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特開2023-13689吸液用不織布積層体、ラップスポンジ及び吸液用不織布積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013689
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】吸液用不織布積層体、ラップスポンジ及び吸液用不織布積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/45 20060101AFI20230119BHJP
   D04H 1/425 20120101ALI20230119BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20230119BHJP
【FI】
D04H1/45
D04H1/425
D04H1/4374
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118052
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 香織
(72)【発明者】
【氏名】市川 太郎
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AA14
4L047BA06
4L047CA02
4L047CA05
4L047CA19
4L047CB07
4L047CC03
(57)【要約】
【課題】吸水性及び吸油性に優れる吸液用不織布を提供する。
【解決手段】セルロース系繊維aを含む繊維層Aと、熱可塑性樹脂を含む繊維bを含む不織布層Bと、を含む、吸液用不織布積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維aを含む繊維層Aと、
熱可塑性樹脂を含む繊維bを含む不織布層Bと、
を含む、吸液用不織布積層体。
【請求項2】
前記繊維層A及び前記不織布層Bの少なくとも一方の層を2層以上含み、前記繊維層A及び前記不織布層Bの合計の層数が3以上である、請求項1に記載の吸液用不織布積層体。
【請求項3】
糸による縫合により一体化されている、請求項1又は請求項2に記載の吸液用不織布積層体。
【請求項4】
前記糸は熱収縮性の糸であり、
前記熱収縮性の糸により縫合された積層体が熱処理されてなる、請求項3に記載の吸液用不織布積層体。
【請求項5】
少なくとも一方の表面に前記繊維層Aが位置する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の吸液用不織布積層体。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂がオレフィン系重合体を含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の吸液用不織布積層体。
【請求項7】
30cm角で130g重の荷重をかけた状態での厚み/目付が0.035以上である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の吸液用不織布積層体。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載された吸液用不織布積層体を含むラップスポンジ。
【請求項9】
セルロース系繊維aを含む繊維ウェブAと、熱可塑性樹脂を含む繊維bを含む繊維ウェブBとを一体化させて積層体を得る工程と、
前記積層体を収縮させる工程と、
を含む、吸液用不織布積層体の製造方法。
【請求項10】
前記積層体を得る工程では、糸による縫合が行われる、請求項9に記載の吸液用不織布積層体の製造方法。
【請求項11】
前記糸は熱収縮性の糸である、請求項10に記載の吸液用不織布積層体の製造方法。
【請求項12】
前記収縮させる工程は、前記積層体を80℃以上の環境下で加熱することを含む、請求項9~請求項11のいずれか1項に記載の吸液用不織布積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸液用不織布積層体、ラップスポンジ及び吸液用不織布積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手術中に生じる血液を吸収して視野を確保する用具として、ラップスポンジが用いられる。
ラップスポンジは、ガーゼが複数積層され、かつ縫製されたものである。ラップスポンジは、人体の内臓等の出血部位に接触させて血液を吸収させる際に使用され、柄が付いているものが多い。そのため、ラップスポンジは柄付きガーゼとも呼ばれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、手術中に体液、血液等を吸液するために用いる、溶剤紡糸セルロース繊維を主体として構成された繊維シートからなる手術用ガーゼが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-34507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
体液、血液等の液体、特に血液は水分と油分とが混在している。そのため、ラップスポンジでは、水分を吸収する性質と、油分を吸収する性質とを両立することが求められている。しかし、従来のラップスポンジ、及びラップスポンジの作製に用いられる繊維シートでは、油分の吸収が十分ではなく、吸水性及び吸油性の両立ができていない場合があった。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、吸水性及び吸油性に優れる吸液用不織布、前記吸液用不織布を含むラップスポンジ及び前記吸液用不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> セルロース系繊維aを含む繊維層Aと、
熱可塑性樹脂を含む繊維bを含む不織布層Bと、
を含む、吸液用不織布積層体。
<2> 前記繊維層A及び前記不織布層Bの少なくとも一方の層を2層以上含み、前記繊維層A及び前記不織布層Bの合計の層数が3以上である、<1>に記載の吸液用不織布積層体。
<3> 糸による縫合により一体化されている、<1>又は<2>に記載の吸液用不織布積層体。
<4> 前記糸は熱収縮性の糸であり、
前記熱収縮性の糸により縫合された積層体が熱処理されてなる、<3>に記載の吸液用不織布積層体。
<5> 少なくとも一方の表面に前記繊維層Aが位置する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の吸液用不織布積層体。
<6> 前記熱可塑性樹脂がオレフィン系重合体を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の吸液用不織布積層体。
<7> 30cm角で130g重の荷重をかけた状態での厚み/目付が0.035以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の吸液用不織布積層体。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載された吸液用不織布積層体を含むラップスポンジ。
<9> セルロース系繊維aを含む繊維ウェブAと、熱可塑性樹脂を含む繊維bを含む繊維ウェブBとを一体化させて積層体を得る工程と、
前記積層体を収縮させる工程と、
を含む、吸液用不織布積層体の製造方法。
<10> 前記積層体を得る工程では、糸による縫合が行われる、<9>に記載の吸液用不織布積層体の製造方法。
<11> 前記糸は熱収縮性の糸である、<10>に記載の吸液用不織布積層体の製造方法。
<12> 前記収縮させる工程は、前記積層体を80℃以上の環境下で加熱することを含む、<9>~<11>のいずれか1つに記載の吸液用不織布積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、吸水性及び吸油性に優れる吸液用不織布、前記吸液用不織布を含むラップスポンジ及び前記吸液用不織布の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において、数値範囲を示す「~」はその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0010】
[吸液用不織布積層体]
本開示の吸液用不織布積層体は、セルロース系繊維aを含む繊維層Aと、熱可塑性樹脂を含む繊維bを含む不織布層Bと、を含む。本開示の吸液用不織布積層体は、繊維層Aを含むことによって吸水性に優れ、不織布層Bを含むことによって吸油性に優れる。吸液用不織布積層体は、吸水性及び吸油性に優れることにより、血液等の液体を吸収する際に用いるラップスポンジに好適に適用される。
【0011】
本開示の吸液用不織布積層体は、液体、特に血液等の水分と油分とが混在している液体の吸液用途に使用されるものである。吸液用途に使用されていない不織布積層体、例えば、おむつのトップシート(尿が液体吸収材に吸収される際に通液する層)用の不織布積層体は吸液用不織布積層体に該当しない。
【0012】
本開示の吸液用不織布積層体の用途は特に限定されないが、吸水性及び吸油性が要求される用途に好適に使用される。本開示の吸液用不織布積層体は、例えば、血液等の液体を吸収する際に用いるラップスポンジ;ワイパー等の清掃用品;包帯、ばんそうこう等の治療用品;調理場、工場等でのふき取り用品などの吸水性及び吸油性の両方が要求される用途に使用されてもよい。
【0013】
本開示の吸液用不織布積層体は、少なくとも1つの繊維層A及び少なくとも1つの不織布層Bがそれぞれ厚さ方向に配置されていれば層構成は特に限定されない。
【0014】
(繊維層A)
本開示の吸液用不織布積層体は、セルロース系繊維aを含む繊維層Aを含む。吸液用不織布積層体は、1層の繊維層Aを含んでいてもよく、2層以上の繊維層Aを含んでいてもよい。
【0015】
吸液用不織布積層体が2層以上の繊維層Aを含む場合、各繊維層Aに含まれるセルロース系繊維aは同じであってもよく、異なっていてもよい。さらに、各繊維層Aの目付等の物性は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0016】
繊維層Aの目付は、特に限定されず、例えば、40g/m以上80g/m以下であることが好ましく、50g/m以上70g/m以下であることがより好ましい。また、収縮後の目付は、例えば、50g/m以上120g/m以下であることが好ましく、60g/m以上80g/m以下であることがより好ましい。
本開示における目付の測定方法は後述の実施例に記載の通りである。
なお、繊維層Aの目付は、1層当りの目付を意味する。
【0017】
繊維層Aに含まれるセルロース系繊維aとしては、例えば、麻、コットン、パルプ等の天然セルロース繊維、キュプラ、レーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、リヨセル等の再生セルロース繊維などが挙げられる。中でも、コットン、レーヨン等が好ましく、吸水性及び肌触りの観点から、コットンが好ましい。
【0018】
コットンとしては、脱脂綿、未脱脂綿等が挙げられる。脱脂綿は、漂白された脱脂漂白綿であってもよく、未脱脂綿は漂白された未脱脂漂白綿であってもよい。セルロース系繊維aとしてコットンを含む繊維層Aは、公知のカード法でコットンを開繊及び集積することにより得られるコットン繊維ウェブであってもよい。
コットンの繊維長は特に限定されず、10mm~100mm程度であればよい。
【0019】
繊維層Aにおけるセルロース系繊維aの含有量は、繊維層Aの全質量に対して70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。繊維層Aにおけるセルロース系繊維aの含有量の上限は特に限定されず、100質量%以下であればよい。
【0020】
繊維層Aにおけるセルロース系繊維aは、必要に応じて、通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、帯電剤、静電防止剤、吸収性粒子、ナノ粒子、イオン交換樹脂、消臭剤、芳香剤、接着剤、表面改質剤、殺生物剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等の種々公知の添加剤が挙げられる。これら他の成分は、セルロース系繊維aの内部に含まれていてもよく、セルロース系繊維aの表面に付着していてもよい。
【0021】
(不織布層B)
本開示の吸液用不織布積層体は、繊維bを含む不織布層Bを含む。吸液用不織布積層体は、1層の不織布層Bを含んでいてもよく、2層以上の不織布層Bを含んでいてもよい。
【0022】
吸液用不織布積層体が2層以上の不織布層Bを含む場合、各不織布層Bに含まれる繊維bは同じであってもよく、異なっていてもよい。さらに、各不織布層Bの目付等の物性は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
不織布層Bを構成する不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、湿式不織布、スパンレース不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、エアレイド不織布、ウォータージェット不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布、ニードルパンチ不織布等の、種々公知の不織布が挙げられる。吸液用不織布積層体が2層以上の不織布層Bを含む場合、2層以上の不織布層Bは、同じ種類の不織布によって構成されていてもよく、異なる種類の不織布によって構成されていてもよい。不織布層Bを構成する不織布としては、肌触り、嵩高さのほか、高い吸油性を持つ、強度が得られやすい、繊維リントが発生しにくいなどの観点から、スパンボンド不織布が好ましい。
【0024】
不織布層Bの目付は、特に限定されず、例えば、10g/m以上25g/m以下であることが好ましく、15g/m以上20g/m以下であることがより好ましい。
なお、不織布層Bの目付は、1層当りの目付を意味する。
【0025】
不織布層Bに含まれる繊維bは、熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、オレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、これら重合体を複数種含む熱可塑性樹脂組成物等が挙げられる。本開示において、熱可塑性樹脂は、熱可塑性樹脂組成物を含む概念である。
【0026】
オレフィン系重合体は、オレフィン由来の構造単位を主体として含む重合体であり、ポリエステル系重合体は、ポリエステルを構造単位として含む重合体であり、ポリアミド系重合体は、ポリアミドを構造単位として含む重合体である。
本開示において、主体として含むとは、対象となる物質が、全体に対して最も多く含まれることを表す。例えば、全体に占める割合として、対象となる物質の含有割合が50質量%以上であることを示す。
【0027】
熱可塑性樹脂は、オレフィン系重合体を含むことが好ましい。オレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体が挙げられる。
【0028】
α-オレフィンの単独重合体又は共重合体としては、より具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン、エチレン由来の構造単位を主体として含むエチレン・α-オレフィン共重合体等のエチレン系重合体、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレン由来の構造単位を主体として含むプロピレン・α-オレフィン共重合体等のプロピレン系重合体、1-ブテン単独重合体、1-ブテン由来の構造単位を主体として含む1-ブテン・α-オレフィン共重合体等の1-ブテン系重合体、4-メチル-1-ペンテン単独重合体、4-メチル-1-ペンテン由来の構造単位を主体として含む4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体等の4-メチル-1-ペンテン系重合体などが挙げられる。中でも、α-オレフィンの単独重合体又は共重合体としては、紡糸性、機械的強度、耐薬品性等に優れる観点から、プロピレン系重合体が好ましい。
【0029】
プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体及びプロピレン・α-オレフィン共重合体が挙げられる。プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体及びプロピレン・α-オレフィン共重合体の両方を含んでいてもよい。プロピレン・α-オレフィン共重合体の共重合に用いるα-オレフィンとしては、炭素数2以上のα-オレフィン(プロピレンを除く)が好ましく、炭素数2又は4~8のα-オレフィンがより好ましい。α-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が好ましい。
【0030】
プロピレン・α-オレフィン共重合体としては、より具体的には、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体等が挙げられる。
【0031】
プロピレン・α-オレフィン共重合体では、α-オレフィンに由来する構造単位の含有率は、全体の1モル%~10モル%であることが好ましく、全体の1モル%~5モル%であることがより好ましい。
【0032】
プロピレン系重合体の融点(Tm)は、120℃以上であることが好ましく、125℃~165℃であることがより好ましい。
本開示において、融点は以下のようにして測定される。
(1)プロピレン系重合体をパーキンエルマー社製示差走査熱量分析(DSC)の測定用パンにセットし、30℃から200℃まで、10℃/分で昇温し、200℃で10分間保持した後、30℃まで10℃/分で降温する。
(2)次に、再び、30℃から200℃まで10℃/分で昇温し、その間に観測されたピークから融点を求める。
【0033】
プロピレン単独重合体の融点(Tm)は、155℃以上であることが好ましく、157℃~165℃であることがより好ましい。
また、プロピレン・α-オレフィン共重合体の融点(Tm)は、120℃~155℃であることが好ましく、125℃~150℃であることがより好ましい。
【0034】
プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)(MFR:ASTM D-1238、230℃、荷重2160g)は、溶融紡糸可能な値であれば限定されず、20g/10分~100g/10分であることが好ましく、30g/10分~80g/10分であることがより好ましい。プロピレン系重合体のMFRが100g/10分以下であることにより、繊維bの機械的強度に優れる傾向にある。プロピレン系重合体のMFRが20g/10分以上であることにより、延伸紡糸時の繊維破断を抑制できる傾向にある。
【0035】
不織布層Bに含まれる繊維bは、1種の熱可塑性樹脂を含むモノコンポーネント繊維であってもよく、2種以上の熱可塑性樹脂を含む複合繊維であってもよい。複合繊維は、例えば、サイドバイサイド型、同芯芯鞘型又は偏芯芯鞘型であってもよい。偏芯芯鞘型の複合繊維は、芯部が表面に露出している露出型でもよく、芯部が表面に露出していない非露出型でもよい。
【0036】
複合繊維が芯鞘型である場合、鞘部と芯部との質量比(芯部/鞘部)としては、例えば、95/5~5/95であることが好ましく、90/10~10/90であることがより好ましく、60/40~10/90であることがさらに好ましい。
【0037】
繊維bは、プロピレン系重合体を含む複合繊維であることが好ましく、プロピレン系重合体を含む捲縮複合繊維であることがより好ましく、プロピレン系重合体を含む偏芯の芯鞘型捲縮複合繊維であることがさらに好ましい。
【0038】
繊維bは、前述のようにモノコンポーネント繊維又は複合繊維であってもよく、捲縮繊維、中空繊維、伸縮繊維等であってもよい。
【0039】
繊維bの平均繊維径は、5μm~30μmの範囲であることが好ましい。平均繊維径の上限としては、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
本開示における平均繊維径の測定方法は後述の実施例に記載の通りである。
【0040】
不織布層Bに含まれる繊維bは、必要に応じて、通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、親水剤、帯電剤、静電防止剤、吸収性粒子、ナノ粒子、イオン交換樹脂、消臭剤、芳香剤、接着剤、表面改質剤、殺生物剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等の種々公知の添加剤が挙げられる。これら他の成分は、繊維bの内部に含まれていてもよく、繊維bの表面に付着していてもよい。
【0041】
本開示の吸液用不織布積層体は、繊維層A及び不織布層Bの少なくとも一方の層を2層以上含み、繊維層A及び不織布層Bの合計の層数が3以上であってもよい。この場合、繊維層A及び不織布層Bの配置は特に限定されず、例えば、繊維層A及び不織布層Bが交互に積層されていてもよく、繊維層A及び不織布層Bがランダムに積層されていてもよい。
【0042】
繊維層A及び不織布層Bの合計の層数は、2以上であれば特に限定されず、例えば、3~8であってもよく、4~6であってもよい。
【0043】
本開示の吸液用不織布積層体では、吸水性の観点から、少なくとも一方の表面に繊維層Aが位置することが好ましい。吸液用不織布積層体では、一方の表面に繊維層Aが位置しかつ他方の表面に不織布層Bが位置していてもよく、両面に繊維層Aが位置していてもよい。
【0044】
本開示の吸液用不織布積層体は、繊維層A及び不織布層B以外のその他の層を含んでいてもよい。その他の層としては、編布、織布、フィルム、紙などが挙げられる。
【0045】
本開示の吸液用不織布積層体は、糸による縫合により一体化されていることが好ましい。縫合の形状としては、繊維層A、不織布層B等が一体化されていれば特に限定されない。例えば、吸液用不織布積層体の表面を観察して、吸液用不織布積層体の縦方向、横方向、縦方向及び横方向と交差する方向等の少なくとも一つの方向に沿って間隔を開けて糸による縫合がなされていてもよく、縦方向及び横方向等の交差する2つの方向にそれぞれ沿った状態で間隔を開けて糸による縫合(例えば、格子状となるような縫合)がなされていてもよい。あるいは、同心円状、同心四角状等の同心状に縫合がなされていてもよく、放射状に縫合がなされていてもよく、吸液用不織布積層体の表面中心に対して点対称となるように縫合がなされていてもよく、吸液用不織布積層体の表面に平行かつ当該表面の中心を通る線分に対して対称となるように縫合がなされていてもよい。
【0046】
縫合による縫い目ピッチは、特に限定されず、2.0mm~6.0mmであることが好ましく、2.5mm~5.0mmであることがより好ましい。縫い目ピッチが2.0mm以上であることにより、繊維層A等を熱収縮させて吸液用不織布積層体を作製した際に吸液用不織布積層体が硬くなりすぎることが抑制される傾向にある。縫い目ピッチが6.0mm以上であることにより、繊維層A等を熱収縮させて吸液用不織布積層体を作製した際に吸液用不織布積層体を嵩高くすることが可能となる傾向にある。
【0047】
縫合による縫い目ピッチは、吸液用不織布積層体に含まれる層の合計数(好ましくは繊維層A及び不織布層Bの合計の層数、以下同様)によって適宜変更してもよい。例えば、吸液用不織布積層体に含まれる層の合計数が2~5、好ましくは2~4である場合、縫い目ピッチは、2.0mm~6.0mmであることが好ましく、2.5mm~5.0mmであることがより好ましい。吸液用不織布積層体に含まれる層の合計数が5~8、好ましくは6~8である場合、縫い目ピッチは、3.0mm~6.0mmであることが好ましく、3.5mm~5.0mmであることがより好ましい。
【0048】
縦方向、横方向等の一定の方向にて隣り合う縫い目間の距離、又は同心状等にて隣り合う縫い目間の距離は、特に限定されず、2.0cm~10cmであることが好ましく、3.0cm~8.0cmであることがより好ましい。縫い目間の距離が2.0cm以上であることにより、繊維層A等を熱収縮させて吸液用不織布積層体を作製した際に吸液用不織布積層体が硬くなりすぎることが抑制される傾向にある。縫い目間の距離が10.0cm以上であることにより、繊維層A等を熱収縮させて吸液用不織布積層体を作製した際に吸液用不織布積層体を嵩高くすることが可能となる傾向にある。
【0049】
縫合に用いられる糸は、熱収縮性の糸であってもよく、熱によって収縮しない非収縮性の糸であってもよい。繊維層A等を熱収縮させて吸液用不織布積層体を作製する場合、糸の収縮により、繊維層A及び不織布層Bが変形して嵩高い吸液用不織布積層体が得られる観点から、縫合に用いられる糸は、熱収縮性の糸であることが好ましい。さら、本開示の吸液用不織布積層体は、熱収縮性の糸により縫合された積層体が熱処理されてなることが好ましい。
【0050】
熱収縮性の糸としては、加熱及び必要に応じて冷却することにより収縮する糸であれば特に限定されず、例えば、未延伸のポリエステル等が挙げられる。
【0051】
本開示の吸液用不織布積層体では、30cm角で130g重の荷重をかけた状態での厚み(以下、「低荷重での厚み」とも称する。)が、5mm~18mmであることが好ましく、8mm~15mmであることがより好ましい。
本開示における低荷重での厚みの測定方法は後述の実施例に記載の通りである。
【0052】
本開示の吸液用不織布積層体では、荷重ありでの厚みが、1mm~5mmであることが好ましく、2mm~4mmであることがより好ましい。
本開示における荷重ありでの厚みの測定方法は後述の実施例に記載の通りである。
【0053】
本開示の吸液用不織布積層体の目付は、特に限定されず、例えば、150g/m以上300g/m以下であることが好ましく、150g/m以上250g/m以下であることがより好ましい。
【0054】
本開示の吸液用不織布積層体では、低荷重での厚み/目付が0.035以上であることが好ましく、0.035~0.08であることがより好ましく、0.039~0.068であることがさらに好ましい。低荷重での厚み/目付が0.035以上であることにより、吸液用不織布積層体は嵩高くなることでクッション性に優れる傾向にあり、吸液用不織布積層体をラップスポンジに適用した場合、ラップスポンジを出血部位に接触させた際の刺激等が抑制される傾向にある。
なお、低荷重での厚み/目付において、低荷重での厚みの単位はmmであり、目付の単位はg/mである。
【0055】
本開示の吸液用不織布積層体は、繊維層A及び不織布層Bを含む積層体が熱処理又は水洗処理されたものであってもよく、糸(好ましくは熱収縮糸)により縫合された前述の積層体が熱処理又は水洗処理されたものであってもよい。これにより、繊維層A等が収縮することで吸液用不織布積層体は嵩高性に優れる傾向にあり、ラップスポンジとして好適に適用することができる。本開示の吸液用不織布積層体は、繊維層A及び不織布層Bを含む積層体が収縮したものであってもよく、繊維層A及び不織布層Bを含む積層体が収縮したものであってもよい。
【0056】
熱処理としては、積層体をオーブン内で加熱する方法等が挙げられる。水洗処理としては、積層体を水洗いし、次いで乾燥させる方法が挙げられる。
【0057】
熱処理された本開示の吸液用不織布積層体について、低荷重での厚みが、熱収縮前の積層体の低荷重での厚みと比較して30%~200%嵩高であることが好ましく、50%~150%嵩高であることがより好ましい。熱処理としては、例えば、110℃のオーブン内に積層体を5分間静置すればよい。
また、糸により縫合された積層体が既に熱処理された熱処理済みの積層体であるか、熱処理がされていない未処理積層体であるかについては、対象となる積層体に対して熱処理を行い、当該熱処理前後の低荷重での厚みの変化率から推測してもよい。熱処理を行った後の低荷重での厚みが熱処理を行う前の厚みに対して30%以上嵩高である場合、対象となる積層体を未処理積層体と推測してもよい。熱処理を行った後の低荷重での厚みが熱処理を行う前の厚みに対して30%未満嵩高である場合、対象となる積層体を熱処理済みの積層体と推測してもよい。
【0058】
[ラップスポンジ]
本開示のラップスポンジは、前述の本開示の吸液用不織布積層体を含む。本開示の吸液用不織布積層体は、吸水性及び吸油性に優れるため、本開示のラップスポンジは、液体、特に血液等の水分と油分とが混在している液体の吸収に好適に用いられる。
【0059】
[吸液用不織布積層体の製造方法]
本開示の吸液用不織布積層体の製造方法は、セルロース系繊維aを含む繊維ウェブAと、熱可塑性樹脂を含む繊維bを含む繊維ウェブBとを一体化させて積層体を得る工程と、前記積層体を収縮させる工程と、を含む。この製造方法によって、前述の本開示の吸液用不織布積層体を製造することができる。なお、本開示の吸液用不織布積層体は、この製造方法によって製造されたものには限定されない。
また、本開示の吸液用不織布積層体の好ましい条件を、吸液用不織布積層体の製造方法の好ましい条件として適用してもよい。
【0060】
本開示の吸液用不織布積層体の製造方法は、繊維ウェブAと、繊維ウェブBとを一体化させて積層体を得る工程を含む。
【0061】
繊維ウェブAは、セルロース系繊維aを含む繊維集合体であればよい。繊維ウェブAは、例えば、麻、コットン、パルプ等の天然セルロース繊維、キュプラ、レーヨン、ビスコースレーヨン、ポリノジックレーヨン、リヨセル等の再生セルロース繊維などを含む繊維集合体であればよい。
【0062】
例えば、セルロース系繊維aがコットンである場合、繊維ウェブAは公知のカード法でコットンを開繊及び集積することにより得られるコットン繊維ウェブであってもよい。繊維ウェブAは、コットンガーゼ等であってもよい。
【0063】
繊維ウェブBは、熱可塑性樹脂を含む繊維bを含む繊維集合体であればよい。例えば、繊維ウェブBは、熱可塑性樹脂を原料として用い、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法等の公知の製造方法により製造される不織ウェブであってもよい。
【0064】
例えば、繊維ウェブBは、スパンボンド法により製造されるスパンボンド不織ウェブであることが好ましい。スパンボンド不織ウェブは、例えば、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して連続繊維を形成する工程と、移動捕集部材上に、前記連続繊維を堆積させる工程と、によって製造される。必要に応じて、スパンボンド不織ウェブをエンボスロール等によって部分的に圧接してもよい。
【0065】
セルロース系繊維aを含む繊維ウェブAと、繊維bを含む繊維ウェブBとを積層する際は、少なくとも1層の繊維ウェブA及び少なくとも1層の繊維ウェブBを積層すればよい。
【0066】
繊維ウェブA及び繊維ウェブBを積層する際、繊維ウェブA及び繊維ウェブBの少なくとも一方の層が2層以上であり、繊維ウェブA及び繊維ウェブBの合計の層数が3以上であってもよい。この場合、繊維ウェブA及び繊維ウェブBの配置は特に限定されず、例えば、繊維ウェブA及び繊維ウェブBが交互に積層されていてもよく、繊維ウェブA及び繊維ウェブBがランダムに積層されていてもよい。
【0067】
繊維ウェブA及び繊維ウェブBの合計の層数は、2以上であれば特に限定されず、例えば、3~8であってもよく、4~6であってもよい。
【0068】
繊維ウェブA及び繊維ウェブBを積層する際、製造される吸液用不織布積層体での吸水性の観点から、少なくとも一方の表面に繊維ウェブAが位置することが好ましい。さらに一方の表面に繊維ウェブAが位置し、かつ他方の表面に繊維ウェブBが位置していてもよく、両面に繊維ウェブAが位置していてもよい。
【0069】
少なくとも1層の繊維ウェブA及び少なくとも1層の繊維ウェブBを、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、スティッチボンド法などの公知の方法を用いて一体化させて積層体を形成してもよい。吸液時の液体の浸透を促進させる観点から、ニードルパンチ法、スパンレース法が好ましい。また、繊維の脱落をより抑制する観点から、スパンレース法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法などが好ましい。
【0070】
積層体を得る工程では、糸による縫合が行われていてもよい。例えば、少なくとも1層の繊維ウェブA及び少なくとも1層の繊維ウェブBを厚さ方向に配置した後、これらを糸により縫合することで積層体を得てもよい。縫合の形状、縫合による縫い目ピッチ、縫い目間の距離等の好ましい条件は、前述の本開示の吸液用不織布積層体と同様である。
【0071】
少なくとも1層の繊維ウェブA及び少なくとも1層の繊維ウェブBに対して前述のケミカルボンド法等の公知の方法が行われた後に、糸による縫合が行われることで前述の繊維ウェブA及び繊維ウェブBが一体化されて積層体が得られてもよい。
【0072】
あるいは、積層体を構成する繊維ウェブA及び繊維ウェブBの一部を前述のケミカルボンド法等の公知の方法で一体化させた後に、糸による縫合が行われることで全体を一体化させて積層体を得てもよい。
【0073】
例えば、積層体の層構成が、繊維ウェブA(A1)/不織ウェブB(B1)/不織ウェブA(A2)/不織ウェブB(B2)である場合、A1及びB1を前述のケミカルボンド法等によって一体化させ、かつA2及びB2を前述のケミカルボンド法等によって一体化させた後に、一体化させたA1及びB1並びに一体化させたA2及びB2を重ね、次いでこれらを縫合させて積層体としてもよい。あるいは、A1、B1及びA2を前述のケミカルボンド法等によって一体化させた後に、一体化させたA1、B1及びA2、並び、単層のB2を重ね、次いでこれらを縫合させて積層体としてもよい。
【0074】
以上により、繊維ウェブAに由来の繊維層A及び繊維ウェブBに由来の不織布層Bを含む積層体が得られる。
【0075】
縫合に用いられる糸は、熱収縮性の糸であることが好ましい。熱収縮性の糸を用いることで、積層体を収縮させる際の熱処理によって糸が収縮することで繊維層A及び不織布層Bが変形して嵩高い吸液用不織布積層体が得られる傾向にある。
【0076】
本開示の吸液用不織布積層体の製造方法は、積層体を収縮させる工程を含む。積層体を収縮させる処理としては、積層体に対する熱処理、水洗処理等が挙げられる。嵩高い吸液用不織布積層体が得られる観点から、熱処理が好ましい。
【0077】
熱処理としては、積層体をオーブン内で加熱する方法等が挙げられる。水洗処理としては、積層体を水洗いし、次いで乾燥させる方法が挙げられる。
【0078】
熱処理の温度としては、セルロース系繊維a及び熱可塑性樹脂を含む繊維bが溶解、分解、発火等しない温度であればよく、80℃以上であってもよく、90℃~150℃であってもよく、100℃~130℃であってもよい。
熱処理の時間としては、例えば、1分~30分であってもよく、3分~10分であってもよい。
【0079】
縫合に用いられる糸が熱収縮性の糸である場合、積層体に対して熱処理を行うことによって積層体を収縮させることが好ましい。このとき、熱処理の温度としては、熱収縮性の糸が収縮する温度以上であり、かつセルロース系繊維a及び熱可塑性樹脂を含む繊維bが溶解、分解、発火等しない温度であればよく、熱収縮性の糸の材質によって適宜設定すればよい。熱収縮性の糸が未延伸のポリエステル等である場合、熱処理の温度としては、前述の温度条件を満たすことが好ましい。
【実施例0080】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
〔実施例1〕
(スパンボンド不織布の作製)
スパンボンド不織布の原料として、融点162℃、MFR(ASTM D1238に準拠し温度230℃、荷重2160gで測定。以下、特に断りが無い限り同様。)60g/10分のプロピレン単独重合体と、融点142℃、MFR60g/10分、エチレンに由来する構造単位の含有率4.0モル%、プロピレンに由来する構造単位の含有率96.0モル%のプロピレン・エチレンランダム共重合体と、をそれぞれ準備した。
【0082】
これらの原料を用い、スパンボンド法により、スパンボンド不織布を製造した。
詳細には、複合溶融紡糸により、芯部がプロピレン単独重合体であり、鞘部がプロピレン・エチレンランダム共重合体であり、鞘部と芯部との質量比(芯部/鞘部)が20/80である捲縮複合繊維を得た。得られた捲縮複合繊維を捕集面上に堆積させ、次いで、エンボス面積率18%及びエンボス温度110℃の条件にて堆積させた捲縮複合繊維をエンボス加工することにより、目付18g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布において、捲縮複合繊維の平均繊維径は、16μmであった。スパンボンド不織布に含まれる捲縮複合繊維は、詳細には偏芯の芯鞘型捲縮複合繊維であり、サイドバイサイド型の横断面形状を有していた。
【0083】
(ラップスポンジの作製)
上記で製造したスパンボンド不織布から2枚のスパンボンド不織布を用意し、2枚のコットンガーゼ(コットン100%、スズラン株式会社製、目付60g/m)を用意した。コットンガーゼ/スパンボンド不織布/コットンガーゼ/スパンボンド不織布の順に重ね合わせて積層体を準備した。電動ミシン(Brother社製)及び糸(大貫繊維株式会社製、ポリエステル熱収縮糸、40番手)を用いて、縫い目ピッチ2.5mmの条件で経糸と緯糸とが複数の正方形(1辺の長さ5.0cm)をなすように積層体を縫製した。
【0084】
縫製された積層体を金属トレー上に静置し、110℃のエアーオーブン内に5分間静置した。静置後にエアーオーブンから取り出してラップスポンジを得た。ラップスポンジの層構成は、コットンガーゼ/スパンボンド不織布/コットンガーゼ/スパンボンド不織布である。以下の実施例、比較例及び表1にて層構成に言及する場合、コットンガーゼの表記を「C」とし、スパンボンド不織布の表記を「S」とする。
【0085】
〔実施例2〕
実施例1においてラップスポンジの層構成を表1に記載の層構成に変更したこと以外は実施例1と同様にしてラップスポンジを作製した。
【0086】
〔実施例3〕
実施例1において縫い目ピッチを4.0mmに変更したこと以外は実施例1と同様にしてラップスポンジを作製した。
【0087】
〔実施例4〕
実施例1において層構成を表1に記載の層構成に変更したこと以外は実施例1と同様にしてラップスポンジを作製した。
【0088】
〔実施例5〕
実施例4において縫い目ピッチを4.0mmに変更したこと以外は実施例4と同様にしてラップスポンジを作製した。
【0089】
〔実施例6〕
実施例1において縫製に用いた糸を、非収縮性であるフジックス社製シャッペスパンポリエステル糸(60番手)に変更したこと以外は実施例1と同様にしてラップスポンジを作製した。
【0090】
〔実施例7〕
実施例4において縫製に用いた糸を、非収縮性であるフジックス社製シャッペスパンポリエステル糸(60番手)に変更したこと以外は実施例4と同様にしてラップスポンジを作製した。
【0091】
〔比較例1〕
4枚のコットンガーゼ(コットン100%、スズラン株式会社製、目付60g/m)を用意した。4枚のコットンガーゼを順に重ね合わせて積層体を準備した。電動ミシン(Brother社製)及び糸(株式会社フジックス製、ポリエステル非熱収縮糸、60番手)を用いて、縫い目ピッチ2.5mmの条件で経糸と緯糸とが複数の正方形(1辺の長さ5.0cm)をなすように積層体を縫製した。
【0092】
縫製された積層体を100℃のお湯に5分浸漬後、110℃の熱風に15分間晒して乾燥し、ラップスポンジを得た。ラップスポンジの層構成は、C/C/C/Cである。
【0093】
〔比較例2、3〕
実施例1において層構成を表1に記載の層構成に変更したこと以外は実施例1と同様にしてラップスポンジを作製した。
【0094】
〔比較例4〕
比較例2において縫い目ピッチを4.0mmに変更したこと以外は比較例2と同様にしてラップスポンジを作製した。
【0095】
得られたスパンボンド不織布及びラップスポンジについては、以下の測定及び評価を実施した。結果を表1に示す。
【0096】
(1)平均繊維径(μm)
スパンボンド不織布から、長さ10mm×幅10mmの矩形状の試験片を10個採取した。採取した各試験片を、Nikon社製ECLIPSE E400顕微鏡により、倍率300倍にて撮像した。画像に写っており、直径を視認可能な全ての繊維の直径を、μm単位で小数点第1位まで計測した。直径を計測した繊維の数が50本以上になるまで、撮像と計測を繰り返した。得られた50本以上の繊維の直径の平均値を算出し、平均繊維径とした。
【0097】
(2)目付(g/m
ラップスポンジ、スパンボンド不織布、又はコットンガーゼから10cm角の矩形状の試料を5つ採取した。採取した5つの試料の合計質量を当該5つの試料の合計面積で除すことにより、目付を求めた。
【0098】
(3)低荷重での厚み(mm)
上述の目付の測定と同様の試料を用いて、30cm角の正方形の試料を5つ採取した。計5点の厚みを、低荷重厚み計(一辺が30cmの正方形の金属平板を接触面として130gの荷重をかけて測定)を用いて測定した。得られた測定値の算術平均値をラップスポンジの低荷重での厚み(mm)とした。
【0099】
(4)荷重ありでの厚み(mm)
上述の目付の測定と同様にして5つの試料を採取した。それぞれの試料の中央及び四隅の計5点の厚みを、厚み計(荷重7gf/cm、25mmφの円形端子を使用)を用いて測定した。得られた測定値の算術平均値をラップスポンジの荷重ありでの厚み(mm)とした。
【0100】
(5)吸水量(g)
ラップスポンジから、長さ100mm×幅100mmの正方形の試料を5つ採取した。採取した各試料に対して、500mlの水道水を10cm高さから全量滴下した。滴下後にピンセットで試料の中央部をつまみ、10秒間空中に静止後、試料の質量を測定した。得られた測定値を30cm角に換算し、吸水量(g)とした。
さらに、求めた吸水量(g)をラップスポンジの目付(g/m)で除することにより、目付当りの吸水量(g)を求めた。
【0101】
(6)吸油量(g)
ラップスポンジから、長さ100mm×幅100mmの正方形の試料を5つ採取した。バットを用意し、バット内をガーレー試験機用オイル(エネオス社、品番「スーパーオイルT グレード10」、ISO粘度グレード:VG-10)で満たした。
採取した各試料を10秒間バット内のオイルに浸漬させた。浸漬後にピンセットで試料の中央部をつまみ、1分間空中に静止後、試料の質量を測定した。得られた測定値を30cm角に換算し、吸油量(g)とした。
さらに、求めた吸油量(g)をラップスポンジの目付(g/m)で除することにより、目付当りの吸油量(g)を求めた。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示すように、実施例1~7のラップスポンジは、比較例1~4のラップスポンジと比較して吸水性及び吸油性に優れていた。