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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137051
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】ハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/60 20220101AFI20230922BHJP
   A01K 67/033 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B09B3/60 ZAB
A01K67/033 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043046
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】519008810
【氏名又は名称】株式会社フライハイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】木下 敬介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 稔弥
(72)【発明者】
【氏名】石川 光祥
(72)【発明者】
【氏名】加藤 高之
(72)【発明者】
【氏名】山口 竜
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004BA04
4D004CA17
4D004CB03
4D004CB05
4D004DA03
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】有機性廃棄物と幼虫とを確実に分離して回収することのできるハエ目の昆虫の幼虫回収装置を提供する。
【解決手段】昆虫の幼虫回収装置は、ハエ目に属する昆虫の幼虫を飼育する培地が設けられる処理槽と、処理槽の下に重ねて配置され、培地で飼育された幼虫を回収する回収槽と、処理槽と回収槽との間に重ねて配置された複数の分離槽とを有する。処理槽は底面に幼虫が通ることのできる複数の第1の貫通孔を有する。複数の分離槽は、底面の一部である第1の領域に幼虫が通ることのできる複数の第2の貫通孔を有する第1の分離槽と、底面の一部である第2の領域に幼虫が通ることのできる複数の第3の貫通孔を有する第2の分離槽とを含む。そして、第1の領域と第2の領域とは平面視で重ならないように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地で飼育された前記幼虫を回収する回収槽と、
前記回収槽上に重ねて配置された複数の分離槽と、
を有し、
前記複数の分離槽は、
底面の一部である第1の領域に、前記幼虫が通ることのできる複数の第1の貫通孔を有する第1の分離槽と、
底面の一部である第2の領域に、前記幼虫が通ることのできる複数の第2の貫通孔を有する第2の分離槽と、
を含み、
前記第1の領域と前記第2の領域とが、平面視で重ならないように配置されていることを特徴とするハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置。
【請求項2】
前記第1の貫通孔、及び前記第2の貫通孔の孔径が3mm以上5mm以下であり、
複数の前記第1の貫通孔の間隔、及び複数の前記第2の貫通孔の間隔が3mm以上15mm以下である、請求項1に記載のハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置。
【請求項3】
ハエ目に属する昆虫の幼虫を飼育する培地が設けられる処理槽と、
前記処理槽の下に重ねて配置され、前記培地で飼育された前記幼虫を回収する回収槽と、
前記処理槽と前記回収槽との間に重ねて配置された複数の分離槽と、
を有し、
前記処理槽は、底面に前記幼虫が通ることのできる複数の第1の貫通孔を有し、
前記複数の分離槽は、
底面の一部である第1の領域に、前記幼虫が通ることのできる複数の第2の貫通孔を有する第1の分離槽と、
底面の一部である第2の領域に、前記幼虫が通ることのできる複数の第3の貫通孔を有する第2の分離槽と、
を含み、
前記第1の領域と前記第2の領域とが、平面視で重ならないように配置されていることを特徴とするハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置。
【請求項4】
前記第1の貫通孔、前記第2の貫通孔、及び前記第3の貫通孔の孔径が3mm以上5mm以下である、請求項3に記載のハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置。
【請求項5】
前記第2の分離槽の底面から立設された障壁を有し、前記障壁が、前記第2の分離槽の底面の、前記第2の領域、及び前記第1の領域と重なる領域、以外の領域を隠すように設けられている、請求項1乃至4のいいずれか一項に記載のハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置。
【請求項6】
平面視において、前記第1の領域と前記第2の領域との間にオフセット領域を有する、請求項1乃至4のいいずれか一項に記載のハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置。
【請求項7】
前記複数の分離槽、及び前記回収槽は、上端に通風口が設けられている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置。
【請求項8】
前記通風口に風を送る送風機をさらに有する、請求項7に記載のハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置。
【請求項9】
前記第1の領域及び前記第2の領域が布地で形成され、前記布地の布目が、前記幼虫が通ることのできる程度に粗い、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、ハエ目に属する昆虫の幼虫を飼育し回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イエバエの幼虫は、成長段階においては適度な湿度がある環境を好んで生息し、蛹化するときに比較的乾燥した環境に移動する習性を有している。このような習性を利用して、イエバエの幼虫に有機性廃棄物を摂食させ、成長した幼虫を回収する装置が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に開示される装置は、イエバエの幼虫の餌とする有機廃棄物を収容し幼虫を飼育する飼育容器が用いられる。飼育容器は有機廃棄物を収容する収容部と、蛹化するイエバエの幼虫が這い出す這い出し口とを備え、這い出し口は5~15度の傾斜壁面で形成されている。また、特許文献2に開示される装置も、飼育容器に蛹化するイエバエの幼虫を誘導する傾斜壁面が設けられた構造を有している。そして、これらの装置は、傾斜壁面を登ったイエバエの幼虫は、傾斜壁面の外端から下部に設けられた回収容器に落下し、回収される仕組みを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-020190号公報
【特許文献2】特開2020-110751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のイエバエの幼虫を回収する装置は、飼育容器から全ての幼虫を回収することができず、餌として与えられる有機性廃棄物(幼虫が摂食後の残存物は飼料原料、肥料原料となる)の中に幼虫が残留してしまう場合があることが問題となる。飼育容器には傾斜壁面を設ける必要があるため、餌として与えられる有機性廃棄物の厚さが不均一となり、幼虫が摂食することによる有機廃棄物の処理が均一に進まず一部が未処理のまま回収されてしまうことが問題となる。また、回収槽に幼虫と共に有機性廃棄物の残渣が混入してしまうと、回収物(幼虫)の品質が低下することが問題となる。
【0006】
本発明の一実施形態はこのような問題に鑑みなされたものであり、有機性廃棄物の均一な処理を行い、有機性廃棄物と幼虫とを確実に分離して回収することのできるハエ目の昆虫の幼虫回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、ハエ目に分類される昆虫の幼虫と、その幼虫とほぼ同等の大きさの幼虫の死骸や蛹、またはそれよりも小さい有機性廃棄物の残存物とを効率よく分離するために、幼虫が蛹化するときに適切な環境を求めて移動する習性を利用して、適切な間隔の貫通孔を有する底面を備えた分離槽で、幼虫の培地に存する有機性廃棄物又は処理物残渣から幼虫を分離させることを要旨とする。本発明の一実施形態に係る幼虫回収装置は複数段の分離槽を有し、上下に隣り合う段における貫通孔の領域を重畳しないように配置することで、幼虫と培地からこぼれ出たから、幼虫の死骸や蛹、またはそれよりも小さい有機性廃棄物の残存物を効率よく分離するようにしている。
【0008】
複数の貫通孔が適切な間隔で配置されることにより、幼虫は貫通孔を通過して下段の分離槽へ落下する。一方、隣り合う貫通孔の間の連続領域において、幼虫の死骸や蛹、またはそれよりも小さい有機性廃棄物の残存物は残置する。また、分離槽を複数段とすることで、昆虫の移動および落下の繰り返しにより、幼虫に付着した有機性廃棄物の残存物は、幼虫から分離する。これらのことから、処理物残渣から幼虫を効率よく分離することができる。
【0009】
本発明の一実施形態に係るハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置は、培地で飼育された幼虫を回収する回収槽と、培地と回収槽との間に重ねて配置された複数の分離槽とを有する。複数の分離槽は、底面の一部である第1の領域に幼虫が通ることのできる複数の第1の貫通孔を有する第1の分離槽と、底面の一部である第2の領域に幼虫が通ることのできる複数の第2の貫通孔を有する第2の分離槽とを含む。第1の領域と第2の領域とは平面視で重ならないように配置されている。
【0010】
本発明の一実施形態に係るハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置は、ハエ目に属する昆虫の幼虫を飼育する培地が設けられる処理槽と、処理槽の下に重ねて配置され、培地で飼育された幼虫を回収する回収槽と、処理槽と回収槽との間に重ねて配置された複数の分離槽とを有する。処理槽は底面に幼虫が通ることのできる複数の第1の貫通孔を有する。複数の分離槽は、底面の一部である第1の領域に幼虫が通ることのできる複数の第2の貫通孔を有する第1の分離槽と、底面の一部である第2の領域に幼虫が通ることのできる複数の第3の貫通孔を有する第2の分離槽とを含む。そして、第1の領域と第2の領域とは平面視で重ならないように配置されている。
【0011】
本発明の一実施形態において、第2の分離槽は底面から立設された障壁を有し、障壁が第2の分離槽の底面の、第2の領域と、第1の領域と重なる領域以外の領域とを隠すように設けられていてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態において、平面視において、第1の領域と第2の領域との間にオフセット領域を有していてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、複数の分離槽及び回収槽は、上端に通風口が設けられていてもよい。また、通風口に風を送る送風機が設けられていてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、第1の領域及び第2の領域が布地で形成され、布地の布目が、幼虫が通ることのできる程度に粗いものであってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、第1の貫通孔、第2の貫通孔、及び第3の貫通孔の孔径は3mm以上5mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態によれば、ハエ目に属する昆虫の幼虫を飼育する処理槽の底面に幼虫が通ることのできる貫通孔を設け、下段に回収槽を設けると共に、処理槽と回収槽との間に、多段に構成された分離槽を設け、分離槽の底面に設けられた貫通孔が、相互に重ならないように設けられることで、有機性廃棄物又は処理物残渣と、幼虫とを確実に分離することができ、回収槽に幼虫以外の落下物(異物)が混入しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る幼虫回収装置の構成を示し、(A)及び(B)はその断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る幼虫回収装置の構成を示し、(A)~(D)はその上面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る幼虫回収装置の分離槽の構成を示し、(A)~(C)はその上面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る幼虫回収装置を示し、(A)及び(B)はその使用方法を説明する図である。
図5】本発明の一実施形態に係るハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置の使用方法を説明する図である。
図6】本発明の一実施形態に係る幼虫回収装置の分離槽の構成を示し、(A)~(C)はその上面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る幼虫回収装置の分離槽の構成を示し、(A)~(C)はその上面図である。
図8】本実施形態に係る幼虫回収装置の構成を示す断面図である。
図9】本実施形態に係る幼虫回収装置の構成を示し、(A)は上面図、(B)は断面図である。
図10】本実施形態に係る幼虫回収装置の構成を示し、(A)は上面図、(B)は断面図である。
図11】本実施形態に係る幼虫回収装置の構成を示し、(A)は上面図、(B)は断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る幼虫回収装置の構成を示す断面図である。
図13】本発明の一実施形態に係る幼虫回収装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の長さ、幅、高さ、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にA、Bなどを付した符号)を付して詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0019】
本発明の一実施形態における幼虫回収装置は、ハエ目に属する昆虫の幼虫に有機性廃棄物を摂食させて飼育し、幼虫が蛹になる前の段階で、ハエ目に属する昆虫の幼虫と、該幼虫が摂食した後の有機性廃棄物や幼虫の死骸、蛹などの残存物(以下、「処理物残渣」ともいう。)と、を分離して回収する装置である。なお、以下の説明において、特段の断りのない限りハエ目に属する昆虫の幼虫を単に「幼虫」というものとする。また、幼虫の成長段階に応じて「1日齢幼虫」、「2日齢幼虫」、「3日齢幼虫」、「4日齢幼虫」、「5日齢幼虫」、「6日齢幼虫」、「7日齢幼虫」、「8日齢幼虫」と呼ぶこともあるものとする。
【0020】
本明細書において「処理物残渣」とは、上記で述べたように有機性廃棄物の残存物であり、幼虫の排泄物(低濃度有機分解物)、有機性廃棄物にもともと含まれていたか、又は有機性廃棄物に何らかの処理を加える過程で混入した微生物の排泄物、乾燥した有機性廃棄物(昆虫が摂食せずに残存した有機性廃棄物)、蛹を含むものとする。
【0021】
本明細書において、処理物残渣から幼虫を分離するというときの「分離」とは、処理物残渣と幼虫とを分けることを示し、以下の実施形態で述べられるように、幼虫が処理物残渣から貫通孔を通って外に移動(脱出)することを含むものとする。なお、処理物残渣に残存する幼虫の死骸や蛹などを篩いなどにより取り除くことも分離の範囲に含まれるものとする。
【0022】
本明細書において、幼虫を回収するとは、分離された幼虫を所定の領域又は容器等に集めることをいうものとする。以下に述べる実施形態で述べられるように、有機性廃棄物が堆積された培地(以下、「培地」という。)から貫通孔を通して幼虫を落下させ、容器の中に溜めることを回収するというものとする。
【0023】
[第1実施形態]
本発明の一実施形態に係るハエ目に属する昆虫の幼虫回収装置(以下、単に「幼虫回収装置」ともいう。)の詳細を、図1及び図2を参照して説明する。以下の説明では、昆虫の幼虫としてイエバエの幼虫を例に説明するが、イエバエの幼虫の他に、センチニクバエ、ミズアブ、その他のハエ目に属する昆虫の幼虫を使用することができる。
【0024】
図1(A)は、本実施形態に係る幼虫回収装置100の主要な構成を示す断面図である。幼虫回収装置100は、回収槽104、及び複数の分離槽105を含む。回収槽104の上方には培地が形成される処理槽102が設けられる。幼虫回収装置100は、下から上に向かって、回収槽104、複数の分離槽105、処理槽102が積み重ねられた構造を有する。図1(A)は、複数の分離槽105が、第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、第3の分離槽105Cを含む一例を示す。図2(A)~(D)は、これらの部材の内、処理槽102と複数の分離槽105(第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、第3の分離槽105C)の上面図を示す。
【0025】
処理槽102は幼虫を飼育する培地が設けられる容器である。培地は有機性廃棄物201によって形成される。回収槽104は処理槽102で飼育された幼虫を回収する容器である。回収槽104は処理槽102の下側に配置される。分離槽105は、処理槽102から這い出た幼虫を回収槽104に導く経路を形成すると共に、処理槽102からこぼれ出た有機性廃棄物又はその残渣が回収槽104に混入しないようにする容器である。分離槽105は処理槽102と回収槽104との間に挟まれて使用される。
【0026】
図1(A)に示すように、処理槽102は、底面1021と、底面1021を囲む壁面1022とを有し、天井面が開放された箱形の形状を有する。処理槽102には、有機性廃棄物201が底面1021の全面を覆うように敷き詰められ、幼虫を飼育するための培地が形成される。処理槽102は、有機性廃棄物201を所定の厚さで敷き詰めることのでき、幼虫が簡単に外側に這い出ない程度の深さ(壁面1022の高さ)を有する。
【0027】
幼虫は湿度の高い環境を好み、培地の中を蠕動しながら餌食を摂食する。処理槽102に形成される培地の状態は、幼虫の成長に影響を与える。培地の水分量が多い場合や培地が厚すぎる場合には、幼虫が呼吸困難になり生存率が低下する。そのため、処理槽102へ投入される有機性廃棄物201は、適度な水分を含み適度な厚さとなるように広げられる。有機性廃棄物201によって処理槽102の中に形成される培地は、有機性廃棄物201の種類にもよるが、水分量を60~80%とし、厚さが30~80mm、好ましくは40~50mmの厚さとなるようにすることで、幼虫の成長に適した状態にすることができる。
【0028】
培地の形成に用いることのできる有機性廃棄物201としては、例えば、畜糞、食品廃棄物、農産廃棄物の少なくとも一つを含む。畜糞は、牛糞、豚糞、鶏糞などの家畜から排出される糞尿であり、食品廃棄物は、食品の製造や調理過程で生じる加工残渣及び残飯であり、具体的には、野菜くず、豆腐くず、おから、酒粕、焼酎粕、ビール粕などであり、さらに家庭等から廃棄される生ごみなども含まれる。また、農産廃棄物としては食用に供されない作物の残骸であり、作物の茎、葉、皮、豆殻、ぬか、ふすまなどが含まれる。
【0029】
処理槽102に形成された培地には、ハエ目に属する昆虫の卵(以下、単に「卵」又は「昆虫の卵」ともいう。)が接種される。例えば、培地にはイエバエの卵が接種される。接種後イエバエの卵は1日程度で孵化する。卵から孵化した幼虫(1日齢幼虫)は、処理槽102の中で有機性廃棄物201を摂食し、4~7日程度で蛹変態期を迎える幼虫(3日齢幼虫)に成長する。
【0030】
有機性廃棄物201の中で蛹変態期を迎える幼虫(3日齢幼虫)は、蠕動離散習性により水分(湿度)を含む有機性廃棄物201の培地から乾燥した領域や暗い領域へ移動しようとする。処理槽102の底面1021には第1の貫通孔1024が設けられている。第1の貫通孔1024は、幼虫(3日齢幼虫)が、湿った有機性廃棄物201から乾燥した外界へ出る抜け穴である。底面1021に第1の貫通孔1024が設けられていることにより、幼虫(3日齢幼虫)は第1の貫通孔1024に誘導される。底面1021に設けられる第1の貫通孔1024の数に限定はないが、有機性廃棄物201の中で成長した幼虫(3日齢幼虫)を容易に誘導するため、底面1021の全体に亘って設けられていることが好ましい。
【0031】
第1の貫通孔1024は蛹変態期を迎える幼虫(3日齢幼虫)が通ることのできる大きさを有する。第1の貫通孔1024は、昆虫の種類によって穴の大きさを適宜設定する。例えば、イエバエの場合、孔径(直径)が3mm~5mm程度の大きさに設けられる。また、第1の貫通孔1024の間隔は、3mm~15mm程度が好ましい。第1の貫通孔1024の孔径がこの範囲より小さいと、幼虫(3日齢幼虫)を通過させて有機性廃棄物201から分離することが困難になり、大きすぎると有機性廃棄物201が第1の貫通孔1024を通して回収槽104に落下する量が増えてしまい好ましくない。また、第1の貫通孔1024の間隔が上記範囲より小さいと、幼虫と共に有機性廃棄物201も第1の貫通孔1024から落下してしまい、好ましくない。また、第1の貫通孔1024の間隔が上記範囲より大きいと、幼虫の移動距離が長くなり、幼虫が第1の貫通孔1024に到達する時間が長くなるため、好ましくない。第1の貫通孔1024の平面視における形状に限定はなく、丸形、楕円形、正方形、長方形、菱形、六角形などさまざまな形状を適用することができる。
【0032】
処理槽102の材質に限定はないが、容器としての形状を保つことのできる剛性を有する素材が用いられる。処理槽102は、例えば、金属、プラスチック、又は木材で形成される。処理槽102の底面1021及び壁面1022は一体化されていてもよいし、底面1021の一部又は全部と、壁面1022とが分解可能な構造を有していてもよい。
【0033】
図2(A)に示すように、底面1021には、全面に広がるように第1の貫通孔1024が設けられる。底面1021は、金属、プラスチック、又は木材で形成されるが、これらの素材に代えて布地が用いられてもよい。底面1021が金属、プラスチック、又は木材のような材料で形成される場合には、上記のようなサイズの第1の貫通孔1024を全面に形成することができ、第1の貫通孔1024の数を増やしても剛性(機械的強度)の低下を抑制することができる。底面1021の一部又は全部が布地で形成される場合には、布目が幼虫を通過させることのできる程度の粗さを有している、又は布地に幼虫が通過することのできる程度の穴又は切り込みが形成されていることが好ましい。なお、布地は剛性を有しないので、布地単体で処理槽102を形成するには不向きである。したがって、布地で底面1021を形成する場合には、金属、プラスチック、又は木材で形成された壁面1022に張り付けて用いることが好ましい。
【0034】
分離槽105は、少なくとも1つ、好ましくは複数の槽で構成される。図1(A)に示す例では、分離槽105が、処理槽102の側から、第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、第3の分離槽105Cの3つの分離槽が重ねられた構造を有する。第1の分離槽105Aは、底面1051Aと、底面1051Aを囲む壁面1052Aとを有し、天井面が開放された箱形の形状を有する。第2の分離槽105Bは、底面1051Bと、底面1051Bを囲む壁面1052Bとを有し、天井面が開放された箱形の形状を有する。第3の分離槽105Cも同様に、底面1051Cと、底面1051Cを囲む壁面1052Cとを有し、天井面が開放された箱形の形状を有する。
【0035】
第1の分離槽105Aの底面1051Aには、一部の領域に幼虫が通ることのできる第2の貫通孔1054Aが設けられる。第2の貫通孔1054Aは、底面1051Bに少なくとも1つ、好ましくは複数個が集合した状態で設けられる。図1(A)及び図2(B)は、第1の分離槽Aに複数の第2の貫通孔1054Aが設けられる範囲を第1の領域1055Aとして示す。第1の領域1055Aは、底面1051Aの全面に広がる領域ではなく、底面1051Aの一部に設けられる。第1の領域1055Aは、底面1051Aの任意の位置に設けることができるが、後述されるように、第2の分離槽105Bに設けられる第2の領域1055Bと重ならない位置に設けられる。
【0036】
上記の構造から明らかなように、第1の分離槽105Aは、処理槽102から落下する幼虫を受け止める床面部と、第2の貫通孔1054Aが設けられた第1の領域1055Aとを有する。図1(A)及び図2(C)に示すように、第2の分離槽105Bは、同様に、底面1051Bと、底面1051Bの一部に設けられた第2の領域1055Bを有する。第2の領域1055Bには、少なくとも1つ、好ましくは複数の第3の貫通孔1054Bが設けられる。図1(A)及び図2(C)に示すように、第3の分離槽105Cは、底面1051Cと、底面1051Cの一部に設けられた第3の領域1055Cを有する。第3の領域1055Cには、少なくとも1つ、好ましくは複数の第4の貫通孔1054Cが設けられる。第2の貫通孔1054A、第3の貫通孔1054B、及び第4の貫通孔1054Cは、第1の貫通孔1024と同様の孔径を有し、同様の間隔でそれぞれの領域に設けられる。
【0037】
図2(B)~(C)は、第1の分離槽105Aに設けられる第1の領域1055Aが底面1051Aの左側に設けられ、第2の分離槽105Bに設けられる第2の領域1055Bが底面1051Bの中央に設けられ、第3の分離槽105Cに設けられる第3の領域1055Cが底面1051Cの右側に設けられる例を示す。図1(A)及び図2(B)~(C)を参照すれば明らかなように、第1の領域1055A、第2の領域1055B、及び第3の領域1055Cは、幼虫回収装置100を上からみたとき(平面視において)、相互に重ならない位置に配置されている。
【0038】
後述されるように、処理槽102から落下した幼虫(3日齢幼虫)は、分離槽105を経て回収槽104に回収される。処理槽102から幼虫(3日齢幼虫)が落下するとき、有機性廃棄物201又は処理物残渣202が少量ではあるが落下することがある。しかし、分離槽105を多段の構成とし、それぞれの分離槽における貫通孔1054が設けられる領域を、上下段の関係で重ならないように配置することで、処理槽102からこぼれ出た有機性廃棄物201又は処理物残渣202を回収槽104に混入しないようにすることができる。別言すれば、培地の中の幼虫、培地から分離槽105に落下した幼虫は自ら動くことで貫通孔1054を通って徐々に回収槽104に移動するが、培地及び培地から分離槽105へこぼれ出た有機性廃棄物201又は処理物残渣202は動かないので、その場に留まり回収槽104への混入が防止される。仮に、貫通孔1054の孔径よりも小さなかたまりの有機性廃棄物201又は処理物残渣202が落下したとしても、分離槽105が多段とされ、貫通孔1054が設けられた領域が上下で重ならないように配置されていることで、こぼれ落ちた有機性廃棄物201又は処理物残渣202は直下の分離槽で受け止めることができるので、回収槽104への混入を防止することができる。
【0039】
なお、図2(B)~(D)において、第1の領域1055A、第2の領域1055B、第3の領域1055Cはそれぞれ矩形であるが、それぞれの領域が重ならない配置であれば、適宜その領域の形状及び範囲を変更することが可能である。例えば、図3(A)~(C)に示すように、第1の分離槽105Aに第1の領域1055Aを複数設け、第2の分離槽105Bに第2の領域1055Bを複数設け、第3の分離槽105Cに第3の領域1055C複数設け、複数の第1の領域1055Aと複数の第2の領域1055Bとを平面視で重ならないように配置し、複数の第2の領域1055Bと複数の第3の領域1055Cとを平面視で重ならないように配置してもよい。すなわち、第1の領域1055Aと第2の領域1055Bとの配置、第2の領域1055Bと第3の領域1055Cとの配置が相互に重ならないように市松模様のように配置されていてもよい。このような配置によれば、分離槽105の中で貫通孔1054が設けられる領域1055を離散的に配置することができ、落下した幼虫が貫通孔1054へ移動する距離を短くすることができる。このような分離槽105を用いることにより、幼虫の回収槽104への回収をより効率的に行うことができる。
【0040】
図1(A)に示すように、第1の領域1055Aと第2の領域1055Bとの間には、2つの領域が完全に重ならないようにオフセット領域1057Aが設けられていてもよい。同様に、第2の領域1055Bと第3の領域1055Cとの間にもオフセット領域1057Bが設けられていてもよい。オフセット領域1057A、1057Bが設けられることで、貫通孔1051が重なる領域を無くすことができ、上段から下段の分離槽へ有機性廃棄物201又は処理物残渣202が斜め方向に落下、又は落下後に横方向に転がっても、さらに下段の槽へこぼれ出ることを防止することができる。
【0041】
回収槽104は、底面1041と、底面1041を囲む壁面1042とを有し、天井面が開放された箱形の形状を有する。回収槽104は、処理槽102の底面1021に設けられた第1の貫通孔1024から抜け出た幼虫を最終的に回収する容器である。回収槽104は、処理槽102から落下し、分離槽105を通過した幼虫(3日齢幼虫)を一時的に溜めておくために用いられる。処理槽102から落下した幼虫(3日齢幼虫)は蠕動することができるので、回収槽104の壁面1042は、幼虫(3日齢幼虫)が外に逃げないようにある程度の高さを有していることが好ましい。
【0042】
図1(A)に示すように、処理槽102、分離槽105、及び回収槽104は、同じ外径寸法を有し、積み重ねて配置される。処理槽102、分離槽105、及び回収槽104を積み重ねたとき、各槽の下部と上部とが相互に嵌合し位置がずれないように、各槽の上縁、下縁には突起、案内溝などが設けられていてもよい。また、処理槽102、分離槽105、及び回収槽104は、重ね合わせた状態で、ネジ、クランプなどで留められる構造を有していてもよい。処理槽102、分離槽105、及び回収槽104を、容易に着脱可能に配置されることで、有機性廃棄物201の投入、昆虫の卵の接種、幼虫の回収、各槽の洗浄などを容易に行うことができる。
【0043】
処理槽102、分離槽105、及び回収槽104が多重に積み重ねられることで、処理槽102から落下した幼虫が回収槽104に至るまでの間に、外に逃げ出さないようにすることができる。処理槽102の底面1021には第1の貫通孔1024が設けられており、第1の分離槽105Aには第2の貫通孔1054A、第2の分離槽105Bには第3の貫通孔1054B、第3の分離槽105Cには第4の貫通孔1054Cが設けられているので、回収槽104の通気性は保たれており、回収された幼虫が窒息することはない。
【0044】
分離槽105は、処理槽102から落下した幼虫が回収槽104に到達するまでの移動経路を提供する。図1(B)に示すように、分離槽105には、幼虫の移動を規制する障壁1056が設けられていてもよい。図1(B)は、第2の分離槽105B及び第3の分離槽105Cに、障壁1056が設けられた一例を示す。第2の分離槽105Bには、第1の分離槽105Aから落下した幼虫が、第2の領域1055Bを越えて槽の右側に移動しないようにする位置に障壁1056が設けられている。第3の分離槽105Cには、第2の分離槽105Bから落下した幼虫が、第3の領域1055Cとは反対側に移動しないように、第2の領域1055Bから見て左側の領域に障壁1056が設けられている。別言すれば、第2の分離槽105Bには、第2の領域1055B、及び、平面視で第1の領域1055Aと重なる領域以外の領域を隠すように障壁1056が設けられている。また、第3の分離槽105Cには、第3の領域1055C、及び、平面視で第2の領域1055Bと重なる領域以外の領域を隠すように障壁1056が設けられている。このように、分離槽105に幼虫の移動を制限する障壁1056が設けられることで、処理槽102から落下した幼虫を確実に回収槽104で回収することができ、回収にかかる時間の短縮を図ることができる。
【0045】
なお、回収槽104に水、湯、又は消毒液が入れられており、その場で幼虫を洗浄、又は消毒するようにされていてもよい。
【0046】
処理槽102に残る処理物残渣202は回収され、所定の処理(例えば、加熱処理など)が行われることで、飼料原料、肥料原料として利用することができる。回収槽104に回収された幼虫は、所定の処理がされることにより家畜の飼料とすることができ、また清潔な動物性タンパク質を含む食材として提供し、又は食品に加工することができる。
【0047】
次に図4(A)~(B)、図5を参照して、本実施形態に係る幼虫回収装置100の使用方法の一例を説明する。
【0048】
図4(A)は、昆虫の卵203を接種する段階を示す。処理槽102には有機性廃棄物201が投入され、底面1021の上に均一な厚さになるように均され広げられる。有機性廃棄物201としては、上述のように畜糞、食品廃棄物、農業廃棄物などが用いられる。例えば、有機性廃棄物201として豆腐の製造過程で大量に発生するおからが用いられる。
【0049】
おからは豆腐、豆乳を製造する過程でできる副産物であるが、食用に供されるのは全体の1%以下とされており、飼料用及び肥料用として用いられる他は産業廃棄物として廃棄されている。そこで、有機性廃棄物201としておからを用い、幼虫回収装置100Aで処理をすることで、資源の有効利用を図ることができる。
【0050】
幼虫回収装置100は、接種した昆虫の卵203が孵化し、幼虫が成長するのに適した環境に設置される。例えば、幼虫回収装置100Aは、温度が20~50℃(好ましくは25~40℃)、湿度が40~100%(好ましくは50~80%)に調整された建屋に配置される。処理槽102は天井面が開放されているので、内部の様子を観察し、有機性廃棄物201の水分量や温度をモニタリングして成長環境を容易に制御することができる。
【0051】
図4(B)は、昆虫の卵203から孵化した幼虫204が成長する段階を示す。幼虫204は有機性廃棄物201によって形成された培地の中を蠕動ながら有機性廃棄物201を摂食して成長する。有機性廃棄物201の水分量は、幼虫204の成長に適するように調整される。幼虫204が有機性廃棄物201の中を蠕動するためには適度な空隙が必要とされる。そこで、水分量を調整して有機性廃棄物201の中に適度な空隙ができるようにする。例えば、有機性廃棄物201としておからが用いられる場合、水分量を60~80%の範囲にすることが好ましい。有機性廃棄物201が堆積された培地は、水分量が適度であれば幼虫204が有機性廃棄物201を摂食したり動き回ったりすることで適度な空隙が形成される。有機性廃棄物201の水分量が低すぎると、培地が硬くなり幼虫204の蠕動が制限されて成長に悪影響を及ぼすこととなる。一方、有機性廃棄物201の水分量が高すぎると幼虫204の食性が低下するので好ましくない。幼虫回収装置100Aに使用する有機性廃棄物201の水分量を適切な範囲にすることで、卵203及び幼虫204に対する生育環境を最適にすることができ、環境悪化による卵203及び幼虫204の死亡を防ぎ、孵化率や生存率を向上させることができる。
【0052】
幼虫204が摂食した有機性廃棄物201は、幼虫204の体内で酵素分解され低濃度有機分解物として排泄される。卵203から孵化した1日齢幼虫は、4~7日程度で蛹変態前の3日齢幼虫に成長する。処理槽102には、有機性廃棄物201の残存物である処理物残渣202が残される。
【0053】
図5は、処理物残渣202と幼虫204とを分離する段階を示す。処理槽102で成長し終齢を迎えた幼虫204(3日齢幼虫)は、離散習性(蠕動離散習性)により乾燥した環境または暗い環境へ移動しようとする。このとき幼虫204(3日齢幼虫)は、処理物残渣202のすぐ近くにある第1の貫通孔1024を通って外部の乾燥した環境または暗い環境へ移動しようとする。処理槽102の下には分離槽105が置かれている。図5は、第1の貫通孔1024を通り抜けた幼虫204(3日齢幼虫)が第1の分離槽105Aに落下する様子を模式的に示す。
【0054】
処理槽102の底面1021に設けられた第1の貫通孔1024は、幼虫204が通り抜けることができる程度の孔径しか有しない。一方で、有機性廃棄物201は水分を含むことで膨張する。これらのため、処理物残渣202は湿っているので第1の貫通孔1024からほとんど落下せず処理槽102に残存するが、培地に残存する有機性廃棄物201や処理物残渣202の少量が幼虫に付着して、又はそれ単体で第1の貫通孔1024から落下する。
【0055】
処理槽102から落下した幼虫は、第1の分離槽105Aで受け止められる。処理槽102からこぼれ落ちた有機性廃棄物201や処理物残渣202も、第1の分離槽105Aで受け止められる。図5は、第1の分離槽105Aに落下物2020が混ざっている様子を模式的に示す。第1の分離槽105Aは底面1051Aの全面に貫通孔が設けられていないので、処理槽102からこぼれ落ちた有機性廃棄物201や処理物残渣202がそのまま下の槽に落ちることが防止される。幼虫204(3日齢幼虫)は、離散習性により第1の分離槽105Aの中を蠕動する。蠕動の際に、第1の貫通孔1024があると幼虫は第1の貫通孔1024を通過し、第1の領域1055Aに向けて蠕動する。幼虫204(3日齢幼虫)の体に有機性廃棄物201や処理物残渣202が付着していたとしても、この行程で脱落することが期待される。
【0056】
第1の領域1055Aに移動した幼虫204(3日齢幼虫)は、第2の貫通孔1054Aから落下して第2の分離槽105Bに収容される。第1の領域1055Aの直下は、第2の分離槽105Bの底面1051Bがあり、貫通孔を有しない床面となっている。したがって、第1の分離槽105Aから落下した幼虫204(3日齢幼虫)は、第2の分離槽105Bで受け止められる。また、第1の分離槽105Aから、有機性廃棄物201や処理物残渣202が落下したとしても、同様に第2の分離槽105Bで受け止められる。
【0057】
そして、第2の分離槽105Bに落下した幼虫204(3日齢幼虫)は、同様に、乾燥した環境を求め、第2の領域1055Bに向けて蠕動する。第2の領域1055Bに移動した幼虫204(3日齢幼虫)は、第3の貫通孔1054Bから落下して第3の分離槽105Cに収容される。第2の領域1055Bの直下は、第3の分離槽105Cの底面1051Cがあり、貫通孔を有しない床面となっている。したがって、第2の分離槽105Bから落下した幼虫204(3日齢幼虫)は、第3の分離槽105Cで受け止められる。
【0058】
第3の分離槽105Cの幼虫204(3日齢幼虫)は、第3の領域1055Cに向けて蠕動し、第4の貫通孔1054Cから落下して、最終的には回収槽104に回収される。
【0059】
なお、第2の貫通孔1054A、第3の貫通孔1054B、及び第4の貫通孔1054Cの孔径は、第1の貫通孔1024の孔径と同程度であり、幼虫が通過可能な孔径を有していることが好ましい。すなわち、第2の貫通孔1054A、第3の貫通孔1054B、第4の貫通孔1054Cの孔径は、例えば、孔径(直径)が3mm~5mm程度の大きさを有していることが好ましい。
【0060】
このように、幼虫回収装置100によれば、有機性廃棄物201によって幼虫204を飼育することができ、幼虫204が小さいうちは第1の貫通孔1024から落下せず、成長して蛹化する前に自ら第1の貫通孔1024から落下するので、蛹化する前の幼虫204と処理物残渣202とを人手をかけずに安全かつ安価に分離し回収することができる。処理槽102の底面1021に第1の貫通孔1024が設けられていることから蛹変態期を迎えた幼虫204(3日齢幼虫)を誘導することができ、該幼虫204とっては移動距離が短くなるので、幼虫204を外側に落とし込む確率は高くなり、回収効率の向上を図ることができる。また、処理槽102は、底面1021が水平であるため、培地を形成する有機性廃棄物201の厚さを均一にすることができるので、処理の不均一化を防ぐことができる。
【0061】
幼虫204は、多段に構成された分離槽105を介して回収槽104へ集められる。回収槽104の上に分離槽105が配置されることで、処理槽102からこぼれ出た有機性廃棄物201又は処理物残渣202が回収槽104へ混入すること防止することができる。また、処理槽102と回収槽104との間に多段に構成された分離槽105を設け、幼虫204が蠕動して移動する経路を設けることで、有機性廃棄物201又は処理物残渣202と、幼虫204とを確実に分離することができる。
【0062】
さらに、本実施形態に係る幼虫回収装置100Aは、幼虫204を飼育する処理槽102に斜面構造を設ける必要がなく、回収槽104を処理槽102の直下に重ねて配置することができるので、設置に必要な面積を縮小することができ、スペース効率を向上させることができる。幼虫回収装置100は棚などを使って多段に収納可能であるので、処理物残渣202及び幼虫204の単位面積当たりの収率を向上させることができる。
【0063】
なお、本実施形態において、分離槽105が三段重ねられた構成を示すが、分離槽の段数に限定はなく、貫通孔が設けられた領域が上下の段で重ならないように配置された構成を有していれば、重ねる段数に限定はない。
【0064】
[第2実施形態]
本実施形態は、分離槽における貫通孔の構成が第1実施形態と異なる幼虫回収装置の構成を示す。以下の説明においては第1実施形態と相違する分部を中心に説明し、共通する説明は適宜省略するものとする。
【0065】
図6(A)~(C)は、分離槽105(第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、第3の分離槽105C)の上面図を示す。図6(A)~(C)に示す構成おいて、第1の分離槽105Aに設けられる第2の貫通孔1054A、第2の分離槽105Bに設けられる第3の貫通孔1054B、第3の分離槽105Cに設けられる第4の貫通孔1054Cの孔径は相互に異なっている。すなわち、第2の貫通孔1054Bの孔径が、第3の貫通孔1054B及び第4の貫通孔1054Cの孔径より大きく、第4の貫通孔1054Cの孔径が、第2の貫通孔1054A及び第3の貫通孔1054Bよりも小さい関係を有する。別言すれば、各分離槽105A、105B、105Cに設けられる貫通孔は、第4の貫通孔1054C、第3の貫通孔1054B、第2の貫通孔1054Aの順に、貫通孔の孔径が大きくなるように設けられている。
【0066】
図6(A)~(C)に示す構成において、例えば、第2の貫通孔1054Aの孔径(直径)、第3の貫通孔1054Bの孔径(直径)、第4の貫通孔1054Cの孔径(直径)は、それぞれ3mm~10mmの範囲で、第2の貫通孔1054Aの孔径(直径)、第3の貫通孔1054Bの孔径(直径)、第4の貫通孔1054Cの孔径(直径)の順に小さくなるように適宜選択することができる。
【0067】
分離槽105に設けられる貫通孔1054の孔径が、上段側(培地に近い側)で大きく、下段側(回収槽104に近い側)で小さくすることで、上段側では幼虫が落下しやすくし(落下量を増やし)、下段側で有機性廃棄物201又は処理物残渣202と幼虫とを確実に分離することができる。
【0068】
図7(A)~(C)は、分離槽105(第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、第3の分離槽105C)の上面図を示す。図7(A)~(C)に示す構成において、第1の分離槽105Aに設けられる第2の貫通孔1054A、第2の分離槽105Bに設けられる第3の貫通孔1054B、第3の分離槽105Cに設けられる第4の貫通孔1054Cの単位面積当たりの数(隣接する貫通孔同士の間隔)が異なっている。別言すれば、各分離槽105A、105B、105Cに設けられる貫通孔は、第4の貫通孔1054C、第3の貫通孔1054B、第2の貫通孔1054Aの順に、貫通孔の密度が大きくなるように設けられている。
【0069】
図7(A)~(C)に示す構成において、例えば、第2の貫通孔1054Aの間隔、第3の貫通孔1054Bの間隔、第4の貫通孔1054Cの間隔はそれぞれ3mm~30mmの範囲で、第2の貫通孔1054Aの間隔、第3の貫通孔1054Bの間隔、第4の貫通孔1054Cの間隔の順に大きくすることができる。さらに、第2の貫通孔1054Aの孔径(直径)および第3の貫通孔1054Bの孔径(直径)と比較して、第4の貫通孔1054Cの孔径(直径)を大きくすることができる。
【0070】
図7(A)~(C)に示すように、分離槽105に設けられる貫通孔1054の間隔が、上段側(培地に近い側)で小さく(間隔が狭く)、下段側(回収槽104に近い側)で大きく(間隔が広く)することで、上段側では幼虫が落下しやすくし(落下量を増やし)、下段側で有機性廃棄物201又は処理物残渣202と幼虫とを確実に分離することができる。さらに、第2の貫通孔1054Aの孔径(直径)および第3の貫通孔1054Bの孔径(直径)と比較して、第4の貫通孔1054Cの孔径(直径)を大きくするで、下段側での幼虫の落下量を増やしつつ、有機性廃棄物201又は処理物残渣202と幼虫とを確実に分離することができる。
【0071】
本実施形態に係る幼虫回収装置は、分離槽105の構成が、図6(A)~(C)に示す構成、または図7(A)~(C)に示す構成を有することの他は第1実施形態におけるものと同様であり、同様の作用効果を得ることができる。また、本実施形態に示す貫通孔の構成に、図2(A)~(C)に示す貫通孔が設けられる領域の配置を適宜組み合わせることができる。
【0072】
[第3実施形態]
本実施形態は、第1実施形態に示す幼虫回収装置に対し分離槽及び回収槽の構成が異なる態様を示す。以下においては、第1実施形態と相違する部分を中心に説明し、共通する構成は適宜省略するものとする。
【0073】
図8は、本実施形態に係る幼虫回収装置100の側面図を示す。幼虫回収装置100は、第1実施形態と同様に処理槽102、分離槽105、及び回収槽104が積み重ねられた構成を有する。
【0074】
図8は、第1実施形態と同様に、分離槽105として、第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、第3の分離槽105Cが積層された構造を有する。本実施形態の第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、第3の分離槽105C、及び回収槽104は、通風口1044を有する。通風口1044は第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、第3の分離槽105C、及び回収槽104の上部に設けられる。通風口1044は、第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、第3の分離槽105C、及び回収槽104において、上段の槽との間に隙間が形成されるように、少なくとも1箇所、好ましくは2箇所以上設けられる。例えば、通風口1044は、第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、第3の分離槽105C、及び回収槽104において、空気の流入口と流出口とが形成されるように少なくなくとも2箇所設けられることが好ましい。
【0075】
通風口1044は、第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、第3の分離槽105C、及び回収槽104の上部を切欠くことにより形成されてもよいし、上部に貫通する穴を設けることによって形成されてもよい。通風口1044を設けることにより、積み重ねられた各槽の上段側との間に、外気が流れ込み、槽内の空気が流れ出る流路を形成することができる。別言すれば通風口1044によって、各槽の境界部分に空間に空気が流れる流路を形成することができる。このような構成によれば、処理槽102の下側、第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、及び第3の分離槽105Cの下側の空間に空気が流れる領域を形成することができ、乾燥したによる乾燥した空間を形成することができる。その結果、蛹変態期を迎えた3日齢幼虫を処理槽102の第1の貫通孔1024、分離槽105の第2の貫通孔1054A、第3の貫通孔1054B、第4の貫通孔1054Cに誘導しやすくすることができ、幼虫204の回収効率を高めることができる。
【0076】
図示されないが、通風口1044は、槽の上部を切り欠いたり孔を開けたりするのではなく、スペーサを設けることによって形成されてもよい。このような構成によれば、スペーサの高さによって通風口1044の広さを調節することができ、各槽の間に流れる空気の量を調節することができる。
【0077】
なお、通風口1044を通る空気の流れは、自然の風によるものであってもよいが、図8に示すように送風機106を用いて強制的に送風が行われてもよい。送風機106を用いることで、送風量の調整が容易となり、第1の貫通孔1024、第2の貫通孔1054A、第3の貫通孔1054B、第4の貫通孔1054Cの下側近傍に形成される乾燥雰囲気の制御を能動的に行うことができる。
【0078】
本実施形態に示す構成によれば、処理槽102の中、並びに第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、及び第3の分離槽105Cの中の幼虫204(3日齢幼虫)の移動を積極的に促すことができる。また、通気を行う必要がないときは、通風口1044を塞ぐ封止板又は封止扉(図示されず)が設けられていてもよく、それにより有機性廃棄物201の乾燥を防ぐことができる。本実施形態の幼虫回収装置100は、通風口1044が設けられたこと以外は第1実施形態に示すものと同様であり、同様の作用効果を奏することができる。また、本実施形態の幼虫回収装置100の構成に、第2実施形態に示す分離槽の構成を適用することができる。
【0079】
[第4実施形態]
本実施形態は、第1実施形態に示す幼虫回収装置とは処理槽及び分離槽の構成が異なる態様を示す。以下においては、第1実施形態と相違する部分を中心に説明し、共通する構成は適宜省略するものとする。
【0080】
図9(A)及び(B)は、本実施形態における処理槽102の構成を示す。図9において、(A)は処理槽102の平面図を示し、(B)は処理槽102の断面図を示す。図9(A)及び(B)に示すように、処理槽102の底面は布地1023が張られた構造を有する。布地1023は処理槽102に直接張られていてもよい。また、図示されるように、布地1023は枠1025に張られて処理槽102の底部に落とし込まれ、着脱可能に設けられていてもよい。
【0081】
図10(A)及び(B)は、本実施形態における分離槽105の構成を示す。図10において、(A)は第1の分離槽105Aの平面図を示し、(B)は第1の分離槽105A、第2の分離槽105B、及び第3の分離槽105Cの断面図を示す。処理槽102と同様に、第1の分離槽105Aの第1の領域1055A、第2の分離槽105Bの第2の領域1055B、及び第3の分離槽105Cの第3の領域1055Cは、布地1053で形成される。布地1053は、各分離槽の底面に直接張られてもよいし、枠1058に張られて着脱可能に設けられていてもよい。
【0082】
布地1023は通気性を有する。そのため、処理槽102に入れられた有機性廃棄物201の水分量の管理が容易となる。例えば、有機性廃棄物201の水分量が過剰な場合には、乾燥した空気を通すことで適度に乾燥させることができる。
【0083】
布地1023、1053が枠1025、1058に張られて着脱可能に設けられることで、布地1023、1053が古くなったときに容易に取り替えることができる。なお、布地1023、1053を形成する布地は、天然繊維でもよいし、化学繊維、金属繊維が用いられてもよい。また、布地1023の代わりに、網を用いてもよい。
【0084】
布地1023、1053には蛹化するときに幼虫が通ることのできる穴1034、1059が設けられる。また、布地1023、1053として布目の粗いものを用いることにより、布目自体を貫通孔の代用として利用してもよい。このような構成を有することで、第1実施形態と同様に蛹変態期を迎えた幼虫を処理槽102から落下させ、また、分離槽105を通過させて回収槽104に分離することができる。
【0085】
本実施形態に係る幼虫回収装置は、処理槽102及び分離槽105の底部の構成が異なる他は第1実施形態におけるものと同様であり、同等の作用効果を得ることができる。本実施形態に示す布地1023が張られた処理槽102、及び布地1053が張られた分離槽105の構成は、第2実施形態及び第3実施形態に示す幼虫回収装置と適宜組み合わせることができる。
【0086】
[第5実施形態]
本実施形態は、第1乃至第3実施形態に示す幼虫回収装置とは処理槽の構成が異なる態様を有する幼虫回収装置を示す。以下においては、第1乃至第3実施形態と相違する部分を中心に説明し、共通する構成は適宜省略するものとする。
【0087】
図11(A)及び(B)は、本実施形態に係る幼虫回収装置100の主たる構成を示す。図11において、(A)は幼虫回収装置100の平面図を示し、(B)は断面図を示す。
【0088】
本実施形態の幼虫回収装置100は処理槽103を有し、処理槽103は袋状の布地で形成されている。処理槽103は、枠体1043によって支持され分離槽105(第1の分離槽105A)の上に設置されている。枠体1043は、分離槽105(第1の分離槽105A)の上部に設置され、処理槽103を支えるように突出部が設けられている。また、図示されないが、処理槽103を支えるように、枠体1043の対角又は対辺に架け渡すようにフレームが設けられていてもよい。
【0089】
処理槽103には、有機性廃棄物201を出し入れし、袋体の中に収納後は溢れ出ないようにするために上部又は側部に相当する部分に開閉口1032が設けられる。開閉口1032は、例えば、ファスナで構成される。また、処理槽103を構成する袋状の布地は、袋の上部が巾着状に縛られて塞がれてもよい。
【0090】
処理槽103を枠体1043によって設置したとき、分離槽105に面する下側に、蛹化するときに幼虫が通ることのできる穴1034が設けられる。このような構成を有することで、第1実施形態と同様に蛹変態期を迎えた幼虫を回収槽104に分離することができる。また、幼虫が通ることのできる程度に布目の粗い生地を用いることにより、処理槽103の穴1034は省略されてもよい。処理槽103は布地で形成されているため通気性を有し、有機性廃棄物201の水分量の管理が容易となる。例えば、有機性廃棄物201の水分量が過剰な場合には、乾燥した空気を通すことで適度に乾燥させることができる。なお、処理槽103を形成する布地は天然繊維でもよいし化学繊維が用いられてもよい。
【0091】
本実施形態に係る幼虫回収装置は、処理槽103の構成が異なる他は第1実施形態におけるものと同様であり、同等の作用効果を得ることができる。本実施形態に示す処理槽103の構成は、第2実施形態、第3実施形態、及び第4実施形態に示す幼虫回収装置に適宜組み合わせることができる。
【0092】
[第6実施形態]
本実施形態は、第1乃至第5実施形態に示す幼虫回収装置とは構成が異なる態様を有する幼虫回収装置を示す。以下においては、第1乃至第5実施形態と相違する部分を中心に説明し、共通する構成は適宜省略するものとする。
【0093】
幼虫回収装置は、分離槽105及び回収槽104によって構成されてもよい。すなわち、本実施形態の幼虫回収装置は、第1乃至第4実施形態に示す幼虫回収装置100において、処理槽102が省略された構成を有する。培地は幼虫回収装置と一体化されていなくてもよく、他の機材又は器具によって卵から孵化した幼虫(1日齢幼虫)を飼育する。そして、4~7日程度で蛹変態期を迎える幼虫(3日齢幼虫)を、本実施形態の幼虫回収装置に投入する。具体的には、分離槽105に3日齢幼虫を含む有機性廃棄物を供給する。以降は第1乃至第4実施形態と同様であり、分離槽105によって有機性廃棄物から幼虫を分離し、回収槽104で回収することができる。
【0094】
[第7実施形態]
本実施形態は、第1乃至第6実施形態に示す幼虫回収装置において、幼虫の回収時間を短縮する方法を説明する。ここでは、第1実施形態の幼虫回収装置を用いて説明するが、適宜第2実施形態乃至第6実施形態に適用することができる。
【0095】
図12に示す本実施形態の幼虫回収装置100は、処理槽102、分離槽105、回収槽104と共に、回収槽104の内部が観察できるカメラ108を有する。また、本実施形態の幼虫回収装置100は、処理槽102、分離槽105、回収槽104が装置本体に対して着脱可能な構成を有し、そのための移動機構112を有する。さらに、本実施形態の幼虫回収装置100は、カメラ108と連動し、移動機構112の動作を制御する制御装置110を有する。
【0096】
本実施形態の幼虫回収装置100は、幼虫の変化(成長)及び動きに伴って、処理槽102及び分離槽105の配置を動的に変化させ、幼虫と有機性廃棄物201又は処理物残渣202とを分離し回収する。培地で幼虫が成長する段階ではカメラ108により、処理槽102における幼虫の変化を観察する。有機性廃棄物201の中で蛹変態期を迎える幼虫(3日齢幼虫)は、蠕動離散習性により水分(湿度)を含む有機性廃棄物201の培地から暗い領域へ移動しようとするため、幼虫が蠕動する様子が観察される。制御装置110は画像処理ユニットを有し、画像処理により幼虫とそれ以外の物質(有機性廃棄物201など)を識別する機能を有している。このような機能は人工知能によって実現されていてもよい。そして、幼虫が処理槽102の貫通孔から分離槽105に落下し、処理槽102における幼虫の数が減少したことをカメラ108の画像によって制御装置110が認識したら、制御装置110が移動機構112を制御して、処理槽102を装置本体から移動させ、第1の分離槽105Aを露出させる。
【0097】
図13は、幼虫回収装置100から処理槽102が移動した状態を示す。幼虫は暗い領域へ移動する習性がある。処理槽102が移動されて第1の分離槽105Aが最上段となることにより、分離槽105Aの上面が外部に露出して明るくなるため、幼虫は貫通孔へ向けて移動し、貫通孔から落下し、暗い領域である第2の分離槽105Bへと移動する。カメラ108は、最上段となった第1の分離槽105Aの状態を撮影し、制御装置110は幼虫の数を監視する。
【0098】
幼虫が第1の分離槽105Aから第2の分離槽105Aへ落下し、第1の処理槽105Aにおける幼虫の数が減少したことをカメラ108の画像によって制御装置110が認識したら、制御装置110が移動機構112を制御して、第1の分離槽105Aを装置本体から移動させ、第2の分離槽105Aを露出させる。以降、同様の処置により、第2の分離槽105B、第3の分離槽105Cが装置本体から移動して回収槽104が残る。回収槽104には、上段の分離槽105から暫時暗い場所を求めて移動して来た幼虫が集められている。
【0099】
このように、カメラ108により幼虫回収装置100の最上段における幼虫の数や動作を観察し、幼虫が下段へ落下し数が減少したことをカメラ108の画像を用いて認識し、最上段の分離槽を移動機構112により移動させ、幼虫の移動先を露出することを繰り返すことで、幼虫の移動時間及び落下時間を短縮することが可能であり、短時間での幼虫回収が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
第1乃至第7実施形態に示す幼虫回収装置は、食品廃棄物、農業廃棄物などの有機性廃棄物をハエ目に属する昆虫の幼虫に摂食させ、処理物残渣を堆肥又は肥料の原料として用いることができる。また、蛹化する前に処理物残渣から分離し回収した幼虫もしくは蛹化後の蛹を、家畜、養殖魚類の飼料又はペット(愛玩動物)等の餌として、また昆虫由来の食料原料として用いることができる。
【0101】
第1乃至第7実施形態に示す幼虫回収装置は、簡易な構成であり多大な設置面積を要しないので、建屋の中に多段に配置することで多量の有機性廃棄物を処理することができ、それに伴って多量の幼虫を回収することができる。ハエ目に属する昆虫、例えばイエバエの卵期間は1日程度であり、幼虫期間は4~7日程度であるため卵の接種から幼虫の回収までの期間が短いので、卵の接種、幼虫の飼育(有機性廃棄物の処理)、処理物残渣及び幼虫の分離及び回収といった一連の工程を短期間で行うことができ、生産性を高めることができる。
【符号の説明】
【0102】
100:幼虫回収装置、102:処理槽、1021:底面、1022:壁面、1023:布地、1024:第1の貫通孔、1025:枠、103:処理槽、1032:開閉口、1034:穴、104:回収槽、1041:底面、1042:壁面、1043:枠体、1044:通風口、105:分離槽、105A:第1の分離槽、105B:第2の分離槽、105C:第3の分離槽、1051A:底面、1051B:底面、1051C:底面、1052:壁面、1053:布地、1054A:第2の貫通孔、1054B:第3の貫通孔、1054C:第4の貫通孔、1055A:第1の領域、1055B:第2の領域、1055C:第3の領域、1056:障壁、1057A:オフセット領域、1057B:オフセット領域、1058:枠、1059:穴、106:送風機、108:カメラ、110:制御装置、112:移動機構、201:有機性廃棄物、202:処理物残渣、2020:落下物、203:卵、204:幼虫
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13