IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋エアゾール工業株式会社の特許一覧

特開2023-13707噴霧用組成物、噴霧製品及びエアゾール製品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013707
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】噴霧用組成物、噴霧製品及びエアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20230119BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230119BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/04
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/86
A61K8/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118079
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西片 百合
(72)【発明者】
【氏名】上條 北斗
(72)【発明者】
【氏名】中島 康友
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB052
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC441
4C083AC442
4C083AD111
4C083AD112
4C083BB04
4C083CC01
4C083CC04
4C083DD08
4C083DD33
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】オイル成分や多価アルコールを配合した場合でも、高温での乳化安定性が高く、さらに噴射パターンの広いソフトな霧を噴霧可能な噴霧用組成物。
【解決手段】水中油滴型エマルジョンの噴霧用組成物であって、該噴霧用組成物は、水、油性成分、2価のアルコール、HLBが12.0~16.0のノニオン界面活性剤であるノニオン界面活性剤A、及びHLBが2.0~6.0のノニオン界面活性剤であるノニオン界面活性剤Bを含有し、該噴霧用組成物中の、該油性成分の含有割合の、該ノニオン界面活性剤A及びBの合計の含有割合に対する質量比(油性成分/ノニオン界面活性剤)が、2.2以下であり、水中油滴型エマルジョンの平均粒子径が、2000nm以下である噴霧用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中油滴型エマルジョンの噴霧用組成物であって、
該噴霧用組成物は、水、油性成分、2価のアルコール、HLBが12.0~16.0のノニオン界面活性剤であるノニオン界面活性剤A、及びHLBが2.0~6.0のノニオン界面活性剤であるノニオン界面活性剤Bを含有し、
該噴霧用組成物中の、該油性成分の含有割合の、該ノニオン界面活性剤A及びBの合計の含有割合に対する質量比(油性成分/ノニオン界面活性剤)が、2.2以下であり、
水中油滴型エマルジョンの平均粒子径が、2000nm以下である噴霧用組成物。
【請求項2】
前記噴霧用組成物中の、前記油性成分の含有割合の、前記2価のアルコールの含有割合に対する質量比(油性成分/2価のアルコール)が、12.0以下である請求項1に記載の噴霧用組成物。
【請求項3】
前記噴霧用組成物中の前記ノニオン界面活性剤Aの含有割合が、0.025質量%~3.00質量%であり、
前記噴霧用組成物中の前記ノニオン界面活性剤Bの含有割合が、0.020質量%~3.00質量%である請求項1又は2に記載の噴霧用組成物。
【請求項4】
前記噴霧用組成物中の、前記ノニオン界面活性剤Aの含有割合の、前記ノニオン界面活性剤Bの含有割合に対する質量比(A/B)が、0.7~3.0である請求項1~3のいずれか一項に記載の噴霧用組成物。
【請求項5】
前記噴霧用組成物中の前記油性成分の含有割合が、0.030質量%~4.50質量%である請求項1~4のいずれか一項に記載の噴霧用組成物。
【請求項6】
前記噴霧用組成物中の前記2価のアルコールの含有割合が、0.01質量%~40.00質量%である請求項1~5のいずれか一項に記載の噴霧用組成物。
【請求項7】
前記水中油滴型エマルジョンの平均粒子径が、10nm以上1200nm以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の噴霧用組成物。
【請求項8】
エアゾール組成物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の噴霧用組成物。
【請求項9】
噴霧容器に噴霧用組成物が充填された噴霧製品であって、
該噴霧用組成物が、請求項1~7のいずれか一項に記載の噴霧用組成物である噴霧製品。
【請求項10】
エアゾール容器にエアゾール組成物及び噴射剤が充填されたエアゾール製品であって、
該エアゾール組成物が請求項1~7のいずれか一項に記載の噴霧用組成物であるエアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、噴霧用組成物並びに、該噴霧用組成物を用いた噴霧製品及びエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧水などを圧縮ガスなどによって噴霧させる製品が開発されている。特に顔などに噴霧することを想定して、勢いがソフトで、噴射音を低減した噴霧製品が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、水および界面活性剤からなる噴霧用組成物であって、噴霧物の加速度を特定の範囲にした噴霧製品が開示されている。該噴霧製品により、噴霧の勢いが強くなく、噴霧音も静かであることが記載されている。
また、特許文献2では、水または水とアルコールとの混合溶媒および特定の量の界面活性剤を含有してなる組成物であって、界面活性剤によりミセルが形成され、視感透過率を特定の範囲に制御した噴霧用組成物が開示されている。該噴霧用組成物により、噴霧音が小さく、組成物がソフトな感触の霧状に充分に拡散して噴霧され、良好な使用感を付与することができる旨記載されている。
また、特許文献3では、化粧水(純水又は純水と水溶性成分のみからなる。)を原液としたエアゾール剤であって、オイル成分及びHLB8~18のノニオン系界面活性、特定のSP値の多価アルコールを含むエアゾール剤が開示されている。これにより、霧が柔らかく噴射音がソフトなエアゾール剤が提供できる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-194196号公報
【特許文献2】特開平11-236306号公報
【特許文献3】特開2016-188199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、保湿や使用感向上のためのオイル成分を乳化させ多価アルコールを配合した場合、ふんわりソフトな霧になりにくいことがわかった。特に、オイル成分及び多価アルコールをある程度高配合で用いる場合、上記文献のような処方では、霧の柔らかさや、噴射パターンの広さにおいては未だ課題を有している。
【0006】
さらに、特許文献3のように、オイル成分と多価アルコールを配合した場合、高温での長期間の保管において分離しやすくなることもわかってきた。
このような課題に鑑み、本開示は、オイル成分や多価アルコールを配合した場合でも、高温での乳化安定性が高く、さらに噴射パターンの広いソフトな霧を噴霧可能な噴霧用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、水中油滴型エマルジョンの噴霧用組成物であって、
該噴霧用組成物は、水、油性成分、2価のアルコール、HLBが12.0~16.0のノニオン界面活性剤であるノニオン界面活性剤A、及びHLBが2.0~6.0のノニオン界面活性剤であるノニオン界面活性剤Bを含有し、
該噴霧用組成物中の、該油性成分の含有割合の、該ノニオン界面活性剤A及びBの合計
の含有割合に対する質量比(油性成分/ノニオン界面活性剤)が、2.2以下であり、
水中油滴型エマルジョンの平均粒子径が、2000nm以下である噴霧用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、オイル成分や多価アルコールを配合した場合でも、高温での乳化安定性が高く、さらに噴射パターンの広いソフトな霧を噴霧可能な噴霧用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
数値範囲を表す「XX以上YY以下」や「XX~YY」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0010】
噴霧用組成物は、油性成分を含む。油性成分としては特に制限されないが、エステル化合物、炭化水素化合物、シリコン化合物、油脂及び高級アルコールからなる群から選択される少なくとも一が好ましい。高温での長期間の乳化安定性及び噴射パターンの広さの観点から、エステル化合物及び炭化水素化合物からなる群から選択される少なくとも一がより好ましい。
【0011】
エステル化合物としては、例えばミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、リノール酸エチル、サリチル酸ブチルオクチル、エチルヘキサン酸セチル、オリーブ脂肪酸エチル(オレイン酸エチル)等の脂肪酸エステル;トリエチルヘキサノイン、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等の多価アルコール脂肪酸エステル;アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等の多塩基酸エステルなどが挙げられる。
【0012】
炭化水素化合物としては、例えばケロシン、ミネラルオイル、スクワラン、流動パラフィン及び軽質イソパラフィンなどが挙げられる。
シリコン化合物としては、例えばジメチコン、シクロペンタシロキサン及びカプリリルメチコンなどが挙げられる。
【0013】
油脂としては、例えば白樺油、ローズヒップオイル、ホホバ油、大風子油、ひまわり油、グレープシードオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、山茶花油、ブロッコリーシードオイル、ババスオイル、バオバブオイル、巴豆油、オリーブ油、コーヒー豆油、ひまし油、糠油、パーム油、パーム核油、桐油、モモ核油、チェリー油、グランベリーシードオイル、ナンヨウアブラギリ油、ショートニング、サラダ油、白絞油、紫蘇油、ペカンナッツオイル、ピスタチオオイル、荏油、榧油、杏仁油、アケビ油、コーン油、烏臼油、マカダミアナッツオイル、亜麻仁油、ヤシ油、シーバクソン、綿実油、麻実油、葡萄油、けし油、からし油、椿油、小麦胚芽油、月見草油、ピーナッツオイル、パンプキンシードオイル、ローレルオイル、紅花油、アルガンオイル、メドウフォーム油、マルーラナッツオイル、ざくろ種油、ココナッツオイル、ニーム油、大豆油、キウイフルーツシードオイル、モンゴンゴオイル、胡桃油等の植物油脂;ラノリン、馬油、ミンクオイル、スクワレン等の動物性油脂などが挙げられる。
【0014】
高級アルコールとしては、例えばヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール及びオレイルアルコールなどが挙げられる
【0015】
エステル化合物としては、ミリスチン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、トリエチルヘキサノイン、パルミチン酸イソプロピルからなる群から選択される少なくとも一が好ましい。炭化水素化合物としては、流動パラフィン、スクワランからなる群から選択される少なくとも一が好ましい。
【0016】
噴霧用組成物中の油性成分の含有割合は、好ましくは0.030質量%~4.50質量%である。上記範囲であることで、粒子径の小さいエマルションを生成しやすく、良好な乳化安定性及び広い噴射パターンを達成できる。
【0017】
噴霧用組成物中の油性成分の含有割合は、より好ましくは0.035質量%~4.00質量%であり、さらに好ましくは0.10質量%~3.0質量%であり、さらにより好ましくは0.20質量%~2.50質量%であり、殊更好ましくは0.30質量%~2.00質量%であり、特に好ましくは0.40質量%~1.00質量%である。本開示の噴霧用組成物では、油性成分の含有割合をある程度多くした場合でも、噴射パターンの広いソフトな霧を噴霧可能である。
【0018】
噴霧用組成物は、HLBが12.0~16.0(好ましくは12.5~15.0、より好ましくは13.0~14.5)のノニオン界面活性剤であるノニオン界面活性剤Aを含有する。また、噴霧用組成物は、HLBが2.0~6.0(好ましくは2.5~5.0、より好ましくは2.7~4.5)のノニオン界面活性剤であるノニオン界面活性剤Bを含有する。
【0019】
上記二種類のノニオン界面活性剤A及びノニオン界面活性剤Bを併用することで、高温での長期間の乳化安定性を達成でき、かつ噴射パターンの広いソフトな霧を噴霧可能となる。その理由としては、HLB値の異なる2種類の特定の界面活性剤を組み合わせることにより、油-水界面膜に並ぶ界面活性剤密度が増すからと考えている。
【0020】
噴霧用組成物中のノニオン界面活性剤Aの含有割合は、好ましくは0.025質量%~3.00質量%であり、より好ましくは0.10質量%~2.00質量%であり、さらに好ましくは0.20質量%~1.00質量%であり、さらにより好ましくは0.30質量%~0.80質量%である。
噴霧用組成物中のノニオン界面活性剤Bの含有割合は、好ましくは0.020質量%~3.00質量%であり、より好ましくは0.05質量%~2.00質量%であり、さらに好ましくは0.10質量%~1.00質量%であり、さらにより好ましくは0.20質量%~0.80質量%である。
【0021】
また、噴霧用組成物中の、ノニオン界面活性剤Aの含有割合の、ノニオン界面活性剤Bの含有割合に対する質量比(A/B)が、0.7~3.0であることが好ましい。上記範囲であることで、エマルジョンの粒子径を小さくしやすくなるため、高温での長期間の乳化安定性、及び噴射パターンの広いソフトな霧をより達成しやすくなる。
質量比(A/B)は、より好ましくは0.8~2.0であり、さらに好ましくは0.9~2.0であり、さらにより好ましくは1.0~1.7であり、特に好ましくは1.1~1.6である。
【0022】
ここで、界面活性剤のHLB値は、以下のグリフィン法で算出する。下記式(1)において、「親水基の式量の総和/分子量」とは、親水基の質量%である。
(1) グリフィン法:HLB値=20×(親水基の式量の総和/分子量)
【0023】
ノニオン界面活性剤Aとしては、以下のものから選択される少なくとも一が挙げられる。PEG-40水添ヒマシ油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-70水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、セテス-10、セテス-15、ラウレス-9、オレス-10、オレス-15、(C12-14)パレス-7、(C12-14)パレス-9、(C12-14)パレス-12等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、パルミチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、リノール酸ポリグリセリル-10等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリン酸ソルベス-6、テトラステアリン酸ソルベス-60、テトラオレイン酸ソルベス-40、テトラオレイン酸ソルベス-60等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル
【0024】
ノニオン界面活性剤Bとしては、以下のものから選択される少なくとも一が挙げられる。モノオレイン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、モノカプリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル類、ミリスチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-4、トリステアリン酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10等のポリグリセリン脂肪酸エステル
【0025】
ノニオン界面活性剤Aは、PEG-50水添ヒマシ油(HLB:13.5)、PEG-60水添ヒマシ油(HLB:14.0)、セテス-10(HLB:13.5)からなる群から選択される少なくとも一であることがより好ましい。
ノニオン界面活性剤Bは、モノオレイン酸ソルビタン(HLB:4.3)、セスキステアリン酸ソルビタン(HLB:4.2)、ステアリン酸グリセリル(HLB:3.0)からなる群から選択される少なくとも一であることがより好ましい。
【0026】
噴霧用組成物は、2価のアルコールを含有する。3価のアルコールなどと異なり、2価のアルコールを含有することで、界面活性剤の曇点を上昇させ、界面活性剤と水とが相互溶解するため、油-水界面への界面活性剤の吸着がより容易になり、より粒子径が小さいエマルジョンを得ることができるため、高温での長期間の乳化安定性を達成でき、かつ噴射パターンの広いソフトな霧を噴霧可能と考えている。
【0027】
2価のアルコールは、好ましくは炭素数1~8の、より好ましくは炭素数2~6の脂肪族ジオールからなる群から選択される少なくとも一が好ましい。例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、イソペンチルジオール、ネオペンチルグリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールからなる群から選択される少なくとも一がより好ましい。ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールからなる群から選択される少なくとも一がさらに好ましい。
【0028】
噴霧用組成物中の2価のアルコールの含有割合は、好ましくは0.01質量%~40.
00質量%である。上記範囲であることで、高温での長期間の乳化安定性、及び噴射パターンの広いソフトな霧をより達成しやすくなる。噴霧用組成物中の2価のアルコールの含有割合は、より好ましくは0.03質量%~35.00質量%であり、さらに好ましくは0.05質量%~31.00質量%であり、さらにより好ましくは0.07質量%~25.00質量%であり、特に好ましくは0.10質量%~21.00質量%である。上記範囲であると、高温での長期間の乳化安定性がより良好になる。
【0029】
噴霧用組成物は、水を含有する。噴霧用組成物中の水の含有割合は、好ましくは50.00質量%~99.90質量%であり、より好ましくは60.00質量%~99.80質量%であり、さらに好ましくは70.00質量%~99.50質量%であり、さらにより好ましくは80.00質量%~99.30質量%であり、特に好ましくは90.00質量%~99.00質量%である。
【0030】
噴霧用組成物は、水中油滴型エマルジョン(O/Wエマルジョン)である。エマルジョンが形成されず、油性成分が可溶化した場合、噴射パターンの広いソフトな霧を達成できない。
【0031】
また、水中油滴型エマルジョンの平均粒子径が、2000nm以下であることが必要である。上記範囲であることで、高温での長期間の乳化安定性を達成することができる。エマルジョンの平均粒子径は、ノニオン界面活性剤AとBの割合、2価のアルコールの含有割合、油性成分の含有割合、油性成分及びノニオン界面活性剤の割合などにより上記範囲に制御できる。例えば、油性成分/ノニオン界面活性剤(質量比)を2.2以下にすることで、平均粒子径を小さくし上記範囲に制御しやすくなる。また、ノニオン界面活性剤の質量比(A/B)、油性成分の含有割合、2価のアルコールの含有割合を上記範囲にすることで、平均粒子径を小さくしやすくなる。
【0032】
水中油滴型エマルジョンの平均粒子径は、好ましくは1200nm以下であり、より好ましくは600nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下であり、さらにより好ましくは150nm以下であり、特に好ましくは100nm以下である。下限は特に制限されないが、好ましくは10nm以上であり、より好ましくは30nm以上であり、さらに好ましくは50nm以上であり、さらにより好ましくは60nm以上であり、特に好ましくは70nm以上である。上記範囲であると、高温での長期間の乳化安定性がより良好になる。
【0033】
エマルジョンの平均粒子径は、以下の方法で測定する。
噴霧用組成物中のエマルジョンの平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA-920)により、噴霧用組成物を20℃として測定した。本発明において、平均粒子径とは、個数基準の平均粒子径であり、50%メジアン径とする。
【0034】
噴霧用組成物中の、油性成分の含有割合の、ノニオン界面活性剤A及びBの合計の含有割合に対する質量比(油性成分/ノニオン界面活性剤)は、2.2以下であることが必要である。上記範囲であることで、油性成分と界面活性剤とのバランスが良好になり、高温での長期間の乳化安定性を達成することができる。
【0035】
質量比(油性成分/ノニオン界面活性剤)は、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.2以下である。下限は特に制限されないが、好ましくは0.02以上であり、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.5以上であり、さらにより好ましくは0.8以上である。上記範囲であると、高温での長期間の乳化安定性がより良好になる。
【0036】
噴霧用組成物中の、油性成分の含有割合の、2価のアルコールの含有割合に対する質量比(油性成分/2価のアルコール)は、12.0以下であることが好ましい。上記範囲であることで、より粒子径の小さいエマルジョンを得ることができるため、高温での長期間の乳化安定性がより良好になる。
【0037】
質量比(油性成分/2価のアルコール)は、好ましくは8.0以下であり、より好ましくは6.0以下であり、さらに好ましくは5.0以下であり、さらにより好ましくは4.5以下である。下限は特に制限されないが、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.08以上であり、さらに好ましくは0.10以上であり、さらにより好ましくは0.20以上である。上記範囲であると、高温での長期間の乳化安定性がより良好になる。
【0038】
噴霧用組成物には、上記効果を損なわない程度に、有効成分、香料、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、増粘剤、保湿剤、殺菌剤、皮膚保護剤(アミノ酸)、ビタミン類、各種抽出液、消臭・防臭剤、清涼剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、害虫忌避成分、およびその他などの添加剤を含有させてもよい。例えば、アルコールなどを含有させてもよい。具体的には、例えば以下のものが挙げられる。
低級アルコール(例えばエタノール等の炭素数1~3の脂肪族一価アルコール);3価以上の多価アルコール(例えばグリセリンなど);pH調整剤(例えばクエン酸、乳酸、トリエタノールアミン、KOH、NaOHなど);防錆剤(例えばアンモニア水、安息香酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウムなど);防腐剤(例えばパラベン類、フェノキシエタノール);尿素;カルシウム、鉄、ナトリウムなどのミネラル;顔料;色素など。
【0039】
噴霧用組成物であるO/Wエマルジョンの製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。水相と油相とを混合し、例えば、ホモジナイザーや超音波分散機などで分散する方法が挙げられる。
【0040】
本開示における噴霧用組成物は、特に制限されず公知の噴霧製品に適用しうる。本開示は、噴霧容器に噴霧用組成物が充填された噴霧製品を提供する。噴霧製品は、バルブなどの吐出口からの内容物の吐出が、スプレー状又はミスト状に噴霧できるものであればよい。圧縮ガスなどの高圧ガスにより噴霧するものでもよいし、電動又は手動で噴霧するものでもよい。噴霧製品に用いる噴霧容器としては、特に制限されず、公知のエアゾール容器、ポンプスプレー容器、トリガースプレー容器、ポンプ式ディスペンサー、トリガー式ディスペンサーなどが挙げられる。好ましくはエアゾール容器である。
【0041】
噴霧用組成物は、エアゾール組成物であることが好ましい。噴霧用組成物を用いたエアゾール製品について説明する。本開示は、エアゾール容器にエアゾール組成物として上記噴霧用組成物及び噴射剤が充填されたエアゾール製品を提供する。
エアゾール製品に用いるエアゾール容器は、耐圧容器としては公知の種々の容器を利用することができる。また、耐圧容器の種類に応じて、バルブ装置を装着するための構造を適宜選定することができる。
【0042】
エアゾール製品は、噴霧用組成物であるエアゾール組成物をエアゾール容器、すなわちエアゾール用バルブ(噴射バルブ)を備えた耐圧容器内に充填することによって製造される。例えば、エアゾール組成物を調製し、得られたエアゾール組成物と噴射剤とをエアゾール容器に充填することによってエアゾール製品が製造される。耐圧容器内にさらに内容器を設け、噴射剤とエアゾール組成物とを内容器により隔離した、いわゆる二重容器を採用してもよい。
エアゾール組成物と噴射剤の混合比率は、液化ガスについては質量比(エアゾール組成物/噴射剤)で70/30~35/65程度が好ましい。圧縮ガスの場合は質量比(エア
ゾール組成物/噴射剤)で99.9/0.1~98/2程度が好ましい。
【0043】
エアゾール製品の吐出形態は特に制限されないが、スプレー状又はミスト状であることが好ましい。エアゾール製品の吐出機構も特に制限されず、スプレー状又はミスト状に噴霧しうる、公知のアクチュエーターを採用しうる。例えば、アクチュエーター内部の流路をエアゾール組成物が通過することで、エアゾール組成物の旋回流を発生させ、スプレー状又はミスト状に吐出するものが挙げられる。
【0044】
噴射剤は特段限定されず、液化ガスを使用してもよく、圧縮ガスを使用してもよい。エアゾール製品は、好ましくは圧縮ガスを含む。
圧縮ガスは特に制限されず、エアゾール製品に使用しうる公知のものを用いることができる。圧縮ガスは、好ましくは炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素ガス、アルゴン、ヘリウム及び圧縮空気などからなる群から選択される少なくとも一であり、より好ましくは炭酸ガス及び窒素ガスからなる群から選択される少なくとも一である。
【0045】
圧縮ガスは、エアゾール容器内に充填されたときの容器内の圧力(ゲージ圧力)が、25℃で、0.3MPa~1.0MPaとなるように充填することが好ましく、0.6MPa~0.8MPaとなるように充填することがより好ましい。
【実施例0046】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に制限されない。
【0047】
<実施例1~4、参考例>
表1に示す処方(質量%)にて水以外の各原料をガラスビーカーに採取し、攪拌機(500rpm,3min)で均一に混合した。その後、攪拌しながら水を徐々に添加させ、実施例1~4の噴霧用組成物を得た。なお、参考例として水のみを用いたものを調製した。
【0048】
【表1】
【0049】
<実施例5~28、比較例1~20>
表2~4に示す処方(質量%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例
5~28、比較例1~20の噴霧用組成物を得た。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】

「可溶化」は、油性成分が可溶化し、エマルジョンが形成されなかったことを示す。油性成分/ノニオン界面活性剤、油性成分/2価アルコール、及びノニオン界面活性剤A/Bの値は、質量比である。
【0053】
使用した原料は以下の通り。
ジプロピレングリコール(ADEKA「DPG-RF」)
1,3-ブチレングリコール(KHネオケム株式会社「1,3-ブチレングリコール-P」)
グリセリン(花王株式会社「化粧用濃グリセリン」)
PEG-50水添ヒマシ油(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL HCO-50」)PEG-60水添ヒマシ油(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL HCO-60」)PEG-30水添ヒマシ油(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL HCO-30」)セテス-10(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL BC-10」)
セテス-20(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL BC-20」)
モノオレイン酸ソルビタン(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL SO-10V」)セスキステアリン酸ソルビタン(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL SS-15V」)
ステアリン酸グリセリル(HLB:3.0)(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL MGS-BV2」)
トリオレイン酸ポリグリセリル-10(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL Decaglyn 3-OV」)
ステアリン酸グリセリル(HLB:1.5)(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL MGS-F75V」)
エチルヘキサン酸セチル(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL CIO」)
流動パラフィン(Sonneborn社「CARNATION」)
ミリスチン酸イソプロピル(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL IPM-EX」)トリエチルヘキサノイン(日光ケミカルズ株式会社「NIKKOL Trifat S-308」)
【0054】
得られた各噴霧用組成物と噴射剤(窒素ガス)とを、噴霧用組成物:噴射剤=99:1の質量比率で噴射バルブ装置を備えた耐圧容器に充填し、製品内圧を0.75MPaに調整した。圧縮ガス用のボタン(内径φ0.36mm)を装着し実施例1~28のエアゾール製品及び比較例1~20のエアゾール製品を得た。得られたエアゾール組成物及びエアゾール製品を用いて以下の評価を行った。結果を表1~4に示す。
【0055】
(1)乳化安定性(分離確認)
50mlバイアル瓶に噴霧用組成物を採取し、加速試験として40℃の恒温槽に2週間保存した。噴霧用組成物の調製直後、保存1日後(1D)、保存1週間後(1W)、及び保存2週間後(2W)の噴霧用組成物の状態を以下の基準で評価した。
(評価基準)
○:分離なし
×:分離
【0056】
(2)スプレーパターン
各エアゾール製品を恒温槽にて25℃に調整後、15cmの距離からガラス面に1秒間噴霧した。ガラス面にエアゾール組成物が付着した部分(略円形)をスプレーパターンとし、スプレーパターンの縦×横の長さ(mm)を計測した。スプレーはガラス面に対し水平に配置し、噴射はガラス面に対し垂直に行った。3回の試験の平均値を採用した。
【0057】
(3)噴射角度
スプレーパターンの測定値をもとに、次式により噴射角度を算出した。
噴射角度(θ)=2×tan-1(b/a)
a:各製品とガラス面の距離(150mm)
b:各製品のスプレーパターンの半径(mm)