(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137098
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/16 20060101AFI20230922BHJP
【FI】
E03D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043123
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 善勝
(72)【発明者】
【氏名】高野 聡士
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴広
(72)【発明者】
【氏名】中島 誠也
(72)【発明者】
【氏名】石見 亘
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD04
2D039CA01
(57)【要約】
【課題】床面に便器本体を固定する固定部材の露出を抑制しつつ施工性を向上させることができる水洗大便器を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る水洗大便器は、便器本体と、固定部材とを備える。便器本体は、陶器製である。便器本体は、ボウル部およびトラップ部を有し、ボウル部およびトラップ部の外方において略全周にわたって外側壁面部に覆われた袴部が形成される。また、便器本体は、ボウル部の後方において上部が開放された収納部を有する。固定部材は、床面に対して便器本体を固定するためのものである。固定部材は、収納部を形成する内側壁面部と床面とを固定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウル部およびトラップ部を有し、前記ボウル部および前記トラップ部の外方において略全周にわたって外側壁面部に覆われた袴部が形成された、陶器製の便器本体と、
床面に対して前記便器本体を固定するための固定部材と
を備え、
前記便器本体は、前記ボウル部の後方において上部が開放された収納部を有し、
前記固定部材は、前記収納部を形成する内側壁面部と前記床面とを固定する
ことを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記固定部材は、前記内側壁面部のうち前記床面と対向するように形成された対向部において固定する
ことを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記固定部材は、前記便器本体側に配置される便器側固定部材を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記便器側固定部材は、前記便器本体の内側に配置されるとともに、上方へと延在する
ことを特徴とする請求項3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記便器側固定部材は、該便器側固定部材の内部に形成され、固定ねじをガイドするように上下に連通するガイド部を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記ガイド部は、上方へ向かうにつれて連続的に広がるように形成される
ことを特徴とする請求項5に記載の水洗大便器。
【請求項7】
前記固定部材は、固定ピンを進退させるギヤ装置であり、
前記ギヤ装置は、回転操作を変換して前記固定ピンを進退させ、前記固定ピンによって前記内側壁面部と前記床面とを固定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器本体の下部に略全周にわたって形成された袴部を有する水洗大便器において、便器本体の外側からねじ止めすることで、床面に対して便器本体を固定する固定構造が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、便器本体の下部に略全周にわたって形成された袴部を有する水洗大便器において、便器本体の内側と床面とをねじで固定することで、便器外観で見えないようにねじを隠すことができる固定構造が知られている(たとえば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-188206号公報
【特許文献2】特開2005-48584号公報
【特許文献3】特開2007-56483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、便器本体の外側からねじ止めする固定構造では、ねじが露出してしまう。このため、ねじを隠すように樹脂製のキャップを被せる構造をとるが、陶器製の便器に対して異なる材質となる樹脂製のキャップを被せることで意匠性が低下することがあり、また、キャップの凹凸によって清掃性が低下することがある。
【0006】
また、便器本体の内側と床面とをねじで固定する固定構造では、便器外観で見えないようにねじを隠すことができるものの、便器の施工時には、便器本体を裏返して作業したり、狭い隙間に手指などを入れて作業したりする必要があるため、固定作業が困難となり、施工性が低下することがある。
【0007】
実施形態の一態様は、床面に便器本体を固定する固定部材の露出を抑制しつつ施工性を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る水洗大便器は、ボウル部およびトラップ部を有し、前記ボウル部および前記トラップ部の外方において略全周にわたって外側壁面部に覆われた袴部が形成された、陶器製の便器本体と、床面に対して前記便器本体を固定するための固定部材とを備え、前記便器本体は、前記ボウル部の後方において上部が開放された収納部を有し、前記固定部材は、前記収納部を形成する内側壁面部と前記床面とを固定する。
【0009】
このような構成によれば、床面に便器本体を固定する場合には収納部を形成する内側壁面部へとアプローチすればよいため、便器本体の外側から固定作業(施工)を行うことができる。一方で、便器本体の内側に固定部材が配置されるため、便器外観で見えないように固定部材を隠蔽することができる。すなわち、床面に便器本体を固定する固定部材の便器外観で見えるような露出を抑制しつつ施工性を向上させることができる。
【0010】
また、上記した水洗大便器において、前記固定部材は、前記内側壁面部のうち前記床面と対向するように形成された対向部において固定する。
【0011】
このような構成によれば、固定部材が床面と対向する対向部において固定可能なため、固定部材に対して収納部の上方から容易にアプローチ可能となる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0012】
また、上記した水洗大便器において、前記固定部材は、前記便器本体側に配置される便器側固定部材を有する。
【0013】
このような構成によれば、たとえば、便器側固定部材が、便器本体側である内側壁面部の内側に配置されることで、便器側固定部材へのアプローチ性が向上する。これにより、施工性を向上させることができる。また、たとえば、便器側固定部材が、便器本体側である内側壁面部の外側に配置されることで、収納部の容積圧迫を抑えることができる。
【0014】
また、上記した水洗大便器において、前記便器側固定部材は、前記便器本体の内側に配置されるとともに、上方へと延在する。
【0015】
このような構成によれば、収納部の上方から便器側固定部材までの距離が近くなるため、収納部の上方からさらに容易にアプローチ可能となる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0016】
また、上記した水洗大便器において、前記便器側固定部材は、該便器側固定部材の内部に形成され、固定ねじをガイドするように上下に連通するガイド部を有する。
【0017】
このような構成によれば、固定部材と締結される固定ねじがガイド部によってガイドされることで、固定作業(施工)をさらに容易に行うことができる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0018】
また、上記した水洗大便器において、前記ガイド部は、上方へ向かうにつれて連続的に広がるように形成される。
【0019】
このような構成によれば、たとえば、上方から固定ねじを落下させるだけで、ねじの締結部まで固定ねじを容易に導くことができ、固定作業(施工)をさらに容易に行うことができる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0020】
また、上記した水洗大便器において、前記固定部材は、固定ピンを進退させるギヤ装置であり、前記ギヤ装置は、回転操作を変換して前記固定ピンを進退させ、前記固定ピンによって前記内側壁面部と前記床面とを固定する。
【0021】
このような構成によれば、たとえば、収納部の上方からギヤ装置に対して回転操作を行い、この回転操作に伴いギヤ装置から固定ピンが内側壁面部へ向けて進出することで、床面に便器本体を固定することができる。これにより、固定作業(施工)を容易に行うことができ、施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
実施形態の一態様によれば、床面に便器本体を固定する固定部材の露出を抑制しつつ施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る水洗大便器を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る水洗大便器を示す概略側面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る水洗大便器の固定構造の説明図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る水洗大便器の固定部材の説明図である。
【
図5A】
図5Aは、第2実施形態に係る水洗大便器の固定部材の説明図である。
【
図5B】
図5Bは、第2実施形態に係る水洗大便器の固定部材の変形例の説明図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る水洗大便器の固定部材の説明図である。
【
図7A】
図7Aは、第4実施形態に係る水洗大便器の固定部材の説明図(その1)である。
【
図7B】
図7Bは、第4実施形態に係る水洗大便器の固定部材の説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
<第1実施形態>
図1~4を参照して第1実施形態に係る水洗大便器1の概要について説明する。
図1は、第1実施形態に係る水洗大便器1を示す概略斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る水洗大便器1を示す概略側面図である。
図3は、第1実施形態に係る水洗大便器1の固定構造の説明図であり、
図2におけるIII-III線断面図である。
図4は、第1実施形態に係る水洗大便器1の固定部材3の説明図であり、
図3におけるA部拡大図である。
【0026】
なお、各図には、鉛直上向き(上方)を正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を示している。以下では、説明の便宜上、X軸の正方向を左方、X軸の負方向を右方、Y軸の正方向を前方、Y軸の負方向を後方と規定し、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という。
【0027】
図1および2に示すように、水洗大便器1は、トイレ室などの床面FS(
図2参照)に設置される床置き式である。なお、水洗大便器1における洗浄方式は、たとえば、サイホン式でもよいし、洗い落とし(ウォッシュダウン)式などの他の方式でもよい。
【0028】
水洗大便器1は、便器本体2と、固定部材3とを備える。便器本体2は、陶器製であり、ボウル部21と、リム部22と、棚部23と、導水路24(
図8A参照)と、トラップ部25(
図8A参照)と、袴部26と、収納部27とを備える。
【0029】
ボウル部21は、汚物を受ける部位であり、ボウル状に形成される。ボウル部21の底部は、所定量の溜水を貯留する溜水部211(
図8A参照)となる。溜水部211には、後述するトラップ部25が接続される。
【0030】
リム部22は、ボウル部21の上縁部に設けられ、ボウル部21の上縁部において環状に形成される。棚部23は、リム部22の下部に設けられ、略平坦な面として形成されるとともに、ボウル部21の上部において環状に形成される。導水路24は、たとえば、便器本体2の洗浄水の供給口(図示せず)から前方へ向けて延びており、リム部22のリム通水路(図示せず)に接続される。
【0031】
トラップ部25(
図8A参照)は、ボウル部21の汚物を排出可能なように、ボウル部21から後方へと延設された管路である。トラップ部25は、上昇管251(
図8A参照)と、下降管252(
図8A参照)とを備える。上昇管251は、上流側の端部(前端部)がボウル部21の底部(溜水部211)に接続される。上昇管251は、溜水部211と連通するとともに、後方へ向かうにつれて上昇するように傾斜した管路である。
【0032】
下降管252は、上流側の端部(前端部)が上昇管251の下流側の端部(後端部)に接続される。下降管252は、上昇管251の後端部と連通するとともに、下方へ向かう管路である。下降管252は、たとえば、排水ソケット(図示せず)を介して、便器本体2の外部の配管に接続される。
【0033】
袴部26は、ボウル部21およびトラップ部25の外方に設けられ、便器本体2の側周面を形成する。すなわち、袴部26は、便器本体2の下部を含み、便器本体2の略全周にわたって外側壁面部291に覆われて形成された部位である。
【0034】
収納部27は、ボウル部21の後方に形成され、ボウル部21の後方おいて上部が開放された部位(空間)である。収納部27には、水洗大便器1に取り付けられる、使用者の局部洗浄などを行うための便座装置の機能部(図示せず)などが収納される。収納部27の内面は、便器本体2の内側壁面部292によって形成される。
【0035】
図3および4に示すように、内側壁面部292は、外部から見えないように便器本体2の内側へ向けて露出した面であり、かつ、便器本体2の外側からアクセス可能な面である。このため、収納部27の内面の他にも、便器本体2の内側へ向けて露出した面であり、かつ、便器本体2の外側からアクセス可能な面を「内側壁面部(292)」という。これに対し、上記した外側壁面部291は、便器本体2の外側へ向けて露出した面である。
【0036】
なお、水洗大便器1は、トラップ部25の前方に、上昇管251へ向けて洗浄水を噴射するゼット吐水口28(
図8A参照)をさらに備えてもよい。ゼット吐水口28は、ゼット導水路281(
図8A参照)の出口に形成され、ゼット導水路281からの洗浄水を強力な水勢で噴射することで、サイホン作用を発生させる。
【0037】
固定部材3は、床面FSに対して便器本体2を固定するための部材である。
図3に示すように、固定部材3は、左右一対で設けられる。固定部材3は、固定ねじ31と、床側固定部材(以下、「固定片」という)32とを備える。固定ねじ31は、固定片32に対して上方から締結される。固定片32は、たとえば、樹脂製である。固定片32は、床固定ねじ321と、ねじ孔322とを備える。
【0038】
床固定ねじ321は、床面FSに対して締結される。
図3および4に示すように、固定片32は、床固定ねじ321が床面FSに締結されることで、床面FS上の所定位置に固定される。ねじ孔322は、固定片32の上面に形成される。ねじ孔322には、上方から固定ねじ31が締結される。なお、固定片32にはねじ孔322がなくてもよい。この場合、固定ねじ31が樹脂製の固定片32の上面に直接ねじ込まれる。
【0039】
このように、固定部材3においては、固定片32が床面FS上の所定位置に予め固定され、便器本体2がセットされた後、
図4に示すように、固定ねじ31が、貫通孔293を介して、固定片32に対して上方(矢線B方向)から締結されることで、床面FSに便器本体2を固定する。この場合、固定部材3(固定片32)は、内側壁面部292と床面FSとを固定する。
【0040】
また、固定部材3(固定片32)は、内側壁面部292のうち床面FSと対向する対向部292aにおいて、内側壁面部292と床面FSとを固定する。
【0041】
以上説明したような第1実施形態によれば、床面FSに便器本体2を固定する場合には収納部27を形成する内側壁面部292へとアプローチすればよいため、便器本体2の外側から固定作業(施工)を行うことができる。一方で、便器本体2の内側に固定部材3(固定片32)が配置されるため、便器外観で見えないように固定部材3(固定片32)を隠蔽することができる。すなわち、固定部材3(固定片32)の便器外観で見えるような露出を抑制しつつ施工性を向上させることができる。
【0042】
また、固定部材3(固定片32)が床面FSと対向する対向部292aにおいて固定可能なため、固定部材3(固定片32)に対して収納部27の上方から容易にアプローチ可能となる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0043】
なお、上記した第1実施形態では、固定片32を介して床面FSに便器本体2を固定する構成としているが、たとえば、固定片32をなくして、床面FSに固定ねじ31を直接締結させる構成としてもよい。このように構成しても、床面FSに便器本体2を固定する場合には収納部27を形成する内側壁面部292へとアプローチすればよく、固定部材3(固定ねじ31)の便器外観で見えるような露出を抑制しつつ施工性を向上させることができる。
【0044】
<第2実施形態>
次に、
図5Aを参照して第2実施形態に係る水洗大便器1について説明する。
図5Aは、第2実施形態に係る水洗大便器1の固定部材3(固定部材3A)の説明図である。なお、
図5Aには、
図4において示した箇所と同等の箇所を示している。
【0045】
また、第2実施形態は、固定部材3Aの構成において上記した第1実施形態とは異なる。このため、以下で説明する第2実施形態においては、第1実施形態と同一または同等の箇所には同一の符号を付し、これらの箇所の説明を省略する場合がある。
【0046】
図5Aに示すように、固定部材3Aは、固定ねじ31と、床側固定部材(固定片)32と、便器側固定部材33とを備える。便器側固定部材33は、便器本体2(
図3参照)側に配置される。本実施形態においては、便器側固定部材33は、内側壁面部292のうち床面FSと対向する対向部292aを挟んで、便器本体2の内側、すなわち、収納部27(
図1参照)の内部となる上側に配置される。
【0047】
便器側固定部材33は、筒状(たとえば、円筒状)の部材である。なお、筒状の便器側固定部材33の孔は、後述するガイド部331となる。便器側固定部材33は、その設置状態において上方へと延在するように形成される。
【0048】
便器側固定部材33は、ガイド部331を備える。ガイド部331は、上記したように、筒状部材である便器側固定部材33が有する、略中央において上下に連通している孔である。ガイド部331は、上方からガイド部331へ挿入された固定ねじ31を、貫通孔293を介して、固定片32の上面のねじの締結部へとガイドする。なお、便器側固定部材33のガイド部331は、貫通孔293に連通可能な位置になるよう、内側壁面部292に固定または係合されている。
【0049】
本実施形態においても、固定部材3Aは、固定片32が床面FS上の所定位置に予め固定され、便器本体2がセットされた後、固定ねじ31が、便器側固定部材33および貫通孔293を介して、固定片32に対して上方(矢線B方向)から締結されることで、床面FSに便器本体2を固定する。この場合、固定部材3A(すなわち、固定片32および便器側固定部材33)は、内側壁面部292と床面FSとを固定する。
【0050】
また、固定部材3A(固定片32および便器側固定部材33)は、内側壁面部292のうち床面FSと対向する対向部292aにおいて、内側壁面部292と床面FSとを固定する。
【0051】
以上説明したような第2実施形態によれば、床面FSに便器本体2を固定する場合には収納部27を形成する内側壁面部292へとアプローチすればよいため、便器本体2の外側から固定作業(施工)を行うことができる。一方で、便器本体2の内側に固定部材3Aが配置されるため、便器外観で見えないように固定部材3Aを隠蔽することができる。すなわち、固定部材3Aの便器外観で見えるような露出を抑制しつつ施工性を向上させることができる。
【0052】
また、固定部材3Aが床面FSと対向する対向部292aにおいて固定可能なため、固定部材3Aに対して収納部27の上方から容易にアプローチ可能となる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0053】
また、便器側固定部材33が収納部27の内部となる内側壁面部292の内側(上側)に配置されることで、便器側固定部材33へのアプローチ性が向上する。これにより、施工性を向上させることができる。
【0054】
また、便器側固定部材33が上方へ延在しているため、収納部27の上方から便器側固定部材33までの距離が近くなり、収納部27の上方からさらに容易にアプローチ可能となる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0055】
また、便器側固定部材33が上下に連通するガイド部331を備えることで、固定部材3A(固定片32)と締結される固定ねじ31がガイド部331によってガイドされ、固定作業(施工)をさらに容易に行うことができる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0056】
<第2実施形態の変形例>
ここで、
図5Bを参照して第2実施形態の変形例に係る水洗大便器1について説明する。
図5Bは、第2実施形態に係る水洗大便器1の固定部材3(固定部材3B)の変形例の説明図である。なお、
図5Bには、
図4および5Aにおいて示した箇所と同等の箇所を示している。
【0057】
図5Bに示すように、床面FSから内側壁面部292のうち床面FSと対向する対向部292aまでの高さが比較的ある場合には、便器側固定部材33は、収納部27(
図1参照)の外部となる下側に配置される。すなわち、固定部材3Bにおいては、固定片32と便器側固定部材33とが上下に重なるように配置される。
【0058】
便器側固定部材33は、ガイド部331を備える。ガイド部331は、上記したように、筒状部材である便器側固定部材33が有する、略中央において上下に連通している孔である。ガイド部331は、上方から貫通孔293を介してガイド部331へ挿入された固定ねじ31を、固定片32の上面のねじの締結部へとガイドする。
【0059】
本変形例においても、固定部材3Bは、固定片32が床面FS上の所定位置に予め固定され、便器本体2がセットされた後、固定ねじ31が、貫通孔293および便器側固定部材33を介して、固定片32に対して上方(矢線B方向)から締結されることで、床面FSに便器本体2を固定する。この場合、固定部材3B(すなわち、固定片32および便器側固定部材33)は、内側壁面部292と床面FSとを固定する。
【0060】
また、固定部材3B(固定片32および便器側固定部材33)は、内側壁面部292のうち床面FSと対向する対向部292aにおいて、内側壁面部292と床面FSとを固定する。
【0061】
このような変形例によれば、床面FSに便器本体2を固定する場合には収納部27を形成する内側壁面部292へとアプローチすればよいため、便器本体2の外側から固定作業(施工)を行うことができる。一方で、便器本体2の内側に固定部材3Bが配置されるため、便器外観で見えないように固定部材3Bを隠蔽することができる。すなわち、固定部材3Bの便器外観で見えるような露出を抑制しつつ施工性を向上させることができる。
【0062】
また、固定部材3Bが床面FSと対向する対向部292aにおいて固定可能なため、固定部材3Bに対して収納部27の上方から容易にアプローチ可能となる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0063】
また、便器側固定部材33が収納部27の内部となる内側壁面部292の外側(下側)に配置されることで、便器側固定部材33が配置されることによる収納部27の容積圧迫を抑えることができる。
【0064】
また、便器側固定部材33が上下に連通するガイド部331を備えることで、固定部材3B(固定片32)と締結される固定ねじ31がガイド部331によってガイドされ、固定作業(施工)をさらに容易に行うことができる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0065】
<第3実施形態>
次に、
図6を参照して第3実施形態に係る水洗大便器1について説明する。
図6は、第3実施形態に係る水洗大便器1の固定部材3(固定部材3C)の説明図である。なお、
図6には、
図4、5Aおよび5Bにおいて示した箇所と同等の箇所を示している。
【0066】
また、第3実施形態は、固定部材3Cの構成において上記した第1および第2実施形態とは異なる。このため、以下で説明する第3実施形態においては、第1および第2実施形態と同一または同等の箇所には同一の符号を付し、これらの箇所の説明を省略する場合がある。
【0067】
図6に示すように、固定部材3Cは、固定ねじ31と、床側固定部材(固定片)32と、便器側固定部材33と、ガイド部材34とを備える。便器側固定部材33は、便器本体2(
図3参照)側に配置される。本実施形態においては、便器側固定部材33は、内側壁面部292のうち床面FSと対向する対向部292aを挟んで、便器本体2の内側、すなわち、収納部27(
図1参照)の内部となる上側に配置される。
【0068】
ガイド部材34は、上方へ向かうにつれて開口が広がる漏斗状の部材であり、その下部が便器側固定部材33の上部に配置される。ガイド部材34は、ガイド部341を備える。ガイド部341は、上方へ向かうにつれて連続的に広がるように形成される。ガイド部材34のガイド部341は、貫通孔342を介して、便器側固定部材33のガイド部331へと連通する。なお、貫通孔342の入口をテーパ状のC面形状としてもよく、その場合、ねじの挿入が容易になる。
【0069】
ガイド部341は、上方からガイド部341へ挿入(投入)された固定ねじ31を、便器側固定部材33のガイド部331、貫通孔293を介して、固定片32の上面のねじの締結部へとガイドする。なお、ガイド部341へ投入された固定ねじ31は、その自重によって自動的にねじの締結部へと送られる。
【0070】
また、ガイド部材34は、便器本体2を固定した後も収納部27の内部に残したままであってもよいし、便器本体2を固定した後に取り外しできるよう着脱可能に設けられてもよい。たとえば、図示は省略するが、ガイド部材34をガイド部341の中間近傍で係合するように連結して、分割可能に構成して、着脱を行ってもよい。
【0071】
本実施形態においても、固定部材3Cは、固定片32が床面FS上の所定位置に予め固定され、便器本体2がセットされた後、固定ねじ31が、ガイド部材34、便器側固定部材33および貫通孔293を介して、固定片32に対して上方(矢線B方向)から締結されることで、床面FSに便器本体2を固定する。この場合、固定部材3C(すなわち、固定片32、便器側固定部材33およびガイド部材34)は、内側壁面部292と床面FSとを固定する。
【0072】
また、固定部材3C(固定片32、便器側固定部材33およびガイド部材34)は、内側壁面部292のうち床面FSと対向する対向部292aにおいて、内側壁面部292と床面FSとを固定する。
【0073】
以上説明したような第3実施形態によれば、床面FSに便器本体2を固定する場合には収納部27を形成する内側壁面部292へとアプローチすればよいため、便器本体2の外側から固定作業(施工)を行うことができる。一方で、便器本体2の内側に固定部材3Cが配置されるため、便器外観で見えないように固定部材3Cを隠蔽することができる。すなわち、固定部材3Cの便器外観で見えるような露出を抑制しつつ施工性を向上させることができる。
【0074】
また、固定部材3Cが床面FSと対向する対向部292aにおいて固定可能なため、固定部材3Cに対して収納部27の上方から容易にアプローチ可能となる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0075】
また、便器側固定部材33が収納部27の内部となる内側壁面部292の内側(上側)に配置されることで、便器側固定部材33へのアプローチ性が向上する。これにより、施工性を向上させることができる。
【0076】
また、便器側固定部材33が上方へ延在しているため、収納部27の上方から便器側固定部材33までの距離が近くなり、収納部27の上方からさらに容易にアプローチ可能となる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0077】
また、便器側固定部材33が上下に連通するガイド部331を備えることで、固定部材3C(固定片32)と締結される固定ねじ31がガイド部331によってガイドされ、固定作業(施工)をさらに容易に行うことができる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0078】
また、ガイド部材34のガイド部341によって、たとえば、上方から固定ねじ31を落下させるだけで、ねじの締結部まで固定ねじ31を容易に導くことができ、固定作業(施工)をさらに容易に行うことができる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0079】
<第4実施形態>
次に、
図7Aおよび7Bを参照して第4実施形態に係る水洗大便器1について説明する。
図7Aおよび2Bは、第4実施形態に係る水洗大便器1の固定部材3(固定部材4D)の説明図である。なお、
図7Aには、
図4、5A、5Bおよび6において示した箇所と同等の箇所を示し、
図7Bには、後述するギヤ装置35の内部構造の一例を示している。
【0080】
また、第4実施形態は、固定部材3Dの構成において上記した第1、第2および第3実施形態とは異なる。このため、以下で説明する第4実施形態においては、第1、第2および第3実施形態と同一または同等の箇所には同一の符号を付し、これらの箇所の説明を省略する場合がある。
【0081】
図7Aに示すように、固定部材3Dは、ギヤ装置35を備える。ギヤ装置35は、上記した固定片32(
図4参照)と同様、床固定ねじ321(
図4参照)などによって床面FS上に予め固定される。
【0082】
ギヤ装置35は、便器本体2(
図3参照)側に配置される。本実施形態においては、ギヤ装置35は、内側壁面部292のうち床面FSと対向する対向部292aを挟んで、便器本体2の内側、すなわち、収納部27(
図1参照)の外部となる下側に配置される。また、ギヤ装置35は、たとえば、床面FSに対して略直交する内側壁面部292の近傍に配置される。
【0083】
なお、床面FSに対して略直交する内側壁面部292には、後述する固定ピン351が挿通される挿通孔294が形成される。
【0084】
ギヤ装置35は、固定ピン351と、ギヤ352とを備える。ギヤ装置35は、収納部27の上方から挿通されたドライバなどの工具Tが取り付けられ、工具Tが矢線C1方向へ回転操作されることで、この回転操作を変換して、固定ピン351を矢線C2方向へ進出させ、挿通孔294へと挿通させる。
【0085】
図7Bに示すように、固定ピン351の外周面には、たとえば、ウォームが形成され、ギヤ352は、たとえば、ウォームホイールである。このように、固定ピン351とギヤ352とは、ウォームギヤを構成している。これにより、工具Tの回転操作によるギヤ352の矢線C21方向への回転が変換されて、固定ピン351が矢線C22方向へ進退可能となる。
【0086】
本実施形態においては、固定部材3Dは、ギヤ装置35が床面FS上の所定位置に予め固定され、便器本体2がセットされた後、ギヤ装置35に取り付けられた工具Tの回転操作がギヤ352によって変換され、固定ピン351が内側壁面部292の挿通孔294へと挿通されることで、床面FSに便器本体2を固定する。この場合、固定部材3D(すなわち、ギヤ装置35)は、内側壁面部292と床面FSとを固定する。
【0087】
以上説明したような第4実施形態によれば、床面FSに便器本体2を固定する場合には収納部27を形成する内側壁面部292へとアプローチすればよいため、便器本体2の外側から固定作業(施工)を行うことができる。一方で、便器本体2の内側に固定部材3D(ギヤ装置35)が配置されるため、便器外観で見えないように固定部材3D(ギヤ装置35)を隠蔽することができる。すなわち、固定部材3D(ギヤ装置35)の便器外観で見えるような露出を抑制しつつ施工性を向上させることができる。
【0088】
また、固定部材3D(ギヤ装置35)が床面FSと対向する対向部292aにおいて固定可能なため、固定部材3D(ギヤ装置35)に対して収納部27の上方から容易にアプローチ可能となる。これにより、施工性を向上させることができる。
【0089】
また、収納部27の上方からギヤ装置35に対して回転操作を行い、この回転操作に伴いギヤ装置35から固定ピン351が内側壁面部292の挿通孔294へ向けて進出することで、床面FSに便器本体2を固定することができる。これにより、固定作業(施工)を容易に行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0090】
なお、上記した第4実施形態では、固定ピン351を挿通孔294へ挿通させることで便器本体2を固定する構成としているが、内側壁面部922に挿通孔924が形成されていなくても、内側壁面部292へ固定ピン351を突き当てることで便器本体2を固定する構成としてもよい。これにより、挿通孔294を省略して、便器本体2の製造の容易化を図ることができる。
【0091】
また、上記した第1~第4実施形態では、左右一対の固定部材3(3A~3D)に同じものを使用して便器本体2を固定するが、たとえば、一方を固定部材3とし、他方を固定部材3A~3Dのいずれかとするなど、左右が異なるものであってもよい。これにより、たとえば、便器本体2の形状に応じてより好適なものを使い分けることができる。
【0092】
また、上記した第1~第4実施形態では、左右一対の固定部材3(3A~3D)で便器本体2を固定するが、たとえば、便器本体2の左右方向の略中央に1つの固定部材3(3A~3D)を配置して便器本体を固定するようにしてもよい。これにより、固定部材3(3A~3D)の数量を減らすことができ、部品点数の削減を図ることができる。
【0093】
<前側固定部材>
次に、
図8Aおよび8Bを参照して前側固定部材4について説明する。
図8Aおよび8Bは、前側固定部材4の説明図である。なお、
図8Aには、便器本体2の概略側断面図を示し、
図8Bには、
図8AにおけるVIII-VIII線断面図を示している。
【0094】
上記した固定部材3は、床面FSに対して便器本体2の主に後側を固定する。これに対し、前側固定部材4は、床面FSに対して便器本体2の前側を固定する。
【0095】
図8Aに示すように、前側固定部材4は、本体部41と、ピン部42とを備える。本体部41は、床固定ねじ(図示せず)などによって床面FS上に予め固定される。本体部41は、その上部に弾性体で形成されたクリップ部41aを備える。ピン部42は、たとえば、便器本体2の内側へ露出している前側壁面部925に、前側壁面部925から後方へ突出するように取り付けられる。この場合、前側壁面部925に孔が形成されており、この孔にピン部42が挿通されることで取り付けられる。
【0096】
前側固定部材4は、便器本体2の床面FSへの設置時において、
図8Bに示すように、ピン部42が上方からクリップ部41aへと嵌り込むことで、便器本体2と床面FSとを固定する。
【0097】
このように、ピン部42がクリップ部41aへ嵌り込んで便器本体2が固定されるため、ねじを使用しないねじレス構造とすることができる。
【0098】
なお、前側固定部材4は、上記したようなピン部42とクリップ部41aとによる係合構造に限定されず、たとえば、接着ブロックを用いたものであってもよいし、より簡素な面ファスナーなどを用いたものであってもよい。
【0099】
また、たとえば、収納部27の四隅に固定部材3(3A~3D)を配置するなどすれば、より前側に配置された左右一対の固定部材3(3A~3D)によって便器本体2の前側の固定も兼ねるようになり、前側固定部材4を省略することができる。これにより、部品点数の削減を図ることができる。
【0100】
また、本実施形態では、固定片32、ギヤ装置35は単独で部品を設ける構成であるが、便器内の下降管252に接続される排水ソケットの一部に、固定片32および/またはギヤ装置35を設けることで、部品点数を低減させることができる。
【0101】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 水洗大便器
2 便器本体
3 固定部材
21 ボウル部
25 トラップ部
26 袴部
27 収納部
31 固定ねじ
33 便器側固定部材
35 ギヤ装置
291 外側壁面部
292 内側壁面部
292a 対向部
331 ガイド部
341 ガイド部
351 固定ピン
FS 床面