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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013686
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】両面接着シート及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20230119BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230119BHJP
【FI】
C09J7/20
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118046
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】弘重 裕司
(72)【発明者】
【氏名】中山 航
【テーマコード(参考)】
4J004
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CB01
4J004CE01
4J004EA05
4J004FA05
(57)【要約】
【課題】薄くて接着力及び引張強度に優れており、厚さ方向と面内方向の両方で導電性を有する両面接着シートを提供する。
【解決手段】一実施態様の面内導電性を有する両面接着シートは、厚さ20μm以下の感圧接着層と、感圧接着層の内部に配置された、導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層と、導電性フィラーとを含み、第1感圧接着面及び第1感圧接着面の反対側の第2感圧接着面を有する。感圧接着層は第1感圧接着面から繊維層を通って第2感圧接着面まで連続しており、導電性フィラーの少なくとも一部と導電性電界紡糸連続繊維とが電気的に接触している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ20μm以下の感圧接着層と、
前記感圧接着層の内部に配置された、導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層と、
導電性フィラーと
を含む、第1感圧接着面及び前記第1感圧接着面の反対側の第2感圧接着面を有する両面接着シートであって、
前記感圧接着層が前記第1感圧接着面から前記繊維層を通って前記第2感圧接着面まで連続しており、
前記導電性フィラーの少なくとも一部と前記導電性電界紡糸連続繊維とが電気的に接触している、面内導電性を有する両面接着シート。
【請求項2】
前記導電性電界紡糸連続繊維の繊維径が100nm~3μmである、請求項1に記載の両面接着シート。
【請求項3】
前記導電性フィラーが球状又は平板状である、請求項1又は2のいずれかに記載の両面接着シート。
【請求項4】
前記導電性フィラーが平板状であり、前記導電性フィラーの平均粒径が、前記感圧接着層の厚さの1~15倍である、請求項1~3のいずれか一項に記載の両面接着シート。
【請求項5】
前記導電性電界紡糸連続繊維がポリウレタンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の両面接着シート。
【請求項6】
前記導電性電界紡糸連続繊維がカーボンナノチューブを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の両面接着シート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載された両面接着シートを含む、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、両面接着シート、及び両面接着シートを含む電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性両面接着テープが電子機器の接地又は電磁シールドに使用されている。導電性フィラーを含む接着層転写テープ(ATT、adhesive transfer tape)、アルミニウムなどの金属箔基材の両面に導電性フィラーを含む接着層をコーティングした導電性両面接着テープ、及び導電性不織布基材と導電性フィラーを含む導電性両面接着テープが市販されている。
【0003】
特許文献1(国際公開第2011/040752号)は、電子部品の電気接続部同士の選択的な通電のための電子部品パッケージ用の導電性接着剤であって、不規則に形成された網構造の非導電性のポリマーナノファイバー構造体が一つ又は二つ以上の接着層に含まれることを特徴とする電子部品パッケージ用接着剤を記載している。
【0004】
特許文献2(特開2002-294190号公報)は、「穿孔された合成樹脂フィルムの両面に金属鍍金層を設け、金属鍍金層の片面に導電性粘着剤層を設けてなることを特徴とする導電性粘着テープ」を記載している。
【0005】
特許文献3(特開2010-251292号公報)は、「金属前駆体及び導電性高分子物質の少なくとも一方が混合された混合溶液を形成する段階と、導電性構造体が形成されるように、前記混合溶液を微粒化して基板の表面に噴射する段階と、電気伝導度が向上するように、前記導電性構造体にカーボンナノチューブを結合させる段階とを含むことを特徴とする導電性フィルム製造方法」を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/040752号
【特許文献2】特開2002-294190号公報
【特許文献3】特開2010-251292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子機器の小型化、薄型化が進んでおり、導電性両面接着テープをより薄くすることが望まれている。しかし、従来の導電性両面接着テープの厚さを減らす、例えば20μm以下にすることは以下の理由から難しい。接着層転写テープ(ATT)は、接着剤が基材に支持されておらず接着剤の凝集力が小さいため、貼り合わせ後に容易に染み出す、ピッキング(接着部に隣接する部材に接着剤が付着すること)が生じる、あるいはダイカット等の切断加工が困難である。また、ATTの接着力を維持しながらその取扱性を高めることは非常に困難である。金属箔基材又は不織布基材をコアに含む導電性両面接着テープは、金属箔又は不織布の厚さを減らすことが難しく、代わりに接着層の厚さを減らすと接着力が低下する。
【0008】
導電性フィラーを含むATTでは、隣接する導電性フィラー同士の電気的な接触がATTの内部及び表面近傍で連続することにより導電性が提供される。一般的なATTでは導電性フィラーは均一に分散されている。そのため、厚さ方向及び面内方向の両方について導電性を有するATTを得ようとした場合、導電性フィラーの充填量を高める必要がある。しかし、導電性フィラーの充填量を高めると、ATTの機械的強度、柔軟性又は接着力が損なわれる。
【0009】
本開示は、薄くて接着力及び引張強度に優れており、厚さ方向と面内方向の両方で導電性を有する両面接着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施態様によれば、厚さ20μm以下の感圧接着層と、前記感圧接着層の内部に配置された、導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層と、導電性フィラーとを含む、第1感圧接着面及び前記第1感圧接着面の反対側の第2感圧接着面を有する両面接着シートであって、前記感圧接着層が前記第1感圧接着面から前記繊維層を通って前記第2感圧接着面まで連続しており、前記導電性フィラーの少なくとも一部と前記導電性電界紡糸連続繊維とが電気的に接触している、面内導電性を有する両面接着シートが提供される。
【0011】
別の実施態様によれば、上記両面接着シートを含む電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、薄くて接着力及び引張強度に優れており、厚さ方向と面内方向の両方で導電性を有する両面接着シートを得ることができる。本開示の両面接着シートは、電子機器の接地又は電磁シールドに好適に使用することができる。
【0013】
上述の記載は、本開示の全ての実施態様及び本開示に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施態様の両面接着シートの概略断面図である。
図2】電界紡糸連続繊維のSEM画像((a)例1、(b)例3、(c)例4、(d)例5、(e)例8、(f)比較例1)である。
図3】両面接着シートの光学顕微鏡写真(倍率1000倍、(a)例7、(b)比較例1、(c)参考例1)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0016】
本開示において「連続繊維」とは、繊維径に対する長さの比(長さ/繊維径)が約1000以上である繊維を意味する。
【0017】
本開示において「感圧接着層が第1感圧接着面から繊維層を通って第2感圧接着面まで連続する」とは、繊維層が感圧接着層の第1感圧接着面と第2感圧接着面の間に位置し、かつ感圧接着層の材料が繊維層の空隙の全体又は一部に浸透し貫通することで、感圧接着層が第1感圧接着面から第2感圧接着面まで厚さ方向に材料としての一体性を保持したまま、繊維層を内部に包含している状態を意味する。
【0018】
一実施態様の両面接着シートは、厚さ20μm以下の感圧接着層と、感圧接着層の内部に配置された、導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層と、導電性フィラーとを含み、第1感圧接着面及び第1感圧接着面の反対側の第2感圧接着面を有する。感圧接着層は、第1感圧接着面から繊維層を通って第2感圧接着面まで連続しており、導電性フィラーの少なくとも一部と導電性電界紡糸連続繊維とが電気的に接触している。感圧接着層の全体が第1感圧接着面から繊維層を通って第2感圧接着面まで連続していてもよく、感圧接着層の一部が第1感圧接着面から繊維層を通って第2感圧接着面まで連続してもよい。
【0019】
本開示の両面接着シートの感圧接着層は、第1感圧接着面から導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層を通って第2感圧接着面まで連続しているため、20μm以下と非常に薄い感圧接着層の厚さを有効に利用して、第1感圧接着面及び第2感圧接着面の両方において高い接着力を示すことができる。また、感圧接着層の内部に配置された導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層は、それ自体が両面接着シートの強度部材となるだけでなく、感圧接着層との絡み合い又は共連続構造を形成して感圧接着層の凝集力を高めることにも寄与し、それにより両面接着シートの引張強度をより高めることができる。導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層の存在により感圧接着層の凝集力が高まることにより、特に濡れ性の高い感圧接着層の凝集破壊を防止し、その結果接着力をさらに高めることができる場合もある。
【0020】
更に、本開示の両面接着シートにおいて、感圧接着層の内部に配置された導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層は、その連続繊維のネットワーク構造に起因して、面内方向の導電性の経路を提供する。導電性フィラーは、単独で、又は複数の導電性フィラーが電気的に接触することで、両面接着シートに厚さ方向の導電性、すなわち第1感圧接着面と第2感圧接着面との間に導電性の経路を提供する。繊維層の導電性電界紡糸連続繊維と導電性フィラーの少なくとも一部が電気的に接触することで、導電性フィラーによって提供される厚さ方向の導電性の経路が、導電性電界紡糸連続繊維により面内方向に導通して広がる。これにより、両面接着シートに、その厚さ方向と面内方向の両方に導電性を付与することができる。
【0021】
一実施態様の両面接着シートの概略断面図を図1に示す。両面接着シート10は、感圧接着層12と、感圧接着層12の内部に配置された連続繊維を含む繊維層14と、導電性フィラー16とを含む。感圧接着層12は第1感圧接着面122から繊維層14を通って第2感圧接着面124まで連続している。導電性フィラー16の少なくとも一部と繊維層14の導電性電界紡糸連続繊維とは電気的に接触している。
【0022】
両面接着シートは、感圧接着層の第1感圧接着面又は第2感圧接着面を保護するライナーを有してもよい。図1では、任意の構成要素として、第1感圧接着面122及び第2感圧接着面124をそれぞれ被覆するライナー22及び24が示されている。ライナーは、感圧接着層の形成時又は両面接着シートの取扱時に支持体として機能してもよい。ライナーとして、例えば、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのプラスチック材料、このようなプラスチック材料で被覆された紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。ライナーの厚さは、一般に約5μm以上、約15μm以上、又は約25μm以上、約300μm以下、約200μm以下、又は約150μm以下である。
【0023】
感圧接着層は、様々な種類の感圧接着剤を含む感圧接着組成物を用いて形成することができる。感圧接着剤としては、例えば、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、及びゴム系の感圧接着剤が挙げられる。感圧接着剤は、溶剤型、エマルション型、又は無溶剤型であってよい。感圧接着剤は、ホットメルト型、熱硬化型、又は紫外線硬化型であってもよい。感圧接着組成物は、後述する導電性フィラーを含むことが好ましい。
【0024】
一実施態様では、感圧接着層はアクリル系感圧接着組成物を用いて形成されるアクリル系感圧接着層である。アクリル系感圧接着層は、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤などの架橋剤により架橋されてもよい。
【0025】
感圧接着層は、必要に応じて、粘着付与剤、シランカップリング剤、分散剤、可塑剤、顔料、染料、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定化剤等の添加剤を含んでもよい。
【0026】
感圧接着層の厚さは約20μm以下である。一実施態様では、感圧接着層の厚さは、約12μm以下、約8μm以下、又は約6μm以下である。感圧接着層の厚さの下限は特に制限されないが、約0.5μm以上、約1μm以上、又は約1.5μm以上とすることができる。
【0027】
一実施態様では、感圧接着層の貯蔵弾性率G’は、温度20℃~22℃、10ラジアン/秒で測定したときに3×10Pa未満(ダールキスト基準)である。
【0028】
感圧接着層の内部に配置される繊維層は、導電性電界紡糸連続繊維を含む。繊維層の導電性電界紡糸連続繊維として様々なものを使用することができる。繊維層の導電性電界紡糸連続繊維の一部が感圧接着層の第1感圧接着面又は第2感圧接着面から突出していてもよい。
【0029】
導電性電界紡糸連続繊維は、電界紡糸法により形成することができる。電界紡糸法は、繊維径が小さくて長い連続繊維、例えば連続ナノ繊維の形成に適しており、比較的疎な、すなわち空隙の多い繊維層を形成することができる。このような空隙の多い繊維層は、第1感圧接着面から第2感圧接着面に至る感圧接着層の連続性を高め、また、感圧接着層と繊維層との共連続構造の形成を容易にする。その結果、両面接着シートの厚さを増加させずに感圧接着層の凝集力を高めて、高い引張強度を両面接着シートに付与することができ、場合によっては接着力も高めることができる。
【0030】
一実施態様では、導電性電界紡糸連続繊維の繊維径は約100nm以上、約150nm以上、又は約200nm以上、約3μm以下、約2μm以下、又は約1μm以下である。一般に、繊維組成に基づく導電性電界紡糸連続繊維自体(一本の導電性電界紡糸連続繊維)の体積抵抗率は、導電性フィラーの体積抵抗率よりも低い。導電性電界紡糸連続繊維の繊維径を、約100nm以上、約3μm以下とすることにより、導電性フィラーの導電性を有効に利用して、低抵抗の両面接着シートを得ることができる。導電性電界紡糸連続繊維の繊維径は、両面接着シートを切断した際の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、任意に選択した10本の導電性電界紡糸連続繊維の繊維径の平均値によって規定される。
【0031】
一実施態様では、導電性電界紡糸連続繊維の繊維径に対する長さの比(長さ/繊維径)は、約2000以上、約5000以上、又は約10000以上である。
【0032】
一実施態様では、繊維層の目付(紡糸量)は、約0.1g/m以上、約0.12g/m以上、又は約0.15g/m以上、約3.0g/m以下、約2.0g/m以下、又は約1.5g/m以下である。
【0033】
一実施態様では、繊維層の導電性電界紡糸連続繊維は、両面接着シートの厚さの約0.4%以上、約0.5%以上、又は約0.6%以上、約95%以下、約90%以下、又は約85%以下の領域に存在する。
【0034】
繊維層は、導電性電界紡糸連続繊維のみから構成されてもよく、導電性電界紡糸連続繊維同士が溶着することにより形成されたビーズ(ノード)を更に含んでもよい。
【0035】
一実施態様では、導電性電界紡糸連続繊維は、ポリマーバインダー中に分散された導電性ナノ材料を含む。
【0036】
ポリマーバインダーとしては、例えば、ポリウレタン(PU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンコポリマー等のフルオロポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、及びこれらのブレンドが挙げられる。
【0037】
一実施態様では、導電性電界紡糸連続繊維はポリウレタンを含む。ポリウレタンは、電界紡糸組成物中に高濃度で配合することができるため、より直径が大きい、すなわちより抵抗が低い電界紡糸連続繊維を有利に得ることができる。
【0038】
一実施態様では、導電性電界紡糸連続繊維は、ポリマーバインダーを約50質量%以上、約55質量%以上、約60質量%以上、約70質量%以上、約75質量%以上、又は約80質量%以上、約98質量%以下、約95質量%以下、又は約90質量%以下含む。
【0039】
導電性ナノ材料は導電性電界紡糸連続繊維に導電性を付与する。一実施態様では、導電性ナノ材料は、ナノ炭素材料、ナノ金属、及びナノ金属酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。導電性ナノ材料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
ナノ炭素材料としては、例えば、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)等のカーボンナノチューブ(CNT)、及びグラフェンが挙げられる。ナノ炭素材料は、導電性電界紡糸連続繊維との絡み合いの観点から異方性の形状を有していることが好ましく、カーボンナノチューブであることがより好ましい。
【0041】
ナノ金属としては、例えば、金、銀、及び銅が挙げられる。ナノ金属は、高い導電性を有していることが好ましい。
【0042】
ナノ金属酸化物としては、例えば、酸化スズナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、及び酸化インジウムが挙げられる。ナノ金属酸化物は、耐熱性、耐薬品性に優れるなど、化学的に安定であることが好ましい。
【0043】
導電性電界紡糸連続繊維は、導電性ナノ材料としてナノ炭素材料を含むことが好ましく、具体的にはカーボンナノチューブを含むことが好ましい。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、又はこれらの組み合わせであってよい。ファンデルワールス力により複数のカーボンナノチューブがバンドル構造を形成することが知られている。カーボンナノチューブのバンドル構造が少なくとも部分的に維持された状態で、カーボンナノチューブをポリマーバインダー中に分散させると、カーボンナノチューブの使用量を低減しつつ、電界紡糸連続繊維に効果的に導電性を付与することができる。
【0044】
カーボンナノチューブでは、主に最表層が導電性に寄与する。そのため、多層カーボンナノチューブと比べて単位質量あたりの表面積が大きい単層カーボンナノチューブは、電界紡糸連続繊維により効率よく導電性を付与することができる。
【0045】
多層カーボンナノチューブはポリマーバインダーとの親和性が単層カーボンナノチューブと比べて高い。そのため、多層カーボンナノチューブはより高濃度でポリマーバインダー中に分散させることができ、電界紡糸連続繊維の導電性をより高めることができる。また、多層カーボンナノチューブのポリマーバインダーとの親和性の高さは、ポリマーバインダーを電界紡糸組成物中に高濃度で配合することも可能にする。そのため、多層カーボンナノチューブを用いることにより、より直径が大きい、すなわちより抵抗が低い電界紡糸連続繊維を有利に得ることができる。
【0046】
一実施態様では、導電性電界紡糸連続繊維は、導電性ナノ材料を約1質量%以上、約2質量%以上、又は約5質量%以上、約50質量%以下、約45質量%以下、約40質量%以下、約30質量%以下、約25質量%以下、又は約20質量%以下含む。
【0047】
一実施態様では、導電性電界紡糸連続繊維中のポリマーバインダーと導電性ナノ材料の質量比は、ポリマーバインダーの質量/導電性ナノ材料の質量=約50/50~約99/1、約55/45~約98/2、又は約60/40~約95/5である。
【0048】
繊維組成に基づく導電性電界紡糸連続繊維自体(一本の導電性電界紡糸連続繊維)の体積抵抗率は、好ましくは約10Ωcm以下、より好ましくは約10Ωcm以下、更に好ましくは約10Ωcm以下である。繊維組成に基づく導電性電界紡糸連続繊維自体(一本の導電性電界紡糸連続繊維)の体積抵抗率は、一般に約10-4Ωcm以上である。
【0049】
導電性フィラーは、両面接着シートに少なくとも厚さ方向の導電性を付与し、その少なくとも一部は、繊維層の導電性電界紡糸連続繊維と電気的に接触している。導電性フィラーは、両面接着シートの強度向上に寄与する場合もある。導電性フィラーは感圧接着層に含ませることができる。導電性フィラーは繊維層の空隙を通って存在してもよい。導電性フィラーは第1感圧接着面又は第2感圧接着面に露出していてもよい。導電性フィラーは両面接着シートの厚さに沿って均一に分布してもよく、不均一に分布してもよい。導電性フィラーは、第1感圧接着面と第2感圧接着面の間で両面接着シートの厚さに沿って濃度勾配があるように分布してもよい。
【0050】
導電性フィラーとしては、例えば、銀、白金、金、銅、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、鉄、スズなどの金属又はこれらの金属を2種以上含む金属合金の粒子;これらの金属又はこれらの金属を2種以上含む金属合金がメッキされた、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機粒子、銅、ニッケル等の非貴金属粒子、又は樹脂粒子;及びカーボン粒子が挙げられる。
【0051】
導電性フィラーの形状は、球状又は平板状であることが好ましい。球状又は平板状の導電性フィラーは、感圧接着層の中に効率よく導電経路を構築することができる。
【0052】
一実施態様では、平板状の導電性フィラーの平均粒径は、感圧接着層の厚さの約1倍以上、約2倍以上、又は約3倍以上、約15倍以下、約10倍以下、又は約8倍以下である。平板状の導電性フィラーの平均粒径が、感圧接着層の厚さの約1倍以上、約15倍以下であることにより、一つの導電性フィラー粒子で感圧接着層の厚さ方向に導電経路を構築することができる。平板状の導電性フィラーの平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50)により決定される。
【0053】
一実施態様では、平板状の導電性フィラーのアスペクト比は、約10以上、約12以上、又は約15以上、約700以下、約500以下、又は約400以下である。平板状の導電性フィラーのアスペクト比が、約10以上、約700以下であることにより、感圧接着層の厚さ方向に、より少量の導電性フィラーで効率よく導電経路を構築することができる。本開示において、平板状の導電性フィラーのアスペクト比は、平板状の導電性フィラーの平均粒径と平均厚さの比(平均粒径/平均厚さ)として定義される。平板状の導電性フィラーの平均厚さは、顕微鏡による観察により決定される。
【0054】
一実施態様では、両面接着シートは、導電性フィラーを約3質量%以上、約4質量%以上、又は約5質量%以上、約25質量%以下、約20質量%以下、又は約18質量%以下含む。
【0055】
一実施態様では、両面接着シートは以下の手順で製造される。第1感圧接着層を用意する。第1感圧接着層の上に電界紡糸法により導電性電界紡糸連続繊維を堆積して、繊維層を形成する。繊維層の上に第2感圧接着層を形成する。第1感圧接着層と第2感圧接着層とを一体化して、第1感圧接着面から繊維層を通って第2感圧接着面まで連続する感圧接着層を形成する。
【0056】
第1感圧接着層及び第2感圧接着層は、上記感圧接着組成物を用いて形成することができる。第1感圧接着層はライナーの上に形成することができる。第2感圧接着層はライナーの上に形成した後、繊維層の上に転写してもよく、繊維層の上に直接形成してもよい。第1感圧接着層と第2感圧接着層は同じ材料を含んでもよく、互いに異なる材料を含んでもよい。一実施態様では、第1感圧接着層は導電性フィラーを含み、第2感圧接着層は導電性フィラーを含まない。第1感圧接着層及び第2感圧接着層の厚さは、一体化した後の感圧接着層の厚さが20μmを超えないように適宜決定することができる。
【0057】
導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層の形成は、例えば以下の手順により行うことができる。
【0058】
導電性電界紡糸連続繊維の原料としてポリマーバインダー及び導電性ナノ材料を含む電界紡糸組成物を調製する。電界紡糸組成物は、電界紡糸法に適した粘度及び固形分となるように溶媒で希釈されていてもよい。電界紡糸組成物に使用する溶媒として、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。導電性ナノ材料としてカーボンナノチューブを使用する場合、カーボンナノチューブを分散させる能力が高いことから、溶媒は、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、及びジメチルホルムアミドが好ましく、N-メチルピロリドンがより好ましい。電界紡糸組成物の全固形分は、例えば、約3質量%以上、約5質量%以上、又は約7質量%以上、約20質量%以下、約15質量%以下、又は約12質量%以下とすることができる。
【0059】
次に、電界紡糸組成物を電界紡糸法により第1感圧接着層の上に直接紡糸して、第1感圧接着層の上に導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層を形成する。電界紡糸法は、一般に、高電圧装置により高電位に印加された紡糸口、例えば小口径のシリンジ針などの金属管に、電界紡糸組成物を強制的に送り込むことを含む。紡糸口の先端において、電界紡糸組成物の液滴表面に電荷が蓄積して互いに反発することで、電界紡糸組成物の液滴は円錐状になる。電荷の反発力が電界紡糸組成物の表面張力を越えると、電界紡糸組成物は接地された捕集面(第1感圧接着層)に向かって次第に螺旋を描きながら噴射される。噴射された電界紡糸組成物の流れは電荷の反発力により引き伸ばされ、溶媒が揮発することで、捕集面の上に紡糸された連続繊維が捕集される。このようにして、第1感圧接着層の上に導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層が形成される。
【0060】
電界紡糸法により形成される繊維層の構造、例えば導電性電界紡糸連続繊維の繊維径、繊維層の厚さ、及び繊維層の空隙の量は、様々な製造条件を調整することにより制御することができる。そのような製造条件として、例えば、電界紡糸組成物の特性(全固形分、粘度、導電性、弾性、表面張力など)、紡糸環境(雰囲気の温度、湿度、圧力など)、及び紡糸条件(印加電圧、溶液送出量、紡糸口と捕集面の距離、捕集面の移動速度など)が挙げられる。導電性ナノ粒子は液滴表面に蓄積した電荷の反発を減少させることから、電界紡糸組成物の特性、特に粘度及び導電性は精密に制御される。
【0061】
第1感圧接着層と第2感圧接着層の一体化は、例えば、第1感圧接着層と第2感圧接着層とを互いに押し付けることによって行うことができる。押し付けるときの圧力は、例えば、約1×10Pa以上、約5×10Pa以上、又は約1×10Pa以上とすることができる。
【0062】
第1感圧接着層と第2感圧接着層の一体化は、第1感圧接着層及び第2感圧接着層を加熱することによって行うことができる。加熱により第1感圧接着層及び第2感圧接着層が軟化又は溶融して、これらの一体化を促進することができる。加熱温度は、例えば、約40℃以上、約50℃以上、又は約60℃以上、約100℃以下、約90℃以下、又は約80℃以下とすることができる。
【0063】
第1感圧接着層と第2感圧接着層の一体化を、上記加熱及び押し付けを組み合わせて行ってもよい。第1感圧接着層と第2感圧接着層の一体化は、第2感圧接着層を繊維層の上に直接形成することにより、第2感圧接着層の形成と同時に完了させることもできる。
【0064】
別の実施態様では、両面接着シートは以下の手順で製造される。感圧接着層を用意する。感圧接着層の上に電界紡糸法により導電性電界紡糸連続繊維を堆積して、繊維層を形成する。感圧接着層の内部に繊維層を埋め込んで、第1感圧接着面から繊維層を通って第2感圧接着面まで連続する感圧接着層を形成する。
【0065】
感圧接着層は上記感圧接着組成物を用いて形成することができる。感圧接着層はライナーの上に形成することができる。
【0066】
導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層の形成は上記の手順で行うことができる。
【0067】
感圧接着層の内部への繊維層の埋め込みは、例えば、感圧接着層と繊維層とを互いに押し付けることによって行うことができる。押し付けるときの圧力は、例えば、約1×10Pa以上、約5×10Pa以上、又は約1×10Pa以上とすることができる。
【0068】
感圧接着層の内部への繊維層の埋め込みは、感圧接着層を加熱することによって行うことができる。加熱により感圧接着層が軟化又は溶融して、繊維層の埋め込みを促進することができる。加熱温度は、例えば、約40℃以上、約50℃以上、又は約60℃以上、約100℃以下、約90℃以下、又は約80℃以下とすることができる。
【0069】
感圧接着層の内部への繊維層の埋め込みを、上記加熱及び押し付けを組み合わせて行ってもよい。
【0070】
別の実施態様では、両面接着シートは以下の手順で製造される。ライナーを用意する。ライナーの上に電界紡糸法により導電性電界紡糸連続繊維を堆積して、繊維層を形成する。繊維層の上に感圧接着層を形成する。感圧接着層の内部に繊維層を埋め込んで、第1感圧接着面から繊維層を通って第2感圧接着面まで連続する感圧接着層を形成する。
【0071】
感圧接着層は、上記感圧接着組成物を用いて形成することができる。感圧接着層はライナーの上に形成した後、繊維層の上に転写してもよく、繊維層の上に直接形成してもよい。
【0072】
導電性電界紡糸連続繊維を含む繊維層の形成は上記の手順で行うことができる。
【0073】
感圧接着層の内部への繊維層の埋め込みは、例えば、感圧接着層と繊維層とを互いに押し付けることによって行うことができる。押し付けるときの圧力は、例えば、約1×10Pa以上、約5×10Pa以上、又は約1×10Pa以上とすることができる。
【0074】
感圧接着層の内部への繊維層の埋め込みは、感圧接着層を加熱することによって行うことができる。加熱により感圧接着層が軟化又は溶融して、繊維層の埋め込みを促進することができる。加熱温度は、例えば、約40℃以上、約50℃以上、又は約60℃以上、約100℃以下、約90℃以下、又は約80℃以下とすることができる。
【0075】
感圧接着層の内部への繊維層の埋め込みを、上記加熱及び押し付けを組み合わせて行ってもよい。
【0076】
感圧接着層の内部に繊維層を埋め込んだ後、その上に第2感圧接着層をさらに形成し、感圧接着層と一体化してもよい。第2感圧接着層はライナーの上に形成した後、感圧接着層の上に転写してもよく、感圧接着層の上に直接形成してもよい。第2感圧接着層の感圧接着層への一体化は、上記第1感圧接着層と第2感圧接着層の一体化と同様に行うことができ、第2感圧接着層を感圧接着層の上に直接形成することにより、第2感圧接着層の形成と同時に完了させることもできる。第1感圧接着層と第2感圧接着層の厚さは、一体化した後の感圧接着層の厚さが20μmを超えないように適宜決定することができる。
【0077】
一実施態様では、両面接着シートの第1感圧接着面又は第2感圧接着面の接着力は、約1.0N/cm以上、約1.5N/cm以上、又は約2.0N/cm以上である。接着力は、表面を洗浄したSUS304BA板に測定対象となる感圧接着面を貼り合わせ、両面接着シートの上を2kgのローラーを一往復させて圧着し、23℃で20分間放置して作製した測定用試料を引張試験機にセットし、23℃、剥離速度300mm/分で測定した180度剥離強度である。第1感圧接着面と第2感圧接着面の接着力は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0078】
一実施態様では、両面接着シートの直流抵抗は、約20mΩ以上、約30mΩ以上、又は約40mΩ以上、約150mΩ以下、約120mΩ以下、又は約100mΩ以下である。両面接着シートの直流抵抗は、実施例に記載の手順により測定された値である。
【0079】
一実施態様では、両面接着シートの表面抵抗率は、約1012Ω/sq以下、約1011Ω/sq以下、又は約1010Ω/sq以下である。両面接着シートの表面抵抗率は、一般に約10Ω/sq以上である。両面接着シートの表面抵抗率は、JIS K 6911:2006に準拠した2重リングプローブを有する抵抗率計を用いて測定された値である。
【0080】
本開示の両面接着シートは、電磁波シールド、電磁ノイズから発生する電流の接地など、様々な目的で電子機器に使用することができる。本開示の両面接着シートの具体的な用途としては、例えば、クレジットカードのNFCアンテナにおける接地用導電性テープ、携帯電話におけるEMI用導電性DCテープ、5G用途における薄い熱界面部品に用いられる接地用導電性テープ、及びアルミニウム電解コンデンサ用導電性DCテープが挙げられる。本開示の両面接着シートは、特に小型化又は薄型化が要求される用途に好適に使用することができる。
【実施例0081】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれらに限定されない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。数値は本質的に測定原理及び測定装置に起因する誤差を含む。数値は通常の丸め処理が行われた有効数字で示される。
【0082】
本実施例で使用した試薬、材料等を以下の表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
感圧接着組成物A及びBを以下の表2の組成で調製した。
【0085】
【表2】
【0086】
電界紡糸組成物を以下の表3の組成で調製した。
【表3】
【0087】
例1
電界紡糸装置NANON-03(株式会社メック、日本国福岡県小郡市)のドラムコレクター上に、シリコーン・帯電防止処理PETフィルムである50N-KAJ2を取り付けた。先端にニードル(内径0.22mm)を装着したシリンジに電界紡糸組成物を入れ、ニードル先端とドラムコレクター表面の間隔が150mmになるように、シリンジをドラムコレクターの上方に取り付けた。ニードルとドラムコレクターの間に30kVの電圧を印加し、ドラムコレクターを100rpmで回転させ、シリンジをドラム回転方向に直交する方向に10mm/秒で往復移動させながら、溶液を0.5mL/時間で吐出させることで、PETフィルム上で導電性電界紡糸連続繊維を紡糸した。得られた導電性電界紡糸連続繊維は、14.9質量%の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を含んでおり、平均直径210nmの連続ナノ繊維と平均直径1.73μmのビーズとを含む、紡糸量0.2g/mのシート形状であった。導電性電界紡糸連続繊維のSEM画像(1500倍)を図2(a)に示す。
【0088】
電界紡糸組成物Aを容器に注ぎ、乾燥させて導電性フィルム片を得た。フィルムの体積抵抗率は、抵抗率計(ロレスタ-GX MCP-T700、日東精工アナリティック株式会社、日本国神奈川県大和市)を用いて4プローブ法により測定した。電界紡糸組成物Aから得られた導電性フィルム片の体積抵抗率は6.00×10-1Ωcmであった。
【0089】
両面接着シートを以下の手順で作製した。感圧接着組成物Aを両面シリコーン処理PETフィルムである50E-8811の重剥離面にノッチバーコーター(コンマコーター(登録商標)、株式会社ヒラノテクシード、日本国奈良県北葛城郡河合町)を用いて塗布し、65℃で2分間及び100℃で2分間の条件下、オーブン中で乾燥して厚さ2μmの第1感圧接着層を形成した。次に、得られた第1感圧接着層の上に導電性電界紡糸連続繊維のシート(繊維層)を積層することにより転写した。これにより得られた複合材料(第1感圧接着層+繊維層)では、繊維層の導電性電界紡糸連続繊維が、第1感圧接着層に含まれる導電性フィラーと接触していた。
【0090】
複合材料の表面抵抗率を、2重リングプローブを有する抵抗率計(ハイレスタ-UX、日東精工アナリティック株式会社、日本国神奈川県大和市)を用いて測定した。複合材料の表面抵抗率は6.34×1010Ω/sqであった。
【0091】
続いて、繊維層の上に感圧接着組成物Bをノッチバーコーター(コンマコーター(登録商標)、株式会社ヒラノテクシード、日本国奈良県北葛城郡河合町)を用いて塗布し、65℃で2分間及び100℃で2分間の条件下、オーブン中で乾燥して第2感圧接着層を形成して第1感圧接着層と一体化し、その上に別の50E-8811の軽剥離面を積層して、両面接着シートを作製した。50E-8811を除く両面接着シートの総厚は5μmであった。両面接着シートの導電性フィラーの含有量は15.2質量%であった。
【0092】
例2
紡糸量を0.4g/mとした以外は、例1に記載の手順で両面接着シートを作製した。第1感圧接着層と繊維層との複合材料の表面抵抗率は1.98×1011Ω/sqであった。
【0093】
例3
電界紡糸組成物Aに代えて電界紡糸組成物Bを用い、紡糸量を0.4g/mとした以外は、例1に記載の手順で両面接着シートを作製した。
【0094】
例3で得られた導電性電界紡糸連続繊維は、12.6質量%のMWCNTを含んでおり、平均直径160nmの連続ナノ繊維と平均直径1.09μmのビーズとを含むシート形状であった。導電性電界紡糸連続繊維のSEM画像(1500倍)を図2(b)に示す。電界紡糸組成物Bから得られた導電性フィルム片の体積抵抗率は4.62×10Ωcmであった。第1感圧接着層と繊維層との複合材料の表面抵抗率は4.80×1013Ω/sqであった。
【0095】
例4
電界紡糸組成物Aに代えて電界紡糸組成物Cを用い、紡糸量を0.4g/mとした以外は、例1に記載の手順で両面接着シートを作製した。
【0096】
例4で得られた導電性電界紡糸連続繊維は、18.4質量%のMWCNTを含んでおり、平均直径140nmの連続ナノ繊維と平均直径1.16μmのビーズとを含むシート形状であった。導電性電界紡糸連続繊維のSEM画像(1500倍)を図2(c)に示す。電界紡糸組成物Cから得られた導電性フィルム片の体積抵抗率は7.76×10Ωcmであった。第1感圧接着層と繊維層との複合材料の表面抵抗率は8.89×1010Ω/sqであった。
【0097】
例5~例7
電界紡糸組成物Aに代えて電界紡糸組成物Dを用い、紡糸量を0.2g/m(例5)、0.4g/m(例6)、又は0.8g/m(例7)とした以外は、例1に記載の手順で両面接着シートを作製した。
【0098】
例5~例7で得られた導電性電界紡糸連続繊維は、14.9質量%のMWCNTを含んでおり、平均直径840nmの比較的太い連続繊維を含むシート形状であった。例5の導電性電界紡糸連続繊維のSEM画像(1500倍)を図2(d)に示す。電界紡糸組成物Dから得られた導電性フィルム片の体積抵抗率は5.50×10Ωcmであった。第1感圧接着層と繊維層との複合材料の表面抵抗率は2.49×10Ω/sq(例5)、2.30×10Ω/sq(例6)、1.12×10Ω/sq(例7)であった。
【0099】
例8
例1において電界紡糸組成物Aに代えて電界紡糸組成物Eを用い、紡糸量を0.4g/mとした以外は、例1に記載の手順で両面接着シートを作製した。
【0100】
例8で得られた導電性電界紡糸連続繊維は、19.2質量%のMWCNTを含んでおり、平均直径650nmの比較的太い連続繊維を含むシート形状であった。導電性電界紡糸連続繊維のSEM画像(1500倍)を図2(e)に示す。電界紡糸組成物Eから得られた導電性フィルム片の体積抵抗率は9.88×10Ωcmであった。第1感圧接着層と繊維層との複合材料の表面抵抗率は3.62×10Ω/sqであった。例8の表面抵抗率の測定は、抵抗率計(ロレスタ-GX MCP-T700、日東精工アナリティック株式会社、日本国神奈川県大和市)を用いて4プローブ法により測定した。
【0101】
比較例1
ポリエーテルスルホンE3010を、N,N-ジメチルアセトアミド/ジクロロメタン混合溶媒(75/25、質量比)に溶解して、30質量%のポリエーテルスルホン溶液を得た。電界紡糸組成物Aに代えてこのポリエーテルスルホン溶液を用い、紡糸量を0.4g/mとした以外は、例1に記載の手順で両面接着シートを作製した。
【0102】
比較例1で得られた電界紡糸連続繊維は、平均直径1240nmの比較的太い連続繊維を含むシート形状であった。連続繊維のSEM画像(600倍)を図2(f)に示す。第1感圧接着層と繊維層との複合材料の表面抵抗率は、抵抗率計の測定限界を超えていたため得られなかった。
【0103】
参考例1
3M(登録商標)5112-10導電性接着剤転写テープ(スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都品川区)を用いた。5112-10導電性接着剤転写テープの厚さは10μmであり、導電性フィラーとして銀被覆銅フィラーを31.9質量%含んでいた。
【0104】
直流抵抗測定
50E-8811で両面が覆われた、例1~例8及び比較例1の両面接着シートを10mm×10mmの正方形に切断した。両面接着シートの一方の50E-8811を除去した後、試験用基板である3M(登録商標)ETM-7基板上の各電極の中央に感圧接着層を接触させて、両面接着シートをETM-7基板上に配置した。両面接着シートの他方の50E-8811を除去した後、3M(登録商標)ETM-12基板と感圧接着層とを接触させ、2kgのゴムローラーをETM-7基板の上で往復させて、両面接着シートをETM-7基板及びETM-12基板と接着した。20分間放置した後、4探針法デジタルミリオームメーターHIOKI 3541(日置電機株式会社、日本国長野県上田市)を用い、電極間の直流抵抗を測定した。
【0105】
表4に例1~例8及び比較例1の結果を示す。例1の両面接着シートではピッキングが生じて直流抵抗を測定することができなかった。
【表4】
【0106】
接着力
両面接着シートは、50E-8811(重剥離面)/感圧接着層-繊維層-感圧接着層/50E-8811(軽剥離面)の層構成を有しており、感圧接着層の50E-8811(重剥離面)側をうら面、50E-8811(軽剥離面)側をおもて面とする。
【0107】
うら面接着力の測定
両面接着シートから50E-8811(軽剥離面)を剥がし、感圧接着面(おもて面)に剥離処理を有さない25μm厚のPETフィルムを貼り合わせた。次いで、両面接着シートを10mm幅にスリットした後、50E-8811(重剥離面)を剥がし、感圧接着面(うら面)をSUS304BA板(長さ100mm、幅50mm、厚さ1mm)に貼り合わせ、両面接着シートの上を2kgのローラーを一往復させて圧着し、23℃で20分間放置して測定用試料を作製した。測定用試料を引張試験機(テンシロン(登録商標)万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)にセットし、温度23℃、剥離速度300mm/分で180度剥離強度を測定した。
【0108】
おもて面接着力の測定
両面接着シートを10mm幅にスリットした後、50E-8811(軽剥離面)を剥がし、感圧接着面(おもて面)をSUS304 BA板(長さ100mm、幅50mm、厚さ1mm)に貼り合わせた。次いで、50E-8811(重剥離面)を剥がし、15mm幅にスリットした剥離処理を有さない25μm厚のPETフィルムを感圧接着面(うら面)に貼り合わせ、両面接着シートの上を2kgのローラーを一往復させて圧着し、23℃で20分間放置して測定用試料を作製した。測定用試料を引張試験機(テンシロン(登録商標)万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)にセットし、温度23℃、剥離速度300mm/分で180度剥離強度を測定した。
【0109】
両面接着シートの表面抵抗率
両面接着シートの表面抵抗率を、2重リングプローブを有する抵抗率計(ハイレスタ-UX、日東精工アナリティック株式会社、日本国神奈川県大和市)を用いて測定した。
【0110】
表5に例5~例8、比較例1及び参考例1の結果を示す。
【0111】
【表5】
【0112】
図3に(a)例7、(b)比較例1及び(c)参考例1の両面接着シートの光学顕微鏡写真(倍率1000倍)を示す。黒色の塊は導電性フィラーを表し、黒色の糸状物は導電性電界紡糸連続繊維(例7)又は非導電性電界紡糸連続繊維(比較例1)を表す。
【0113】
本発明の様々な改良及び変更が本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく可能であることは当業者にとって自明である。
【符号の説明】
【0114】
10 両面接着シート
12 感圧接着層
14 繊維層
16 導電性フィラー
22、24 ライナー
122 第1感圧接着面
124 第2感圧接着面
図1
図2
図3