IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河医療ソリューションズ株式会社の特許一覧

特開2023-137045検査管理装置、方法およびプログラム
<>
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図1
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図2
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図3
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図4
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図5
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図6
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図7
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図8
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図9
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図10
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図11
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図12
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図13
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図14
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図15
  • 特開-検査管理装置、方法およびプログラム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137045
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】検査管理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20230922BHJP
   G06Q 10/109 20230101ALI20230922BHJP
【FI】
G16H10/00
G06Q10/10 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043040
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】512052971
【氏名又は名称】富士フイルム医療ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 研一
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA13
5L099AA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】、被検者の待ち時間及び検査種別における検査の空き時間の双方が最適化された検査計画を容易に確認する検査管理装置、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】検査管理装置と、複数の、検査室端末、モニタ、医療従事者の携帯端末及び患者の携帯端末と、管理サーバとが、ネットワークを介して互いに通信可能に接続する医療情報システムにおいて、検査管理装置は、複数の被検者のそれぞれに対して行う1以上の検査種別を含む検査情報を取得し、検査情報に基づいて、すべての被検者についてのすべての検査を終了するまでの被検者の待ち時間及び検査種別における検査の空き時間を最適化することにより、被検者毎にすべての検査を終了するまでの検査の受診順序を含む第1の検査計画及び検査種別毎にすべての検査を完了するまでの被検者の受診順序を含む第2の検査計画を導出し、第1の検査計画及び第2の検査計画を同時又は切り替え可能に提示する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
複数の被検者のそれぞれに対して行う1以上の検査種別を含む検査情報を取得し、
前記検査情報に基づいて、すべての被検者についてのすべての検査を終了するまでの前記被検者の待ち時間および前記検査種別における前記検査の空き時間を最適化することにより、前記被検者毎にすべての検査を終了するまでの検査の受診順序を含む第1の検査計画、および前記検査種別毎にすべての検査を完了するまでの前記被検者の受診順序を含む第2の検査計画を導出し、
前記第1の検査計画および前記第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に提示する検査管理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、第1の軸に前記複数の被検者を、前記第1の軸と交わる第2の軸に時間を設定し、前記被検者毎に前記検査種別および前記検査に要する時間を識別可能に示す検査指標を前記第2の軸に時系列順に並べることにより前記第1の検査計画を導出する請求項1に記載の検査管理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、第1の軸に前記複数の検査種別を、前記第1の軸と交わる第2の軸に時間を設定し、前記検査種別毎に前記被検者および前記被検者の検査に要する時間を識別可能に示す被検者指標を前記第2の軸に時系列順に並べることにより前記第2の検査計画を導出する請求項1または2に記載の検査管理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記複数の被検者をあらかじめ定められた順序でソートし、
前記ソートされた順に、前記第1の軸に沿って前記複数の被検者を配置しつつ、前記被検者間において同一の検査種別の時間が重複しないように、前記被検者毎の前記検査指標を、前記第2の軸に沿って時間が早い側から順に割り当てる第1の割り当てを行い、前記第1の割り当て後、前記被検者間において同一の検査種別の時間が重複しないように、前記被検者毎の前記検査指標を、前記第2の軸に沿って時間が遅い側へ向けて割り当てる第2の割り当てを行うことにより、前記待ち時間および前記空き時間を最適化して、前記第1の検査計画を導出し、
導出された前記第1の検査計画に基づいて前記第2の検査計画を導出する請求項2または3に記載の検査管理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記複数の被検者毎にすべての検査を終了するまでに要する、前記待ち時間を除く総検査時間を導出し、
前記複数の被検者を前記総検査時間に基づいた順序でソートする請求項4に記載の検査管理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記待ち時間および前記空き時間に基づく前記最適化の評価値を導出し、
前記評価値に基づいて前記最適化を行う請求項1から5のいずれか1項に記載の検査管理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、複数の前記評価値に基づいて異なる手法により最適化を行うことによって複数の第1の検査計画および複数の第2の検査計画を導出し、
前記複数の第1の検査計画のそれぞれおよび前記複数の第2の検査計画のそれぞれを同時にまたは切り替え可能に提示する請求項6に記載の検査管理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記評価値をさらに提示する請求項6または7に記載の検査管理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記第1の検査計画および前記第2の検査計画の少なくとも一方に対する修正の指示を受け付け、
前記修正の指示により、前記第1の検査計画および前記第2の検査計画の少なくとも一方を修正する請求項1から8のいずれか1項に記載の検査管理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、特定の被検者についての特定の検査種別の検査時刻を前記第1の検査計画および前記第2の検査計画において固定して、前記被検者の待ち時間および前記検査種別毎の空き時間を最適化することにより、前記第1の検査計画および前記第2の検査計画を導出する請求項1から8のいずれか1項に記載の検査管理装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記第1の検査計画および前記第2の検査計画において、検査の進捗状況を提示する請求項1から10に記載の検査管理装置。
【請求項12】
複数の被検者のそれぞれに対して行う1以上の検査種別を含む検査情報を取得し、
前記検査情報に基づいて、すべての被検者についてのすべての検査を終了するまでの前記被検者の待ち時間および前記検査種別における前記検査の空き時間を最適化することにより、前記被検者毎にすべての検査を終了するまでの検査の受診順序を含む第1の検査計画、および前記検査種別毎にすべての検査を完了するまでの前記被検者の受診順序を含む第2の検査計画を導出し、
前記第1の検査計画および前記第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に提示する検査管理方法。
【請求項13】
複数の被検者のそれぞれに対して行う1以上の検査種別を含む検査情報を取得する手順と、
前記検査情報に基づいて、すべての被検者についてのすべての検査を終了するまでの前記被検者の待ち時間および前記検査種別における前記検査の空き時間を最適化することにより、前記被検者毎にすべての検査を終了するまでの検査の受診順序を含む第1の検査計画、および前記検査種別毎にすべての検査を完了するまでの前記被検者の受診順序を含む第2の検査計画を導出する手順と、
前記第1の検査計画および前記第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に提示する手順とをコンピュータに実行させる検査管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査管理装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院および検査機関において、検査対象となる被検者に対して行う各種の検査について、そのスケジュールすなわち検査計画を管理する様々な手法が提案されている。例えば、非特許文献1においては、人間ドックの検査計画を最適化する手法が提案されている。具体的には、横軸に時刻を、縦軸に被検者の識別番号を規定し、被検者の待ち時間が少なくなるように複数の検査を複数の被検者に対して割り振ることにより検査計画を導出する手法が提案されている。また、特許文献1においては、横軸に時間を、縦軸にCTおよびMRI等の検査装置の識別番号を規定し、各検査装置の空き時間が少なく効率よく稼働できるように、複数の被検者の検査を複数の検査装置に割り振る手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-177394号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「人間ドックにおける最適スケジュール作成について」、伊藤、鈴木、河原、日本経営工学会論文誌、Vol.66 No.1、2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載された手法は、被検者の待ち時間を少なくできるが、装置すなわち検査における次の被検者の検査を開始するまでの空き時間を少なくすることが考慮されていない。また、特許文献1に記載された手法は、装置の稼働率を向上して検査における空き時間を少なくすることができるが、被検者の待ち時間は考慮されていない。
【0006】
ここで、病院の検査は人を対象とするため、被検者の状態に応じて検査を中断したり、救急の検査に対応したりする場合もあり、当初に計画したスケジュールからの変更が発生する場合がある。このため、スケジュールの作成および調整には経験に基づく人手の微調整が必要となり、その手間が大きい。
【0007】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、被検者の待ち時間および検査種別における検査の空き時間の各々に対する最適化の度合いを調整した検査計画を容易に確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示による検査管理装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、
プロセッサは、
複数の被検者のそれぞれに対して行う1以上の検査種別を含む検査情報を取得し、
検査情報に基づいて、すべての被検者についてのすべての検査を終了するまでの被検者の待ち時間および検査種別における検査の空き時間を最適化することにより、被検者毎にすべての検査を終了するまでの検査の受診順序を含む第1の検査計画、および検査種別毎にすべての検査を完了するまでの被検者の受診順序を含む第2の検査計画を導出し、
第1の検査計画および第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に提示する。
【0009】
「検査種別」とは、それぞれが異なる内容の検査である場合のみならず、同一内容の検査であっても、検査装置が複数あったり、検査を行う医療従事者が複数いたりする場合においては、異なる検査装置において行う検査および異なる医療従事者が行う検査種別を異なる検査種別として扱うものとする。
【0010】
「検査種別における検査の空き時間」とは、ある検査種別においてある被検者の検査が終了してから次の被検者の検査が始まるまでの検査が行われていない時間を意味する。
【0011】
なお、本開示による検査管理装置においては、プロセッサは、第1の軸に複数の被検者を、第1の軸と交わる第2の軸に時間を設定し、被検者毎に検査種別および検査に要する時間を識別可能に示す検査指標を第2の軸に時系列順に並べることにより第1の検査計画を導出するものであってもよい。
【0012】
また、本開示による検査管理装置においては、プロセッサは、第1の軸に複数の検査種別を、第1の軸と交わる第2の軸に時間を設定し、検査種別毎に被検者および被検者の検査に要する時間を識別可能に示す被検者指標を第2の軸に時系列順に並べることにより第2の検査計画を導出するものであってもよい。
【0013】
また、本開示による検査管理装置においては、プロセッサは、複数の被検者をあらかじめ定められた順序でソートし、
ソートされた順に、第1の軸に沿って複数の被検者を配置しつつ、被検者間において同一の検査種別の時間が重複しないように、被検者毎の検査指標を、第2の軸に沿って時間が早い側から順に割り当てる第1の割り当てを行い、第1の割り当て後、被検者間において同一の検査種別の時間が重複しないように、被検者毎の検査指標を、第2の軸に沿って時間が遅い側へ向けて割り当てる第2の割り当てを行うことにより、待ち時間および空き時間を最適化して、第1の検査計画を導出し、
導出された第1の検査計画に基づいて第2の検査計画を導出するものであってもよい。
【0014】
また、本開示による検査管理装置においては、プロセッサは、複数の被検者毎にすべての検査を終了するまでに要する、待ち時間を除く総検査時間を導出し、
複数の被検者を総検査時間に基づいた順序でソートするものであってもよい。
【0015】
また、本開示による検査管理装置においては、プロセッサは、待ち時間および空き時間に基づく最適化の評価値を導出し、
評価値に基づいて最適化を行うものであってもよい。
【0016】
また、本開示による検査管理装置においては、プロセッサは、複数の評価値に基づいて異なる手法により最適化を行うことによって複数の第1の検査計画および複数の第2の検査計画を導出し、
複数の第1の検査計画のそれぞれおよび複数の第2の検査計画のそれぞれを同時にまたは切り替え可能に提示するものであってもよい。
【0017】
また、本開示による検査管理装置においては、プロセッサは、評価値をさらに提示するものであってもよい。
【0018】
また、本開示による検査管理装置においては、プロセッサは、第1の検査計画および第2の検査計画の少なくとも一方に対する修正の指示を受け付け、
修正の指示により、第1の検査計画および第2の検査計画の少なくとも一方を修正するものであってもよい。
【0019】
本開示による検査管理装置においては、プロセッサは、特定の被検者についての特定の検査種別の検査時刻を第1の検査計画および第2の検査計画において固定して、被検者の待ち時間および検査種別毎の空き時間を最適化することにより、第1の検査計画および第2の検査計画を導出するものであってもよい。
【0020】
また、本開示による検査管理装置においては、プロセッサは、第1の検査計画および第2の検査計画において、検査の進捗状況を提示するものであってもよい。
【0021】
本開示による検査管理方法は、複数の被検者のそれぞれに対して行う1以上の検査種別を含む検査情報を取得し、
検査情報に基づいて、すべての被検者についてのすべての検査を終了するまでの被検者の待ち時間および検査種別における検査の空き時間を最適化することにより、被検者毎にすべての検査を終了するまでの検査の受診順序を含む第1の検査計画、および検査種別毎にすべての検査を完了するまでの被検者の受診順序を含む第2の検査計画を導出し、
第1の検査計画および第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に提示する。
【0022】
本開示による検査管理プログラムは、複数の被検者のそれぞれに対して行う1以上の検査種別を含む検査情報を取得する手順と、
検査情報に基づいて、すべての被検者についてのすべての検査を終了するまでの被検者の待ち時間および検査種別における検査の空き時間を最適化することにより、被検者毎にすべての検査を終了するまでの検査の受診順序を含む第1の検査計画、および検査種別毎にすべての検査を完了するまでの被検者の受診順序を含む第2の検査計画を導出する手順と、
第1の検査計画および第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に提示する手順とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、被検者の待ち時間および検査種別における検査の空き時間の各々に対する最適化の度合いを調整した検査計画を容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態による放射線医療情報システムの概略構成図
図2】検査管理装置のハードウェア構成を示す図
図3】検査管理装置の機能的な構成を示す図
図4】検査情報を示す図
図5】最適化の処理を示すフローチャート
図6】ソートした検査情報を示す図
図7】第1の割り当てを説明するための図
図8】第2の割り当てを説明するための図
図9】第2の検査計画を示す図
図10】検査計画の表示画面を示す図
図11】検査計画の表示画面を示す図
図12】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
図13】複数の第1の検査計画および複数の検査計画の表示画面を示す図
図14】個々の患者の検査計画の表示画面を示す図
図15】検査の進捗状況を表示した第1の検査計画を示す図
図16】検査の進捗状況を表示した第1の検査計画を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。図1は本実施形態による検査管理装置を適用した医療情報システムの概略構成図である。図1に示すように、医療情報システム1は、本実施形態による検査管理装置2、複数の検査室端末3、複数のモニタ4、1以上の医療従事者の携帯端末5および1以上の患者の携帯端末6、および管理サーバ7が、有線または無線のネットワーク10を介して互いに通信可能な状態で接続されて構成されている。
【0026】
ネットワーク10に接続された各機器は、医療情報システム1の構成要素として機能させるためのアプリケーションプログラムがインストールされたコンピュータである。アプリケーションプログラムは、ネットワーク10に接続されたサーバコンピュータの記憶装置、若しくはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じてコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。または、DVD(Digital Versatile Disc)およびCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。
【0027】
検査室端末3は、検査を行う検査室に設置される。検査室端末3および携帯端末5は、後述するように決定された検査計画を、医師、看護師および放射線技師等の検査を行う医療従事者が確認可能なものとなっている。また、検査室端末3および携帯端末5は、検査計画の修正を受け付け、検査管理装置2に送信可能なものとなっている。
【0028】
複数のモニタ4は、例えば被検者である患者の待合室に設置される。モニタ4および携帯端末6は、患者が検査計画を確認可能なものとなっている。
【0029】
管理サーバ7は、各種検査の情報管理を行うためのシステムであり、データベースを含んで構成されたコンピュータである。なお、管理サーバ7としては、例えば、患者毎の検査を管理するRIS(Radiology Information System)、電子カルテを管理するHIS(Hosipital Information System)およびPACS(Picture Archiving and Communication Systems)等が挙げられる。管理サーバ7のデータベースには、患者情報および患者が受ける検査種別が登録されている。
【0030】
患者情報は、患者の属性情報(例えば患者ID、患者の氏名、ふりがな、性別、生年月日、年齢、身長、体重、血液型および顔写真等)、病歴、受診歴、現在の身体の状況(一人で歩けるか否か等)、および過去の検査結果等の患者に関する各種情報を含む。検査種別は患者が受ける検査を表し、例えば、放射線撮影、採血、心電図、問診、血圧測定、超音波撮影、胃カメラ、CT撮影およびMRI撮影等を含む。また、各検査種別は、当該検査を完了するまでの見込み時間の情報を含む。見込み時間の情報は、患者の状態、例えば、検査内容および自立歩行の可否(車椅子の利用の有無およびストレッチャーの利用の有無等)に応じてあらかじめ導出されて、管理サーバ7において管理される。
【0031】
また、管理サーバ7は、病院内に設置された検査装置の管理もデータベースにおいて行う。検査装置としては、放射線撮影装置、CT装置、MRI装置、胃カメラ撮影装置、超音波撮影装置および血圧計等が挙げられる。管理サーバ7は、検査装置の増設および故障等があった場合に、その旨をデータベースに登録する。
【0032】
図2は検査管理装置2のハードウェア構成を示す図である。図2に示すように、検査管理装置2はコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)11、不揮発性のストレージ13、および一時記憶領域としてのメモリ16を含む。また、検査管理装置2は、液晶等のディスプレイ14、キーボードとマウス等の入力デバイス15、およびネットワーク10に接続されるネットワークI/F(InterFace)17を含む。CPU11、ストレージ13、ディスプレイ14、入力デバイス15、メモリ16およびネットワークI/F17は、バス18に接続される。
【0033】
ストレージ13は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、およびフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としてのストレージ13には、検査管理装置2が実行する検査管理プログラム12が記憶される。CPU11は、ストレージ13から検査管理プログラム12を読み出してメモリ16に展開し、展開した検査管理プログラム12を実行する。
【0034】
なお、検査管理プログラム12は、ネットワーク10に接続された不図示のサーバコンピュータの記憶装置若しくはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて検査管理装置2にダウンロードされ、インストールされる。または、DVDおよびCD-ROM等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体から検査管理装置2にインストールされる。
【0035】
図3は検査管理装置2の機能的な構成を示す図である。図3に示すように検査管理装置2は、情報取得部21、最適化部22、評価部23、表示制御部24および通信制御部25を備える。そしてCPU11が検査管理プログラム12を実行することにより、CPU11は、情報取得部21、最適化部22、評価部23、表示制御部24および通信制御部25として機能する。
【0036】
情報取得部21は、管理サーバ7から検査情報を取得する。検査情報は、複数の患者のそれぞれに対して行う1以上の検査種別を含む。図4は検査情報を示す図である。図4に示すように、検査情報30は、複数の患者についての患者ID31、患者情報32および各患者が受ける検査33を含む。例えば、患者ID000123の患者は、患者情報32がフジタロウ、男性…であり、受ける検査33が血圧測定、放射線撮影、胃カメラおよび問診である。また、患者が受ける検査33に含まれる各検査種別は、各検査種別の見込み時間の情報を含む。例えば、フジタロウさんが受ける検査33においては、血圧測定が3分、放射線撮影が5分、胃カメラが10分、問診が5分となっている。なお、患者が小児であったり高齢であったりすると、検査に時間を要する場合がある。また、患者が車椅子を利用している等、患者の身体の状況によっては検査に時間を要する場合がある。このため、各検査の見込み時間は,患者の年齢および身体の状況等を考慮して決定される。
【0037】
なお、検査情報30をディスプレイ14に表示し、入力デバイス15からの入力により、患者情報32および患者が受ける検査33を編集できるようにしてもよい。また、情報取得部21は、入力デバイス15からの医療従事者の入力により検査情報30を取得するものであってもよい。
【0038】
また、情報取得部21は、検査に使用する検査装置に関する装置情報も管理サーバ7から取得する。装置情報は、検査に使用する検査装置の種類および台数を含む。検査装置としては、検査を行う病院内に設置された放射線撮影装置、CT装置、MRI装置、胃カメラ撮影装置、超音波撮影装置および血圧計等が挙げられる。
【0039】
なお、同一内容の検査を実施する検査装置は複数台存在する場合がある。本実施形態においては、複数台存在する検査装置により行われる同一内容の検査はそれぞれ異なる検査種別として扱うものとする。例えば、病院内にCT装置が2台ある場合、2台のCT装置による検査は同一内容の検査であるが、それぞれ異なる検査種別として扱うものとする。また、問診を複数の医師により担当する場合のように、同一内容の検査について複数の医療従事者が担当する場合がある。この場合においても、本実施形態においては、同一内容の検査であっても異なる検査種別として扱うものとする。
【0040】
最適化部22は、検査情報に基づいて、すべての患者についてのすべての検査を完了するまでの患者の待ち時間および検査種別における検査の空き時間を最適化する。そしてこれにより、患者毎にすべての検査を完了するまでの検査の受診順序を含む第1の検査計画、および検査種別毎にすべての検査を完了するまでの患者の受診順序を含む第2の検査計画を導出する。
【0041】
ここで、複数の患者Pa,Pb,Pc,…が複数の検査Ma,Mb,Mc,…を受診するに際し、ある検査が終了してから次の検査が始まるまでの患者の待ち時間を最小化するには、複数の検査を患者毎に直列に行えばよい。すなわち、患者Paが検査Maを終えると、次の患者Pbが検査Maを開始するが、その際に、2番目以降の患者は、検査開始までの待ち時間がないように遅い検査開始時刻を計画しておけば待ち時間を無くすことができる。
【0042】
一方、患者の待ち時間を最小化しようとすると、検査装置および検査を担当する医療従事者の稼働率は下がるため、検査種別における検査の空き時間が多くなる。すなわち、ある検査種別において、ある患者の検査が終了してから次の患者の検査が始まるまでの、検査が行われていない時間が多くなる。このため、すべての患者についてすべての検査が終了する時刻も遅くなってしまう。
【0043】
例えば、朝9時に検査を開始するとし、患者Paは9時から検査開始予定、患者Pbは10時から検査開始予定とした場合、患者Pbは10時に来院してもらえば、9時から10時の間は患者Pbの待ち時間にはならない。
【0044】
しかしながら、9時から始めた患者Paの検査が10分で終わったとすると、10時までその検査は行われないため、その検査については、次の患者の検査が開始されるまでの空き時間が生じる。このため、患者の待ち時間の最小化と、検査の空き時間の最小化の双方をバランスよく達成することにより、患者の待ち時間および検査種別における検査の空き時間を最適化することが必要である。なお、本実施形態において、「待ち時間」は各患者が検査と検査との間に待つ時間の総和とし、「空き時間」は各検査種別において、ある被検者の検査が終了してから次の被検者の検査が始まるまでの検査が行われていない時間の総和とする。
【0045】
以下、本実施形態における患者の待ち時間および検査種別の空き時間の最適化について説明する。図5は最適化の処理を示すフローチャートである。
【0046】
本実施形態においては、病院の診療時間内において、(1)ある検査種別に対して同一時刻に複数の患者が割り当てられないようにする、(2)ある患者が同時に受けられる検査は1種類である、という条件の下、(A)患者の待ち時間を少なくする、(B)検査種別における検査の空き時間を少なくする、および(C)すべての検査が早期に終了する(医療従事者の業務が早期に終了する)の3つの条件が満たされるように最適化を行う。
【0047】
まず、本実施形態において、最適化部22は、取得した検査情報30に基づいて、検査を行う複数の患者のそれぞれについての総検査時間を導出する(ステップST1)。総検査時間は、各患者が受けるすべての検査に要する時間の総和である。総検査時間には、患者の待ち時間は含まれない。そして、最適化部22は、複数の患者を総検査時間が短い順にソートする(ステップST2)。なお、総検査時間が長い順に複数の患者をソートしてもよい。
【0048】
図6はソートした検査情報を示す図である。本実施形態においては、検査情報に含まれる患者は20名であり、図6において患者に付与した01~20の番号は、検査情報に含まれる20名の患者を総検査時間が短い順にソートした場合における総検査時間が短い順に付与した番号である。また、図6においては、患者に付与した01~20の番号と患者IDが対応付けられている。なお、総検査時間が同一の場合には、年齢が若い順にする等、適宜順序を決定すればよい。また、図6に示す検査情報においては、検査種別は7種類あり、それぞれA~Gのアルファベットで示している。なお、病院内においては、検査Aを実施可能な検査装置および検査Dを実施可能な検査装置は、それぞれ2台あるものとする。このため、以降の説明においては、検査種別は9種類あるものとする。
【0049】
最適化部22は、患者01~20を縦軸に、時間を横軸に設定し、患者01から順に、検査種別および検査種別に要する時間を識別可能に示す検査指標を横軸に時系列順に並べることにより第1の検査計画を導出する。このために、最適化部22は、ソートされた順に、患者01~20を縦軸に沿って配置しつつ、患者間において同一の検査種別の時間が重複しないように、検査指標を横軸に沿って時間が早い側から順に患者毎に割り当てる第1の割り当てを行う(ステップST3)。
【0050】
図7は第1の割り当てを説明するための図である。図7に示すように縦軸には患者が設定され、横軸には時間が設定されている。まず、患者01について、患者01の検査はA,B,C,Dである。このため、検査A,B,C,Dの検査時間の長さに対応する横幅を有する検査指標を、検査A,B,C,Dの順で時間が早い方から順に並べる。図7において検査指標は横幅が検査時間の長さを示す棒グラフ状の図形であり、図形の領域内に検査種別を表すアルファベットA~Gが示されている。なお、検査種別のアルファベットに代えてまたはこれに加えて検査指標の色を検査種別に応じて異なるものとしてもよい。また、検査指標の形状を検査種別に応じて異なるものとしてもよい。
【0051】
なお、検査Aを行う検査装置は2台あるため、それぞれの検査装置で行う検査をA1,A2としている。また、検査Dを行う検査装置も2台あるため、それぞれの検査装置で行う検査をD1,D2としている。このため、患者01については、時間軸の早い方から順に、検査A1,B,C,D1の検査指標が並べられる。
【0052】
次いで、患者02について、患者02の検査はA,B,C,D,Eである。検査Aを行う検査装置は2台あるため、患者01が検査Aを行う時刻と同時刻から検査A2の検査指標を配置し、次いで、検査D1,Bの検査指標を配置する。続いて、患者01の検査Cの終了を待って検査Cの検査指標を配置し、最後に検査Eの検査指標を配置する。以上の処理をすべての患者についてソートされた順序で繰り返すことにより、第1の割り当てを終了する。なお、第1の割り当ては時間が早い方から順に検査種別を割り当てているため、患者07~20については、ある検査が終了してから次の検査が始まるまでの待ち時間が多いものとなっている。
【0053】
第1の割り当て後、最適化部22は、患者間において同一の検査種別の時間が重複しないように、患者毎の検査指標を横軸に沿って時間が遅い側へ向けて割り当てる第2の割り当てを行う。第2の割り当てを行う順序は、第1の割り当てを行った順序とは逆の順序で行う。すなわち、総検査時間が長い患者20から順に行う。第2の割り当てを行うに際し、最適化部22は、第1の割り当ての結果において、検査指標を時間が遅い方に詰めることができる患者が存在するか否かを判定する(患者存在:ステップST4)。ここで、「検査指標を時間が遅い方に詰めることができる患者」とは、第1の割り当ての結果において、ある検査が終了してから次の検査が始まるまでの待ち時間がある患者と同義である。ステップST4が肯定されると、最適化部22は、第2の割り当てを行う(ステップST5)。
【0054】
図8は第2の割り当てを説明するための図である。まず、図7に示す第1の割り当ての結果においては、患者20について、検査Bと検査Cとの間に待ち時間が含まれる。この待ち時間において検査Bは他の患者と重複しない。このため、最適化部22は患者20の検査Bを検査C側に詰める。また、患者20について検査A2と検査Bとの間に待ち時間が含まれる。この待ち時間において検査Aは他の患者と重複しない。このため、最適化部22は患者20の検査Aを検査B側に詰める。これにより、患者20に関して、検査開始時刻は遅くなるものの、検査間の待ち時間は0となる。
【0055】
続いて、ステップST4に戻り、最適化部22は、ステップST4が否定されるまで、患者19~患者01の順序でステップST4,ST5の処理を繰り返す。ステップST4が否定されると、第2の割り当てが終了する。これにより、第1の検査計画が導出される(ステップST6)。
【0056】
次いで、最適化部22は、縦軸に検査種別を、横軸に時間を設定し、検査種別毎に患者および患者の検査に要する時間を識別可能に示す患者指標を横軸に時系列順に並べることにより第2の検査計画を導出する(ステップST7)。これにより、最適化の処理を終了する。第2の検査計画は第1の検査計画に基づいて導出される。なお、患者指標が被検者指標の一例である。
【0057】
ここで、第1の検査計画は縦軸に患者01~20を、横軸に時間を設定し、患者毎に検査種別および検査種別に要する時間を表す検査指標が割り当てられている。このため、最適化部22は、第1の検査計画を、縦軸に検査種別、横軸に時間を設定し、検査種別毎に患者および患者の検査に要する時間を表す患者指標に変換することにより、第2の検査計画を導出する。図9は第2の検査計画を示す図である。第2の検査計画において、患者指標の横幅が各検査指標においてその患者の検査に要する時間に対応する。
【0058】
評価部23は、第1の検査計画および第2の検査計画の評価値を導出する。評価部23が導出する評価値は、上述した(A)患者の待ち時間を少なくする、(B)検査間の空き時間を少なくする、および(C)すべての検査が早期に終了する、の3つの条件についての評価値である。ここで、患者iが検査種別jの検査を行うための待ち時間をwijとすると、患者iの待ち時間の合計は、以下の式(1)により算出できる。なお、本実施形態においては、i=1~20であり、j=1~9である。
【数1】
【0059】
すべての患者の待ち時間の平均Wは、検査を受ける患者数をN(本実施形態においては、N=20)とすると、以下の式(2)により算出できる。
【数2】
【0060】
ある検査種別jにおける検査の空き時間は、検査種別jの検査kの開始時刻をtskj、終了時刻をtekj、当日の検査種別jの稼働時間(検査を行うことが可能な時間)をTjとすると、以下の式(3)により算出できる。
【数3】
【0061】
各検査に要する時間tekj-tskjは、あらかじめ実測しておくか、または推定しておけばよい。例えば、検査時間は直前の検査からの装置の段取り替え(例えばMRI装置を用いた検査でのMRI装置のコイル交換、および放射線撮影装置における管球の配置変更等)、検査内容、および患者の状態に依存すると考えられるため、これらを考慮して推定することが好ましい。また、小児および高齢の患者では、移動、準備および検査に時間を要することも考えられる。このため、検査時間を年齢の関数として推定するようにしてもよい。または、過去の同様条件の検査の実績に基づいて推定するようにしてもよい。
【0062】
すべての検査種別の検査の空き時間の平均Rは、検査種別の数をM(本実施形態においてはM=9)とすると、以下の式(4)により算出できる。なお、検査種別の数は1つの検査を複数の検査装置により行う場合、検査装置の数に基づく。
【数4】
【0063】
当日の検査種別jの検査終了時刻Ujは、以下の式(5)により算出できる。Maxは最も遅い時間を表す。
【数5】
【0064】
すべての検査種別の検査終了時刻の平均Uは、以下の式(6)により算出できる。
【数6】
【0065】
評価部23は、以下の式(7)により評価値Sを算出する。
S=-W-R-U (7)
【0066】
表示制御部24は、第1の検査計画および第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に提示する。具体的には、第1の検査計画および第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能にディスプレイ14に表示する。図10は検査計画の表示画面を示す図である。図10に示すように表示画面40には第1の検査計画41および第2の検査計画42が同時に表示されている。また、表示画面40には評価部23が導出した評価値43も表示されている。評価値43は上述したSの値を用いればよいが、W,R,Uの値のいずれかを用いてもよい。また、第1の検査計画と対応付けてWの値を評価値として表示し、第2の検査計画と対応付けてRおよびUの値を評価値として表示するようにしてもよい。
【0067】
なお、図11に示すように、表示画面40に切り替えボタン44を表示し、切り替えボタン44の操作あるいは入力デバイス15の操作により、第1の検査計画41と第2の検査計画42とを切り替え可能に表示するようにしてもよい。
【0068】
また、入力デバイス15を用いて表示された第1および第2の検査計画の修正を行うことができるようにしてもよい。例えば、患者の検査順序を入れ替えたり、緊急の患者の検査を割り込ませたり、当日キャンセルになった患者を削除したりすることができるようにしてもよい。なお、第1および第2の検査計画が修正された場合、最適化部22が第1および第2の検査計画を導出し直し、評価部23が評価値を導出し直すようにしてもよい。
【0069】
なお、第1および第2の検査計画の修正は、検査の開始前に行ってもよく、検査の開始後に行ってもよい。検査の開始後においては、最適化部22は、終了した検査種別以外の検査種別、すなわち未了の検査種別について、第1および第2の検査計画を導出し直すようにすればよい。また、評価部23は、未了の検査種別について評価値を導出し直すようにすればよい。なお、検査開始後の修正は、検査室端末3および医療従事者の携帯端末5からの指示により行うようにしてもよい。
【0070】
通信制御部25は、導出された第1および第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に提示する。具体的には、通信制御部25は、第1および第2の検査計画を複数の検査室端末3、待合室のモニタ4、医療従事者の携帯端末5および患者の携帯端末6に送信することにより提示する。送信先の検査室端末3、モニタ4、医療従事者の携帯端末5および患者の携帯端末6は、第1および第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に表示する。
【0071】
なお、本実施形態においては、第1および第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に表示するものであるが、切り替え可能に表示する場合、検査室端末3および医療従事者の携帯端末5においては第2の検査計画を初期表示するものであってもよい。また、モニタ4および患者の携帯端末6においては第1の検査計画を初期表示するものであってもよい。
【0072】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図12は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、情報取得部21が、管理サーバ7から検査情報を取得する(ステップST11)。次いで、最適化部22が、検査情報および装置情報に基づいて、上記図5に示す最適化の処理にしたがって第1および第2の検査計画を導出する(ステップST12)。そして、表示制御部24が、第1および第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に提示する(ステップST13)。
【0073】
続いて、最適化部22は、入力デバイス15を用いての検査計画の修正指示があったか否かを判定する(ステップST14)。ステップST14が肯定されると、最適化部22は第1および第2の検査を修正し(ステップST15)、ステップST13の処理に戻る。ステップST14が否定されると、通信制御部25が、検査室端末3、モニタ4、医療従事者の携帯端末5および患者の携帯端末6に第1および第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に提示し(ステップST16)、処理を終了する。
【0074】
このように、本実施形態においては、第1の検査計画および第2の検査計画を同時にまたは切り替え可能に提示するようにした。このため、患者の待ち時間および検査種別における検査の空き時間の各々に対する最適化の度合いを調整した検査計画を容易に確認できる。また、患者の待ち時間と検査種別における検査の空き時間のいずれか一方しか提示しない場合と比較して、検査計画の良否をバランスよく評価できる。
【0075】
また、提示された第1および第2の検査計画を入力デバイス15を用いて修正できるようにしたため、経験豊富な熟練者でなくても容易に検査計画を行うことができる。
【0076】
なお、上記実施形態においては、図5に示すフローチャートにしたがって、患者の待ち時間および検査種別における検査の空き時間の双方の最適化を行っているが、これに限定されるものではない。例えば、上述した患者の待ち時間の平均W、検査の空き時間の平均Rおよび検査終了時刻の平均Uから、以下の式(8)により評価値Sを導出し、評価値S最大となるように患者の待ち時間および検査種別の空き時間の双方の最適化を行うようにしてもよい。式(8)において、w,r,uは重み係数であり、0以上の実数である。
S=-w・W-r・R-u・U (8)
【0077】
なお、最適化の方針により、重み係数w,r,uを適宜調整するようにしてもよい。または、重み係数w,r,uを入力デバイス15からの指示により調整できるようにしてもよい。ここでW,R,U は平均値であるため、患者数の増減および検査種別の追加により係数を大きく変更する必要はないが、WおよびUの単位(次元)は時間であり、適当な調整が必要である。また、式(8)における評価値Sの各項は、全体を定数倍しても最適化の状況は変わらないので、重み係数w,r,uのうちで、0にしない係数(利用する項)のいずれかは1に固定してもよい。
【0078】
ここで、Wを小さくすることは、患者毎の検査の連続性が高く患者の待ち時間が少ないことに対応する。Rを小さくすることは、検査種別毎に検査の間隔が狭く空き時間が少ないことに対応する。Uが小さいことは、検査全体が早い時間帯に終了することに対応する。式(8)においてr=0として最適化を行うと、患者の待ち時間が少なくなる一方、検査の空き時間が少なくなる保証はない。同様に、w=0とすると、検査の空き時間は少なくなるが、患者の待ち時間が少なくなる保証はない。
【0079】
なお、式(8)における評価値Sを算出する際に、検査についての診療報酬を考慮する項を追加するようにしてもよい。
【0080】
また、特にパンデミックのような状況では、例えば、患者の検査室での不要な滞在時間、すなわち待ち時間を短くすること、あるいは同一検査種別において、前の患者と一定の時間間隔を置いて患者同士が検査室で近接しないようにすること(すなわち空き時間を長くする)等を達成できるように、重み係数w,r,uを調整して評価値を導出して最適化を行うようにすれば、院内感染の確率を低下させることができる。
【0081】
また、評価値の導出は式(7)あるいは式(8)に示す手法には限定されない。例えば、W,R,Uの統計値(平均値、重みづけ平均値、中央値、最大値および最小値)を評価値として導出するようにしてもよい。
【0082】
また、重み係数w,r,uを変更した複数の評価値を導出し、導出した複数の評価値のそれぞれに基づいて異なる手法によって最適化を行うことにより、第1および第2の検査計画を導出するようにしてもよい。この場合、複数の第1の検査計画のそれぞれおよび複数の第2の検査計画のそれぞれを同時にまたは切り替え可能に提示すればよい。図13は複数の第1の検査計画および複数の第2の検査計画の表示画面50を示す図である。図13に示すように、表示画面50には、複数(ここでは3つ)の第1の検査計画51A~51Cおよび複数(ここでは3つ)の第2の検査計画52A~52Cが表示される。なお、第1の検査計画51Aと第2の検査計画52Aとが対応し、第1の検査計画51Bと第2の検査計画52Bとが対応し、第1の検査計画51Cと第2の検査計画52Cとが対応する。また、表示画面50には、第1および第2の検査計画51A~51C、52A~52Cに対応する評価値53A~53Cも表示されている。
【0083】
操作者は表示された複数の第1および第2の検査計画51A~51C、52A~52Cから所望とする検査計画を選択することにより、検査計画を確定させることができる。
【0084】
また、最適化を行うに際して、車椅子を使用する患者は離れた場所にある検査室を行き来することは困難である。このため、車椅子を使用する患者については、移動距離が小さくなるように最適化を行って第1および第2の検査計画を導出するようにしてもよい。なお、検査室の配置等に関して移動の負荷および時間が無視できない状況では、移動時間を明示的に予測し、評価値に反映してもよい。
【0085】
また、検査種別には、実施する順序の前後が決まっているものがあり、検査前の準備については準備と検査の時間間隔が決まっているものがある。これらの制約が正しく反映されるように最適化を行って第1および第2の検査計画を導出することが好ましい。
【0086】
また、特定の患者についての特定の検査種別を、固定された時間に行う必要がある場合がある。例えば、患者03の検査Cを13時から実施する必要がある場合がある。このような場合、最適化部22は第1の割り当てを行う際に、まず患者03の検査Cを割り当て、その後患者01から順に第1の割り当てを行うようにすればよい。
【0087】
また、最適化のアルゴリズムは、上記に限定されるものではない。公知の任意のアルゴリズムを採用可能である。この際、厳密解を得るためには演算時間が長くなることも考えられるため、現実的に許容できる解を、公知のヒューリスティックな手法(Greedy algorithm, Simulated annealing, Tabu search等)で求めるようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態において、最適化部22において、個々の患者についての検査計画を導出するようにしてもよい。例えば、フジタロウ用の検査計画を導出し、導出した検査計画をフジタロウの携帯端末6に送信するようにしてもよい。この場合の携帯端末6における表示画面を図14に示す。図14に示すように、携帯端末6の表示画面56には、第1の検査計画に基づくフジタロウの本日の検査予定57が表示される。また、表示画面56には切り替えボタン58も表示されており、切り替えボタン58を操作することにより、検査予定57を図9に示す第2の検査計画の画面に切り替えることができる。
【0089】
なお、患者の携帯端末6への第1および第2の検査計画の提示は、携帯端末6の操作により行ってもよく、プッシュ型で行うようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態において、最適化部22において、個々の検査種別についての検査計画を導出するようにしてもよい。例えば、検査Aについての検査計画を導出し、検査Aを行う検査室にある検査室端末3または検査Aを行う医療従事者の携帯端末5に導出した検査計画を送信するようにしてもよい。この場合も、切り替えボタンを表示し、切り替えボタンを操作することにより、検査Aのスケジュールを第1の検査計画の画面に切り替えることができる。
【0091】
なお、医療従事者の携帯端末5への第1および第2の検査計画の提示は、携帯端末5の操作により行ってもよく、プッシュ型で行うようにしてもよい。
【0092】
また、上記実施形態においては、1日のうちに行う検査について第1および第2の検査計画を導出しているが、1日のうちに行うことができる見込み検査数以上の検査についての検査情報を用いて、当日に可能な第1および第2の検査計画を導出するようにしてもよい。また、複数日に亘って第1および第2の検査計画を導出するようにしてもよい。
【0093】
また、上記実施形態においては、単一病院内での検査について第1および第2の検査計画を導出しているが、これに限定されるものではない。地域連携している複数の病院またはグループ病院間の連携を考慮して第1および第2の検査計画を導出するようにしてもよい。
【0094】
また、上記実施形態において、表示された第1および第2の検査計画において、検査の進捗状況を表示するようにしてもよい。図15は検査の進捗状況を表示した第1の検査計画を示す図である。図15において、終了した検査の指標はグレーアウトしており、実行中の検査の指標はハイライトされている。なお、図15において指標がハイライトされていることを指標にハッチングを付与することにより示している。また、図16に示すように第1の検査計画の進捗状況をイナズマ線60により表示するようにしてもよい。また、この場合、個々の患者に対して現時点での待ち時間および進捗状況を反映させた待ち時間を提示するようにしてもよい。なお、検査の進捗状況は、検査室端末3から患者毎に検査が終了したことを管理サーバ7に送信し、管理サーバ7からその情報を取得することにより導出するようにすればよい。
【0095】
また、このような検査の進捗状況を管理サーバ7において管理し、予定からずれが発生しやすい検査を分析して、検査計画を改善するようにしてもよい。例えば、病院経営の観点から、ボトルネックになっている検査種別を抽出し、その検査種別を行う検査装置を増設および検査担当者を増員することにより、より効率よく検査を進められないか検討する等の経営分析が可能になる。
【0096】
また、上記実施形態においては、患者の検査についての第1および第2の検査計画を導出しているが、これに限定されるものではない。健康診断を行う際の受診者を被検者として検査を行う場合についても本開示の技術を適用できる。
【0097】
また、上記実施形態においては、図8に示す第1の検査計画において、縦軸の患者を横軸に時間を設定しているが、これに限定されるものではない。縦軸に時間を、横軸に患者を設定してもよい。
【0098】
また、上記実施形態においては、図9に示す第2の検査計画において、縦軸の検査種別を横軸に時間を設定しているが、これに限定されるものではない。縦軸に時間を、横軸に検査種別を設定してもよい。
【0099】
なお、上記各実施形態において、例えば、情報取得部21、最適化部22、評価部23、表示制御部24および通信制御部25といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0100】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0101】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0102】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 医療情報システム
2 検査管理装置
3 検査室端末
4 モニタ
5 医療従事者の携帯端末
6 患者の携帯端末
7 管理サーバ
10 ネットワーク
11 CPU
12 最適化プログラム
13 ストレージ
14 ディスプレイ
15 入力デバイス
16 メモリ
17 ネットワークI/F
18 バス
21 情報取得部
22 最適化部
23 評価部
24 表示制御部
25 通信制御部
30 検査情報
31 患者ID
32 患者情報
33 患者が受ける検査
40 表示画面
41 第1の検査計画
42 第2の検査計画
43 評価値
44 切り替えボタン
50,56 表示画面
51A~51C 第1の検査計画
52A~52C 第2の検査計画
53A~53C 評価値
57 検査予定
58 切り替えボタン
60 イナズマ線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16