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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136934
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】人物評価システム及び人物評価方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/105 20230101AFI20230922BHJP
   G06Q 10/06 20230101ALI20230922BHJP
【FI】
G06Q10/10 320
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042880
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】尾白 大知
(72)【発明者】
【氏名】宮田 克也
(72)【発明者】
【氏名】大島 敬志
(72)【発明者】
【氏名】竹市 嘉一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 浄人
(72)【発明者】
【氏名】丸山 泉
(72)【発明者】
【氏名】須田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 哲
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA20
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】調査者が注目している特徴を有し、かつ複数の多様な人物と共通して繋がっている人物を特定するための人物評価を実行する。
【解決手段】人物評価システムは、複数の人物それぞれの属性情報と、当該複数の人物それぞれが所定の特徴を有する特徴人物であるかを示す情報と、を保持し、当該複数の人物それぞれの属性情報に基づいて、当該複数の人物間の類似度を算出し、算出した類似度に基づいて、当該複数の人物のうち類似する人物を接続したクラスタを生成し、クラスタに含まれる特定人物と特徴人物との接続関係に基づいて、特定人物を評価する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物評価システムであって、
プロセッサとメモリとを含み、
前記メモリは、複数の人物それぞれの属性情報と、前記複数の人物それぞれが所定の特徴を有する特徴人物であるかを示す情報と、を保持し、
前記プロセッサは、
前記複数の人物それぞれの属性情報に基づいて、前記複数の人物間の類似度を算出し、
前記算出した類似度に基づいて、前記複数の人物のうち類似する人物を接続したクラスタを生成し、
前記クラスタに含まれる特定人物と前記特徴人物との接続関係に基づいて、前記特定人物を評価する、人物評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の人物評価システムであって、
前記プロセッサは、前記クラスタから前記特定人物を除外した場合における、当該クラスタの前記特徴人物に関する構成変化に基づいて、前記特定人物を評価する、人物評価システム。
【請求項3】
請求項2に記載の人物評価システムであって、
前記プロセッサは、前記クラスタから前記特定人物を除外した場合における、当該クラスタに含まれる前記特徴人物間の接続関係の有無の変化に基づいて、前記特定人物を評価する、人物評価システム。
【請求項4】
請求項2に記載の人物評価システムであって、
前記プロセッサは、前記クラスタから前記特定人物を除外した場合における、当該クラスタに含まれる前記特徴人物間の接続経由点数の変化に基づいて、前記特定人物を評価する、人物評価システム。
【請求項5】
請求項2に記載の人物評価システムであって、
前記プロセッサは、前記クラスタから前記特定人物を除外した場合において、分割されたクラスタのうち前記特定人物を含むクラスタの数に基づいて、前記特定人物を評価する、人物評価システム。
【請求項6】
請求項1に記載の人物評価システムであって、
前記プロセッサは、
前記算出した類似度に基づいて、前記特定人物と、前記クラスタに含まれる注意人物それぞれと、の関係強度を算出し、
前記算出した関係強度のうち最大の関係強度に基づいて、前記特定人物を評価する、人物評価システム。
【請求項7】
請求項1に記載の人物評価システムであって、
前記プロセッサは、前記クラスタに含まれる特定人物と前記特徴人物との接続関係に基づく前記特定人物の評価値と、前記クラスタに含まれる前記特徴人物を示す情報と、を表示装置に出力するためのデータを生成する、人物評価システム。
【請求項8】
請求項1に記載の人物評価システムであって、
前記メモリは、
前記複数の人物間の関係を示す人物関係情報と、
前記属性情報に基づいて人物間の関係を定義するための条件情報と、を保持し、
前記プロセッサは、
前記複数の人物の属性情報と、前記条件情報と、に基づいて、前記複数の人物に含まれる人物間の関係を推測し、
前記人物関係情報が示す関係と、前記推測した関係と、を出力するためのデータを生成する、人物評価システム。
【請求項9】
人物評価システムによる人物評価方法であって、
前記人物評価システムは、プロセッサとメモリとを含み、
前記メモリは、複数の人物それぞれの属性情報と、前記複数の人物それぞれが所定の特徴を有する特徴人物であるかを示す情報と、を保持し、
前記人物評価方法は、
前記プロセッサが、前記複数の人物それぞれの属性情報に基づいて、前記複数の人物間の類似度を算出し、
前記プロセッサが、前記算出した類似度に基づいて、前記複数の人物のうち類似する人物を接続したクラスタを生成し、
前記プロセッサが、前記クラスタに含まれる特定人物と前記特徴人物との接続関係に基づいて、前記特定人物を評価する、人物評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人物評価システム及び人物評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の人物の関係の構造化し、人物について評価を行うことが様々な場面で必要とされる。例えば、公的機関や民間の機関が提供するサービス等の登録申請(例えば、金融機関での口座開設や不動産の契約)において、申請者の審査が行われる。この審査では、申請者が登録の適用条件を満たしているか調査することに加え、申請者に関係している周辺人物を調査してリスク評価を行う場合がある。例えば、申請者が、過去に不正行為が確認されている注意人物と知人関係にある場合、申請者が既知の注意人物から不正行為を促される可能性も考えられ、重点的に審査を行う等の判断がされる。
【0003】
他にも、マーケティング調査において、利害関係など人物間の関係を構造化及び可視化することがある。その結果から事業立ち上げに向けてパートナーシップを結ぶべき人物を特定するなどの戦略立案が行われる。
【0004】
このような人物の関係の構造化から様々な情報を獲得することが可能である。また、調査者が注目している特徴を有する複数の人物と共通して繋がっている人物を特定することが重要になることがある。
【0005】
上記した審査の例においては、様々な人物に接触して不正行為を斡旋して利益を得る悪質な仲介人物や業者は、注目すべき特徴を有する人物である。審査においては、申請者がこのような人物であるか、及びこのような人物の関係者であるかを特定することは有用である。このような悪質な仲介人物の周辺人物は既に注意すべき人物としてマークされている人物が含まれることがしばしあり、様々な既知の注意人物と共通して繋がりを有している特徴がある。
【0006】
また、上記したマーケティング調査の例においては、好業績の事業者と共通してパートナーシップを結んでいるコンサルタントは優秀である可能性が高いため、このようなコンサルタントを特定することは事業の成功のために有用である。このコンサルタントも各事業者とは個別に契約を結んでおり、事業者同士に明確な繋がりがないが、当該の複数事業者に共通して繋がりを有している。
【0007】
ここで、本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(特開2012-150680号公報)には、「人間関係マップ管理サーバ10において,回答情報記憶部12には,人間関係マップの作成対象となる対象者からのアンケート回答の情報が記憶されている。人間関係マップ作成支援部100において,算出部130は,対象者からのアンケート回答の情報から,対象者間の関係の強さを算出する。対象特定部150は,算出された対象者間の関係の強さを解析することにより,アンケートに未回答の対象者の中から,人間関係マップの形への影響が大きい対象者を抽出し,アンケート回答を催促する対象者とする。対象出力部170は,アンケート回答を催促する対象者を出力する。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-150680公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の技術は、様々な人物と接触がある人物を特定する。しかし、悪質な仲介人物や優秀なコンサルタントのような人物は、ある共通した特徴を有する人物と共通して繋がりを有し、かつその特徴を有する人物同士は明に繋がりを持たない。特許文献1にはそのような観点は記載されておらず、悪質な仲介人物や優秀なコンサルタントのような人物と、例えば、組織内で幅広い交友関係を持つ人物と、を区別して抽出することはできない。
【0010】
そこで、本発明の一態様は、調査者が注目している特徴を有し、かつ複数の多様な人物と共通して繋がっている人物を特定するための人物評価を実行する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、人物評価システムは、プロセッサとメモリとを含み、前記メモリは、複数の人物それぞれの属性情報と、前記複数の人物それぞれが所定の特徴を有する特徴人物であるかを示す情報と、を保持し、前記プロセッサは、前記複数の人物それぞれの属性情報に基づいて、前記複数の人物間の類似度を算出し、前記算出した類似度に基づいて、前記複数の人物のうち類似する人物を接続したクラスタを生成し、前記クラスタに含まれる特定人物と前記特徴人物との接続関係に基づいて、前記特定人物を評価する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、調査者が注目している特徴を有し、かつ複数の多様な人物と共通して繋がっている人物を特定するための人物評価を実行することができる。
【0013】
前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1における人物評価システムの構成例を示す図である。
図2】実施例1における人物関連情報の構成例を示す図である。
図3】実施例1における類似度評価結果の構成例を示す図である。
図4】実施例1における関係構造情報の構成例を示す図である。
図5】実施例1における関係評価結果の構成例を示す図である。
図6】実施例1における人物評価の処理手順の例を示すフローチャートである。
図7】実施例1における類似度評価の詳細処理手順の例を示すフローチャートである。
図8】実施例1における関係ネットワーク解析の詳細処理手順の例を示すフローチャートである。
図9】実施例1における審査において審査対象者が定まっている場合の解析結果の表示画面の一例である。
図10】実施例1における定期的な検査などで人物関係からリスクが高い人物がいないか確認する場合の解析結果の表示画面の一例である。
図11】実施例2における人物評価システムの構成例を示す図である。
図12】実施例2における既知の人物関係情報の構成例を示す図である。
図13】実施例2における関係種類辞書の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施例を説明する。以下に説明する実施例において、同一又は類似する構成又は機能には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例0016】
実施例1では、複数の人物の情報に基づいて人物間の関係性を推定し、推定された関係性から任意の特徴を有する多様な人物と関係を有する人物を抽出する例を説明する。本実施例は不動産、金融などの様々な審査業務の中での人物のリスク評価に活用できる。ここでは、既知の注意人物のフラグ情報を有する多様な人物との間で関係を有する人物を抽出し、抽出された人物及びその周辺人物を抽出して審査対象者と照合することによって、悪質な仲介人物やその関係者であるかを評価する場面を想定する。
【0017】
図1は、実施例1における人物評価システムの構成例を示す図である。実施例1の人物評価システムは、処理を実行する機能部、及び機能部が生成し、更新し、又は使用する情報(データ)を含む。機能部は、類似度評価部105、関係ネットワーク(関係NW)構築部106、及び関係ネットワーク(関係NW)解析部107を含む。情報は、人物関連情報101、類似度評価結果102、関係構造情報103、及び関係評価結果104を含む。
【0018】
本実施例の人物評価システムは、プロセッサ(CPU)、メモリ、補助記憶装置及び通信インターフェースを有する計算機によって構成される。人物評価システムは、入力インターフェース及び出力インターフェースを有してもよい。
【0019】
プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する演算装置である。プロセッサが、各種プログラムを実行することによって、人物評価システムが提供する各機能部が実現される。なお、プロセッサがプログラムを実行して行う処理の一部を、他の演算装置(例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア)で実行してもよい。
【0020】
メモリは、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、プロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0021】
補助記憶装置は、例えば、磁気記憶装置(HDD)、フラッシュメモリ(SSD)等の大容量かつ不揮発性の記憶装置であり、前述の情報を格納する。また、補助記憶装置は、プロセッサが実行するプログラムを格納する。すなわち、プログラムは、補助記憶装置から読み出されて、メモリにロードされて、プロセッサによって実行されることによって、データ処理システムの各機能を実現する。
【0022】
通信インターフェースは、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。
【0023】
入力インターフェースは、ユーザからの入力を受けるインターフェースであり、出力インターフェースはプログラムの実行結果をユーザが視認可能な形式で出力するインターフェースである。なお、人物評価システムにネットワークを介して接続されたユーザ端末が入力インターフェース及び出力インターフェースを提供してもよい。この場合、人物評価システムがウェブサーバの機能を有し、ユーザ端末が人物評価システムに所定のプロトコル(例えばhttp)でアクセスしてもよい。
【0024】
プロセッサが実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介して人物評価システムに提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性の補助記憶装置に格納される。このため、人物評価システムは、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0025】
人物評価システムは、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。例えば、各機能部は、各々別個の物理的又は論理的計算機上で動作するものでも、複数が組み合わされて一つの物理的又は論理的計算機上で動作するものでもよい。
【0026】
図2は、人物関連情報101の構成例を示す図である。なお、図2から図5及び図12には、テーブル形式の情報の構成例で示すが、他の形式でもよい。
【0027】
人物関連情報101は、例えば審査申請で提出されたデータに基づいて構築される。提出内容は審査の種類によるが、実施例1では、人物の基本的な情報(住所など)や経歴(出身学校など)や所属組織などの属性情報を含む。
【0028】
審査対象者から提出された情報の他、審査機関が独自の情報を付与するとよい。特に、本実施例では既知の注意人物の情報を用いるが、一般的には審査機関から情報の提供を受けるとよい。例えば、過去に審査した人物が不正行為を行った場合、注意人物情報として蓄積され、注意人物情報に含まれる人物を注意人物のフラグ(要注意フラグ)を付与する。
【0029】
なお、本実施例では、人物関連情報101が要注意フラグを含む(注意人物が管理される)例を説明するが、要注意フラグは審査対象人物の何らかの特徴を示すフラグの一例であり、要注意フラグに代えて又は加えて他の特徴を示すフラグが用いられてもよい(つまり何らかの特徴がある人物が管理されてもよい)。
【0030】
図3は、類似度評価結果102の構成例を示す図である。類似度評価結果102は、類似度評価部105によって処理された結果が格納される。類似度は一つ又は複数の指標から構成される。本実施例では、類似度評価部105が複数の属性情報それぞれに基づいて多角的に人物間の類似度を評価し、最終的に総合した統合類似度を算出する。
【0031】
図4は、関係構造情報103の構成例を示す図である。関係構造情報103は、ネットワーク構造のデータを記録しており、本実施例では分かり易さの観点から明示的なテキスト形式としているが、バイナリファイル等でもよい。関係構造情報103は、ネットワーク構造を表すために必要な情報として、ノード(人物ID)のリスト、リンクのリスト(リンクで結ばれているノードと、リンクで結ばれているノード間の統合類似度)、と人物関連情報101が示す属性情報(類似度算出に用いられた属性情報、及び要注意フラグ等)などを格納する。
【0032】
図5は、関係評価結果104の構成例を示す図である。関係ネットワーク解析部107によって処理された結果が格納される。本実施例では、注意人物であるかのリスクを示す最終評価値、及び最終評価値の判断に用いた諸々の評価指標を格納する。なお、最終評価値に代えて又は最終評価値に加えて、上位ほど注意人物である可能性が高いことを示すランキング情報を格納してもよい。
【0033】
以上が本実施例の人物評価システムが格納している情報である。次に、図6に示す主要な処理のフローチャート(人物評価の処理手順の例を示すフローチャート)に沿って、それぞれの機能部の処理内容や、入出力される各情報との関係を説明する。
【0034】
人物評価システムは、人物関連情報を受け取り(処理601)、類似度評価部105が、受け取った人物関連情報に基づいて、類似度を評価する(処理602)。類似度評価の詳細処理手順の例は図7を参照して説明する。
【0035】
類似度評価処理では、類似度評価部105は、類似度評価を行う人物ペアを抽出する(処理701)。抽出される人物ペアの最大数は、人物関連情報101に登録されている2名の人物の全ての組み合わせ数であるため、人物関連情報101に登録されている人数や許容できる処理時間によっては、一部の組み合わせを選定する必要がある。また、計算量を削減することなく、分割された計算タイミングで計算結果を蓄積してもよい。例えば、段階的にデータが登録される場合、過去に計算済の人物同士の類似度評価結果を蓄積することで、新規登録者が発生したタイミングで計算する必要があるペア数を削減できる。
【0036】
次に、類似度評価部105は、類似度を計算する(処理702)。処理702では、様々な属性情報での類似度を評価する例を説明する。属性情報は、カテゴリ値、フラグ等の非連続値で記述されるものがある。例えば、ある人物Aと別の人物Bの属性iについて,両者の属性による類似度Sは式(1)で定義できる。なお、他の方法で類似度Sを評価してもよい。要注意フラグは人物の属性を示す情報ではないため、要注意フラグの類似度は算出されない。
【0037】
【数1】
【0038】
また、属性情報が連続値である場合、類似度Sは例えば式(2)で定義できる。式(2)においてNは定数であり、例えば属性iが取りうる範囲(最大~最小)などで定めることができる。
【0039】
【数2】
【0040】
次に、類似度評価部105は、処理702のように一つの人物ペアの個々の属性に対する類似度を評価した上で、最終的に総合値として一つの人物ペアに対し一つの統合類似度を算出する(処理703)。類似度評価部105は、例えば、以下に示す重み付き平均などによって統合類似度を算出する。各類似度Sは、0~1の範囲となるよう設計され、かつ各係数kの総和が1になるようにすることで、統合類似度も0から1の範囲の数値となる。なお、他の方法で統合類似度を算出してもよい。
【0041】
【数3】
【0042】
以上が、処理602の詳細手順である。なお、本実施例においては複数の属性情報について個別に類似度を評価し、統合する処理(処理702及び処理703)を例示したが、各属性の組み合わせを多次元ベクトルとし、コサイン類似度などを用いて多次元ベクトルの類似度を計算して、統合類似度を算出してもよい。
【0043】
次に、関係ネットワーク構築部106は、処理602で得た類似度情報に基づいてネットワーク構造を生成する(処理603)。例えば、関係ネットワーク構築部106は、統合類似度が所定の閾値以上の人物ペアをリンクで接続し、リンクで接続されたクラスタごとの、人物ID(ノード)、属性情報、及び要注意フラグ、並びに接続された人物間の統合類似度を、関係構造情報103に格納する。
【0044】
なお、人物がリンクで結ばれることにより、人物IDをノードとし、リンクをエッジとする1以上のグラフが生成される。このとき、生成された全てのグラフをまとめてネットワークと呼び、独立したグラフそれぞれをクラスタと呼ぶ。つまり、同じクラスタに属するノードは1以上のリンクを経由するルートで接続されているが、異なるクラスタに属するノードを接続するルートは存在しない。
【0045】
次に、関係ネットワーク解析部107は、処理604では関係ネットワークを解析する。関係ネットワーク解析の詳細処理手順の例は図8を参照して説明する。
【0046】
関係ネットワーク解析処理では、関係ネットワーク解析部107は、処理603で得たネットワークの中から、一つのクラスタを選択する。処理603までで得るネットワークは、複数のクラスタを含む可能性があるため、関係ネットワーク解析部107は、ネットワークから一つのクラスタを選択する。さらに、関係ネットワーク解析部107は、選択されたクラスタに属するノード(人物)群を抽出する(処理801)。
【0047】
次に、関係ネットワーク解析部107は、処理801で抽出したノード群の中から一つのノードを選択する。なお、この際、関係ネットワーク解析部107は、既に注意人物と分かっている人物は評価する必要がないので、既に注意人物と分かっている人物以外のノードを選択する(処理802)。なお、関係ネットワーク解析部107は、注意人物を選択してもよい。
【0048】
次に、関係ネットワーク解析部107は、ノードを評価する(処理803)。処理803では、関係ネットワーク解析部107は、選択したノード及び選択したノードに接続されているリンクを、選択したクラスタから除外した場合の、当該クラスタの構成変化を評価する。
【0049】
当該ノード及び当該リンクが除外されたことによって当該クラスタが複数のクラスタに分割された場合、関係ネットワーク解析部107は、分割によって接続関係を失った(つまり異なるクラスタに別れた)注意人物ノードのペア数を評価する。接続関係を失った注意人物ノードのペア数が多いほど、当該除外されたノードの人物が多様な注意人物との繋がりを有していると推測される。なお、この指標は後述する評価値E1の一例である。
【0050】
この他、関係ネットワーク解析部107は、当該ノードを除外した際に、各注意人物ノードまでの最短リンク数の増加数が一定以上になったペア数を指標とする評価によって、当該ノードが多様な注意人物との繋がりを有していることを評価してもよい。この指標は後述する評価値E1の一例である。特に、クラスタのサイズが大きい(ノード数が多い)場合等には、1つのノード及び当該ノードに接続するリンクが除外されてもクラスタが分割されない可能性が高くなるため、最短リンク数の増加数による評価が有用である。
【0051】
また、関係ネットワーク解析部107は、当該選択したノード及び選択したノードに接続されているリンクを、当該選択したクラスタから除外したことにより、分割されたクラスタのうち、注意人物ノードが含まれるクラスタの数によって、当該ノードが多様な注意人物との繋がりを有していることを評価してもよい。
【0052】
また、これらの指標はクラスタに所属する注意人物の人数に応じて数値が増加することから、関係ネットワーク解析部107は、これらの指標を扱いやすくするために正規化してもよい。例えば、クラスタ内に存在する全ての注意人物ノードの組み合わせ数に占める、当該ノードの除外によって接続関係を失った(又は最短リンク数が所定数以上増加した)ペア数の割合は、0から1の範囲に正規化された指標である。これにより、当該ノードの所属クラスタにおける注意人物同士の接続への寄与度を表す指標が定義される。この指標は後述する評価値E2の一例である。
【0053】
関係ネットワーク解析部107は、上記した指標に加えて又は代えて、ノードに関する他の指標を用いた評価を行ってもよい。例えば、関係ネットワーク解析部107は、統合類似度を活用して算出した人物間の関係強度を用いて評価を行う。なお、複数リンクを経由して接続される人物については、関係ネットワーク解析部107は、接続可能な全通りの経路それぞれについて統合類似度の積を計算し、その中の最大値によって当該人物間の関係強度を定める。
【0054】
これにより、関係ネットワーク解析部107は、ステップS802で選択したノードと、クラスタ内の全ノードとそれぞれと、の関係強度を算出できる。関係ネットワーク解析部107は、このうち、ステップS802で選択したノードと、クラスタ内の注意人物と、の関係強度の最大値を求める。当該最大値は、当該ノードの最近傍の注意人物との関係の強さを示す指標である。
【0055】
関係ネットワーク解析部107は、上記した1以上の指標を計算したうえで、最終的なリスク評価を行う。関係ネットワーク解析部107は、例えば、上記した1以上の指標の重み付き平均を最終評価値に決定する。
【0056】
例えば、人物Aに対して、評価値E1を所属クラスタにおける注意人物同士の接続への人物Aの寄与度、評価値E2を人物Aと注意人物の関係強度の最大値とする。評価値E1も評価値E2も、審査対象者と、当該審査対象者と同クラスタに所属する注意人物と、の接続関係に基づく評価値である。Kは重み係数であり、Kの総和は1である。これにより、以下に示す最終評価値は0から1の範囲で算出される。
【0057】
【数4】
【0058】
なお、各重み係数Kは、リスク評価で重視する観点により調整される。Kが大きいほど様々な注意人物を繋げている仲介人物としての性質が強い人物を高く評価することができる。Kが大きいほど特定の注意人物と密接な繋がりを有する人物を高く評価することができる。
【0059】
なお、上記した例では、要注意フラグは人物評価システムの外部から与えられるものとしたが、関係ネットワーク解析部107が、要注意フラグを算出(更新)してもよい。具体的には、例えば、関係ネットワーク解析部107は、算出した最終評価値が所定値以上である人物の要注意フラグを「1」(つまり注意人物であることを示す値)に更新し、算出した最終評価値が当該所定値未満である人物の要注意フラグを「0」(つまり注意人物でないことを示す値)に更新する等してもよい。
【0060】
続いて、関係ネットワーク解析部107は、処理801にて抽出したノード群のうち、評価対象のノードそれぞれに対して処理802及び処理803を実行する(処理804)。関係ネットワーク解析部107は、評価対象のクラスタそれぞれに対して処理801から処理804を実行する(処理805)。
【0061】
関係ネットワーク解析部107は、処理結果を関係評価結果としてディスプレイや印刷物に出力する(処理806)。なお、ネットワークは数百人規模の集団になる可能性があり、そのまま全体を可視化してもユーザにとって見づらい。従って、用途に合わせた情報量の削減、及び表示範囲の絞り込みなどの加工が行われることが望ましい。
【0062】
図9は審査において審査対象者が定まっている場合の解析結果の表示画面の一例である。図9の表示画面には、例えば、ネットワーク901、審査対象者サマリ902、及び周辺人物情報903が表示される。
【0063】
ネットワーク901は、審査対象者を中心とし、人物評価システムのユーザによって指定されたリンク先までの人物ネットワークを可視化したものである。ネットワーク901において、注意人物でない人物を示すノードは白色で、注意人物を示すノードは黒色で表現されている。また、リンクの長さは、全て同じ所定値であってもよいし、リンクで接続されているノード間の統合類似度が高いほど短くてもよい。
【0064】
審査対象者サマリ902は、審査対象者の評価結果(例えば、最終評価値や、最終評価値の算出に用いられたE1及びE2等)を示す。周辺人物情報903は、審査対象者の周辺人物として抽出された人物の評価結果を示す。審査対象者の周辺人物とは、例えば、審査対象者と同じクラスタに属する人物であってもよいし、審査対象者と所定数以内のリンクを経由して接続される人物であってもよいし、又は審査対象との関係強度が所定値以上の人物であってもよい。
【0065】
周辺人物情報903には、例えば、周辺人物の要注意フラグ、周辺人物の審査対象者との関係強度、及び類似度評価の際に統合類似度の向上に寄与した属性情報(例えば、類似度が所定値以上である属性情報等)が表示される。
【0066】
図10は、定期的な検査などで人物関係からリスクが高い人物がいないか確認する場合の解析結果の表示画面の一例である。過去の審査で評価済みの人物であっても、注意人物が後から追加登録されるなど人物関係に関わる情報が更新された場合には、当該評価済みの人物が改めて評価された際に過去の審査段階よりもリスクが高まっている可能性がある。そこで審査段階に限らず、それ以降にも(例えば、所定期間ごとに又は新たに注意人物が登録されるたびに等)解析処理を実行するとよい。
【0067】
図10の表示画面には、例えば、人物リスト1001及びネットワーク1002が表示される。人物リスト1001には、例えば、リスクが高い順(最終評価値が高い順に)に人物がリスト表示される。人物リスト1001における人物のチェックボックスが選択されると、選択された人物を中心としたネットワーク1002が表示される。
【0068】
以上に説明したように、実施例1の人物評価システムは、人物の様々な属性情報に基づいて算出された人物間の統合類似度に基づいて人物間の関係を示すネットワークを構築する。さらに、人物評価システムは、人物が所属するクラスタにおける既知の注意人物(特徴のある人物)同士の接続への当該人物の寄与度や、当該人物と当該既知の注意人物との関係強度に基づく評価値に基づいて、当該人物を評価することにより、当該人物が、既知の注意人物と関係が深いかどうか、多様な人物やグループとの繋がりがあるかどうか等を推定することができる。
【実施例0069】
実施例2の人物評価システムは、複数の人物についての情報をもとに人物間の関係性を推定し、推定した関係性に基づいて既知の任意の特徴を有する多様な人物と関係を有する人物を抽出する。実施例2の人物評価システムは、例えば、不動産又は金融などの様々な審査業務における人物のリスク判定に適用可能である。
【0070】
実施例2の人物評価システムによる処理は、最終的な評価において、人物間の関係の有無だけでなく、関係の種類の判定結果を出力することができる点において実施例1における処理と異なる。
【0071】
実施例2において、人物間の関係の有無、及び関係の種類等の関係情報が、予め部分的に得られている場合がある。例えば審査申請書によっては家族、同居人、及び保証人などの記入欄があり、人物情報を記録している場合がある。またソーシャルネットワークサービスの情報においては、関係情報とそのタグ(家族、友人など)情報が管理されていることがある。人物評価システムは、このような既知の関係情報も用いて評価を行ってもよい。
【0072】
図11は、実施例2における人物評価システムの構成例を示す図である。実施例2の人物評価システムは、実施例1の構成に加え、情報として、既知の人物関係情報108、及び関係種類辞書109をさらに含む。
【0073】
図12は、既知の人物関係情報108の構成例を示す図である。人物関係情報108は、人物ごとに、関係を有する人物の人物ID及び両者の関係を示す情報を格納する。
【0074】
図13は、関係種類辞書109の構成例を示す図である。図13では分かり易さの観点から関係種類辞書109が明示的なテキスト形式である例を示しているが、バイナリファイル等でもよい。関係種類辞書109は、例えば、属性情報の条件により関係を判定する条件式を含む。例えば、人物関連情報101に人物が所属する企業や部署が定義されており、所属企業や部署が一致している場合は同僚と判断するなどのif-thenルールが関係種類辞書109に定義されている。なお条件式はこのような形式に限られない。
【0075】
実施例2において実行される処理は実施例1と同様である、つまり図6図7、及び図8の処理が実行されるが。一部の処理が異なる。以下、実施例2において実行される処理と実施例1において実行される処理との相違点を説明する。
【0076】
関係ネットワーク解析部107は、処理803のノード評価において、処理802で選択中の人物と、周辺人物や注意人物と、の間の関係情報を付与する。当該選択中の人物と、周辺人物や注意人物と、の間の既知の人物関係情報が与えられている場合、関係ネットワーク解析部107は、その情報を関係評価結果104に格納する。
【0077】
当該選択中の人物と、周辺人物や注意人物と、の間の既知の人物関係情報が与えられていない、かつ関係種類辞書109の条件式に該当する関係が選択中の人物と、周辺人物や注意人物と、の間に認められる場合、関係ネットワーク解析部107は、当該条件式に該当する関係情報を関係評価結果104に格納する。
【0078】
当該選択中の人物と、周辺人物や注意人物と、の間の関係がいずれにも該当しない場合は、関係ネットワーク解析部107は、当該選択中の人物と、周辺人物や注意人物と、の間の関係情報として”未定”などの固定情報を関係評価結果104に格納する。
【0079】
また、関係ネットワーク解析部107は、関係評価結果104に格納した関係情報を図9における表示画面の評価結果の1カラムとして、表示してもよい。
【0080】
以上、実施例2の人物評価システムは、既知の人物関係情報108を用いて人物間の関係情報を付与することにより人物間の関係を可視化することができる。また、実施例2の人物評価システムは、人物の属性情報及び関係種類辞書109から、人物間の関係を推測して可視化することができる。
【0081】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0082】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0083】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0084】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0085】
101 人物関連情報、102 類似度評価結果、103 関係構造情報、104 関係評価結果、105 類似度評価部、106 関係ネットワーク構築部、107 関係ネットワーク解析部、108 既知の人物関係情報、109 関係種類辞書
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