(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137037
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】調味料が正確に計量できる料理用秤
(51)【国際特許分類】
G01G 19/40 20060101AFI20230922BHJP
G01G 19/414 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G01G19/40 C
G01G19/414 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043024
(22)【出願日】2022-03-17
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】511018550
【氏名又は名称】國信 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】國信 耕太郎
(57)【要約】
【課題】 料理特有の計量単位を用いながら、正確かつ再現性のある調味料の計量が簡単にできる料理用秤を提供する。
【解決手段】 本願の秤は、調味料の重さを計量する上皿電子天秤でありながら「大さじ」「ひとつまみ」などの料理特有の計量単位に換算した値で表示ができる。重量から計量単位への換算には調味料のかさ密度と計量単位の基準体積を用いる。これによりイメージしやすい計量単位を継承しながら正確で再現性のある計量が簡単にでき、レシピの作者が意図した味を再現できる。
また、利用した調味料名や計量結果等を保存し再利用することで過去におこなった味付けの再現や調整ができる。さらに通信機能を持つ本願の秤は調味料の計量に必要なデータを外部機器から受け取ることができるので、秤での操作が少なく調理の負担にならない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量を計量する上皿電子天秤であって、各種調味料名と料理で用いられる各種計量単位名と、「前記調味料のかさ密度と前記計量単位の基準体積」または「前記調味料の重量を前記計量単位に換算するための係数」を記載したデータベース機能と、前記データベースに記載の調味料と計量単位から任意の調味料と計量単位を選択する機能と、前記選択した調味料の計量した重量を前記選択した計量単位での値に換算する機能と、前記選択した調味料名と前記選択した計量単位名と前記換算で得られた値を表示する機能を備えることを特徴とする料理用の秤である。
【請求項2】
請求項1に記載の料理用の秤であって、調理する料理の量を人数分量として設定できる機能と、調味料の計量が終了した時に計量に必要なデータである「調味料名」、「計量単位名」、「人数分量」と、計量結果である「計量単位に換算された調味料の量」と、「計量した日時など」を調味料ごとにまとめ秤に保存する機能と、前記同一日時の保存されたデータの一部もしくはすべてを調味料ごとに表示する機能と、その際に保存された調味料の量を新たに設定された人数分量に適する量に計算し目安量として表示する機能を備えることを特徴とする料理用の秤である。
【請求項3】
重量を計量する上皿電子天秤であって、調味料を計量するために必要なデータを外部機器から受信する通信機能と、受信した前記データを保存する機能と、前記保存されたデータのすべてまたは一部を表示する機能と、表示された調味料を計量し得られた重量を表示された計量単位の値に換算する機能と、前記換算で得られた調味料の量を表示する機能を備えることを特徴とする料理用の秤である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、料理の材料や調味料などを計量するために用いる料理用の秤に関する。
【背景技術】
【0002】
料理において調味料が果たす役割は大きく、量を間違えると料理を台無しにする可能性がある。また、調味料を上手に活用できれば、同じ料理であっても和風や中華風、エスニック風の味など多彩な味付けを楽しむことができる。
このように重要な役割を持つ調味料であるが、調味料の計量単位は重量ではなく、大さじ、小さじ、カップ、小々やひとつまみなどの独特な体積の計量単位がもちいられる。
これらの計量単位は身近にあるものを用いた計量単位なので量をイメージしやすく、覚えやすいので利用するメリットは大きい。
【0003】
しかし、前述の調味料の計量単位は基準が明確なものとあいまいなものに分かれる。明確なものは大さじや小さじなどがあり、その定義(基準量)は大さじが15ml、小さじが5mlなどである。あいまいなものは小々やひとつまみ、ひとつかみ、ひとにぎりなどである。これらの定義は指でつまむ量や手で握った量なので体積であるが、指や手の大きさは個人差が大きく、基準量もないので誰が計量しても同じ量という再現性がない。
【0004】
基準となる体積が明確な大さじや小さじでは、15mlや5mlの容器が計量に利用される。加えて中さじ10mlや茶さじ2.5mlの計量容器も市販されている。
その他に調味料ではないが水や牛乳の体積を表示できる秤として、非特許文献1に示した株式会社タニタのデジタルクッキングスケールがある。水や牛乳は比重がほぼ1なので重量をそのまま体積の単位mlで示したものである。しかし大さじや小さじなどの料理特有の計量単位による表示はできない。
通信機能を備える上皿電子天秤として、非特許文献2に示した株式会社エー・アンド・デイ社のAD4212がある。秤と接続したコンピュータに計測値を送信したり、コンピュータからの操作コマンドを受信したりできるが、コンピュータから受信したデータを保存したり、表示したりする機能はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社タニタ デジタルクッキングスケールKD-320/KD-321取り扱い説明書 P7
【非特許文献2】株式会社エー・アンド・デイ AD4212A/B取り扱い説明書 P63から65ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
料理本だけでなくインターネット上に数多くの料理のレシピや味付けが公開されているが、これらの作者が意図した味付けに仕上げるには指定された調味料の量をなるべく正確に計量する必要がある。
大人数分の料理を作る場合は調味料の量の少しの増減は味に大きな影響を与えないが、少人数分の料理では少しの増減も影響が大きくなるためより正確にはかる必要がある。
【0007】
調味料の計量は計量容器を用い体積をはかるため、調味料が粉体の場合は計量容器に詰める力によって量が変わる。また、単位量未満の半端な量は正確に計量することが難しい。さらにゴマ油などはべたつくため計量容器内に残ってしまい正確に計量できない。
小々やひとつまみ、ひとつかみ、ひとにぎりなどの計量単位では、実際に個人差の大きな指や手を使い体積をはかるため正確な量の計量は期待できない。
このように現状の計量方法では調味料を正確かつ誰が計っても同じ値が得られる再現性のある計量ができないので、レシピから意図した味の再現は難しい。
【0008】
調理者が過去に作った料理の味の再現を行うには、調味料の量の記録が必要であるが、正確な計量ができないので正確な記録も難しい。
また、料理になれた人や自慢の料理では調味料を目分量で使っている場合が多いので味付けを人に伝えるのが難しい。目分量を再現性のある正確な量に置き換えることができれば伝えやすくなる。
【0009】
料理用の秤にはなるべく簡単な操作が求められるが、様々な調味料を様々な計量単位で計量するには、多様な情報の表示と操作が必要になる。
本発明は、上記課題の少なくともひとつを解決するためになされたものであって、調味料の量を料理特有の計量単位で正確に計量でき、かつ誰が計量しても同じになる再現性のある計量が簡単にできることと、計量内容を正確に記録でき、かつ調理の邪魔にならない簡単な操作で利用できる料理用秤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載の料理用秤は、重量を計量する上皿電子天秤であって、各種調味料名と料理で用いられる各種計量単位名と、「前記調味料のかさ密度と前記計量単位の基準体積」または「前記調味料の重量を前記計量単位に換算するための係数」を記載したデータベース機能と、前記データベースに記載の調味料と計量単位から任意の調味料と計量単位を選択する機能と、前記選択した調味料の計量した重量を前記選択した計量単位での値に換算する機能と、前記選択した調味料名と前記選択した計量単位名と前記換算で得られた値を表示する機能を備えることを特徴とするものである。
【0011】
重量を計量する上皿電子天秤は風袋引き機能を備える一般的な電子天秤である。
かさ密度とは粒子間の空隙も含めた体積を用い求めた密度である。粉体の調味料はすりきり一杯などと称されることから正確には、ゆるみかさ密度である。
料理で用いられる計量単位とは、カップ200ml、カップ180ml、大さじ、小さじ、ひとにぎり、ひとつかみ、ひとかけ、ひとつまみ、小々などである。これらの基準体積とは、例えば大さじの場合は、大さじ1の体積は15mlなので基準体積は15mlとなる。調味料の体積を基準体積で割れば計量単位での値が得られる。
【0012】
ひとつまみや小々のように基準となる体積があいまいなものは、何らかの根拠のある数値を暫定値とする。例えば食塩では、ひとつまみは0.5g~0.8gと言われている。食塩のかさ密度1.29から類推するとひとつまみの体積は0.38から0.62mlで、平均値は0.5mlになる。この0.5mlをひとつまみの暫定の基準体積として用いるなどである。
データベースから任意の調味料と計量単位を選択する機能には、物理的なボタンによる選択以外に音声による選択も含む。
【0013】
計量した調味料の重量を前記選択した計量単位の値に換算する機能とは、計量した調味料の重量にその調味料のかさ密度で割って体積を求め、得られた体積を計量単位の基準量の体積で割り、計量単位での値を得る機能である。または、あらかじめ調味料のかさ密度に計量単位の基準体積をかけ得られた数値の逆数を係数としてデータベースに記載し、この係数を計量した重量にかけて換算することも同じ換算する機能である。
【0014】
請求項2に係る料理用の秤は、請求項1に記載の料理用の秤であって、調理する料理の量を人数分量として設定できる機能と、調味料の計量が終了した時に計量に必要なデータである「調味料名」、「計量単位名」、「人数分量」と、計量結果である「計量単位に換算された調味料の量」と、「計量した日時など」を調味料ごとにまとめ秤に保存する機能と、前記同一日時の保存されたデータの一部もしくはすべてを調味料ごとに表示する機能と、その際に保存された調味料の量を新たに設定された人数分量に適する量に計算し目安量として表示する機能を備えることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2の秤は、調味料を計量したさいに、計量に必要なデータと計量結果、計量日時などを調味料ごとにまとめて保存し、必要に応じこの保存されたデータを利用して料理の分量が異なっても味の再現や調整ができる秤である。
【0016】
味の再現や調整には調味料の量とともに作った料理の量の記録が必要になる。このため請求項2の秤は料理の量を示す人数分量の設定と人数分量を保存する機能を備える。なお、人数分量は小数を設定可能で食材が少し多い場合や、少し少ない場合にも対応できる。
秤に保存されたデータは、秤の電源が切れた後も秤に保持される。
【0017】
保存されたデータを利用して味の再現や調整などをする際に、保存された調味料の量と保存された人数分量及び新たに設定された人数分量を用い、新たに設定された人数分量に適する調味料の量が目安量として算出される。この目安量は計量する調味料名や計量単位名、新たに設定された人数分量とともに表示されるので、目安量を参考に味の再現や調整を簡単に行うことができる。
【0018】
請求項3に係る料理用の秤は、重量を計量する上皿電子天秤であって、調味料を計量するために必要なデータを外部機器から受信する通信機能と、受信した前記データを保存する機能と、前記保存されたデータのすべてまたは一部を表示する機能と、表示された調味料を計量し得られた重量を表示された計量単位の値に換算する機能と、前記換算で得られた調味料の量を表示する機能を備えることを特徴とするものである。
【0019】
請求項3の秤は、調味料の計量に必要なデータを事前に外部機器のアプリで作成し、このデータを秤が受信して利用することで秤における操作を削減したものである。
調味料を計量するために必要なデータとは、調味料名および前記調味料の量を示すための計量単位名と、「前記調味料のかさ密度および前記計量単位の基準体積」または「前記調味料の重量を前記計量単位に換算するための係数」と、必要に応じ料理の量を示す人数分量、前記調味料の計量の目安量、味付け名や料理名などである。
【0020】
利用する外部機器は、計量に必要なデータ等を作成するアプリが利用でき、多くの情報を表示できる画面と通信機能を備えるスマートフォンやタブレット、コンピュータなどである。
外部機器のアプリで作成する計量に必要なデータは、計量する調味料名と、そのかさ密度および計量単位名とその基準体積の量、または前記調味料の重量を前記計量単位に換算するための係数である。また必要に応じ人数分量や調味料の目安量、味付け名などである。
またデータを納めたファイル名なども外部機器で作成する。
通信機能にはBluetooth、無線LANに加え、USB端子や外部メモリーなどの媒体を介して行うデータの伝達方法も含む。
【発明の効果】
【0021】
調味料の計量単位は計量容器や指などを用いた体積であるため、感覚的で個人差があり正確とは言えなかった。さらにこれらの計量単位の一部には基準となる体積が決められていないためレシピの作者が意図した味の再現は不可能に近かった。
本願では、料理の計量単位のなかで基準となる体積が明確でないものは、暫定値を基準として用いる。また計量に電子天秤を用いることで、「大さじ」「ひとつまみ」などのイメージしやすい計量単位でありながら、調味料の再現性のある正確な計量が簡単にできる。このため、作者が意図したレシピの味の再現や調整がしやすくなる。
【0022】
さらに本願の秤は電子天秤なので、計量結果と計量に必要なデータなども電子データである。このため保存、再計算やデータの転送ができ再利用しやすくなる。
電子データの保存と再計算ができる特徴を利用した秤が、請求項2の秤である。
例えば電子データの保存では、目分量で計量していた調味料を請求項2の秤を利用すると正確な量を料理特有の計量単位で記録(保存)できる。この記録を参考にすると家庭の味や自慢のレシピを教えやすくなる。また、レシピどうしの味付けの比較や味付けを参考にしやすくなる。
【0023】
電子データの再計算では、保存データの再利用時に保存された人数分量と調味料の計量結果を利用して、新たに設定した人数分量に適した調味料の量を算出できる。この算出値を目安量として表示することで味の再現や調整が簡単になる。また、食材の量がレシピと異なる場合にも調味料の増減が人数分量の設定で簡単にできる。
【0024】
電子データの転送ができる特徴を利用した秤が、請求項3の秤である。この秤は外部機器のアプリで作った計量に必要なデータからなるファイルを受信し秤内に保存できる。このため秤では計量に必要なデータやファイルを作成しないので、そのために必要な情報の表示や操作が不要になる。また、調味料の計量時にはそのデータの表示に従って調味料を計量、決定ボタンを押す簡単な操作だけなので調理の負担にならない。
調味料の目安量を表示できる本願の秤は味付けのガイドとして利用できる。加えて外部機器が備えるインターネット機能を利用することで簡単に多彩な味付けを取り入れることが可能になり食生活を豊かにすることができる。
【0025】
さらに、調味料の計量に必要なデータだけでなく、玉ねぎを炒めるなどの他の調理工程の情報を加えると秤にレシピの役割を持たせることも可能になるなど、本発明は料理用の秤の役割を大きく変える可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図13】実施例3の外部機器アプリの機能ブロック図
【
図14】実施例3の外部機器アプリの全体のフロー図
【
図15】実施例3の外部機器アプリの各モードのフロー図
【
図16】実施例3のアプリ調味料計量モードの外部機器と秤の表示例
【
図17】実施例3のアプリ味付けモードの外部機器の表示例
【
図18】実施例3のアプリ味付けモードの秤の表示例
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る実施例の秤は、食材などの重量をはかる上皿電子天秤を基にしたもので、料理で使われる計量単位(「大さじ」「小さじ」など)で調味料の量が表示できる。このため、実際に「大さじ」「小さじ」などの計量容器を使う必要がなく、計量容器に粘着するゴマ油なども正確に計量できる。また、重量から任意の計量単位に換算するので、従来の計量容器では不可能だった誰が量っても再現性のある正確な計量が簡単にできる。
【0028】
料理特有の計量単位(大さじ、小さじ、ひとつまみなど)は体積である。上皿電子天秤で計量した調味料の重量を体積の計量単位に換算するには、調味料のかさ密度と計量単位の基準となる体積を用いる。
例えば砂糖を計量単位の「大さじ」で示すには、砂糖の重量を砂糖のかさ密度(0.6g/ml)を用い体積に換算し、「大さじ」の基準となる体積(15ml)を用い計量単位に換算する。
【0029】
ひとつまみや小々のように基準となる体積があいまいなものは、何らかの根拠のある暫定値が必要である。例えば食塩では、ひとつまみは0.5g~0.8gと言われている。食塩のかさ密度1.29から類推するとひとつまみの体積は0.38から0.62mlで、平均値は0.5mlになる。本実施例ではこのように一般的に言われている平均値を暫定的な基準体積として用いる。
【0030】
また、調味料の重量を体積の計量単位に換算する場合に係数を用いる方法がある。例えば砂糖の大さじ換算は次の式で求められる。(砂糖の重量÷かさ密度0.6)÷基準の体積15=砂糖の重量×0.11である。よって、砂糖の重量に係数0.11をかければよい。このように調味料のかさ密度と計量単位の基準になる体積を組み合わせた計算であらかじめ係数を求めておき秤のデータベースに記載しておく方法である。
本実施例では発明をわかりやすく説明するために、調味料のかさ密度と計量単位の基準の体積を用い説明するが、係数を用いることを否定するわけではない。
【実施例0031】
(実施例1)
実施例1は請求項1に対応する実施例である。
図1(a)に実施例1の秤の外観を示した。秤の本体1の上面に計量物を乗せるための上皿2を有し、秤の前部上面には調味料名や計量結果などを表示する表示部と秤を操作する操作部を備える。
図1(a)の点線で囲まれた部分を拡大したのが
図1(b)の表示部周辺図である。表示部5には計量結果や調味料名、計量の単位、モード名などの情報が表示される。操作部は電源の入り切りボタン4や風袋引きボタン10に加えて、モード選択ボタン6、選択ボタン7、単位変更ボタン8、決定ボタン9を備える。
【0032】
実施例1の秤の装置構成図を
図2に示した。秤の装置構成のROMにはモードを実行するためのプログラムやデータベースなどが収納されており、秤の電源が切れても保持される。RAMは実行するプログラムや必要なデータなどを一時的に収納する。重量計量部では重量が電気信号に変換されCPUに送られる。CPUでは、操作部で入力された情報とプログラムに従い必要に応じROMに収納されているデータベースを参照して重量の電気信号が処理される。処理された信号はプログラムに制御されてディスプレイに送られ表示される装置構成である。
【0033】
実施例1の秤の機能ブロック図を
図3に示した。実施例1の秤は一般的な料理用の上皿電子天秤と同様に物の重量を計量しグラム単位で表示ができる「重量モード」と調味料を計量し料理の計量単位で表示する「調味料計量モード」を備える。
「調味料計量モード」が選択されると条件選択機能で調味料、計量単位を選択する。データベースに記載されている選択された調味料のかさ密度と選択された計量単位の基準体積を用い、測定された調味料の重量が選択された計量単位の値に換算される。この計量単位に換算された調味料の量と調味料名、計量単位名が表示される。
【0034】
図4は、実施例1の秤のフロー図である。「重量モード」は一般的な秤と同様に必要に応じ風袋を引いて重量を計量するモードである。「調味料計量モード」は「調味料の選択」と「調味料の計量」の二つの流れからなる。「調味料の選択」では、計量する調味料と計量単位を選択する流れである。
図1(b)の表示部に調味料名が表示され、選択ボタンを押すと画面の調味料名が順次変わる。目的の調味料名が表示されると決定ボタンを押す。次に計量単位名も選択ボタンを押すと順次表示されるので同様に操作し決定する。
【0035】
「調味料の計量」の流れでは、調味料を入れる容器(風袋)を秤にのせ
図1(b)の表示部周辺図に記した風袋引きボタンを押し表示をゼロにする。秤の値の表示が望んだ量に達するように調味料を容器に加える。この時の秤の表示は重量ではなく、選択した計量単位で調味料の量が表示される。
図1(b)の表示部周辺図の表示の例では砂糖が大さじで0.8杯分あることがわかる。目標の量になれば決定ボタンを押すことで、次の調味料の選択が可能になる。
【0036】
(実施例2)
実施例2は請求項2に対応する実施例である。実施例2の秤は実施例1の秤の機能に加え人数分量の設定機能と計量内容を保存する機能と保存した計量内容を再利用する機能を備える。
保存される計量内容は、計量に必要なデータ(調味料名、計量単位名、人数分量)と計量結果(計量単位に換算された調味料の量)及び計量の日時である。なお、調味料を選択しない「重量モード」の計量結果は保存しない。
【0037】
人数分量とは料理の量を示す人数分の意味である。実施例2では計量単位に換算された調味料の量と料理の分量を示す人数分量も一緒に保存する。味の再現などで保存した計量内容を再利用する際に、料理の量(人数分量)が変わったり食材が増減したりしても、保存された人数分量と新たに設定された人数分量を利用して調味料の量を再計算し目安として表示できる。この目安を参考に計量すれば同じ味付けを再現しやすくなる。
このように計量した内容をデータとして秤に保存し再利用できるので、必要な時に味の再現や調整が簡単にできる。
【0038】
実施例2の外観と表示部周辺は実施例1の
図1と同じである。人数分量の設定は
図1(b)に示した表示部周辺の選択ボタン7で行う。秤の装置構成では、
図2に示した実施例1の秤の装置構成に加えて、計量した日時もファイル名やデータの識別に利用するので時刻を刻むクロック機能(リアルタイムクロック機能)を備える。
図5に実施例2の秤の機能ブロック図を記した。計量記録の保存機能は計量に必要なデータ(計量した日時、調味料名、計量単位名、人数分量など)と計量結果(計量単位に換算された調味料の量)を調味料ごとに一緒に保存する。保存された計量記録のデータは「記録利用モード」で表示し利用することができる。
また、換算機能で計量した重量を選択した計量単位に換算することに加え、保存された調味料の量を新たに設定した人数分量に適した目安量に換算できる。その他は実施例1と同じである。
【0039】
図6は、実施例2の秤のフロー図である。実施例1に「記録利用モード」が新たに加わっている。また、「調味料計量モード」は実施例1の「調味料計量モード」に人数分量の設定(入力)が加わっているほかは実施例1と同じである。
実施例2の「記録利用モード」の秤の表示例について
図7を用いて説明する。最初に保存ファイル名が表示され(
図7(a))、その中から再利用するファイルを選択する(
図7(b))と、必要な調味料の一覧が表示される(
図7(c))。調味料の一覧を確認し良ければ決定ボタンを押す。次に人数の入力が求められるので表示部周辺図(
図1(b))に記載した選択ボタン7を用い数値を入力する。左側の選択ボタンを押すと整数の1桁目の数字が増え、右側の選択ボタンで小数点以下一桁目の数字が増える。数字は0から9を循環する。最高は9.9である。目標の人数分量で決定ボタンを押す(
図7(d))。
【0040】
次に調味料名、計量単位名、人数分量が表示され、前回の調味料の量が新たに設定された人数分量に適した量に再計算され目安として表示される(
図7(e))。後は実施例1と同じように調味料の計量が行われる。一つの調味料の計量が終わると計量内容が調味料ごとに一時的に保存される。一覧で示された調味料すべてが計量されると、新たに追加する調味料の有無が問われる。秤の利用の終了時には一時的に保存されたデータが一つのファイルにまとめられ、計量した日時をファイル名として保存される。
【0041】
(実施例3)
実施例3は請求項3に対応する実施例である。
実施例3の秤は通信機能を備える秤でスマホやタブレット、パソコンなどの外部機器と通信を行う。外部機器で作成した計量に必要なデータを秤が受信し利用することができる。計量に必要なデータとは調味料名とそのかさ密度、計量単位名とその基準体積、また必要に応じ人数分量、調味料の目安量と保存ファイル名や料理名、味付け名などである。
【0042】
実施例3の秤では計量に必要なデータを作成しないため、秤での大きな表示画面や煩雑な操作が不要になる。また、調味料の計量は秤に表示された調味料名と目安量を参考に行い、決定ボタンを押すだけなので調理の妨げにならない。
【0043】
実施例3の秤の外観と表示部周辺図を
図8に示した。操作ボタンは電源の入り切りボタン4aや風袋の重量を引く風袋引きボタン10aに加えて、モード選択ボタン6aと決定ボタン9aを備える。計量に必要なデータは外部機器で作成するために実施例1よりも操作ボタンが少ない。
実施例3の秤の装置構成では、
図9に示すように実施例1の秤の装置構成にBluetoothやLANなどの通信機能が加わっている。通信機能にはUSB端子や外部メモリーなどを経由して行うものも含む。
【0044】
実施例3の秤の機能ブロック図を
図10に示した。実施例3の秤は外部機器で作成した計量に必要なデータ(ファイル)を受信する通信機能と、受信したデータ(ファイル)を保存するデータ保存機能を備える。また、実施例1と異なり実施例3の秤にはデータベース機能と条件選択機能を備えないが、これらの機能は
図13の外部機器アプリの機能ブロック図に示したように外部機器のアプリが備える。
【0045】
実施例3の秤のフロー図を
図11に示した。実施例3の秤は「重量モード」と「アプリデータ利用モード」を備える。「重量モード」は実施例1と同じなので説明を省略する。
実施例3の秤で「アプリデータ利用モード」を選択すると、計量に必要なデータを作成し保存している外部機器と通信が可能になる。外部機器から受信した計量に必要なデータは秤に保存され、外部機器との接続が解除される。調味料の計量時には、秤の表示部に調味料ごとに調味料名や計量単位、調味料の目安量、人数分量などが表示される。利用者はこの表示を参考に調味料を計量する。利用者が決定ボタンを押すと、次に計量する調味料名等が表示される。
【0046】
外部機器としてスマホを利用した例を
図12に示した。スマホを外部機器として利用すると、秤に比べ表示できる情報量が増えるので、アプリを利用した調味料や計量単位の選択がしやすくなる。また、スマホなどではタッチパネルを利用できるため、状況に応じた機能を持つボタンを自由に配置できるので操作性が向上する。さらにインターネットを利用した調味料、味付けなどの情報の更新や追加も可能になる。
【0047】
外部機器アプリの機能ブロック図を
図13に示した。アプリは外部機器において秤で計量するために必要なデータを作成するものである。データの作成にはアプリのデータベース機能を利用しながら行う。データベースには様々な調味料名、調味料のかさ密度、様々な計量単位名、計量単位の基準体積、料理名や味付け名、調味料の目安量、人数分量などが記載されている。調味料ごとに作成された「計量に必要なデータ」はまとめて一つのファイルとして保存され秤との通信がつながると送信される。
【0048】
外部機器アプリの全体のフロー図を
図14に、各モードのフロー図を
図15に示した。「アプリ調味料計量モード」は、秤で調味料を計量するために必要なデータを作成するもので、調味料名、調味料のかさ密度、計量単位名、計量単位の基準体積をデータベースから選択し、人数分量と目安量を設定したものである。
【0049】
「アプリ調味料計量モード」の外部機器の表示例を
図16の(a)から(f)に示した。また外部機器で作成したデータ(ファイル)を受信した秤の表示を
図16の(g)から(k)に示した。外部機器で「アプリ調味料計量モード」を選択すると、人数分量を入力(
図16(a))し決定ボタンを押す。調味料の一覧が表示される(
図16(b))ので必要な調味料を選択し決定ボタンを押す。選択した調味料名と計量単位の一覧が表示される(
図16(c))ので選択し決定ボタンを押す。次に人数分量(料理の量)を考慮した調味料の目安量を入力する(
図16(d))、次の調味料を選択するかに答え(
図16(e))、酒を選択した(
図16(f))。以後この繰り返しで計量のためのデータを作成する。
【0050】
秤において「アプリデータ利用モード」が選択されると秤と外部機器が通信で接続される(
図16(g))。外部機器の「アプリ調味料計量モード」で作成したデータ(ファイル)を秤が受信し保存すると、秤の表示部分に通信終了とデータの保存、計量開始が表示される(
図16(h))。次に外部機器で作成したデータに基づき調味料名と計量単位、調味料の目安量、人数分量が表示されるのでこれらを参考に利用者は調味料を計量する。砂糖の計量が終わり(
図16(i)(j))決定ボタンを押すと次の調味料の酒が表示される(
図16(k))。
【0051】
「アプリ味付けモード」の外部機器アプリの各モードのフロー図を
図15に、外部機器の表示例を
図17に示した。
「アプリ味付けモード」が選択されると、料理名が表示される(
図17(a))。料理を選択し決定ボタンを押すと、味付けが表示される(
図17(b))。味付けを選択し決定ボタンを押すと必要な調味料名が表示される(
図17(c))。次に人数分量を入力する(
図17(d))と人数分量に適した調味料の目安量が計算され表示される(
図17(e))。この目安量を変更することも可能である。決定ボタンを押すと同様に次の調味料の目安量が表示される(
図17(f))。さらに別の調味料を付け加えることもできる(
図17(g))。
【0052】
「アプリ味付けモード」の秤の表示例を
図18に示した。
秤において「アプリデータ利用モード」が選択されると秤と外部機器が通信で接続される(
図18(a))。外部機器の「アプリ味付けモード」で作成したデータ(ファイル)を秤が受信し保存すると、秤の表示部分に通信終了とデータの保存、計量開始が表示される(
図18(b))。確認のために作成した料理名と味付け名が表示される(
図18(c))。決定ボタンを押すと保存されたデータに基づき調味料名と計量単位、調味料の目安量、人数分量が表示されるのでこれらを参考に利用者は調味料を計量する。一つの調味料の計量が終わるごとに決定ボタンを押すと次の調味料が表示される(
図18(d)から(g))。
【0053】
このように、秤と通信できる外部機器の「アプリ味付けモード」を利用すると、実施例4の秤は単なる計量器具ではなく味付けのガイドの役割を果たす。
さらに実施例4に調味料の計量に加え、食材の計量と「玉ねぎを炒める」などの調理工程を表示したり音声案内したりできるようにするとレシピの役割を秤にもたらすことも可能になるなど、秤の役割を大きく変える可能性がある。