IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社明電舎の特許一覧

<>
  • 特開-真空コンデンサ 図1
  • 特開-真空コンデンサ 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136974
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】真空コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 5/013 20060101AFI20230922BHJP
   H01G 2/08 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
H01G5/013 100
H01G2/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042931
(22)【出願日】2022-03-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】谷水 良行
(57)【要約】
【課題】通電路構成要素が高温にならないよう抑制し、高周波電流の通電能力を発揮し易くすることに貢献可能な真空コンデンサを提供する。
【解決手段】真空容器1A内において、固定電極7と、固定電極7と対向して配置され軸方向Yに移動自在な可動電極支持部91と、可動電極支持部91において固定電極7に対向して設けられ当該固定電極7との間に静電容量を形成する可動電極8と、一端が可動電極支持部91の可動側導体6側に支持され他端が可動側導体6に支持されている筒状のベローズ14と、放熱部17と、を主な要素として備える。放熱部17は、真空室15における筒状体1aとベローズ14との間で、軸方向Yに延在している筒状であって、可動電極支持部91におけるベローズ14よりも外周側に支持した構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が絶縁性を有する筒状体の両端を固定側導体および可動側導体により閉塞して形成された真空容器と、
真空容器内の固定側導体側に設けられた固定電極と、
真空容器内において固定電極に対向して位置し、前記筒状体の両端方向に移動自在な可動電極支持部と、
可動電極支持部の固定側導体側において固定電極に対向して設けられ、当該固定電極との間に静電容量を形成する可動電極と、
一端が可動電極支持部の可動側導体側に支持され他端が可動側導体に支持されている筒状のベローズと、
を備え、
真空容器内は、ベローズにより、当該ベローズの外周側である真空室と、当該ベローズの内周側である大気室と、に区分されており、
真空室における前記筒状体とベローズとの間で前記両端方向に延在している放熱部が、可動電極支持部におけるベローズよりも外周側に、支持されている
ことを特徴とする真空コンデンサ。
【請求項2】
放熱部の外周面には、凹凸状に成形された放熱部凹凸面が形成されていることを特徴とする請求項1記載の真空コンデンサ。
【請求項3】
放熱部の外周面は、熱伝導性材料がコーティングされていることを特徴とする請求項1または2記載の真空コンデンサ。
【請求項4】
筒状体は、
絶縁性材料を用いて成る絶縁管と、
金属材料を用いて成り、絶縁管の前記両端方向に対し同軸状に連設されている一対のフランジ管と、
を有してなり、
前記一対のフランジ管のうち、筒状体の径方向において放熱部と対向しているフランジ管には、当該フランジ管の外周面および内周面のうち少なくとも一方に、凹凸状に成形されたフランジ管凹凸面が形成されている
ことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の真空コンデンサ。
【請求項5】
前記放熱部と対向しているフランジ管において、当該フランジ管の外周面および内周面のうち少なくとも一方には、熱伝導性材料がコーティングされていることを特徴とする請求項4記載の真空コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空コンデンサに係るものであって、例えば半導体設備の高周波電源、大電力発信回路等の高周波機器におけるインピーダンス調整に適用可能な真空コンデンサの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば一般的な半導体設備の高周波電源や大電力発信回路等の高周波機器において、インピーダンス調整のために種々の真空コンデンサ(例えば、特許文献1~3)が用いられてきた。
【0003】
図2に示す真空コンデンサBは、一般的な一例(可変形真空コンデンサ)を示す概略説明図である。図2の真空コンデンサBは、少なくとも一部が絶縁性を有する筒状体1bの両端を、固定側導体5および可動側導体6により閉塞して、真空容器1Bを構成している。
【0004】
図2の筒状体1bの場合、絶縁性材料(セラミック材料等)を用いて成る絶縁管2の両端(固定側導体5側,可動側導体6側)に、それぞれ金属材料(銅等)を用いて成るフランジ管3,4を同軸状に連設して構成されている。
【0005】
符号6aは、可動側導体6における真空容器1B外側に設けられた冷却部を示すものである。この冷却部6aは、内部に冷却水を流すことが可能な冷却水穴6bを有しており、必要に応じて当該冷却水穴6b内に冷却水を流すことにより、真空コンデンサBを冷却できるように構成されている。
【0006】
符号7は、内径が異なる複数の略円筒状の電極部材を同心円状に一定間隔を隔てて構成され、固定側導体の真空容器1B内側に設けられた固定電極を示すものである。符号9は、後述の可動電極8を支持する可動電極支持部を示すものであり、固定側導体5と対向して配置され、後述の可動ロッド10を介して、真空容器1Bの軸方向Y(筒状体1bの両端方向)に移動自在となるように構成されている。
【0007】
可動電極8は、固定電極7と同様に内径が異なる複数の略円筒状の電極部材を同心円状に一定間隔を隔てて構成されたものである。この可動電極8の各電極部材は、固定電極7と非接触状態で該固定電極7に挿出入(固定電極7の各電極部材間に挿出入して互いに交叉)できるように、可動電極支持部9の固定側導体5側において固定電極7に対向して設けられ、これにより、当該固定電極7との間に静電容量を形成できるように構成されている。図2に示す可動電極支持部9の場合、真空容器1Bの径方向に延在した平板状を成している。
【0008】
符号10は、可動電極支持部9の背面側(固定電極7が設けられていない可動側導体6側)から軸方向Yに延設(図2中では真空容器1Bの可動側導体6側を突出するように延設)された可動ロッド(図2中では中空形状の可動ロッド)を示すものである。
【0009】
図2に示す可動ロッド10の場合、真空容器1Bに設けられた(図2中では可動側導体6の略中央部に固設された)軸受部材11を介して、摺動自在(可動ロッド10の外周面が軸受部材11を摺動自在(軸方向Yに摺動自在))に支持されている。
【0010】
符号12は、可動ロッド10を軸受部材11によって軸方向Yに案内されながら移動し、真空コンデンサBにおける静電容量を調整して絶縁操作するためのロッド(以下、絶縁操作ロッドと称する)を示すものである。図2に示す絶縁操作ロッド12の場合、その一端側(図2中では雄螺子部12bが形成された側)が可動ロッド10の一端側に螺合(図2中では絶縁操作ロッド12に形成された雄螺子部12bが、可動ロッド10の一端側内壁に形成された雌螺子部10aに螺合)され、他端側(図2中では例えば絶縁材料から成る頭部12aが形成された側)は図外の駆動源(モータ等)を接合できるように構成されている。
【0011】
また、絶縁操作ロッド12は、例えば真空容器1Bに設けられた(図2中では可動側導体6から突出して軸受部材11を覆うように固設された)支持体(図2中では螺子受け部13aと回転トルクを低減するためのスラストベアリング13bとから成る支持体;以下、操作ロッド支持体と称する)13により、回動自在に支持されている。
【0012】
符号14は、真空コンデンサBの通電路の一部として、軟質金属製で筒状(例えば蛇腹状)のベローズを示すものである。このベローズ14は、真空容器1B内におけるベローズ14の外周側、すなわち固定電極7,可動電極8,ベローズ14で囲まれた空間(以下、真空室と称する)15を気密(真空状態にできるように気密)に保持しながら、可動電極8,可動電極支持部9,可動ロッド10が軸方向Yへ移動できるように構成されている。図2のベローズ14の場合、その一端側の縁は可動側導体6の内壁側に接合され、他端側の縁は可動電極支持部9の可動側導体6側に接合されている。そして、真空容器1B内におけるベローズ14の内周側(ベローズ14の可動ロッド10側)には、大気圧状態の空間(以下、大気室と称する)16が形成されている。
【0013】
なお、ベローズ14においては、種々の形状のものが知られており、例えばベローズ14の他端側の縁を可動ロッド10の表面に接合する構造や、当該ベローズ14自体を二重にした構造(例えば、ステンレス製ベローズと銅製ベローズとを組み合わせた構造)のものが挙げられる。
【0014】
以上示したように構成された真空コンデンサBにおいて、図外の駆動源により絶縁操作ロッド12を回動することにより、その回動に伴って可動ロッド10が軸方向Yへ移動し、固定電極7と可動電極8との交叉面積が変化する。これにより、両電極7,8にそれぞれ異なる極性の電圧が印加された際には、当該両電極7,8間に生じる静電容量の値が連続的に加減され、インピーダンス調整が行われるものとされている。
【0015】
このような真空コンデンサBを用いた場合の高周波機器に対する高周波電流は、以下に示すような通電路で流れることとなる。すなわち、高周波電流は、まず固定側導体5,固定電極7の順で流れてから、両電極7,8間の静電容量を介して可動電極8に流れ、更に当該可動電極8から、可動電極支持部9,ベローズ14,可動ロッド10を経由して可動側導体6に流れることとなる。
【0016】
近年、高周波機器に係る負荷は徐々に増大し、その高周波機器に流れる高周波電流が増大している。このため、当該高周波機器に適用する真空コンデンサBにおいては、高周波電流の通電能力が高いものが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10-141455号公報
【特許文献2】特許4692211号公報
【特許文献3】特開2005-175026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
真空コンデンサBの各構成要素のうち、高周波電流の通電路となっている構成要素(以下、単に通電路構成要素と適宜称する)においては、当該高周波電流が流れると発熱を起こし易く、高温になってしまうことが考えられる。
【0019】
通電路構成要素のうち、固定側導体5,可動側導体6,固定電極7,可動ロッド10等においては、例えば真空容器1Bの外周側に曝露または近接、あるいは大気室16に曝されているため、たとえ高周波電流により発熱を起こしても、真空容器1Bの外周側に伝導放熱され易いことが考えられる。
【0020】
しかしながら、通電路構成要素のうち可動電極8,可動電極支持部9,ベローズ14(以下、これらを適宜纏めて単に三要素と称する)においては、対流放熱が起こり難い真空室15に曝され、かつ真空容器1Bの外周側から隔てて位置しているため、高周波電流により発熱すると蓄熱され易く(真空容器1Bの外周側に伝導放熱することが困難であり)、より高温状態になり易いことが考えられる。
【0021】
また、電極7,8に電圧を印加して高周波電流を流すと、特に電極7,8間のような微小なギャップにおいては、高電界状態になることが考えられる。このような高電界状態下での三要素は、前記のように高温状態になると、熱電子を放出し易くなる。そして、前記のように熱電子が放出されると、真空絶縁を維持することが困難となり、真空コンデンサBとしての所望の機能が発揮できなくなってしまう。
【0022】
したがって、真空コンデンサBにおいては、通電路構成要素が高温にならないようにするため、高周波電流の通電能力が制限されてしまっていた。
【0023】
本発明、前述のような技術的課題に鑑みてなされたものであって、通電路構成要素(三要素)が高温にならないよう抑制し、高周波電流の通電能力を発揮し易くすることに貢献可能な真空コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この発明に係る電気機器収納盤は、前記の課題を解決できる創作であり、その一態様は、少なくとも一部が絶縁性を有する筒状体の両端を固定側導体および可動側導体により閉塞して形成された真空容器と、真空容器内の固定側導体側に設けられた固定電極と、真空容器内において固定電極に対向して位置し、前記筒状体の両端方向に移動自在な可動電極支持部と、可動電極支持部の固定側導体側において固定電極に対向して設けられ、当該固定電極との間に静電容量を形成する可動電極と、一端が可動電極支持部の可動側導体側に支持され他端が可動側導体に支持されている筒状のベローズと、を備えたものである。
【0025】
そして、真空容器内は、ベローズにより、当該ベローズの外周側である真空室と、当該ベローズの内周側である大気室と、に区分されており、真空室における前記筒状体とベローズとの間で前記両端方向に延在している放熱部が、可動電極支持部におけるベローズよりも外周側に、支持されている、ことを特徴とするものである。
【0026】
また、放熱部の外周面には、凹凸状に成形された放熱部凹凸面が形成されていることを特徴としても良い。
【0027】
また、放熱部の外周面は、熱伝導性材料がコーティングされていることを特徴としても良い。
【0028】
また、筒状体は、絶縁性材料を用いて成る絶縁管と、金属材料を用いて成り、絶縁管の前記両端方向に対し同軸状に連設されている一対のフランジ管と、を有してなり、前記一対のフランジ管のうち、筒状体の径方向において放熱部と対向しているフランジ管には、当該フランジ管の外周面および内周面のうち少なくとも一方に、凹凸状に成形されたフランジ管凹凸面が形成されている、ことを特徴としても良い。
【0029】
また、前記放熱部と対向しているフランジ管において、当該フランジ管の外周面および内周面のうち少なくとも一方には、熱伝導性材料がコーティングされていることを特徴としても良い。
【発明の効果】
【0030】
以上示したように本発明によれば、通電路構成要素(三要素)が高温にならないよう抑制し、高周波電流の通電能力を発揮し易くすることに貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施の形態における真空コンデンサの一例を示す概略説明図(軸方向Yの縦断面図)。
図2】一般的な真空コンデンサBの概略説明図(軸方向Yの縦断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態の真空コンデンサは、図2に示した真空コンデンサBのように三要素(以下、図2の真空コンデンサBの三要素を、単に従来三要素と適宜称する)が単に真空室に曝されているような構成とは、全く異なるものである。
【0033】
すなわち、本実施形態の真空コンデンサは、真空容器の真空室において、当該真空容器とベローズとの間で当該真空容器の軸方向(後述図1では筒状体1aの両端方向(軸方向Y))に延在している放熱部を、備えているものである。この放熱部は、可動電極およびベローズを支持している可動電極支持部において、当該ベローズよりも外周側(すなわち、真空室側)に対して支持されている構成である。
【0034】
ここで、図2の真空コンデンサBに着目すると、前記のような放熱部を備えておらず、従来三要素においては、単に、対流放熱が起こり難い真空室15に曝され、かつ真空容器1Bの外周側から隔てて位置することとなる。このため、従来三要素は、高周波電流により発熱すると蓄熱され易いことが判る。
【0035】
例えば、従来三要素のうち可動電極8や可動電極支持部9の発熱は、可動ロッド10等を介して、真空容器1Bの外周側に伝導放熱され得る。しかしながら、可動ロッド10が、ベローズ14の径による制限を受けて、小さい断面積で設計され易く、軸受部材11との空隙の熱伝導抵抗が高くなり易い。このため、可動ロッド10等を介した伝導放熱は、制限されてしまうことがあった。
【0036】
特に、可動電極8においては、図2に示すように内径が異なる複数の略円筒状の電極部材から成る場合、当該電極部材の断面積や質量が小さくなるため、より高温(例えば300℃超の高温)に成り易いことが考えられる。
【0037】
また、従来三要素のうちベローズ14の発熱においては、可動側導体6等を介して真空容器1Bの外周側に伝導放熱され得る。しかしながら、ベローズ14は、断面積が小さく設計されたものが多いため、たとえ可動側導体6を冷却しても、当該可動側導体6等を介した伝導放熱は、制限されてしまうことがあった。
【0038】
例えば、従来三要素が銅を用いて成るものである場合、当該銅は比較的低い放射率(0.02程度)ため、たとえ当該従来三要素と周囲との間に温度差があっても、当該従来三要素の放射放熱は比較的少ないものになると考えられる。すなわち、従来三要素が銅を用いて成る場合には、発熱量に対する放熱量が少なく、発熱の多くが蓄熱されてしまい、高温になり易いことが考えられる。
【0039】
このように高温になった従来三要素の場合、材料の電気抵抗の温度係数によって抵抗が増大するため、更なる発熱量の増加および温度上昇を招くおそれがある。例えば、従来三要素が銅を用いて成り、温度が300℃になっている場合には、当該銅の電気抵抗が常温の約1.8倍になることから、当該従来三要素の発熱量も1.8倍になるおそれがある。
【0040】
そして、真空コンデンサBの電極7,8に電圧を印加して高周波電流を流すことにより、従来三要素が高電界状態下にあり、さらに前記のように高温状態になると、熱電子を放出し易くなり、その結果、真空絶縁を維持することが困難となり、真空コンデンサBとしての所望の機能が発揮できなくなってしまう。ゆえに、真空コンデンサBにおいては、例えば、真空容器1Bの外周側の温度上昇制限と、熱電子放出温度制限と、のうち何れか低い方に基づいた制限値によって、高周波電流の通電能力が制限されてしまっていた。
【0041】
なお、真空コンデンサBにおいて、ベローズ14の径を大きくしたり、当該ベローズ14自体を二重構造にすることにより、当該真空コンデンサBの発熱量を低減できたり高周波電流の通電能力が向上する可能性はあるが、当該真空コンデンサBの大型化や高コスト化を招くおそれがある。
【0042】
一方、本実施形態の真空コンデンサによれば、可動電極支持部に放熱部が支持されている構成であるため、例えば三要素が発熱した場合には当該放熱部を介して放熱し易くなるため、当該三要素の蓄熱量の抑制し温度を低減することが可能となる。そして、高電界状態下の三要素からの熱電子の放出も抑制し易くなる。これにより、高周波電流の通電能力を発揮し易くなる。
【0043】
本実施形態の真空コンデンサは、前述のように可動電極支持部におけるベローズよりも外周側に放熱部を支持した構成であれば良く、多様な設計変更が可能である。すなわち、種々の分野(例えば真空コンデンサ分野,表面処理分野,コーティング分野等)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて先行技術文献等を適宜参照して設計変形することが可能である。
【0044】
なお、以下の実施例では、例えば図2と同様の内容について同一符号を引用する等により、詳細な説明を適宜省略しているものとする。
【0045】
≪実施例≫
図1は、本実施例による真空コンデンサAの構成を説明するものである。この真空コンデンサAにおいては、少なくとも一部が絶縁性を有する筒状体1aの両端を、固定側導体5および可動側導体6により閉塞して、真空容器1Aが構成されている。この真空容器1A内には、当該真空容器1A内の固定側導体5側に設けられた固定電極7と、当該真空容器1A内において固定電極7と対向して配置され軸方向Y(筒状体1aの両端方向)に移動自在な可動電極支持部91と、可動電極支持部91の固定側導体5側において固定電極7に対向して設けられ当該固定電極7との間に静電容量を形成する可動電極8と、一端が可動電極支持部91の可動側導体6側に支持され他端が可動側導体6に支持されている筒状のベローズ14と、放熱部17と、が主な要素として備えられている。
【0046】
放熱部17は、真空室15における筒状体1aとベローズ14との間で、軸方向Yに延在している筒状であって、可動電極支持部91におけるベローズ14よりも外周側に支持された構成となっている。
【0047】
以上示したような図1の真空コンデンサAの各構成要素においては、使用する材料(金属材料,絶縁性材料,熱伝導性材料等)や形状等は、当該真空コンデンサAの使用目的等に応じて、種々の態様を適宜適用することが可能であり、その一例として以下に示すものが挙げられる。
【0048】
<筒状体1aの一例>
図1に示す筒状体1aは、絶縁性材料(例えばセラミック材料等)を用いて成る絶縁管2の両端(固定側導体5側,可動側導体6側)に、それぞれ金属材料(例えば銅,SUS等)を用いて成るフランジ管3(固定側導体5側),41(可動側導体6側)を、同軸状に連設して構成されている。
【0049】
また、フランジ管3,41のうち、軸方向Yにおいて放熱部17と重畳(すなわち、筒状体1aの径方向(軸方向Yと交差する方向)において放熱部17と対向)しているフランジ管41には、当該フランジ管41の内周面,外周面それぞれに、各々の溝穴41a,41bにより凹凸状に成形されたフランジ管凹凸面が、形成されている。
【0050】
図1に示すフランジ管凹凸面の場合、フランジ管41の周方向に延在する複数個のリング状の溝穴41a,41bが、軸方向Yに対して所定間隔を隔てて設けられた構造となっているが、これに限定されるものではない。すなわち、フランジ管41の内周面や外周面の表面積を大きくするように凹凸状に成形されたものであれば良い。
【0051】
例えば、溝穴41a,41bの内壁面の横断面形状は、図1に示すようなコ字状にする他に、V字状にすることが挙げられる。また、フランジ管41の内周面,外周面それぞれに対し、溝穴41a,41bを設ける替わりに粗面加工することにより、フランジ管凹凸面を形成しても良い。
【0052】
さらに、フランジ管凹凸面においては、フランジ管41の内周面,外周面のうち少なくとも一方のみに形成しても良い。さらにまた、フランジ管41の内周面,外周面には、後述の熱伝導性材料をコーティングしても良い。
【0053】
なお、フランジ管3において、軸方向Yにおいて放熱部17と重畳(例えば図1に示す放熱部17が図示下方向に延長されて重畳)している場合には、フランジ管41と同様に、当該フランジ管3の内周面,外周面のうち少なくとも一方に対して、フランジ管凹凸面を形成したり、後述の熱伝導性材料をコーティングしても良い。
【0054】
<固定電極7,可動電極8,可動電極支持部91の一例>
図1に示す固定電極7,可動電極8それぞれは、内径が異なる複数の略円筒状の電極部材を同心円状に一定間隔を隔てて構成されている。図1に示す可動電極支持部91においては、図2に示した可動電極支持部9と同様に、真空容器1Aの径方向に延在した平板状を成し、当該可動電極支持部91の固定側導体5側において可動電極8の各電極部材を支持した構成となっている。
【0055】
このように可動電極支持部91に支持された可動電極8の各電極部材は、当該可動電極支持部91の軸方向Yへの移動により、固定電極7と非接触状態で該固定電極7に挿出入(固定電極7の各電極部材間に挿出入して互いに交叉)でき、当該固定電極7との間に静電容量を形成できるように構成されている。
【0056】
<放熱部17>
図1に示す放熱部17は、金属材料(例えば銅,SUS等)を用いて筒状に成形されたものであって、内周面の中央部に段差部17bが設けられており、この段差部17bが可動電極支持部91の外周縁に係合して支持された構成となっている。
【0057】
また、放熱部17の外周面には、溝穴17aにより凹凸状に成形された放熱部凹凸面が、形成されている。図1に示す放熱部凹凸面の場合、放熱部17の周方向に延在する複数個のリング状の溝穴17aが、軸方向Yに対して所定間隔を隔てて設けられた構造となっているが、これに限定されるものではない。すなわち、放熱部17の外周面の表面積を大きくするように凹凸状に成形されたものであれば良い。
【0058】
例えば、溝穴17aの内壁面の横断面形状は、図1に示すようなコ字状にする他に、V字状にすることが挙げられる。また、放熱部17の外周面それぞれに対し、溝穴17aを設ける替わりに粗面加工することにより、放熱部凹凸面を形成しても良い。さらに、放熱部17の外周面には、後述の熱伝導性材料をコーティングしても良い。
【0059】
<熱伝導性材料のコーティングの一例>
フランジ管3,41の内周面,外周面や、放熱部17の外周面においては、それぞれ熱伝導性材料によるコーティングを施しても良い。これにより、放熱部17の外周面やフランジ管3,41の外周面において熱放射量を向上させたり、フランジ管3,41の内周面の吸熱率(放熱部17からの放射熱等の吸熱率)を向上させることが可能となる。
【0060】
熱伝導性材料のコーティングにおいては、種々の態様を適用することが可能である。この一例としては、クロムメッキ,黒色クロムメッキ,無光沢ニッケルメッキ等のメッキ処理によるコーティングや、SiZrO4,Mn23,Fe23,CoO等のセラミック塗布によるコーティングが挙げられる。また、フランジ管3,41の外周面の場合には、暗色塗装によるコーティングも挙げられる。
【0061】
具体例として、クロムメッキによるコーティングは、当該クロムメッキの放射率が比較的高い0.9程度(銅の放射率の45倍程度)であり、熱放射量や吸熱率を十分向上させることが可能である。
【0062】
<真空コンデンサAの動作例>
真空コンデンサAにおいて、図外の駆動源により操作ロッド12を回動することにより、可動ロッド10が真空容器1Aの軸方向Yへ移動し、固定電極7と可動電極8との交叉面積が変化し、静電容量が加減されてインピーダンス調整が行われる。
【0063】
また、真空コンデンサAの電極7,8に電圧を印加して高周波電流を流すと、当該高周波電流が、以下に示すような通電路で流れることとなる。すなわち、高周波電流は、まず固定側導体5,固定電極7の順で流れてから、両電極7,8間の静電容量を介して可動電極8に流れ、更に当該可動電極8から、可動電極支持部91,ベローズ14,可動ロッド10を経由して可動側導体6に流れることとなる。
【0064】
このように高周波電流を流した場合に真空コンデンサAの通電路構成要素に起こり得る発熱のうち、例えば固定側導体5や固定電極7の発熱は、真空容器1Aの外周側に曝されている固定側導体5等を介して、真空容器1Aの外周側に放熱されることとなる。
【0065】
可動側導体6や可動ロッド10等の発熱においては、大気室16や、冷却部6aの冷却水穴6bに流れる冷却水を介して、真空容器1Aの外周側に放熱されることとなる。
【0066】
真空コンデンサAの三要素(可動電極8、可動電極支持部91、ベローズ14)の発熱においては、放熱部17を介して放熱でき、当該三要素の蓄熱量が抑制されることとなる。特に、放熱部17に放熱部凹凸面が形成されている場合や熱伝導性材料がコーティングされている場合には、より放熱し易くなり、当該三要素の蓄熱量も抑制され易くなる。
【0067】
これにより、真空コンデンサAの三要素においては、温度を十分低減することが可能となる。また、前記のように温度が十分低減した三要素においては、電気抵抗の温度係数によって抵抗が減少することになり、当該三要素の温度がさらに低減できる可能性がある。
【0068】
放熱部17からの放射熱は、例えば当該放熱部17と軸方向Yにおいて重畳している筒状体1aの内周面を介して、当該筒状体1aに吸熱され、真空容器1Aの外周側に放熱されることとなる。特に、筒状体1aのフランジ管3,41のうち放熱部17と軸方向Yで重畳している方(図1ではフランジ管41)において、内周面にフランジ管凹凸面が形成されている場合や熱伝導性材料がコーティングされている場合には、放熱部17からの放射熱を吸熱し易くなり、更に外周面にフランジ管凹凸面が形成されている場合や熱伝導性材料がコーティングされている場合には、当該吸熱した放射熱を真空容器1Aの外周側に放熱し易くなる。
【0069】
したがって、本実施例による真空コンデンサAによれば、三要素の蓄熱量の抑制し温度を低減し、高電界状態下の三要素からの熱電子の放出も抑制し易くなる。これにより、高周波電流の通電能力を発揮し易くなる。
【0070】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0071】
例えば、真空コンデンサAのベローズ14においては、種々の形状のものを適用しても良く、その一例として、当該ベローズ14自体を二重にした構造(例えば、ステンレス製ベローズと銅製ベローズとを組み合わせた構造)を適用することが挙げられる。
【符号の説明】
【0072】
A…真空コンデンサ、1A…真空容器、1a…筒状体、2…絶縁管、3,41…フランジ管
5…固定側導体、6…可動側導体、7…固定電極、8…可動電極、91…可動電極支持部
14…べローズ、15…真空室、16…大気室、17…放熱部
17a,41a,41b…溝穴
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が絶縁性を有する筒状体の両端を固定側導体および可動側導体により閉塞して形成された真空容器と、
真空容器内の固定側導体側に設けられた固定電極と、
真空容器内において固定電極に対向して位置し、前記筒状体の両端方向に移動自在な可動電極支持部と、
可動電極支持部の固定側導体側において固定電極に対向して設けられ、当該固定電極との間に静電容量を形成する可動電極と、
一端が可動電極支持部の可動側導体側に支持され他端が可動側導体に支持されている筒状のベローズと、
を備え、
真空容器内は、ベローズにより、当該ベローズの外周側である真空室と、当該ベローズの内周側である大気室と、に区分されており、
真空室における前記筒状体とベローズとの間で前記両端方向に延在している放熱部が、可動電極支持部におけるベローズよりも外周側に、支持されており、
放熱部における前記両端方向の端部のうち可動側導体側の端部は、当該可動側導体から離れている
ことを特徴とする真空コンデンサ。
【請求項2】
放熱部の外周面には、凹凸状に成形された放熱部凹凸面が形成されていることを特徴とする請求項1記載の真空コンデンサ。
【請求項3】
放熱部の外周面は、熱伝導性材料がコーティングされていることを特徴とする請求項1または2記載の真空コンデンサ。
【請求項4】
筒状体は、
絶縁性材料を用いて成る絶縁管と、
金属材料を用いて成り、絶縁管の前記両端方向に対し同軸状に連設されている一対のフランジ管と、
を有してなり、
前記一対のフランジ管のうち、筒状体の径方向において放熱部と対向しているフランジ管には、当該フランジ管の外周面および内周面のうち少なくとも一方に、凹凸状に成形されたフランジ管凹凸面が形成されている
ことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の真空コンデンサ。
【請求項5】
前記放熱部と対向しているフランジ管において、当該フランジ管の外周面および内周面のうち少なくとも一方には、熱伝導性材料がコーティングされていることを特徴とする請求項4記載の真空コンデンサ。