Tmin≦Tn≦2・Tminの範囲に設定することが好ましい。上述した動作点D,Eの説明から分かるように、規定時間Tnを長くしてTn>Tminにすれば、出力電圧Voがほぼゼロボルトに低下するまで、電流制限モードの制御が可能になる。しかし、規定時間Tnを長くし過ぎると、主スイッチング素子12の最大オン時間(時間t(Vgh)の最大値)が実質的に短くなり、例えば「入力電圧Viが低い時に出力電圧安定化モードの制御が不能になる」等の別の弊害が生じる可能性があるので、規定時間Tnは、Tn≦2・Tminの範囲に設定することが好ましい。また、規定時間Tnを短くしてTn<Tminにすると、出力電圧Voがゼロボルト付近まで低下した時に電流制限モードの制御が不能になるケースが想定されるが、規定時間TnがTn≧1/2・Tminの範囲であれば、電流制限モードの制御が不能になったとしても、出力電流Ioの増加量は大幅に抑えられる。
【0056】
ここまで、スイッチング電源装置50の電力変換回路16がFBコンバータの場合の動作を説明したが、電力変換回路16がSFコンバータの場合も、類似した動作になる。SFコンバータの場合、スイッチング電源装置50のVo-Io特性は
図3(b)のように表され、動作点A~Eの動作波形は
図4(a)~(c)とほぼ同じになる。そして、SFコンバータの場合もFBコンバータの場合と同様に、出力電圧Voが非常に低い動作点D~Eにおいても、電流制限モードの制御(過電流保護の制御)が可能になり、出力電流Ioが定電流カーブから外れて急増するのを回避することができる。また、従来のスイッチング電源装置32のような問題(動作点D~Eで主スイッチング素子12のクロス損失や導通損失が急増するという問題)も発生しない。
【0057】
以上説明したように、スイッチング電源装置50は、駆動パルス伝送路52の所定の位置に補助スイッチング素子54を挿入し、補助スイッチング素子54を適切なタイミングでオンさせるという独特な構成を備えているので、主制御回路18の最小パルス幅Tminが原因で電流制限モードの制御が不能になってしまうという問題を容易に回避することができる。また、補助スイッチング素子54をPNP型のバイポーラトランジスタ54を使用しているので、補助スイッチング素子54のオンオフを制御する補助制御回路56を、補助コンデンサ58及び補助抵抗60を用いてシンプル且つ安価に構成することができ、規定時間Tnの設定の容易に変更することができる。
【0058】
なお、本発明のスイッチング電源装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、補助スイッチング素子及び補助制御回路の構成は、
図2に示す補助スイッチング素子54及び補助制御回路56とは異なる構成にすることができる。
図2では、補助スイッチング素子54をPNP型のバイポーラトランジスタとし、補助制御回路56を補助コンデンサ58及び補助抵抗60で構成しているが、例えば
図5(a)に示すように、補助スイッチング素子54をPチャネルのMOS型FETに置き換えることも可能であり、ほぼ同様の動作を行うことができる。この場合、補助コンデンサ58は、MOS型FETのゲートソース間の寄生容量58aとこれに並列接続されたコンデンサ素子58bとで構成されることになる。また、条件が合えば、補助コンデンサ58を寄生容量58aだけで構成し、コンデンサ素子58bを削除して部品点数を減らすことも可能である。勿論、本発明の目的とする動作が可能であれば、
図2や
図5(a)とは異なる全く構成にしてもよい。
【0059】
補助スイッチング素子は、充電経路の中の、放電経路の断続に影響しない位置に挿入されて、充電経路を断続するものであればよい。したがって、スイッチング電源装置50の場合、
図1に示すように、補助スイッチング素子54をゲート抵抗24の一端であるP1点に挿入しているが、ゲート抵抗24の他端であるP2点に挿入してもよく、同様の作用効果が得られる。しかし、ゲート抵抗26の一端であるP3点やゲート抵抗26の他端であるP4点に挿入すると、補助スイッチング素子54のオンオフが放電経路30の断続にも影響するので、P3点やP4点に挿入することはできない。
【0060】
駆動パルス伝送路には、主スイッチング素子のゲート電圧の変化速度を調節するため、ゲート抵抗を設けることが好ましい。ゲート抵抗は、主スイッチング素子のスイッチング速度を一定以下に抑えてスイッチングノイズを低減させることを主目的とする抵抗であり、抵抗値は、従来のスイッチング電源装置32の抵抗36のような大きい値に設定されるものではない。
【0061】
また、ゲート抵抗は、駆動パルス伝送路の前記充電経路の途中の位置、又は前記放電経路の途中の位置、又はその両方に挿入することができる。例えば、スイッチン電源装置50の場合、
図1に示すように、充電電流だけが流れる経路にゲート抵抗24が挿入され、充電電流と放電電流の両方が流れる経路にゲート抵抗26が挿入されているが、この回路構成は
図5(b)に示す回路構成と実質的に同じなので、当然、本発明の技術的範囲に含まれるものである。なお、ゲート抵抗は、必要なければ全て削除してもよい。
【0062】
上記のスイッチング電源装置50の説明の中で、スイッチング電源装置50は定電圧電源であり、電流制限モードの制御は過電流保護の制御として行われる説明した。その他の形態として、例えば
図3(b)に示すVo-Io特性の中の定電流カーブの領域(動作点B~Eの領域)を利用して定電流電源を構成することも可能であり、非常に低い出力電圧Voまで良好な定電流特性を得ることができる。なお、定電流電源を構成する場合、出力電圧安定化モードの制御は必須ではない。
【0063】
その他、電力変換回路は、フライバックコンバータ、シングルエンディッドフォワードコンバータ以外に、ハーフブリッジコンバータ、フルブリッジコンバータ、プッシュプルコンバータ等の絶縁型のコンバータでもよく、降圧チョッパ、昇圧チョッパ、昇降圧チョッパ等の非絶縁型コンバータであってもよい。本発明は非常に汎用性が高い技術であり、様々な方式のスイッチングコンバータに適用することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
10,32,50 スイッチング電源装置
12 主スイッチング素子
16 電力変換回路
18 主制御回路
24,26 ゲート抵抗
28 充電経路
30 放電経路
52 駆動パルス伝送路
54 補助スイッチング素子
56 補助制御回路
58 補助コンデンサ
60 補助抵抗
A~E 動作点
Ith 基準値
Isw スイッチング電流
Tmin 最小パルス幅
Tn 規定時間
t(Vgh) ゲート電圧のハイレベルの時間
t(Vhk) 駆動パルスのハイレベルの時間
Vg ゲート電圧
Vi 入力電圧
Vk 駆動パルス
Vo 出力電圧
Vr 目標値