(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136967
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】光ファイバケーブルの製造方法及び光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
G02B6/44 391
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042924
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】302040135
【氏名又は名称】日鉄溶接工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大宮 豊
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201BB22
2H201BB66
2H201DD02
2H201KK07
2H201KK17
2H201MM05
2H201MM38
(57)【要約】
【課題】閉鎖管に、光ファイバに比べて剛性の低い抗張力繊維を挿通した光ファイバケーブルの製造方法、及びこの製造方法で製造されることで長手方向の耐張力が高い光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】コイル状に巻き取った閉鎖管を振動テーブル上に固定載置し、光ファイバと抗張力繊維とを束にしてあらかじめ互いの先端で結束し、前記結束した先端を前記閉鎖管の一端に挿入した状態で前記振動テーブルの振動中心軸を管コイル軸に一致させて前記振動テーブルをスパイラル振動させ、前記閉鎖管内に前記光ファイバ及び前記抗張力繊維を挿通することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状に巻き取った閉鎖管を振動テーブル上に固定載置し、
光ファイバと抗張力繊維とを束にしてあらかじめ互いの先端で結束し、
前記結束した先端を前記閉鎖管の一端に挿入した状態で前記振動テーブルの振動中心軸を管コイル軸に一致させて前記振動テーブルをスパイラル振動させ、前記閉鎖管内に前記光ファイバ及び前記抗張力繊維を挿通することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記光ファイバ及び前記抗張力繊維は、互いの先端に巻回された結束帯で結束されていることを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項3】
可撓性及び弾性を有し、単位長さ当たり重量が前記光ファイバの単位長さ当たり重量より大きく、かつ前記光ファイバ及び前記抗張力繊維の束の径以下の径のリード線を前記結束帯に取り付けて前記閉鎖管内に挿通することを特徴とする、請求項2に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項4】
閉鎖管内に光ファイバと抗張力繊維とが挿通されていることを特徴とする光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルに耐張力を持たせるための技術として、特許文献1のように、光ファイバが挿通される金属管などの可撓管の外周面に線状又は帯状の可撓性抗張力材が管長手方向に沿って設ける技術が提示されている。
【0003】
また、細径かつ長尺の管に光ファイバを短時間で挿通する方法として、特許文献2記載の技術が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-174293号公報
【特許文献2】特開平9-281364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバケーブルにおいて、光ファイバが挿通される金属管は、径方向の強度は高いものの長手方向の耐張力は弱いため、金属管の外周の長手方向に沿って耐張力を付与する材質を適用することがある。しかし、金属管の外周にこのような材質を適用すると必然的にケーブルの外径が大きくなる。一方で、耐張力を付与するための繊維材は、ガラス製の光ファイバに比べて剛性が低いため、長尺の金属管に挿通するのが非常に困難である。
【0006】
本願の実施態様は、長尺かつ内部空間と外界との交通が両端以外では不可能な金属管(以下、「閉鎖管」と称する。)に、光ファイバに比べて剛性の低い抗張力繊維を挿通した光ファイバケーブルの製造方法、及びこの製造方法で製造されることで長手方向の耐張力が高い光ファイバケーブルの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の実施態様の光ファイバケーブルの製造方法は、コイル状に巻き取った閉鎖管を振動テーブル上に固定載置し、光ファイバと抗張力繊維とを束にしてあらかじめ互いの先端で結束し、前記結束した先端を前記閉鎖管の一端に挿入した状態で前記振動テーブルの振動中心軸を管コイル軸に一致させて前記振動テーブルをスパイラル振動させ、前記閉鎖管内に前記光ファイバ及び前記抗張力繊維を挿通することを特徴とする。
【0008】
ここで、前記光ファイバ及び前記抗張力繊維は、互いの先端に巻回された結束帯で結束されていることが望ましい。さらには、可撓性及び弾性を有し、単位長さ当たり重量が前記光ファイバの単位長さ当たり重量より大きく、かつ前記光ファイバ及び前記抗張力繊維の束の径以下の径のリード線を前記結束帯に取り付けて前記閉鎖管内に挿通することが望ましい。
【0009】
上記の製造方法により、閉鎖管内に光ファイバと抗張力繊維とが挿通されていることを特徴とする光ファイバケーブルが製造される。
【発明の効果】
【0010】
本願の実施態様は上記のように構成されているので、閉鎖管に、光ファイバに比べて剛性の低い抗張力繊維を挿通した光ファイバケーブルの製造方法、及びこの製造方法で製造されることで長手方向の耐張力が高い光ファイバケーブルの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本願の実施形態の光ファイバケーブルの構造を示す模式図である。
【
図2】閉鎖管に繊維束を挿通するための装置の一例を模式的に示す側面図である。
【
図4】振動テーブルへの振動モータの取付方を示す模式図である。
【
図6】繊維束の先端を結束帯で結束した例を一部断面図で示す。
【
図7】繊維束の先端にリード線を取り付けた例を一部断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願の実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する図面は模式図であり、構成同士の位置関係や大きさの比率は実物とは同じであるとは限らない。
【0013】
図1は、本実施形態の光ファイバケーブル20の構造を示す模式図である。閉鎖管Pは長尺(たとえば、全長10m以上)に形成された可撓性の金属管(たとえば、鋼管)であり、その外周は合成樹脂性の被覆層Cにより被覆されている。また、閉鎖管Pの内部空間は、両端以外では外部と交通していない。換言すると、閉鎖管Pの側面には、外界と交通するいかなる孔又は隙間も存在しない。
【0014】
閉鎖管Pの内部空間には、その全長にわたって、光ファイバ6aと抗張力繊維6bとを束ねた繊維束6が挿通されている。挿通される光ファイバ6aの数は、光ファイバケーブル20の用途により様々であり、本図に示すような複数本でもよいし、また、1本でもよい。
【0015】
抗張力繊維6bは、光ファイバケーブル20の引張強度を向上させる目的で閉鎖管Pに挿通される。抗張力繊維6bとしては、たとえば、引張強度が優れる合成樹脂繊維、たとえば芳香族ポリアミド繊維、とりわけアラミド繊維が適している。このような抗張力繊維6bは、引張強度に優れる反面、ガラス製の光ファイバ6aに比べ剛性が低く、また単位長さあたりの重量も低いため、これを単独で長尺の閉鎖管Pに挿通することはきわめて困難である。そのため、抗張力繊維6bは、光ファイバ6aと束ねた繊維束6とすることで、光ファイバ6aとともに長尺の閉鎖管Pに挿通することが可能となっている。
【0016】
次に、本実施形態の光ファイバケーブル20の製造方法について図面を参照して説明する。
図2は、鋼管として形成された閉鎖管Pの内部空間に繊維束6を挿通するための装置の一例を示す全体側面図、
図3は振動テーブル2の平面図、
図4は振動モータ3a、3bの振動テーブル2への取付け方法の説明図である。
【0017】
閉鎖管PのコイルRは、そのボビン1の下部フランジ外周縁、軸孔部をそれぞれ振動テーブル2の固定治具9などで固定することにより振動モータ3a、3bの振動を確実に受けるように振動テーブル2上に載置固定される。振動テーブル2には一対の振動モータ3a、3bを鉛直線より、たとえば、12.5°傾斜させて一体的に取付け、一対の振動モータ3a、3bにより管コイル軸Xを中心とする振動を与える。振動テーブル2はスプリング4を介して架台5に取付けられることにより、振動テーブル2の振動が架台5に伝わらないようになっている。
【0018】
この形態例では振動モータ3a、3bとして回転軸の両端に設けた不平衡重錘の回転により生じる遠心力を利用して振動を発生させるロータリーバイブレータを採用し、これを2個、振動テーブル2に管コイル軸Xに対して、対称になるように取付ける。この1対の振動モータ3a、3bの振動面が水平に設置した振動テーブル2面に対してなす角度αは等しく、さらに振動モータの他の振動条件(振動数、振幅など)バイブレータの回転方向も等しくしてありこの1対のバイブレータによる振動を合成した振動を振動テーブル2に与えるよう構成している。このような振動を振動テーブル2に与えるとテーブル上の閉鎖管PのコイルRは振動モータ3a、3bの中間軸を中心として角速度一定の円運動(図示の例では反時計方向の円運動)を行う。この中間軸と管コイル軸Xが一致するようにコイルRを振動テーブル上に載置することにより、コイルRの軸と振動テーブル2の振動中心軸とを一致させることができる。
【0019】
振動テーブルの振動状態を
図5により説明する。
図5においてEは振動テーブル上に管コイル軸X(振動中心軸)を中心として描いた円、E′は振動による円Eの移動後の円であり、このように円は振動テーブルの振動により図の実線円E、破線円E′間をスパイラル振動する。円の中心はP、P′間を垂直に振動し、この中心からは離れるに従って、すなわち円の径が大になるに従って円周上の各点P
1、P
2、P
3、P
4の水平面に対する振動角度βは小となっていくと同時に振幅P
1P′
1、P
2P′
2、P
3P′
3、P
4P′
4はPP′から次第に大となっていく。ただし、振幅の垂直成分は一定である。閉鎖管のコイルは振動テーブル上に管コイル軸Xと振動中心軸が一致するように載置され、閉鎖管はコイル状に巻かれているので上記円は、閉鎖管の1ターンに相当し、したがってコイルの同一径の閉鎖管においては同一の振動(振幅、振動角度が同一)、径が小さい内側層の閉鎖管ほど振幅は小、振動角度βは大である振動を呈する。
【0020】
閉鎖管Pに挿通する複数本の光ファイバ6aは、
図6に示すように抗張力繊維6bとまとめて繊維束6とした上で、互いの先端が結束帯6cを巻回して結束されている。結束帯6cとしては、たとえば、粘着テープを用いることができる。まず、結束帯6cで結束された繊維束6の先端をあらかじめ閉鎖管Pの管始端7に挿入しておく。このような状態で、上記したスパイラル振動を振動テーブル2を介して閉鎖管PのコイルRに与えると、振動による搬送力によりコイル下方の一端である管始端7から供給された繊維束6は連続的に閉鎖管P内に進入して行く。すなわち繊維束6は支持体12に軸支されたスプール10から繰り出されて、スプール10→ガイド11→管始端7→コイルRの閉鎖管P→管終端8の順にコイルRの振動により移動し、所定時間後にコイルR全体に挿通される。
【0021】
なお、
図7に示すように、繊維束6の先端を結束する結束帯6cに、リード線13が取り付けられていてもよい。リード線13は可撓性及び弾性を有する材質、たとえば、ステンレス鋼などの金属細線の撚り線、あるいは鉄などの金属粉を含むプラスチック線で、繊維束6の径以下の径で形成される。このリード線13をあらかじめ閉鎖管Pの管始端7に挿入しておいた状態で、上述のようにスパイラル振動を振動テーブル2を介して閉鎖管PのコイルRに与えることで、リード線13に続いて繊維束6をコイルRの閉鎖管Pに挿通することができる。
【0022】
なお、本願で用いられる閉鎖管Pは、上記実施形態で示したような単純な円筒形状の長尺管でなくても、たとえば、可撓性を高めるために重ね螺旋管として形成した長尺管であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 ボビン 2 振動テーブル 3a、3b 振動モータ
4 スプリング 5 架台
6 繊維束 6a 光ファイバ 6b 抗張力繊維
6c 結束帯
7 管始端 8 管終端
9 固定治具 10 スプール 11 ガイド
12 支持体
13 リード線
20 光ファイバケーブル
C 被覆層 P 閉鎖管 R コイル
X 管コイル軸