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  • 特開-軸封装置 図1
  • 特開-軸封装置 図2
  • 特開-軸封装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136943
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】軸封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/24 20060101AFI20230922BHJP
   F16J 15/3268 20160101ALI20230922BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
F16J15/24 Z
F16J15/3268
F16J15/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042895
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 広大
(72)【発明者】
【氏名】上村 尚三
(72)【発明者】
【氏名】金谷 果歩
【テーマコード(参考)】
3J043
【Fターム(参考)】
3J043AA16
3J043BA03
3J043CA12
3J043DA09
(57)【要約】
【課題】締付機構としての本体の機能を維持しつつ、締付機構の製作時間を短縮することができる軸封装置を提供する。
【解決手段】軸封装置1は、複数のグランドパッキン3を軸方向に締め付ける締付機構10を備える。締付機構10は、フランジ部11bを有するパッキン押え11と、フランジ部11bを貫通してパッキンボックス2に固定されるネジ軸12と、ネジ軸12に締め込まれるナット13と、フランジ部11bとナット13との間に設けられたコイルスプリング14と、コイルスプリング14とナット13との間に設けられ、コイルスプリング14の付勢力によりナット13側に押圧される第1座金15と、フランジ部11bと第1座金15との間においてコイルスプリング14の径方向内側に設けられる無底円筒状の筒体17と、第1座金15に固定され軸方向一方側に延びる締付管理表示体18と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を包囲するパッキンボックスと、
前記回転軸と前記パッキンボックスとの間の環状空間において軸方向に並べて配置される複数のグランドパッキンと、
前記複数のグランドパッキンを軸方向に締め付ける締付機構と、を備える軸封装置であって、
前記締付機構は、
前記環状空間に軸方向一方側の端部が挿入されるとともに前記回転軸および前記パッキンボックスに対して軸方向に移動可能な円筒部と、前記円筒部の軸方向他方側の端部から径方向外側に延びる環状のフランジ部と、を有するパッキン押えと、
前記フランジ部を軸方向に貫通して前記パッキンボックスに固定されるネジ軸と、
前記フランジ部よりも前記軸方向他方側において前記ネジ軸に締め込まれるナットと、
前記フランジ部と前記ナットとの間において前記ネジ軸の径方向外側に設けられ、前記パッキン押えを前記軸方向一方側に押圧するコイルスプリングと、
前記コイルスプリングと前記ナットとの間において前記ネジ軸の径方向外側に設けられ、前記コイルスプリングの付勢力により前記ナット側に押圧される第1座金と、
前記フランジ部と前記第1座金との間において、前記ネジ軸の径方向外側に設けられ、かつ、前記コイルスプリングの径方向外側または径方向内側に設けられる無底円筒状の筒体と、
前記第1座金に固定され、前記コイルスプリングよりも径方向外側かつ前記筒体よりも径方向外側において前記軸方向一方側に延びる締付管理表示体と、を備える、軸封装置。
【請求項2】
前記筒体は、前記コイルスプリングの径方向内側に設けられている、請求項1に記載の軸封装置。
【請求項3】
前記締付機構は、
前記コイルスプリングと前記フランジ部との間において前記ネジ軸の径方向外側に設けられ、前記コイルスプリングの外径以上の外径を有する第2座金をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の軸封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブやポンプなどの流体機器に装備される軸封装置として、パッキンボックス内に複数のグランドパッキンが軸方向に並べて配置され、これらのグランドパッキンが締付機構により軸方向に締め付けられるものが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載された締付機構は、パッキンボックス内に挿入されたパッキン押えと、パッキン押えのフランジ部を貫通してパッキンボックスに固定されたネジ軸と、ネジ軸に締め込まれるナットと、フランジ部とナットとの間においてネジ軸に装着されたコイルスプリングと、コイルスプリングを覆うように配置された筒体(指針体)と、を備えている。
【0003】
筒体は、有底円筒状に形成されており、円筒状の周壁と、周壁のナット側の端部に形成された円板状の底壁と、を有している。筒体の底壁には、ネジ軸が貫通する貫通孔が形成されている。筒体の底壁は、コイルスプリングの付勢力によってナット側に押圧されている。これにより、筒体は、フランジ部とナットとの間において、常にナット側に押圧された状態で保持されている。
【0004】
以上の構成により、ネジ軸に対してナットを締め込むことで、コイルスプリングの付勢力によりパッキン押えがパッキンボックス側に押圧される。これにより、複数のグランドパッキンは、パッキン押えにより軸方向に締め付けられる。その際、筒体の開口端がフランジ部に当接することで、ナットの過剰な締め込みを規制することができる。また、ナットを締め込んだ状態でグランドパッキンの応力緩和が発生した場合、コイルスプリングの付勢力によりパッキン押えが締付方向に移動することで、グランドパッキンの締付圧が低下するのを抑制することができる。さらに、グランドパッキンの応力緩和によってパッキン押えのフランジ部がパッキンボックス側に移動することで、フランジ部と筒体の開口端との軸方向の相対位置が変化する。その相対位置の変化を視認することによって、ナットの増し締めの要否を容易に確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-344123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された締付機構の筒体を製作する際には、円柱状の部材に対して、周壁および底壁を形成するための大きい孔と、ネジ軸を貫通させるための小さい孔(貫通孔)と、を別々に加工する必要がある。このため、筒体を製作するのに多くの時間を要するという問題があった。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、締付機構としての本体の機能を維持しつつ、締付機構の製作時間を短縮することができる軸封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示の軸封装置は、回転軸を包囲するパッキンボックスと、前記回転軸と前記パッキンボックスとの間の環状空間において軸方向に並べて配置される複数のグランドパッキンと、前記複数のグランドパッキンを軸方向に締め付ける締付機構と、を備える軸封装置であって、前記締付機構は、前記環状空間に軸方向一方側の端部が挿入されるとともに前記回転軸および前記パッキンボックスに対して軸方向に移動可能な円筒部と、前記円筒部の軸方向他方側の端部から径方向外側に延びる環状のフランジ部と、を有するパッキン押えと、前記フランジ部を軸方向に貫通して前記パッキンボックスに固定されるネジ軸と、前記フランジ部よりも前記軸方向他方側において前記ネジ軸に締め込まれるナットと、前記フランジ部と前記ナットとの間において前記ネジ軸の径方向外側に設けられ、前記パッキン押えを前記軸方向一方側に押圧するコイルスプリングと、前記コイルスプリングと前記ナットとの間において前記ネジ軸の径方向外側に設けられ、前記コイルスプリングの付勢力により前記ナット側に押圧される第1座金と、前記フランジ部と前記第1座金との間において、前記ネジ軸の径方向外側に設けられ、かつ、前記コイルスプリングの径方向外側または径方向内側に設けられる無底円筒状の筒体と、前記第1座金に固定され、前記コイルスプリングよりも径方向外側かつ前記筒体よりも径方向外側において前記軸方向一方側に延びる締付管理表示体と、を備える。
【0009】
上記軸封装置によれば、締付機構の筒体は、無底円筒状に形成されている。このため、筒体を製作する際には、従来の有底円筒状の筒体よりも形状が簡素になった分、製作時間を短縮することができる。その結果、締付機構の製作時間を短縮することができる。
【0010】
また、ネジ軸に対してナットを締め込むことで、コイルスプリングの付勢力によりパッキン押えが軸方向一方側に押圧される。これにより、複数のグランドパッキンは、パッキン押えの円筒部により軸方向に締め付けられる。その際、筒体の軸方向両端が、パッキン押えのフランジ部と第1座金にそれぞれ当接することで、ナットの過剰な締め込みを規制することができる。また、ナットを締め込んだ状態でグランドパッキンの応力緩和が発生した場合、コイルスプリングの付勢力によりパッキン押えが軸方向一方側に移動することで、グランドパッキンの締付圧が低下するのを抑制することができる。さらに、グランドパッキンの応力緩和によりパッキン押えが軸方向一方側に移動する際に、締付管理表示体は、第1座金と共にコイルスプリングの付勢力により、ナット側に押圧された状態で保持される。これにより、パッキン押えのフランジ部と締付管理表示体との軸方向の相対位置が変化するので、その相対位置の変化を視認することによって、ナットの増し締めの要否を容易に確認することができる。以上より、無底円筒状の筒体を有する締付機構であっても、締付機構としての本来の機能を維持することができる。
【0011】
(2)前記筒体は、前記コイルスプリングの径方向内側に設けられているのが好ましい。
この場合、筒体をコイルスプリングの径方向外側に設ける場合と比較して、筒体の径方向のサイズを小さくすることができる。これにより、筒体の材料費を低減することができ、ひいては締付機構の製作コストを低減することができる。
【0012】
(3)前記締付機構は、前記コイルスプリングと前記フランジ部との間において前記ネジ軸の径方向外側に設けられ、前記コイルスプリングの外径以上の外径を有する第2座金をさらに備えるのが好ましい。
この場合、コイルスプリングの軸方向一方側の端部が、その周方向全体にわたって第2座金に当接し、第2座金の周方向全体がパッキン押えのフランジ部に当接する。このため、コイルスプリングの付勢力を、フランジ部と第2座金との間の面圧が均一な状態でフランジ部へ伝達することができる。また、コイルスプリングの前記端部における周方向の一部が、パッキン押えのフランジ部よりも径方向外側へはみ出していても、コイルスプリングの付勢力を、第2座金を介してフランジ部へ効率的に伝達することができる。その結果、コイルスプリングによるフランジ部の押圧力が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、締付機構としての本体の機能を維持しつつ、締付機構の製作時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の第1実施形態に係る軸封装置を示す断面図である。
図2】グランドパッキンの応力緩和が発生した状態を示す断面図である。
図3】本開示の第2実施形態に係る軸封装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本開示の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
<軸封装置>
図1は、本開示の第1実施形態に係る軸封装置1を示す断面図である。軸封装置1は、例えばポンプ、バルブ、またはドレッサージョイント等の流体機器に設けられる。流体機器は、軸線C回りに回転するとともに軸線C方向に往復移動する回転軸50を備えている。なお、本実施形態の流体機器では、回転軸50の軸線Cを水平方向に配置しているが、当該軸線Cを鉛直方向に配置してもよい。
【0016】
以下、本明細書では、軸線Cに沿う方向を「軸方向」といい、軸線Cと直交する方向を「径方向」という。また、便宜上、図1の左側を軸方向一方側といい、図1の右側を軸方向他方側という(図2および図3についても同様)。
【0017】
軸封装置1は、パッキンボックス2と、複数(図例では4個)のグランドパッキン3と、締付機構10と、を備えている。パッキンボックス2は、回転軸50を包囲している。パッキンボックス2の軸方向他方側の端面2aには、ネジ穴2bが周方向に間隔をあけて複数(図1では1個のみ図示)形成されている。パッキンボックス2の内周には、径方向に延びる環状の段差面2cと、段差面2cの外周端から端面2aまで延びる円周面2dと、が形成されている。これにより、パッキンボックス2の円周面2dと回転軸50の外周面50aとの間には、環状空間Sが形成されている。
【0018】
複数のグランドパッキン3は、それぞれ環状に形成されており、環状空間Sにおいて軸方向に並べて配置されている。複数のグランドパッキン3は、締付機構10により軸方向に締め付けられる。これにより、各グランドパッキン3の外周面は、パッキンボックス2の円周面2dに密着し、各グランドパッキン3の内周面は、回転軸50の外周面50aに密着する。このように密着することで、複数のグランドパッキン3は、パッキンボックス2の円周面2dと回転軸50の外周面50aとの間をシールする。
【0019】
<締付機構の構成>
締付機構10は、パッキン押え11、ネジ軸12、ナット13、コイルスプリング14、第1座金15、第2座金16、筒体17、および締付管理表示体18を備えている。パッキン押え11は、回転軸50の径方向外側に設けられた円筒部11aと、環状のフランジ部11bと、を有している。
【0020】
パッキン押え11の円筒部11aの内径は、回転軸50の外径よりも少し大きい。また、円筒部11aの外径は、パッキンボックス2の円周面2dの内径よりも少し小さい。これにより、円筒部11aは、パッキンボックス2および回転軸50に対して軸方向に移動可能である。円筒部11aの軸方向一方側の端部は、環状空間Sに挿入されている。
【0021】
パッキン押え11のフランジ部11bは、円筒部11aの軸方向他方側の端部から径方向外側に延びている。フランジ部11bには、パッキンボックス2のネジ穴2bと同数の貫通孔11cが、周方向に間隔をあけて形成されている。貫通孔11cは、フランジ部11bの厚み方向(軸方向)に貫通して形成されている。貫通孔11cの内径は、ネジ軸12の外径よりも少し大きい。
【0022】
ネジ軸12は、フランジ部11bの各貫通孔11cを貫通して、パッキンボックス2の各ネジ穴2bに締め込まれている。これにより、パッキンボックス2の端面2a側には、ネジ穴2bと同数のネジ軸12の軸方向一端部が固定されている。各ネジ軸12の軸方向他端部は、フランジ部11bよりも軸方向他方側に大きく突出している。各ネジ軸12は、フランジ部11bの軸方向への移動をガイドする機能を有している。
【0023】
ナット13は、フランジ部11bよりも軸方向他方側において各ネジ軸12の軸方向他端部に締め込まれている。フランジ部11bとナット13との間には、コイルスプリング14がネジ軸12の径方向外側に設けられている。コイルスプリング14は、圧縮コイルスプリングである。本実施形態では、コイルスプリング14の軸方向一端部における周方向の一部(図1の上端部)は、フランジ部11bよりも径方向外側へはみ出している。
【0024】
コイルスプリング14とナット13との間には、第1座金15がネジ軸12の径方向外側に設けられている。フランジ部11bとコイルスプリング14との間には、第2座金16がネジ軸12の径方向外側に設けられている。第1座金15および第2座金16の各内径は、ネジ軸12の外径よりも少し大きい。これにより、第1座金15および第2座金16は、いずれもネジ軸12に対して軸方向に移動可能に嵌合されている。
【0025】
第1座金15および第2座金16の各外径は、コイルスプリング14の外径以上である。本実施形態の第1座金15および第2座金16の各外径は、コイルスプリング14の外径よりも大きい。これにより、コイルスプリング14の軸方向両端部は、第1座金15および第2座金16にそれぞれ当接している。第1座金15は、コイルスプリング14の付勢力により、軸方向他方側(ナット13側)に押圧され、ナット13の軸方向一方側の端面に常に当接している。第2座金16は、コイルスプリング14の付勢力により、軸方向一方側(フランジ部11b側)に押圧され、フランジ部11bの軸方向他方側の端面に常に当接している。
【0026】
第1座金15と第2座金16との間には、筒体17がネジ軸12の径方向外側に設けられている。筒体17は、無底円筒状に形成されている。筒体17の内径は、ネジ軸12の外径よりも少し大きい。これにより、筒体17は、ネジ軸12に対して軸方向に移動可能に嵌合されている。筒体17の外径は、コイルスプリング14の内径よりも小さい。このため、本実施形態の筒体17は、コイルスプリング14の径方向内側に設けられている。
【0027】
第1座金15には、締付管理表示体18が固定されている。締付管理表示体18は、作業者がナット13の増し締めの要否を確認する際に用いられるものである。本実施形態の締付管理表示体18は、第1座金15の外周端における周方向の複数箇所(図1では1個のみ図示)から、コイルスプリング14の径方向外側において軸方向一方側に折り曲がるように一体に形成されている。締付管理表示体18は、例えば、筒体17よりも軸方向に長く形成されている。図1に示す状態では、締付管理表示体18の軸方向一端部は、第2座金16を径方向外側から覆っている。
【0028】
<締付機構の機能>
次に、上記のように構成された締付機構10の機能について、以下説明する。作業者が各ネジ軸12に対してナット13を締め込むと、第1座金15がナット13と共に軸方向一方側へ移動する。そうすると、コイルスプリング14の付勢力により、第2座金16を介してパッキン押え11が軸方向一方側に押圧される。これにより、複数のグランドパッキン3は、パッキン押え11の円筒部11aの軸方向一端面と、パッキンボックス2の段差面2cとの間で軸方向に締め付けられる。これにより、複数のグランドパッキン3は、パッキンボックス2の円周面2dと回転軸50の外周面50aとの間をシールする。
【0029】
上記のように、各ネジ軸12に対してナット13を締め込んで、複数のグランドパッキン3が適正な締付圧まで締め付けられると、図1に示すように、筒体17の軸方向両端が、第1座金15および第2座金16にそれぞれ当接する。これにより、作業者はネジ軸12に対してナット13を締め込むことができなくなるので、ナット13の過剰な締め込みを規制することができる。
【0030】
図1に示す状態から、グランドパッキン3のクリープによる応力緩和が発生した場合、図2に示すように、コイルスプリング14の付勢力によって、第2座金16を介してパッキン押え11が軸方向一方側に押圧されながら移動する。これにより、グランドパッキン3の応力緩和に起因してグランドパッキン3の締付圧が低下するのを抑制することができる。
【0031】
グランドパッキン3の応力緩和によるパッキン押え11の軸方向一方側への移動長さが許容範囲を超えると、コイルスプリング14の付勢力が低下し、グランドパッキン3の締付圧も低下してしまう。このため、パッキン押え11の前記移動長さが許容範囲を超える前に、作業者はナット13の増し締めを行う必要がある。その増し締めの要否は、以下の方法により確認することができる。
【0032】
図2に示すように、グランドパッキン3の応力緩和によりパッキン押え11が軸方向一方側に移動すると、パッキン押え11のフランジ部11bと共に第2座金16がネジ軸12に対して軸方向一方側へ移動する。これに対して、締付管理表示体18は、第1座金15と共にコイルスプリング14の付勢力により、ナット13側に押圧された状態で保持される。これにより、第2座金16と締付管理表示体18の軸方向一端との軸方向の相対位置が変化するので、その変化量が所定量に達したことを視認することにより、ナット13の増し締めの要否を容易に確認することができる。
【0033】
<作用効果>
以上の構成により、本実施形態における軸封装置1によれば、締付機構10の筒体17は、無底円筒状に形成されている。このため、筒体17を製作する際には、従来の有底円筒状の筒体よりも形状が簡素になった分、製作時間を短縮することができる。その結果、締付機構10の製作時間を短縮することができる。また、締付機構10は、上記のように、グランドパッキン3を軸方向に締め付ける機能、ナット13の過剰な締め込みを規制する機能、グランドパッキン3の応力緩和に起因してグランドパッキン3の締付圧が低下するのを抑制する機能、およびナット13の増し締めの要否を容易に確認できる機能を有する。したがって、無底円筒状の筒体17を有する締付機構10であっても、締付機構10としての本来の機能を維持することができる。
【0034】
また、筒体17は、コイルスプリング14の径方向内側に設けられているので、筒体17をコイルスプリング14の径方向外側に設ける場合(図3参照)と比較して、筒体17の径方向のサイズを小さくすることができる。これにより、筒体17の材料費を低減することができ、ひいては締付機構10の製作コストを低減することができる。
【0035】
また、コイルスプリング14とパッキン押え11のフランジ部11bとの間には、コイルスプリング14の外径よりも大きい外径を有する第2座金16が、ネジ軸12の径方向外側に設けられている。このため、コイルスプリング14の軸方向一端部が、その周方向全体にわたって第2座金16に当接し、第2座金16の内周側の周方向全体がフランジ部11bに当接する。このため、コイルスプリング14の付勢力を、フランジ部11bと第2座金16との間の面圧が均一な状態でフランジ部11bへ伝達することができる。また、図1に示すように、コイルスプリング14の軸方向一端部における周方向の一部が、フランジ部11bよりも径方向外側へはみ出していても、コイルスプリング14の付勢力を、第2座金16を介してフランジ部11bへ効率的に伝達することができる。その結果、コイルスプリング14によるフランジ部11bの押圧力が低下するのを抑制することができる。
【0036】
[第2実施形態]
図3は、本開示の第2実施形態に係る軸封装置1を示す断面図である。本実施形態の軸封装置1は、締付機構10のコイルスプリング14と筒体17との位置関係が、第1実施形態と相違する。
【0037】
本実施形態のコイルスプリング14の内径は、ネジ軸12の外径よりも少し大きい。筒体17の内径は、コイルスプリング14の外径よりも大きい。筒体17の外径は、第1座金15および第2座金16の各外径よりも小さい。これにより、筒体17は、第1座金15と第2座金16との間において、ネジ軸12の径方向外側、かつ、コイルスプリング14の径方向外側に設けられている。
【0038】
締付管理表示体18は、筒体17の径方向外側において軸方向に延びている。本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。以上より、本実施形態の軸封装置1においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0039】
[その他]
上記実施形態では、締付管理表示体18は、第1座金15と一体に形成されているが、第1座金15とは別体で第1座金15に固定されていてもよい。また、締付管理表示体18は、第1座金15の周方向の複数箇所に固定されているが、第1座金15の周方向の少なくとも1箇所に固定されていればよい。
【0040】
締付機構10は、第2座金16を備えていなくてもよい。その場合、コイルスプリング14の軸方向一端部をフランジ部11bに直接当接させればよい。また、フランジ部11bと締付管理表示体18との相対位置の変化を視認することによって、ナット13の増し締めの要否を確認すればよい。
【0041】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1 軸封装置
2 パッキンボックス
3 グランドパッキン
10 締付機構
11 パッキン押え
11a 円筒部
11b フランジ部
12 ネジ軸
13 ナット
14 コイルスプリング
15 第1座金
16 第2座金
17 筒体
18 締付管理表示体
50 回転軸
S 環状空間
図1
図2
図3