(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013710
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】接触判定装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/955 20060101AFI20230119BHJP
H03K 17/96 20060101ALI20230119BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
H03K17/955 G
H03K17/96 G
G01B7/00 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118082
(22)【出願日】2021-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 新一
(72)【発明者】
【氏名】永草 寛基
(72)【発明者】
【氏名】小松 稜
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 大介
【テーマコード(参考)】
2F063
5J050
【Fターム(参考)】
2F063AA23
2F063BA08
2F063CA17
2F063DA02
2F063DA05
2F063HA01
2F063HA04
5J050AA13
5J050BB23
5J050CC09
5J050EE34
5J050EE39
5J050EE40
5J050FF25
5J050FF28
(57)【要約】
【課題】ノイズが変化する環境下でも、接触を高精度に判定できる接触判定装置を提供する。
【解決手段】接触判定装置は、対象物に設けられる静電センサと、前記静電センサが測定した静電容量に基づいて前記対象物に手が接触しているかどうかを判定する接触判定部とを備え、前記接触判定部は、前記静電容量が第1接触閾値以上である場合に、手が前記対象物に接触したと判定し、前記静電容量の第1所定時間における変化量がノイズ閾値以上になってから第2所定時間は前記第1接触閾値に補正値を加算した状態を継続する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に設けられる静電センサと、
前記静電センサが測定した静電容量に基づいて前記対象物に手が接触しているかどうかを判定する接触判定部と
を備え、
前記接触判定部は、
前記静電容量が第1接触閾値以上である場合に、手が前記対象物に接触したと判定し、
前記静電容量の第1所定時間における変化量がノイズ閾値以上になってから第2所定時間は前記第1接触閾値に補正値を加算した状態を継続する、接触判定装置。
【請求項2】
前記接触判定部は、前記静電容量が第3所定時間にわたって前記第1接触閾値以上である場合に、手が前記対象物に接触したと判定する、請求項1に記載の接触判定装置。
【請求項3】
前記接触判定部は、前記静電容量が、第2接触閾値以下になると、前記対象物に手が接触していないと直ちに判定する、請求項2に記載の接触判定装置。
【請求項4】
前記第1接触閾値は、前記第2接触閾値よりも大きい、請求項3に記載の接触判定装置。
【請求項5】
前記接触判定部は、
前記静電容量の前記第1所定時間における変化量が前記ノイズ閾値以上になると、第1タイマのカウントをスタートし、
前記静電容量の前記第1所定時間における変化量が前記ノイズ閾値未満になり、前記第1タイマのカウント時間が前記第2所定時間を超えると、前記第1接触閾値への前記補正値の加算を中止する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の接触判定装置。
【請求項6】
前記接触判定部は、前記第1タイマのカウント時間が前記第2所定時間を超える前に、前記静電容量の前記第1所定時間における変化量が前記ノイズ閾値以上になると、前記第1タイマをリセットしてカウントを再スタートする、請求項5に記載の接触判定装置。
【請求項7】
前記ノイズ閾値及び前記補正値を複数有し、
前記接触判定部は、前記複数のノイズ閾値のうちの大きな前記ノイズ閾値を用いるときほど、前記複数の補正値のうちに大きな前記補正値を用いる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の接触判定装置。
【請求項8】
前記接触判定部は、
前記静電容量の前記第1所定時間における変化量が前記複数のノイズ閾値のうちの第1ノイズ閾値以上になると、第1タイマと第2タイマとのカウントをスタートし、
前記静電容量の前記第1所定時間における変化量が前記複数のノイズ閾値のうちの前記第1ノイズ閾値よりも小さい第2ノイズ閾値を超えると、前記第2タイマのカウントをスタートし、
前記第1タイマが前記第2所定時間を超える前は、前記第1接触閾値に第1補正値を加算し、
前記第1タイマが前記第2所定時間を超えて、前記第2タイマが前記第2所定時間を超える前は、前記第1接触閾値に前記第1補正値よりも小さい第2補正値を加算した状態を継続する、請求項7に記載の接触判定装置。
【請求項9】
車両のステアリングホイールのグリップ内部に前記静電センサが実装されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の接触判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、静電容量方式のタッチパネルを備えた表示装置から、前記タッチパネルで検出された静電容量の変化量データを受信する受信部と、前記変化量データに応じて、タッチの有無を識別するための閾値が異なる複数の動作モードのいずれかを決定して前記表示装置へ送信する決定部と、を備える管理装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、変化量データに応じて複数の動作モードのいずれかを決定する方法では、静電容量にノイズがあり、ノイズが時間経過とともに変化する環境では、高精度にタッチを検出することが困難である。
【0005】
そこで、ノイズが変化する環境下でも、接触を高精度に判定できる接触判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の接触判定装置は、対象物に設けられる静電センサと、前記静電センサが測定した静電容量に基づいて前記対象物に手が接触しているかどうかを判定する接触判定部とを備え、前記接触判定部は、前記静電容量が第1接触閾値以上である場合に、手が前記対象物に接触したと判定し、前記静電容量の第1所定時間における変化量がノイズ閾値以上になってから第2所定時間は前記第1接触閾値に補正値を加算した状態を継続する。
【発明の効果】
【0007】
ノイズが変化する環境下でも、接触を高精度に判定できる接触判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の接触判定装置100を実装したステアリングホイール10を示す図である。
【
図2】静電センサ110の出力正弦波の一例を示す図である。
【
図3】基準値を用いた接触の判定を説明する図である。
【
図4】接触判定部122が実行する接触判定処理を表すフローチャートを示す図である。
【
図5】接触判定部122が実行する接触判定処理を表すフローチャートを示す図である。
【
図6】接触判定部122が実行する接触判定処理を表すフローチャートを示す図である。
【
図7】接触判定部122が実行する接触判定処理を表すフローチャートを示す図である。
【
図8】実施形態の接触判定装置100の動作を示す図である。
【
図9】実施形態の接触判定装置100の動作を示す図である。
【
図10】実施形態の接触判定装置100の動作を示す図である。
【
図11】実施形態の接触判定装置100の動作を示す図である。
【
図12】比較用の接触判定装置の動作を示す図である。
【
図13】比較用の接触判定装置の動作を示す図である。
【
図14】比較用の接触判定装置の動作を示す図である。
【
図15】比較用の接触判定装置の動作を示す図である。
【
図16】変形例のサブルーチン「sub初期設定」の処理を表すフローチャートを示す図である。
【
図17】変形例のサブルーチン「subオン閾値Th1補正」の処理を表すフローチャートを示す図である。
【
図18】実施形態の変形例の接触判定装置の動作を示す図である。
【
図19】実施形態の変形例の接触判定装置の動作を示す図である。
【
図20】実施形態の変形例の接触判定装置の動作を示す図である。
【
図21】実施形態の変形例の接触判定装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の接触判定装置を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態の接触判定装置100を実装したステアリングホイール10を示す図である。
図1に示すように、ステアリングホイール10は、車両に搭載され、グリップ11の内部に接触判定装置100の静電センサ110が実装されている。グリップ11は、対象物の一例である。接触判定装置100は、運転者の手Hがステアリングホイール10のグリップ11に接触しているかどうかを判定する。
【0011】
以下、車両の運転者を接触判定装置100の操作者と称す。接触判定装置100は、静電センサ110が設けられた物体に、被検出体としての操作者の手Hが接触しているかどうかを判定可能な接触判定装置100について説明する。静電センサ110が設けられた物体に操作者が触れることを操作者の操作と称す。
【0012】
<接触判定装置100の構成>
接触判定装置100は、静電センサ110及びHODECU(HandsOff Detection Electronic Control Unit)120を含む。
【0013】
静電センサ110は、ステアリングホイール10のグリップ11の一周にわたって設けられており、例えば金属製の電極で構成される。静電センサ110は、信号線12を介してHODECU120に接続されている。
【0014】
HODECU120は、一例としてステアリングホイール10の内部に設けられている。
図1ではHODECU120を拡大して示す。HODECU120は、AFE(Analog Front End)120AとMPU(Micro Processor Unit)120Bとを有する。
【0015】
AFE120Aは、静電センサ110に接続されており、MPU120Bから入力される指令に基づいて静電センサ110に正弦波(入力正弦波)を入力し、静電センサ110から出力される正弦波(出力正弦波)を取得する。AFE120Aは、入力正弦波と出力正弦波から静電センサ110の容量値(静電容量)を取得し、デジタル変換するとともにローパスフィルタによるノイズ除去を行ってAD値としてMPU120Bに出力する。AD値は、一例として単位を持たないカウント値で表される。ローパスフィルタによるノイズ除去を行うことにより、所定周波数以上のノイズを取り除いたAD値を取得することができる。
【0016】
MPU120Bは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。MPU120Bには一例としてECU50が接続されている。ECU50は、ステアリングホイール10が搭載される車両の電子機器を制御する制御装置である。電子機器は、例えば車両の自動運転等に関する電子機器であってよい。
【0017】
MPU120Bは、主制御部121、接触判定部122、及びメモリ123を有する。主制御部121、接触判定部122は、MPU120Bが実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ123は、MPU120Bのメモリを機能的に表したものである。
【0018】
主制御部121は、MPU120Bの制御処理を統括する処理部であり、接触判定部122が行う処理以外の処理を実行する。
【0019】
接触判定部122は、静電センサ110の容量値から基準値を減算して得る差分が閾値を超えているかどうかを判定することにより、手Hがグリップ11に接触しているかどうかを判定する。これは、接触判定部122が実行する接触判定処理である。また、接触判定部122は、判定結果を表すデータをECU50に通知する。ここで、基準値とは、接触判定部122がステアリングホイール10のグリップ11に手Hが接触しているかどうかを判定する際に用いる静電センサ110の容量値の基準値である。
【0020】
また、接触判定部122は、接触判定処理に用いる第1タイマ122Aと第2タイマ122Bを有する。接触判定処理、第1タイマ122A、及び第2タイマ122Bについては後述する。
【0021】
車両の室内には、スマートフォン等の電波が存在し得る。これらの電波は、接触判定装置100にとってはノイズになる。接触判定部122は、このようなノイズの影響を抑制するために、閾値を制御する。閾値の制御の詳細については後述する。
【0022】
メモリ123は、主制御部121、接触判定部122が処理を行うために必要なプログラム及びデータ等を格納する。メモリ123には、静電センサ110の容量値を表すデータや、接触判定部122が処理の過程で生成したデータ等が保存される。
【0023】
<静電センサ110の出力正弦波>
図2は、静電センサ110の出力正弦波の一例を示す図である。
図2には手Hでグリップ11から離しているとき(リリース時)の出力正弦波を実線で示し、手Hでグリップ11を握っているとき(タッチ時)の出力正弦波を破線で示す。
【0024】
静電センサ110で測定される容量値は、グリップ11に手Hが接触するとリリース時と比べて変化するため、リリース時の正弦波に比べてタッチ時の正弦波は位相や振幅が変化する。タッチ時の正弦波の位相や振幅は、グリップ11に対する手Hの接触度合に応じて変化する。接触度合とは、例えば、手Hがグリップ11を軽く握っているか、又は、強く握っているか、あるいは、手Hがグリップ11に触れている面積が小さいか、又は、大きいか等の度合である。
【0025】
例えば、リリース時の振幅がゼロになるタイミングを検出タイミングtdとして予め決めておいて、検出タイミングtdで正弦波の振幅を検出すれば、手Hの接触度合に応じた振幅AD値を測定できる。検出タイミングtdにおける振幅AD値は、手Hの接触度合に応じた値と見なせる。但し、温度の変化等により、リリース時の振幅がゼロになるタイミングを検出タイミングtdは変化する。また、静電センサ110から手Hが十分離れているのか接触判定装置100は判別できない。この為、検出タイミングtdを固定すると共に、振幅AD値をそのまま用いずに、補正値を用いる。
【0026】
<基準値を用いた接触の判定>
図3は、基準値を用いた接触の判定を説明する図である。
図3において横軸は時間、縦軸は電圧を表す。
図3では振幅AD値を実線で示し、基準値を破線で示し、振幅AD値と基準値の差分ΔAD(AD値-基準値)を一点鎖線で示す。振幅AD値は、AFE120Aが出力する値である。振幅AD値は、静電センサ110と周囲の導体との間の静電容量を示す。基準値は、静電センサ110の近くに手Hが存在しない時に測定した静電センサ110と周囲の導体との間の静電容量を示す。差分ΔADは、静電センサ110と周囲の導体との間の静電容量と、手Hが近くにない場合の静電センサ110と周囲の導体との間の静電容量との差である。即ち、差分ΔADは、静電センサ110と手Hとの間の静電容量である。
【0027】
時刻t1より前の状態では、手Hはグリップ11に接触していないこととする。時刻t1で手Hがグリップ11に接触すると、基準値に対して振幅AD値が立ち上がる。このとき、差分(AD値-基準値)も立ち上がり、オン閾値Th1以上になることにより、接触判定部122は、手Hはグリップ11に接触したと判定する。オン閾値Th1は、第1接触閾値の一例である。また、時刻t2で手Hがグリップ11から離れると、振幅AD値が立ち下がる。このとき、差分(AD値-基準値)も立ち下がり、オン閾値Th1よりも低いオフ閾値Th2以下になることにより、接触判定部122は、手Hはグリップ11から離れたと判定する。オフ閾値Th2は、第2接触閾値の一例である。
【0028】
<接触判定部122が実行する接触判定処理>
図4乃至
図7は、接触判定部122が実行する接触判定処理を表すフローチャートを示す図である。この処理は、接触判定部122によって実行される。
図4は、メインのフローを示し、
図5乃至
図7は、それぞれ、
図4におけるステップS1、S5、S6のサブルーチン処理のフローを示す。
図4のメインのフローは、一例として10msの制御周期毎に繰り返し実行される。また、接触状態Stateは、10ms毎にMPU120BからECU50に通知される。
【0029】
接触判定部122は、処理をスタートすると、サブルーチン「sub初期設定」を呼び出し、初期設定を行う(ステップS1)。初期設定では、以後の処理に用いる様々な値を初期化するサブルーチン処理を行う。詳細については、
図5を用いて後述する。
【0030】
接触判定部122は、AFE120Aから振幅AD値1を取得する(ステップS2)。
【0031】
接触判定部122は、振幅AD値1を取得してから時間T1が経過した時点で、AFE120Aから振幅AD値2を取得する(ステップS3)。時間T1は、第1所定時間の一例であり、一例として400μs~500μs程度の時間(期間)である。400μs~500μs程度の短い時間では、人間の動作による振幅AD値の変化は小さい。このため、400μs~500μs程度の短い時間を空けて振幅AD値1と振幅AD値2を取得すれば、その変化量の大半はノイズによるものと考えられる。すなわち、ここでは、1回目の測定で得た振幅AD値1と、時間T1後の2回目の測定で得た振幅AD値2との差(変化量)をノイズレベルとみなしている。
【0032】
接触判定部122は、振幅AD値1と振幅AD値2の差の絶対値を算出する(ステップS4)。振幅AD値1と振幅AD値2の差の絶対値は、|AD値1-AD値2|であり、ノイズを表す量として算出される。以下では、ノイズ量Noise=|AD値1-AD値2|とする。
【0033】
接触判定部122は、サブルーチン「subオン閾値Th1補正」を呼び出し、オン閾値Th1を補正する(ステップS5)。接触判定部122は、ステップS4で算出したノイズ量Noiseを用いて、オン閾値Th1を補正するサブルーチン処理を行う。詳細については
図6を用いて後述する。
【0034】
接触判定部122は、サブルーチン「sub接触判定」を呼び出し、接触判定を行う(ステップS6)。接触判定部122は、ステップS5で補正したオン閾値Th1を用いて、接触判定を行うサブルーチン処理を実行する。詳細については
図7を用いて後述する。接触判定部122は、ステップS6の処理を終えると、ステップS2に戻って、一連の処理を繰り返す。
【0035】
<サブルーチン「sub初期設定」>
次に、
図5を用いて、
図4のステップS1のサブルーチン「sub初期設定」に基づき行われる初期設定処理について説明する。
【0036】
接触判定部122は、第1タイマ122Aのカウント時間TimerNの初期値をT2、第2タイマ122Bのカウント時間TimerSの初期値をゼロに設定する(ステップS11)。すなわち、TimerN=T2、TimerS=0となる。時間T2は、第2所定時間の一例であり、メモリ123に格納されている。
【0037】
接触判定部122は、接触状態Stateの初期値を非接触(HandsOff)に設定する(ステップS12)。すなわち、State=HandsOffとなる。初期状態における接触状態Stateは、手Hがステアリングホイール10のグリップ11に接触していない状態である。
【0038】
接触判定部122は、基準値Baseの初期値を最大値MAXに設定する(ステップS13)。すなわち、Base=MAXとなる。一例として、初期状態では基準値Baseを最大値MAXに設定することとしたものである。最大値MAXは、メモリ123に格納されている。
【0039】
接触判定部122は、InitialTh1を予め定めた値に設定するとともに、オフ閾値Th2を予め定めた値に設定する(ステップS14)。InitialTh1は、オン閾値Th1の初期値である。オン閾値Th1は、補正されることによってInitialTh1よりも増大することがあるが、オフ閾値Th2は固定値(一定値)である。InitialTh1は、メモリ123に格納されている。
【0040】
接触判定部122は、オン閾値Th1の補正値CorrectitonTh1を予め定めた値に設定する(ステップS15)。補正値CorrectitonTh1の値は、ノイズによる誤判定の発生を抑制できるように、例えば、シミュレーションや実験等で予め値を決めておけばよい。
【0041】
接触判定部122は、ノイズ閾値NoiseThを予め定めた値に設定する(ステップS16)。ノイズ閾値NoiseThの値は、ノイズを判別可能にするために、例えば、シミュレーションや実験等で予め値を決めておけばよい。以上のステップS11~S16の処理により、サブルーチン「sub初期設定」の処理が終了する(エンド)。
【0042】
<サブルーチン「subオン閾値Th1補正」>
次に、
図6を用いて、
図4のステップS5のサブルーチン「subオン閾値Th1補正」に基づき行われるオン閾値Th1の補正処理について説明する。
【0043】
接触判定部122は、ノイズ量Noiseがノイズ閾値NoiseThよりも大きいかどうかを判定する(ステップS51)。ノイズの有無を判定するためである。
【0044】
接触判定部122は、ノイズ量Noiseがノイズ閾値NoiseThよりも大きい(S51:Yes)と判定すると、接触判定部122は、第1タイマ122Aをリセットする(ステップS52)。すなわち、第1タイマ122Aのカウント時間TimerNを0に設定する。これにより、TimerN=0となり、第1タイマ122Aのカウントが再スタートする。
【0045】
接触判定部122は、オン閾値Th1を補正する(ステップS53)。具体的には、接触判定部122は、オン閾値Th1の初期値InitialTh1に補正値CorrectitonTh1を加算する。すなわち、Th1=InitialTh1+CorrectitonTh1となる。
【0046】
また、接触判定部122は、ステップS51で、ノイズ量Noiseがノイズ閾値NoiseThよりも大きくない(S51:No)と判定すると、第1タイマ122Aのカウント時間TimerNをインクリメントする(ステップS54)。すなわち、TimerN=TimerN+1となる。
【0047】
接触判定部122は、第1タイマ122Aのカウント時間TimerNがT2を超えているかどうかを判定する(ステップS55)。ここで、接触判定部122は、超えていない(S55:No)と判定すると、フローはステップS53に進行する。ノイズが発生してステップS51でYesと判定された後に、ノイズが無くなってステップS51でNoと判定される処理が繰り返された場合に、第1タイマ122Aのカウント時間TimerNがT2を超えるまでは、ステップS53でオン閾値Th1に補正値CorrectitonTh1が上乗せされる状態が継続することになる。ノイズが変化する環境下でも、接触を高精度に判定可能にするためである。
【0048】
接触判定部122は、ステップS55でカウント時間TimerNがT2を超えている(S55:Yes)と判定すると、第1タイマ122Aのカウント時間TimerNをT2に戻す(ステップS56)。ノイズが無い状態が継続すると、ステップS54で、カウント時間TimerNが加算され続ける。この為、カウント時間TimerNをT2に戻すことで、桁あふれを防いでいる。
【0049】
ノイズが小さい期間がT2以上継続した場合、接触判定部122は、オン閾値Th1を初期値InitialTh1に設定する(ステップS57)。オン閾値Th1を初期値InitialTh1に戻すことは、オン閾値Th1への補正値CorrectitonTh1の加算を中止することである。以上のステップS51~S57で「subオン閾値Th1補正」の処理が終了する(エンド)。
【0050】
<サブルーチン「sub接触判定」>
次に、
図7を用いて、
図4のステップS6のサブルーチン「sub接触判定」に基づき行われる接触判定処理について説明する。
【0051】
接触判定部122は、1つ前の制御周期における接触状態Stateが接触(HandsOn)であるかどうかを判定する(ステップS61)。制御周期は10msであるため、1つ前の制御周期における接触状態Stateは10ms前の判定結果である。
【0052】
接触判定部122は、前回の状態が接触(HandsOn)ではない場合(S61:No)、振幅AD値1から基準値Baseを減算した差分ΔADがオン閾値Th1以上であるかどうかを判定する(ステップS62)。オン閾値Th1を用いて接触があるかどうかを判定する。振幅AD値1は、静電センサ110と周囲の導体の間の静電容量を示す。基準値Baseは、手Hが無いときの静電センサ110と周囲の導体の間の静電容量を示す。差分ΔADは、静電センサ110と手Hとの間の静電容量を示す。
【0053】
接触判定部122は、差分ΔADがオン閾値Th1以上である(S62:Yes)と判定すると、第2タイマ122Bのカウント時間TimerSをインクリメントする(ステップS63)。すなわち、TimerS=TimerS+1となる。
【0054】
接触判定部122は、第2タイマ122Bのカウント時間TimerSがT3を超えたかどうかを判定する(ステップS64)。T3は、第3所定時間の一例である。差分ΔADがオン閾値Th1を超えた場合に直ちに(即座に)手Hがステアリングホイール10のグリップ11に接触していると判定するのではなく、ある程度の時間T3にわたって差分ΔADがオン閾値Th1を超えた場合に接触していると判定するためである。このため、接触判定部122は、カウント時間TimerSがT3を超えていない(S64:No)と判定すると、フローを終了する(エンド)。sub接触判定のサブルーチンが終了すると、ステップS2にリターンする。
【0055】
ある程度の時間T3にわたって差分ΔADがオン閾値Th1を超えた場合に接触していると判定するのは、接触状態を非接触から接触に切り替える際の安定性を担保したものである。差分ΔADに大きなノイズ成分が加わる場合、手Hがステアリングホイール10のグリップ11に接触していなくても、差分ΔADがオン閾値Th1を超えることがある。しかし、ノイズは変化するので、差分ΔADに大きなノイズ成分が連続して何回も加わり続けることは稀である。また、振幅AD値1と、時間T1後の振幅AD値2とに同程度の大きなノイズが加わった場合、ノイズレベルが小さいと誤判定する。この場合、オン閾値Th1が低すぎる値に設定され、手Hがステアリングホイール10のグリップ11に接触していなくても、差分ΔADがオン閾値Th1を超えることがある。しかし、ノイズは変化するので、振幅AD値1と、時間T1後の振幅AD値2とに同程度の大きなノイズが加わり続けることは稀である。この為、ある程度の時間T3にわたって差分ΔADがオン閾値Th1を超えた場合に接触していると判定することで、誤判定を防止できる。
【0056】
接触判定部122は、カウント時間TimerSがT3を超えた(S64:Yes)と判定すると、接触状態Stateを接触(HandsOn)に設定する(ステップS65)。接触判定部122は、ステップS65の処理を終えると、フローを終了する(エンド)。sub接触判定のサブルーチンが終了すると、ステップS2にリターンする。
【0057】
なお、接触判定部122は、ステップS62において、差分ΔADがオン閾値Th1以上ではない(S62:No)と判定すると、基準値Baseを更新する(ステップS63A)。具体的には、そのときの振幅AD値1を用いて加重平均を計算することによって、基準値Baseを更新する。差分ΔADがオン閾値Th1未満であれば、静電センサ110の近くに手Hがない。基準値Baseは、温度等により、変化する。静電センサ110の近くに手Hがないときの振幅AD1値の荷重平均値を基準値Baseにする。ここでは一例として、重みが9の場合の加重平均を算出する次式を用いる。
Base=(9×Base+AD1)/10
【0058】
接触判定部122は、第2タイマ122Bのカウント時間TimerSをリセットする(ステップS64A)。すなわち、TimerS=0となり、第2タイマ122Bのカウントが再スタートする。接触判定部122は、ステップ64Aの処理を終えると、フローを終了する(エンド)。sub接触判定のサブルーチンが終了すると、ステップS2にリターンする。
【0059】
また、接触判定部122は、ステップS61において、前回の判定が接触(HandsOn)であった場合(S61:Yes)、振幅AD値1から基準値Baseを減算した差分ΔADがオフ閾値Th2以下であるかどうかを判定する(ステップS66)。
【0060】
接触判定部122は、差分ΔADがオフ閾値Th2以下ではない(S66:No)と判定すると、フローを終了する(エンド)。sub接触判定のサブルーチンが終了すると、ステップS2にリターンする。この場合は、接触していると判定される状態が続くことになる。
【0061】
接触判定部122は、ステップS66において、差分ΔADがオフ閾値Th2以下である(S66:Yes)と判定すると、接触状態Stateは非接触(HandsOff)であると判定する(ステップS67)。すなわち、State=HandsOffとなる。
【0062】
接触状態Stateを非接触から接触に切り替えるときは、接触状態で第2タイマ122Bのカウント時間TimerSがT3を超えるまで待つことにしているが(S64参照)、接触から非接触への切り替えは、直ちに行うこととしている。手Hがステアリングホイール10のグリップ11から離れた場合には、安全性を考慮して、直ちにECU50に通知する必要があるからである。
【0063】
接触判定部122は、第2タイマ122Bのカウント時間TimerSをリセットする(ステップS68)。すなわち、TimerS=0となり、第2タイマ122Bのカウントが再スタートする。接触判定部122は、ステップ69の処理を終えると、フローを終了する(エンド)。sub接触判定のサブルーチンが終了すると、ステップS62にリターンする。
【0064】
<実施形態の接触判定装置100の動作>
図8乃至
図11は、実施形態の接触判定装置100の動作を示す図である。
図8乃至
図11において横軸は時間(単位無し)を表す。
【0065】
図8には、振幅AD値1、振幅AD値2、ノイズ、ノイズ閾値NoiseTh、オン閾値Th1、オフ閾値Th2、接触状態Stateを示す。
図9には、振幅AD値1、振幅AD値2、ノイズを示す。
図10には、ノイズ、ノイズ閾値NoiseTh、オン閾値Th1を示す。
図11には、振幅AD値1、オン閾値Th1、オフ閾値Th2、接触状態Stateを示す。但し、
図8のノイズは、実際のノイズ成分を示さない。
図8のノイズは、|振幅AD値1-振幅AD値2|により算出された値である。
【0066】
図8乃至
図11の上部に示す実線の両矢印と破線の矢印は、実際の手Hの動きを示す。実線の両矢印の時間帯は、手Hでグリップ11を握っているときである。実線の両矢印の時間帯の手前の破線の矢印の時間帯は、手Hでグリップ11を握りかけているときである。実線の両矢印の時間帯の後の破線の矢印の時間帯は、手Hをグリップ11から離しかけているときである。
【0067】
実際の手Hの動きは、最初はグリップ11に接触していない非接触の状態であり、その後グリップ11に接触した状態になり、再び手Hをグリップ11から離して非接触の状態になる。そして、ノイズが発生してから、グリップ11に接触した状態になり、再び手Hをグリップ11から離して非接触の状態になる。このような実際の手Hの動作と、接触判定装置100による接触状態の判定結果とが一致したかどうかを説明する。
【0068】
時刻1から時刻51の期間は、ノイズが小さい。時刻1から時刻51の期間は、測定されるノイズ(=|AD値1-AD値2|)は十分小さい。測定されるノイズが小さい状態が継続している期間は、オン閾値Th1をInitialTh1にする。時刻11において、手Hがグリップを握り始める。これに伴い、振幅AD値1が増加する。時刻17において振幅AD値1がオン閾値Th1以上になる。この例では、基準値Baseを0とする。つまり、振幅AD値1から基準値Baseを減算して算出される静電センサ110と手Hとの間の静電容量ΔADは、振幅AD値1に等しい。そして、時刻21において接触状態Stateが接触に切り替わる。ここで、振幅AD値1(差分ΔAD)がオン閾値Th1以上になった時刻17から接触状態Stateが接触に切り替わった時刻21までの時間(5)は、時間T3に相当する。
【0069】
時刻30において、手Hがグリップ11から離れ始める。これに伴い、振幅AD値1が下がり始める。時刻35においてAD値1(=差分ΔAD)がオフ閾値Th2以下になる。このときに、接触状態Stateは直ちに非接触に切り替わる。
【0070】
時刻51においてノイズが大きくなりノイズ閾値NoiseThを超えると、オン閾値Th1が補正され、補正値CorrectitonTh1が加算される。オン閾値Th1は、InitialTh1+CorrectitonTh1に増大する。時刻51以降、大きくなったノイズが振幅ADに加わる。
【0071】
時刻58、時刻63でAD値1がInitialTh1を上回るが、オン閾値Th1は補正によって増大されているため、この時点では接触状態Stateは接触に切り替わらない。
【0072】
時刻65において、振幅AD値1がオン閾値Th1を上回る。この時点から時間T3(5)が経過した時刻70において、接触状態Stateが接触に切り替わる。
【0073】
時刻80から、手がグリップ11から離れ始める。これに伴い、振幅AD値1が下がり始める。時刻87において振幅AD値1がオフ閾値Th2以下になる。このときに、接触状態Stateは直ちに非接触に切り替わる。
【0074】
実際には時刻51から時刻114の間は、大きなノイズが発生している。しかし、振幅AD値1とAD値2に同程度のノイズが加わることで、測定上のノイズがノイズ閾値NoiseTh未満になる時点がある。しかし、大きなノイズが加わっている際に、振幅AD値1とAD値2に同程度のノイズが何度も連続して加わることは稀であるため、オン閾値Th1は補正値が加算された状態が継続する。
【0075】
時刻98において測定上のノイズがノイズ閾値NoiseTh未満になり、時間T2を超えた時刻107においてオン閾値Th1はInitialTh1に戻される。時刻107から時刻109までオン閾値Th1はInitialTh1が設定される。実際には、時刻51から時刻114の間は、大きなノイズが発生している。つまり、時刻107から時刻109の期間は、実際のノイズの大きさに対して、オン閾値Th1が低く設定された状態になっている。
【0076】
前述した通り、時刻107から時刻109の間は、実際のノイズの大きさに対して、オン閾値Th1が低く設定されている。更に、時刻108において、ノイズによって振幅AD値1がオン閾値Th1以上になる。しかし、ノイズによって振幅AD値1がオン閾値Th1以上になる状態が時間T3にわたって継続しないため、接触状態Stateは非接触に保持される。ノイズは、ランダムな大きさなので、測定上のノイズ|AD値1-AD値2|が、実際のノイズよりも小さく測定されることは頻発する。ノイズは、ランダムな大きさなので、測定上のノイズ|AD値1-AD値2|が、実際のノイズよりも小さく測定され続けることは稀にしか発生しない。前述した通り、時刻51から時刻114の間は、大きなノイズが発生している。この期間、測定上のノイズは、複数回小さくなっている。しかし、測定上のノイズが継続して小さかった期間は、時刻98から時刻109に限られる。測定上のノイズが10回継続して小さいと、オン閾値Th1を低く設定する。この為、実際のノイズの大きさに対して、オン閾値Th1が低く設定された期間は、時刻107から時刻109に限られる。時刻107から時刻109の期間で、ノイズによって振幅AD値1がオン閾値Th1以上になったのは、時刻108に限られる。振幅AD値1が、5回継続してオン閾値Th1以上になると、手Hがグリップを握っていると判定する。よって、手Hがグリップ11を握っていないときに、手Hがグリップ11を握っていると誤判定されなかった。手Hがグリップ11を握っていない場合、大きなノイズが継続的に発生しても、ノイズが小さく観測され続けると共に、振幅AD値1が大きく観測され続けることは、めったに発生しない。即ち、ノイズが大きい場合でも、振幅AD値1と振幅AD値2のノイズ成分が、同程度で、かつ、大きい状態が継続するは、極めて稀である。よって、ノイズによって、手Hがグリップ11を握っていない場合、接触と誤判定する可能性は極めて低い。尚、手Hがグリップ11を握ってから、接触と判定するまでに時間がかかる。ステアリングへの手の接触判定装置では、ステアリングを手で握ったことの検出に、少し時間がかかることは許容される。
【0077】
その後、時刻110においてノイズがノイズ閾値Noiseを超えると、オン閾値Th1が再び増大される。時刻112においてノイズがノイズ閾値Noise以下になり、時間T2を超えると、時刻121においてオン閾値Th1が初期値InitialTh1に戻される。尚、実際にノイズが小さくなったのは、時刻115である。
【0078】
以上のように、ノイズが測定されると、オン閾値Th1に補正値CorrectitonTh1を加算することによって誤判定が抑制される。また、ノイズが測定されてから、一定期間は、オン閾値Th1に補正値CorrectitonTh1を加算し続けることによって誤判定が抑制される。また、振幅AD値1(=静電容量ΔAD)がオン閾値Th1以上になった状態が一定期間継続してから接触と判定することによって誤判定が抑制される。即ち、ステアリングホイール10のグリップ11への手Hの接触/非接触を正確に判定できる。
【0079】
接触判定部122は、AD値の時間T1における変化量(Noise)がノイズ閾値NoiseTh以上になると、オン閾値Th1に補正値CorrectitonTh1を上乗せすると共に、第1タイマ122Aのカウントをスタートする。AD値の時間T1における変化量(Noise)がノイズ閾値NoiseTh未満の状態が継続し、第1タイマ122Aのカウント時間TimerNが時間T2を超えると、オン閾値Th1への補正値CorrectitonTh1の加算を中止する。このため、AD値の時間T1における変化量(Noise)がノイズ閾値NoiseTh以上になってから、ノイズ閾値NoiseTh未満の状態が時間T2継続するまで、オン閾値Th1に補正値CorrectitonTh1を上乗せして、ノイズによる誤判定を抑制することができる。ノイズは、直接測定できない。本発明では、短い間隔で測定した2つの振幅AD値1と振幅AD値2の差をノイズレベルと見なしている。この為、2つの振幅AD値1と振幅AD値2に同程度のノイズ成分が含まれる場合は、実際よりもノイズレベルが小さく測定される。しかし、ノイズが大きい場合、2つの振幅AD値1と振幅AD値2に同程度のノイズが継続的に加わり続ける可能性は低い。この為、本発明は、ノイズによる誤判定を抑制することができる。
【0080】
また、接触判定部122は、第1タイマ122Aのカウント時間TimerNが時間T2を超える前に、AD値の時間T1における変化量(Noise)がノイズ閾値NoiseTh以上になると、第1タイマ122Aをリセットしてカウントを再スタートする。これは、
図6において、ステップS51:No、S54、S55:No、S53と辿り、メインルーチンに戻った後、フローがステップS51にリターンして、ステップS51:Yes、S52と進行した場合である。このように、カウント時間TimerNが時間T2を超える前に、AD値の時間T1における変化量(Noise)がノイズ閾値NoiseTh以上になった場合には、第1タイマ122Aのカウント時間TimerNをリセットするので、その時点から時間T2にわたって、オン閾値Th1に補正値CorrectitonTh1を上乗せして、ノイズによる誤判定を抑制することができる。
【0081】
また、接触判定部122は、静電容量ΔAD(AD値1-基準値)が時間T3にわたってオン閾値Th1以上である場合に、手Hがグリップ11に接触したと判定するので、接触状態を非接触から接触に切り替える際の安定性を担保でき、手Hがグリップ11に接触していることを安定的に判定することができる。ノイズが大きい環境では、手Hがグリップ11に接触していなくても、静電容量ΔADが大きく測定されることがある。しかし、ノイズは変動するため、静電容量ΔADに大きなノイズ成分が加わり続けることは稀である。この為、ノイズによる誤判定を抑制することができる。
【0082】
また、接触判定部122は、ΔAD(AD値1-基準値)が、オフ閾値Th2以下になると、グリップ11に手Hが接触していないと直ちに判定するので、手Hがステアリングホイール10のグリップ11から離れた場合には、安全性を考慮して、直ちにECU50に通知することができる。これにより、車両の走行における安全性を確保することができる。
【0083】
また、オン閾値Th1は、オフ閾値Th2よりも大きいので、接触状態Stateを非接触から接触に切り替えるときと、接触状態Stateを接触から非接触に切り替えるときとにヒステリシス特性を持たせることができ、安定的に接触状態Stateを判定することができる。
【0084】
<比較用の接触判定装置の動作>
図12乃至
図15は、比較用の接触判定装置の動作を示す図である。
図12乃至
図15において横軸は時間(単位無し)を表す。比較用の接触判定装置は、オン閾値Th1を補正せずに一定値に保持する点、及び、振幅AD値1がオン閾値Th1以上になると直ちに接触状態Stateが接触に切り替わる点等が実施形態の接触判定装置100と異なる。また、ノイズ測定用の振幅AD値2を測定しておらず、AD値2が無い。実際の手Hの動作は、
図8乃至
図11における動作と同一である。
【0085】
図12には、AD値1、オン閾値Th1、オフ閾値Th2、接触状態Stateを示す。
図13には、AD値1を示す。
図14には、オン閾値Th1を示す。
図15には、AD値1、オン閾値Th1、オフ閾値Th2、接触状態Stateを示す。
【0086】
時刻11から手Hがグリップ11を握り始める。これに伴い振幅AD値1が増加する。時刻17において振幅AD値1がオン閾値Th1以上になる。この時点で接触状態Stateが直ちに接触に切り替わる。
【0087】
時刻30から手Hがグリップ11を離し始める。これに伴い振幅AD値1が減少する。時刻35においてAD値1がオフ閾値Th2以下になる。このときに、接触状態Stateは直ちに非接触に切り替わる。
【0088】
時刻51から時刻114はノイズが大きい。この期間は、振幅AD値1に加わるノイズ成分が大きい瞬間が頻発する。時刻58と時刻63でAD値1がオン閾値Th1を上回るため、接触状態Stateが接触に切り替わる。このとき、実際の手Hはグリップ11を握っておらず、誤判定である。
【0089】
時刻61から手Hがグリップ11を握り始める。時刻66において、振幅AD値1がオン閾値Th1を上回る。この時点で直ちに接触状態Stateが接触に切り替わる。
【0090】
時刻80から手Hがグリップ11を離し始める。これに伴い、AD値1が下がり始める。時刻87においてAD値1がオフ閾値Th2以下になる。このときに、接触状態Stateは直ちに非接触に切り替わる。
【0091】
時刻92、時約95から時刻100、時刻108において、AD値1がオン閾値Th1を上回るため、接触状態Stateが接触に切り替わる。このとき、実際の手Hはグリップ11を握っておらず、誤判定である。
【0092】
以上のように、比較用の接触判定装置では、ノイズが発生すると、誤判定が生じ、実際の手Hの動作を正確に判定することができない。これに対して、
図8乃至
図11に示したように、実施形態の接触判定装置100は、ノイズが発生すると、オン閾値Th1に補正値CorrectitonTh1を加算することによって誤判定を抑制し、実際の手Hの動作を正確に判定することができる。
【0093】
<変形例>
変形例の接触判定装置100は、ノイズ閾値と、オン閾値Th1の補正値とを複数有する。ここでは、
図16と
図17を用いて、サブルーチン「sub初期設定」の変形例と、サブルーチン「subオン閾値Th1補正」の変形例とについて説明する。
【0094】
<サブルーチン「sub初期設定」の変形例>
図16は、変形例のサブルーチン「sub初期設定」の処理を表すフローチャートを示す図である。
図16に示す処理は、
図5のサブルーチン「sub初期設定」の処理の代わりに、
図4に示すメインのフローにおけるステップS1の処理として実行可能である。
【0095】
接触判定部122は、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN1、TimerN2をT2に設定する(ステップS11A)。すなわち、TimerN1=T2、TimerN2=T2となる。時間T2は、第2所定時間の一例であり、メモリ123に格納されている。変形例では、第1タイマ122Aは、2つのカウント時間TimerN1、TimerN2をカウントする。
【0096】
ステップS12~S14の処理は、
図5に示すステップS12~S14の処理と同一であるため、ここでは説明を省く。
【0097】
接触判定部122は、オン閾値Th1の補正値CorrectitonTh1、CorrectitonTh2を設定する(ステップS15A)。補正値CorrectitonTh1は補正値CorrectitonTh2よりも大きく、補正値CorrectitonTh2は中程度のノイズが発生した時に用いる補正値である。補正値CorrectitonTh1は、第1補正値の一例であり、補正値CorrectitonTh2は、第2補正値の一例である。補正値CorrectitonTh1、CorrectitonTh2は、メモリ123に格納されている。補正値CorrectitonTh1、CorrectitonTh2の値は、大きなノイズ、中程度のノイズの影響を抑制できるように、例えば、シミュレーションや実験等で予め値を決めておけばよい。
【0098】
接触判定部122は、ノイズ閾値NoiseTh1、NoiseTh2を設定する(ステップS16A)。ノイズ閾値NoiseTh1は、NoiseTh2よりも大きい。ノイズ閾値NoiseTh1は、第1ノイズ閾値の一例であり、ノイズ閾値NoiseTh2は、第2ノイズ閾値の一例である。ノイズ閾値NoiseTh1は、大きなノイズの発生を判定する際に用い、ノイズ閾値NoiseTh2は、中程度のノイズの発生を判定する際に用いる。ノイズ閾値NoiseTh1、NoiseTh2は、メモリ123に格納されている。ノイズ閾値NoiseTh1、NoiseTh2の値は、大きなノイズ、中程度のノイズを判別可能にするために、例えば、シミュレーションや実験等で予め値を決めておけばよい。以上のステップS11A~S16Aの処理により、サブルーチン「sub初期設定」の処理が終了する(エンド)。
【0099】
<サブルーチン「subオン閾値Th1補正」の変形例>
図17は、変形例のサブルーチン「subオン閾値Th1補正」の処理を表すフローチャートを示す図である。
図17に示す処理は、
図6のサブルーチン「subオン閾値Th1補正」の処理の代わりに、
図4に示すメインのフローにおけるステップS5の処理として実行可能である。
【0100】
接触判定部122は、ノイズ量Noiseがノイズ閾値NoiseTh1よりも大きいかどうかを判定する(ステップS51A)。大きなノイズの有無を判定するためである。
【0101】
接触判定部122は、ノイズ量Noiseがノイズ閾値NoiseTh1よりも大きい(S51A:Yes)と判定すると、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN1、TimerN2をリセットする(ステップS52A)。すなわち、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN1、TimerN2を0に設定する。これにより、TimerN1=0、TimerN2=0となり、第1タイマ122Aの2つのカウント時間TimerN1、TimerN2のカウントが再スタートする。
【0102】
接触判定部122は、オン閾値Th1を補正する(ステップS53A)。具体的には、接触判定部122は、オン閾値Th1の初期値InitialTh1に補正値CorrectitonTh1を加算する。すなわち、Th1=InitialTh1+CorrectitonTh1となる。大きなノイズに対応するため、補正値CorrectitonTh1を加算することとしている。
【0103】
また、接触判定部122は、ステップS51Aでノイズ量Noiseがノイズ閾値NoiseTh1より大きくない(S51A:No)と判定すると、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN1をインクリメントする(ステップS54B)。すなわち、TimerN1=TimerN1+1となる。
【0104】
接触判定部122は、ノイズ量Noiseがノイズ閾値NoiseTh2よりも大きいかどうかを判定する(ステップS51B)。大きなノイズが無いため、中程度のノイズの有無を判定するためである。
【0105】
接触判定部122は、ノイズ量Noiseがノイズ閾値NoiseTh2よりも大きい(S51B:Yes)と判定すると、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN2をリセットする(ステップS52B)。すなわち、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN2を0に設定する。これにより、TimerN2=0となり、第1タイマ122Aの一方のカウント時間TimerN2のカウントが再スタートする。
【0106】
接触判定部122は、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN1がT2を超えているかどうかを判定する(ステップS55B)。カウント時間TimerN1は、最後にNoiseTh1を超えるノイズが発生してから現在までの時間を示す。接触判定部122は、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN1がT2を超えていない(S55B:No)と判定すると、フローはステップS53Aに進行する。大きなノイズが発生してステップS51AでYesと判定された後に大きなノイズが無くなってステップS51AでNoと判定される処理が繰り返されることで第1タイマ122Aのカウント時間TimerN1がT2を超えるまでは、ステップS53Aでオン閾値Th1に補正値CorrectitonTh1が上乗せされる状態が継続する。
【0107】
接触判定部122は、ステップS55Bでカウント時間TimerN1がT2を超えている(S55B:Yes)と判定すると、次のステップ(ステップS56B)に進む。
【0108】
カウント時間TimerN1の桁あふれを防ぐため、接触判定部122は、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN1をT2に戻す(ステップS56B)。
【0109】
接触判定部122は、オン閾値Th1を補正する(ステップS53B)。具体的には、接触判定部122は、オン閾値Th1の初期値InitialTh1に補正値CorrectitonTh2を加算する。すなわち、Th1=InitialTh1+CorrectitonThBとなる。中程度のノイズがある状態に対応するため、補正値CorrectitonTh1よりも小さい補正値CorrectitonTh2を加算する。
【0110】
また、接触判定部122は、ステップS51Bでノイズ量Noiseがノイズ閾値NoiseTh2より大きくない(S51B:No)と判定すると、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN2をインクリメントする(ステップS54C)。すなわち、TimerN2=TimerN2+1となる。中程度のノイズが無くなってからの時間をカウントするためである。
【0111】
接触判定部122は、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN2がT2を超えているかどうかを判定する(ステップS55C)。カウント時間TimerN2は、最後にNoiseTh2を超えるノイズが発生してから現在までの時間を示す。ここで、接触判定部122は、カウント時間TimerN2がT2を超えていない(S55C:No)と判定すると、フローはステップS56Bに進行する。中程度のノイズが最後に測定されてから、一定時間の間、ステップS53Bでオン閾値Th1に中程度のノイズ対策用の補正値CorrectitonTh2が上乗せされる状態が継続することになる。
【0112】
接触判定部122は、ステップS55Cでカウント時間TimerN2がT2を超えている(S55C:Yes)と判定すると、次のステップ(ステップS56C)に進む。
【0113】
接触判定部122は、TimerN2の桁あふれを防止するために、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN2をT2に戻す。同様に、TimerN1の桁あふれを防止するために、第1タイマ122Aのカウント時間TimerN1をT2に戻す(ステップS56C)。
【0114】
接触判定部122は、オン閾値Th1を初期値InitialTh1に設定する(ステップS57)。ノイズが中程度を下回っている状態が継続している場合、初期値InitialTh1に設定する。以上のステップS51A~S57で変形例の「subオン閾値Th1補正」の処理が終了する(エンド)。
【0115】
<実施形態の変形例の接触判定装置の動作>
図18乃至
図21は、実施形態の変形例の接触判定装置の動作を示す図である。
図18乃至
図21において横軸は時間(単位無し)を表す。
【0116】
図18には、AD値1、AD値2、ノイズ、ノイズ閾値NoiseTh2、オン閾値Th1、オフ閾値Th2、接触状態Stateを示す。
図19には、AD値1、AD値2、ノイズを示す。
図20には、ノイズ、ノイズ閾値NoiseTh1、NoiseTh2、オン閾値Th1を示す。
図21には、AD値1、オン閾値Th1、オフ閾値Th2、接触状態Stateを示す。
【0117】
図18において、Th1(+C1)は、初期値InitialTh1に大きなノイズ対策用の補正値CorrectitonTh1を加算したオン閾値Th1であることを表す。Th1(+C2)は、初期値InitialTh1に中程度のノイズ対策用の補正値CorrectitonTh2を加算したオン閾値Th1であることを表す。Th1は、初期値InitialTh1であることを表す。
【0118】
図18乃至
図21の上部には、中ノイズと大ノイズが発生している時間帯を両矢印で示す。中ノイズは、一例として車両の後席でスマートフォンでの通話が行われている状態で、ステアリングホイール10に中程度のノイズが加わっていることを表す。大ノイズは、一例として車両の助手席でスマートフォンでの通話が行われている状態で、ステアリングホイール10に大きなノイズが加わっていることを表す。
【0119】
最初はグリップ11に手Hが接触していない非接触の状態であり、その後グリップ11に手Hが接触した状態になり、再び手Hをグリップ11から離して非接触の状態になる。そして、ノイズが発生してから、手Hがグリップ11に接触した状態になり、再び手Hをグリップ11から離して非接触の状態になる。ノイズが発生している状態で、手Hをグリップ11から離して非接触の状態になり、再び手Hがグリップ11に接触した後に、手Hをグリップ11から離して非接触の状態になる。すなわち、グリップ11から手Hを離した状態から、グリップ11を3回握り、最後にグリップ11から手Hを離す動作を行う。このような手Hの動作と、変形例の接触判定装置による接触状態の判定結果とが一致したかどうかを説明する。
【0120】
図18乃至
図21に示すように、時刻6において、手Hがグリップ11を握りかけ始める。これに伴い、AD値1が立ち上がる。このとき、ノイズ|AD値1-AD値2|は十分小さいため、オン閾値Th1を最小値のInitialTh1にする。時刻11においてAD値1がオン閾値Th1以上になる。そして、時刻15において接触状態Stateが接触に切り替わる。ここで、AD値1がオン閾値Th1以上になった時刻11から接触状態Stateが接触に切り替わった時刻15までの時間(5)は、時間T3に相当する。
【0121】
時刻25において、手Hがグリップ11から離れ始める。これに伴い、AD値1が下がり始める。時刻30においてAD値1がオフ閾値Th2以下になる。このときに、接触状態Stateは直ちに非接触に切り替わる。
【0122】
時刻41から時刻140まで後席で通話され、ノイズが大きくなる。時刻44でノイズ閾値NoiseTh2を超えると、オン閾値Th1が補正され、補正値CorrectitonTh2が加算される。オン閾値Th1は、InitialTh1+CorrectitonTh2に増大する。
【0123】
また、時刻46から手Hがグリップ11を握り始める。これに伴い、AD値1が再び増え始める。時刻48でAD値1がInitialTh1を上回るが、オン閾値Th1は補正によって増大されているため、この時点では接触状態Stateは接触に切り替わらない。すなわち、誤判定は生じない。
【0124】
時刻49において測定上のノイズがノイズ閾値NoiseTh2未満になり、時間T2を超えることにより、時刻58から時刻62においてオン閾値Th1は初期値InitialTh1に設定される。この区間は、実際にはノイズが中程度だが、偶然AD値1とAD値2に同程度のノイズが加わる状態が継続した。中程度のノイズが加わっているにも関わらず、オン閾値Th1が初期値InitialTh1に設定される時間帯はあるものの、短い時間に限られることが分かる。
【0125】
時刻51においてAD値1がオン閾値Th1以上になる。そして、時刻55において接触状態Stateが接触に切り替わる。ここで、AD値1がオン閾値Th1以上になった時刻51から接触状態Stateが接触に切り替わった時刻55までの時間(5)は、時間T3に相当する。
【0126】
時刻63において再び中程度のノイズが測定されノイズ閾値NoiseTh2を超えると、オン閾値Th1が補正され、補正値CorrectitonTh2が加算される。オン閾値Th1は、InitialTh1+CorrectitonTh2に増大する。
【0127】
時刻65において、手Hがグリップ11から離れかけ始める。それに伴いAD値1が下がり始める。時刻72においてAD値1がオフ閾値Th2以下になる。このときに、接触状態Stateは直ちに非接触に切り替わる。
【0128】
時刻69においてノイズがノイズ閾値NoiseTh未満になり、時間T2を超えることにより、時刻78においてオン閾値Th1は初期値InitialTh1に戻される。この区間は、実際には中程度のノイズが加わっているが、偶然AD値1とAD値2に同程度のノイズが加わる状態が継続した。中程度のノイズが加わっているにも関わらず、オン閾値Th1が初期値InitialTh1に設定される時間帯はあるものの、短い時間に限られることが分かる。
【0129】
時刻81から時刻130まで助手席でスマートフォンの通話がされ、ノイズが大きくなり
図20に示すようにノイズ閾値NoiseTh1を超えると、オン閾値Th1が補正され、補正値CorrectitonTh1が加算される。オン閾値Th1は、InitialTh1+CorrectitonTh1に増大する。
【0130】
時刻92においてAD値1がオン閾値Th1以上になる。そして、時刻96において接触状態Stateが接触に切り替わる。ここで、AD値1がオン閾値Th1以上になった時刻92から接触状態Stateが接触に切り替わった時刻96までの時間(5)は、時間T3に相当する。
【0131】
時刻105において、手Hがグリップ11から離れ始める。これに伴い、AD値1が下がり始める。時刻113においてAD値1がオフ閾値Th2以下になる。このときに、接触状態Stateは直ちに非接触に切り替わる。
【0132】
時刻131において、助手席でのスマートフォンでの通話が終了し、後席での通話のみになる。この例では、助手席においてスマートフォンで通話していたとき測定上のノイズが小さい状態になり、時刻118においてノイズがノイズ閾値NoiseTh1未満でNoiseTh2以上の状態になり、時間T2を超えることにより、時刻127においてオン閾値Th1は補正値CorrectitonTh1が加算された状態から、補正値CorrectitonTh2が加算された状態に切り替わる。すなわちオン閾値Th1が低下する。時刻81から時刻130において、実際には、大きなノイズが静電センサ110に加わっている。しかし、時刻118から時刻130では、AD値1のノイズ成分とAD値2のノイズ成分の差が小さかった。つまり、測定上のノイズ|AD値1-AD値2|が、実際のノイズに比べて小さい状態が継続した。この為、実際にはノイズが大きい時刻127において、オン閾値Th1を中程度のノイズ成分用の補正値CorrectitonTh2を加算した状態に切り替わった。実際のノイズが大きいが、中程度のノイズ成分用の補正値CorrectitonTh2を用いた時間帯は、時刻127から時刻130であった。大きなノイズが加わっているにも関わらず、中程度のノイズ用の補正値CorrectitonTh2を用いる時間帯はあるものの、短い時間に限られることが分かる。
【0133】
上述した通り、時刻127から時刻130は、実際のノイズが大きいにも関わらず、オン閾値Th1が、中程度のノイズ成分用の値であった。この為、ノイズの影響で、時刻127から時刻128において、瞬間的にAD値1がオン閾値Th1以上になった。しかし、その状態が時間T3にわたって継続しないため、接触状態Stateは非接触に保持される。本発明は、ノイズの大きさに適したオン閾値を用いることと、一定時間静電容量値がオン閾値を超えてから、接触と判定する。2つの手法を併用することで、ノイズの大きい環境下でも、正確に接触判定ができる。更に、ノイズの大きさは、ノイズ閾値以下の状態が一定時間継続していることによって判断しているので、ノイズを過小に評価する可能性が低い。
【0134】
時刻141において後席での通話が終了する。この例では、通話終了前の時刻138からノイズがノイズ閾値NoiseTh2未満になり、時間T2を超えることにより、時刻147においてオン閾値Th1は初期値InitialTh1に戻される。
【0135】
以上のように、2つのノイズ閾値NoiseTh1、NoiseTh2に対応した、2つの補正値CorrectitonTh1、CorrectitonTh2とを用いて、オン閾値Th1を2段階に補正するので、大ノイズと、中ノイズに段階的に対応することができる。
【0136】
以上、本発明の例示的な実施形態の接触判定装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0137】
10 ステアリングホイール
11 グリップ
12 信号線
50 ECU
100 接触判定装置
110 静電センサ
120 HODECU
120A AFE
120B MPU
121 主制御部
122 接触判定部
122A 第1タイマ
122B 第2タイマ
123 メモリ