(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136901
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】遠心送風装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20230922BHJP
F04D 29/16 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F04D29/44 Y
F04D29/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042830
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 凌佑
(72)【発明者】
【氏名】山岡 潤
(72)【発明者】
【氏名】今東 昇一
(72)【発明者】
【氏名】金原 匡隆
(72)【発明者】
【氏名】吉野 悦郎
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 雅至
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB46
3H130AC01
3H130BA53A
3H130CA02
3H130CA09
3H130CB09
3H130CB17
3H130DA02Z
3H130DC12Z
3H130DD01Z
3H130DG04Z
3H130EA07A
3H130EA07C
3H130EA07J
3H130EB01A
3H130EB01C
3H130EB02A
3H130EB02J
(57)【要約】
【課題】リング部材54、カバーケース部221は、翼間流路52aから吹き出される空気が逆流路300を通してファン吸気口54aに流入されることを抑制するために、複数の連通路310、320、330、340、350を有する。
【解決手段】リング部材54は、空気流入口221aを通過する空気が吸入されるファン吸気口54aを有してファン軸線CLを中心とする環状に形成され、複数枚の翼52のそれぞれのうちファン軸線方向DRaの一方側に連結されている。ターボファン18は、その回転によって、空気流入口221aおよびファン吸気口54aを通して吸い込んだ空気を空気流路54fおよび複数の翼間流路52aを通してファン軸線CLを中心とする径方向外側に吹き出す。リング部材54およびカバーケース部221は、双方の間に隙間である逆流路300を形成している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心送風装置であって、
軸線(CL)が延びる方向を軸線方向(DRa)としたとき、前記軸線方向に延びるように形成されて前記軸線を中心として回転する回転軸(14)と、
前記回転軸に支持され、前記回転軸とともに回転する遠心ファン(18)と、
前記軸線方向の一方側に開口する空気流入口(221a)を有し、前記空気流入口に対して軸線方向の他方側に前記遠心ファンおよび前記回転軸を収納するケーシング(12)と、を備え、
前記遠心ファンは、
前記軸線を中心とする円周方向に並べられている複数枚の翼(52)と、
前記複数枚の翼に対して前記軸線方向の一方側に配置され、かつ前記空気流入口を通過する空気が吸入される空気吸入口(54a)を有して前記軸線を中心とする環状に形成されて、さらに前記複数枚の翼のそれぞれのうち前記軸線方向の一方側に連結されているリング部材(54)と、
前記複数枚の翼に対して前記軸線方向の他方側に配置され、かつ前記複数枚の翼のそれぞれのうち前記軸線方向の他方側に連結されている主板(56)と、を備え、
前記リング部材は、前記主板および前記複数枚の翼とともに、ファン通風路(54f、52a)を形成しており、
前記遠心ファンは、その回転によって、前記空気流入口および前記空気吸入口を通して吸い込んだ空気を前記ファン通風路を通して前記軸線を中心とする径方向外側に吹き出し、
前記ケーシングは、前記リング部材を前記軸線方向の一方側から覆うように形成されているカバーケース部(221)を有し、
前記リング部材および前記カバーケース部は、双方の間に隙間である逆流路(300)を形成し、
前記カバーケース部の外側には、ケース外側空所(500)が形成されており、
前記リング部材或いは前記カバーケース部は、前記ファン通風路から吹き出される前記空気が前記逆流路を通して前記空気吸入口に流入されることを抑制するために、前記ケース外側空所(500)および前記ファン通風路のうちいずれか一方と前記逆流路との間で空気を流通させる1つ以上の連通路(310、320、330、340、350、350b)を形成する遠心送風装置。
【請求項2】
前記1つ以上の連通路(310)は、前記カバーケース部に設けられ、前記逆流路と前記ケース外側空所との間を連通して前記ファン通風路(52a)から前記逆流路に流入される空気を前記ケース外側空所へ案内する請求項1に記載の遠心送風装置。
【請求項3】
前記カバーケース部(221)は、前記1つ以上の連通路(310)を形成する連通路内壁(310a)を有し、
前記ケーシングは、前記リング部材に対して前記軸線を中心とする径方向外側に配置され、前記リング部材とともに、前記逆流路の入口(300a)を形成する入口流路壁(300c)を有し、
前記入口流路壁は、所定方向(DRa)に沿うように形成され、
前記連通路内壁は、前記入口流路壁から連続して前記所定方向に沿うように形成され、前記入口から前記入口流路壁に沿って流れる空気を前記ケース外側空所へ案内する請求項2に記載の遠心送風装置。
【請求項4】
前記1つ以上の連通路を1つ以上の第1連通路としたとき、前記カバーケース部は、前記逆流路のうち前記第1連通路に対して前記逆流路の出口側に設けられ、前記逆流路と前記ケース外側空所との間を連通して、前記ケース外側空所から前記逆流路内に空気を流入される空気を、前記逆流路のうち前記逆流路の入口から前記逆流路の出口に向けて流れる空気に衝突させる1つ以上の第2連通路(320、330)を形成する請求項2又は3に記載の遠心送風装置。
【請求項5】
前記ケーシングは、前記ケース外側空所を閉鎖するように構成しており、
前記1つ以上の第2連通路の流路断面積を加算した加算値は、前記1つ以上の第1連通路の流路断面積を加算した加算値よりも小さくなっている請求項4に記載の遠心送風装置。
【請求項6】
前記1つ以上の連通路(320、330)は、前記カバーケース部に設けられ、前記逆流路内と前記ケース外側空所との間を連通して、前記ケース外側空所から前記逆流路に空気を流入させて、この流入した空気を、前記逆流路のうち前記逆流路の入口から前記逆流路の出口に向けて流れる空気に衝突させる請求項1に記載の遠心送風装置。
【請求項7】
前記カバーケース部は、前記逆流路を迷路状に構成するために所定方向(DRa)に沿うように形成されている迷路壁(410)を有し、
前記カバーケース部は、前記迷路壁から連続して前記所定方向に沿うように形成されて前記1つ以上の連通路(320)を形成する連通路内壁(320a)を有し、
前記連通路内壁は、前記ケース外側空所から前記逆流路に流入される空気を、前記逆流路内の前記迷路壁に沿って流れる空気に衝突させるように案内する請求項6に記載の遠心送風装置。
【請求項8】
前記リング部材は、前記空気吸入口を形成する吸入口形成部(54d)と、前記吸入口形成部から前記軸線を中心とする径方向外側に突起するように形成されているガイド部(54k)と、を備え、
前記ガイド部および前記カバーケース部の間には、前記ケース外側空所と前記逆流路との間を連通する連通孔(300e)が形成されており、
前記ケース外側空所は、大気に開放されており、
前記ガイド部は、前記逆流路のうち前記逆流路の入口(300a)から前記逆流路の出口(300b)に向けて流れる空気を前記軸線を中心とする径方向外側に導くことにより、前記逆流路を流れる空気を前記連通孔および前記ケース外側空所を通して前記大気に向けて導くようになっている請求項1に記載の遠心送風装置。
【請求項9】
前記リング部材は、前記ファン通風路(54f)を形成して前記軸線を中心とする円筒状に形成されている円筒部(54d)を備え、
前記1つ以上の連通路(340)は、前記円筒部に設けられ、かつ前記ファン通風路および前記逆流路の間を連通して前記ファン通風路から前記逆流路に流入される空気を、前記逆流路のうち前記逆流路の入口から前記逆流路の出口に向けて流れる空気に衝突させる請求項1に記載の遠心送風装置。
【請求項10】
前記リング部材は、前記軸線を中心とする円筒状に形成されることにより前記ファン通風路としての吸入通風路(54f)を形成する円筒部(54d)を備え、
前記複数枚の翼のうち隣り合う2枚の翼の間には、前記吸入通風路(54f)を通過した空気を前記軸線を中心とする径方向外側に吹き出す前記ファン通風路としての翼間流路(52a)が設けられており、
前記リング部材のうち前記軸線を含む断面において、前記リング部材は、前記複数枚の翼とともに前記翼間流路を形成して、前記軸線方向の他方側に凸となる弧状に形成されて前記軸線方向の他方側に向かうほど前記軸線を中心とする径方向外側に向かうように形成されている内壁(541)を有する湾曲部(54e)を有し、
前記1つ以上の連通路(350)は、前記湾曲部に設けられ、前記逆流路および前記翼間流路の間を連通して前記逆流路から前記翼間流路に空気を吹き出す請求項1に記載の遠心送風装置。
【請求項11】
前記遠心ファンが回転方向の一方側(DRf)に回転することにより前記吸い込んだ空気を前記翼間流路から吹き出す際に、前記翼間流路のうち前記回転方向における中心線(ST)に対して前記回転方向の一方側の領域(520)には、負圧が発生し、かつ前記翼間流路のうち前記中心線に対して回転方向の他方側の領域(521)には、正圧が発生し、
前記1つ以上の連通路は、前記翼間流路のうち前記一方側の領域と前記逆流路との間を連通している請求項10に記載の遠心送風装置。
【請求項12】
前記リング部材のうち前記軸線を含む断面において、前記湾曲部のうち前記翼間流路を形成する内壁(541)に接する接線と前記軸線との間に形成される狭角を内壁角としたき、
前記リング部材のうち前記軸線を含む断面において、前記内壁は、前記内壁角が3.5度になる変化点(600)を有し、かつ前記内壁のうち前記変化点から前記軸線方向の一方側に向かうほど前記内壁角が小さくなり、前記内壁のうち前記変化点から前記軸線方向の他方側に向かうほど前記内壁角が大きくなり、
前記1つ以上の連通路(350a、350b)は、前記内壁のうち前記変化点に対して前記軸線方向の一方側、或いは前記軸線方向の他方側に開口する請求項10または11に記載の遠心送風装置。
【請求項13】
前記1つ以上の連通路は、前記軸線を中心として円周方向に並べられている請求項1ないし12のいずれか1つに記載の遠心送風装置。
【請求項14】
前記リング部材および前記カバーケース部は、前記逆流路を迷路状に形成するラビリンス構造を構成する請求項1ないし6、8ないし13のいずれか1つに記載の遠心送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心送風装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遠心送風装置において、リング部材とカバーケース部との間に設けられている逆流路を迷路状に形成するラビリンス構造を構成するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
遠心送風装置は、円周方向に並べられている複数枚の翼と、複数枚の翼のそれぞれのうち軸線方向の一方側に連結されているリング部材と、複数枚の翼のそれぞれのうち軸線方向の他方側に連結されている主板とを有する遠心ファンを備える。
【0004】
遠心送風装置は、遠心ファンを収納するスクロールケーシングを備える。リング部材は、主板および複数枚の翼とともに、ファン通風路を形成する。
【0005】
遠心ファンは、その回転により、スクロールケーシングの空気流入口およびリング部材のファン吸気口を通して吸い込んだ空気をファン通風路を通してファン軸線を中心とする径方向外側に吹き出す。
【0006】
スクロールケーシングは、空気入口を形成してリング部材を軸線方向の一方側から覆うように形成されているカバーケース部を有する。
【0007】
リング部材およびカバーケース部は、ファン通風路から吹き出される空気が逆流路を通して空気吸入口に流入されることを抑制するために、逆流路を迷路状に形成するラビリンス構造を構成する。
【0008】
したがって、空気流入口に対して軸線方向の一方側から、空気流入口、ファン吸気口を通してファン通風路に流れる空気流である主流に、逆流路から空気吸入口を通してファン通風路に流れる空気流が混合して主流の乱れが発生することを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の特許文献1に記載の遠心送風装置では、上述の如く、リング部材およびカバーケース部は、ファン通風路から吹き出される空気が逆流路を通して空気吸入口に流入されることを抑制するために、逆流路を迷路状に形成するラビリンス構造を構成する。
【0011】
本発明者等は、ケース外側空所およびファン通風路のうちいずれか一方と逆流路との間で空気を流通させる連通路を用いて、ファン通風路から吹き出される空気が逆流路を通して空気吸入口に流入されることを抑制することを検討した。ケース外側空所は、カバーケース部の外側に形成されている空所である。
【0012】
本発明は上記点に鑑みて、ファン通風路およびケース外側空所のうち一方と逆流路との間で空気を流通させる連通路を用いて、ファン通風路からの空気が逆流路を通して空気吸入口に流入されることを抑制する遠心送風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、遠心送風装置であって、
軸線(CL)が延びる方向を軸線方向(DRa)としたとき、軸線方向に延びるように形成されて軸線を中心として回転する回転軸(14)と、
回転軸に支持され、回転軸とともに回転する遠心ファン(18)と、
軸線方向の一方側に開口する空気流入口(221a)を有し、空気流入口に対して軸線方向の他方側に遠心ファンおよび回転軸を収納するケーシング(12)と、を備え、
遠心ファンは、
軸線を中心とする円周方向に並べられている複数枚の翼(52)と、
複数枚の翼に対して軸線方向の一方側に配置され、かつ空気流入口を通過する空気が吸入される空気吸入口(54a)を有して軸線を中心とする環状に形成されて、さらに複数枚の翼のそれぞれのうち軸線方向の一方側に連結されているリング部材(54)と、
複数枚の翼に対して軸線方向の他方側に配置され、かつ複数枚の翼のそれぞれのうち軸線方向の他方側に連結されている主板(56)と、を備え、
リング部材は、主板および複数枚の翼とともに、ファン通風路(54f、52a)を形成しており、
遠心ファンは、その回転によって、空気流入口および空気吸入口を通して吸い込んだ空気をファン通風路を通して軸線を中心とする径方向外側に吹き出し、
ケーシングは、リング部材を軸線方向の一方側から覆うように形成されているカバーケース部(221)を有し、
リング部材およびカバーケース部は、双方の間に隙間である逆流路(300)を形成し、
カバーケース部の外側には、ケース外側空所(500)が形成されており、
リング部材或いはカバーケース部は、ファン通風路から吹き出される空気が逆流路を通して空気吸入口に流入されることを抑制するために、ケース外側空所(500)およびファン通風路のうちいずれか一方と逆流路との間で空気を流通させる1つ以上の連通路(310、320、330、340、350、350b)を形成する。
【0014】
以上により、ファン通風路およびケース外側空所のうち一方と逆流路との間で空気を流通させる連通路を用いて、ファン通風路からの空気が逆流路を通して空気吸入口に流入されることを抑制する遠心送風装置を提供することができる。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態における遠心送風装置をそのファン軸線方向の一方側から視た斜視図である。
【
図2】
図1の第1実施形態における遠心送風装置をファン軸線を含む面で切断した断面図であり、特に、ターボファンのリング部材、主板、複数の翼、および逆流路の構成を示す断面図である。
【
図4】
図2の第1実施形態におけるターボファン、および、逆流路を拡大した部分断面図である。
【
図5】
図4の第1実施形態におけるターボファンのうち逆流路およびその周辺を拡大した部分断面図である。
【
図6】
図4の第1実施形態における遠心送風装置のカバーケース部に設けられる複数の連通路をファン軸線方向の一方側から図である。
【
図7】
図4の第1実施形態における遠心送風装置のカバーケース部のうち連通路、および逆流路のうち入口周辺を拡大した部分拡大図である。
【
図8】
図4の第1実施形態における遠心送風装置のカバーケース部に設けられる複数の連通路をファン軸線方向の一方側から図である。
【
図9】
図4の第1実施形態における遠心送風装置のカバーケース部のうち連通路、およびその周辺を拡大した部分拡大図である。
【
図10】
図4の第1実施形態における遠心送風装置のカバーケース部に設けられる複数の連通路をファン軸線方向の一方側から図である。
【
図11】
図4の第1実施形態における遠心送風装置のリング部材に設けられる複数の連通路をファン軸線方向の一方側から図である。
【
図12】
図4の第1実施形態における遠心送風装置のリング部材に設けられる複数の連通路をファン軸線方向の一方側から図である。
【
図13】
図1の第1実施形態における遠心送風装置の複数枚の翼のうち隣り合う2枚の翼の間に形成されている翼間流路、および2枚の翼をファン軸線方向の一方側から視た図である。
【
図14】第2実施形態における遠心送風装置のうちファン軸線を含む断面で切断した断面図のうち、リング部材における円筒部および湾曲部に形成されている連通路を示す図である。
【
図15】第3実施形態における遠心送風装置のうちファン軸線を含む断面で切断した断面図のうち、リング部材、カバーケース部、逆流路、および放出流路のそれぞれの構成を示す断面図である。
【
図16】第4実施形態における遠心送風装置のうちファン軸線を含む断面で切断した断面図のうち、リング部材、カバーケース部、および逆流路のそれぞれの構成を示す断面図である。
【
図17】第5実施形態における遠心送風装置のカバーケース部に設けられる連通路を示す断面図である。
【
図18】第6実施形態における遠心送風装置のカバーケース部に設けられる連通路を示す断面図である。
【
図19】第7実施形態における遠心送風装置のリング部材に設けられる連通路を示す断面図である。
【
図20】
図4の第8実施形態におけるターボファンのうち逆流路およびその周辺を拡大した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0018】
(第1実施形態)
図1、
図2等に示す本実施形態の遠心送風装置10は、車両用空調装置に用いられる。遠心送風装置10は、ターボ型送風機である。具体的には、遠心送風装置10は、
図1および
図2に示すように、スクロールケーシング12、シュラウド13、回転軸14、回転軸ハウジング15、電動モータ16、ターボファン18、ベアリング28、およびベアリングハウジング29等を備えている。
【0019】
なお、
図2中の矢印DRaは、回転軸14の軸線が延びるファン軸線方向を示している。ファン軸線CLは、回転軸14の軸線と一致する。ファン軸線方向DRaは、回転軸14の軸線方向とも呼ばれる。
図2中の矢印DRrは、ファン軸線CLを中心とするファン径方向を示している。ファン径方向DRrは、ファン軸線CLを中心とする径方向とも呼ばれる。
【0020】
スクロールケーシング12は、遠心送風装置10の筐体である。スクロールケーシング12は、電動モータ16、およびターボファン18を、遠心送風装置10の外部の塵および汚れから保護する。スクロールケーシング12は、後述する空気流入口221aに対してファン軸線方向DRaの他方側に電動モータ16、およびターボファン18を収容している。
【0021】
スクロールケーシング12は、第1ケーシング部材22、および第2ケーシング部材24を有している。第1ケーシング部材22は、樹脂材料によって構成されている。第1ケーシング部材22は、略円筒形状に形成されている。
【0022】
ここで、第1ケーシング部材22は、ターボファン18に比べて径方向寸法が大きくなっている。第1ケーシング部材22は、カバーケース部221、および周縁部222を有している。
【0023】
カバーケース部221は、ターボファン18に対してファン軸線方向DRaにおける一方側に配置されている。具体的には、カバーケース部221は、ターボファン18のリング部材54に対してファン軸線方向DRaにおける一方側に配置されている。カバーケース部221は、ターボファン18のリング部材54をファン軸線方向DRaにおける一方側から覆うように形成されている。
【0024】
カバーケース部221は、ファン軸線方向DRaに開口する空気流入口221aを形成する。空気流入口221aは、スクロールケーシング12の内部に空気を吸い込むケーシング吸気孔である。空気は、この空気流入口221aを介してターボファン18へ吸い込まれる。
【0025】
カバーケース部221は、その空気流入口221aの周縁を構成するベルマウス部221bを有している。このベルマウス部221bは、遠心送風装置10の外部から空気流入口221aへ流入する空気を円滑に空気流入口221a内へと導く。つまり、ベルマウス部221bは、空気流入口221aを形成することになる。
【0026】
周縁部222は、カバーケース部221に対してファン軸線CLを中心とする径方向外側に配置されている。周縁部222は、ファン軸線CLを中心とする円周方向に亘って形成されている。
【0027】
周縁部222は、ターボファン18の複数の翼間流路52aから吹き出される空気流をファン軸線方向DRaの他方側に向けて吹き出す吹出口222aを構成する。吹出口222aは、ファン軸線CLを中心とする円周方向に亘って形成されている。
【0028】
第2ケーシング部材24は、樹脂材料によって構成されている。
【0029】
図2に示すように、第2ケーシング部材24は、ターボファン18および電動モータ16を覆うハウジングとしても機能する。第2ケーシング部材24は、ターボファン18および電動モータ16に対してファン軸線方向DRaにおける他方側に配置されている。
【0030】
シュラウド13は、スクロールケーシング12に対してファン軸線方向DRaの一方側に配置されている。シュラウド13は、ファン軸線方向DRaの一方側から流れる空気流をスクロールケーシング12の空気流入口221aに集めるように案内する。
【0031】
回転軸14および回転軸ハウジング15のそれぞれは、鉄、ステンレス、または黄銅等の金属で構成されている。回転軸14は、ファン軸線CLを中心とする円柱形状に形成されている棒材である。
【0032】
回転軸14は、ベアリング28によってファン軸線CLを中心として回転自在に支持されている。ベアリング28は、ベアリングハウジング29によって支持されている。ベアリングハウジング29は、第2ケーシング部材24に固定されている。このため、回転軸14は、ベアリング28およびベアリングハウジング29を介して第2ケーシング部材24によって回転自在に支持されている。
【0033】
回転軸ハウジング15は、回転軸14のうちファン軸線方向DRaのうち一方側に固定されている。回転軸ハウジング15は、ターボファン18の主板56の内周孔56aに嵌め入れられている。
【0034】
このことにより、回転軸14のうちファン軸線方向DRaのうち一方側は、ターボファン18の主板56によって支持されていることになる。すなわち、回転軸14および回転軸ハウジング15は、ファン軸線CLを中心としてターボファン18と一体的に回転することになる。
【0035】
電動モータ16は、アウターロータ型ブラシレスDCモータである。電動モータ16は、ロータハウジング161、およびステータ163を備える。
【0036】
ロータハウジング161は、ステータ163に対してファン径方向DRrの外側に配置されている。ロータハウジング161は、ターボファン18の主板56によって支持されている。ロータハウジング161は、ファン軸線CLを中心とする円筒状に形成されている。ロータハウジング161は、複数の永久磁石161aを支持している。複数の永久磁石161aは、ファン軸線CLを中心とする円周方向に並べられている。
【0037】
したがって、ロータハウジング161および複数の永久磁石161aは、ファン軸線CLを中心としてターボファン18と一体的に回転する。
【0038】
ステータ163は、ステータコイルおよびステータコアを含んで構成されている。ステータ163は、複数の永久磁石161aに対して隙間を介してファン軸線CLを中心として径方向内側に配置されている。
【0039】
ステータ163は、ベアリングハウジング29を介して第2ケーシング部材24に固定されている。このように、電動モータ16は、スクロールケーシング12の内部に配置された状態で、第2ケーシング部材24に保持されている。
【0040】
このように構成された電動モータ16では、ステータ163のステータコイルへインバータ装置等の外部制御回路から通電されると、そのステータコイル163aによって回転磁界が生じる。このステータコイル163aによって生じる回転磁界は、複数の永久磁石161aに対して回転力を発生させる。
【0041】
このため、ロータハウジング161は、複数の永久磁石161aに生じる回転力によってファン軸線CLを中心として回転する。これに伴って、電動モータ16は、通電されることにより、ロータハウジング161が固定されたターボファン18をファン軸線CLを中心として回転させる。
【0042】
図2および
図3に示すように、ターボファン18は、遠心送風装置10に適用されるインペラである。ターボファン18は、
図3のファン軸線CLを中心とするファン回転方向の一方側DRfに回転する遠心ファンである。
【0043】
すなわち、ターボファン18は、ファン軸線CLを中心として回転することにより、
図4中の矢印FLmのように、ファン軸線方向DRaの一方側から空気流入口221a、ファン吸気口54aを通して空気を吸い込む。これに加えて、ターボファン18は、ターボファン18に対してファン軸線CLを中心とする径方向外側にその吸い込んだ空気を吹き出す。
【0044】
具体的に、ターボファン18は、複数枚の翼52、リング部材54、および主板56を有している。複数枚の翼52、リング部材54、および主板56は、樹脂材料によって構成されている。
【0045】
複数枚の翼52は、ファン軸線CLを中心とする円周方向に等間隔に並べられている。詳細には、複数枚の翼52は、互いの間に空気が流れる間隔を空けつつ、ファン軸線CLを中心とする円周方向へ並んで配置されている。
図2および
図3に示すように、複数枚の翼52は、互いに隣り合う翼52同士の間のそれぞれに、空気が流れる複数の翼間流路52aを形成している。
【0046】
図2、
図4、および
図5に示すように、リング部材54は、複数枚の翼52に対してファン軸線方向DRaの一方側に配置されている。リング部材54は、複数枚の翼52に対してファン軸線方向DRaの一方側から覆うように形成されている。リング部材54は、複数枚の翼52のそれぞれのうちファン軸線方向DRaの一方側に連結されている。
【0047】
リング部材54は、ファン径方向DRrへ円盤状に拡がる形状を成している。リング部材54は、そのファン軸線CLを中心とする内周側に、ファン吸気口(すなわち、空気吸入口)54aを形成している。すなわち、リング部材54は、ファン吸気口54aを有してファン軸線CLを中心とするリング状に形成されている。
【0048】
ファン吸気口54aは、スクロールケーシング12の空気流入口221aに吸入される空気を空気流路(すなわち、吸入通風路)54fを通して複数の翼間流路52aに導く役割を果たす。リング部材54は、複数枚の翼52のそれぞれのファン軸線方向DRaの一方側に接続されている。
【0049】
具体的には、リング部材54は、
図5に示すように、円筒部54d、および湾曲部54eを備える。円筒部54dは、ファン軸線CLを中心として円筒状に形成されている吸入口形成部である。
【0050】
円筒部54dは、
図2に示すように、円筒部54dのうちファン軸線CLを中心とする径方向内側に形成される内壁540を有する。内壁540は、ファン軸線方向DRaに真っ直ぐ延びるように形成されている。
【0051】
ここで、内壁540は、ファン吸気口54aと、このファン吸気口54aから吸入される空気を複数の翼間流路52aに導くための空気流路54fとを形成する。空気流路54fは、リング部材54の円筒部54dに対してファン軸線CLを中心として径方向内側に形成されている。
【0052】
本実施形態では、空気流路54fは、後述する複数の翼間流路52aとともに、ファン吸気口54aに流入される空気をファン軸線CLを中心とする径方向外側に吹き出すファン通風路を形成する。
【0053】
湾曲部54eは、円筒部54dに対してファン軸線方向DRaの他方側に配置されている。湾曲部54eは、複数枚の翼52をファン軸線方向DRaの一方側から覆うように形成されている。
【0054】
このため、湾曲部54eは、複数の翼間流路52aをファン軸線方向DRaの一方側から覆うように形成されていることになる。すなわち、湾曲部54eは、主板56および複数枚の翼52とともに、複数の翼間流路52aを形成する。
【0055】
具体的には、湾曲部54eは、
図5に示すように、円筒部54dのうちファン軸線方向DRaの他方側端部からファン軸線方向DRaの他方側に向かうほどファン軸線CLを中心とする径方向寸法が大きくなっている。
【0056】
ここで、湾曲部54eのうちファン軸線CLを中心とする径方向内側は、
図2および
図5に示すように、主板56および複数枚の翼52とともに、複数の翼間流路52aを形成する内壁541が形成されている。
【0057】
湾曲部54eの内壁541は、ファン軸線CLを含むリング部材54において、ファン軸線方向DRaの他方側に凸となる円弧状に形成されている。湾曲部54eの内壁541は、ファン軸線方向DRaの一方側から他方側に向かうほどファン軸線CLを中心とする径方向外側に滑らかに向かうように形成されている。
【0058】
本実施形態のリング部材54およびカバーケース部221は、
図5に示すように、双方の間の隙間である逆流路300を構成する。逆流路300は、ファン軸線CLを中心とする環状に形成されている。逆流路300は、複数の翼間流路52aの出口400から吹き出される空気流を、矢印FLfの如く、リング部材54のファン吸気口54a内に流す流路を構成している。
【0059】
図4および
図5に示すように、逆流路300の入口300aは、リング部材54のうちファン径方向DRrの外側端部と周縁部222のうちファン径方向DRrの内側端部との間に配置されている。
【0060】
具体的には、逆流路300の入口300aは、複数の翼間流路52aの出口400に隣り合う部位に形成されている。逆流路300の出口300bは、リング部材54のうちファン径方向DRrの内側端部とカバーケース部221のうちファン径方向DRrの内側端部との間に配置されている。
【0061】
リング部材54およびカバーケース部221は、逆流路300を迷路状に構成するラビリンス構造を構成する。このことにより、逆流路300を通して複数の翼間流路52aから吹き出される空気流がリング部材54のファン吸気口54a内に流れることを抑える役割を果たす。
【0062】
本実施形態では、逆流路300を通して空気流が逆流することを抑えるために、後述するように、リング部材54には、複数の連通路310、320、330が設けられている。カバーケース部221には、複数の連通路340、350が設けられている。
【0063】
主板56は、ファン軸線CLを中心とする回転可能な回転軸14に回転軸ハウジング15を介して固定されている。主板56は、複数枚の翼52のそれぞれのファン軸線方向DRaの他方側に連結されている。主板56は、ファン軸線方向DRaの一方側から他方側へ進むにつれて、ファン径方向DRrの内側から外側へ向かうように形成されている。
【0064】
本実施形態では、リング部材54は、主板56および複数枚の翼52とともに、空気流路54fおよび複数の翼間流路52aを構成している。
【0065】
【0066】
まず、逆流路300の入口300aは、
図5および
図7に示すように、複数の翼間流路52aの出口400に隣り合う部位に形成されている。
【0067】
入口300aは、周縁部222の入口側内壁(すなわち、入口流路壁)300cおよびリング部材54のうちファン軸線CLを中心とする径方向外側端部の間に形成されている。そして、入口側内壁300cは、リング部材54に対して入口300aを介してファン径方向DRrの外側に配置されている。
【0068】
ここで、周縁部222のうち入口300aを形成する入口側内壁300cは、
図5に示すように、ファン軸線CLを含む遠心送風装置10の断面図において、ファン軸線方向DRaに沿うように形成されている。入口側内壁300cは、後述するように、複数の翼間流路52aの出口400から入口300aに流入される空気を複数の連通路310に流れるように案内する。
【0069】
複数の連通路310は、
図7に示すように、それぞれ、連通路内壁310aによって形成されている。複数の連通路内壁310aは、それぞれ、ファン軸線CLを含む遠心送風装置10の断面図において、入口側内壁300cから連続してファン軸線方向DRaに沿うように形成されている。
【0070】
ここで、複数の連通路内壁310aは、それぞれ、複数の翼間流路52aの出口400から逆流路300の入口300aに流れる空気を
図5中の矢印FRaの如く、ケース外側空所500に案内する。
【0071】
すなわち、複数の連通路内壁310aおよび入口側内壁300cは、複数の翼間流路52aの出口400から入口300aに流入される空気を複数の連通路310を通してケース外側空所500に案内する。
【0072】
ケース外側空所500は、カバーケース部221の外側に形成され、かつカバーケース部221およびシュラウド13の間に形成されている。本実施形態のケース外側空所500は、大気に開放されている。複数の連通路310は、それぞれ、
図6に示すように、ファン軸線CLを中心として円周方向に等間隔に並べられている。
本実施形態では、リング部材54における複数の連通路320は、それぞれ、ケース外側空所500および逆流路300の間を連通している。複数の連通路320は、それぞれ、逆流路300のうち複数の連通路310に対して出口300b側に開口されている。複数の連通路320は、それぞれ、
図8に示すように、ファン軸線CLを中心として円周方向に等間隔に並べられている。
【0073】
複数の連通路320は、それぞれ、
図9中FRbの如く、ケース外側空所500から逆流路300内に流れる空気流を発生させる。具体的には、リング部材54のうち複数の連通路320を形成する連通路内壁320aは、それぞれ、逆流路300の迷路壁410から連続してファン軸線方向DRaに沿うように形成されている。
【0074】
逆流路300の迷路壁410は、
図5および
図9に示すように、逆流路300を迷路状に形成するラビリンス構造を構成する内壁の一部であって、ファン軸線方向DRaに沿うように形成されている。迷路壁410は、逆流路300のうち入口300aから出口300bに向けて流れる空気を矢印FRcの如くファン軸線方向DRaに沿って流れるように案内する。
【0075】
本実施形態のリング部材54の連通路内壁320aは、それぞれ、ケース外側空所500から逆流路300に流れる空気を、逆流路300の迷路壁410に沿って流れる空気に対して衝突させるように案内する。
【0076】
本実施形態では、リング部材54における複数の連通路330は、それぞれ、ケース外側空所500および逆流路300の間を連通されている。複数の連通路330は、それぞれ、逆流路300のうち複数の連通路320に対して出口300b側に開口されている。
【0077】
複数の連通路330は、それぞれ、
図10に示すように、ファン軸線CLを中心として円周方向に等間隔に並べられている。複数の連通路330は、それぞれ、ケース外側空所500から逆流路300に向けて空気を流通させる。複数の連通路330は、それぞれ、逆流路300のうち入口300aから出口300bに向けて流れる空気に対して衝突させる空気を発生させることになる。
【0078】
本実施形態のカバーケース部221における複数の連通路340は、リング部材54の円筒部54dに設けられている。複数の連通路340は、
図11に示すように、それぞれ、ファン軸線CLを中心として円周方向に等間隔に並べられている。
【0079】
複数の連通路340は、それぞれ、空気流路54fおよび逆流路300との間を連通している。複数の連通路340は、それぞれ、
図5中矢印FLdの如く、空気流路54fから逆流路300に流れる空気流を発生させる。
【0080】
カバーケース部221における複数の連通路350は、それぞれ、リング部材54の湾曲部54eに設けられている。複数の連通路350は、
図12に示すように、それぞれ、ファン軸線CLを中心として円周方向に等間隔に並べられている。
【0081】
複数の連通路350は、それぞれ、複数の翼間流路52aのうち対応する翼間流路52aと逆流路300との間を連通している。複数の連通路350は、それぞれ、逆流路300から複数の翼間流路52aの対応する翼間流路52a内に向けて、
図5中矢印FLeの如く、流れる空気流を発生させる。
【0082】
ここで、ターボファン18が回転方向の一方側DRfに回転することにより吸い込んだ空気を翼間流路52aを通して吹き出す際に、
図13に示すように、翼間流路52aのうち一方側DRfの一方側の領域520には、負圧が発生する。一方、翼間流路52aのうち他方側の領域521には、正圧が発生する。
【0083】
ここで、一方側の領域520は、翼間流路52aのうち回転方向における中心線STに対して回転方向の一方側DRfの一方側に形成されている。他方側の領域521は、翼間流路52aのうち回転方向における中心線STに対して回転方向の他方側に形成されている。
【0084】
中心線STとは、複数枚の翼52において隣り合う2枚の翼52のうち一方の翼52と他方の翼52とから等しい距離になる部位である。
【0085】
このため、翼間流路52aのうち一方側の領域520の方が他方側の領域521に比べて静圧が低くなる。
【0086】
これに対して、本実施形態では、連通路350は、翼間流路52aのうち一方側の領域520と逆流路300との間を連通している。このため、連通路350によって翼間流路52aのうち他方側の領域521と逆流路300との間を連通している場合に比べて、連通路350によって逆流路300から翼間流路52aに流れる空気の風量を増大させることができる。
【0087】
次に、本実施形態の遠心送風装置10の作動について説明する。
【0088】
まず、電動モータ16は、通電されることにより、回転軸14を介してターボファン18をファン軸線CLを中心として回転させる。このため、ターボファン18は、ファン軸線方向DRaの一方側から空気を吸い込む。この場合、ファン軸線方向DRaの一方側から空気がシュラウド13によって集められ、この集められた空気が主流として空気流入口221a、ファン吸気口54a、空気流路54fを通して複数の翼間流路52aに流入される。
【0089】
このとき、ターボファン18の遠心力によって複数の翼間流路52aからファン軸線CLを中心とする径方向外側に吹き出される。この吹き出された空気は、周縁部222に案内されてファン軸線方向DRaの他方側に向けて流れる。
【0090】
このとき、複数の翼間流路52aの出口400付近は、大気圧よりも高くになる。一方、カバーケース部221の空気流入口221a、ファン吸気口54a付近は、大気圧よりも低くになる。
【0091】
したがって、複数の翼間流路52aの出口400から吹き出される空気の一部が、
図5中の矢印FLfの如く、逆流路300を通してその出口300bから吹き出される。この吹き出された空気は、空気流入口221a、ファン吸気口54a、空気流路54fを通して複数の翼間流路52aに流入される。
【0092】
このとき、逆流路300に空気が流れる際に、上述のリング部材54およびカバーケース部221によって構成するラビリンス構造を起因として圧力損失が生じる。
【0093】
ここで、複数の翼間流路52aの出口400から逆流路300の入口300aに流れる空気の一部は、
図5、
図7中の矢印FKLaの如く、入口側内壁300cおよび複数の連通路内壁310aに案内されてケース外側空所500に流れる。
【0094】
つまり、複数の翼間流路52aの出口400から逆流路300の逆流路300の入口300aに流れる空気の一部は、複数の連通路310を通してケース外側空所500に流れる。本実施形態のケース外側空所500は、大気に開放されている。
【0095】
一方、複数の翼間流路52aの出口400から逆流路300の逆流路300の入口300aに流れる空気のうち、複数の連通路310を通してケース外側空所500に流れる空気以外の残りの空気は、逆流路300の出口300bに向けて流れる。
【0096】
このとき、リング部材54およびカバーケース部221によって構成するラビリンス構造によって圧力損失を生じる。このため、逆流路300のうち複数の連通路320付近の静圧は、大気圧よりも低くなる。よって、ケース外側空所500から複数の連通路320を通して逆流路300に空気が流れ込む。
【0097】
具体的には、ケース外側空所500から空気が
図9中矢印FLbの如く、複数の連通路内壁320aのそれぞれに沿って逆流路300内に流れ込む。すなわち、ケース外側空所500から空気が複数の連通路内壁320aによって案内されてファン軸線方向DRaに流れることにより、ケース外側空所500から空気が逆流路300内に流れ込むことになる。
【0098】
一方、逆流路300のうち入口300aから出口300b側に向けて流れる空気は、矢印FLcの如く、逆流路300の迷路壁410に沿ってファン軸線方向DRaの一方側にて流れる。
【0099】
このため、ケース外側空所500から連通路320毎の連通路内壁320aに沿ってケース外側空所500から逆流路300に流れる空気が、逆流路300のうち入口300aから出口300b側に向けて流れる空気に衝突する。
【0100】
すなわち、逆流路300のうち入口300aから出口300b側に向けて流れる空気は、ケース外側空所500から複数の連通路320を通して逆流路300に流入される空気に衝突することになる。このため、逆流路300のうち入口300aから出口300b側に向けて流れる空気には、圧力損失が生じることになる。
【0101】
また、逆流路300のうち複数の連通路330付近の静圧は、上述のラビリンス構造を起因とする圧力損失によって大気圧よりも低くなる場合がある。
【0102】
この場合、ケース外側空所500から複数の連通路330を通して逆流路300に流れる空気流が発生する。このため、逆流路300のうち入口300aから出口300b側に向けて流れる空気に対して、ケース外側空所500から複数の連通路330を通して逆流路300に流れる空気が衝突する。
【0103】
したがって、ケース外側空所500から複数の連通路330を通して逆流路300に流れる空気流によって、逆流路300のうち入口300aから出口300b側に向けて流れる空気に圧力損失を生じさせることができる。
【0104】
また、空気流入口221aおよびファン吸気口54aから吸入された空気が空気流路54fを流通する際に、リング部材54の円筒部54dの内壁540に沿って空気が高速にファン軸線方向DRaの他方側に流れる。
【0105】
このため、リング部材54の円筒部54dの内壁540付近の静圧は、逆流路300内の静圧に比べて高くなる。よって、リング部材54の円筒部54dの空気流路54fから
図5中矢印FLdの如く、複数の連通路340を通して逆流路300内に流れる空気流が発生する。
【0106】
これにより、空気流路54fから複数の連通路340を通して逆流路300内に流れる空気流によって、逆流路300のうち入口300aから出口300b側に向けて流れる空気に衝突させることができる。このため、逆流路300のうち入口300aから出口300b側に向けて流れる空気に圧力損失を発生させることができる。
【0107】
また、リング部材54の湾曲部54eは、上述の如く、円筒部54dのうちファン軸線方向DRaの他方側端部からファン軸線方向DRaの他方側に向かうほどファン径方向DRrの外側に進むように形成されている。
【0108】
一方、空気流路54fから複数の翼間流路52aに流れる空気は、湾曲部54eの内壁541から剥離して流れる。このため、複数の翼間流路52aのうち湾曲部54eの内壁541付近の静圧は、逆流路300内の静圧に比べて低くなる。このため、逆流路300内から、
図5中矢印FLeの如く、複数の連通路350を通して複数の翼間流路52aに流れる空気流が発生する。
【0109】
以上説明した本実施形態によれば、遠心送風装置10は、ファン軸線CLが延びる方向をファン軸線方向DRaとしたとき、ファン軸線方向DRaに延びるように形成されてファン軸線CLを中心として回転する回転軸14を備える。遠心送風装置10は、回転軸14に支持され、回転軸14とともに回転する遠心ファンとしてのターボファン18を備える。
【0110】
遠心送風装置10は、ファン軸線方向DRaの一方側に開口する空気流入口221aを有し、空気流入口221aに対してファン軸線方向DRaの他方側にターボファン18および回転軸14を収納するスクロールケーシング12を備える。
【0111】
ターボファン18は、ファン軸線CLを中心とする円周方向に等間隔に並べられている複数枚の翼52と、複数枚の翼52に対してファン軸線方向DRaの一方側に配置されているリング部材54とを備える。
【0112】
リング部材54は、空気流入口221aを通過する空気が吸入されるファン吸気口54aを有してファン軸線CLを中心とする環状に形成され、複数枚の翼52のそれぞれのうちファン軸線方向DRaの一方側に連結されている。
【0113】
ターボファン18は、複数枚の翼52に対してファン軸線方向DRaの他方側に配置され、かつ複数枚の翼52のそれぞれのうちファン軸線方向DRaの他方側に連結されている主板56を備える。
【0114】
主板56、リング部材54、および複数枚の翼52は、空気流路54fおよび複数の翼間流路52aを形成している。空気流路54fおよび複数の翼間流路52aは、ファン通風路を構成する。
【0115】
ターボファン18は、その回転によって、空気流入口221aおよびファン吸気口54aを通して吸い込んだ空気を空気流路54fおよび複数の翼間流路52aを通してファン軸線CLを中心とする径方向外側に吹き出す。
【0116】
スクロールケーシング12は、リング部材54をファン軸線方向DRaの一方側から覆うように形成されているカバーケース部221を有している。リング部材54およびカバーケース部221は、双方の間に隙間である逆流路300を形成している。カバーケース部221の外側には、ケース外側空所500が設けられている。
【0117】
リング部材54、カバーケース部221は、複数の翼間流路52aから吹き出される空気が逆流路300を通してファン吸気口54aに流入されることを抑制するために、(a)~(d)の通り、複数の連通路310、320、330、340、350を有する。
【0118】
(a)リング部材54は、逆流路300およびケース外側空所500の間を連通して、逆流路300からケース外側空所500に空気を流通させる複数の連通路310を備える。
【0119】
これにより、複数の連通路310によって逆流路300からケース外側空所500に空気を流出させることができる。このため、複数の翼間流路52aから吹き出される空気を逆流路300を通してターボファン18のファン吸気口54aに逆流される空気の流量を減らすことができる。
【0120】
(b)リング部材54は、ケース外側空所500および逆流路300の間を連通して、ケース外側空所500から逆流路300に空気を流入させる複数の連通路320および複数の連通路330を備える。
【0121】
これにより、複数の連通路320および複数の連通路330によって、ケース外側空所500から逆流路300に流入される空気を、逆流路300内を入口300aから出口300bに向けて流れる空気に対して衝突させることができる。よって、逆流路300内を入口300aから出口300bに向けて流れる空気に圧力損失を与えることができる。
【0122】
(c)リング部材54の円筒部54dは、逆流路300および空気流路54fの間を連通して空気流路54fから逆流路300に空気を流通させる複数の連通路340を備える。
【0123】
これにより、複数の連通路340によって空気流路54fから逆流路300に流入される空気を、逆流路300内を入口300aから出口300bに向けて流れる空気に対して衝突させることができる。よって、逆流路300内を入口300aから出口300bに向けて流れる空気に圧力損失を与えることができる。
【0124】
(d)湾曲部54eの内壁541は、ファン軸線CLを含むリング部材54において、ファン軸線方向DRaの他方側に凸となる円弧状に形成されている。内壁541は、主板56および複数枚の翼52とともに、複数の翼間流路52aを形成する。
【0125】
湾曲部54eの内壁541は、ファン軸線方向DRaの一方側から他方側に向かうほどファン軸線CLを中心とする径方向外側に滑らかに向かうように形成されている。
【0126】
ここで、湾曲部54eは、逆流路300および翼間流路52aの間を連通して逆流路300から翼間流路52aに空気を流通させる複数の連通路350を備える。
【0127】
これにより、複数の連通路350によって逆流路300から翼間流路52aに空気を流通させることができる。このため、逆流路300からリング部材54のファン吸気口54aに流れる空気の流量を減らすことができる。
【0128】
以上のように、逆流路300からリング部材54のファン吸気口54aに流れる空気の流量を減らしたり、逆流路300からリング部材54のファン吸気口54aに流れる空気に圧力損失を与えることができる。
【0129】
したがって、ファン軸線方向DRaの一方から空気流入口221a、ファン吸気口54aに流れ込む空気流の主流に対して、逆流路300からファン吸気口54aに流れる空気が混合されることにより生じる空気の乱れの発生を抑えることができる。このため、送風機効率の低下、騒音の発生を抑えることができる。
【0130】
このように構成される本実施形態では、次の(e)(f)(g)(h)の作用効果を得ることができる。
【0131】
(e)複数の連通路310は、それぞれ、ファン軸線CLを中心として円周方向に並べられている。複数の連通路320は、それぞれ、ファン軸線CLを中心として円周方向に並べられている。複数の連通路330は、それぞれ、ファン軸線CLを中心として円周方向に並べられている。
【0132】
複数の連通路340は、それぞれ、ファン軸線CLを中心として円周方向に並べられている。複数の連通路350は、それぞれ、ファン軸線CLを中心として円周方向に並べられている。これにより、逆流路300内において、ファン軸線CLを中心とする円周方向における静圧分布を均一化することができる。
【0133】
(f)カバーケース部221は、連通路310を形成する連通路内壁310aを有している。スクロールケーシング12は、リング部材に対して軸線を中心とする径方向外側に配置され、リング部材54とともに、逆流路300の入口300aを形成する入口側内壁300cを有している。
【0134】
入口側内壁300cは、ファン軸線方向DRaに沿うように形成されている。
【0135】
連通路内壁310aは、入口側内壁300cから連続してファン軸線方向DRa(すなわち、所定方向)に沿うように形成され、入口300aから入口側内壁300cに沿って流れる空気をケース外側空所へ案内する。
【0136】
したがって、入口300aから逆流路300に流入される空気をケース外側空所500に円滑に流出することができる。
【0137】
(g)カバーケース部221は、逆流路300を迷路状に構成するためにファン軸線方向DRa(すなわち、所定方向)に沿うように形成されている迷路壁410を構成している。カバーケース部221は、迷路壁410から連続してファン軸線方向DRaに沿うように形成されて連通路320を形成する連通路内壁320aを有している。
【0138】
連通路内壁320aは、ケース外側空所500から逆流路300に流入される空気を、逆流路300内の迷路壁410に沿って流れる空気に衝突させるように案内する。このため、ケース外側空所500から逆流路300に流入される空気を逆流路300内の迷路壁410に沿って流れる空気に円滑に衝突させることができる。
【0139】
(h)ターボファン18が回転方向の一方側DRfに回転することにより吸い込んだ空気を翼間流路52aを通して吹き出す際に、翼間流路52aのうち一方側の領域520には、負圧が発生する。一方側の領域520は、翼間流路52aのうち回転方向における中心線STに対して回転方向の一方側DRfに形成される領域である。
【0140】
一方、翼間流路52aのうち他方側の領域521は、正圧が発生する。他方側の領域521は、翼間流路52aのうち中心線STに対して回転方向の他方側に形成される領域である。このため、翼間流路52aのうち一方側の領域520の方が他方側の領域521に比べて静圧が低くなる。
【0141】
したがって、連通路350は、翼間流路52aのうち一方側の領域520と逆流路300との間を連通している。このため、連通路350によって翼間流路52aのうち他方側の領域521と逆流路300との間を連通している場合に比べて、連通路350によって逆流路300から翼間流路52aに流れる空気の風量を増大させることができる。
【0142】
このため、ファン軸線方向DRaの一方から空気流入口221a、ファン吸気口54aに流れ込む空気流の主流に対して、逆流路300からファン吸気口54aに流れる空気が混合されることにより生じる空気の乱れの発生をより一層抑えることができる。
【0143】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、リング部材54の湾曲部54eに複数の連通路350を設けた例について説明した。しかし、これに代えて、リング部材54の湾曲部54eに複数の連通路350aおよび複数の連通路350bを設ける遠心送風装置10の本第2実施形態について
図14を参照して説明する。
【0144】
本実施形態は、上記第1実施形態のリング部材54の湾曲部54eにおいて、複数の連通路350に代える複数の連通路350aおよび複数の連通路350bを備える。複数の連通路350aおよび複数の連通路350bは、それぞれ、逆流路300および複数の翼間流路52aの間を連通している。本実施形態は、上記第1実施形態に対して複数の連通路350aおよび複数の連通路350bが相違するだけで、その他の構成は同一である。
【0145】
そこで、本実施形態において、主に複数の連通路350aおよび複数の連通路350bについて説明する。
【0146】
リング部材54のうちファン軸線CLを含む断面図において、
図14に示すように、湾曲部54eのうち複数の翼間流路52aを形成する内壁541には、変化点600が設けられている。
【0147】
内壁541は、円筒部54dの内壁540のうちファン軸線方向DRaの他方側端部からファン軸線方向DRaの他方側に向かうほど、ファン軸線CLを中心とする径方向外側に滑らかに進むように形成されている。
【0148】
本実施形態において、リング部材54のうちファン軸線CLを含む断面図において、内壁541に接する接線と回転軸14の軸線であるファン軸線との間に形成される狭角を内壁角とする。ここで、狭角(すなわち、内壁角)は、零度以上で、かつ90度未満に設定されている。
【0149】
内壁541のうち変化点600に接する接線S1とファン軸線CLaとの間に形成される内壁角α1が3.5度になっている。
【0150】
本実施形態では、内壁541のうち変化点600からファン軸線方向DRaの一方側に向かうほど内壁角が3.5度よりも小さくなっている。一方、内壁541のうち変化点600からファン軸線方向DRaの他方側に向かうほど内壁角が3.5度よりも大きくなっている。
【0151】
但し、「3.5度」とは、一般的な製造誤差を加味した所定範囲内の角度であればよく、厳密に決められている「3.5度」に限定されない。
【0152】
このように構成される遠心送風装置10のターボファン18において、複数の翼間流路52aのうち湾曲部54eの内壁541付近では、内壁541から剥離する空気流が発生する場合がある。一般的に、内壁角が大きくなるほど、内壁541から剥離する空気流が発生し易い。
【0153】
特に、複数の翼間流路52aにおいて湾曲部54eの内壁541付近のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの他方側では、湾曲部54eの内壁541から空気流の剥離が生じ易くなる。すなわち、湾曲部54eの内壁541付近のうち変化点600よりも空気流の下流側では、空気流の剥離が特に生じ易くなる。
【0154】
そこで、本実施形態では、複数の連通路350aは、それぞれ、リング部材54の湾曲部54eの内壁541のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの他方側に開口するように形成されている。複数の連通路350aは、それぞれ、ファン軸線CLを中心として円周方向に等間隔に並べられている。
【0155】
ここで、翼間流路52aおいてリング部材54の湾曲部54eの内壁541付近のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの他方側領域は、逆流路300内に比べて、空気流の剥離が起因して、静圧が低くなる。このため、複数の連通路350aは、それぞれ、逆流路300内から複数の翼間流路52aに向けて流れる空気流を発生させる。
【0156】
このように構成されている本実施形態では、複数の連通路350aは、それぞれ、逆流路300から湾曲部54eの内壁541付近のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの他方側領域に空気を流すことができる。
【0157】
このため、複数の連通路350aは、逆流路300から、湾曲部54eの内壁541付近のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの他方側領域に形成される空気流の剥離領域に空気流を供給することができる。
【0158】
また、本実施形態では、複数の連通路350bは、それぞれ、リング部材54の湾曲部54eの内壁541のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの一方側領域に開口するように形成されている。複数の連通路350bは、それぞれ、ファン軸線CLを中心として円周方向に並べられている。
【0159】
ここで、翼間流路52aおいて、湾曲部54eの内壁541付近のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの一方側領域でも、空気流の剥離が起因して、逆流路300内に比べて、静圧が低くなる。
【0160】
このため、複数の連通路350bは、逆流路300から、湾曲部54eの内壁541のうち、変化点600よりもファン軸線方向DRaの一方側領域に供給することができる。これに伴い、この供給される空気流を内壁541のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの他方側領域に供給することになる。
【0161】
以上により、内壁541のうち、変化点600よりも上流側に形成される空気の剥離領域と変化点600よりも下流側に形成される空気の剥離領域とに複数の連通路350bから吹き出される空気を供給することができる。
【0162】
以上説明した本実施形態によれば、リング部材54のうちファン軸線を含む断面において、内壁541は、内壁角α1が3.5度になる変化点600を有している。内壁541のうち変化点600からファン軸線方向DRaの一方側に向かうほど内壁角が小さくなる。内壁541のうち変化点600からファン軸線方向DRaの他方側に向かうほど内壁角が大きくなる。
【0163】
リング部材54のうちファン軸線CLを含む断面において、湾曲部54eのうち翼間流路52aを形成する内壁541に接する接線とファン軸線CLa、CLb、CLcとの間に形成される狭角を内壁角とする。
【0164】
複数の連通路350aは、それぞれ、リング部材54の湾曲部54eの内壁541のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの他方側を開口するように形成されている。このため、複数の連通路350aは、それぞれ、逆流路300から、湾曲部54eの内壁541のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの他方側に形成される空気流の剥離領域に空気流を供給することができる。
【0165】
複数の連通路350bは、それぞれ、リング部材54の湾曲部54eの内壁541のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの一方側領域を開口するように形成されている。このため、複数の連通路350bは、逆流路300から、湾曲部54eの内壁541のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの一方側領域に空気流を供給する。
【0166】
このことにより、内壁541のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの一方側領域から、ファン軸線方向DRaの他方側領域に形成される空気流の剥離領域に空気流を供給することができる。
【0167】
以上により、内壁541のうち変化点600よりもファン軸線方向DRaの一方側領域および他方側領域に形成される空気流の剥離領域に空気流を供給することにより、ターボファン18のファン効率を向上させることができる。
【0168】
(第3実施形態)
本第3実施形態の遠心送風装置10では、上記第1実施形態の遠心送風装置10において、逆流路300から流れ出る空気の一部を大気に放出させる放出流路300dを追加した例について
図15を参照して説明する。
【0169】
本実施形態の遠心送風装置10は、上記第1実施形態の遠心送風装置10において、放出流路300dを追加した構成になっており、放出流路300d以外の構成は、上記第1実施形態と実質的に同様になっている。そこで、本実施形態では、主に放出流路300dについて説明する。
【0170】
本実施形態では、スクロールケーシング12は、カバーケース部221を覆うように形成されるカバーケース部221cを備える。カバーケース部221cは、ファン軸線CLを中心とする環状に形成されている。このため、放出流路300dは、カバーケース部221cおよびカバーケース部221の間に配置されている。放出流路300dは、ファン軸線CLを中心とする環状に形成されている。
【0171】
放出流路300dのうちファン軸線CLを中心とする径方向内側は、逆流路300のうちファン軸線CLを中心とする径方向内側に連通されている。放出流路300dのうちファン軸線CLを中心とする径方向外側は、大気に開放されている。
【0172】
本実施形態では、逆流路300の出口300bは、カバーケース部221cとリング部材54のうち円筒部54dとの間に形成されている。
【0173】
次に、本実施形態の遠心送風装置10の作動について
図15を参照して説明する。
【0174】
まず、ターボファン18は、その回転に伴って、上記第1実施形態と同様に、ファン軸線方向DRaの一方側から空気流入口221a、ファン吸気口54aを通して吸入される空気を複数の翼間流路52aの出口400を通して吹き出す。
【0175】
このとき、複数の翼間流路52aの出口400から流れ出る空気の一部は、入口300aから逆流路300に流入し、この流入した空気は逆流路300内を出口300bに向けて流れる。この逆流路300内を流れる空気の一部は、矢印FTaの如く、出口300bから吹き出され、この吹き出される空気は、ファン吸気口54aを通して複数の翼間流路52aに流入される。
【0176】
ここで、逆流路300内のうち出口300b付近の静圧が大気圧よりも高い場合には、逆流路300内を流れる空気のうち出口300bからファン吸気口54aに流れる一部の空気以外の残りの空気が、矢印FTbの如く放出流路300dを通して大気に流れる。
【0177】
以上説明した本実施形態によれば、遠心送風装置10は、逆流路300から流れ出る空気の一部を放出流路300dを通して大気に放出させる。このため、逆流路300からファン吸気口54aを通して空気流路54fに流れる空気の流量を減らすことができる。
【0178】
したがって、ファン軸線方向DRaの一方から空気流入口221a、ファン吸気口54aに流れ込む空気流の主流に対して、逆流路300からファン吸気口54aに流れる空気が混合されることにより生じる空気の乱れの発生を抑えることができる。このため、送風機効率の低下、騒音の発生を抑えることができる。
【0179】
(第4実施形態)
本第4実施形態では、上記第1実施形態の遠心送風装置10のリング部材54の円筒部54dにおいて、逆流路300を流れる空気をファン軸線CLを中心とする径方向外側に案内するガイド部54kを設けた例について
図16を参照して説明する。
【0180】
本実施形態の遠心送風装置10は、上記第1実施形態における遠心送風装置10のリング部材54の円筒部54dにガイド部54kを追加した構成を有している。そこで、以下、本実施形態の遠心送風装置10については、主にリング部材54のうちガイド部54k周辺について説明する。
【0181】
ガイド部54kは、リング部材54の円筒部54dのうちファン軸線方向DRaの一方側端部からファン軸線CLを中心とする径方向外側に突起するように形成されている。ガイド部54kは、逆流路300を入口300aから出口300bに向けて流れる空気をファン軸線CLを中心とする径方向外側に導く役割を果たす。円筒部54dは、ファン吸気口54aを形成する吸入口形成部を構成する。
【0182】
ここで、ガイド部54kとカバーケース部221との間には、逆流路300内とケース外側空所500との間を連通する連通孔300eが設けられている。本実施形態のケース外側空所500は、大気に開放されている。
【0183】
次に、本実施形態の遠心送風装置10の作動について説明する。
【0184】
まず、上記第1実施形態と同様に、ターボファン18の回転に伴って、複数の翼間流路52aの出口400から流れ出る空気の一部は、入口300aから逆流路300に流入し、この流入した空気は逆流路300内を出口300bに向けて流れる。
【0185】
この逆流路300内を流れる空気は、ガイド部54kによってファン軸線CLを中心とする径方向外側に流れるように案内される。
【0186】
この案内される空気は、矢印FTcの如く、連通孔300eを通してケース外側空所500に導かれることになる。すなわち、ガイド部54kは、逆流路300内を流れる空気を連通孔300e、ケース外側空所500を通して大気に導くことになる。
【0187】
以上説明した本実施形態によれば、リング部材54は、ファン吸気口54aを形成する円筒部54dと、円筒部54dからファン径方向DRr外側に突起するように形成されているガイド部54kとを備える。
【0188】
ガイド部54kおよびカバーケース部221の間には、ケース外側空所500と逆流路300内との間を連通する連通孔300eが形成されている。
【0189】
ガイド部54kは、逆流路300のうち入口300aから出口300bに向けて流れる空気をファン径方向DRr外側に導くことにより、逆流路300を流れる空気を、連通孔300eおよびケース外側空所500を通して大気に向けて導くようになっている。このため、逆流路300からファン吸気口54aに流れる空気の流量を減らすことができる。
【0190】
よって、上記第1実施形態と同様、ファン軸線方向DRa一方側から空気流入口221a、ファン吸気口54aに流れる空気流の主流に、逆流路300からファン吸気口54aに流れる空気が混合して生じる空気の乱れの発生を抑えることができる。
【0191】
(第5実施形態)
上記第1実施形態では、複数の連通路内壁310aは、それぞれ、ファン軸線CLを含む遠心送風装置10の断面図において、入口側内壁300cから連続してファン軸線方向DRaに沿うように形成されている例について説明した。
【0192】
しかし、これに代えて、ファン軸線CLを含む遠心送風装置10の断面図において、複数の連通路内壁310aをファン軸線CLdに対して角度β1傾斜するように形成されている本第5実施形態について
図17を参照して説明する。
【0193】
本実施形態では、複数の連通路内壁310aは、それぞれ、ファン軸線方向DRaの他方側から一方側に進むほど、連通路310の流路断面積が大きくなるように形成されている。連通路310の流路断面積とは、連通路310の軸線Taに対して直交する断面の面積のことである。角度β1は、45度以下に設定されている。
【0194】
このように構成される本実施形態では、逆流路300からカバーケース部221の外側へ複数の連通路310を通して空気が流通する際に、空気の流通を連通路内壁310aが妨げることを抑えることができる。
【0195】
(第6実施形態)
上記第1実施形態では、連通路320毎の連通路内壁320aが逆流路300の迷路壁410からファン軸線方向DRaに沿うように形成されている例について説明した。
【0196】
しかし、これに代えて、ファン軸線CLを含む遠心送風装置10の断面図において、連通路320毎の連通路内壁320aをファン軸線CLeに対して傾斜するように形成されている本第6実施形態について
図18を参照して説明する。
【0197】
本実施形態では、複数の連通路内壁320aは、それぞれ、ファン軸線方向DRaの他方側から一方側に進むほど、連通路310の流路断面積が大きくなるように形成されている。連通路320の流路断面積とは、連通路320の軸線Tbに対して直交する断面の面積のことである。
【0198】
本実施形態では、ケース外側空所500から
図18中矢印FLbの如く連通路内壁320aに沿って逆流路300内に流れ込む空気と、
図18中矢印FLcの如く逆流路300の迷路壁410に沿ってファン軸線方向DRaの一方側に流れる空気が衝突する。
このとき、ケース外側空所500から連通路内壁320aに沿って逆流路300内に流れ込む空気が、逆流路300内にて迷路壁410に沿ってファン軸線方向DRaの一方側に流れる空気に対して圧力損失を与えることができる。
ここで、ケース外側空所500から連通路内壁320aに沿って逆流路300内に流れ込む空気と、逆流路300の迷路壁410に沿ってファン軸線方向DRaの一方側に流れる空気との間に形成される角度を角度β2とする。
本実施形態では、角度β2が90度未満である狭角になるように複数の連通路内壁320aが形成される。
この場合、角度β2が90度以上となる場合に比べて、ケース外側空所500から逆流路300内に流れ込む空気が、迷路壁410に沿ってファン軸線方向DRaの一方側に流れる空気に対して与える圧力損失を上げることができる。
これにより、逆流路300のうち入口300aから出口300bに向けて流れる空気の風量を減らすことができる。このため、逆流路300を通してファン吸気口54aに流れる空気の風量を減らすことができる。
【0199】
(第7実施形態)
上記第1実施形態では、リング部材54のうち複数の連通路350を形成する複数の連通路内壁350cがファン軸線方向DRaに沿うように形成されている例について説明した。
【0200】
しかし、これに代えて、ファン軸線CLを含む遠心送風装置10の断面図において、複数の連通路内壁350cをファン軸線CLfに対して角度β3傾斜するように形成されている本第7実施形態について
図19を参照して説明する。
【0201】
本実施形態では、複数の連通路内壁350cは、それぞれ、ファン軸線方向DRaの他方側から一方側に進むほど、連通路350の流路断面積が大きくなるように形成されている。連通路350の流路断面積とは、連通路350の軸線Tcに対して直交する断面の面積のことである。角度β3は、零度よりも大きく90度未満になるように設定されている。
【0202】
このように構成される本実施形態では、翼間流路52aから逆流路300へ複数の連通路350を通して空気が逆流することを抑えることができる。
【0203】
(第8実施形態)
上記第1実施形態では、ケース外側空所500を大気に開放されている例について説明した。しかし、これに代えて、ケース外側空所500が閉じるように構成されている本第8実施形態について
図20を参照して説明する。
【0204】
本実施形態の遠心送風装置10では、
図20に示すように、スクロールケーシング12は、ケース外側空所500を閉じる蓋部500aを備える。蓋部500aは、第1ケーシング部材22の周縁部222およびシュラウド13の間を接続することにより、ケース外側空所500を閉塞空間に構成している。
【0205】
複数の連通路320の流路断面積と複数の連通路330の流路断面積とを加算した加算値である総流路断面積GAは、複数の連通路310の流路断面積を加算した加算値である総流路断面積GBに比べて小さくなっている。
【0206】
ここで、総流路断面積GAは、1つ以上の第2連通路の総流路断面積を加算した加算値である。総流路断面積GBは、1つ以上の第1連通路を加算した加算値である。複数の連通路310は、第1連通路を構成している。複数の連通路320および複数の連通路330は、第2連通路を構成している。
【0207】
連通路330の流路断面積は、連通路330のうちその軸線D3に対して直交する断面の面積である。連通路320の流路断面積は、連通路320のうちその軸線D2に対して直交する断面の面積である。
【0208】
連通路310の流路断面積は、連通路310のうちその軸線D1に対して直交する断面の面積である。
【0209】
このため、本実施形態によれば、総流路断面積GAが総流路断面積GBに比べて大きい場合に比べて、複数の連通路320および複数の連通路330を通してケース外側空所500から逆流路300に向けて流れる空気流の速度を上げることができる。
【0210】
以上説明した本実施形態によれば、複数の連通路320の流路断面積と複数の連通路330の流路断面積とを加算した加算値である総流路断面積GAは、複数の連通路310の流路断面積を加算した加算値である総流路断面積GBに比べて小さくなっている。
【0211】
このため、総流路断面積GAが総流路断面積GBに比べて大きい場合に比べて、複数の連通路320および複数の連通路330を通してケース外側空所500から逆流路300に向けて空気を流通させる空気流の速度を上げることができる。
【0212】
これにより、逆流路300のうち入口300aから出口300bに流れる空気に対して、複数の連通路330、320によって逆流路300内に流入される空気を衝突させることにより生じる圧力損失を大きくすることできる。
【0213】
以上により、ファン軸線方向DRaの一方から空気流入口221a、ファン吸気口54aに流れ込む空気流の主流に対して、逆流路300からファン吸気口54aに流れる空気が混合して生じる空気の乱れの発生をより一層抑えることができる。
【0214】
(他の実施形態)
(1)上記第1~第8実施形態では、遠心ファンをターボファン18とした例について説明したが、これに代えて、遠心ファンをターボファン18以外の例えば、シロッコファンとしてもよい。
【0215】
(2)上記第8実施形態では、カバーケース部221において複数の連通路310および複数の連通路330を設けた例について説明した。しかし、これに代えて、カバーケース部221において、複数の連通路310、複数の連通路320、および複数の連通路330を設けた例について説明した。
【0216】
この場合、複数の連通路320の流路断面積および複数の連通路330の流路断面積の合計S3は、複数の連通路310の流路断面積の合計S1に比べて小さくなっている。
【0217】
(3)上記第1~第8実施形態では、遠心送風装置10を車両用空調装置に適用した例について説明した。しかし、これに代えて、遠心送風装置10を車両用空調装置以外の各種の装置(例えば、車両用シート空調)に適用してもよい。
【0218】
(4)上記第1実施形態では、連通路内壁310aおよび入口側内壁300cがそれぞれ所定方向としてのファン軸線方向DRaに沿うように形成されている例について説明した。
【0219】
しかし、これに限らず、連通路内壁310aおよび入口側内壁300cがそれぞれファン軸線方向DRa以外の方向に沿うように形成されていてもよい。
【0220】
(5)上記第1実施形態では、連通路内壁320aおよび逆流路300の迷路壁410がそれぞれファン軸線方向DRaに沿うように形成されている例について説明した。
【0221】
しかし、これに代えて、連通路内壁320aおよび逆流路300の迷路壁410がそれぞれファン軸線方向DRa以外の方向に沿うように形成されていてもよい。
【0222】
(6)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【符号の説明】
【0223】
10 遠心送風装置
12 スクロールケーシング
18 ターボファン
52 翼
54 リング部材
54a 空気吸入口
221 カバーケース部
300 逆流路
310 連通路
320 連通路
330 連通路
340 連通路
350 連通路
500 ケース外側空所
360 変化点