(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136960
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】羽根車の製造方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
F04D29/28 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042915
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】藤原 義浩
(72)【発明者】
【氏名】石田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】友田 伸孝
(72)【発明者】
【氏名】向田 民人
(72)【発明者】
【氏名】池田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】平野 悟
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB46
3H130AC30
3H130BA95C
3H130CB01
3H130CB05
3H130CB09
3H130EA02C
3H130EA07C
3H130EA08C
3H130EC13C
3H130ED01C
(57)【要約】
【課題】 加工精度を良好に維持しつつ製造効率に優れる羽根車の製造方法を提供する。
【解決手段】 主板10と側板30との間に羽根20を挟持して形成される羽根車1の製造方法であって、主板10は、羽根20と共に鋳造加工により一体成形されて本体2を構成し、側板30は、羽根20との接合位置に羽根20に沿って間隔をあけて複数の貫通孔32が形成され、本体2は、析出硬化系ステンレス鋼からなり、側板30と羽根20との接合を、貫通孔32を利用したプラグ溶接により行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主板と側板との間に羽根を挟持して形成される羽根車の製造方法であって、
前記主板または側板の一方は、前記羽根と共に鋳造加工により一体成形されて本体を構成し、
前記主板または側板の他方は、前記羽根との接合位置に前記羽根に沿って間隔をあけて複数の貫通孔が形成され、
前記本体は、析出硬化系ステンレス鋼からなり、
前記主板または側板の他方と前記羽根との接合を、前記貫通孔を利用したプラグ溶接により行う羽根車の製造方法。
【請求項2】
前記主板または側板の他方は、ステンレス鋼からなり、鍛造成形されている請求項1に記載の羽根車の製造方法。
【請求項3】
前記主板と側板との間隔は、10~100mmである請求項1または2に記載の羽根車の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根車の製造方法に関し、例えば、蒸気圧縮機に使用される羽根車の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の羽根車として、主板と側板との間に羽根を挟持した構成が知られている。例えば、特許文献1には、側板に対して複数の翼をそれぞれ取り付ける一方、主板に対しては翼の取付位置にスリットを形成しておき、翼の端面とスリットとを位置合わせして、主板の外側から翼を溶接することにより一体化する羽根車の制作方法が、従来技術として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、上記の従来技術の問題点として、溶接時に主板および側板に発生するひずみ等が挙げられており、この問題を解決するために、主板および側板の所定箇所に予め余肉をもたせておき、溶接後に余肉を削り落とすことが提案されている。ところが、このような製造方法によれば、作業性が悪いために羽根車を効率良く製造することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、加工精度を良好に維持しつつ製造効率に優れる羽根車の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、主板と側板との間に羽根を挟持して形成される羽根車の製造方法であって、前記主板または側板の一方は、前記羽根と共に鋳造加工により一体成形されて本体を構成し、前記主板または側板の他方は、前記羽根との接合位置に前記羽根に沿って間隔をあけて複数の貫通孔が形成され、前記本体は、析出硬化系ステンレス鋼からなり、前記主板または側板の他方と前記羽根との接合を、前記貫通孔を利用したプラグ溶接により行う羽根車の製造方法により達成される。
【0007】
この羽根車の製造方法において、前記主板または側板の他方は、ステンレス鋼からなり、鍛造成形されていることが好ましい。
【0008】
前記主板と側板との間隔は、10~100mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工精度を良好に維持しつつ製造効率に優れる羽根車の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る羽根車の製造方法に使用する主板および羽根の平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る羽根車の製造方法に使用する側板の平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る羽根車の製造方法により得られる羽根車の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。本実施形態の製造方法により製造される羽根車は、主板と側板との間に羽根が挟持されたクローズドタイプの構成であり、例えば、蒸発濃縮装置等に使用される小型の蒸気圧縮機に好適に使用される。
【0012】
図1は、主板および羽根の平面図である。
図1に示すように、主板10は円板状に形成されており、径方向に延びる複数の羽根20が表面側に配置されている。主板10は、羽根20と共に鋳造加工により一体成形されており、主板10および羽根20が本体2を構成する。
【0013】
本体2は、析出硬化系ステンレス鋼からなる。析出硬化系ステンレス鋼は、アルミニウムや銅などの元素を添加して析出硬化を施した高強度のステンレス鋼であり、鋳造時の湯流れが良くなるように、シリコンを多く(例えば、約3.4~4.0%)含むことが好ましい。このような析出硬化系ステンレス鋼としては、シリコロイ(登録商標)を好ましく例示することができる。
【0014】
図2は、側板の平面図である。
図2に示すように、側板30は、ステンレス鋼からなり、中央に吸込口31を有する環状の部材であり、
図1に示す本体2の表面側に配置されて、主板10との間で複数の羽根20を挟持する。側板30には、各羽根20との接合位置に、羽根20の長手方向に沿って間隔をあけて複数の貫通孔32が形成されている。
【0015】
図3は、
図1および
図2にそれぞれ示す本体2および側板30を溶接して得られる羽根車の要部断面図であり、
図2のA-A断面に対応している。
図3に示すように、本実施形態の羽根車1の製造方法は、側板30と羽根20との接合を、貫通孔32を利用したプラグ溶接により行う。すなわち、羽根20の端面と貫通孔32とを位置合わせした状態で、貫通孔32を溶接金属34で埋めることにより、羽根20と側板30とを溶接する。1つの羽根20に対する貫通孔32の個数は、本実施形態では3個としているが、複数であれば特に制限はなく、必要な溶接個所に適宜の数の貫通孔32を形成すればよい。また、本実施形態においては、貫通孔32の開口形状を、羽根20に沿った細長状としているが、円形状など他の形状であってもよい。
【0016】
本実施形態の羽根車1の製造方法は、本体2を構成する主板10および羽根20が鋳造加工により一体成形されているので、従来のように、主板10に対して羽根20を溶接等により個別に取り付ける作業が不要であり、本体2を容易に製造することができる。また、本体2が、析出硬化系ステンレス鋼からなるため、羽根20と側板30との接着をプラグ溶接により確実に行うことができる。このため、上記特許文献1に開示されたスリット溶接に比べて溶接量を少なくすることができるので、溶接ひずみを抑制して羽根車1の寸法精度を良好に維持することができる。特に、蒸気圧縮機に使用される羽根車の場合は、それほど高い溶接強度は要求されないことから、上記のプラグ溶接によっても、本体2と側板30との接合状態を長期間良好に維持することができる。
【0017】
本実施形態の側板30は、ステンレス鋼を鍛造成形することで本体2との溶接性を高めているが、溶接可能な他の低炭素鋼などの金属材料により成形してもよく、更には鋳造等により成形してもよい。
【0018】
本発明の羽根車の製造方法は、主板10と側板30との間隔Sが狭く内側からの溶接作業が困難な場合に、良好な寸法精度を維持しながら製造効率を容易に高めることができるため、特に好適である。具体的には、主板10と側板30との間隔Sは、10~100mmが好ましく、15~40mmがより好ましい。
【0019】
以上、本発明の一実施形態委ついて詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態の製造方法においては、主板10と羽根20とを鋳造加工により一体成形した本体2を使用しているが、側板と羽根とを鋳造加工により一体成形した本体を使用することも可能であり、この本体に主板をプラグ溶接してもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 羽根車
2 本体
10 主板
20 羽根
30 側板
32 貫通孔