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特開2023-137107計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞、その生成装置、生成方法及び生成プログラム並びに計算機合成ホログラムアニメーションの再生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137107
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞、その生成装置、生成方法及び生成プログラム並びに計算機合成ホログラムアニメーションの再生装置
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/08 20060101AFI20230922BHJP
   G03H 1/26 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
G03H1/08
G03H1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043137
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】小磯 諒太
(72)【発明者】
【氏名】松島 恭治
【テーマコード(参考)】
2K008
【Fターム(参考)】
2K008FF08
2K008FF27
(57)【要約】
【課題】各コマで表示する3Dモデル及び複数のコマに共通する3Dモデルの各干渉縞が空間分割多重化された干渉縞を用いて3Dモデルのアニメーションを再生する。
【解決手段】単一コマ物体光波伝搬部20は各コマで表示する3Dモデルの物体光波伝搬を計算する。モデル比較部30は、各コマで表示する3Dモデル同士を比較して共通モデル及び差分モデルを抽出する。差分マスク生成部40は、各コマの差分モデルに基づいて差分マスクを生成する。共通物体光波伝搬部50は、共通モデル及び差分マスクを用いて共通モデルからホログラム面への物体光波伝搬を差分モデルによる遮蔽を考慮して計算する。干渉縞計算部60は、各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び複数のコマに共通する干渉縞を計算する。干渉縞空間分割多重化部70は、各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び複数のコマに共通する3Dモデルの干渉縞を空間分割多重化により統合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコマを切り替えて3Dモデルのアニメーションを再生する計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞において、
各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び複数のコマに共通する共通モデルの干渉縞が空間分割多重化により統合されていることを特徴とする計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞。
【請求項2】
各コマで表示する3Dモデルの干渉縞の周囲に当該コマと他のコマとの共通モデルの干渉縞が隣接することを特徴とする請求項1に記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞。
【請求項3】
前記共通モデルの干渉縞が格子状であり、
前記各コマで表示する3Dモデルの干渉縞が前記格子状の干渉縞で仕切られた各格子内に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞。
【請求項4】
前記共通モデルの干渉縞が、複数のコマの組み合わせごとに共通する3Dモデルの各干渉縞を空間分割多重化して構成されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞。
【請求項5】
各コマで表示する3Dモデルに占める前記共通モデルの割合が大きいほど、統合後の干渉縞に占める前記共通モデルの干渉縞の割合が大きいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞。
【請求項6】
各コマで表示する3Dモデルの2Dレンダリング画像に占める前記共通モデルの2Dレンダリング画像の面積の割合が多いほど、統合後の干渉縞に占める前記共通モデルの干渉縞の割合が大きいことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞。
【請求項7】
複数のコマを切り替えて3Dモデルのアニメーションを再生する計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置において、
3Dモデルを入力する手段と、
各コマで表示する3Dモデルの物体光波伝搬を計算する手段と、
複数のコマに共通する共通モデルの物体光波伝搬を計算する手段と、
ホログラム面に伝搬する物体光波と参照光との干渉計算により前記各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び共通モデルの干渉縞を計算する手段と、
前記各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び共通モデルの干渉縞を空間分割多重化により統合する手段とを具備したことを特徴とする計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項8】
前記3Dモデルを入力する手段に各コマで表示する3Dモデルが入力され、
各コマで表示する3Dモデル同士を比較して各コマで表示する3Dモデルと前記共通モデルとの差分モデルを抽出する手段と、
前記各コマの差分モデルに基づいて差分マスクを生成する手段とを具備し、
前記共通モデルの物体光波伝搬を計算する手段は、前記共通モデル及び差分マスクを用いて、前記共通モデルからホログラム面への物体光波伝搬を前記差分モデルによる遮蔽を考慮して計算することを特徴とする請求項7に記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項9】
前記3Dモデルを入力する手段に前記共通モデル及び各コマで表示する3Dモデルと前記共通モデルとの各差分モデルが入力され、
前記各差分モデルに基づいて差分マスクを生成する手段を具備し、
前記各コマで表示する3Dモデルの物体光波伝搬を計算する手段は、コマ毎に共通モデル及び当該コマの差分モデルを仮想空間上に配置して各モデルからホログラム面までの物体光波伝搬を計算し、
前記共通モデルの物体光波伝搬を計算する手段は、前記共通モデル及び差分マスクを用いて、前記共通モデルからホログラム面への物体光波伝搬を前記差分モデルによる遮蔽を考慮して計算することを特徴とする請求項7に記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項10】
前記差分マスクを生成する手段は、各差分モデルの和集合領域に基づいて差分マスクを生成することを特徴とする請求項8または9に記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項11】
前記差分マスクを生成する手段は、各差分モデルの外接矩形の和集合領域に基づいて差分マスクを生成することを特徴とする請求項8または9に記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項12】
前記差分マスクを生成する手段は、各差分モデルの外接多面体の和集合領域の平面に基づいて差分マスクを生成することを特徴とする請求項8または9に記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項13】
前記3Dモデルを入力する手段に、前記共通モデル、各コマで表示する3Dモデルと前記共通モデルとの各差分モデル及び各差分モデルに基づいて生成された差分マスクが入力され、
前記各コマで表示する3Dモデルの物体光波伝搬を計算する手段は、コマ毎に共通モデル及び当該コマの差分モデルを仮想空間上に配置して各モデルからホログラム面までの物体光波伝搬を計算し、
前記共通モデルの物体光波伝搬を計算する手段は、前記共通モデル及び差分マスクを用いて、前記共通モデルからホログラム面への物体光波伝搬を前記差分モデルによる遮蔽を考慮して計算することを特徴とする請求項7に記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項14】
各コマで表示する3Dモデルの干渉縞の周囲に当該コマと他のコマとの共通モデルの干渉縞が隣接することを特徴とする請求項7ないし13のいずれかに記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項15】
前記共通モデルの干渉縞が格子状であり、
前記各コマで表示する3Dモデルの干渉縞が前記格子状の干渉縞で仕切られた各格子内に配置されていることを特徴とする請求項7ないし14のいずれかに記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項16】
前記共通モデルの干渉縞が、複数のコマの組み合わせごとに共通する3Dモデルの各干渉縞を空間分割多重化して構成されたことを特徴とする請求項7ないし15のいずれかに記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項17】
各コマで表示する3Dモデルに占める前記共通モデルの割合が大きいほど、統合後の干渉縞に占める前記共通モデルの干渉縞の割合が大きいことを特徴とする請求項7ないし16のいずれかに記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項18】
各コマで表示する3Dモデルの2Dレンダリング画像に占める前記共通モデルの2Dレンダリング画像の面積の割合が多いほど、統合後の干渉縞に占める前記共通モデルの干渉縞の割合が大きいことを特徴とする請求項7ないし16のいずれかに記載の計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置。
【請求項19】
複数のコマを切り替えて3Dモデルのアニメーションを再生する計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞をコンピュータが生成する方法において、
3Dモデルを入力し、
各コマで表示する3Dモデルの物体光波伝搬を計算し、
複数のコマに共通する共通モデルの物体光波伝搬を計算し、
ホログラム面に伝搬する物体光波と参照光との干渉計算により前記各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び共通モデルの干渉縞を計算し、
前記各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び共通モデルの干渉縞を空間分割多重化により統合することを特徴とする計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成方法。
【請求項20】
複数のコマを切り替えて3Dモデルのアニメーションを再生する計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成プログラムにおいて、
3Dモデルを入力する手順と、
各コマで表示する3Dモデルの物体光波伝搬を計算する手順と、
複数のコマに共通する共通モデルの物体光波伝搬を計算する手順と、
ホログラム面に伝搬する物体光波と参照光との干渉計算により前記各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び共通モデルの干渉縞を計算する手順と、
前記各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び共通モデルの干渉縞を空間分割多重化により統合する手順と、をコンピュータに実行させることを特徴とする計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成プログラム。
【請求項21】
複数のコマを切り替えて3Dモデルのアニメーションを再生する計算機合成ホログラムアニメーションの再生装置において、
コマ毎に異なる照射パターンで干渉縞に再生光を照射する手段を具備し、
前記干渉縞は、各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び複数のコマに共通する共通モデルの干渉縞を空間分割多重化により一枚に統合して構成され、
前記照射する手段は、再生するコマ毎に当該コマで表示する3Dモデルの干渉縞領域及び当該コマを含む複数のコマに共通する共通モデルの干渉縞領域の少なくとも一部に再生光を選択的に照射することを特徴とする計算機合成ホログラムアニメーションの再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向視差高解像度計算機合成ホログラム (Full-parallax high-definition CGH,FPHD-CGH) アニメーションの干渉縞、その生成装置、生成方法及び生成プログラム並びに計算機合成ホログラムアニメーションの再生装置に係り、特に、複数のコマで表示する3Dモデルの干渉縞が空間分割多重化により一枚に統合された干渉縞、その生成装置、生成方法及び生成プログラム、並びに当該一枚に統合された干渉縞に再生光を照射してホログラムアニメーションを再生する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計算機合成ホログラム (Computer-Generated Hologram,CGH) において、図16に示すようにレーザー直接描画装置によって微細な干渉縞をパターン描画用素材に印刷することで大規模かつ高解像の再生像を生成する技術として、全方向視差高解像度計算機合成ホログラム FPHD-CGHが知られている。
【0003】
FPHD-CGHは空間光変調器 (spatial light modulator,SLM) に干渉縞を表示する方式と較べて高解像かつサイズの大きい再生像を再生できる一方、レーザー直接描画装置による描画が必要という特性から動画対応することができず、静止画のみしか生成できないといった特徴がある。
【0004】
非特許文献1では、複数コマの切り替えによるアニメーション再生(CGHアニメーション)を実現するため、図17に示すように複数コマ分の干渉縞を空間分割多重化により1枚の干渉縞に統合し、その再生時には、図18に示すようにレーザプロジェクタを用いて各コマの干渉縞領域のみに構造化照明を選択的に照射することで各コマの再生像を得る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】松島恭冶、小中崇史、森川凌、"構造化照明マッピングを用いた全方向視差高解像度CGHのアニメーション"、3次元画像コンファレンス2021
【非特許文献2】K. Matsushima and S. Nakahara: Extremely high-definition full-parallax computer-generated hologram created by the polygon-based method、 App. Opt. 48、 H54-H63 (2009).
【非特許文献3】近藤暁靖、 松島恭治: シルエット近似を用いた全方向視差CGH の隠面消去、 信学論D-II J87-D-II、 7、 1487-1495 (2004).
【非特許文献4】K. Nakamoto、 K. Matsushima: Exact mask-based occlusion processing in large-scale computer holography for 3D display、 SPIE Digital Optical Technologies 2019、 Munich、 Germany、 SPIE Proc. 11062、 1106204(2019.6.24).
【非特許文献5】A. Stein、 Z. Wang、 and J. Jr、 "Computer-generated holograms: A simplified ray-tracing approach、" Comput. Phys. 6、 389-392 (1992).
【非特許文献6】N. Aspert、 D. Santa-Cruz and T. Ebrahimi、 "MESH: measuring errors between surfaces using the Hausdorff distance、" Proceedings. IEEE International Conference on Multimedia and Expo、 2002、 pp. 705-708 vol.1.
【非特許文献7】J. W. Goodman: Introduction to Fourier Optics、 2nd ed. (McGraw-Hill、 1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1では、コマごとに異なる干渉縞を計算した後にコマ数分の干渉縞を所定のパターンで空間分割し、分割した干渉縞パターンを多重化により統合することで1枚の干渉縞としている。しかしながら、各コマの情報が記録されている干渉縞の面積は静止画と比較して1/(コマ数)に減少するので、各コマの解像度や明るさが低下してしまうという課題があった。
【0007】
また、構造化照明は所望の干渉縞領域のみに正確に照射する必要があるが、この構造化照明自体のパターンを目立たない程度に微細なパターンにすることを考えると、プロジェクタの解像度によっては別のコマの干渉縞領域に光が漏れてしまい、別コマの再生像が同時に再生される現象(クロストークと呼ぶ)が発生してしまうという課題もあった。
【0008】
各コマの干渉縞領域間に干渉縞を印刷しない領域(ガードギャップ)を設けることでクロストークを削減する技術も提案されているが、各コマの干渉縞領域の面積がさらに減少するために解像度及び明るさを更に低下させてしまう。
【0009】
本発明の目的は、上記の技術課題を解決し、各コマの干渉縞を空間分割した干渉縞パターンを多重化により1枚に統合することで生成され、解像度及び明るさの低下を抑えながらクロストークを削減できる計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞、その生成装置、生成方法及び生成プログラム並びに当該干渉縞を用いて計算機合成ホログラムのアニメーションを再生する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、複数のコマを切り替えて3Dモデルのアニメーションを再生する計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞において、各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び複数のコマに共通する共通モデルの干渉縞が空間分割多重化により統合されるようにした点に特徴がある。
【0011】
また、本発明は、複数のコマを切り替えて3Dモデルのアニメーションを再生する計算機合成ホログラムアニメーションの干渉縞生成装置において、3Dモデルを入力する手段と、各コマで表示する3Dモデルの物体光波伝搬を計算する手段と、複数のコマに共通する共通モデルの物体光波伝搬を計算する手段と、ホログラム面に伝搬する物体光波と参照光との干渉計算により前記各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び共通モデルの干渉縞を計算する手段と、前記各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び共通モデルの干渉縞を空間分割多重化により統合する手段とを具備した点に特徴がある。
【0012】
更に、本発明は、複数のコマを切り替えて3Dモデルのアニメーションを再生する計算機合成ホログラムアニメーションの再生装置において、各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び複数のコマに共通する共通モデルの干渉縞が空間分割多重化により統合された干渉縞に対して、コマ毎に異なる照射パターンで再生光を照射して計算機合成ホログラムのアニメーションを再生するようにした点に特徴がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば以下のような効果が達成される。
【0014】
(1) 各コマの干渉縞を空間分割した干渉縞パターンを多重化により一枚に統合した干渉縞を用いるCGHアニメーションにおいて、複数のコマに共通する3Dモデルの干渉縞も別途にパターン化して共に多重化することで各コマに対応する干渉縞の面積を増加させることができるので、特に各コマに共通する領域の解像度及び明るさを向上させることが可能となる。
【0015】
(2) 複数のコマで共通する3Dモデルの干渉縞領域が各コマの干渉縞領域に隣接配置されて再生光を照射する際にガードギャップとして働くので、クロストークを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係るFPHD-CGH装置の主要部の構成を示した機能ブロック図である。
図2】物体光波伝搬の計算において遮蔽された点を識別する方法を模式的に示した図である。
図3】差分モデルの生成方法を示した図である。
図4】差分マスクの第1の生成方法を示した図である。
図5】差分マスクの第2の生成方法を示した図である。
図6】差分マスクの第3の生成方法を示した図である。
図7】差分マスクを用いて物体光波伝搬を計算する方法を示した図である。
図8】各コマの3Dモデルの干渉縞及び各コマに共通する3Dモデルの干渉縞を空間分割した複数の干渉縞パターンを多重化して1枚の干渉縞に統合する例を示した図である。
図9】本発明による各コマの再生時における再生光の照射パターンを従来の照射パターンと比較して示した図である。
図10】本発明による各コマの再生時における再生光の照射パターンの要部を拡大して示した図である。
図11】共通モデルの割合が小さいほど複数のコマに共通する3Dモデルの干渉縞領域の割合を小さくする例を示した図である。
図12】共通モデルの割合が大きいほど複数のコマに共通する3Dモデルの干渉縞領域の割合を大きくする例を示した図である。
図13】3コマのホログラムアニメーション再生を対象とした干渉縞における各干渉縞領域の配置パターンの例を示した図である。
図14】本発明の第2実施形態に係るFPHD-CGH装置の主要部の構成を示した機能ブロック図である。
図15】本発明の第3実施形態に係るFPHD-CGH装置の主要部の構成を示した機能ブロック図である。
図16】全方向視差高解像度計算機合成ホログラムを説明するための図である。
図17】コマ毎に空間分割した干渉縞パターンを多重化により1枚の干渉縞に統合する従来例を示した図である。
図18】各コマの干渉縞パターンを統合した1枚の干渉縞にコマ毎に固有の照射パターンで再生光を照射してアニメーションを再生する従来例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るFPHD-CGH装置1の主要部の構成を示した機能ブロック図であり、ここでは本発明の説明に不要な構成は図示を省略している。本実施形態では2コマのCGHアニメーションを、各コマの干渉縞が1枚に統合された干渉縞を用いて再生する場合を例にして説明する。
【0018】
3Dモデル入力部10には各コマで再生する3Dモデルが入力される。本実施例では3Dポリゴンメッシュモデルが入力される場合を例にして説明するが3D点群モデルが入力されるようにしても良い。
【0019】
単一コマ物体光波伝搬部20は、各コマで表示する3Dモデルを仮想空間上に配置し、各モデルからホログラム面までの物体光波の伝搬計算を行う。本実施形態では非特許文献2が開示するポリゴン法を用いて、入力されたポリゴンメッシュモデルの各ポリゴンを面光源として扱い、各ポリゴンからホログラム面への物体光波伝搬を計算する。
【0020】
また、非特許文献3が開示するシルエット法や非特許文献4が開示するサーフェースマスク法などによりマスクを用いた光波の遮蔽を行い、遮蔽関係を考慮した上でホログラム面までの物体光波伝搬を計算する。
【0021】
なお、点群モデルを入力として利用する場合は非特許文献5が開示する点光源法により、点群を点光源として扱って伝搬計算を実施する。なお、図2に示すように各点とホログラム面の各画素とを結んだ直線から一定距離δ以下の位置に別の点が存在する場合は各点を遮蔽された点として扱い、当該画素への伝搬計算を実施しないようにすることが望ましい。
【0022】
モデル比較部30は各コマで表示する3Dモデルを相互に比較し、色や形状が共通する領域を共通モデル、それ以外を差分モデルとして抽出する。本実施形態ではポリゴン形状同士を非特許文献6が開示するハウスドルフ距離によって比較し、形状が一致するポリゴンのうち色が一致するポリゴンを共通モデルとして抽出する。
【0023】
なお、本実施例のように単色のモデルを対象とする場合は色の一致をグレースケールで判定するが、モデルがカラーの場合は各カラーチャネルで比較し、各カラー用の共通モデルを別々に抽出してもよい。差分モデルは、図3に示すように各コマの3Dモデルと共通モデルとの差分として抽出される。
【0024】
また、本実施例では形状、色ともに完全に一致する領域を共通モデルとして抽出するが、ハウスドルフ距離や色に人間の目で識別できない程の変化がある部分についても共通モデルとして抽出しても良い。共通モデルの干渉縞が陰面消去を考慮して計算される場合、人間が認識できないような差分であれば品質に影響を与えないためである。
【0025】
差分マスク生成部40は、共通モデルが各コマの差分モデルにより遮蔽される領域を遮蔽するための差分マスクを生成する。差分マスクは、図4に示すように共通モデルとコマ1との差分モデル及び共通モデルとコマ2との差分モデルの位置合わせ後の和集合領域の3Dメッシュモデルを生成すれば、この3Dメッシュモデルを差分マスクとして用いることができる。
【0026】
あるいは図5に示すように、各差分モデルの外接多面体の位置合わせ後の和集合領域の3Dメッシュモデルを生成すれば、これを差分マスクとして用いることができるし、図6に示すように、各差分モデルの外接矩形や外接円の位置合わせ後の和集合領域の平面メッシュを作成すれば、これを差分マスクとして用いることができる。
【0027】
なお、図5,6に示すように差分マスクを単純な形状にした場合、マスクの形状と差分モデルの形状とが異なるので遮蔽判定の厳密性が低下するが、遮蔽判定に用いるメッシュ数が減少するので計算時間を削減できる。
【0028】
平面メッシュを差分マスクとして用いる際のメッシュの角度は任意であるが、非特許文献7が開示する角スペクトル法などの平行平面間の伝搬計算を利用できる点、及び通常再生像を観察する際に正面を中心として視点を動かすために正面からの視点が重要視されるという観点から、ホログラム面に対して平行とするのが望ましい。
【0029】
差分マスクを生成することで、図7に示すように、いずれかのコマにおいて遮蔽される共通モデルの領域を遮蔽した伝搬計算が可能となるので、各コマの再生時に共通モデルが透けて見えてしまうことを防止できる。
【0030】
共通物体光波伝搬部50は、前記共通モデル及び差分マスクを用いて、共通モデルからホログラム面への物体光波伝搬を前記差分モデルによる遮蔽を考慮して計算する。共通物体光波伝搬部50は前記単一コマ物体光波伝搬部20と類似の伝搬計算を実施するが、遮蔽判定に差分マスクを使用する点が異なる。
【0031】
具体的には、単一コマ物体光波伝搬部20において遮蔽用に使用する、非特許文献3や非特許文献4が開示するマスクに差分マスクを加えて遮蔽計算を実施する。点群モデルを用いる場合は単一コマ物体光波伝搬部20の点による遮蔽に加えて、点群とホログラム面の各画素とを結んだ直線上に差分マスクが存在すれば点群が遮蔽されていると判定して対応する画素への伝搬計算を実施しない。
【0032】
干渉縞計算部60は、前記単一コマ物体光波伝搬部20及び共通物体光波伝搬部50が計算したホログラム面上の各物体光波と参照光との干渉計算を実施することで、各コマの3Dモデルに関する干渉縞及び共通モデルに関する干渉縞を計算し、各干渉縞を画像として出力する。本実施例では、干渉計算によって得た振幅分布を0,1に2値化した画像として出力するが、0-255のレンジで正規化するなどビット深度の高い画像として出力してもよい。
【0033】
干渉縞空間分割多重化部70は、各コマの3Dモデルに関する干渉縞を空間分割した干渉縞パターンと共通モデルに関する干渉縞を空間分割した干渉縞パターンとを多重化して1枚の干渉縞に統合する。
【0034】
本実施形態では、図8に一例を示すように複数のコマに共通する3Dモデルの干渉縞を格子状にパターン化し、各コマで表示する3Dモデルの各干渉縞は各格子内に重複することなく分散配置されるようにパターン化し、各干渉縞パターンを多重化することで一枚の干渉縞に統合する。なお、多重化するパターンは格子状パターンに限定されるものではなく、縦縞パターン、横縞パターンなど任意のパターンを採用できる。
【0035】
このように、本実施形態では複数のコマに共通する3Dモデルの干渉縞パターンを統合後の干渉縞に含めることで、図9に示すように、各コマの再生時に照射対象となる干渉縞(照射領域)の面積を従来(上段)に比べて増加させることができるため、再生像の共通モデル部分の解像度や明るさを改善することが可能になる。
【0036】
また、本実施形態では各コマの干渉縞領域に共通モデルの干渉縞領域が隣接するので、各コマを再生する際の構造化照明による照射領域を、図10に示すように各コマの干渉縞領域の外側まで拡張できる。したがって、各コマを再生する際の照射領域を、各コマの干渉縞領域及び当該干渉縞領域に隣接する共通モデルの干渉縞領域の一部の領域に設定すれば、共通モデルの干渉縞領域がガードギャップとして働くのでクロストークを削減することが可能になる。
【0037】
ここで、各コマの干渉縞領域と共通モデルの干渉縞領域との面積比は各コマで表示する3Dモデルに占める共通モデルの体積の割合によって決定することが望ましい。例えば、共通モデルの干渉縞の幅と各コマの干渉縞の幅との比が、共通モデルの体積と各コマで表示する3Dのモデルから共通モデルを減じた残りの体積との比と等しくなるようにすることができる。
【0038】
その結果、共通モデルが占める体積の割合が相対的に小さければ、図11に示すように共通モデルの干渉縞領域の占める面積が少なくなる一方、共通モデルが占める体積の割合が相対的に大きければ、図12に示すように共通モデルの干渉縞領域の占める面積が多くなる。
【0039】
このように、共通モデルの体積比によってその干渉縞の面積比を変更することで、再生時に多くの体積を占める部分の情報を最終的な干渉縞に多く含めることが可能となるので、コンテンツごとに各干渉縞の面積比を最適化できるようになる。
【0040】
また、上記の実施例では3Dモデルの体積比によって共通モデルの干渉縞の面積比を決定したが、特定視点での再生像を重視するために、特定視点から2D画像をレンダリングした際の共通モデルが占める面積の割合によって干渉縞の面積比を決定しても良い。
【0041】
例えば、奥行方向に変化が大きいコンテンツの場合、正面視点から観察した再生像には変化が少ないので、共通モデルの干渉縞の面積を増加させることで正面視点の映像品質を向上させることができる。
【0042】
また、上記の実施形態では2コマを切り替えるアニメーション再生を例にして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、3コマ以上のアニメーション再生にも同様に適用できる。
【0043】
図13は3コマのアニメーション再生を対象とした各干渉縞の空間分割多重化の例を示した図であり、共通モデルに関する格子状の干渉縞パターンがコマの組み合わせごとに分割され、コマ1,3に共通する干渉縞領域と、コマ1,2に共通する干渉縞領域と、コマ2,3に共通する干渉縞領域と、全てのコマ1,2,3に共通する干渉縞領域とが設けられている。
【0044】
各コマで表示する3Dモデルの干渉縞領域は各格子内に分散配置されている。コマ数の増加に伴って各共通部分の体積は小さくなるが、複数の共通モデルを用意することで再生像の解像度向上の効果を受ける体積を増やすことができる。
【0045】
このように、本実施形態では共通モデル用の干渉縞を最終的なCGHアニメーションの干渉縞の空間分割多重に含めることで、アニメーションの1コマ当たりに関連する干渉縞の面積を増やすことができるため、共通モデルの解像度や明るさを向上させることができる。
【0046】
図14は、本発明の第2実施形態の構成を示した機能ブロック図であり、前記と同一の符号は同一又は同等部分を表している。
【0047】
本実施形態は、3Dモデル入力部10に各コマの共通モデルと各コマの差分モデルとが入力される点に特徴があり、2コマ切替のアニメーション再生であれば、1つの共通モデルと2つの差分モデルとが入力される。
【0048】
単一コマ物体光波伝搬部20は、コマ毎に共通モデル及び当該コマの差分モデルを仮想空間上に配置し、各モデルからホログラム面までの物体光波伝搬を計算する。
【0049】
図15は、本発明の第3実施形態の構成を示した機能ブロック図であり、前記と同一の符号は同一又は同等部分を表している。
【0050】
本実施形態は、3Dモデル入力部10に各コマの共通モデル、各コマの差分モデル及び差分マスクが入力される点に特徴があり、2コマ切替のアニメーション再生であれば、1つの共通モデルと2つの差分モデルと1つの差分マスクとが入力される。
【0051】
単一コマ物体光波伝搬部20は、コマ毎に共通モデル及び当該コマの差分モデルを仮想空間上に配置して各モデルからホログラム面までの物体光波の伝搬計算を行う。共通物体光波伝搬部50は共通モデル及び差分マスクを取得し、共通モデルからホログラム面への物体光波伝搬を差分モデルによる遮蔽を考慮して計算する。
【0052】
以上のようにして、各コマで表示する3Dモデルの干渉縞及び複数のコマに共通する共通モデルの干渉縞が空間分割多重化により一枚に統合されると、本実施形態では、複数のコマを切り替えて3Dモデルのアニメーションを再生する計算機合成ホログラムアニメーションの再生装置に、コマ毎に異なる照射パターンで干渉縞に再生光を照射する照射部を設けてコマごとに異なる照射パターンで再生光を照射する。
【0053】
前記照射部は、前記図9,10を参照して説明したように、再生するコマ毎に当該コマで表示する3Dモデルの干渉縞領域及び当該コマを含む複数のコマに共通する共通モデルの干渉縞領域の少なくとも一部に再生光を選択的に照射する。
【0054】
特に、図10に示すように、各コマにおける再生光の照射領域を、当該コマで表示する3Dモデルの干渉縞領域のみならずその周囲に配置された共通モデルの干渉縞領域まで拡張し、その際、拡張範囲を隣接する他のコマで表示する3Dモデルの干渉縞領域との中間地点に設定しておくことが望ましい。
【0055】
このような計算機合成ホログラムアニメーションの再生装置によれば、照射領域に多少のずれが生じても、解像度及び明るさの低下を抑えながらクロストークを十分に削減できるようになる。
【0056】
そして、上記の各実施形態によれば高品質なCGHアニメーションを再生することができ、通信インフラ経由でもリアルタイムで提供することが可能となるので、地理的あるいは経済的な格差を超えて多くの人々に多様なエンターテインメントを提供できるようになる。その結果、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、包括的で持続可能な産業化を推進する」や目標11「都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1…FPHD-CGH装置,10…3Dモデル入力部,20…単一コマ物体光波伝搬部,30…モデル比較部,40…差分マスク生成部,50…共通物体光波伝搬部,60…干渉縞計算部,70…干渉縞空間分割多重化部
図1
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