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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136859
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】スピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/06 20060101AFI20230922BHJP
   H04R 9/04 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H04R1/06 310
H04R9/04 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042783
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】大木 純
【テーマコード(参考)】
5D012
5D017
【Fターム(参考)】
5D012BC02
5D012BC03
5D012BC04
5D012FA06
5D017AH02
5D017AH05
(57)【要約】
【課題】最大入力を超えた過大電流が入力された場合においても、スピーカの破損を抑制する技術を提供する。
【解決手段】スピーカ200は、端子板230と、振動部と、錦糸線250と、錦糸線250周囲に配置される弾性部材260と、を少なくとも備える。これらのうちの振動部は、ボイスコイルと振動板220とを含んで構成される。錦糸線250は、端子板230とボイスコイルとを接続する。このような弾性部材260は、振動部の振動に応じて錦糸線250に生じる移動応力により、変形する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子板と、
ボイスコイルと振動板とを含む振動部と、
前記端子板と前記ボイスコイルとを接続する錦糸線と、
前記錦糸線周囲に配置される弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、前記振動部の振動に応じて前記錦糸線に生じる移動応力により、変形する、
スピーカ。
【請求項2】
前記弾性部材は、予め定められる電流範囲を超えた過大電流が前記錦糸線を介して前記ボイスコイルに入力された場合に、前記振動部の振動に応じて前記錦糸線に生じる移動応力により変形する位置に設置される請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記弾性部材は、予め定められる電流範囲を超えた過大電流が前記錦糸線を介して前記ボイスコイルに入力され、かつ前記振動部が放音方向に移動する場合に、前記振動部の振動に応じて前記錦糸線に生じる移動応力により変形する位置に設置される請求項1に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記弾性部材は、予め定められる電流範囲の電流が前記錦糸線を介して前記ボイスコイルに入力されている場合、前記錦糸線に接触しない位置に設置される請求項1から3のいずれかに記載のスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関し、特に振動板を振動させるスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカは、フレームと、フレームに取り付けられた振動部と、フレームに取り付けられた磁気回路部と、フレームに取り付けられた端子板と、を備える。スピーカは、振動部のボイスコイルに音声電流が供給されて、音声電流に応じてボイスコイルが磁気回路部と協働して振動板を振動させることによって、音声電流に応じた音を振動板から発生させる。このようなスピーカでは、錦糸線とフレームの接触による異音発生を抑制することが望まれる。そのために、例えば緩衝部材が設けられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-251285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スピーカの最大入力を超えた入力がアンプ側から入力された場合、振動板がスピーカ放音方向に向けて突出するときに、錦糸線が突っ張ってしまうことがありえる。錦糸線が突っ張った際にボイスコイルが引っ張られ、ボイスコイルに傾きが生じると、ボイルコイルと磁気回路との間に擦れが発生し、断線・破壊に至るおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、最大入力を超えた過大電流が入力された場合においても、スピーカの破損を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のスピーカは、端子板と、ボイスコイルと振動板とを含む振動部と、端子板とボイスコイルとを接続する錦糸線と、錦糸線周囲に配置される弾性部材と、を備える。弾性部材は、振動部の振動に応じて錦糸線に生じる移動応力により、変形する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、最大入力を超えた過大電流が入力された場合においても、スピーカの破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の比較対象となるスピーカの構造を示す断面図である。
図2図2(a)-(b)は、図1のスピーカの下側ストローク時と上側ストローク時における構造を示す断面斜視図である。
図3】本実施例に係るスピーカの無入力時における構造を示す断面図である。
図4図3のスピーカの無入力時における構造を示す部分斜視図である。
図5】本実施例に係るスピーカの上側ストローク時における構造を示す断面図である。
図6】本実施例に係るスピーカの上側ストローク時における構造を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、ボイスコイルにより振動板が振動させられることによって音声を出力するスピーカに関する。振動系のボイスコイルと、フレームに設けられた端子板とは錦糸線によって繋がれる。一般的に、錦糸線は、振動系の振動板とダンパの間に配置される。錦糸線は、スピーカの仕様(そのスピーカの最大入力、想定される最大振幅量)に適した長さを有する。錦糸線が短すぎると、想定していた振幅量に達する前に前に錦糸線が突っ張り、振動板の振動が制限される。錦糸線が長すぎると、錦糸線自体のたわみにより振動系に錦糸線が接触し、異音が発生する。これらによってスピーカの基本的性能が発揮されない。そのため、錦糸線は、短すぎる設定にせず、少し余裕をもたせたうえで長すぎない長さに設定される。
【0010】
前述のごとく、スピーカの最大入力を超えた入力がアンプ側から入力された場合、言い換えると、ボイスコイルを含む振動系が想定される範囲以上の振幅量である場合には、錦糸線の長さが振幅量に対して不足し、振動板が突出するときに錦糸線が最初に突っ張ってしまうことが考えられる。このとき、錦糸線の突っ張りによりボイスコイルが引っ張られ、ボイスコイルが傾くことによってボイルコイルと磁気回路との間に擦れが発生し、断線・破壊に至るおそれがある。過大入力時における、錦糸線の突っ張りによるボイスコイルの断線の発生を抑制することが求められる。本実施例に係るスピーカは、端子板とボイスコイルを接続する錦糸線周囲に収縮可能な弾性部材を配置する。錦糸線が突っ張る場合に弾性部材が縮むことによって錦糸線が仮想的に伸びる。一方、錦糸線が突っ張らない場合に錦糸線は正規位置に配置され、下側ストローク時には錦糸線が設定長さになる。
【0011】
図1は、本実施例の比較対象となるスピーカ100の構造を示す断面図である。スピーカ100は、フレーム10、振動板20、エッジ22、端子板30、ボイスコイルボビン40、ボイスコイル42、磁気回路44、ダンパ46、錦糸線50を含む。
【0012】
フレーム10は、鉢形形状を有し、上側部分に開口12を有する。また、フレーム10の底部分も開口しており、底部分に磁気回路44が取り付けられる。磁気回路44は、マグネットを含む。磁気回路44は、ポットヨーク、トッププレートを含んでもよい。なお、本実施例において上側とはスピーカ100の放音方向を指し、下側とはスピーカ100の放音方向と逆の方向を指す。これらの方向は以降の説明において共通である。
【0013】
ボイスコイルボビン40は、円柱形状の筒であり、ボイスコイルボビン40にはボイスコイル42が巻き付けられる。ボイスコイル42は、磁気回路44と協働してボイスコイルボビン40を振動させる。さらに、ボイスコイルボビン40には、振動板20、ダンパ46が接続される。振動板20は、ボイスコイルボビン40に合わせて振動する。振動板20は、ボイスコイルボビン40に合わせて振動する。ボイスコイル42は、ダンパ46、振動板20及びエッジ22によって磁気ギャップの中心に、磁気ギャップを形成する磁気回路44に触れないように保持される。磁気ギャップは、ボイスコイル42に電流が流れた際に駆動力を発生させる磁気集中箇所であり、この空隙にボイスコイル42が配置される。
【0014】
振動板20は、フレーム10の開口12内において、ボイスコイルボビン40に接合される。振動板20は、ボイスコイルボビン40とボイスコイル42に合わせて振動し、空気を振動させることで、音を空気中に音波として放出する。エッジ22は、環形状を有し、その内周側が振動板20の外周部分に接合され、外周側がフレーム10に接合される。エッジ22は、振動板20を中心軸に沿って振幅させることができる柔軟性を有している。エッジ22は、例えば、ゴム製である。振動板20とボイスコイル42は振動部としてまとめられてもよい。
【0015】
端子板30は、フレーム10に設けられ、アンプ(図示せず)との間の配線が接続される。また、端子板30には錦糸線50も接続されており、錦糸線50は、端子板30とボイスコイル42とを接続する。これによりアンプからの音声信号は端子板30、錦糸線50を通ってボイスコイル42に流される。
【0016】
図2(a)-(b)は、スピーカ100の下側ストローク時と上側ストローク時における構造を示す断面斜視図である。図2(a)は、通常入力時かつ下側ストローク時のスピーカ100の構造を示す。通常入力とは、スピーカ100が許容できる電流値として予め定められる電流範囲以内の電流が、錦糸線50を介してボイスコイル42に入力される場合を示す。また、下側ストロークとは、上下方向に移動可能なボイスコイル42が下側に移動している場合を示す。この状況において、磁気回路44は、ボイスコイル42の最下端部に接触しない位置に設計されている。また、錦糸線50は、上下振幅時に振動板20及びダンパ46に接触しない長さに設計される。
【0017】
図2(b)は、過大入力時かつ上側ストローク時のスピーカ100の構造を示す。過大入力時とは、予め定められる電流範囲を超えた過大電流が錦糸線50を介してボイスコイル42に入力される場合を示す。また、上側ストロークとは、上下方向に移動可能なボイスコイル42が上側に移動している場合を示す。この状況において、ボイスコイル42は想定される振幅の範囲を超えて上側に移動しており、その結果、錦糸線50が最初に突っ張ってしまうおそれがある。錦糸線50が突っ張ることによって、錦糸線50が接続されるボイスコイル42の上側部位が端子板30側に引っ張られ、磁気ギャップ内でボイスコイル42が傾くと、ボイスコイル42は正しく磁気ギャップの中心に位置することができず、磁気ギャップ両側の磁気回路44に接触しながら振動することになり、ボイスコイル42及び磁気回路44が破損する。また錦糸線50が突っ張った状態での振動を繰り返すことで、錦糸線50が断線・破損しうる。
【0018】
図3は、本実施例に係るスピーカ200の無入力時における構造を示す断面図である。スピーカ200は、フレーム210、振動板220、エッジ222、端子板230、ボイスコイルボビン240、ボイスコイル242、磁気回路244、ダンパ246、錦糸線250を含む。フレーム210、開口212、振動板220、エッジ222、ボイスコイルボビン240、ボイスコイル242、磁気回路244、ダンパ246は、フレーム10、開口12、振動板20、エッジ22、ボイスコイルボビン40、ボイスコイル42、磁気回路44、ダンパ46と同一であるので、ここでは説明を省略する。
【0019】
図4は、スピーカ200の無入力時における構造を示す部分斜視図である。これは、図3の端子板230の周辺を拡大した図である。端子板230はフレーム210に設けられる。端子板230における接続端232には錦糸線250が接続される。錦糸線250は、振動板220に設けられた貫通孔224を通過して、ボイスコイル242(図示せず)にも接続される。端子板230には、接続端232に隣接して、例えば、半円柱形状の弾性部材260が設けられる。弾性部材260の形状は限定されず、円柱形状や四角柱形状、球状であってもよい。また弾性部材260が配置される位置は、端子板230とボイスコイル242を接続する錦糸線250の周囲であって、ボイスコイル242が想定される振幅の範囲を超えて上側に移動する場合に、錦糸線250が変位する範囲内である。弾性部材260の平面部分が端子板230に接続され、弾性部材260の円弧部分が端子板230とは反対を向く。接続端232に接続された錦糸線250は、弾性部材260の円弧部分に沿って迂回してから貫通孔224に至る。この迂回によって錦糸線250の実質的な長さは短くされる。弾性部材260は、予め定められる電流範囲の電流が錦糸線250を介してボイスコイル242に入力されている場合、言い換えると、ボイスコイルボビン240やボイスコイル242を含む振動系の振幅量が想定される範囲以内であり、錦糸線250のスタイリングが維持されている場合には、弾性部材260は錦糸線250に接触しない位置に設置されることが好ましい。また、弾性部材260は、例えば樹脂等の弾性を有する材料で形成される。
【0020】
図5は、予め定められる電流範囲を超えた過大電流が錦糸線250を介してボイスコイル242に入力された場合における、スピーカ200の上側ストローク時の構造を示す断面図である。図6は、スピーカ200の上側ストローク時における構造を示す部分斜視図である。上側ストローク時では、ボイスコイル242が上側に向かって移動する。予め定められる電流範囲を超えた過大電流が錦糸線250を介してボイスコイル242に入力された場合、ボイスコイル242は、予め定められる電流範囲の電流が入力される場合よりも大きな振幅をもって、上側に向かって移動する。ボイスコイル242の移動の結果、錦糸線250には、突っ張りによって上側に向かう力が加わる。本実施例では、この力を移動応力と呼ぶ。その際、図6に示すように、錦糸線250は弾性部材260に当接し、弾性部材260は錦糸線250の移動応力により押しつぶされ、径が短くなるように変形する。その結果、錦糸線250が実質的に長くなることによって、錦糸線250の突っ張りが緩和される。弾性部材260は、予め定められる電流範囲を超えた過大電流が錦糸線250を介してボイスコイル242に入力され、かつボイスコイル242が放音方向に移動する場合に、ボイスコイル242の振動に応じて錦糸線250に生じる移動応力により押しつぶされるように変形する位置に設置される。言い換えると、ボイスコイル242が、放音方向に想定される振幅量以上に移動する場合に、錦糸線250により押しつぶされるように変形する位置や方向に、弾性部材260が配置される。
【0021】
予め定められる電流範囲を超えた過大電流が錦糸線250を介してボイスコイル242に入力され、ボイスコイル242が、放音方向と逆方向、つまり下側移動する場合について説明する。このとき、ダンパ246が磁気回路244に当接してストロークが制限されるため、弾性部材260が変形することで錦糸線250の突っ張りを緩和する必要がない。つまり弾性部材260が配置される位置は、予め定められる電流範囲を超えた過大電流が錦糸線250を介してボイスコイル242に入力され、かつボイスコイル242が放音方向に移動する場合に変形する位置であればよい。
【0022】
本実施例によれば、弾性部材260が、ボイスコイル242の振動に応じて錦糸線250に生じる移動応力により、変形するので、錦糸線250の実質的な長さを長くできる。また、錦糸線250の実質的な長さが長くなるので、ボイスコイル242に加わる応力を緩和できる。また、ボイスコイル242に加わる応力が緩和されることにより、ボイスコイルが引っ張られて傾くことを抑制でき、ボイスコイル242の破損を抑制できる。また、ボイスコイル242の破損が抑制されるので、最大入力を超えた過大電流が入力された場合においても、スピーカ200の破損を抑制できる。
【0023】
また、予め定められる電流範囲を超えた過大電流が前記錦糸線250を介してボイスコイル242に入力され、かつボイスコイル242が放音方向に移動する場合に、ボイスコイル242の振動に応じて錦糸線250に生じる移動応力により変形する位置に弾性部材260が設置されるので、弾性部材260を変形させることができる。また、予め定められる電流範囲の電流が錦糸線250を介してボイスコイル242に入力されている場合、錦糸線250に接触しない位置に弾性部材260が設置されるので、弾性部材260を変形させなくできる。また、弾性部材260が変形しないので、錦糸線250の適正な設計長さを保持できる。
【0024】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0025】
200 スピーカ、 210 フレーム、 212 開口、 220 振動板、 222 エッジ、 224 貫通孔、 230 端子板、 232 接続端、 240 、ボイスコイルボビン、 242 ボイスコイル、 244 磁気回路、 246 ダンパ、 250 錦糸線、 260 弾性部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6