(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137007
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】蓄電素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/35 20210101AFI20230922BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20230922BHJP
H01M 50/655 20210101ALI20230922BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20230922BHJP
【FI】
H01M50/35 101
H01M50/103
H01M50/342 101
H01M50/655
H01G11/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042973
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岡部 一弥
(72)【発明者】
【氏名】奥山 良一
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H012
5H023
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078HA04
5E078HA12
5E078HA24
5E078HA25
5H011AA03
5H011AA13
5H011CC06
5H011DD13
5H011DD14
5H012AA07
5H012BB02
5H012BB19
5H012CC08
5H012DD05
5H012EE04
5H012FF01
5H012GG01
5H012JJ02
5H012JJ06
5H023AA03
5H023AS01
5H023AS10
5H023BB10
5H023CC11
(57)【要約】
【課題】安定したガス排出が可能な蓄電素子などを提供する。
【解決手段】蓄電素子10は、貫通孔171を有する金属製の容器100と、ガス排出弁210で閉塞された状態で、貫通孔171を貫通し当該容器100の外方に突出した筒状のガス排出部200とを備えている。ガス排出部200は、容器100とは別部材の金属製部材であり、容器100に接合されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する金属製の容器と、
ガス排出弁で閉塞された状態で、前記貫通孔を貫通し当該容器の外方に突出した筒状のガス排出部と、を備え、
前記ガス排出部は、前記容器とは別部材の金属製部材であり、前記容器に接合されている
蓄電素子。
【請求項2】
前記ガス排出部は、前記容器の外方で当該容器に溶接または接着されている
請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記ガス排出部の外周面には、前記貫通孔の軸方向視で前記貫通孔から突出した凸部が形成されている
請求項2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記ガス排出部は、排気ダクトが接続される接続構造を有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記ガス排出弁は、前記ガス排出部の一方の端部に設けられている
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電素子の製造方法であって、
前記貫通孔から前記容器内に電解液を注液した後に、前記貫通孔を閉塞するように前記ガス排出部を配置し、前記容器に接合する
蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体を備える蓄電素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電素子(バッテリ)においては、樹脂製の容器(樹脂ケース)に、樹脂製のガス排出部(ガス排出部材)が設けられたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガス排出部が樹脂製であると、高温のガスに耐えられずに溶融し、ガスが漏れてしまうおそれがある。
【0005】
このため、本発明は、安定したガス排出が可能な蓄電素子などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、貫通孔を有する金属製の容器と、ガス排出弁で閉塞された状態で、前記貫通孔を貫通し当該容器の外方に突出した筒状のガス排出部と、を備え、前記ガス排出部は、前記容器とは別部材の金属製部材であり、前記容器に接合されている。
【0007】
本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、上記蓄電素子の製造方法であって、前記貫通孔から前記容器内に電解液を注液した後に、前記貫通孔を閉塞するように前記ガス排出部を配置し、前記容器に接合する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定したガス排出が可能な蓄電素子などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る蓄電素子を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る電極体の構成を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るガス排出部の概略構成を示す斜視図である。
【
図5】実施の形態に係るガス排出部及び蓋体の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様に係る蓄電素子は、貫通孔を有する金属製の容器と、ガス排出弁で閉塞された状態で、前記貫通孔を貫通し当該容器の外方に突出した筒状のガス排出部と、を備え、前記ガス排出部は、前記容器とは別部材の金属製部材であり、前記容器に接合されている。
【0011】
これによれば、金属製の容器の貫通孔に対して、別部材である筒状のガス排出部が接合されているので、樹脂製のガス排出部に比べても高温ガスに耐えることができる。したがって、ガス漏れを抑制でき、安定したガス排出を実現することができる。
【0012】
前記ガス排出部は、前記容器の外方で当該容器に溶接または接着されていてもよい。
【0013】
これによれば、ガス排出部が容器の外方で容器に溶接または接着されているので、溶接または接着を起因としたゴミが容器内部に侵入してしまうことを抑制できる。したがって、蓄電素子の信頼性を高めることが可能である。
【0014】
前記ガス排出部の外周面には、前記貫通孔の軸方向視で前記貫通孔から突出した凸部が形成されていてもよい。
【0015】
これによれば、ガス排出部の外周面には、軸方向視で貫通孔から突出した凸部が形成されているので、組立時にガス排出部を貫通孔に貫通させると凸部が容器に引っかかる。これにより、ガス排出部を所定の位置に合わせることができる。したがって、ガス排出部を安定した状態で容器に取り付けることができ、安定したガス排出を実現することができる。
【0016】
前記ガス排出部は、排気ダクトが接続される接続構造を有してもよい。
【0017】
これによれば、排気ダクトが接続される接続構造がガス排出部に設けられているので、この接続構造により安定して排気ダクトとガス排出部とを接続することができる。したがって、ガス排出部から排気ダクトまで高温ガスを安定して排出することができる。
【0018】
前記ガス排出弁は、前記ガス排出部の一方の端部に設けられていてもよい。
【0019】
これによれば、ガス排出部の一方の端部にガス排出弁が設けられているので、ガス排出部にガス排出弁を容易に形成することができる。
【0020】
本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、上記蓄電素子の製造方法であって、前記貫通孔から前記容器内に電解液を注液した後に、前記貫通孔を閉塞するように前記ガス排出部を配置し、前記容器に接合する。
【0021】
これによれば、容器とは別部材のガス排出部が容器に接合されているので、容器に内容物を収容したあとに、ガス排出部を容器に接合することが可能である。このため、貫通孔から電解液を容器内に注液した後に、ガス排出部で貫通孔を閉塞することができる。つまり、貫通孔を注液口として兼用させることができるので、注液口専用の孔を形成する手間を削減することができる。
【0022】
(実施の形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(その変形例も含む)に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。各図において、寸法等は厳密に図示したものではない。各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0023】
以下の説明及び図面中において、電極体の巻回軸に沿う方向、電極体が延びる方向、または、容器の短側面の対向方向を、X軸方向と定義する。容器の長側面の対向方向、または、容器の厚み方向を、Y軸方向と定義する。容器の容器本体の底面と蓋体の天面との並び方向、または、上下方向を、Z軸方向と定義する。X軸方向は所定の方向の一例である。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0024】
以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が直交している、とは、当該2つの方向が完全に直交していることを意味するだけでなく、実質的に直交していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0025】
[蓄電素子の全般的な説明]
まず、
図1及び
図2を用いて、実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。
図1は、本実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電素子10を分解して各構成要素を示す分解斜視図である。
【0026】
蓄電素子10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電できる蓄電素子であり、本実施の形態では、略直方体形状を有している。例えば、蓄電素子10は、電力貯蔵用途または電源用途等に使用されるバッテリである。具体的には、蓄電素子10は、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、及び、化石燃料(ガソリン、軽油、液化天然ガス等)自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。蓄電素子10は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0027】
なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子10は、二次電池ではなく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。さらに、蓄電素子10は、固体電解質を用いた例えば全固体リチウム電池であってもよいし、ポリマーリチウム電池であってもよい。また、蓄電素子10は、パウチタイプの蓄電素子であってもよい。
【0028】
図1及び
図2に示すように、蓄電素子10は、容器100と、一対の電極端子300と、一対の外部ガスケット400とを備えている。容器100の内方には、一対の内部ガスケット500と、一対の集電体600と、電極体700と、が収容されている。具体的には、容器100におけるX軸プラス方向の一端部に、正極の各部材(電極端子300、外部ガスケット400、内部ガスケット500及び集電体600等。以下同様)が配置されていて、容器100におけるX軸マイナス方向の他端部に、負極の各部材が配置されている。
【0029】
容器100の内部には、電解液(非水電解質)が封入されているが、図示は省略する。当該電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。上記の構成要素の他、電極体700の側方、上方または下方等に配置されるスペーサ、電極体700等を包み込む絶縁フィルム等が配置されていてもよい。
【0030】
容器100は、X軸方向に長尺かつ扁平な直方体形状の外形を有するケースである。例えば容器100は、Z軸方向の長さに対し、X軸方向の長さが3倍以上となっている。容器100においては、Y軸方向で対向する両端面がそれぞれ長側面130である。各長側面130は、XZ面に平行かつX軸方向に長尺な平面である。容器100においては、X軸方向で対向する両端面がそれぞれ短側面135である。各短側面135は、YZ面に平行かつZ軸方向に長尺な平面である。容器100においてZ軸方向で対向する両端面のうち、Z軸プラス方向の端面が天面140であり、Z軸マイナス方向の端面が底面150である。天面140及び底面150は、XY平面に平行かつX軸方向に長尺な平面である。
【0031】
容器100は、容器本体160と蓋体170とを有しており、容器本体160と蓋体170とが組み付けられることで直方体形状をなしている。容器本体160は、一対の長側面130と、底面150とを有している。蓋体170は、一対の短側面135と、天面140とを有している。
【0032】
具体的には、容器本体160は、X軸方向視で上方が開放された略U字状の板金である。容器本体160は、Y軸方向の両端部に、一対の長側面130をなす平板状の長側壁部を有し、Z軸マイナス方向の端部に、底面150をなす平板状かつ矩形状の底壁部を有している。
【0033】
蓋体170は、Y軸方向視で下方が開放された略U字状の板金である。蓋体170は、X軸方向の両端部に、一対の短側面135をなす平板状の短側壁部を有し、Z軸プラス方向の端部に、天面140をなす平板状かつ矩形状の天壁部を有している。
【0034】
このような構成により、容器100は、電極体700等を容器本体160の内部に収容後、容器本体160と蓋体170とが溶接等によって接合されることにより、内部が密封される構造となっている。容器100(容器本体160及び蓋体170)の材質は金属であれば特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0035】
蓋体170の天壁部には、容器100内方の圧力が過度に上昇した場合に当該圧力を開放するガス排出部200が設けられている。ガス排出部200については後述する。
【0036】
電極端子300は、集電体600を介して、電極体700に電気的に接続される端子(正極端子310及び負極端子320)である。つまり、電極端子300は、電極体700に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体700に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の部材である。電極端子300の材質は特に限定されないが、例えば、電極端子300(正極端子310及び負極端子320)は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅または銅合金等の導電部材で形成されている。電極端子300は、かしめ接合や溶接等によって、集電体600に接続(接合)され、かつ、蓋体170に取り付けられる。
【0037】
本実施の形態では、電極端子300は、端子本体部330と、端子本体部330から突出した軸部340とを有している。端子本体部330は、容器100における端子設置面から外方に突出した部位である。ここで、端子設置面は、蓋体170の天面140におけるX軸方向の両端部領域である。端子本体部330はZ軸方向に沿って端子設置面から容器100の外方に突出している。蓋体170において各端子設置面に対応する箇所には、軸部340が貫通する貫通孔112a、122aが形成されている。軸部340は、端子設置面、外部ガスケット400、内部ガスケット500及び集電体600を貫通した状態でかしめられることで、集電体600に接続(接合)されている。
【0038】
集電体600は、電極体700のX軸方向両側に1つずつ配置され、電極体700と電極端子300とに接続(接合)されて、電極体700と電極端子300とを電気的に接続する導電性を備えた集電部材(正極集電体610及び負極集電体620)である。具体的には、集電体600は、後述する電極体700の接続部720と溶接またはかしめ接合等により接続(接合)される第一接合部630と、上述の通り、電極端子300とかしめ接合または溶接等により接続(接合)されて蓋体170に固定される第二接合部640とを一体的に有している。第一接合部630と第二接合部640とは、それぞれ平板状の部位であり、一枚の板金を折り曲げることにより形成されている。
【0039】
集電体600の材質は特に限定されないが、例えば、正極集電体610は、後述する電極体700の正極基材741と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の導電部材で形成され、負極集電体620は、後述する電極体700の負極基材751と同様、銅または銅合金等の導電部材で形成されている。
【0040】
外部ガスケット400は、容器100の蓋体170と電極端子300との間に配置され、蓋体170と電極端子300との間を絶縁し、かつシールする板状かつ矩形状の絶縁性のシール部材である。内部ガスケット500は、蓋体170と集電体600との間に配置され、蓋体170と集電体600との間を絶縁し、かつシールする板状かつ矩形状の絶縁性のシール部材である。外部ガスケット400及び内部ガスケット500は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE(変性PPEを含む))、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ABS樹脂、若しくは、それらの複合材料等の電気的な絶縁性を有する樹脂等によって形成されている。
【0041】
電極体700は、極板が巻回されて形成された、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)である。電極体700は、X軸方向に延びる長尺な形状であって、X軸方向から見て長円形状を有している。電極体700は、X軸方向の長さが、例えば、300mm以上、具体的には、500mm~1500mm程度まで延びた形状を有している。このため、電極体700は、Z軸方向の長さよりもX軸方向の長さが長くなっている。例えば電極体700は、Z軸方向の長さに対し、X軸方向の長さが3倍以上となっている。電極体700は、本体部710と、本体部710の両端部から突出した一対の接続部720とを有し、上述の通り、接続部720が集電体600に接続(接合)される。
【0042】
具体的には、複数の接続部720は、本体部710におけるX軸方向の両端部の中間部から突出している。例えば、本体部710におけるX軸プラス方向の一端面には、Z軸方向の中間部に正極接続部721が設けられており、本体部710におけるX軸マイナス方向の他端面には、Z軸方向の中間部に負極接続部722が設けられている。このような電極体700の構成について、以下に詳細に説明する。
【0043】
[電極体の構成の説明]
図3は、実施の形態に係る電極体700の構成を示す斜視図である。具体的には、
図3は、電極体700における極板の巻回状態を一部展開した状態での構成を示している。
図3に示すように、電極体700は、正極板740と、負極板750と、セパレータ761、762と、を有している。
【0044】
正極板740は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等からなる長尺帯状の金属箔である正極基材741の表面に、正極活物質層742が形成された極板(電極板)である。負極板750は、銅または銅合金等からなる長尺帯状の金属箔である負極基材751の表面に、負極活物質層752が形成された極板(電極板)である。正極基材741及び負極基材751として、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金など、充放電時の酸化還元反応に対して安定な材料であれば適宜公知の材料を用いることもできる。正極活物質層742に用いられる正極活物質、及び、負極活物質層752に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質及び負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。
【0045】
例えば、正極活物質として、LiMPO4、LiMSiO4、LiMBO3(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、LiMn2O4やLiMn1.5Ni0.5O4等のスピネル型リチウムマンガン酸化物、LiMO2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金(リチウム-ケイ素、リチウム-アルミニウム、リチウム-鉛、リチウム-錫、リチウム-アルミニウム-錫、リチウム-ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、ケイ素酸化物、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li4Ti5O12等)、ポリリン酸化合物、あるいは、一般にコンバージョン負極と呼ばれる、Co3O4やFe2P等の、遷移金属と第14族乃至第16族元素との化合物などが挙げられる。
【0046】
セパレータ761、762は、樹脂からなる微多孔性のシートである。セパレータ761、762の素材としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければ、適宜公知の材料を使用できる。例えば、セパレータ761、762として、有機溶剤に不溶な織布、不織布、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂からなる合成樹脂微多孔膜等を用いることができる。
【0047】
電極体700は、正極板740及び負極板750と、セパレータ761、762とが交互に積層されかつ巻回されることで形成されている。つまり、電極体700は、負極板750と、セパレータ761と、正極板740と、セパレータ762とがこの順に積層され、巻回されることで形成されている。本実施の形態では、電極体700は、正極板740及び負極板750等が、X軸方向に延びる巻回軸Lまわりに巻回されて形成された巻回型の電極体である。巻回軸Lとは、正極板740及び負極板750等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体700の中心を通る、X軸方向に平行な直線である。
【0048】
正極板740における巻回軸方向の一端縁(X軸プラス方向の端縁)には、外方に突出する複数の突出片743が所定の間隔をあけて配置されている。同様に、負極板750における巻回軸方向の他端縁(X軸マイナス方向の端縁)には、それぞれ外方に突出する複数の突出片753が所定の間隔をあけて配置されている。各突出片743、753は、活物質を含む活物質層が形成されておらず基材層が露出した部分(活物質層非形成部)である。
【0049】
正極板740及び負極板750と、セパレータ761、762とが巻回されると、本体部710の一端面では、正極板740の各突出片743同士が重なり合うとともに、本体部710の他端面では、負極板750の各突出片753同士が重なり合う。正極板740の各突出片743同士が重なり合った部分が正極接続部721である。つまり、正極接続部721は、複数の極板(正極板740及び負極板750)のうち、同じ極性の極板(正極板740)の一片(突出片743)が複数積層されることで形成された部位である。
【0050】
同様に、負極板750の各突出片753同士が重なり合った部分が負極接続部722である。つまり、負極接続部722は、複数の極板(正極板740及び負極板750)のうち、同じ極性の極板(負極板750)の一片(突出片753)が複数積層されることで形成された部位である。
【0051】
このように、電極体700は、電極体700の本体を構成する本体部710と、本体部710からX軸方向の両端面のそれぞれから突出した複数の接続部720(正極接続部721及び負極接続部722)と、を有している。
【0052】
本体部710は、正極板740及び負極板750のうちの正極活物質層742及び負極活物質層752が形成(塗工)された部分とセパレータ761、762とが巻回されて形成された長円柱形状の部位(活物質層形成部)である。これにより、本体部710は、Z軸方向両側に一対の湾曲部711を有し、この一対の湾曲部711間に、全体として平坦状の平坦部712を有している。一対の湾曲部711は、Z軸方向で平坦部712を挟む位置に配置されているとも言える。
【0053】
湾曲部711は、X軸方向から見てZ軸方向に突出するように半円の円弧形状に湾曲し、X軸方向に延びた湾曲状の部位であり、容器本体160の底壁部と蓋体170の天壁部とに対向して配置される。つまり、一対の湾曲部711は、X軸方向から見て、容器本体160の底壁部及び蓋体170の天壁部に向けて平坦部712からZ軸方向両側に突出するように湾曲した部位である。
【0054】
平坦部712は、一対の湾曲部711の端部同士を繋ぐ、Y軸方向に向いたXZ平面に平行に広がる矩形状かつ平坦状の部位であり、容器本体160のY軸方向両側の長側壁部に対向して配置される。平坦部712は、電極体700の主要部であり、当該平坦部712では、巻回された複数の極板(正極板740及び負極板750)がY軸方向に積層されている。つまり、平坦部712では、Y軸方向が複数の極板の積層方向である。前述した通り、平坦部712は電極体700の主要部であるので、電極体700の主たる積層方向をY軸方向と定義する。
【0055】
なお、湾曲部711の湾曲形状は、半円の円弧形状には限定されず、楕円形状の一部等でもよく、どのように湾曲していてもよい。平坦部712は、Y軸方向に向く外面が平面であることには限定されず、当該外面が少し凹んでいたり、少し膨らんでいたりしていてもよい。
【0056】
[ガス排出部]
次にガス排出部200について説明する。
図4は、実施の形態に係るガス排出部200の概略構成を示す斜視図である。
図5は、実施の形態に係るガス排出部200及び蓋体170の概略構成を示す断面図である。
図5では、蓄電素子10とは別体の排気ダクト800も図示している。
【0057】
図4及び
図5に示すように、ガス排出部200は、全体が金属によって有底筒状に形成されており、蓋体170の天面140から外方に向けて突出している。ガス排出部200の材質は金属であれば特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましく、容器100と同じ材質であれば接合性の観点から更に好ましい。特に、ガス排出部200の材質は、容器100内で発生しうる高温ガスの温度よりも高い融点の金属材料であればより好ましい。
【0058】
具体的には、ガス排出部200は、Z軸プラス方向の端部を底とする有底円筒状に形成されている。つまり、ガス排出部200の軸方向はZ軸方向に平行な方向となる。ガス排出部200の底は円筒部分の肉厚よりも薄肉なガス排出弁210である。ガス排出部200において軸方向の中間部の外周面には、外方に向けて突出した凸部230が形成されている。凸部230は、ガス排出部200の全周にわたって連続するように円環状(鍔状)に形成されている。ガス排出部200においてZ軸プラス方向の端部の外周面は、排気ダクト800(
図5参照)が接続される接続構造240を有している。接続構造240は、Z軸マイナス方向に向けて徐々に直径を大きくするテーパ部である。排気ダクト800は、例えば少なくとも1つの蓄電素子10を備える蓄電装置に搭載された排気用ダクトである。具体的には、排気ダクト800は、蓄電装置の外装体内に収容されている。排気ダクト800は、一端部が蓄電素子10のガス排出部200に接続され、他端部が外装体に設けられた排気口に繋がれている。
【0059】
蓋体170の天壁部においてX軸方向の中央部には、Z軸方向に貫通した貫通孔171が形成されている。貫通孔171の軸方向視(Z軸方向視)形状は、ガス排出部200が全周にわたって嵌合する形状(本実施の形態の場合には円形状)となっている。この貫通孔171を貫通するようにガス排出部200が蓋体170に取り付けられ接合されている。ここで、
図5に示すようにガス排出部200のZ軸マイナス方向の端部が貫通孔171から突出した状態だけが「貫通」に含まれるのではなく、当該端部が蓋体170の内面に面一となっている状態、ガス排出部200がZ軸方向で貫通孔171の半分以上に重なっている状態も「貫通」に含まれる。
【0060】
取り付け時には、ガス排出部200のZ軸マイナス方向の端部を、容器100の外方から貫通孔171へと挿入して嵌め込む。この際、凸部230が蓋体170の天面140に当たることで、ガス排出部200が位置決めされる。この状態では、凸部230はZ軸方向視で貫通孔171から突出している。凸部230が全周にわたって連続的に蓋体170に溶接または接着されることで、ガス排出部200が容器100に隙間なく一体的に接合される。
【0061】
このような蓄電素子10の製造方法においては、各電極端子300、各外部ガスケット400、各内部ガスケット500、各集電体600及び電極体700を蓋体170に組み付けてから、容器本体160と蓋体170とを組み立ててこれらを溶接する。次いで貫通孔171から容器100内に電解液を注液した後に、貫通孔171を閉塞するようにガス排出部200を配置し、蓋体170に接合する。このように、蓋体170にガス排出部200が取り付けられる前の状態では、貫通孔171を電解液の注液口と使用することができ、専用の注液口を設ける手間を省くことが可能である。
【0062】
蓄電素子10に不具合が生じ、容器100内部に高温ガスが発生すると、ガス排出部200のガス排出弁210が開放され、ガス排出部200から排気ダクト800に高温ガスが放出される。ガス排出部200は金属から形成されているので、高温ガスに晒されても溶融しにくくなっている。
【0063】
[効果の説明]
以上のように、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10によれば、金属製の容器100の貫通孔171に対して、別部材である筒状のガス排出部200が接合されているので、樹脂製のガス排出部に比べても高温ガスに耐えることができる。したがって、ガス漏れを抑制でき、安定したガス排出を実現することができる。
【0064】
ガス排出部200が容器100の外方で容器100に溶接または接着されているので、溶接または接着を起因としたゴミが容器100内部に侵入してしまうことを抑制できる。したがって、蓄電素子10の信頼性を高めることが可能である。
【0065】
ガス排出部200の外周面には、軸方向視(Z軸方向視)で貫通孔171から突出した凸部230が形成されているので、組立時にガス排出部200を貫通孔171に貫通させると凸部230が蓋体170(容器100)に引っかかる。これにより、ガス排出部200を所定の位置に合わせることができる。したがって、ガス排出部200を安定した状態で蓋体170に取り付けることができ、安定したガス排出を実現することができる。
【0066】
排気ダクト800が接続される接続構造240がガス排出部200に設けられているので、この接続構造240により安定して排気ダクト800とガス排出部200とを接続することができる。したがって、ガス排出部200から排気ダクト800まで高温ガスを安定して排出することができる。
【0067】
ガス排出部200の一方の端部にガス排出弁210が設けられているので、ガス排出部200にガス排出弁210を容易に形成することができる。
【0068】
蓋体170とは別部材のガス排出部200が蓋体170に接合されているので、容器100に内容物を収容したあとに、ガス排出部200を蓋体170に接合することが可能である。このため、貫通孔171から電解液を容器100内に注液した後に、ガス排出部200で貫通孔171を閉塞することができる。つまり、貫通孔171を注液口として兼用させることができるので、注液口専用の孔を形成する手間を削減することができる。
【0069】
(その他)
以上、本発明の実施の形態(その変形例も含む。以下同様)に係る蓄電素子について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であり、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0070】
上記実施の形態では、ガス排出部200が蓋体170に溶接または接着されている場合を例示したが、ガス排出部は、溶接または接着以外の接合方法で蓋体に接合されていてもよい。他の接合方法としてはネジ止め、カシメ等が挙げられる。
【0071】
上記実施の形態では、ガス排出部200が容器100の外方で当該容器100に接合されている場合を例示したが、ガス排出部は容器の内方で当該容器に接合されていてもよい。
【0072】
上記実施の形態では、Z軸マイナス方向に向けて徐々に直径を大きくするテーパ部からなる接続構造240を例示したが、接続構造は、排気ダクト800に接続されるのであれば如何なる構造であってもよい。その他の構造としては、ネジ接続構造、嵌合構造、溶接構造、接着構造、溶着構造などが挙げられる。排気ダクトにおいても樹脂製、金属製のいずれであってもよい。
【0073】
上記実施の形態では、ガス排出部200のZ軸プラス方向の端部にガス排出弁210が設けられている場合を例示したが、ガス排出弁のZ軸マイナス方向の端部にガス排出弁が設けられていてもよいし、ガス排出弁のZ軸方向の中間位置にガス排出弁が設けられていてもよい。
【0074】
上記実施の形態では、外周面に凸部230を有したガス排出部200を例示したが、外周面に凸部を有していないガス排出部であってもよい。
【0075】
上記実施の形態では、容器100内に電極体700が1つのみ収容されている場合を例示したが、複数の電極体が容器内に収容されていてもよい。
【0076】
上記実施の形態では、巻回型の電極体700を例示した。しかし、電極体の形状は巻回型に限らず、平板状極板を積層したスタック型や、極板及び/またはセパレータを蛇腹状に折り畳んだ形状(セパレータを蛇腹状に折り畳んで矩形の極板を挟む形態、極板とセパレータとを重ねた後に蛇腹状に折り畳む形態等)などであってもよい。いずれにおいても、電極体の積層方向はY軸方向(所定の方向)であればよい。バイポーラ型の電極体であってもよい。
【0077】
上記実施の形態では、扁平な直方体形状を基準とした蓄電素子10を例示したが、蓄電素子10の形状、つまり容器100の形状は、直方体形状を基準とした形状には限定されず、直方体以外の多角柱形状、長円柱形状、楕円柱形状または円柱形状等を基準とした形状であってもよい。容器においては、基準となる形状の一部に凹部(切欠部)が形成されていてもよい。この場合、凹部内にガス排出部が設けられてもよい。
【0078】
図6は、変形例に係る容器100aを示す平面図である。ここでは、容器100AのX軸プラス方向の端部のみを図示しているが、X軸マイナス方向の端部も同様の形状であってもよいし異なっていてもよい。
図6では、基準となる形状の輪郭を二点鎖線L1で図示している。以降の説明において上記実施の形態と同一の部分においては同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0079】
図6に示すように、容器100AにおけるX軸プラス方向の端部には、上部及び下部に矩形状に切り欠かれた第一凹部101a及び第二凹部102aが形成されている。具体的には、第一凹部101aは、X軸プラス方向を向く第一凹部側面103aと、Z軸プラス方向を向く凹部上面104aとを有している。凹部上面104aには、電極端子300及び外部ガスケット400が配置されている。
【0080】
第二凹部102aは、X軸プラス方向を向く第二凹部側面105aと、Z軸マイナス方向を向く凹部下面106aとを有している。凹部下面106aには、貫通孔(図示省略)が形成されており、この貫通孔を閉塞するようにガス排出部200aが設けられている。
図7は、他の変形例に係る容器100bを示す平面図である。
図7に示すように、ガス排出部200bは第二側面105aに設けられてもよい。
【0081】
上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子に適用できる。
【符号の説明】
【0083】
10 蓄電素子
100、100a、100b 容器
160 容器本体
170 蓋体
171 貫通孔
200、200a、200b ガス排出部
210 ガス排出弁
230 凸部
240 接続構造
300 電極端子
330 端子本体部
340 軸部
600 集電体
610 正極集電体
620 負極集電体
700 電極体
710 本体部
711 湾曲部
712 平坦部
720 接続部
800 排気ダクト
L 巻回軸