IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

特開2023-137042一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、及びエポキシ樹脂組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137042
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、及びエポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
C08G59/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043035
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佃 真之介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真典
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 賢三
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA05
4J036AB01
4J036AB07
4J036AD08
4J036AF06
4J036DA10
4J036DC18
4J036HA07
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA07
4J036JA11
4J036JA15
(57)【要約】
【課題】保存安定性に優れ、BisF型エポキシ樹脂を硬化させた際に、耐熱性、破断伸度、及び接着性に優れた硬化物が得られる一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を得る。
【解決手段】(A)第一のエポキシ樹脂と、(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤と、を含有し、条件(1)、(2)を満たし、25℃で液状の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤。
<条件(1)>
前記(A)第一のエポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を必須成分とし、さらに、下記(i)~(iii)からなる群より選ばれる、少なくともいずれか1種類以上の樹脂を含む。
(i)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(ii)フェノールノボラック型エポキシ樹脂
(iii)ビスフェノールAD型エポキシ樹脂
<条件(2)>
前記(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とアミン化合物との反応物であるアミンアダクトをコアに含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第一のエポキシ樹脂と、
(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤と、
を、含有し、
下記の条件(1)、及び条件(2)を満たし、
25℃で液状の、
一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤。
<条件(1)>
前記(A)第一のエポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を必須成分とし、さらに、下記(i)~(iii)からなる群より選ばれる、少なくともいずれか1種類以上の樹脂を含む。
(i)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(ii)フェノールノボラック型エポキシ樹脂
(iii)ビスフェノールAD型エポキシ樹脂
<条件(2)>
前記(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とアミン化合物との反応物であるアミンアダクトをコアに含む。
【請求項2】
前記(A)第一のエポキシ樹脂は、
ビスフェノールF型エポキシ樹脂を、50質量%以上90質量%以下含む、
請求項1に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤。
【請求項3】
前記(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤のコアの円形度が0.93以上である、
請求項1又は2に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤と、
第二のエポキシ樹脂と、
を、含み、
前記第二のエポキシ樹脂は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を含有する、
エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
ペースト状組成物。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
フィルム状組成物。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、接着剤。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
接合用ペースト。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
接合用フィルム。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
導電性材料。
【請求項11】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
異方導電性材料。
【請求項12】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
異方導電性フィルム。
【請求項13】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
絶縁性材料。
【請求項14】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
封止材料。
【請求項15】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
コーティング用材料。
【請求項16】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
塗料組成物。
【請求項17】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
プリプレグ。
【請求項18】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
熱伝導性材料。
【請求項19】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
燃料電池用セパレータ材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、及びエポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂組成物は、電子機器、電気電子部品の絶縁材料、封止材料、接着剤、及び導電性材料等の、幅広い用途に利用されている。
特に電子機器は、高機能化、小型化、薄型化に伴い、半導体チップの小型集積化、回路の高密度化と共に、生産性の大幅な改善や、電子機器のモバイル用途における可搬性、信頼性の向上等が求められている。
【0003】
エポキシ樹脂組成物を硬化させる方法としては、使用時にエポキシ樹脂と硬化剤とを混合して硬化させる方法があり、これは二成分系エポキシ樹脂組成物の硬化方法である。前記二液性エポキシ樹脂組成物の硬化方法においては、エポキシ樹脂と硬化剤とを別々に保管し、使用時には両者を計量した上で迅速かつ均一に混合する必要があり、取扱いが煩雑であるという問題点がある。さらに、エポキシ樹脂と硬化剤とを一旦混合してしまうと、その後の可使時間が限定されるため、両者を予め大量に混合しておくことができないという問題点もある。
【0004】
上述したような二液性エポキシ樹脂組成物の問題点を解決する目的で、一液性エポキシ樹脂組成物が提案されており、例えば、潜在性硬化剤をエポキシ樹脂に配合した、一液性エポキシ樹脂組成物が提案されている。
しかしながら、前記潜在性硬化剤のうち、保存安定性に優れているものは、硬化温度が高く、一方、低温で硬化するものは保存安定性が低い傾向にある。従って、低温硬化性と保存安定性とを高いレベルで兼ね備えたエポキシ樹脂組成物を与える硬化剤が強く求められている。
このような要求に対し、アミン系硬化剤のコアを特定のシェルで被覆した所謂マイクロカプセル型の硬化剤が提案されており、低温硬化性と保存安定性の両立に関して一定の成果を上げている。例えば、特許文献1には、特定のアミン化合物よりなるアミン系硬化剤をコアとし、前記アミン化合物とエポキシ樹脂の反応生成物をシェルとしてなる硬化剤と、エポキシ樹脂とを含む、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤が開示されている。
【0005】
近年、特に電子機器分野においては、通信情報量の増加による発熱に対し耐熱性の高い材料を使用すること、及び衝撃に対する耐性を改善すること、を目的として、耐熱性を損なわずに、伸度を一層向上させた、エポキシ樹脂組成物が強く求められている。
また、ビスフェノールF型(BisF型)エポキシ樹脂は、例えば汎用に用いられるビスフェノールA型(BisA型)エポキシ樹脂と比較して低粘度であることから、種々用途の主剤として用いられている。
しかしながら、特にBisF型エポキシ樹脂の硬化にあたり、優れた物性を発現させる硬化剤は、未だ提案されていない。
【0006】
例えば特許文献1に報告された一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤は、保存安定性と硬化性のバランスに優れるといった記述がなされているが、BisF型エポキシ樹脂と配合した際の靭性や耐熱性に関する記述は無い。
また、特許文献2、3には、種々の液状エポキシ樹脂を含む硬化剤について接着性や保存安定性に関して記載されているが、BisF型エポキシ樹脂に配合した際の硬化物物性に関する記述は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5258018号公報
【特許文献2】特開2020-55993公報
【特許文献3】特許第6040935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来提案されているエポキシ樹脂用の硬化剤に関する技術は、BisF型エポキシ樹脂に配合した際の物性に対する検討が不十分であるという問題点を有している。
【0009】
そこで本発明においては、十分な保存安定性を有し、BisF型エポキシ樹脂を硬化させた際に、耐熱性、破断伸度、及び接着性に優れる硬化物が得られる、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の硬化剤と液状エポキシ樹脂を組み合わせた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤が、前記従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
〔1〕
(A)第一のエポキシ樹脂と、
(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤と、
を、含有し、
下記の条件(1)、及び条件(2)を満たし、
25℃で液状の、
一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤。
<条件(1)>
前記(A)第一のエポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を必須成分とし、さらに、下記(i)~(iii)からなる群より選ばれる、少なくともいずれか1種類以上の樹脂を含む。
(i)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(ii)フェノールノボラック型エポキシ樹脂
(iii)ビスフェノールAD型エポキシ樹脂
<条件(2)>
前記(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とアミン化合物との反応物であるアミンアダクトをコアに含む。
〔2〕
前記(A)第一のエポキシ樹脂は、
ビスフェノールF型エポキシ樹脂を、50質量%以上90質量%以下含む、
前記〔1〕に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤。
〔3〕
前記(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤のコアの円形度が0.93以上である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤。
〔4〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤と、
第二のエポキシ樹脂と、
を、含み、
前記第二のエポキシ樹脂は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を含有する、
エポキシ樹脂組成物。
〔5〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、ペースト状組成物。
〔6〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、フィルム状組成物。
〔7〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、接着剤。
〔8〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、接合用ペースト。
〔9〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、接合用フィルム。
〔10〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、導電性材料。
〔11〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、異方導電性材料。
〔12〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、異方導電性フィルム。
〔13〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、絶縁性材料。
〔14〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、封止材料。
〔15〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、コーティング用材料。
〔16〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、
塗料組成物。
〔17〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、プリプレグ。
〔18〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、熱伝導性材料。
〔19〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は前記〔4〕に記載のエポキシ樹脂組成物を含有する、燃料電池用セパレータ材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、保存安定性に優れ、BisF型エポキシ樹脂を硬化させた際に、耐熱性、破断伸度、及び接着性に優れた硬化物が得られる、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0014】
〔エポキシ樹脂組成物〕
本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤は、
(A)第一のエポキシ樹脂と、
(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤と、
を、含み、下記の条件(1)~条件(2)を満たし、25℃で液状の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤である。
<条件(1)>
前記(A)第一のエポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を必須成分とし、さらに、下記(i)~(iii)からなる群より選ばれる、少なくともいずれか1種類以上の樹脂を含む。
(i)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(ii)フェノールノボラック型エポキシ樹脂
(iii)ビスフェノールAD型エポキシ樹脂
<条件(2)>
前記(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とアミン化合物との反応により得られるアミンアダクトをコアに含む。
【0015】
本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤は、前記構成を有していることにより、保存安定性に優れ、かつ、特にBisF型エポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合においても、耐熱性、破断伸度、及び接着性に優れた硬化物が得られる。
【0016】
((A)第一のエポキシ樹脂)
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、(A)第一のエポキシ樹脂を含有する。
(A)第一のエポキシ樹脂は、後述する(B)マイクロカプセル型硬化剤の分散媒としての役割と、硬化物の組成中に組み込まれることで、所望の硬化物物性を発揮する役割の、2種類の役割をもつ。
(A)第一のエポキシ樹脂は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を必須成分とし、さらに、(i)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、(ii)フェノールノボラック型エポキシ樹脂、(iii)ビスフェノールAD型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる、少なくともいずれか1種以上の樹脂を含む(上記条件(1))。
これらの(i)~(iii)のエポキシ樹脂は、低粘度であることに加え、後述する(B)マイクロカプセル型硬化剤との極性差が小さく、(B)マイクロカプセル型硬化剤との相溶性及び(B)マイクロカプセル型硬化剤への拡散性に優れる。
また、これらのエポキシ樹脂を少なくとも2種類以上混合させることで、種々の硬化物物性をバランス良く向上させることが可能となる。
【0017】
(A)第一のエポキシ樹脂は、25℃における粘度が100Pa・s以下であり、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有するものであることが好ましい。
これにより、本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤は25℃で液状であるものとなり、常温条件下での取り扱い性に優れたものとなる。
【0018】
前記(A)第一のエポキシ樹脂は、(A1)ビスフェノールF型エポキシ樹脂を必須成分とし、(A1)ビスフェノールF型エポキシ樹脂を50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。また、99質量%以下であることが好ましく、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
(A)第一のエポキシ樹脂が、(A1)ビスフェノールF型エポキシ樹脂を必須成分とし、特に、50質量%以上含有することにより、高反応性及び高接着力の効果が得られる。また90質量%以下であることで、硬化物の靭性を向上させることができる。
【0019】
また、(A)第一のエポキシ樹脂における全塩素量は、本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤の貯蔵安定性及び接着硬度の低下を抑制する観点から、より少ない方が好ましく、1300ppm以下が好ましく、より好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは900ppm以下である。
なお、全塩素量とは、(A)第一のエポキシ樹脂中の塩素結合成分を意味し、具体的には、エポキシ樹脂の分子中に結合している塩素原子の全含有量を意味する。
【0020】
((B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤)
本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤は、(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する。
(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤とは、マイクロカプセル内にアミン系硬化剤が保持されることで潜在性を発現する硬化剤のことを言う。
アミン系硬化剤とは、熱硬化性樹脂に加えたときに硬化反応を促進させる作用を有するものであって、分子内にアミノ基を有するものをいう。また本明細書中、アミン系硬化剤をコア、アミン系硬化剤を覆うマイクロカプセルをシェルと呼称する。
本実施形態において、(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とアミン化合物との反応物であるアミンアダクトを含む(上記条件(2))。
前記アミンアダクトとは、少なくともアミン構造を有するアダクトであればよい。アダクトとは、2個以上の分子の付加によって得られる生成物を意味している。例えば、エポキシ樹脂とアミン性活性水素化合物を反応させ、エポキシ基を消費させると、残留活性水素を持つアミンアダクトを得ることができる。
通常、アミンアダクトはある程度分子量が大きいので、低揮発性成分による臭いが少なく、樹脂への配合量を多くすることができ、秤量誤差が少ないといった利点がある。
【0021】
なお、(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤のコアを構成するアミンアダクトは、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とアミン化合物の反応物であり、前記アミン化合物としては、例えば、イミダゾール化合物、その他のアミン化合物が挙げられる。
アミンアダクトの原料としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることで、本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤の接着性や、硬化物の耐熱性を向上させることができる。特にBisF型エポキシ樹脂を硬化させる際は、極性差が小さいことで相溶性が良く均一な硬化物を与えることで、種々の物性をさらに向上させることができる。
アミンアダクトの原料として用いられる、アミン化合物としては、例えば、イミダゾール化合物や、脂肪族アミン等の塩基性窒素を含有するアミン化合物が挙げられる。具体的には、後述する各種アミン化合物が挙げられる。
【0022】
イミダゾール化合物としては、以下に限定されないが、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、1-アリルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、4-フォルミルイミダゾール、2-ブチル-4-フォルミルイミダゾール、2-ブチル-4-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-ブチル-4-クロロ-5-フォルミルイミダゾール、2-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)-イミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルイミダゾール、2-ヒドロキシメチル-1-ベンジルイミダゾール、4-ヒドロキシメチル-2-メチルイミダゾール、4-フォルミル-1-メチルイミダゾール、5-フォルミル-1-メチルイミダゾール、4-フォルミル-5-メチルイミダゾール、4-フォルミル-1-トリチルイミダゾール、4-カルボキシメチルイミダゾール、4-カルボキシエチルイミダゾール、4-カルボン酸イミダゾール、2-アミノイミダゾール硫酸塩、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-フォルミルイミダゾール、1-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチルイミダゾール4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-アミノエチル-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
これらの中でも、アダクトの保存安定性と反応性に優れるという観点から、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾールが好ましく、活性点に対する立体障害が少ないという観点から、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾールがより好ましい。
【0023】
その他のアミン化合物としては、例えば、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基に、1つ以上の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するアミン化合物等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基に1つ以上の第1級アミノ基を有するアミン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、テトラメチレンアミン、1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリエチルヘキサメチルジアミン、1,2-ジアミノプロパン等が挙げられる。
直鎖状の脂肪族炭化水素基に1つ以上の第1級アミノ基と1つ以上の第2級アミノ基を有するアミン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
脂環式炭化水素基に1つ以上の第1級アミノ基を有するアミン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、アミノエチルピペラジン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基に1つ以上の第2級アミノ基を有するアミン化合物のとしては、以下に限定されないが、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペラジン等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記アミンアダクトの原料であるアミン化合物としては、保存安定性と短時間硬化性のバランスにより優れるアミンアダクトを得る観点から、直鎖状の脂肪族炭化水素基に1つ以上の第1級アミノ基と1つ以上の第2級アミノ基を有するアミン化合物が好ましい。これらの中でも、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンがより好ましく、1分子あたりの全アミン量が多いという観点から、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンがさらに好ましい。
【0025】
上述したイミダゾール化合物や、各種のアミン化合物の中でも、アミンアダクトの保存安定性と反応性に優れるという観点から、イミダゾール化合物が好ましく、より好ましくは2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾールである。
【0026】
アミンアダクトを製造する際における反応系へのアミン化合物の添加量は、特に限定されないが、ビスフェノールF型エポキシ樹脂1モルに対して、アミン化合物が好ましくは0.02~20倍モル当量、より好ましくは0.1~15倍モル当量、さらに好ましくは0.2~10倍モル当量の範囲である。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂1モルに対するアミン化合物の添加量を0.02倍モル当量以上にすることで、分子量分布が7以下のアミンアダクトを得るために有利であり、前記分子量分布においては、本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤の硬化性が良好となる。また、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に対するアミン化合物の添加量を20倍モル当量以下にすることで、未反応のアミン化合物の回収を効率よく行うことができ、経済的である。
【0027】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂とアミン化合物の反応条件は特に限定されない。例えば、必要に応じて溶剤の存在下において、50~250℃の温度で0.1~10時間反応させることができる。前記反応温度及び反応時間であれば安定的に反応が進行するので、所望の反応物を得るのに有利である。
【0028】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、アミン化合物とからアミンアダクトを得る反応においては、必要に応じて溶剤を用いることができる。
前記溶剤としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のアルコール類;水等が挙げられる。
これらの溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
反応終了後、溶剤は蒸留等により除去されていることが好ましい。
【0029】
(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤を構成するコアの粒子径は、メジアン径で定義される平均粒子径が、0.3μm超12μm以下であることが好ましく、1.0μm以上10μm以下であることがより好ましく、1.5μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましい。
ここで、前記平均粒子径とは、レーザー回析・光散乱法で測定されるストークス径をいう。平均粒子径が12μm以下であると、均質な硬化物を得ることができる傾向にあり、粒子径が0.3μm超であると、粒子間での凝集を抑制できる傾向にある。
【0030】
(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤に含まれるコアは、表面処理により球状化されていてもよい。
【0031】
円形度は1に近い程、真球に近いことを示す。前記コアの円形度が1に近いほどカプセル膜が均等に形成されるので、耐溶剤性、耐フィラー性、耐湿性、及び浸透性の観点から好ましく、コアの円形度は0.93以上であることが好ましく、より好ましくは0.95以上であり、さらに好ましくは0.97以上である。
【0032】
コアの円形度は、フロー式粒子像解析法により測定することができる。より具体的には、試料を液中に流し粒子を撮影し、粒子投影面積より粒子径を求め、粒子投影像の周囲長と粒子径相当円の円周の比により求めることができる。
【0033】
前記コアは、例えば、不定形の粒子を熱風処理することにより球状に形成でき、円形度を上記数値範囲に制御することができる。
球状のコアを得る方法としては、熱風噴射ノズルから噴射される熱風中に不定形粒子を噴射し、熱風との接触により粒子の表面を溶融して球形化処理する方法等が挙げられる。
【0034】
熱風処理する際の熱風の温度は、好ましくは100℃以上400℃以下である。熱風の温度が100℃以上であると、コア表面の加熱を十分に行うことができ所望の円形度に制御できる。400℃以下であると、コアの熱分解を抑制できる。上記観点から、熱風温度は、より好ましくは150℃以上300℃以下、さらに好ましくは180℃以上250℃以下である。
【0035】
また、(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤のコアは、重量平均分子量が、50以上50000以下であることが好ましい。コアの分子量が50以上であると、熱風処理の段階で粒子同士の融着を抑制でき、粒径が大きくなり過ぎることを防止できる。また、50000以下であると、粒子の軟化温度が高くなりすぎず、熱風処理において所望の円形度としやすい。
上記観点から、コアの重量平均分子量の範囲は、好ましくは50以上50000以下、より好ましくは70以上10000以下、さらに好ましくは100以上5000以下、さらにより好ましくは500以上4000以下、よりさらに好ましくは1000以上3000以下である。
【0036】
ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクラマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0037】
前記コアは、その表面をカプセル化することにより、アミンアダクトよりなる硬化剤を物理的に隔離できるため、安定性が向上する。
【0038】
コアの表面をカプセル化し(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤を得る方法としては、以下に限定されないが、例えば、以下の(1)~(3)のような方法が挙げられる。
(1):分散媒である溶剤中に、シェル成分と、アミンアダクトの粒子とを溶解・分散させた後、分散媒中のシェル成分の溶解度を下げて、アミンアダクトの粒子の表面にシェルを析出させる方法。
(2):アミンアダクトの粒子を分散媒に分散させ、この分散媒に前記のシェルを形成する材料を添加してアミンアダクトの粒子上に析出させる方法。
(3):分散媒にシェルを形成する原材料成分を添加し、アミンアダクトの粒子の表面を反応の場として、そこでシェル形成材料を生成する方法。
【0039】
前記(2)、(3)の方法は、反応と被覆を同時に行うことができるため好ましい。
前記(2)、(3)の方法でシェルを形成した後、(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤を分散媒より分離する方法は、特に限定されないが、シェルを形成した後の未反応の原料と分散媒とを共に分離・除去する方法が好ましい。このような方法として、ろ過により分散媒、及び未反応のシェル形成材料を除去する方法が挙げられる。
【0040】
分散媒を除去した後、(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤を洗浄することが好ましい。それにより、(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤の表面に付着している、未反応のシェル形成材料を除去できる。
洗浄の方法は特に限定されないが、ろ過による残留物分離の際に、分散媒又はマイクロカプセル型の硬化剤を溶解しない溶媒を用いて洗浄することができる。
【0041】
ろ過や洗浄を行った後にマイクロカプセル型潜在性硬化剤を乾燥すると、粉末状のマイクロカプセル型潜在性硬化剤を得ることができる。乾燥の方法は特に限定されないが、硬化剤の融点、又は軟化点以下の温度で乾燥することが好ましく、例えば減圧乾燥が挙げられる。
マイクロカプセル型潜在性硬化剤を粉末状にすることにより、エポキシ樹脂との配合作業を容易に適用することができる。
また、分散媒としてエポキシ樹脂を用いると、シェル形成と同時に、エポキシ樹脂と(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤からなる液状のエポキシ樹脂組成物を得ることができるため好適である。
【0042】
なお、(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤を構成するシェル層の厚さは、シェル成分の量や反応条件を調整することにより制御できる。
(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤のシェル層が薄すぎると、保存安定性や耐湿性や耐充填剤性が低下する傾向にある。
シェル層の形成反応は、通常、-10℃~150℃、好ましくは0℃~100℃の温度範囲で、10分間~72時間、好ましくは30分間~24時間の反応時間で行う。
シェル成分の量は、熱及び物理的せん断に対する安定性を確保する観点から重要である。すなわち、上述したように、(B)マイクロカプセル型潜在性硬化剤のコア成分とシェル成分の比率が、コア成分100質量部に対し、シェル成分は0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは、2質量部以上である。
【0043】
〔エポキシ樹脂組成物〕
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、上述した本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤と、第二のエポキシ樹脂とを含む。
第二のエポキシ樹脂は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を含有する。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤と第二のエポキシ樹脂とを任意の方法で混錬することにより製造できる。混錬には、一般的な3本ロール、ノンバブリングニーダー、プラネタリミキサなどを用いることができる。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物によれば、耐熱性、破断伸度、及び接着性に優れた硬化物が得られる。
【0044】
(添加剤)
本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤や、本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、その機能を低下させない範囲で、増量剤、補強材、充填材、顔料、導電微粒子、有機溶剤、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、樹脂類、結晶性アルコール、カップリング剤等の、各種添加剤を含有することができる。
【0045】
増量剤としては、以下に限定されないが、例えば、シリカ、水酸化アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マイカ、タルクが挙げられる。
補強材としては、以下に限定されないが、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、ほう素繊維、炭素繊維が挙げられる。
充填剤としては、以下に限定されないが、例えば、コールタール、ガラス繊維、アスベスト繊維、ほう素繊維、炭素繊維、セルロース、ポリエチレン粉、ポリプロピレン粉、石英紛、鉱物性ケイ酸塩、雲母、アスベスト粉、スレート粉が挙げられる。
顔料としては、以下に限定されないが、例えば、カオリン、酸化アルミニウム三水和物、水酸化アルミニウム、チョーク粉、石こう、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、ペントン、シリカ、エアロゾル、リトポン、バライト、二酸化チタン等が挙げられる。
導電微粒子としては、以下に限定されないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化鉄、金、銀、アルミニウム粉、鉄粉、ニッケル、銅、亜鉛、クロム、半田、ナノサイズの金属結晶、金属間化合物等を挙げられる。
これらはいずれもその用途に応じて有効に用いられる。
【0046】
有機溶剤としては、以下に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
反応性希釈剤としては、以下に限定されないが、例えば、ブチルグリシジルエーテル、N,N’-グリシジル-o-トルイジン、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
非反応性希釈剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジベート、石油系溶剤等が挙げられる。
樹脂類としては、以下に限定されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂やウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、アルキッド変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂が挙げられる。
結晶性アルコールとしては、以下に限定されないが、例えば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖、トリメチロールプロパンが挙げられる。
カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、シラン系カップリング材、チタン系カップリング材が挙げられる。
【0047】
上述した各種の添加剤の含有量は、本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、または本実施形態のエポキシ樹脂組成物中、30質量%未満であることが好ましい。
【0048】
〔ペースト状組成物、フィルム状組成物、接着剤、接合用ペースト、接合用フィルム〕
本実施形態のペースト状組成物、接着剤、及び接合用ペーストは、上述した本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は本実施形態のエポキシ樹脂組成物を含有する。
本実施形態のフィルム状組成物、接合用フィルムは、上述した本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は本実施形態のエポキシ樹脂組成物含み、所定の基材上に、前記エポキシ樹脂組成物の層を具備する形態であってもよい。
本実施形態の接着剤、接合用ペースト、及び接合用フィルムは、液状接着剤やフィルム状接着剤、ダイボンディング材等として有用である。
本実施形態の接着剤、接合用ペースト、接合用フィルムは、例えば、特開昭62-141083号公報や、特開平5-295329号公報等に記載された方法により製造できる。より具体的には、固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、さらに固形のウレタン樹脂を、50質量%になるようにトルエンに溶解・混合・分散させた溶液を作製する。これに本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を、溶液に対して30質量%添加・分散させた、接着剤及び接合用ペーストとしてのワニスを調製する。このワニスを、例えば、厚さ50μmの剥離用ポリエチレンテレフタレート基材に、トルエンが乾燥した後に厚さ30μmとなるように塗布する。トルエンを乾燥させることにより、常温では不活性であり、加熱することにより潜在性硬化剤の作用で接着性を発揮する、接合用フィルムを得ることができる。
本実施形態の接着剤、接合用ペースト、接合用フィルムは、接着性に優れ、耐熱性、及び破断伸度にも優れた硬化物となる。
【0049】
〔導電性材料、異方導電性材料、異方導電性フィルム〕
本実施形態の導電性材料、異方導電性材料、及び異方導電性フィルムは、上述した本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は本実施形態のエポキシ樹脂組成物を含有する。
導電性材料としては導電性フィルム、導電性ペースト等が挙げられる。
異方導電性材料としては、異方導電性フィルム、異方導電性ペースト等が挙げられる。
本実施形態の導電性材料は、例えば、特開平1-113480号公報に記載された方法により製造できる。より具体的には、例えば、上述の接合用フィルムの製造において、ワニスの調製時に導電性材料や異方導電性材料を混合・分散させて、剥離用の基材に塗布後、乾燥することにより製造することができる。
導電性材料や異方導電性材料を構成する導電粒子としては、例えば、半田粒子、ニッケル粒子、ナノサイズの金属結晶、金属の表面を他の金属で被覆した粒子、銅と銀の傾斜粒子等の金属粒子や、例えば、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂等の樹脂粒子に金、ニッケル、銀、銅、半田等の導電性薄膜で被覆を施した粒子等が挙げられる。一般に、導電性材料や異方導電性材料を構成する導電粒子は、1~20μm程度の球形の微粒子である。
フィルムにする場合の基材としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、基材に導電性材料や異方導電性材料を塗布後、溶剤を乾燥させる方法等により、製造できる。
本実施形態の導電性材料、異方導電性材料、及び異方導電性フィルムは、接着性、耐熱性及び破断伸度に優れるため、導通性及び接続信頼性に優れる。
【0050】
〔絶縁性材料〕
本実施形態の絶縁性材料は、上述した本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は本実施形態のエポキシ樹脂組成物を含有する。
絶縁性材料としては、絶縁性接着フィルム、絶縁性接着ペーストが挙げられる。
本実施形態の絶縁性材料は、上述の接合用フィルムとして用いることで、絶縁性材料である絶縁性接着フィルムを得ることができる。また、封止材料を用いることの他、上述の充填剤のうち、絶縁性の充填剤を配合することで、絶縁性接着ペーストを得ることができる。
本実施形態の絶縁性材料は、接着性、耐熱性、及び破断伸度に優れるため、絶縁性に優れる。
【0051】
〔封止材料〕
本実施形態の封止材料は、上述した本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は本実施形態のエポキシ樹脂組成物を含有する。
本実施形態の封止材料は、固形封止材、液状封止材、及びフィルム状封止材等として有用である。本実施形態の封止材料が液状封止材料である場合、アンダーフィル材、ポッティング材、ダム材等として有用である。
本実施形態の封止材料は、例えば、特開平5-43661号公報、特開2002-226675号公報等において、電気・電子部品の封止・含浸用成形材料の製造方法として記載された方法により製造できる。より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、硬化剤として例えば酸無水物硬化剤である無水メチルヘキサヒドロフタル酸、さらに球状溶融シリカ粉末を加えて均一に混合し、それに本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を加えて均一に混合することにより、封止材料を得ることができる。
本実施形態の封止材料は、接着性、耐熱性、及び破断伸度に優れた硬化物となる。
【0052】
〔コーティング用材料〕
本実施形態のコーティング用材料は、上述した本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は本実施形態のエポキシ樹脂組成物を含有する。
コーティング用材料としては、例えば、電子材料のコーティング材、プリント配線版のカバー用のオーバーコート材、プリント基板の層間絶縁用樹脂組成物等が挙げられる。
本実施形態のコーティング用材料は、例えば、特公平4-6116号公報、特開平7-304931号公報、特開平8-64960号公報、特開2003-246838等に記載された各種方法により製造できる。具体的には、充填剤からシリカ等を選定し、フィラーとして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の他、フェノキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等を配合し、さらに本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を配合し、メチルエチルケトン(MEK)で50%の溶液を調製することにより、コーティング用材料が得られる。これをポリイミドフィルム上に50μmの厚さでコーティングし、銅箔を重ねて60~150℃でラミネートし、当該ラミネートを180~200℃で加熱硬化させることにより、層間が本実施形態のコーティング用材料であるエポキシ樹脂組成物によりコーティングされた積層板を得ることができる。
本実施形態のコーティング用材料は、取り扱い性に優れ、接着性、耐熱性、及び破断伸度に優れた硬化物となる。
【0053】
〔塗料組成物〕
本実施形態の塗料組成物は、上述した本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は本実施形態のエポキシ樹脂組成物を含有する。
本実施形態の塗料組成物は、例えば、特開平11-323247号公報、特開2005-113103号公報等に記載された方法により製造できる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、二酸化チタン、タルク等を配合し、混合溶剤としてメチルイソブチルケトン(MIBK)/キシレンの1:1混合溶剤を添加、攪拌、混合して主剤とする。これに本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を添加し、均一に分散させることにより、本実施形態の塗料組成物を得ることができる。
本実施形態の塗料組成物は、取り扱い性に優れ、接着性、耐熱性、及び破断伸度に優れた硬化物となる。
【0054】
〔プリプレグ〕
本実施形態のプリプレグは、上述した本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は本実施形態のエポキシ樹脂組成物を含有する。
本実施形態のプリプレグは、例えば、特開平9-71633号公報、国際公開第98/44017号パンフレット等に記載された方法のように、本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を補強基材に含浸し、加熱することにより製造することができる。含浸させるワニスの溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、エチルセルソルブ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、これらの溶剤はプリプレグ中に残存しないことが好ましい。なお、補強基材の種類としては、特に限定されないが、例えば、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド布、液晶ポリマー等が挙げられる。一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤と補強基材の割合も特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~80質量%となるように調整するのが好ましい。
本実施形態のプリプレグは、耐熱性、及び破断伸度に優れた硬化物となる。
【0055】
〔熱伝導性材料〕
本実施形態の熱伝導性材料は、上述した本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は本実施形態のエポキシ樹脂組成物を含有する。
本実施形態の熱伝導性材料は、例えば、特開平6-136244号公報、特開平10-237410号公報、特開2000-3987号公報に記載された方法により製造することができる。具体的には、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、硬化剤としてフェノールノボラック硬化剤、さらに熱伝導フィラーとしてグラファイト粉末を配合して均一に混練する。これに本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を配合することにより、本実施形態の熱伝導性材料得ることができる。
熱伝導性を付与する材料としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子等も挙げられる。
本実施形態の熱伝導性材料は、耐熱性、及び破断伸度に優れた硬化物となる。
【0056】
〔燃料電池用セパレータ材〕
本実施形態の燃料電池用セパレータ材は、上述した本実施形態の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤、又は本実施形態のエポキシ樹脂組成物を含有する。
本実施形態の燃料電池用セパレータ材は、例えば、特開平11-154521号公報、特開2000-239488号公報、特開2021-106111号公報に記載された方法により製造することができる。具体的には、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂、硬化剤としてアミン系硬化剤、さらにフィラーとして導電性粒子を配合して均一に混練した組成物を、セパレータ形成用の型に流し込み熱プレスすることにより得ることができる。
導電性を付与する材料としては、例えば、黒鉛粒子、金属酸化物粒子等が挙げられる。またフィラーとして、適宜、離型剤や滑剤を配合することもできる。
本実施形態の燃料電池用セパレータ材は、耐熱性、及び破断伸度に優れた硬化物となる。
【実施例0057】
以下、本実施形態について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例及比較例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた物性及び特性の測定方法を以下に示す。
【0058】
((1)マスターバッチ型硬化剤の保存安定性)
下記表1に記載する成分を配合した直後の配合物の粘度(n1)と、配合物を蓋をした容器に入れ40℃に7日間静置後の粘度(n2)を、25℃環境下、E型粘度測定器を用いて測定した。
両者の粘度(n1)、(n2)を比較し、粘度倍率(n2/n1)を算出した。
粘度倍率が1.3倍以下であれば、保存安定性が良好であるものとし、〇とした。
粘度倍率が1.3倍を超えた場合、保存安定性が不良であるものとし、×とした。
【0059】
((2)硬化物の耐熱性)
動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて、以下の(I)~(III)の手順で、硬化物のガラス転移温度(Tg)の測定を行った。
(I)硬化物を、幅約8mm×長さ30~50mm×厚み約2mmに切り出し、正確な寸法を測定し、記録し、サンプルとした。
(II)サンプルを、動的粘弾性測定装置(DMA)にセットし、以下の条件で測定した。
・装置:TA Instruments社、「RSA-G2」
・測定モード:3点曲げ
・周波数f=1Hz
・ノーマルフォース:FN=-0.2N
・温度:25~250℃(昇温:4℃/分)
(III)前記測定により得られた、貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G’’)から、損失正接(tanδ)=G’’/G’を算出し、tanδのピークトップ温度を、硬化物のガラス転移温度(Tg)として求め、下記の基準により評価した。
<評価基準>
Tgが150℃以上であれば、耐熱性が最良であるものとし、◎とした。
Tgが145℃以上であれば、耐熱性が良好であるものとし、〇とした。
Tgが145℃未満であれば、耐熱性が不良であるものとし、×とした。
【0060】
((3)硬化物の破断伸度)
万能試験装置を用いて、以下の(I)~(III)の手順で、硬化物の破断伸度の測定を行った。
(I)硬化物を、幅約5mm×長さ30~50mm×厚み約2mmに切り出し、正確な寸法を測定し、記録し、サンプルとした。
(II)サンプルを、万能試験装置にセットし、以下の条件で測定した。
・装置:島津製作所社、「AG-X」
・引張速度:5mm/min
・つかみ具間距離:10mm
・温度:25℃
(III)得られた破断時点での伸度を、下記の要件により評価した。
<評価基準>
伸度が7%以上であれば、伸度が良好であるものとし、〇とした。
伸度が7%未満の場合、伸度が不良であるものとし、×とした。
【0061】
((4)接着性:せん断接着強さ)
<実施例1及び3、比較例1~4及び7>
実施例1及び3、比較例1~4及び7で作製した一液性
エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤3質量部を、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、「jER806」)10質量部と混合し、JIS K6850に準拠して試験片を作製した。
また、被着体として、JIS C3141に準拠した幅12.5mm×長さ100mm×厚み1.6mmの被着体(冷間圧延鋼板)を用いた。
そして、100℃、1時間、さらに150℃、1時間の条件で熱硬化させた後、試験片の接着面が破断して、試験片が分離する最大荷重を測定し、せん断接着強さとし、下記の基準により評価した。
<実施例2、比較例5~6>
実施例2、比較例5~6で作製した一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤1.2質量部を、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製、「jER806」)20質量部、酸無水物(昭和電工マテリアル社製、HN-5500)20質量部と混合し、JIS K6850に準拠して試験片を作製した。
また、被着体として、JIS C3141に準拠した幅12.5mm×長さ100mm×厚み1.6mmの被着体(冷間圧延鋼板)を用いた。
そして、100℃、1時間、さらに150℃、1時間の条件で熱硬化させた後、試験片の接着面が破断して、試験片が分離する最大荷重を測定し、せん断接着強さとし、下記の基準により評価した。
(評価基準)
最大荷重が14Mpa以上であれば、接着力が最良であるものとし、◎とした。
最大荷重が13Mpa以上であれば、接着力が良好であるものとし、〇とした。
最大荷重が13Mpa未満の場合、接着力が不良であるものとし、×とした。
【0062】
〔実施例及び比較例の成分〕
((B')アミン系硬化剤)
(B'-1)エポキシ樹脂用硬化剤
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:jER806)1当量と、2―メチルイミダゾール1当量を、n-ブタノールとトルエンとの1:1混合溶媒中、80℃で反応させ、反応物であるアミンアダクトを得た。その後減圧下で過剰のアミンを溶剤と共に留去し、25℃で固体のブロック状のエポキシ樹脂用硬化剤を得た。
次いで、ブロック状のエポキシ樹脂用硬化剤をジェットミル粉砕して、比表面積値が3.63m2/g、篩下平均粒径D50が2.40μm、D99/D50が8.6となる粒子(粉砕品)である、エポキシ樹脂用硬化剤(B'-1)を得た。
【0063】
(B'-2)エポキシ樹脂用硬化剤
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:jER828)1当量と、2-メチルイミダゾール1当量を、n-ブタノールとトルエンとの1:1混合溶媒中、80℃で反応させ、反応物であるアミンアダクトを得た。その後減圧下で過剰のアミンを溶剤と共に留去し、25℃で固体のブロック状のエポキシ樹脂用硬化剤を得た。
次いで、ブロック状のエポキシ樹脂硬化剤をジェットミル粉砕して、比表面積値が3.63m2/g、篩下平均粒径D50が2.40μm、D99/D50が8.6となる粒子(粉砕品)である、エポキシ樹脂用硬化剤(B'-2)を得た。
【0064】
(B'-1-Q)エポキシ樹脂用硬化剤
上述のようにして作製したエポキシ樹脂硬化剤(B'-1)を、アーステクニカ株式会社製のクリプトロンオーブを使用し、温度10℃、湿度30%の環境下、回転速度13500rpm、供給速度10kg/hr、風量3m3/minで、形状補正処置を行い、(B'-1)の表面改質品を作製した。サイクロン式捕集機、バグフィルターを付属させ比表面積値を調整し、分級操作にて円形度:0.97、平均粒径:2.6μmであるエポキシ樹脂用硬化剤(B'-1-Q)を分級機による分級操作によって作製した。
【0065】
((A)エポキシ樹脂)
(A-1)
YL983U(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:170g/eq)
(A-2)
YX8000D(三菱ケミカル(株)製、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184g/eq)
(A-3)
DEN431(OLIN Corporation製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:174g/eq)
(A-4)
R1710((株)プリンテック製、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、エポキシ当量:166g/eq)
(前記(A)エポキシ樹脂以外のその他のエポキシ樹脂)
YL980(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:186g/eq)
【0066】
(カプセル化剤)
コロネートT100(東ソー(株)製、トルエンジイソシアネート(TDI))
【0067】
〔一液性エポキシ樹脂用マスターバッチ型硬化剤の作製〕
(実施例1)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A-1)220質量部、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A-2)30質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤(B'-1)を100質量部、均一分散させ、カプセル化剤11.0質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を得た。
【0068】
(比較例1)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A-1)250質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤(B'-1)を100質量部、均一分散させ、カプセル化剤11.0質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を得た。
【0069】
(比較例2)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A-1)220質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(その他のエポキシ樹脂)30質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤(B'-1)を100質量部、均一分散させ、カプセル化剤11.0質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を得た。
【0070】
(比較例3)
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A-2)250質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤(B'-1)を100質量部、均一分散させ、カプセル化剤11.0質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を得た。
【0071】
(実施例2)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A-1)190質量部、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A-2)30質量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(A-3)30質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤(B'-1)を100質量部、均一分散させ、カプセル化剤22.0質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を得た。
【0072】
(比較例4)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A-1)190質量部、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(A-2)30質量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(A-3)30質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤(B'-2)を100質量部、均一分散させ、カプセル化剤22.0質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を得た。
【0073】
(比較例5)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(その他のエポキシ樹脂)250質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤(B'-1)を100質量部、均一分散させ、カプセル化剤22.0質量部を加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を得た。
【0074】
(実施例3)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A-1)170質量部、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂(A-4)50質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤(B'-1-Q)を100質量部、均一分散させ、カプセル化剤2.0質量部を5分間掛けて加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を得た。
【0075】
(比較例6)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(A-1)170質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(その他のエポキシ樹脂)50質量部に、エポキシ樹脂用硬化剤(B'-1-Q)を100質量部、均一分散させ、カプセル化剤2.0質量部を5分間掛けて加え、50℃で攪拌しながら3時間反応を続け、一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を得た。
【0076】
(実施例4)
[導電性フィルムの作製]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:jER YL983U)15質量部、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子社製、商品名「BRG-558」)6質量部、合成ゴム(日本ゼオン社製商品名「ニポール1072」、重量平均分子量30万)4質量部を、メチルエチルケトンとブチルセロソルブアセテートの1:1(質量比)混合溶剤20質量部に溶解した。この溶液に銀粉末74質量部を混合し、さらに三本ロールにより混練した。これにさらに、前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を30質量部加えて、さらに均一に混合させて、導電性接着剤を得た。得られた導電性接着剤を用いて、厚さ40μmのポリプロピレンフィルム上にキャストして、80℃で60分間、乾燥半硬化させ厚さ35μmの導電性接着剤層を有する導電性フィルムを得た。
この導電性フィルムを用い、80℃のヒートブロック上でシリコンウェハー裏面に導電性接着剤層を転写させた。さらにシリコンウェハーをフルダイシングし、ヒートブロック上でリードフレームに導電性接着剤付半導体チップを、200℃、2分間の条件で接着硬化させたところ、チップの導電性の問題が無いことが分かった。
【0077】
(実施例5)
[導電性ペーストの作製]
100質量部のエポキシ樹脂(M)に、前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を30質量部に、平均粒子径が14μm、アスペクト比が11の鱗片状銀粉(徳力化学研究所(株)製)150g及び平均粒子径が10μm、アスペクト比が9の鱗片状ニッケル粉(高純度化学(株)製、商品名「NI110104」)60gを添加し、均一になるまで撹拌後、三本ロールで均一に分散して導電ペーストとした。
得られた導電ペーストを、厚さ1.4mmのポリイミドフィルム基板上にスクリーン印刷した後、200℃で1時間、加熱硬化させた。得られた配線板の導電性を測定した結果、導電性ペーストとして有用なものであった。
【0078】
(実施例6)
[異方導電性フィルムの作製]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:jER YL983U)40質量部、フェノキシ樹脂(東都化成製、YP-50)30質量部を酢酸エチル30質量部に溶解し、それに、前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を30質量部に、粒径8μmの導電粒子(金メッキを施した架橋ポリスチレン)5質量部を加え均一に混合し、一液性エポキシ樹脂組成物を得た。これをポリエステルフィルム上に塗布し、70℃で酢酸エチルを乾燥除去し、異方導電性フィルムを得た。
得られた異方導電性フィルムをICチップと電極間に挟み、200℃のホットプレート上で30kg/cm2、20秒間熱圧着を行った結果、電極間が接合し、導通がとれ、異方導電性材料として有用であった。
【0079】
(実施例7)
[異方導電性ペーストの作製]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:jER YL983U)100質量部と導電粒子としてミクロパールAu-205(積水化学製、比重2.67)5質量部を混合後、前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を30質量部加えて、さらに均一に混合させて、異方導電性ペーストを得た。得られた異方導電性ペーストを、ITO電極を有する低アルカリガラス上に塗布した。230℃のセラミックツールで、30秒間、2MPaの圧力にて試験用TAB(Tape Automated Bonding)フィルムと圧着し貼り合わせを行った。隣接するITO電極間の抵抗値を測定したところ、異方導電性ペーストとして有用であった。
【0080】
(実施例8)
[絶縁性ペーストの作製]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名「YL983U」)100質量部、ジシアンジアミドを4質量部、シリカ粉末100質量部、希釈剤としてフェニルグリシジルエーテル10質量部、及び有機リン酸エステル(日本化薬社製、商品名「PM-2」)1質量部を十分混合した後、さらに三本ロールで混練した。さらに、そこに前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を30質量部加えて、さらに均一に混合させて、減圧脱泡及び遠心脱泡処理を行い、絶縁性ペーストを製造した。
得られた絶縁性ペーストを用いて、半導体チップを樹脂基板に200℃で1時間加熱硬化させて接着したところ、絶縁性ペーストとして有用であった。
【0081】
(実施例9)
[絶縁性フィルムの作製]
フェノキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名「YP-50」)180質量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量200g/eq、日本化薬株式会社製商品名「EOCN-1020-80」)40質量部、球状シリカ(平均粒径:2μm、アドマテック株式会社製、商品名 SE-5101)300質量部、メチルエチルケトン200質量部を調合し均一分散させた後、これに前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を250質量部加えてさらに攪拌・混合してエポキシ樹脂組成物を含む溶液を得た。得られた溶液を、離型処理を施したポリエチレンテレフタレート上に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗布し、熱風循環式乾燥機の中で加熱乾燥を行い、半導体接着用の絶縁性フィルムを得た。
得られた半導体接着用の絶縁性フィルムを5インチのウェハサイズよりも大きく支持基材ごと切断し、バンプ電極付きウェハの電極部側に樹脂フィルムを合わせた。次に離型処理付き支持基材を上に挟み、70℃、1MPa、加圧時間10秒で真空中加熱圧着し接着樹脂付きウェハを得た。続いて、ダイシングソー(DISCO製 DAD-2H6M)を用いてスピンドル回転数30,000rpm、カッティングスピード20mm/secで切断分離した個片の接着フィルム付き半導体素子の樹脂剥がれがないことを観察した。得られたフィルムは絶縁性フィルムとして有用なものであった。
【0082】
(実施例10)
[封止材の作製の実施例]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:jER YL983U)100質量部、並びに、硬化剤として無水フタル酸を主成分とするHN-2200(日立化成工業(株)製)40質量部及び平均粒径16μmの球状溶融シリカ80質量部を均一に分散、配合させた。これに前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を5質量部加えてエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物をプリント配線基板上に厚さ60μmになるように1cm角に塗布し、110℃10分、オーブンで加熱して半硬化させた。その後、厚さ370μm、1cm角のシリコンチップを半硬化させたエポキシ樹脂組成物の上に乗せ、荷重を加えてバンプとチップの電極を接触・保持しつつ220℃で1時間、完全硬化処理を行った。
得られたエポキシ樹脂組成物からなる封止材は、外観及びチップの導通に問題のない有用なものであった。
【0083】
(実施例11)
[コーティング材の作製の実施例]
30質量部のエポキシ樹脂(M)、フェノキシ樹脂としてYP-50を30質量部(東都化成製)、メトキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂のメチルエチルケトン溶液(荒川化学工業(株)製、商品名「コンポセランE103」)を50質量部、これに前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を30質量部加えて、メチルエチルケトンで50質量%に希釈・混合させた溶液を調製した。調製した溶液を、剥離PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(パナック(株)製SG-1)上に、ロールコーターを用いて塗布し、150℃で15分、乾燥、硬化させ、剥離フィルム付き半硬化樹脂(ドライフィルム)膜厚100μmを作製した。
前記ドライフィルムを先の銅張り積層板上に120℃で、10分間、6MPaで加熱圧着した後、室温に戻して剥離フィルムを除去し、200℃で2時間硬化させたところ、層間絶縁用のコーティング材として有用なものが得られた。
【0084】
(実施例12)
[塗料組成物の作製]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:jER YL983U)50質量部に、二酸化チタン30質量部、タルク70質量部を配合し、混合溶剤としてMIBK/キシレンの1:1混合溶剤140質量部を添加、攪拌、混合して主剤とした。これに前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を30質量部添加、均一に分散させることにより、エポキシ塗料組成物として有用なものが得られた。
【0085】
(実施例13)
[プリプレグの作製]
130℃のオイルバス中のフラスコ内にノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製のEPICLON N-740)を15質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(JER製のエピコート4005)を40質量部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER2603)30質量部を溶解・混合し80℃まで冷やした。さらに前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を15質量部加えて、十分、攪拌して混合した。室温に冷ました前記樹脂組成物を離型紙上にドクターナイフを用いて樹脂目付162g/m2で塗布し、樹脂フィルムとした。次にこの樹脂フィルム上に弾性率24トン/mm2の炭素繊維を12.5本/インチで平織りした三菱レイヨン製CFクロス(型番:TR3110、目付200g/m2)を重ねて樹脂組成物を炭素繊維クロスに含浸させた後、ポリプロピレンフィルムを重ねて表面温度90℃のロール対の間を通して、クロスプリプレグを作製した。樹脂の含有率は45質量%だった。得られたプリプレグを、繊維方向を揃えてさらに積層し、硬化条件150℃×1時間で成形を行い、炭素繊維を補強繊維とするFRP成形体を得ることができ、作製したプリプレグは有用なものであった。
【0086】
(実施例14)
[熱伝導性エポキシ樹脂組成物の作製]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:jER YL983U)100質量部、エポキシ樹脂用硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「タマノル759」)のメチルエチルケトン50%溶液を40質量部、鱗片状グラファイト粉末(ユニオンカーバイト社製の商品名HOPG)15質量部を均一になるまで攪拌後、3本ロールで均一に分散させた。これにさらに、前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を15質量部加えて、十分、攪拌して混合した。得られた導電ペーストを、用いてCuリードフレーム上に半導体チップ(1.5mm角、厚み0.8mm)をマウントし、かつ、150℃、30分で加熱硬化させて評価用サンプルを得た。
得られたサンプルの熱伝導性についてレーザフラッシュ法により測定した。すなわち、測定した熱拡散率α、比熱Cp、密度σから、以下の式、K=α×Cp×σより熱伝導率Kを求めたところ、Kが5×10-3cal/cm・sec・℃以上あり、熱伝導性ペーストとして、有用なものであった。
【0087】
(実施例15)
[燃料電池用シール材の作製]
ビフェニル型エポキシ樹脂3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニルグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン製エピコートYX-4000(エポキシ当量195)100質量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ製TD-2131)60質量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:jER YL983U)10質量部、人造黒鉛(エスイーシー社製 商品名SGP 平均粒径75μm)800質量部、離型剤(ステアリン酸カルシウム)、滑剤(カルナバワックス)を配合した原料をミキサーで混合後、前記(実施例1)で得られた一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤を10質量部加えて、3本ロールで均一に混合した。得られた材料を燃料電池用セパレータ材用金型に、成型圧力25MPa、成型温度150℃、成型時間15分で加圧成型して評価用サンプルを得た。
得られた燃料電池用セパレータ材の曲げ強さをJIS K 7203に準じて測定したところ、50MPaの曲げ強さを示した。
また、ガス透過性を、JIS K7126A法により窒素ガスを用いて測定したところ、ガス透過率は0.6cm3/m2・24時間・atmであり、燃料電池用セパレータ材として有用なものであった。
【0088】
実施例1~3、比較例1~6の評価結果を下記表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
表1に示すように、実施例1と比較例1~2を比較すると、実施例1は各種硬化物物性に優れることが分かった。また、実施例1と比較例3を比較すると、(B)成分としてBisF型エポキシを含むことで、硬化物物性に優れることが分かった。
また、実施例2と比較例4を比較すると、硬化剤成分の原料にBisF型エポキシを用いた実施例2が、各種硬化物物性に優れることが分かった。
更に、実施例3の結果より、硬化剤成分を表面処理した場合に於いても、本発明は十分な効果を発揮していることが分かった。
実施例1と比較例2、実施例2と比較例5、実施例3と比較例6をそれぞれ比較することで、配合樹脂の種類として、BisF型エポキシおよび水添ビスフェノールA型エポキシ・フェノールノボラック型エポキシ・ビスフェノールAD型エポキシが好適であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の一液性エポキシ樹脂組成物用マスターバッチ型硬化剤は、各種電子部品の接着剤、液状封止剤の材料として、産業上の利用可能性を有している。