(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023136975
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】回転機の回転子設計方法および設計システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20230922BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20230922BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20230922BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/10 100
G06F30/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042932
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎矢
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA21
5B146DC01
5B146DC04
5B146DC06
5B146DJ04
5B146DJ07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】回転子のトポロジー最適化に要する時間を短縮し、回転機設計の遅延回避を図る回転子設計方法及び設計システムを提供する。
【解決手段】方法は、回転子全体の設計領域を定義し、磁石の寸法に関する第1設計変数と前記鉄心の形状に関する第2設計変数とをそれぞれ独立に決定しS21、第1設計変数および第2変数に応じて回転子の「Mesh」を生成しS22、「Mesh」に対して設計領域で定義された形状を写像しS23、写像された形状の特性評価を計算しS24、勾配法の感度解析を実行しS25、感度解析の結果に応じて磁石寸法・鉄心形状を修正しS26、鉄心形状(トポロジー)の最適化が収束した否かを判定しS27、収束していれば最適化を終了するS28。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いて、
磁石と鉄心とを備えた回転機の回転子を設計する方法であって、
前記回転子全体の設計領域を定義し、前記磁石の寸法に関する第1設計変数と前記鉄心の形状に関する第2設計変数とをそれぞれ独立に決定する変数決定ステップと、
前記第1設計変数および前記第2変数に応じて前記回転子の「Mesh」を生成する画像生成ステップと、
前記「Mesh」に対して前記設計領域で定義された形状を写像する写像ステップと、
前記写像された前記形状の評価に応じて前記両設計変数をそれぞれ修正することで前記鉄心の形状に最適化を施す最適化ステップと、
を有する回転機の回転子設計方法。
【請求項2】
前記磁石の寸法には、前記磁石の面積・前記磁石の位置および回転角度が含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載された回転機の回転子設計方法。
【請求項3】
前記写像ステップにおいて、
前記磁石の領域と前記鉄心の領域とが重複した場合には、前記磁石の領域を優先する
ことを特徴とする請求項1または2に記載された回転機の回転子設計方法。
【請求項4】
磁石と鉄心とを備えた回転機の回転子を設計するシステムであって、
前記回転子全体の設計領域を定義し、前記磁石の寸法に関する第1設計変数および前記回転子の鉄心形状に関する第変数をそれぞれ独立に決定する変数決定部と、
前記第1設計変数および前記第2変数に応じて前記回転子の「Mesh」を生成する画像生成部と、
前記「Mesh」に対して前記設計領域で定義された形状を写像する写像部と、
前記写像された前記形状の評価に応じて前記両設計変数をそれぞれ修正することで前記磁石の寸法および前記鉄心の形状に最適化を施す最適化部と、
を備えることを特徴とする回転機の回転子設計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば永久磁石型回転機に用いられる回転子の設計に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石型回転機は、高効率・可変速範囲が広く、コンプレッサー・スピンドル・ハイブリッド自動車などの多用途に用いられ、外周側の固定子(ステータ)と内周側の回転子(ロータ)とを備え、回転子内部に永久磁石(以下、磁石と省略する。)を埋設する設計によりトルクの増大などの性能向上が図られている。
【0003】
この回転子は、二つの永久磁石間を磁束で結合するための鉄心、即ち継鉄(ヨーク:yoke)を備えている。この回転子のトルク成分は、鉄心・磁石と固定子との位置関係から決定されている。
【0004】
そのため、回転子の設計は、鉄心形状および磁石の配置から性能が決定されるシステムの設計と捉えることができる。このとき鉄心形状の設計は、主にトポロジー(形状)の最適化により行われる。以下、
図6に基づき従来のトポロジー最適化の概略を説明する。
【0005】
S01:回転子の設計処理が開始されると、回転子に用いる磁石の寸法が決定される。
【0006】
S02:S01の磁石の寸法に応じた回転子鉄心の「Mesh(メッシュ)」が生成される(S02)。
【0007】
S03:回転子鉄心のトポロジー最適化を実行する。すなわち、トポロジー最適化の手法として、まず「Mesh」に磁石を初期配置した鉄心形状を定める(S11)。つぎに有限要素解析により現在の鉄心形状に対する特性評価を計算し(S12)、さらに勾配法では感度解析を行う(S13)。
【0008】
そして、勾配法では、S13の感度解析結果に応じて設計変数(鉄心形状)を修正する(S14)。非勾配法では、特性計算(S12)の評価値に応じて設計変数(鉄心形状)を修正する(S14)。修正が収束すれば鉄心形状を出力する(S16)。一方、収束しなければS12に戻って処理を再開する。
【0009】
なお、S16の出力の結果、最適化処理が収束していれば設計処理を終了する(S05)一方、収束していなければS01に戻って磁石の寸法を変えて処理を再開する。このような回転子の設計方法(S01~S05)の詳細は、非特許文献1~8に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】丸山俊,山崎慎太郎,矢地謙太郎,藤田喜久雄 ”応用曲面近似を用いたトポロジー最適化とシステム変数最適化の協調による永久磁石同期モータ回転子設計法” [No.17-32] 日本機械学会 第27回設計工学・システム部門講演会講演論文集 [2017.9.13-15,山口県下関市]
【非特許文献2】丸山俊,山崎慎太郎,矢地謙太郎,藤田喜久雄 “構造形態と構成要素配置の統合最適化による永久磁石同期モータ設計” 日本設計工業会2017年度春季研究発表講演会(2017年5月20日)
【非特許文献3】丸山俊、山崎慎太郎、矢地謙太郎、藤田喜久雄 ”永久磁石の配置とヨークの構造形態を考慮した同期モータの最適設計法” jode設計工学 ONLINE ISSN:2188-9023 PRINT ISSN:0919-2948,設計工学 Vol.53.No1(2018年1月)
【非特許文献4】丸山俊、山崎慎太郎、矢地謙太郎、藤田喜久雄 “構造形態とシステム変数を同時に考慮した永久磁石同期モータのシステムレベル最適化法” [No.17-4] 日本機械学会 第30回計算力学講演会講演論文集[2017.9.16-18,東大阪市]
【非特許文献5】丸山俊,山崎慎太郎,矢地謙太郎,藤田喜久雄 "メタモデリングに基づくトポロジー最適化問題における設計パラメータ決定法(永久磁石同期モータ設計への展開)" 日本機械学会[No.18-37] 第13回最適化シンポジウム2018 講演論文集[2018.10.15-16,京都市]
【非特許文献6】丸山俊,山崎慎太郎,矢地謙太郎,藤田喜久雄 "非線形磁性特性を考慮したハイブリット車用高出力モータのトポロジー最適化" 日本機械学会[No16-20]第12回最適化シンポジュウム2016プログラム集[2016.12.6-7,札幌市]
【非特許文献7】野村勝也,高橋篤弘,小島崇,山崎慎太郎,矢地謙太郎,坊大貴,織田喜久雄 "トポロジー最適化を用いたノイズフィルタにおける支配的なノイズ低減" 電気情報通信学会論文誌 B Vol.J102-B pp669-678 一般社団法人電子情報通信学会 2019
【非特許文献8】坊大貴,山崎慎太郎,矢地謙太郎,野村勝也,高橋篤弘,藤田喜久雄 "電磁適合設計のためのフィルタ回路の導体パターン最適化法" [No.17-4] 日本機械学会 第30回計算力学講演会講演論文集[2017.9.16-18.東大阪市]
【非特許文献9】”回転機機械用メッシュ作成ツール Ansys TurboGrid” アンシス・ジャパン株式会社 オンライン<インターネットURL:https://premium.ipros.jp/ansys/product/detail/2000131706/>
【非特許文献10】・・・・・CYBERNET Ansys 解析講座 初めての最適化" サイバネットシステム株式会社 オンライン<インターネットURLhttps://www.cybernet.co.jp/ansys/case/lesson/009.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来は、S01,S02に示すように、磁石の寸法を決定した後に「Mesh」を作成するため、磁石寸法毎に回転子鉄心のトポロジー最適化が実施されている。
【0012】
このとき磁石寸法毎に「Mesh」の形状が異なるため、鉄心の設計変数が相違する。例えばトポロジー最適化の設計変数は、磁石配置後の「Mesh」に依存するため、
図7中の磁石寸法A,B...N毎に異なる。
【0013】
そして、S04でS01に戻った際には、磁石寸法が変わるため、異なる「Mesh」が作成され、設計変数が変わってしまう。その結果、トポロジー最適化の情報を共有することができず、計算負荷が増加して最適化に時間がかかり、設計が遅延するおそれがある。
【0014】
そこで、非特許文献2~5に示すように、磁石配置の最適化とトポロジー最適化とを同時に更新する手法が提案されているものの、磁石配置は磁石の寸法に依存するため、有効な効果が得られないおそれがある。
【0015】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、回転子のトポロジー最適化に要する時間を短縮し、回転機設計の遅延回避を図ることを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明の一態様は、
コンピュータを用いて、
磁石と鉄心とを備えた回転機の回転子を設計する方法であって、
前記回転子全体の設計領域を定義し、前記磁石の寸法に関する第1設計変数と前記鉄心の形状に関する第2設計変数とをそれぞれ独立に決定する変数決定ステップと、
前記第1設計変数および前記第2変数に応じて前記回転子の「Mesh」を生成する画像生成ステップと、
前記「Mesh」に対して前記設計領域で定義された形状を写像する写像ステップと、
前記写像された前記形状の評価に応じて前記両設計変数をそれぞれ修正することで前記鉄心の形状に最適化を施す最適化ステップと、を有する。
【0017】
(2)本発明の他の態様は、磁石と鉄心とを備えた回転機の回転子を設計するシステムであって、
前記回転子全体の設計領域を定義し、前記磁石の寸法に関する第1設計変数および前記回転子の鉄心形状に関する第2変数をそれぞれ独立に決定する変数決定部と、
前記第1設計変数および前記第2変数に応じて前記回転子の「Mesh」を生成する画像生成部と、
前記「Mesh」に対して前記設計領域で定義された形状を写像する写像部と、
前記写像された前記形状の評価に応じて前記両設計変数をそれぞれ修正することで前記磁石の寸法および前記鉄心の形状に最適化を施す最適化部と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、回転子のトポロジー最適化に要する時間を短縮し、回転機設計の遅延を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る回転機の回転子設計方法を実行するシステムのブロック図。
【
図2】同 設計方法の処理ステップを示すフローチャート。
【
図3】(a)は磁石寸法(設計変数1)の変数表、(b)は磁石寸法の磁石面積のパターン(5種)図、(c)は磁石[位置]のパターン(30種)の最大値・最小値を示す概略図、(d)は磁石[回転角]のパターン(60種)の最大値・最小値を示す概略図。
【
図4】同 密度法によるトポロジー最適化時の遷移パターン(a)~(e)を示す遷移図
【
図5】同 磁石寸法とトポロジー最適化の一例を示す概略図。
【
図6】従来のトポロジー最適化の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る回転子鉄心の設計方法を説明する。この方法は、主に埋込永久磁石同期モータ(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor,IPSM)の回転子設計に用いられ、回転子の鉄心形状(トポロジー)の最適化を施している。
【0021】
このとき前記設計方法では、磁石の寸法と独立して回転子全体を設計領域とし、鉄心の形状を定義する。これにより磁石の寸法に依らずに鉄心の形状を最適化することが可能となる。
【実施例0022】
図1~
図5に基づき前記設計方法の実施例を説明する。ここでは前記設計方法は、例えば
図1に示すシステム1などにより実行される。
【0023】
このシステム1はコンピュータにより構成され、コンピュータの通常のハードウェアリソース(例えばCPU,RAM,ROM,SSD,HDDなど)を備える。このハードウェアリソースとソフトウェアリソース(OS,アプリケーションなど)との協働の結果、前記システム1は変数決定部2・画像生成部3・写像部4・最適化部5・出力部6を実装する。
【0024】
≪処理内容≫
図2に基づき前記各部2~6による設計方法の処理ステップ(S11~S18)を説明する。前述のように回転子の設計は、鉄心形状および永久磁石の配置から性能が決定されるシステムの設計と捉えることができる。ここでは鉄心に配置される磁石の寸法と鉄心形状との最適化方法を中心に説明する。
【0025】
S21:処理が開始されると、まず変数決定部2により設計領域Rが定義される。ここで定義される設計領域Rは、前記同期モータの回転子領域全体に関し、鉄心に磁石を配置したものとする。
【0026】
つぎに(1)鉄心に埋設される磁石の寸法(位置・形状・角度)S,(2)鉄心の初期形状Cが決定される。ここでは前者を設計変数1と呼び、後者を設計変数2と呼ぶものとする。
【0027】
設計変数1は、
図3(a)に示すように、磁石の幅W・長さL(面積は一定),位置X,Y,角度(回転角)を変数とし、それぞれの上限値と下限値とが定められている。
図3(b)は幅W・長さLの一例(5種)を示し、該変数X・Yにより磁石形状が定められる。また、
図3(c)は位置X,Yの一例(30種)を示し、
図3(d)は角度(回転角)の一例(60種)を示している。さらに設計変数2として、鉄心の孔部(フラックスバリア等)10群の分布パターン(間隔)などを用いることもできる。
【0028】
なお、設計変数の決定はユーザの入力/選択に応じて行ってもよく、あるいは事前に定めた初期の設計変数を用いてもよく、最適化の完了した別件の設計変数1,2を用いることもできる。
【0029】
S22:画像生成部3により、S21で決定された設計変数(磁石の寸法S・鉄心の初期形状C)1,2に応じた回転子の「Mesh(
図2中のG1)」が生成される。例えば鉄心の初期形状を確認し、頂点座標を初期画像にセットし、その後に頂点座標の順番を初期画像にセットして描画して生成する。なお、「Mesh」の生成には、例えば非特許文献7に記載された作成ツールを用いることができる。
【0030】
S23:写像部4によりS21で定義された設計領域にS22で作成された「Mesh」を写像した写像
図G2を生成する。このとき磁石の領域に重複する鉄心の領域については磁石を優先し、磁石を表示するものとする。
【0031】
S24~S26:最適化部5により、S23で生成された写像
図G2に基づき回転子鉄心のトポロジー最適化を実行する。最適化の手法としては、アルゴリズムなどの勾配(感度)を用いる勾配法と、前記勾配を用いない非勾配法とに大別される。
【0032】
トポロジーの最適化では一般的に勾配法が用いられ、勾配の計算手法として随伴変数法を用いることで高速に感度を求めることができる(非特許文献5参照)。具体的には、非特許文献1~6に記載された密度法や非特許文献7,8に記載されたレベルセット法など公知のアルゴリズムが適宜使い分けて使用される。ここでは一例として密度法を用いた場合を説明する。
【0033】
(1)まず写像
図G2に表された初期構造を設定し、設定された初期構造に対して有限要素解析によりトルク性能を評価する(S24)。このとき密度法は構造形態の最適化問題を設計領域内の材料分布に置き換えて解く手法であり、式(1)により定義される密度(ヨーク構造)pによって表現される鉄心形状で、非線形磁場解析により磁束密度を求め、そこからマックスウェルの応力テンソルTが求められる。このマックスウェルの応力テンソルTを用いたマックスウェルの応力法または節点応力法によってトルクを求めることができる。
【0034】
【0035】
Ωiron=鉄心領域:ρ=1の領域
Ωair=孔部10の空気領域:ρ=0の領域
(2)つぎに感度解析(S25)で目的関数に対する設計変数(密度m)の微分を評価し(S15)、その評価関数の大小の変化を確認する。このとき評価関数と設計変数とが直接的に微分できる場合とできない場合とがあり、式(2)に示す随伴方程式を求めて感度を導く。回転子のトルクに関する感度解析については、3つの式が考えられる
・感度式(1):マックスウェル応力法の随伴式
・感度式(2):節点応力法の直接式
・感度式(3):節点応力法の随伴式
本実施例では、感度式(1)~(3)を組み合わせた7通りの感度を事前に評価し、感度式(2)と感度式(3)のそれぞれを正規化し、足し合せた感度を採用したが、対象毎にどの組合せを採用するかは事前検討するものとする。
【0036】
【0037】
目的関数:J(u(m),m)=トルク
設計変数:m(m=p:鉄心の材料密度)
未知数:u(基礎方程式)
支配方程式:F(m)
(3)その後、S25の感度解析の結果に基づき設計変数1,2を修正・更新し(S26)、設計変数1,2の最適解を探索する。このとき設計変数1,2の変化の感度が「0」となる点が局所的な極大・極大を示し、本実施例では「平均トルク最大化」・「トルクリプル最小化」の観点から設計変数1.2を修正しながら探索する。例えば設計変数1,2を修正することにより、
図4中の(a)~(e)のようにヨーク形状を遷移させ、最終的な探索結果を得る。
【0038】
図5は、前記感度解析による設計変数1,2の探索結果を示している。ここではグラフ中の傾き(感度)に着目して最適解を探索し、
図5中のケース1は平均トルクが大きいがトルクリプルも大きい。そこで、設計値の範囲内でケース2~4と最適解を探索する。
【0039】
このとき併せて非特許文献3の「3.3 応答曲面による永久磁石配置最適化」を応用することで設計変数1の最適化を図る。例えば非特許文献3の「磁石配置」を「磁石の寸法(設計変数1)」と置き換え、ヨーク構造形態の最適化(
図4)で得られた解を用いて磁石配置の最適解を求めることもできる。
【0040】
S27,S28:S26の探索の収束判定を行う(S17)。その結果、探索が収束していなければS22に戻って処理を続行する。一方、探索が収束していれば最適化を終了し(S28)、出力部6から最適化の結果を出力する。ここで出力された最適化の結果は、コンピュータの記憶装置に記憶される。
【0041】
このとき本実施例は、磁石の寸法Sと鉄心の初期形状Cとを独立に定めるため、S24~S26により最適化された鉄心形状を、別の磁石の寸法Sについての設計時の初期形状Cに用いることが可能である。これによりトポロジー最適化の反復回数を削減することができる。
【0042】
【0043】
表1は、
図1に示す従来方法によるトポロジー最適化と、実施例の方法との比較結果を示し、実施例の方法ではS24~S26により最適化された鉄心形状を、別の磁石の寸法Sについての設計時の初期形状Cに用いている。この比較は、以下の条件(1)~(3)によりトポロジー最適化までの反復回数・総評価数・総評価時間を示している。
(1)1ケース計算時間(1回の最適化時間):4分
(2)磁石
磁石の寸法:7種
磁石配置:25種
磁石の角度:30種
(3)トポロジー最適化
鉄心初期形状(鉄心の孔部10の分布パターン):5種
最適化手法:3種
感度解析式:1種
反復回数:従来方法 S01~S04の反復回数(平均340回)
実施例の方法 S21~S27の反復回数(平均110回)
表1の比較結果によれば、従来方法は、「総評価数」に示すように、S12の特性評価計算を「26,775,000」回繰り返さなければならなかった。したがって、「総評価時間[h]」の欄に示すように、「1,785,000」時間を要した。
【0044】
これに対して実施例の方法は、S24の特性評価計算を「8,662,500」回繰り返すだけで済み、総評価時間を「577,500」時間と大きく短縮することができた。その結果、実施例の方法によれば、回転子のトポロジー最適化に要する時間を短縮し、回転機設計の遅延を回避できる点が確認できた。
【0045】
≪その他・他例≫
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載された範囲内で変形して実施することができる。以下に一例を示す。
【0046】
(1)本発明を実行するシステム1の構成は、
図1に限定されるものではなく、コンピュータ上でS21~S28を実行できれば構成でもよいものとする。
【0047】
(2)S25の感度解析は、勾配法を用いる場合に行われるが、勾配法を用いない場合には行う必要がない。この場合には、非特許文献10のアルゴリズムなどを用いて、複数の変数での計算による分布の傾向からより最適解に近い点が存在する可能性を探索する。