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特開2023-136846エポキシ化油脂を含む樹脂組成物及びそれを用いた紙製品
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  • 特開-エポキシ化油脂を含む樹脂組成物及びそれを用いた紙製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136846
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】エポキシ化油脂を含む樹脂組成物及びそれを用いた紙製品
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/18 20060101AFI20230922BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20230922BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230922BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230922BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20230922BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20230922BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20230922BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20230922BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C08G59/18
C08G59/42
C08L63/00 C
C08K5/09
C08L97/00
B65D65/42 A
B32B27/10
B32B27/38
B32B29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042768
(22)【出願日】2022-03-17
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テトラパック
2.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(71)【出願人】
【識別番号】522158557
【氏名又は名称】MGCウッドケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛯名 武雄
(72)【発明者】
【氏名】相澤 崇史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】日高 和弘
(72)【発明者】
【氏名】深沢 文雅
(72)【発明者】
【氏名】真玉橋 朝蔵
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD02
3E086AD05
3E086AD06
3E086BA14
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4J036GA04
4J036JA15
(57)【要約】
【課題】高い硬度を有する高バイオマス率の硬化物、及びそれを得るための高バイオマス率の樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
エポキシ油脂、無水カルボン酸、及び硬化触媒を含む樹脂組成物、エポキシ油脂、無水カルボン酸、及び硬化触媒を含む樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物、紙製品の少なくとも食品に接する面に、エポキシ油脂、無水カルボン酸、及び硬化触媒を含む樹脂組成物の硬化膜を設けてなる食品用紙製品、エポキシ油脂、無水カルボン酸、及び硬化触媒を含む樹脂組成物と、繊維質基材とを含む混合物とを用いて成型されてなる食品用紙製品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化油脂、無水カルボン酸、及び硬化触媒を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ化油脂が大豆油、菜種油、亜麻仁油、トウモロコシ油及びパーム油からなる群から選択される少なくとも1種の油脂をエポキシ化したものである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、バイオマス原料を含む、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記バイオマス原料がリグニン誘導体及び木粉からなる群から選択される少なくとも一種のバイオマス原料である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物中の前記エポキシ化油脂及び前記バイオマス原料の含有量が、該樹脂組成物の全質量に対して60質量%以上である、請求項3又は請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物。
【請求項7】
ショアA硬度が65以上である、請求項6に記載の樹脂硬化物。
【請求項8】
前記樹脂組成物中のエポキシ化油脂の含有量が、該樹脂組成物の全質量に対して35質量%以上である、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
紙製品の少なくとも食品に接する面に請求項8に記載の樹脂組成物の硬化膜を設けてなる、食品用紙製品。
【請求項10】
前記食品用紙製品が、紙トレイ、紙ストロー、紙スプーン、紙皿、紙コップ、テトラパック、ゲーブルトップ、ブリック、ラップラウンド、マルチパック、カートカン、クラフト袋、包装紙、又は段ボールである、請求項9に記載の食品用紙製品。
【請求項11】
請求項8に記載の樹脂組成物と、繊維質基材とを含む混合物を用いて成型されてなる食品用紙製品。
【請求項12】
前記食品用紙製品が、紙トレイ、紙ストロー、紙スプーン、紙皿、紙コップ、テトラパック、ゲーブルトップ、ブリック、ラップラウンド、マルチパック、カートカン、クラフト袋、包装紙、又は段ボールである、請求項11に記載の食品用紙製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化油脂、無水カルボン酸、及び硬化触媒を含む樹脂組成物及びそれを用いた紙製品に関する。
【背景技術】
【0002】
石油由来のエポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物は、様々な用途のプラスチック製品の材料として使用されている。近年、環境負荷低減の観点から、石油由来の原料に代えて、エポキシ化油脂等のバイオマス素材を利用したプラスチック製品や食品用紙製品の開発が望まれている。
例えば、未利用資源であるリグニンを主原料にした樹脂が検討されており、リグニン誘導体(A)と、芳香族を有さないエポキシ化合物および芳香族を有さないイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤(B)と、架橋剤(B)とは架橋点が異なりかつ種類の異なる架橋剤(C)と、を含有することを特徴とする樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
また、例えば、植物由来の油脂を原料としたエポキシ化油脂を架橋剤で硬化させることで樹脂としての利用が検討されており、エポキシ大豆油に有機化層状粘土鉱物を配合した架橋エポキシ化油脂複合材料が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014―136741号公報
【特許文献2】特開2004―277658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エポキシ化油脂を硬化せしめてなるエポキシ化油脂硬化物は、石油由来のエポキシ樹脂を硬化させた硬化物と比して、強度及び硬度が低くて脆いという性質があり、高い硬度が要求される硬化物の材料に使用される石油由来のエポキシ樹脂は植物由来のエポキシ化油脂に置き換えることができないという問題がある。
例えば、特許文献1に記載の樹脂組成物では、リグニンの反応性(架橋性)を向上させるためのリグニンの誘導体化、及び使用できる架橋剤に制限があり、更に、配合も熱ロールなどの工夫が必要となるという問題がある。
また、特許文献2に記載の架橋エポキシ化油脂複合材料では、硬度特性を改善するためにエポキシ化油脂に有機化層状粘土鉱物を配合して複合化する必要があり、さらにエポキシ油脂とフィラーとの相溶性を向上させるためフィラー(粘土等)を有機化するなどフィラーの加工が必要となるという問題がある。
【0005】
また、食品用紙製品では、食品の水分を吸収しないように、例えばフィルムを有する紙基材や、樹脂を含侵させた紙基材を用いて製造されている。しかし、特許文献1及び2には、樹脂組成物等が食品用紙製品に使用できることについて記載されていない。
そのため、バイオマス原料の含有量が多い、高バイオマス率の樹脂組成物の開発が望まれている。また、高バイオマス率の樹脂組成物を用いた食品用紙製品の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、石油由来のエポキシ化合物を含む樹脂組成物よりも高バイオマス率の樹脂組成物を提供することを課題とする。
さらに本発明では、高い硬度を有する高バイオマス率の硬化物、及びそれを得るための
高バイオマス率の樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、高バイオマス率の樹脂組成物を用いた食品用紙製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記事情を鑑み、鋭意検討した結果、エポキシ化油脂に、架橋剤としての無水カルボン酸及び硬化触媒を用いることで、高い硬度を有する硬化物、及びそれを形成するための高バイオマス率の樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、エポキシ化油脂、無水カルボン酸、及び硬化触媒を含む、樹脂組成物に関する。
【0009】
前記エポキシ化油脂は、大豆油、菜種油、亜麻仁油、トウモロコシ油及びパーム油からなる群から選択される少なくとも1種の油脂をエポキシ化したものであることが好ましい。
【0010】
また、前記樹脂組成物は、更にバイオマス原料を含むものであることが好ましい。
【0011】
前記バイオマス原料がリグニン誘導体及び木粉からなる群から選択される少なくとも一種のバイオマス原料であることが好ましい。
【0012】
前記樹脂組成物中の前記エポキシ化油脂及び前記バイオマス原料の含有量が、該樹脂組成物の全質量に対して60質量%以上であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、上記樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物に関する。
【0014】
前記樹脂硬化物は、ショアA硬度が65以上であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記樹脂組成物中のエポキシ化油脂の含有量が、該樹脂組成物の全質量に対して35質量%以上である樹脂組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、紙製品の少なくとも食品に接する面に上記樹脂組成物の硬化膜を設けてなる、食品用紙製品に関する。
該食品用紙製品は、紙トレイ、紙ストロー、紙スプーン、紙皿、紙コップ、テトラパック、ゲーブルトップ、ブリック、ラップラウンド、マルチパック、カートカン、クラフト袋、包装紙、又は段ボールであることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、上記樹脂組成物と、繊維質基材とを含む混合物を用いて成型されてなる食品用紙製品に関する
該食品用紙製品が、紙トレイ、紙ストロー、紙スプーン、紙皿、紙コップ、テトラパック、ゲーブルトップ、ブリック、ラップラウンド、マルチパック、カートカン、クラフト袋、包装紙、又は段ボールであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エポキシ化油脂に対して、架橋剤として無水カルボン酸及び硬化触媒を使用することにより、高バイオマス率の樹脂組成物、及びそれより得られる高い硬度を有する硬化物を提供することができる。
また、本発明によれば、エポキシ化油脂、無水カルボン酸、及び硬化触媒を含む樹脂組成物を用いることにより、安全、且つ、環境負荷の少ない食品用紙製品を提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例6乃至9及び比較例9の紙ストローの吸水率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[樹脂組成物]
本発明は、エポキシ化油脂、無水カルボン酸及び硬化触媒を含む樹脂組成物に関する。
【0021】
<エポキシ化油脂>
エポキシ化油脂としては、動物又は植物由来の油脂における不飽和結合をエポキシ化したものを使用できる。動物由来の油脂としては、牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂、及び魚油などが挙げられ、植物由来の油脂としては、脂肪酸成分として不飽和脂肪酸を含むトリグリセリドを主成分とするものであれば特に限定されず、例えば大豆油、菜種油、亜麻仁油、とうもろこし油、パーム油、ひまわり油、ぶどう油、綿実油、ごま油、米ぬか油、落花生油、ひまし油、桐油、紅花油、オリーブ油、及びグレーブシード油などが挙げられるが、好ましくは、植物油脂などの植物由来の油脂をエポキシ化したエポキシ化油脂を使用できる。植物油脂の中では、大豆油、菜種油、亜麻仁油、トウモロコシ油及びパーム油からなる群から選択される少なくとも1種の油脂が好適に用いられる。植物油脂は長鎖脂肪酸由来の部位を有するため、エポキシ化油脂の硬化物は延伸性及び柔軟性に優れるという利点がある。
【0022】
エポキシ化油脂は、一種又は二種以上のエポキシ化油脂を混合したものを使用することができる。また、一種又は二種以上の動物又は植物由来の油脂の混合物をエポキシ化したエポキシ化油脂を使用することもできる。
【0023】
本発明のエポキシ化油脂は、動物又は植物由来の油脂中の不飽和結合の全部をエポキシ化したものでもよいし、部分的にエポキシ化したものでもよい。
また、本発明のエポキシ化油脂として、動物又は植物由来の油脂をエポキシ化した後、エポキシ化されていない不飽和結合の一部又は全部を水素添加したエポキシ化油脂を使用してもよいし、不飽和結合の一部を水素添化して飽和結合にした動物又は植物由来の油脂をエポキシ化したエポキシ化油脂を使用することもできる。
【0024】
本発明の樹脂組成物中のエポキシ化油脂の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、用いるエポキシ化油脂、無水カルボン酸、硬化触媒及び後述するバイオマス原料の種類や配合量により適宜調整でき、例えば10質量%以上90質量%以下、例えば30質量%以上80質量%以下、例えば30質量%以上70質量%以下、例えば35質量%以上70質量%以下である。この範囲であることにより、本発明の樹脂組成物は、高い硬度を有する高バイオマス率の硬化物を形成することができる。
【0025】
エポキシ化油脂のエポキシ当量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されず、例えば200以上400以下の範囲であり、例えば240以上310以下の範囲であり、例えば260以上290以下の範囲である。
エポキシ当量を上記範囲に調節したエポキシ化油脂を使用することで、エポキシ化油脂と、後述する無水カルボン酸とが反応して形成される硬化物の架橋点密度を制御できる。そのため、本発明の樹脂組成物から、硬度と柔軟性との均衡が図られて脆弱性が改善された硬化物を得ることができる。
【0026】
二種類以上のエポキシ化油脂の混合物のエポキシ当量(合計エポキシ当量ともいう)は
、エポキシ化油脂の混合物に含まれる各エポキシ化油脂のエポキシ当量と、その含有割合から算出することができる。例えば、エポキシ当量321であるエポキシ化油脂50質量%、及びエポキシ当量230であるエポキシ化油脂50質量%からなる混合物であるエポキシ油脂の合計エポキシ当量は、275.5(=(321×50+230×50)/100)となる。
【0027】
<エポキシ化油脂の製造方法>
エポキシ化油脂の製造方法は、公知の方法を使用できる。例えば、動物又は植物由来の油脂の二重結合を酸化剤又は過酸化水素を用いた酸化反応によりオキシラン環を形成する方法が挙げられる。
酸化剤としては、例えば過安息香酸、過酢酸、過ギ酸、モノ過フタル酸、過メタクロロ安息香酸、過トリフルオロ酢酸などの有機過酸(酸化剤)が挙げられる。
【0028】
また、過酸化水素を用いた酸化反応には、必要により、触媒と有機酸又はポリヒドロキシ化合物とを用いることができる。触媒としては、例えば、硫酸、リン酸、酸化アルミニウム及びスルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂等が挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸及びギ酸等が挙げられる。ポリヒドロオキシ化合物としては、例えば、ショ糖、グルコース、コーンスターチ、グリセリン等が挙げられる。
【0029】
酸化反応の反応温度及び反応時間は適宜調整でき、例えば、10℃以上200℃以下、例えば60℃以上120℃以下で、10分以上48時間以下、例えば2時間以上16時間以下で反応させることにより、エポキシ化油脂を得ることができる。例えば、0℃以上50℃以下で、動物又は植物由来の油脂と上記酸化剤等とを混合し、その後徐々に昇温させて反応させることが好ましい。
【0030】
<無水カルボン酸>
無水カルボン酸としては、エポキシ樹脂の架橋剤として用いる無水カルボン酸を使用でき、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート無水物、グリセロールトリストリメリテート無水物、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、アルキルスチレン-無水マレイン酸共重合体、クロレンド酸無水物、ポリアゼライン酸無水物などが挙げられ、好ましくはメチルヘキサヒドロ無水フタル酸が挙げられる。
【0031】
無水カルボン酸は、エポキシ化油脂の(合計)エポキシ基1当量に対して通常0.5当量以上1.5当量以下、例えば0.8当量以上1.2当量以下の割合で含有することができる。エポキシ化油脂に対する無水カルボン酸の当量は、エポキシ化油脂中のエポキシ基に対する硬化剤の硬化性基の当量比で示される。硬化剤の当量を上記範囲とすることで、硬化物として十分な強度を得ることができる。
【0032】
無水カルボン酸は、一種又は二種以上の無水カルボン酸を混合したものを使用することができる。また、一種又は二種以上のカルボン酸の混合物を脱水して得られた無水カルボン酸の混合物を使用することもできる。
【0033】
<硬化触媒>
本発明の樹脂組成物は、エポキシ化油脂と無水カルボン酸との反応を促進させるための硬化触媒を含む。硬化触媒としては、エポキシ樹脂組成物の硬化に使用する硬化触媒を使
用することができ、例えば、第三級アミン、第三級アミン塩、イミダゾール類、有機リン系化合物、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、有機金属塩、ホウ素化合物などを用いることができる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
第三級アミンとしては、例えば、ラウリルジメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)などが挙げられる。
【0035】
第三級アミン塩としては、例えば、上記第三級アミンのカルボン酸塩、スルホン酸塩、無機酸塩などが挙げられる。カルボン酸塩としては、オクチル酸塩等の炭素数1~30(特に、炭素数1~10)のカルボン酸の塩(特に、脂肪酸の塩)などが挙げられる。スルホン酸塩としては、p-トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩などが挙げられる。第三級アミン塩の代表的な例として、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)の塩(例えば、p-トルエンスルホン酸塩、オクチル酸塩、2-エチルヘキサン酸塩)などが挙げられる。
【0036】
イミダゾール類としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2-メチルイミダゾリルエチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2-ウンデシルイミダゾリルエチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2-エチル-4-メチルイミダゾリルエチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0037】
有機リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0038】
第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどが挙げられる。
【0039】
第四級ホスホニウム塩としては、例えば、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、テトラブチルホスホニウムラウリン酸塩、テトラブチルホスホニウムミリスチン酸塩、テトラブチルホスホニウムパルミチン酸塩、テトラブチルホスホニウムカチオンとビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸及び/又はメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸のアニオンとの塩、テトラブチルホスホニウムカチオンと1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸のアニオンとの塩、テトラブチルホスホニウムカチオンとメタンスルホン酸のアニオンとの塩、テトラブチルホスホニウムカチオンとベンゼンスルホン酸のアニオンとの塩、テトラブチルホスホニウムカチオンとp-トルエンスルホン酸のアニオンとの塩、テトラブチルホスホニウムカチオンと4-クロロベンゼンスルホン酸のアニオンとの塩、テトラブチルホスホニウムカチオンとドデシルベンゼンスルホン酸のアニオンとの塩などが挙げられる。
【0040】
有機金属塩としては、例えば、オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛、ジラウリン酸ジブチ
ルスズ、アルミニウムアセチルアセトン錯体などが挙げられる。
【0041】
ホウ素化合物としては、例えば、三フッ化ホウ素、トリフェニルボレートなどが挙げられる。
【0042】
本発明の樹脂組成物における硬化触媒の含有量は、樹脂組成物中の全固形分合計100質量部に対し、例えば、0.001質量部以上10質量部以下、例えば0.005質量部以上5質量部以下である。ここで、固形分とは、樹脂組成物から溶剤を除いた成分を云う。
【0043】
<バイオマス原料>
本発明の樹脂組成物は、硬化物の硬度、脆弱性を改善するためのフィラー(充填剤)として、バイオマス原料を使用することができる。
バイオマス原料としては、例えば、木粉、木材チップ、おが屑、廃材、端材、樹皮等の木質材料、ワラ、パガス、籾殻、ビートパルプ等の各種植物材料若しくは古紙等の紙、パルプ類、又は植物材料に含有されるリグニン若しくはその誘導体が挙げられ、好ましくは、木粉、おが屑、リグニン及びリグニン誘導体が挙げられる。
エポキシ化油脂は、石油由来のエポキシ化合物よりも粘度が低いため、溶剤を使用しなくても、バイオマス素材を添加して撹拌するだけで容易に、バイオマス素材をエポキシ化油脂に分散でき、得られた混合物を硬化することで高い硬度を有する硬化物を得ることができる。
【0044】
バイオマス原料は、一種又は二種以上のバイオマス原料を混合したものを使用することができる。
【0045】
バイオマス原料として、産業副産物又は産業廃棄物使用することが、環境負荷を低減でき特に好ましい。
例えば、木粉、おが屑等の木質材料は、木材加工の際に副産物或いは廃棄物として得ることができる。
例えば、リグニンは、セルロースやヘミセルロースと共に植物体を構成する主要成分であって、例えば、植物体からセルロースやヘミセルロース成分を精製するために除去(抽出)されたリグニンを使用できる。また、リグニン誘導体は、例えば植物体からパルプ等を製造する際の副産物として、リグニンの分解物やその反応物として得ることができる。
【0046】
リグニン誘導体としては、公知のもの又は公知の方法で製造されたものを使用でき、例えば、リグノスルホン酸、クラフトリグニン、ソーダリグニン、脱アルカリリグニン、オルガノソルブリグニン、酢酸蒸解リグニン、蒸煮爆砕リグニン、リグニンスルホン酸、カルボキシアルキル化リグニン誘導体、リグノフェノール誘導体、並びにこれらの中和体、ポリエチレングリコール変性体、フェノール変性体などの変性物を使用できる。
【0047】
本発明の樹脂組成物においてバイオマス原料を使用する場合、上記エポキシ化油脂及びバイオマス原料の含有量(即ちバイオマス率)が、樹脂組成物の固形分の合計量に基いて50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上である。ここで、固形分とは、樹脂組成物から溶剤を除いた成分を云う。
【0048】
<その他添加剤>
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、有機溶剤、層状ケイ酸塩等の粘土、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤等の添加剤を必要に応じて含有してもよく、硬化反応を調節するため公知の添加剤等を含有してもよい。
【0049】
<有機溶剤>
本発明の樹脂組成物は、作業性及び塗工性向上のため、あるいは上記の添加剤を混合するために、有機溶剤を含有することができる。有機溶剤としては、エポキシ化油脂、無水カルボン酸及び硬化触媒に対して不活性なものであれば特に制限されず、エポキシ樹脂組成物に使用される有機溶剤を使用することができる。
例えば、酢酸エチル等のエステル系、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系等が挙げられる。
【0050】
<粘土>
本発明の樹脂組成物は、得られる硬化物の硬度を向上させるために、粘土材料を添加することができる。このような粘土としては、例えば、カオリン鉱物(カオリナイト、ディカライト、ナクライト、ハロイサイト等)、雲母粘土鉱物(白雲母、イライト、フェンジャイト、海緑石、セラドナイト、パラゴナイト、ブランマイト等)、スメクタイト(ベントナイト、モンモリナイト、パイデライト、ノントロライト、サボナイト、ソーコナイト等)、緑泥岩、パイロフェライト、タルク、バーミキュライト、ろう石、ばん土頁岩等、及びこれらの修飾物が挙げられ、好ましくはベントナイト、ベントナイトを4級アンモニウムで修飾した有機ベントナイト、タルク等が挙げられる。
【0051】
本発明の樹脂組成物中の粘土の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、用いるエポキシ化油脂、無水カルボン酸、硬化触媒及び前述したバイオマス原料の配合量により適宜調整でき、例えば、組成物の前固形分の質量に基いて20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。この範囲であることにより、本発明の樹脂組成物は、バイオマス率を低下させることなく、高い硬度を有する硬化物を提供することができる。
【0052】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、例えば、エポキシ化油脂に、無水カルボン酸及び硬化触媒と、必要に応じて、バイオマス原料、及びその他の成分を添加して撹拌又は混錬することにより調製される。エポキシ化油脂、無水カルボン酸、バイオマス原料、硬化触媒、及びその他の成分は、必要により溶剤に溶解したものを使用することができる。撹拌及び混錬の手段としては公知の方法を使用できる。
【0053】
[樹脂硬化物]
本発明の樹脂硬化物は、上記のエポキシ化油脂、無水カルボン酸、及び硬化触媒を含む樹脂組成物の硬化物である。樹脂組成物を硬化させるときの条件は特に制限されず、含有するエポキシ化油脂、無水カルボン酸、硬化触媒、及びバイオマス原料等の各成分の種類、配合割合などに応じて適宜調整することができる。例えば、樹脂組成物を硬化させるときの条件は、通常80℃以上350℃以下、例えば100℃以上200℃以下において、通常1分以上20時間以下であり、例えば5分以上10時間以下である。
【0054】
本発明の樹脂硬化物は、例えば、本発明の樹脂組成物の成形時又は成形後に硬化することにより製造することができる。
成形方法は特に限定されず、公知の方法、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを使用できる。また、本発明の樹脂硬化物には、フィルム形状の硬化物も含む。例えば、離型材に本発明の樹脂組成物を塗布し、硬化し、離型材からはく離することによりフィルム形状の硬化物を得ることができる。
【0055】
本発明の樹脂組成物により、高い硬度を有する、高バイオマス率の硬化物を得ることができる。
本発明の樹脂組成物から得られた硬化物の硬度は、例えばショアA硬度が50以上、好ましくは65以上、より好ましくは75以上である。
【0056】
本発明の樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、皿、コップ、トレー、カトラリーなどの容器やペンケース、歯ブラシ、ボールペンなどの日用品に用いられる以外に、半導体部品、航空機部品、自動車部品、産業用機械部品、電子部品、電機部品、機構部品等の各種の用途に利用することができる。
【0057】
[食品用紙製品]
食品用紙製品は、紙基材が食品の水分を吸収して強度が低下するのを防止するために樹脂でコーティングされた紙基材や、樹脂を含む紙基材で形成されている。
本発明の樹脂組成物から得られる硬化物は、紙製品のコーティングに用いることができる。そして、動物又は植物由来のエポキシ化油脂は、石油由来のエポキシ化合物と比べて毒性が低く、人体への安全性がより高いと考えられているため、食品用紙製品のコーティング用途、又は食品用紙製品の硬化に用いるマトリックス樹脂として好適に使用可能である。また、植物由来のエポキシ化油脂は粘度が低いため、樹脂組成物は溶剤を使用する必要がない点でも、食品用紙製品の製造に好適に使用可能である。
【0058】
食品用紙製品の製造方法としては、公知の方法を使用できる。
例えば、既存の紙製品の食品に接する面、若しくは全面に本発明の樹脂組成物を塗布し硬化させて食品用紙製品を製造する方法、紙基材又は発泡断熱紙容器用紙基材等に本発明の樹脂組成物から形成されたフィルムを貼り合わせたコーティング用紙を成型して食品用紙製品を得る方法、紙基材又は発泡断熱紙容器用紙基材等に本発明の樹脂組成物を含侵させたものを成型して食品用紙製品を得る方法、及び本発明の樹脂組成物とパルプ等の繊維質基材とを混錬した成形加工組成物を成形加工して食品用紙製品を得る方法等が挙げられる。
【0059】
例えば、紙コップや紙皿等の食品用紙製品は、ポリエチレンラミネート紙を成型して製造されるが、ポリエチレンフィルムに代えて本発明の樹脂組成物から形成されたフィルムを用いたラミネート紙を使用することで、より安全性が高く、環境負荷が低減された食品用紙製品を提供することができる。また、本発明の樹脂組成物を紙基材に含侵させて、乾燥、熱ブレスすることにより表面硬度が高く、環境負荷が低減された紙トレイ等の食品用紙製品を製造することができる。
また、例えば、紙製品に、本発明の樹脂組成物を塗布し硬化させてコーティング膜を形成することで、吸水しにくい紙製品を製造することができる。
また、例えば、本発明の樹脂組成物と、パルプ繊維又はセルロースナノ繊維等の繊維質基材との混合物を用いても、紙容器等の食品用紙製品を製造することができる。
【0060】
また、食品用紙製品に用いる塗料にも、従来の石油由来のエポキシ化合物に代えてエポキシ化油脂を使用することができ、子供が口に入れても安全な紙製品を提供することができる。なお、紙製品に限定されず、例えば飲料用のアルミ缶やスチール缶の内面ラッカーとしても使用することができる。
【0061】
本発明の樹脂組成物を用いて食器用紙製品は、各種の用途に利用することができ、例えば、紙トレイ、紙ストロー、紙スプーン、紙皿、紙コップなどの食品容器以外にもテトラパック、ゲーブルトップ、ブリック、カートカン、ラップラウンド、マルチパックなどの食品用包材やクラフト袋、包装紙、及び段ボールなどの食品用紙材が挙げられる。
【実施例0062】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限
定されるものではない。
【0063】
本実施例では、無水カルボン酸系架橋剤として、メチルへキサヒドロ無水フタル酸が主成分のXNH6830G(ナガセケムテックス株式会社)を用いた。
【0064】
本実施例では、硬化触媒としてDBUの2-エチルヘキサン酸塩が主成分のU-CAT
SA 102(サンアプロ株式会社製)を用いた。
【0065】
本実施例では、粘土として4級アンモニウムカチオンを変性させた有機ベントナイトであるエスベンNE(株式会社ホージュン製)を用いた。
【0066】
本実施例では、リグニン誘導体としてリグニンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)及び脱アルカリリグニン(東京化成工業株式会社製)を用いた。また、リグニン誘導体は、120℃で2時間乾燥させたものを使用した。
【0067】
本実施例では、木粉として杉由来のおが粉(丸平木材株式会社、目開き90μm篩)を用いた。また、木粉は、120℃で2時間乾燥させたものを使用した。
【0068】
(エポキシ化大豆油の合成例1)
撹拌機、温度計、冷却器を備えた500mL三口フラスコに大豆油 277.11g(株式会社J-オイルミルズ製)と硫酸カリウム 10.07g(関東化学株式会社)、25%硫酸 11.22g(関東化学株式会社製濃硫酸を25質量%濃度に希釈した)、酢酸43.38g(関東化学株式会社)、60%過酸化水素水 97.26g(三菱ガス化学株式会社製)を仕込み、400rpmで撹拌しながら30℃に調整した。この反応混合液の内部温度が80℃を超えないように昇温し、60℃で5時間反応させた。この反応混合液を油層と水層に分離し、油層を100gの飽和食塩水、0.01M水酸化ナトリウム水溶液、100gの飽和食塩水、100gの精製水の順で洗浄してエポキシ化大豆油ESBO-JC01(エポキシ当量は321g/当量)を得た。
【0069】
(エポキシ化大豆油の合成例2)
撹拌機、温度計、冷却器を備えた300mL三口フラスコに大豆油 92.37g(株式会社J-オイルミルズ製)とギ酸 11.08g(関東化学株式会社)を仕込み、400rpmで撹拌しながら30℃に調整した。この反応混合液が60℃を超えないよう、60%過酸化水素水 62.14g(三菱ガス化学株式会社製)を1時間当たり50mLの速度で滴下した。60%過酸化水素の滴下が終了したら内部温度が80℃を超えないように昇温し、60℃で5時間反応させた。この反応混合液を油層と水層に分離し、油層を100gの飽和食塩水、0.01M水酸化ナトリウム水溶液、100gの飽和食塩水、100gの精製水の順で洗浄してエポキシ化大豆油ESBO-JC02(エポキシ当量は330g/当量)を得た。
【0070】
エポキシ化大豆油ESBO-JC01、及びESBO-JC02のエポキシ当量はJIS K236:2001に従い測定した。
【0071】
(実施例1)
ESBO-JC01 1.94gとESBO-JC02 1.94gを混合し(合計エポキシ当量は276g/当量)、そこにXNH6830G 1.94g、U-CAT SA 102 0.12g、エスベンNEを添加して混合物1を得た。
混合物1を、直径26mm、深さ6mmのテフロン製容器内に充填し、120℃で2時間反応させて硬化させた。得られた硬化物を取出し、ショアA型硬度計を用いてショア硬度を測定した。
【0072】
(実施例2)
ESBO-JC01 1.46gとESBO-JC02 1.46gを混合し(合計エポキシ当量は276g/当量)、そこにXNH6830G 1.64g、U-CAT SA 102 0.14gを添加して混合物2を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。
【0073】
(実施例3)
ESBO-JC02 1.70gに、XNH6830G 1.00g、U-CAT SA 102 0.25g、木粉0.25gを添加して混合物3を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。
【0074】
(実施例4)
ESBO-JC02 2.20gに、XNH6830G 1.68g、U-CAT SA 102 0.12gを添加して混合物4を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。
【0075】
(実施例5)
ESBO-JC02 2.44gに、XNH6830G 1.44g、U-CAT SA 102 0.12gを添加して混合物5を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。
【0076】
(実施例6)
ESBO-JC02 1.94gに、XNH6830G 1.94g、U-CAT SA 102 0.12g、エスベンNE 0.44gを添加して混合物6を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。
【0077】
(実施例7)
ESBO-JC02 1.70gに、XNH6830G 1.00g、U-CAT SA 102 0.25g、リグニンスルホン酸ナトリウム1.35g、木粉0.25gを添加して混合物7を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。
【0078】
(実施例8)
ESBO-JC02 1.70gに、XNH6830G 1.00g、U-CAT SA 102 0.25g、脱アルカリリグニン1.35g、木粉0.25gを添加して混合物8を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。
【0079】
(比較例1)
ESBO-JC01 0.63gに、XNH6830G 0.37gを添加して混合物9を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。
【0080】
(比較例2)
ESBO-JC01 0.70gに、XNH6830G 0.30gを添加して混合物10を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。
【0081】
実施例1乃至実施例8、比較例1及び比較例2の混合物1乃至10のエポキシ化油脂比
率、及びバイオマス率並びにそれらの硬化物のA型ショア硬度を下記表1に示す。
ここで、エポキシ化油脂比率は混合物全質量に対するエポキシ化油脂(ESBO-JC01及びESBO-JC02)の合計質量の割合を表し、バイオマス率は混合物全質量に対するエポキシ化油脂(ESBO-JC01及びESBO-JC02)及びバイオマス(リグニンスルホン酸ナトリウム、脱アルカリリグニン及び木粉)の合計質量の割合を表す。
【0082】
【表1】
表1:混合物の組成及び硬化物の硬度
【0083】
表1に示した通り、本発明の樹脂組成物から得られる硬化物は65以上の高いショア硬度を有する。
また、実施例4と実施例5とを対比すると、バイオマス率が高くなるとAショア硬度が低下する。一方、バイオマスを含む実施例3、実施例7及び8の組成物は、実施例5と同じ又はより高いバイオマス率であるが、Aショア硬度の高い硬化物を得ることができた。
【0084】
(実施例9)
ESBO-JC02 1.14gに、XNH6830G 0.81g、U-CAT SA 102 0.06gを添加して混合物11を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。ショア硬度は73であった。
市販の紙ストロー(ベストコ製、環境にやさしい紙製ストローエコホワイト(型番ND-5881)直径6mm×全長197mm)を12本準備し、夫々に本発明の樹脂組成物を塗布し、120℃で2時間反応させて紙ストローに硬化膜を形成した。得られた、ストローの質量を測定した。
次いで、硬化膜を有する紙ストローを水に浸漬し、10分ごとに1本ずつ取り出し、紙ストローの表面に付着している水滴をキムワイプで軽くふき取り、質量を測定して吸水率を算出した。
吸水率の算出方法は以下の通りである。
吸水率=(吸水後の紙ストローの質量(g)-吸水前の紙ストローの質量(g))/吸水前の紙ストローの質量(g)×100
吸水時間に対する吸水率を表2及び図1に示す
【0085】
(実施例10)
ESBO-JC01 0.57gとESBO-JC02 0.57gを混合し、そこに
XNH6830G 0.81g、U-CAT SA 102 0.02gを添加して混合物12を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。ショア硬度は81であった。
混合物11を混合物12に代えた以外は実施例9と同様に、紙ストローの吸水率を測定し、その結果を表2及び図1に示す。
【0086】
(実施例11)
ESBO-JC01 1.14gに、XNH6830G 0.81g、U-CAT SA 102 0.02gを添加して混合物13を得た。
実施例1と同様に硬化物を作製し、ショア硬度を測定した。ショア硬度は81であった。
混合物11を混合物13に代えた以外は実施例9と同様に、紙ストローの吸水率を測定し、その結果を表2及び図1に示す。
【0087】
(比較例3)
実施例6と同様に、市販の紙ストロー(硬化膜なし)の吸水率を測定し、その結果を表2及び図1に示す
【0088】
【表2】
【0089】
表2及び図1より、本発明の硬化膜を形成した紙ストローは、硬化膜を有しない紙ストローと比較して吸水率が低いことが示された。このことから、本発明の樹脂組成物を用いることにより、吸水しにくい紙製品を提供することができる。
図1