(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136945
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230922BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20230922BHJP
H02P 25/16 20060101ALI20230922BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02K11/30
H02P25/16
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042898
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】嶋野 雅之
(72)【発明者】
【氏名】星野 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】砥川 真一
【テーマコード(参考)】
3D333
5H505
5H611
5H770
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CC43
3D333CD07
3D333CD31
3D333CD60
3D333CE05
5H505AA16
5H505BB03
5H505BB05
5H505CC02
5H505DD08
5H505EE49
5H505HA09
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ26
5H505KK05
5H505LL41
5H505PP02
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB06
5H611TT01
5H611UA04
5H770AA21
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770EA01
5H770HA02Y
5H770HA07Z
5H770PA21
5H770PA24
5H770QA01
5H770QA27
(57)【要約】
【課題】配線効率を向上させながら信号端子用の貫通孔群の配置スペースを確保可能なモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置であるECU(1)は、制御基板(20)と、複数の電源端子と複数の第1信号端子及び複数の第2信号端子と、を備えている。制御基板(20)は、制御回路(200)と、駆動回路(210)と、複数の電源端子と電気的に接続される第1貫通孔群(21G)と、複数の第1信号端子と電気的に接続される第2貫通孔群(22G)と、複数の第2信号端子と電気的に接続される第3貫通孔群(23G)と、を有している。第1貫通孔群(21G)は、第2方向における第2貫通孔群(22G)と第3貫通孔群(23G)との間に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動するための制御基板と、
前記制御基板に電力を供給するための複数の電源端子と、
前記制御基板に前記モータの駆動を制御する制御信号を供給するための複数の第1信号端子及び複数の第2信号端子と、
を備え、
前記制御基板は、
前記第1信号端子及び前記第2信号端子から入力される前記制御信号に基づいて、前記モータを制御するための駆動信号を出力する制御回路と、
前記制御回路から出力される前記駆動信号に基づいて、前記モータに前記電源端子を介して電力を供給する駆動回路と、
前記制御基板の第1方向の端部側に配置され、前記複数の電源端子が挿通されることにより、前記複数の電源端子と電気的に接続される第1貫通孔群と、
前記制御基板の第1方向の端部側に配置され、複数の前記第1信号端子が挿通されることにより、前記複数の第1信号端子と電気的に接続される第2貫通孔群と、
前記制御基板の第1方向の端部側に配置され、前記複数の第2信号端子が挿通されることにより、前記複数の第2信号端子と電気的に接続される第3貫通孔群と、
を有し、
前記第1貫通孔群は、前記第1方向と交わる第2方向における前記第2貫通孔群と前記第3貫通孔群との間に配置され、
前記制御回路と前記第3貫通孔群とを接続する第1配線パターンが、前記第1貫通孔群よりも前記制御基板の前記第1方向外側を通るように配置されることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記駆動回路及び前記制御回路は、前記第2方向に沿って並んで配置され、
前記第1貫通孔群は、前記駆動回路の前記第1方向側に配置され、
前記第2貫通孔群は、前記制御回路の前記第1方向側に配置され、
前記第3貫通孔群は、前記駆動回路の前記第1方向側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記制御基板は、
前記制御回路と前記第2貫通孔群とを接続する第2配線パターンは、前記第1配線パターンよりも短いことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記第1配線パターンの周囲には、グランドに接続されたグランドガードが配置されていることを特徴とする請求項3に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
複数のセンサを備え、
前記第2貫通孔群に接続される前記複数の第1信号端子は、前記複数のセンサからのセンサ信号を送信するための信号線に接続される信号端子を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記第3貫通孔群に接続される前記複数の第2信号端子は、CAN(Controller Area Network)通信に用いられる信号線に接続される信号端子を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記第3貫通孔群に接続される前記複数の第2信号端子は、イグニッション信号を送信するための信号線に接続される信号端子を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動を制御するためのモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ制御装置では、モータを駆動するための駆動回路と、駆動回路を制御するための制御回路とを1つの制御基板に配置したものがある。例えば、特許文献1には、制御回路及び駆動回路が実装された制御基板と、電源端子及び信号端子が収容されたコネクタとを備えたモータ制御装置について開示されている。
【0003】
特許文献1のモータ制御装置では、制御基板の長手方向の端部側に、信号端子が接続される信号端子用の貫通孔群と、電源端子が接続される電源端子用の貫通孔群とが形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開公報第2014/162738号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、
図7に示すように、特許文献1のようなモータ制御装置1Aの制御基板20Aにおいて、駆動回路210Aに大電流を流すために、電源端子用の貫通孔群21AGを駆動回路210Aの近くに配置して、電源端子用の貫通孔21Aと駆動回路210Aとを幅の広い配線パターンP1Aで接続することが考えられる。この場合、制御回路200Aと電源端子用の貫通孔21Aとの距離L1が長くなることで、配線効率が低下するという問題がある。
【0006】
一方、
図8に示すように、特許文献1のようなモータ制御装置1Bの制御基板20Bにおいて、電源端子用の貫通孔群21BGを制御回路200Bに近い位置に配置して、電源端子用の貫通孔21Bと駆動回路210Bとを配線パターンP1Bで接続した場合、制御回路200Bと電源端子用の貫通孔21Bとの距離L2が短くなることで、配線効率が向上する。しかしながら、信号端子用の貫通孔群22BGを配置するためのスペースが、
図7の信号端子用の貫通孔群22AGよりも狭くなってしまうといった課題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、配線効率を向上させながら信号端子用の貫通孔群の配置スペースを十分確保可能なモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るモータ制御装置は、モータを駆動するための制御基板と、前記制御基板に電力を供給するための複数の電源端子と、前記制御基板に前記モータの駆動を制御する制御信号を供給するための複数の第1信号端子及び複数の第2信号端子と、を備えている。
【0009】
前記制御基板は、前記第1信号端子及び前記第2信号端子から入力される前記制御信号に基づいて、前記モータを制御するための駆動信号を出力する制御回路と、前記制御回路から出力される前記駆動信号に基づいて、前記モータに前記電源端子を介して電力を供給する駆動回路と、前記制御基板の第1方向の端部側に配置され、前記複数の電源端子が挿通されることにより、前記複数の電源端子と電気的に接続される第1貫通孔群と、前記制御基板の第1方向の端部側に配置され、前記複数の第1信号端子が挿通されることにより、前記複数の第1信号端子と電気的に接続される第2貫通孔群と、前記制御基板の第1方向の端部側に配置され、前記複数の第2信号端子が挿通されることにより、前記複数の第2信号端子と電気的に接続される第3貫通孔群と、を有している。前記第1貫通孔群は、前記第1方向と交わる第2方向における前記第2貫通孔群と前記第3貫通孔群との間に配置される。前記制御回路と前記第3貫通孔群とを接続する第1配線パターンが、前記第1貫通孔群よりも前記制御基板の前記第1方向外側を通るように配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、配線効率を向上させながら信号端子用の貫通孔群の配置スペースを十分確保可能なモータ制御装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係るECUを備えた電動パワーステアリングシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1のECUの部品構成を示す分解斜視図である。
【
図5】
図3の制御基板の配線パターンを拡大した模式図である。
【
図6】
図3の制御基板の断面構造の一例を示す模式図である。
【
図7】従来のモータ制御装置の制御基板の平面図の一例である。
【
図8】従来のモータ制御装置の制御基板の平面図の別例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置ついて、
図1~
図6を参照して説明する。本実施形態では、本発明のモータ制御装置を、電動パワーステアリングシステム100のECU(Electronic Control Unit)1に適用した場合について説明する。
【0013】
[電動パワーステアリングシステムの構成]
図1は、本実施形態に係るECU1を備えた電動パワーステアリングシステム100の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、電動パワーステアリングシステム100は、ECU1と、電源60と、トルクセンサ70と、モータ80と、角度センサ90とを備えている。
【0014】
電動パワーステアリングシステム100は、ECU1によりモータ80の駆動を制御することで、モータ80を回転させて得られた力を、図示しない減速機構を介して、ステアリングホイールに固定されたステアリングシャフトに加える。これにより、運転者の操舵をアシストするシステムである。なお、電動パワーステアリングシステム100により、図示しない車両の車輪にかかる外力に起因するステアリングホイールの振動を抑制することもできる。
【0015】
ECU1は、電源制御部201と、イグニッション(IGN)電圧モニタ回路202と、CAN(Controller Area Network)入出力回路203と、トルクセンサ入力回路204と、制御部205と、インバータ駆動部206と、電流センサ入力回路207と、角度センサ入出力回路208と、駆動回路210と、電流センサ211とを有している。
【0016】
ECU1には、電源60、トルクセンサ70、CANラインCL、モータ80、及び角度センサ90等が電気的に接続されている。モータ80は、例えば、3相(U相、V相、W相)の内部永久磁石(IPM:Internal Permanent Magnet)同期モータである。
【0017】
内部永久磁石同期モータは、3相のステータコイルと、永久磁石が埋め込まれた回転子とを有して構成される。モータ80の回転軸は、図示しないが、減速機構を介してステアリングシャフトに連結されている。モータ80は、ECU1と一体化されて構成される。
【0018】
電源制御部201には、電源端子51を介して、電源60から電力が供給される。また、電源制御部201には、第2信号端子53を介して、イグニッション信号IGNが入力される。電源制御部201は、イグニッション信号IGNを受信することに基づいて起動し、電源60から供給される直流電圧Vを所定の電圧に変換して、制御部205に駆動電源として供給する。
【0019】
IGN電圧モニタ回路202は、第2信号端子53を介して入力されたイグニッション電圧(IGN電圧)に比例したイグニッション信号IGNを、制御部205が読み込める信号に変換し、且つ、フィルタリングによりノイズを除去する。IGN電圧モニタ回路202は、変換した信号を制御部205に出力する。
【0020】
CAN入出力回路203は、第2信号端子53を介して、CANラインCLに接続されている。CANラインCLは、CAN通信に用いられる信号線である。CAN入出力回路203は、CANラインCLを介して送信されたCAN信号を、制御部205が読み込み可能な電圧に変換すると共に、制御部205が出力する信号をCAN信号に変換する。
【0021】
CAN入出力回路203には、CAN信号として、例えば、図示しない車速センサにより検出された車速に応じた車速信号vが入力される。CAN入出力回路203は、車速信号vを含むCAN信号を制御部205に出力する。
【0022】
トルクセンサ入力回路204には、ステアリングシャフトに設けられたトルクセンサ70により検出された操舵トルクに応じたトルク信号Trが入力される。操舵トルクは、運転者のステアリングホイールの操作に基づいて、ステアリングシャフトに生じるトルクである。トルクセンサ入力回路204は、トルク信号Trをフィルタリングし、ノイズを除去した後、制御部205へ出力する。
【0023】
制御部205は、例えばCPU(Central Processing Unit)からなる。制御部205は、トルクセンサ70及び角度センサ90等の検出結果に基づいて、インバータ駆動部206を制御する。インバータ駆動部206は、PWM(Pulse Width Modulation)信号により、駆動回路210の駆動を制御する。
【0024】
駆動回路210は、周知のインバータ回路であって、直列に接続された一対の半導体スイッチング素子が、例えば3つ並列に接続された構成となっている。各半導体スイッチング素子は、例えばMOSFET(酸化金属半導体電界効果トランジスタ)である。各一対の半導体スイッチング素子は、出力端子42を介してモータ80のU相、V相、W相にそれぞれ接続されている。
【0025】
駆動回路210は、電源端子51を介して電源60に接続されていると共に、グランドに接地されている。電源60は、後述する配線パターンP1及び配線パターンP2を介して、駆動回路210に直流電源を供給する。電源60は、例えば、二次電池(バッテリー)である。
【0026】
駆動回路210において、低電位側に設けられた半導体スイッチング素子である下流の半導体スイッチング素子と、グランドとの間には、モータ80のU相、V相、W相に対応するように電流検出器(図示省略)がそれぞれ設けられている。なお、
図1では、説明の便宜上、3つの電流検出器を総称して、電流センサ211と記載している。
【0027】
電流センサ211は、モータ80のU相に流れる電流値Iu、モータ80のV相に流れる電流値Iv、モータ80のW相に流れる電流値Iwをそれぞれ検出する。電流センサ211は、検出した各電流値Iu,Iv,Iwに応じた各電流信号を電流センサ入力回路207へ出力する。
【0028】
電流センサ入力回路207は、電流センサ211からの電流信号を増幅すると共に、フィルタリングしてノイズを除去した後、各電流信号を制御部205へ出力する。
【0029】
角度センサ90は、モータ80に設けられ、モータ80の回転軸の回転角を検出する。角度センサ90は、第1信号端子52を介して、検出した回転角に応じた角度信号θを角度センサ入出力回路208へ出力する。
【0030】
角度センサ入出力回路208は、角度センサ90からの角度信号θを増幅すると共に、フィルタリングしてノイズを除去した後、制御部205へ出力する。また、角度センサ入出力回路208は、角度センサ90に駆動電圧を供給する。
【0031】
制御部205は、トルク信号Tr、車速信号v、及び角度信号θ等に基づいて、インバータ駆動部206を介して、駆動回路210を制御する。駆動回路210は、インバータ駆動部206からの駆動信号に基づいて、モータ80の駆動を制御する。
【0032】
[ECUの部品構成]
図2は、本実施形態に係るECU1の構成を示す分解斜視図である。
図2に示すように、ECU1は、カバー10と、制御基板20と、保持部材30と、出力用コネクタ40と、コネクタ50とを備えている。なお、説明の便宜上、
図2の矢印に示されるように、ECU1の上下方向、前後方向、及び左右方向を定義する。なお、上下方向、前後方向、及び左右方向は、便宜上の呼称であって、ECU1の使用される様態を定義するものではない。左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、及び上下方向をZ軸方向とそれぞれ言い換えが可能である。
【0033】
カバー10は、制御基板20の上方を覆うように配置され、制御基板20を保持する部材である。制御基板20は、モータ80を駆動するための装置である。制御基板20には、複数の第1貫通孔21と、複数の第2貫通孔22と、複数の第3貫通孔23と、複数の第4貫通孔24と、複数の第5貫通孔25とが形成されている。
【0034】
複数の第1貫通孔21、複数の第2貫通孔22、及び複数の第3貫通孔23は、制御基板20の右端部側に配置されている。複数の第4貫通孔24の各々は、制御基板20の左前方側及び左後方側の角部と、制御基板20の中央右側に配置されている。複数の第5貫通孔25は、制御基板20の前側に配置されている。
【0035】
制御基板20は、複数の第4貫通孔24にそれぞれネジ26が挿通されることにより、保持部材30に取り付けられる。制御基板20の第1貫通孔21に、コネクタ50の電源端子51が挿通されることで、制御基板20と電源端子51とが電気的に接続される。
【0036】
また、制御基板20の第2貫通孔22に、コネクタ50の第1信号端子52が挿通されることで、制御基板20と第1信号端子52とが電気的に接続される。また、制御基板20の第3貫通孔23に、コネクタ50の第2信号端子53が挿通されることで、制御基板20と第2信号端子53とが電気的に接続される。また、制御基板20の複数の第5貫通孔25に、出力用コネクタ40の複数の出力端子42が挿通されることで、制御基板20と出力端子42とが電気的に接続される。
【0037】
保持部材30は、制御基板20の下側に配置され、制御基板20を保持する筐体である。保持部材30は、ヒートシンク31を有している。ヒートシンク31は、制御基板20の駆動回路210に対応した位置に配置され、制御基板20等から発生する熱を吸収するための部材である。
【0038】
保持部材30の下面右側には、コネクタ50がネジ33によって取り付けられる。保持部材30の右端部側には、図示しないが、コネクタ50の電源端子51、第1信号端子52、及び第2信号端子53がそれぞれ挿通可能な複数の貫通孔が形成されている。
【0039】
また、保持部材30の前面左側には、出力用コネクタ40が配置されている。出力用コネクタ40は、制御基板20の駆動回路210における下流の半導体スイッチング素子と、モータ80とを接続するための部材である。出力用コネクタ40は、制御基板20から出力された電力をモータ80に供給するための、複数の出力端子42を有する。複数の出力端子42は、モータ80の各相に対応する。
【0040】
出力用コネクタ40には、複数、この場合2つのネジ43を挿通するために、2つの貫通孔41が設けられている。出力用コネクタ40は、2つの貫通孔41にそれぞれネジ43を挿通することで、保持部材30に取り付けられる。
【0041】
保持部材30の下側には、コネクタ50が配置されている。コネクタ50は、第1コネクタ部51Aと、第2コネクタ部52Aと、第3コネクタ部53Aとを有している。第1コネクタ部51Aには、複数の電源端子51が収容されている。第2コネクタ部52Aには、複数の第1信号端子52が収容されている。第3コネクタ部53Aには、複数の第2信号端子53が収容されている。
【0042】
[制御基板の構成]
図3は、ECU1の制御基板20の平面図である。
図3に示すように、制御基板20は、制御回路200と、駆動回路210、配線パターンS1(第1配線パターン)と、配線パターンS2(第2配線パターン)と、配線パターンP1と、配線パターンP2とを備えている。
図3において、左右方向を制御基板20の長辺に沿った方向である長手方向と呼称する。また、前後方向を制御基板20の短辺に沿った方向である短手方向と呼称する。なお、制御基板20の長辺、短辺は、
図3の関係に限らない。
図3において左右方向を短辺、前後方向を長辺としてもよい。また、制御基板20の四辺が同等の長さの正方形状であってもよい。
【0043】
制御基板20は、矩形状の外形形状を有している。駆動回路210及び制御回路200は、この順で、制御基板20の短手方向(第2方向)に沿って並んで配置されている。即ち、制御基板20において、制御回路200は、駆動回路210の後側に配置されている。駆動回路210は、制御回路200よりも、出力用コネクタ40の出力端子42と接続する第5貫通孔25に近い位置に配置される。駆動回路210は、後述するように、モータ80に供給するための大電力を扱うため、より出力端子42に近い側に配置することにより、電力の損失を抑制することができる。
【0044】
制御回路200は、第1信号端子52及び第2信号端子53から入力される制御信号に基づいて、駆動回路210の複数の半導体スイッチング素子を制御するための駆動信号を出力する。駆動回路210は、制御回路200から出力される駆動信号に基づいて、モータ80のU相、V相、W相に電力を供給する。
【0045】
制御基板20の長手方向(第1方向)の一方の端部側(
図3の右端部側)の領域には、第1貫通孔群21Gと、第2貫通孔群22Gと、第3貫通孔群23Gとが形成されている。第1貫通孔群21Gは、制御基板20の短手方向において、第2貫通孔群22Gと第3貫通孔群23Gとの間に配置されている。
【0046】
具体的には、第1貫通孔群21Gは、駆動回路210の右側近傍の領域において、制御回路200との距離が、第3貫通孔群23Gと制御回路200との距離よりも近い位置に配置され、配線パターンP1を介して制御回路200に接続されている。これにより、配線パターンP1の長さを短くして、配線効率の向上を図ることができると共に、電源端子51から配線パターンP1を介して駆動回路210へ大電流を流すことができる。ここで、配線効率が良い状態とは、各配線パターンの長さが無駄に長くなったり、複数の配線パターンが交差したりする場合よりも、電流の経路の抵抗が小さく配線されている状態をいう。
【0047】
第2貫通孔群22Gは、制御回路200の右側近傍に配置され、配線パターンS2を介して制御回路200と接続されている。第3貫通孔群23Gは、駆動回路210の右側近傍に配置され、配線パターンS1を介して制御回路200と接続されている。
【0048】
第1貫通孔群21Gは、4つの第1貫通孔21を有している。第1貫通孔21には、4本の電源端子51が挿通される。これにより、第1貫通孔群21Gは、4本の電源端子51と電気的に接続される。なお、第1貫通孔21及び電源端子51の数は、4つに限らず、適宜変更可能である。
【0049】
第2貫通孔群22Gは、15個の第2貫通孔22を有している。第2貫通孔22には、15本の第1信号端子52が挿通される。これにより、第2貫通孔群22Gは、15本の第1信号端子52と電気的に接続される。なお、第2貫通孔22及び第1信号端子52の数は、15個に限らず、適宜変更可能である。
【0050】
第3貫通孔群23Gは、3つの第3貫通孔23を有している。第3貫通孔23には、3本の第2信号端子53が挿通される。これにより、第3貫通孔群23Gは、3本の第2信号端子53と電気的に接続される。なお、第3貫通孔23及び第2信号端子53の数は、3つに限らず、適宜変更可能である。
【0051】
[コネクタの構成]
図4は、ECU1のコネクタ50の平面図である。
図4に示すように、コネクタ50は、第1コネクタ部51Aと、第2コネクタ部52Aと、第3コネクタ部53Aとを有し、これらのコネクタ部が一体化されて構成される。第1コネクタ部51Aは、
図4の前後方向において、第2コネクタ部52Aと第3コネクタ部53Aとの間に配置されている。
【0052】
第1コネクタ部51Aには、複数の電源端子51が収容されている。第2コネクタ部52Aには、複数の第1信号端子52が収容されている。第3コネクタ部53Aには、複数の第2信号端子53が収容されている。
【0053】
複数の電源端子51を含む電源端子群51Gは、制御基板20の第1貫通孔群21Gに対応して配置される。即ち、複数の電源端子51は、それぞれ第1貫通孔21に挿通される。制御基板20には、電源端子51を介して、電源60からの電力が供給される。
【0054】
複数の第1信号端子52を含む第1信号端子群52Gは、制御基板20の第2貫通孔群22Gに対応して配置される。即ち、複数の第1信号端子52は、それぞれ第2貫通孔22に挿通される。制御基板20の制御回路200には、第1信号端子52を介して、トルクセンサ70からのトルク信号、及び角度センサ90からの角度信号等が入力される。
【0055】
制御回路200は、トルクセンサ70からのトルク信号、及び角度センサ90からの角度信号等を受信することに基づいて、モータ80の駆動を制御するための駆動信号を生成する。このとき、制御回路200に入力される信号に、ノイズが重畳することは、制御回路200による制御の精度を低下させるおそれがある。
【0056】
そこで、本実施形態では、制御回路200の右側近傍に、第2貫通孔群22Gを配置することによって、制御回路200と第2貫通孔群22Gとの間で、ノイズが重畳することを抑制できるようにしている。
【0057】
複数の第2信号端子53を含む第2信号端子群53Gは、制御基板20の第3貫通孔群23Gに対応して配置される。即ち、複数の第2信号端子53は、それぞれ第3貫通孔23に挿通される。制御基板20の制御回路200には、第2信号端子53を介して、CAN通信に用いられるCAN信号、及びイグニッション信号等が入力される。
【0058】
ここで、CAN信号の送信には差動信号が用いられるので、センサ信号と比較して、ノイズに対する耐性が強い。また、イグニッション信号は、センサ信号に比較して、許容されるノイズ強度が大きい。このため、第2貫通孔群22Gに比べて制御回路200から遠い位置に、第3貫通孔群23Gを配置することができる。
【0059】
第2コネクタ部52Aには、ネジ33を取り付けるためのネジ孔521が設けられている。また、第3コネクタ部53Aには、ネジ33を取り付けるためのネジ孔531が設けられている。ネジ孔521及びネジ孔531にネジ33を取り付けることにより、保持部材30にコネクタ50が固定される。
【0060】
[配線パターンの構成]
図5は、制御基板20の配線パターンを拡大した模式図である。
図5に示すように、制御基板20には、第1貫通孔21aに接続された配線パターンP1と、第1貫通孔21bに接続された配線パターンP2と、第3貫通孔23に接続された配線パターンS1とが形成されている。
【0061】
配線パターンP1及び配線パターンP2は、電源端子51を介して駆動回路210に電源60からの電力を供給するためのものであり、配線パターンS1よりも幅が広く形成されている。これにより、電源60から、配線パターンP1及び配線パターンP2を介して、駆動回路210へ大電流を流すことが可能である。
【0062】
配線パターンS1は、第2信号端子53を介して信号を送信するためのものであり、第3貫通孔群23Gと制御回路200とを接続する。具体的には、配線パターンS1は、第1貫通孔群21Gよりも、制御基板20の長手方向の外側(
図5の右端部側)を通って、制御回路200に接続される。
【0063】
第3貫通孔23a及び第3貫通孔23bには、CAN信号を差動信号により送信するための第2信号端子53が挿通される。また、第3貫通孔23cには、イグニッション信号IGNを送信するための第2信号端子53が挿通される。
【0064】
配線パターンS1の長さは、制御回路200と第2貫通孔群22Gとを接続する配線パターンS2の長さ(
図3参照)よりも長く形成されている。このため、配線パターンS1により送信される信号にノイズが重畳したり、他の配線パターンで送信している信号にノイズを重畳させたりする懸念がある。
【0065】
そこで、本実施形態では、配線パターンS1の周囲に、グランドに接続されたグランドガード27が配置されている。これにより、配線パターンS1にて発生したノイズが他の配線パターンにより送信される信号に影響を与えたり、配線パターンS1の外部にて発生したノイズが配線パターンS1により送信される信号に影響を与えたりすることを抑制することが可能である。
【0066】
ここで、
図5に示す配線パターンP1は、以下に示すように、積層された複数の配線層を経由して駆動回路210と接続されてもよい。
図6は、制御基板20の断面構造の一例を示す模式図である。
図6に示すように、制御基板20は、複数の絶縁層20A~20Cを介して、複数の配線層L1~L4が積層された多層基板である。配線パターンS1は、第1配線層L1と、第2配線層L2と、第3配線層L3と、第4配線層L4のうち1つ以上の配線層を用いて形成される。
【0067】
第1配線層L1は、第1絶縁層20Aの上面に配置されている。第2配線層L2は、第2絶縁層20Bの上面に配置されている。第3配線層L3は、第3絶縁層20Cの上面に配置されている。第3絶縁層20Cの下面には、第4配線層L4が配置されている。
【0068】
第1絶縁層20A、第2絶縁層20B、及び第3絶縁層20Cは、ガラスエポキシ、ポリイミド等を含む基材からなる。第1配線層L1の上面には、レジスト20Dが配置されている。また、第4配線層L4の下面には、レジスト20Eが配置されている。そして、制御基板20には、第1貫通孔23が形成されている。なお、上述した多層基板の構造の説明における上下方向は、制御基板20の積層方向を上下方向とした場合の関係性を示すものであって、必ずしも
図1等に示した上下方向とは一致しない。
【0069】
このような多層基板からなる制御基板20に形成される種々の配線パターンは、複数の配線層L1~L4のうち1つの配線層で形成されてもよいし、2つ以上の配線層を用いて形成されていてもよい。例えば、電源端子51が接続される第1貫通孔21aと駆動回路210とを接続する配線パターンP1は、複数の配線層L1~L4のうちの異なる2つの配線層を経由してもよい。
【0070】
なお、第1配線層L1、第2配線層L2、第3配線層L3、及び第4配線層L4の形状、サイズ、配置構造、及び配置個数は、配線パターンP1の配線の仕方に応じて、適宜変更可能である。
【0071】
[実施形態の効果]
以上説明した本実施形態におけるECU1では、制御基板20の長手方向の一端部側(
図3の右端部側)に、第1貫通孔群21G、第2貫通孔群22G、及び第3貫通孔群23Gを設け、第1貫通孔群21Gを、制御基板20の短手方向における第2貫通孔群22Gと第3貫通孔群23Gとの間に配置した。これにより、
図3に示すように、制御回路200と電源端子51が接続される第1貫通孔群21Gとの距離を近くすることで、配線効率を向上させることができる。
【0072】
また、第1信号端子52に接続される第2貫通孔群22Gと、第2信号端子53に接続される第3貫通孔群23Gとを、制御基板20の短手方向において第1貫通孔群21Gを挟むように2箇所に分けて配置した。これにより、制御基板20の面積を拡大させることなく、第1信号端子52に接続される第2貫通孔群22G、及び第2信号端子53に接続される第3貫通孔群23Gの配置スペースを十分確保することができる。
【0073】
更に、配線パターンS1が、第1貫通孔群21Gよりも制御基板20の長手方向外側を通るように配置されているので、配線パターンS1と、配線パターンP1及び配線パターンP2とが交差しないようにでき、配線効率の向上を図ることができる。
【0074】
また、制御回路200と第2貫通孔群22Gとを接続する配線パターンS2の長さが、配線パターンS1の長さよりも短くなっている。これにより、第1信号端子52から第2貫通孔群22Gを介して制御回路200へ送信されるセンサ信号に、ノイズが重畳することを抑制できる。従って、制御回路200による制御の精度が低下することを抑制できる。
【0075】
〔その他の実施形態〕
上記した実施形態では、本発明のモータ制御装置を、電動パワーステアリングシステム100のECU1に適用した場合について説明したが、これに限らず、ステアリングホイールと車輪との間の動力伝達が分離されたステアバイワイヤシステムや自動運転システムにおけるモータ制御装置として、適用してもよい。
【0076】
また、上記した実施形態では、
図3に示すように、長手方向である第1方向と、短手方向である第2方向とが垂直に交差するものとしたが、これに限らず、第1方向と第2方向とは互いに異なる方向であればよい。
【0077】
また、上記した実施形態では、モータ80は、ECU1と一体化されて構成されるものとしたが、これに限らず、モータ80はECU1と別体として設けられていてもよい。
【0078】
また、上記した実施形態では、モータ80として、内部永久磁石同期モータを用いるものとしたが、これに限らず、例えばシンクロナスリラクタンスモータを用いてもよい。
【0079】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0080】
1 ECU
20 制御基板
21 第1貫通孔
21G 第1貫通孔群
22 第2貫通孔
22G 第2貫通孔群
23 第3貫通孔
23G 第3貫通孔群
50 コネクタ
51 電源端子
52 第1信号端子
53 第2信号端子
80 モータ
200 制御回路
210 駆動回路
S1 配線パターン
S2 配線パターン