(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137120
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】メソポーラスカーボン、並びに、燃料電池用電極触媒及び触媒層
(51)【国際特許分類】
H01M 4/96 20060101AFI20230922BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20230922BHJP
C01B 37/00 20060101ALI20230922BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20230922BHJP
C01B 32/205 20170101ALI20230922BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20230922BHJP
【FI】
H01M4/96 M
H01M4/86 B
H01M4/96 B
H01M4/86 M
C01B37/00
C01B32/05
C01B32/205
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043154
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(71)【出願人】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一久
(72)【発明者】
【氏名】竹下 朋洋
(72)【発明者】
【氏名】井元 瑠伊
(72)【発明者】
【氏名】野村 久美子
(72)【発明者】
【氏名】王 宇楠
(72)【発明者】
【氏名】松村 祐宏
(72)【発明者】
【氏名】笠間 勇輝
【テーマコード(参考)】
4G073
4G146
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA62
4G073BA63
4G073BA75
4G073BA80
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4G073BB04
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4G073CB09
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5H018AA06
5H018AS02
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5H018BB01
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5H018HH01
5H018HH04
5H018HH06
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】高温低加湿条件下における保水性に優れたメソポーラスカーボン、並びに、このようなメソポーラスカーボンを触媒担体に用いた燃料電池用電極触媒及び触媒層を提供すること。
【解決手段】メソポーラスカーボンは、1次細孔を持つカーボン粒子(1次粒子)が連結している連結構造を備え、前記1次細孔の平均入口径が2.0nm以上3.0nm以下であり、前記1次細孔の平均くびれ径が1.6nm以上2.4nm以下である。燃料電池用電極触媒は、このようなメソポーラスカーボンと、前記メソポーラスカーボンの前記1次細孔内に担持された触媒粒子とを備えている。さらに、触媒層は、このような燃料電池用電極触媒と、触媒層アイオノマとを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次細孔を持つカーボン粒子(1次粒子)が連結している連結構造を備え、
前記1次細孔の平均入口径が2.0nm以上3.0nm以下であり、
前記1次細孔の平均くびれ径が1.6nm以上2.4nm以下である
メソポーラスカーボン。
但し、
「平均入口径」とは、3次元透過型電子顕微鏡像解析により測定された、前記カーボン粒子の表面に開口している前記1次細孔の入口の円相当径の平均値をいい、
「平均くびれ径」とは、前記3次元透過型電子顕微鏡像解析により測定された、前記カーボン粒子の内部にある前記1次細孔のくびれ部の円相当径の平均値をいう。
【請求項2】
高温低加湿電圧が570mV以上である請求項1に記載のメソポーラスカーボン。
【請求項3】
前記カーボン粒子の平均粒径が30nm以上300nm以下である請求項1又は2に記載のメソポーラスカーボン。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のメソポーラスカーボンと、
前記メソポーラスカーボンの前記1次細孔内に担持された触媒粒子と
を備えた燃料電池用電極触媒。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池用電極触媒と、
触媒層アイオノマと
を備えた触媒層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソポーラスカーボン、並びに、燃料電池用電極触媒及び触媒層に関し、さらに詳しくは、高温低加湿条件下における保水性に優れたメソポーラスカーボン、並びに、これを触媒担体として用いた燃料電池用電極触媒及び触媒層に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、電解質膜の両面に触媒を含む電極(触媒層)が接合された膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly,MEA)を備えている。触媒層の外側には、通常、ガス拡散層が配置される。さらに、ガス拡散層の外側には、ガス流路を備えた集電体(セパレータ)が配置される。固体高分子形燃料電池は、通常、このようなMEA、ガス拡散層及び集電体からなる単セルが複数個積層された構造(燃料電池スタック)を備えている。
【0003】
固体高分子形燃料電池において、触媒層は、一般に、担体表面に白金などの触媒金属微粒子を担持させた電極触媒と、触媒層アイオノマとの混合物からなる。触媒担体には、通常、カーボンブラック、アセチレンブラックなどの炭素材料が用いられている。さらに、触媒担体に用いられる炭素材料の細孔径、比表面積等が燃料電池の特性に影響を与えることが知られている。そのため、細孔径、比表面積等を制御した炭素材料に関し、従来から種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、
(a)ガンマ型アルミナ粒子とポリビニルアルコールとの混合物を不活性ガス雰囲気下で焼成することによりアルミナ-炭素複合物とし、
(b)水酸化ナトリウムを用いてアルミナ-炭素複合物中のアルミナを溶解・除去することにより、炭素材料とし、
(c)得られた炭素材料を粉砕し、粉砕された炭素材料を賦活処理する
担体炭素材料の製造方法が開示されている。
【0005】
同文献には、
(A)このようにして得られた担体炭素材料の内部には、半径2nm以上5nm以下のメソ孔(触媒担持細孔)と、触媒担持細孔に連通している半径5nm以上25nm以下のメソ孔(ガス拡散細孔)とが存在している点、
(B)このような担体炭素材料に半径1~3nmの触媒金属微粒子を担持させた場合、触媒金属微粒子は、触媒担持細孔内に担持される点、
(C)触媒担持細孔内に触媒金属微粒子が担持された担体炭素材料を燃料電池用の空気極触媒として用いた場合、触媒金属微粒子上で生成した水分子は、触媒担持細孔からガス拡散細孔を通って担体炭素材料の外部へと拡散する点、及び、
(D)これによって、担体炭素材料の内部で生じるフラッディングを抑制できる点
が記載されている。
【0006】
固体高分子形燃料電池の更なる高温運転を可能にするためには、高温低加湿条件下での電圧低下が小さいカーボン担体材料、及び、これを用いた電極触媒が必要である。以下、高温低加湿条件下(換言すれば、固体高分子形燃料電池に熱的に大きな負荷がかかる条件下)における発電性能を「高温低加湿性能」ともいう。従来のカーボン担体は、高温低加湿性能が十分ではない。
【0007】
例えば、特許文献1には、半径2~5nmの触媒担持細孔と、半径5~25nmのガス拡散細孔とを備えた担体炭素材料を用いると、担体炭素材料の内部で生じるフラッディングを抑制できる点が記載されている。
しかしながら、同文献では、多孔質炭素材料に含まれる細孔構造が均一であると見なして細孔径及び細孔容量の範囲を規定しているに過ぎない。また、同文献に記載の担体炭素材料は、高温低加湿条件下においてプロトン伝導に必要な水を細孔内に滞留させることが可能な細孔構造を備えていない。そのため、同文献に記載の担体炭素材料は、高温低加湿性能が十分ではないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、高温低加湿条件下における保水性に優れたメソポーラスカーボンを提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このようなメソポーラスカーボンを触媒担体として用いた燃料電池用電極触媒を提供することにある。
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このような燃料電池用電極触媒を備えた触媒層を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係るメソポーラスカーボンは、
1次細孔を持つカーボン粒子(1次粒子)が連結している連結構造を備え、
前記1次細孔の平均入口径が2.0nm以上3.0nm以下であり、
前記1次細孔の平均くびれ径が1.6nm以上2.4nm以下である
ことを要旨とする。
但し、
「平均入口径」とは、3次元透過型電子顕微鏡像解析により測定された、前記カーボン粒子の表面に開口している前記1次細孔の入口の円相当径の平均値をいい、
「平均くびれ径」とは、前記3次元透過型電子顕微鏡像解析により測定された、前記カーボン粒子の内部にある前記1次細孔のくびれ部の円相当径の平均値をいう。
【0011】
本発明に係る燃料電池用電極触媒は、
本発明に係るメソポーラスカーボンと、
前記メソポーラスカーボンの前記1次細孔内に担持された触媒粒子と
を備えている。
【0012】
さらに、本発明に係る触媒層は、
本発明に係る燃料電池用電極触媒と、
触媒層アイオノマと
を備えている。
【発明の効果】
【0013】
1次細孔の平均入口径及び平均くびれ径が所定の範囲にあるメソポーラスカーボンを燃料電池用の触媒担体として用いると、高温低加湿条件下で発電を行った時に、生成水を有効に1次細孔内に滞留させることが可能になる。また、1次細孔内に滞留した生成水によりプロトンが触媒粒子表面に輸送されるために、1次細孔内の触媒粒子を有効に活用することも可能になる。その結果、燃料電池の高温低加湿性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1で得られたメソポーラスカーボンの3次元画像(右下図)及び細孔構造の模式図(左上図)である。
【
図2】比較例1で得られたメソポーラスカーボンの3次元画像(右下図)及び細孔構造の模式図(左上図)である。
【0015】
【
図3】平均入口径と高温低加湿電圧との関係を示す図である。
【
図4】平均入口径と効率点電圧との関係を示す図である。
【
図5】平均くびれ径と高温低加湿電圧との関係を示す図である。
【
図6】平均くびれ径と効率点電圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. メソポーラスカーボン]
本発明に係るメソポーラスカーボンは、
1次細孔を持つカーボン粒子(1次粒子)が連結している連結構造を備え、
前記1次細孔の平均入口径が2.0nm以上3.0nm以下であり、
前記1次細孔の平均くびれ径が1.6nm以上2.4nm以下である。
【0017】
[1.1. 連結構造]
後述するように、本発明に係るメソポーラスカーボンは、メソポーラスシリカを鋳型として製造される。メソポーラスシリカは、通常、シリカ源、界面活性剤及び触媒を含む反応溶液中において、シリカ源を縮重合させることにより合成されている。この時、溶媒の種類、反応溶液中の界面活性剤の濃度、及び/又は、シリカ源の濃度を最適化すると、連結構造を備え、かつ、細孔径(平均入口径、平均くびれ径、平均孔径)、及び、細孔容量が特定の範囲にあるメソポーラスシリカが得られる。さらに、このようなメソポーラスシリカを鋳型に用いると、連結構造を備え、かつ、細孔径、及び、細孔容量が特定の範囲にあるメソポーラスカーボンが得られる。
【0018】
ここで、「連結構造」とは、カーボン粒子からなる1次粒子が数珠状に連結している構造をいう。連結構造を構成する各1次粒子は、その内部に1次細孔を有している。1次粒子内の1次細孔は、鋳型に用いたメソポーラスシリカの細孔壁を除去した後に残った空洞である。1次粒子の形状は、通常、完全な球状とはならず、アスペクト比が1.1~3程度のいびつな形状を持つ。
さらに、メソポーラスカーボンの内部にある1次細孔の大きさは、通常、均一ではなく、場所によって異なっている。一般に、1次細孔の入口の大きさと、1次細孔の内部の大きさは異なっている。また、1次細孔の内部の大きさも均一ではなく、通常、隣接している空隙よりも大きさが小さい空隙(くびれ部)を有している。
【0019】
[1.2. 1次粒子]
1次粒子は、1次細孔を持つカーボン粒子からなる。本発明に係るメソポーラスカーボンは、後述する方法を用いて製造されるため、メソポーラスカーボンを構成する1次粒子は、以下のような特徴を持つ。
【0020】
[1.2.1. 平均入口径]
「平均入口径」とは、3次元透過型電子顕微鏡像解析により測定された、前記カーボン粒子の表面に開口している前記1次細孔の入口の円相当径の平均値をいう。測定誤差を低減するためには、500箇所以上の入口の円相当径を算出するのが好ましい。
3次元透過型電子顕微鏡(3DTEM)を用いて試料を所定の角度間隔で傾けながら連続的に2次元投影像を撮影し、得られた2次元投影像を数学的に処理すると、試料の3次元画像(立体像)を再構築することができる。さらに、得られた3次元画像から、各1次細孔の入口の直径を測定することができる。
【0021】
平均入口径は、メソポーラスカーボンを担体に用いた電極触媒の高温低加湿性能に影響を与える。平均入口径が小さくなりすぎると、1次細孔内に触媒粒子を担持させるのが困難となる場合がある。従って、平均入口径は、2.0nm以上である必要がある。
【0022】
一方、平均入口径が大きくなりすぎると、高温低加湿性能が低下する場合がある。これは、平均入口径が大きくなりすぎると、高温低加湿条件下において1次細孔内に滞留している水が外部に排出されやすくなるためと考えられる。従って、平均入口径は、3.0nm以下である必要がある。平均入口径は、好ましくは、2.8nm以下である。
【0023】
[1.2.2. 平均くびれ径]
「平均くびれ径」とは、3次元透過型電子顕微鏡像解析により測定された、前記カーボン粒子の内部にある前記1次細孔のくびれ部の円相当径の平均値をいう。測定誤差を低減するには、500箇所以上のくびれ部の円相当径を算出するのが好ましい。
上述したように、3次元透過型電子顕微鏡を用いると、試料の3次元画像(立体像)が得られる。さらに、得られた3次元画像から、各1次細孔のくびれ部の直径を測定することができる。
【0024】
平均くびれ径は、メソポーラスカーボンを担体に用いた電極触媒の高温低加湿性能に影響を与える。平均くびれ径が小さくなりすぎると、1次細孔内に触媒粒子を担持させるのが困難となる場合がある。従って、平均くびれ径は、1.6nm以上である必要がある。
【0025】
一方、平均くびれ径が大きくなりすぎると、高温低加湿性能が低下する場合がある。これは、平均くびれ径が大きくなりすぎると、高温低加湿条件下において1次細孔内に滞留している水が外部に排出されやすくなるためと考えられる。従って、平均くびれ径は、2.4nm以下である必要がある。平均くびれ径は、好ましくは、2.3nm以下である。
【0026】
[1.2.3. 平均孔径]
「平均孔径」とは、1次粒子に含まれる1次細孔の直径の平均値をいい、1次粒子間にある空隙(2次細孔)の大きさは含まれない。
平均孔径は、メソポーラスカーボンの窒素吸着等温線の吸着側データをBJH法で解析し、細孔容量が最大となるときの細孔径(最頻出ピーク値)を求めることにより得られる。
【0027】
一般に、平均孔径が小さくなりすぎると、1次細孔内に担持された触媒粒子に反応ガスやプロトンが供給されにくくなる場合がある。また、高電流密度域で発電を行った時に、反応により生じた水が排出されにくくなる場合がある。従って、平均孔径は、2nm以上が好ましい。平均孔径は、好ましくは、2.5nm以上である。
一方、平均孔径が大きくなりすぎると、1次細孔内にアイオノマが侵入しやすくなる。その結果、触媒粒子がアイオノマで被毒され、活性が低下する。従って、平均孔径は、20nm未満が好ましい。平均孔径は、好ましくは、10nm以下、さらに好ましくは、7nm以下、さらに好ましくは、5nm以下である。
【0028】
[1.2.4. 細孔壁の平均厚さ]
「細孔壁の平均厚さ」とは、1次粒子に含まれる1次細孔の細孔壁の厚さの平均値をいう。
細孔壁の平均厚さは、顕微鏡を用いて、無作為に選んだ100箇所以上の細孔壁の厚さを測定し、平均値を算出することにより得られる。
【0029】
細孔壁の平均厚さが薄すぎると、カーボンが酸化されやすくなり、耐久性が悪くなる場合がある。従って、細孔壁の平均厚さは、3nm以上が好ましい。平均厚さは、好ましくは、3.5nm以上、さらに好ましくは、4nm以上である。
一方、細孔壁の平均厚さが厚くなりすぎると、1次粒子の細孔容量が小さくなり、触媒粒子が担持されにくくなる場合がある。従って、細孔壁の平均厚さは、15nm以下が好ましい。平均厚さは、好ましくは、12nm以下、さらに好ましくは、10nm以下である。
【0030】
[1.2.5. 1次細孔の細孔容量]
「1次細孔の細孔容量」とは、1次粒子に含まれる1次細孔の容積をいい、1次粒子間にある空隙(2次細孔)の容積は含まれない。
1次細孔の細孔容量は、メソポーラスカーボンの窒素吸着等温線の吸着データをBJH法で解析し、P/P0=0.03~0.99の値で算出することにより得られる。
【0031】
一般に、1次細孔の細孔容量が小さくなりすぎると、触媒粒子が担持されにくくなる。従って、1次細孔の細孔容量は、0.2mL/g以上が好ましい。1次細孔の細孔容量は、好ましくは、0.5mL/g以上、さらに好ましくは、1.0mL/g以上である。
一方、1次細孔の細孔容量が大きくなりすぎると、1次粒子の体積に占める細孔壁の体積の割合が小さくなり、電子伝導性が低くなる場合がある。また、アイオノマ侵入量が多くなり、触媒被毒により活性が低下する場合がある。従って、1次細孔の細孔容量は、3.0mL/g以下が好ましい。1次細孔の細孔容量は、好ましくは、2.5mL/g以下、さらに好ましくは、2.0mL/g以下である。
【0032】
[1.2.6. 1次粒子の平均粒径]
「1次粒子の平均粒径」とは、1次粒子の短軸方向の長さの平均値をいう。
「短軸方向の長さ」とは、1次粒子の長さが最も長い方向(長軸方向)に対して垂直方向の長さをいう。
1次粒子の平均粒径は、顕微鏡を用いて、無作為に選んだ100個以上の1次粒子について短軸方向の長さを測定し、平均値を算出することにより得られる。
【0033】
一般に、1次粒子の平均粒径が小さくなりすぎると、触媒粒子が1次細孔内に担持されにくくなる。従って、1次粒子の平均粒径は、30nm以上が好ましい。平均粒径は、好ましくは、40nm以上、さらに好ましくは、50nm以上である。
【0034】
一方、1次粒子の平均粒径が大きくなりすぎると、1次細孔内に担持された触媒粒子に反応ガスやプロトンが供給されにくくなる場合がある。また、高電流密度域で発電を行った時に、反応により生じた水が排出されにくくなる場合がある。従って、平均粒径は、300nm以下が好ましい。平均粒径は、好ましくは、250nm以下、さらに好ましくは、150nm以下である。
【0035】
[1.3. 高温低加湿電圧]
「高温低加湿電圧」とは、
(a)電極触媒のPt担持量が40mass%であり、Pt目付量が0.1mg/cm2であり、アイオノマ/カーボン比(I/C)が1.0である空気極触媒層を備えた固体高分子形燃料電池を用いて、
(b)セル温度:105℃、相対湿度:30%、電流密度:3.2A/cm2の条件下で測定された電圧をいう。
【0036】
本発明に係るメソポーラスカーボンは、平均入口径及び平均くびれ径が所定の範囲にあるため、高温低加湿条件下においても高い保水性を示す。平均入口径及び平均くびれ径を最適化すると、高温低加湿電圧は、570mV以上となる。細孔構造をさらに最適化すると、高温低加湿電圧は、590mV以上となる。
【0037】
[1.4. 黒鉛化度]
メソポーラスカーボンは、メソポーラスシリカのメソ孔内に炭素源を充填し、炭素源を炭化させることにより得られる。しかし、メソポーラスシリカと炭素との反応を抑制するためには、炭素源の炭化温度を相対的に低くする必要がある。そのため、炭素源を炭化させた後のメソポーラスカーボンは、乱層構造となりやすい。乱層構造を備えたメソポーラスカーボンは、黒鉛構造を備えたメソポーラスカーボンに比べて、電子伝導性が低い。
【0038】
これに対し、乱層構造を備えたメソポーラスカーボンを1500℃を超える温度で黒鉛化処理すると、乱層構造を持つメソポーラスカーボンが次第に黒鉛構造に変化する。一般に、黒鉛化処理温度が高くなるほど、黒鉛化度が向上する。
【0039】
[2. 燃料電池用電極触媒]
本発明に係る燃料電池用電極触媒は、
本発明に係るメソポーラスカーボンと、
メソポーラスカーボンの1次細孔内に担持された触媒粒子と
を備えている。
【0040】
[2.1. メソポーラスカーボン]
本発明に係る燃料電池用電極触媒において、メソポーラスカーボンは、触媒粒子を担持するための触媒担体である。触媒粒子は、主として、メソポーラスカーボンを構成する1次粒子の1次細孔内に担持される。メソポーラスカーボンの詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0041】
[2.2. 触媒粒子]
本発明において、触媒粒子の材料は、酸素還元反応活性又は水素酸化反応活性を示す材料である限りにおいて、特に限定されない。触媒粒子の材料としては、例えば、
(a)貴金属(Pt、Au、Ag、Pd、Rh、Ir、Ru、Os)、
(b)2種以上の貴金属元素を含む合金、
(c)1種又は2種以上の貴金属元素と、1種又は2種以上の卑金属元素(例えば、Fe、Co、Ni、Cr、V、Tiなど)とを含む合金、
(d)金属酸窒化物、
(e)カーボンアロイ
などがある。
【0042】
[3. 触媒層]
本発明に係る触媒層は、
本発明に係る燃料電池用電極触媒と、
触媒層アイオノマと
を備えている。
本発明に係る触媒層は、特に、空気極側の触媒層として好適であるが、燃料極側の触媒層として用いても良い。
【0043】
[3.1. 燃料電池用電極触媒]
本発明に係る触媒層は、本発明に係る燃料電池用電極触媒を含む。燃料電池用電極触媒の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0044】
[3.2. 触媒層アイオノマ]
本発明に係る触媒層において、触媒層アイオノマの材料は、特に限定されない。触媒層アイオノマとしては、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ、高酸素透過アイオノマなどがある。アイオノマは、これらのいずれか1種からなるものでも良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0045】
「パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマ」とは、フッ化スルホニルビニルエーテルモノマに基づく繰り返し単位を含む含フッ素イオン交換樹脂をいう。パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマとしては、例えば、ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)、アクイヴィオン(登録商標)、アシプレックス(登録商標)などがある。
【0046】
「高酸素透過アイオノマ」とは、その分子構造内に酸基及び環状構造を含む高分子化合物をいう。高酸素透過アイオノマは、その分子構造内に環状構造を含むために、酸素透過係数が高い。そのため、これをアイオノマとして用いた時に、触媒との界面における酸素移動抵抗が相対的に小さくなる。
換言すれば、「高酸素透過アイオノマ」とは、酸素透過係数がナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマよりも高いアイオノマをいう。
【0047】
高酸素透過アイオノマとしては、例えば、
(a)脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボンユニットと、パーフルオロスルホン酸を側鎖に持つ酸基ユニットとを含む電解質ポリマ、
(b)脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボンユニットと、パーフルオロイミドを側鎖に持つ酸基ユニットとを含む電解質ポリマ、
(c)脂肪族環構造を有するパーフルオロカーボンに直接、パーフルオロスルホン酸が結合したユニットを含む電解質ポリマ、
などがある(参考文献1~4参照)。
[参考文献1]特開2003-036856号公報
[参考文献2]国際公開第2012/088166号
[参考文献3]特開2013-216811号公報
[参考文献4]特開2006-152249号公報
【0048】
[4. メソポーラスシリカ(鋳型)の製造方法]
本発明に係るメソポーラスカーボンは、メソポーラスシリカを鋳型として用いて製造される。本発明に係るメソポーラスシリカの製造方法は、
シリカ源、界面活性剤及び触媒を含む反応溶液中において、前記シリカ源を縮重合させ、前駆体粒子を得る重合工程と、
前記反応溶液から前記前駆体粒子を分離し、乾燥させる乾燥工程と、
前記前駆体粒子を焼成し、メソポーラスシリカを得る焼成工程と
を備えている。
本発明に係るメソポーラスシリカの製造方法は、乾燥させた前駆体粒子に対して拡径処理を行う拡径工程をさらに備えていても良い。
【0049】
[4.1. 重合工程]
まず、シリカ源、界面活性剤及び触媒を含む反応溶液中において、前記シリカ源を縮重合させ、前駆体粒子を得る(重合工程)。
【0050】
[4.1.1. シリカ源]
本発明において、シリカ源の種類は、特に限定されない。シリカ源としては、例えば、
(a)テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、テトラエチレングリコキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、
(b)3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン類、
(c)ケイ酸ソーダ、カネマイト等のケイ酸塩類
などがある。シリカ源には、これらのいずれか1種を用いても良く、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0051】
[4.1.2. 界面活性剤]
シリカ源を反応溶液中で縮重合させる場合において、反応溶液に界面活性剤を添加すると、反応溶液中において界面活性剤がミセルを形成する。ミセルの周囲には親水基が集合しているため、ミセルの表面にはシリカ源が吸着する。さらに、シリカ源が吸着しているミセルが反応溶液中において自己組織化し、シリカ源が縮重合する。その結果、1次粒子内部には、ミセルに起因するメソ孔(直径が2nm以下のマイクロ孔を含む。以下、同じ。)が形成される。メソ孔の大きさは、主として、界面活性剤の分子長により制御(1~50nmまで)することができる。
【0052】
本発明において、界面活性剤の種類は特に限定されないが、界面活性剤には、アルキル4級アンモニウム塩を用いるのが好ましい。アルキル4級アンモニウム塩とは、次の(a)式で表される化合物をいう。
CH3-(CH2)n-N+(R1)(R2)(R3)X- ・・・(a)
【0053】
(a)式中、R1、R2、R3は、それぞれ、炭素数が1~3のアルキル基を表す。R1、R2、及び、R3は、互いに同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。アルキル4級アンモニウム塩同士の凝集(ミセルの形成)を容易化するためには、R1、R2、及び、R3は、すべて同一であることが好ましい。さらに、R1、R2、及び、R3の少なくとも1つは、メチル基が好ましく、すべてがメチル基であることが好ましい。
(a)式中、Xはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子の種類は特に限定されないが、入手の容易さからXは、Cl又はBrが好ましい。
【0054】
(a)式中、nは7~21の整数を表す。一般に、nが小さくなるほど、メソ孔の中心細孔径が小さい球状のメソ多孔体が得られる。一方、nが大きくなるほど、中心細孔径は大きくなるが、nが大きくなりすぎると、アルキル4級アンモニウム塩の疎水性相互作用が過剰となる。その結果、層状の化合物が生成し、メソ多孔体が得られない。nは、好ましくは、9~17、さらに好ましくは、13~17である。
【0055】
(a)式で表されるものの中でも、アルキルトリメチルアンモニウムハライドが好ましい。アルキルトリメチルアンモニウムハライドとしては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムハライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムハライド、ノニルトリメチルアンモニウムハライド、デシルトリメチルアンモニウムハライド、ウンデシルトリメチルアンモニウムハライド、ドデシルトリメチルアンモニウムハライド、テトラデシルアンモニウムハライド等がある。
これらの中でも、特に、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0056】
メソポーラスシリカを合成する場合において、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いても良く、あるいは、2種以上を用いても良い。しかしながら、アルキル4級アンモニウム塩は、1次粒子内にメソ孔を形成するためのテンプレートとなるので、その種類は、メソ孔の形状に大きな影響を与える。より均一なメソ孔を有するシリカ粒子を合成するためには、1種類のアルキル4級アンモニウム塩を用いるのが好ましい。
【0057】
[4.1.3. 触媒]
シリカ源を縮重合させる場合、通常、反応溶液中に触媒を加える。粒子状のメソポーラスシリカを合成する場合、触媒には、水酸化ナトリウム、アンモニア水等のアルカリを用いても良く、あるいは、塩酸等の酸を用いても良い。
【0058】
[4.1.4. 溶媒]
溶媒には、水、アルコールなどの有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒などを用いる。
アルコールは、
(1)メタノール、エタノール、プロパノール等の1価のアルコール、
(2)エチレングリコール等の2価のアルコール、
(3)グリセリン等の3価のアルコール、
のいずれでも良い。
【0059】
水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合、混合溶媒中の有機溶媒の含有量は、目的に応じて任意に選択することができる。一般に、溶媒中に適量の有機溶媒を添加すると、粒径や粒度分布の制御が容易化する。
さらに、水と有機溶媒の混合溶媒を用いる場合において、有機溶媒の含有量が5mass%以下である混合溶媒を用いると、耐フラッディング性に優れたメソポーラスカーボンを製造するためのメソポーラスシリカを低コストで製造することができる。
【0060】
[4.1.5. 反応溶液の組成]
反応溶液中の組成は、合成されるメソポーラスシリカの外形や細孔構造に影響を与える。特に、反応溶液中の界面活性剤の濃度、及びシリカ源の濃度は、メソポーラスシリカ粒子の1次粒子の平均粒径、細孔径、及び、細孔容量に与える影響が大きい。
【0061】
[A. 界面活性剤の濃度]
界面活性剤の濃度が低すぎると、粒子の析出速度が遅くなり、1次粒子が連結している構造体は得られない。従って、界面活性剤の濃度は、0.03mol/L以上である必要がある。界面活性剤の濃度は、好ましくは、0.035mol/L以上、さらに好ましくは、0.04mol/L以上である。
【0062】
一方、界面活性剤の濃度が高すぎると、粒子の析出速度が速くなりすぎ、1次粒子径が容易に300nmを超える。従って、界面活性剤の濃度は、1.0mol/L以下である必要がある。界面活性剤の濃度は、好ましくは、0.95mol/L以下、さらに好ましくは、0.90mol/L以下である。
【0063】
[B. シリカ源の濃度]
シリカ源の濃度が低すぎると、粒子の析出速度が遅くなり、1次粒子が連結している構造体は得られない。あるいは、界面活性剤が過剰となり、均一なメソ孔が得られない場合がある。従って、シリカ源の濃度は、0.05mol/L以上である必要がある。シリカ源の濃度は、好ましくは、0.06mol/L以上、さらに好ましくは、0.07mol/L以上である。
【0064】
一方、シリカ源の濃度が高すぎると、粒子の析出速度が速くなりすぎ、1次粒子径が容易に300nmを超える。あるいは、球状粒子ではなく、シート状の粒子が得られる場合がある。従って、シリカ源の濃度は、1.0mol/L以下である必要がある。シリカ源の濃度は、好ましくは、0.95mol/L以下、さらに好ましくは、0.9mol/L以下である。
【0065】
[C. 触媒の濃度]
本発明において、触媒の濃度は、特に限定されない。一般に、触媒の濃度が低すぎると、粒子の析出速度が遅くなる。一方、触媒の濃度が高すぎると、粒子の析出速度が速くなる。最適な触媒の濃度は、シリカ源の種類、界面活性剤の種類、目標とする物性値などに応じて最適な濃度を選択するのが好ましい。
例えば、触媒として酸を用いる場合、反応溶液のpHが9以下となるように、触媒の濃度を調整するのが好ましい。反応溶液のpHは、好ましくは、8.5以下、さらに好ましくは、5未満である。
一方、触媒としてアルカリを用いる場合、反応溶液のpHが7超となるように、触媒の濃度を調整するのが好ましい。
【0066】
[4.1.6 反応条件]
所定量の界面活性剤を含む溶媒中に、シリカ源を加え、加水分解及び重縮合を行う。これにより、界面活性剤がテンプレートとして機能し、シリカ及び界面活性剤を含む前駆体粒子が得られる。
反応条件は、シリカ源の種類、前駆体粒子の粒径等に応じて、最適な条件を選択する。一般に、反応温度は、-20~100℃が好ましい。反応温度は、好ましくは、0~100℃、さらに好ましくは、0~90℃、さらに好ましくは、10~80℃、さらに好ましくは、35~80℃である。
【0067】
[4.2. 乾燥工程]
次に、前記反応溶液から前記前駆体粒子を分離し、乾燥させる(乾燥工程)。
乾燥は、前駆体粒子内に残存している溶媒を除去するために行う。乾燥条件は、溶媒の除去が可能な限りにおいて、特に限定されるものではない。
【0068】
[4.3. 拡径処理]
次に、必要に応じて、乾燥させた前駆体粒子に対して拡径処理を行っても良い(拡径工程)。「拡径処理」とは、1次粒子内のメソ孔の直径を拡大させる処理をいう。
拡径処理は、具体的には、合成された前駆体粒子(界面活性剤の未除去のもの)を、拡径剤を含む溶液中で水熱処理することにより行う。この処理によって前駆体粒子の細孔径を拡大させることができる。
【0069】
拡径剤としては、例えば、
(a)トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、トリイソプロピルベンゼン、ナフタレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどの炭化水素、
(b)塩酸、硫酸、硝酸などの酸、
などがある。
【0070】
炭化水素共存下で水熱処理することにより細孔径が拡大するのは、拡径剤が溶媒から、より疎水性の高い前駆体粒子の細孔内に導入される際に、シリカの再配列が起こるためと考えられる。
また、塩酸などの酸共存下で水熱処理することにより細孔径が拡大するのは、1次粒子内部においてシリカの溶解・再析出が進行するためと考えられる。製造条件を最適化すると、シリカ内部に放射状細孔が形成される。これを酸共存下で水熱処理すると、シリカの溶解・再析出が起こり、放射状細孔が連通細孔に変換される。
【0071】
拡径処理の条件は、目的とする細孔径が得られる限りにおいて、特に限定されない。通常、反応溶液に対して、0.05mol/L~10mol/L程度の拡径剤を添加し、50~150℃で水熱処理するのが好ましい。
【0072】
[4.4. 焼成工程]
次に、必要に応じて拡径処理を行った後、前記前駆体粒子を焼成する(焼成工程)。これにより、本発明に係るメソポーラスシリカが得られる。
焼成は、OH基が残留している前駆体粒子を脱水・重合させるため、及び、メソ孔内に残存している界面活性剤を熱分解させるために行われる。焼成条件は、脱水・結晶化、及び界面活性剤の熱分解が可能な限りにおいて、特に限定されない。焼成は、通常、大気中において、400℃~800℃で1時間~10時間加熱することにより行われる。
【0073】
[5. メソポーラスカーボンの製造方法]
本発明に係るメソポーラスカーボンの製造方法は、
鋳型となるメソポーラスシリカを準備する第1工程と、
前記メソポーラスシリカのメソ孔内にカーボンを析出させ、メソポーラスシリカ/カーボン複合体を作製する第2工程と、
前記複合体からメソポーラスシリカを除去する第3工程と
を備えている。
メソポーラスカーボンの製造方法は、前記第3工程の後に、前記メソポーラスカーボンを1500℃より高い温度で熱処理する第4工程をさらに備えていても良い。
【0074】
[5.1. 第1工程(鋳型の作製)]
まず、鋳型となるメソポーラスシリカを作製する(第1工程)。メソポーラスシリカの製造方法の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0075】
[5.2. 第2工程(メソ孔内へのカーボン析出)]
次に、メソポーラスシリカのメソ孔内にカーボンを析出させ、メソポーラスシリカ/カーボン複合体を作製する(第2工程)。
メソ孔内へのカーボンの析出は、具体的には、
(a)メソ孔内にカーボン前駆体を導入し、
(b)メソ孔内において、カーボン前駆体を重合及び炭化させる
ことにより行われる。
【0076】
[5.2.1. カーボン前駆体の導入]
「カーボン前駆体」とは、熱分解によって炭素を生成可能なものをいう。このようなカーボン前駆体としては、具体的には、
(1) 常温で液体であり、かつ、熱重合性のポリマー前駆体(例えば、フルフリルアルコール、アニリン等)、
(2) 炭水化物の水溶液と酸の混合物(例えば、スクロース(ショ糖)、キシロース(木糖)、グルコース(ブドウ糖)などの単糖類、あるいは、二糖類、多糖類と、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの酸との混合物)、
(3) 2液硬化型のポリマー前駆体の混合物(例えば、フェノールとホルマリン等)、
などがある。
これらの中でも、ポリマー前駆体は、溶媒で希釈することなくメソ孔内に含浸させることができるので、相対的に少数回の含浸回数で、相対的に多量の炭素をメソ孔内に生成させることができる。また、重合開始剤が不要であり、取り扱いも容易であるという利点がある。
【0077】
液体又は溶液のカーボン前駆体を用いる場合、1回当たりの液体又は溶液の吸着量は、多いほど良く、メソ孔全体が液体又は溶液で満たされる量が好ましい。
また、カーボン前駆体として炭水化物の水溶液と酸の混合物を用いる場合、酸の量は、有機物を重合させることが可能な最小量とするのが好ましい。
さらに、カーボン前駆体として、2液硬化型のポリマー前駆体の混合物を用いる場合、その比率は、ポリマー前駆体の種類に応じて、最適な比率を選択する。
【0078】
[5.2.2. カーボン前駆体の重合及び炭化]
次に、重合させたカーボン前駆体をメソ孔内において炭化させる。
カーボン前駆体の炭化は、非酸化雰囲気中(例えば、不活性雰囲気中、真空中など)において、カーボン前駆体を含むメソポーラスシリカを所定温度に加熱することにより行う。加熱温度は、具体的には、500℃以上1200℃以下が好ましい。加熱温度が500℃未満であると、カーボン前駆体の炭化が不十分となる。一方、加熱温度が1200℃を超えると、シリカと炭素が反応するので好ましくない。加熱時間は、加熱温度に応じて、最適な時間を選択する。
【0079】
なお、メソ孔内に生成させる炭素量は、メソポーラスシリカを除去した時に、カーボン粒子が形状を維持できる量以上であればよい。従って、1回の充填、重合及び炭化で生成する炭素量が相対的に少ない場合には、これらの工程を複数回繰り返すのが好ましい。この場合、繰り返される各工程の条件は、それぞれ、同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。
また、充填、重合及び炭化の各工程を複数回繰り返す場合、各炭化工程は、相対的に低温で炭化処理を行い、最後の炭化処理が終了した後、さらにこれより高い温度で、再度、炭化処理を行っても良い。最後の炭化処理を、それ以前の炭化処理より高い温度で行うと、複数回に分けて細孔内に導入されたカーボンが一体化しやすくなる。
【0080】
[5.3. 第3工程(鋳型の除去)]
次に、複合体から鋳型であるメソポーラスシリカを除去する(第3工程)。これにより、メソポーラスカーボンが得られる。
メソポーラスシリカの除去方法としては、具体的には、
(1) 複合体を水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液中で加熱する方法、
(2) 複合体をフッ化水素酸水溶液でエッチングする方法、
などがある。
【0081】
[5.4. 第4工程(黒鉛化処理)]
次に、必要に応じて、メソポーラスカーボンを1500℃より高い温度で熱処理する(第4工程)。メソポーラスシリカのメソ孔内において炭素源を炭化させる場合において、シリカと炭素の反応を抑制するためには、熱処理温度を低くせざるを得ない。そのため、炭化処理後のカーボンの黒鉛化度は低い。高い黒鉛化度を得るためには、鋳型を除去した後、メソポーラスカーボンを高温で熱処理するのが好ましい。
【0082】
熱処理温度が低すぎると、黒鉛化が不十分となる。従って、熱処理温度は、1500℃超が好ましい。熱処理温度は、好ましくは、1700℃以上、さらに好ましくは、1800℃以上である。
一方、熱処理温度を必要以上に高くしても、効果に差がなく、実益がない。従って、熱処理温度は、2300℃以下が好ましい。熱処理温度は、好ましくは、2200℃以下である。
【0083】
[6. 作用]
メソポーラスカーボンの内部にある1次細孔の大きさは、通常、均一ではなく、場所によって異なっている。一般に、1次細孔の入口の大きさと、1次細孔の内部の大きさは異なっている。また、1次細孔の内部の大きさも均一ではなく、部分的にくびれている箇所がある。さらに、1次細孔の入口の大きさの平均値(平均入口径)及び1次細孔のくびれ部の大きさの平均値(平均くびれ径)は、いずれも、高温低加湿条件下におけるメソポーラスカーボンの保水性に影響を与える。
【0084】
そのため、1次細孔の平均入口径及び平均くびれ径が所定の範囲にあるメソポーラスカーボンを燃料電池用の触媒担体として用いると、高温低加湿条件下で発電を行った時に、生成水を有効に1次細孔内に滞留させることが可能になる。また、1次細孔内に滞留した生成水によりプロトンが触媒粒子表面に輸送されるために、1次細孔内の触媒粒子を有効に活用することも可能になる。その結果、燃料電池の高温低加湿性能が向上する。
【実施例0085】
(実施例1~6、比較例1)
[1. 試料の作製]
[1.1. メソポーラスシリカの作製]
[1.1.1. 実施例1]
界面活性剤であるn-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド[C16H33N(CH3)3Cl]:18gと、エタノール:13gを1.5mass%塩酸:650gに添加した。これを70℃で加熱・攪拌しながらさらに1号ケイ酸ソーダ(SiO2として27mass%、SiO2/Na2O=2.00):70gを添加し、3時間保持して縮重合反応を行った。得られた固形生成物を一旦濾別し、イオン交換水:1000gに分散させ攪拌した。洗浄としてこの濾別・分散攪拌を5回繰り返した後、洗浄された固体生成物を70℃で24時間乾燥させた。
乾燥させた試料を、2規定塩酸に分散後、密閉容器中、100℃で3日間加熱した。処理後の試料を濾過・洗浄・乾燥した後、固体生成物を空気存在下、550℃で6時間焼成することにより、メソポーラスシリカを得た。窒素吸着測定のBJH法により求めた、シリカのメソ細孔のピーク直径は、6.5nmであった。また、水銀圧入法により求めた、シリカのマクロ細孔のピーク直径は、0.20μmであった。
【0086】
[1.1.2. 実施例2]
界面活性剤であるn-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド[C16H33N(CH3)3Cl]:18gと、エタノール:13gを1.5mass%塩酸:650gに添加した。これを40℃で加熱・攪拌しながらさらに1号ケイ酸ソーダ(SiO2として27mass%、SiO2/Na2O=2.00):65gを添加し、3時間保持して縮重合反応を行った。得られた固形生成物を一旦濾別し、イオン交換水:1000gに分散させ攪拌した。洗浄としてこの濾別・分散攪拌を5回繰り返した後、洗浄された固体生成物を70℃で24時間乾燥させた。
乾燥させた試料を、2規定塩酸に分散後、密閉容器中、100℃で3日間加熱した。処理後の試料を濾過・洗浄・乾燥した後、固体生成物を空気存在下、550℃で6時間焼成することにより、メソポーラスシリカを得た。窒素吸着測定のBJH法により求めた、シリカのメソ細孔のピーク直径は、6.8nmであった。また、水銀圧入法により求めた、シリカのマクロ細孔のピーク直径は、0.25μmであった。
【0087】
[1.1.3. 実施例3]
界面活性剤であるn-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド[C16H33N(CH3)3Cl]:18gと、エタノール:13gを2mass%塩酸:470gに添加した。これを40℃で加熱・攪拌しながらさらに1号ケイ酸ソーダ(SiO2として27mass%、SiO2/Na2O=2.00):70gを添加し、3時間保持して縮重合反応を行った。得られた固形生成物を一旦濾別し、イオン交換水:1000gに分散させ攪拌した。洗浄としてこの濾別・分散攪拌を5回繰り返した後、洗浄された固体生成物を70℃で24時間乾燥させた。
乾燥させた試料を、2規定塩酸に分散後、密閉容器中、100℃で3日間加熱した。処理後の試料を濾過・洗浄・乾燥した後、固体生成物を空気存在下、550℃で6時間焼成することにより、メソポーラスシリカを得た。窒素吸着測定のBJH法により求めた、シリカのメソ細孔のピーク直径は、5.5nmであった。また、水銀圧入法により求めた、シリカのマクロ細孔のピーク直径は、0.23μmであった。
【0088】
[1.1.4. 実施例4]
界面活性剤であるn-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド[C16H33N(CH3)3Cl]:17gと、エタノール:12gを1.5mass%塩酸:650gに添加した。これを60℃で加熱・攪拌しながらさらに1号ケイ酸ソーダ(SiO2として27mass%、SiO2/Na2O=2.00):70gを添加し、3時間保持して縮重合反応を行った。得られた固形生成物を一旦濾別し、イオン交換水:1000gに分散させ攪拌した。洗浄としてこの濾別・分散攪拌を5回繰り返した後、洗浄された固体生成物を70℃で24時間乾燥させた。
乾燥させた試料を、2規定塩酸に分散後、密閉容器中、100℃で3日間加熱した。処理後の試料を濾過・洗浄・乾燥した後、固体生成物を空気存在下、550℃で6時間焼成することにより、メソポーラスシリカを得た。窒素吸着測定のBJH法により求めた、シリカのメソ細孔のピーク直径は、7.2nmであった。また、水銀圧入法により求めた、シリカのマクロ細孔のピーク直径は、0.26μmであった。
【0089】
[1.1.5. 実施例5]
界面活性剤であるn-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド[C16H33N(CH3)3Cl]:18gと、エタノール:13gを2mass%塩酸:470gに添加した。これを60℃で加熱・攪拌しながらさらに1号ケイ酸ソーダ(SiO2として27mass%、SiO2/Na2O=2.00):70gを添加し、3時間保持して縮重合反応を行った。得られた固形生成物を一旦濾別し、イオン交換水:1000gに分散させ攪拌した。洗浄としてこの濾別・分散攪拌を5回繰り返した後、洗浄された固体生成物を70℃で24時間乾燥させた。
乾燥させた試料を、2規定塩酸に分散後、密閉容器中、100℃で3日間加熱した。処理後の試料を濾過・洗浄・乾燥した後、固体生成物を空気存在下、550℃で6時間焼成することにより、メソポーラスシリカを得た。窒素吸着測定のBJH法により求めた、シリカのメソ細孔のピーク直径は、7.8nmであった。また、水銀圧入法により求めた、シリカのマクロ孔のピーク直径は、0.25μmであった。
【0090】
[1.1.6. 実施例6]
所定量の界面活性剤及び1規定水酸化ナトリウムを、所定量の水、メタノール、及びエチレングリコール(EG)を含む混合溶媒に添加し、第1溶液を得た。これとは別に、所定量のテトラエトキシシラン(TEOS)を、所定量のメタノール及びEGを含む混合溶媒に添加し、第2溶液を得た。表1に、溶液の仕込み量を示す。
【0091】
【0092】
第1溶液に第2溶液を添加したところ、しばらくしてから溶液が白濁し、粒子が合成できたことが確認できた。8時間室温で攪拌後、濾過し、残渣を水に再分散した。再び濾過後、残渣を45℃のオーブンで乾燥させた。乾燥した試料を、2規定硫酸に分散後、オートクレーブ中、120℃で3日間加熱した。オートクレーブ処理後の試料を濾過・洗浄した後、試料を550℃で6時間焼成することにより、有機成分を除去し、メソポーラスシリカを得た。窒素吸着測定のBJH法により求めた、シリカのメソ細孔のピーク直径は、5.2nmであった。また、水銀圧入法により求めた、シリカのマクロ細孔のピーク直径は、0.22μmであった。
【0093】
[1.2. カーボン担体の作製]
[1.2.1. 実施例1~6]
PFA製容器にメソポーラスシリカを入れ、フルフリルアルコール(FA)を細孔容量分だけ加えて、シリカの細孔内に浸透させた。これを150℃×18h熱処理することにより、FAを重合させた。さらに、これを窒素雰囲気中で500℃×6h熱処理し、FAの炭素化を進めた。これを2回繰り返した後、窒素雰囲気中で900℃×6h熱処理して、メソポーラスシリカ/カーボン複合体を得た。
この複合体を12%HF溶液に12h浸漬し、シリカ成分を溶解した。溶解後、ろ過、洗浄を繰り返し、さらに45℃で乾燥して、メソポーラスカーボンを得た。さらに、乾燥させたメソポーラスカーボンに対し、1800℃で1時間加熱する処理(黒鉛化処理)を行った。
【0094】
[1.2.2. 比較例1]
市販の中空(メソポーラス)カーボン(比較例1)をそのままカーボン担体として用いた。
【0095】
[1.3. 燃料電池の作製]
上述のようにして得られたカーボン担体にPtを担持した。Pt担持量は、40mass%とした。これを用いて、空気極触媒層を作製した。空気極側のPt目付量は、0.15mg/cm2とした。また、空気極触媒層のI/Cは、1.0とした。
また、Pt担持量が30mass%である市販の白金担持カーボンを用いて、燃料極触媒層を作製した。燃料極側のPt目付量は、0.1mg/cm2とした。また、燃料極触媒層のI/Cは、0.75とした。さらに、空気極触媒層及び燃料極触媒層のいずれも、触媒層アイオノマには、フッ素系固体高分子電解質を用いた。
【0096】
電解質膜の両面に、それぞれ、空気極触媒層及び燃料極側触媒層を転写し、MEAを得た。電解質膜には、フッ素系固体高分子電解質膜を用いた。
MEAを1cm2用角セルに組み付けた。さらに、MEAの両側に、拡散層及び集電体を配置した。拡散層には、カーボンペーパ(マイクロポーラスレイヤ付)を用いた。集電体には、流路一体型金メッキ銅板(流路:0.4mmピッチの直線流路)を用いた。
【0097】
[2. 試験方法]
[2.1. 3次元透過型電子顕微鏡観察]
カーボン担体の3次元透過型電子顕微鏡(3DTEM)観察を行った。さらに、得られた3DTEM像を用いて、1次細孔の平均入口径及び平均くびれ径を算出した。
【0098】
[2.2. 平均孔径]
カーボン担体について、窒素吸着等温線を測定した。窒素吸着等温線の吸着側データをBJH法で解析し、細孔容量が最大となるときの細孔径(最頻出ピーク値)を求めた。
【0099】
[2.3. 高温低加湿電圧]
以下の手順に従い、高温低加湿電圧を求めた。すなわち、MEA、拡散層、流路を組み付けた発電セルを105℃に加熱保持し、空気極に加湿した空気、水素極に加湿した水素を流し、発電試験を行った。空気極ストイキは1.25、水素極ストイキは1.5とした。空気極、水素極の相対湿度は30%とした。
【0100】
[2.4. 効率点電圧]
「効率点電圧」とは、セル温度:80℃、相対湿度:30%の条件下で測定した、電流密度:0.2A/cm2での電圧をいう。
以下の手順に従い、効率点電圧を求めた。すなわち、MEA、拡散層、流路を組み付けた発電セルを、80℃に保持し、空気極に加湿した空気、水素極に加湿した水素を流し、発電試験を行った。空気極ストイキは1.25、水素極ストイキは1.5とした。空気極、水素極の相対湿度は30%とした。
【0101】
[3. 結果]
[3.1. 3次元透過型電子顕微鏡観察]
図1に、実施例1で得られたメソポーラスカーボンの3次元画像(右下図)及び細孔構造の模式図(左上図)を示す。
図2に、比較例1で得られたメソポーラスカーボンの3次元画像(右下図)及び細孔構造の模式図(左上図)を示す。
図1~
図2より、カーボン担体内の内部にある細孔の大きさは一様ではなく、多数のくびれ部を有していることが分かる。また、くびれ部の大きさも一様ではなく、部位によってくびれ部の大きさが異なっていることが分かる。
【0102】
[3.2. 細孔径及び発電性能]
表2に、カーボン担体の平均入口径、平均くびれ径及び平均孔径、並びに、固体高分子形燃料電池の高温低加湿電圧及び効率点電圧を示す。
図3に、平均入口径と高温低加湿電圧との関係を示す。
図4に、平均入口径と効率点電圧との関係を示す。
図5に、平均くびれ径と高温低加湿電圧との関係を示す。
図6に、平均くびれ径と効率点電圧との関係を示す。表2及び
図3~
図6より、以下のことが分かる。
【0103】
【0104】
(1)比較例1は、特許文献1に記載の材料と同等の材料である。比較例1は、高温低加湿電圧が低い。これは、平均入口径が3.0nmを超えており、かつ、平均くびれ径が2.4nmを超えているために、高温低加湿条件下において1次細孔内に生成水が滞留しにくいためと考えられる。
(2)実施例1~6は、いずれも、高温低加湿電圧が高い。これは、平均入口径及び平均くびれ径が適切な範囲にあるためと考えられる。
【0105】
(3)比較例1は、効率点電圧が低い。これは、入口径、くびれ径が大きいことにより、発電時の生成水が保持されにくいためと考えられる。
(4)実施例1~6は、いずれも、効率点電圧が高い。これは、入口径、くびれ径が小さいことにより、発電時の生成水が保持されやすいためと考えられる。
【0106】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。