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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137126
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20230922BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20230922BHJP
   C08J 3/215 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
C08L69/00
C08J3/215 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043163
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】横山 知成
【テーマコード(参考)】
4F070
4F401
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA50
4F070AB11
4F070AB26
4F070AC40
4F070AE03
4F070AE17
4F070FA03
4F070FA12
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC06
4F401AA23
4F401AB01
4F401AB06
4F401AB07
4F401AB10
4F401AD08
4F401AD20
4F401BA13
4F401CA14
4F401CA23
4F401CA25
4F401CA30
4F401CA34
4F401CA48
4F401CB18
4F401CB32
4F401FA01Y
4F401FA02Y
4F401FA10X
4J002CG011
4J002GC00
4J002GG01
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】 ポリカーボネート樹脂を含むリサイクル品等のポリカーボネート樹脂を含む成形品を用いて得られる樹脂組成物であって、透明性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物の製造方法の提供。
【解決手段】 (1)ポリカーボネート樹脂を含む成形品の破砕品を溶融し、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを通過させたポリカーボネート樹脂材料(A)を、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つにより処理し、金属含有量を低減したポリカーボネート樹脂材料(B)を得ること、(2)前記ポリカーボネート樹脂材料(B)と他の成分を押出機に投入して溶融混練を行うこと、を含む、樹脂組成物の製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリカーボネート樹脂を含む成形品の破砕品を溶融し、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを通過させたポリカーボネート樹脂材料(A)を、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つにより処理し、金属含有量を低減したポリカーボネート樹脂材料(B)を得ること、
(2)前記ポリカーボネート樹脂材料(B)と他の成分を押出機に投入して溶融混練を行うこと、
を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(2)において、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを備えた押出機を用いることを含む、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記(2)における他の成分が、バージンポリカーボネート樹脂を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記ポリカーボネート樹脂材料(B)が無機充填剤およびポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を実質的に含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記(1)において、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも2つにより処理することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物の製造方法に関する。特に、ポリカーボネート樹脂のリサイクル品を用いた樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリカーボネート樹脂を種々の成形品に成形することが行われている。一方で、近年、資源の再利用が強く要求されるようになっており、ポリカーボネート樹脂をリサイクルすることについても、検討されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-131507号公報
【特許文献2】国際公開第2005/077515号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の方法は、生産性等の観点で問題が多い。従って、新たなポリカーボネート樹脂のリサイクル方法が求められる。特に、生産安定性に優れたポリカーボネート樹脂のリサイクル方法が求められる。
また、ポリカーボネート樹脂のリサイクル品には、通常、樹脂添加剤等のポリカーボネート樹脂以外の成分が含まれている。そのためポリカーボネート樹脂のリサイクル品から得られる樹脂組成物の成形品は透明性に劣る場合がある。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリカーボネート樹脂を含むリサイクル品等のポリカーボネート樹脂を含む成形品を用いて得られる樹脂組成物であって、生産安定性および透明性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと本発明者が検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂のリサイクル品等をポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを通過させたポリカーボネート樹脂材料について、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つによる処理を所定のタイミングで行うことにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>(1)ポリカーボネート樹脂を含む成形品の破砕品を溶融し、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを通過させたポリカーボネート樹脂材料(A)を、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つにより処理し、金属含有量を低減したポリカーボネート樹脂材料(B)を得ること、
(2)前記ポリカーボネート樹脂材料(B)と他の成分を押出機に投入して溶融混練を行うこと、
を含む、樹脂組成物の製造方法。
<2>前記(2)において、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを備えた押出機を用いることを含む、<1>に記載の樹脂組成物の製造方法。
<3>前記(2)における他の成分が、バージンポリカーボネート樹脂を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物の製造方法。
<4>前記ポリカーボネート樹脂材料(B)が無機充填剤およびポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を実質的に含まない、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
<5>前記(1)において、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも2つにより処理することを含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ポリカーボネート樹脂を含むリサイクル品等のポリカーボネート樹脂を含む成形品を用いて得られる樹脂組成物であって、透明性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物の製造方法を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0008】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、(1)ポリカーボネート樹脂を含む成形品の破砕品を溶融し、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを通過させたポリカーボネート樹脂材料(A)を、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つにより処理し、金属含有量を低減したポリカーボネート樹脂材料(B)を得ること、(2)前記ポリカーボネート樹脂材料(B)と他の成分を押出機に投入して溶融混練を行うこと、を含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、透明性に優れた成形品を得ることが可能な樹脂組成物が得られる。
さらに、生産安定性に優れた樹脂組成物が得られる。また、異物量が低減された樹脂組成物が得られる。さらにまた、金属異物量が低減された樹脂組成物が得られる。
加えて、本実施形態の製造方法で得られる樹脂組成物から成形された成形品は、引張破断伸びにも優れたものが得られる。
以下、本実施形態の樹脂組成物の製造方法について詳細に説明する。
【0009】
<工程(1)>
本実施形態においては、(1)ポリカーボネート樹脂を含む成形品の破砕品を溶融し、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを通過させたポリカーボネート樹脂材料(A)を用いる。
ポリカーボネート樹脂を含む成形品の破砕品とは、バージンのポリカーボネート樹脂または非バージンのポリカーボネート樹脂に対し何かしらの成形加工を施された後のものの破砕品を意味する。ポリカーボネート樹脂を含む成形品の破砕品には、ポリカーボネート樹脂のリサイクル品(回収品)、不合格品、ポリカーボネート樹脂成形の際の端材などが含まれる。成形品は、射出成形品、押出品、その他の方法によって加工を施された成形品であってもよい。このようなポリカーボネート樹脂を含む成形品の破砕品には、通常、樹脂添加剤等のポリカーボネート樹脂以外の成分が含まれている。特に、ポリカーボネート樹脂を含む成形品には、金属異物を含む異物が多く含まれているケースもある。本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂を含む成形品の破砕品を溶融し、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを通過させたポリカーボネート樹脂材料(A)を用いることにより、金属異物を含む異物を減らすことができる。また、異物とはなり得ない成分も、新しく得られる成形品の透明性には悪影響を及ぼし得る。本実施形態の製造方法においては、このような成分も除去できる。
【0010】
破砕品のサイズは特に定めるものでは無いが、例えば、破砕品の50質量%以上、さらには70質量%以上、特には90質量%以上について、最も長い部位が、20.0mm以下であることが好ましく、10.0mm以下であることがより好ましく、また、1.0mm以上であることが好ましく、5.0mm以上であることがより好ましい。
破砕品は、粉砕品であることが好ましい。
【0011】
破砕品の溶融とは、通常は、ポリカーボネート樹脂が溶融している状態を意味し、破砕品に含まれるすべての成分が溶融していることを意味するものではない。
破砕品の溶融は、例えば、押出機に投入して行うことができる。また、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュの通過は、押出機の出口付近に、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを設けることによって行うことができる。
得られるポリカーボネート樹脂材料(A)の形態の一例は、ペレットである。
上記方法により得られたポリカーボネート樹脂材料(A)は、異物がある程度除去されたものとなる。
【0012】
ポリマーフィルターとは、溶融したポリマーをろ過するものであり、具体的には、リーフディスクフィルターやキャンドルフィルターが例示される。
ポリマーフィルターの平均孔径は、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、前記下限値以上とすることにより、過剰な樹脂圧力を生じさせないため、生産性が向上する傾向にある。また、ポリマーフィルターの平均孔径は、200μm以下であることが好ましく、190μm以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、より微細な異物を除去することができる傾向にある。
また、スクリーンメッシュは、銅メッシュやSUS(ステンレス鋼)メッシュなどが例示される。スクリーンメッシュの目開きは、20μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、前記下限値以上とすることにより、過剰な樹脂圧力を生じさせないため、生産性が向上する傾向にある。また、スクリーンメッシュの目開きは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、より微細な異物を除去することができる傾向にある。
【0013】
本実施形態においては、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュの通過は、いずれか一方のみを通過させてもよいし、両方を通過させてもよい。さらには、ポリマーフィルターのみを2回以上通過させてもよいし、スクリーンメッシュのみを2回以上通過させてもよい。さらには、これらを組み合わせて通過させてもよい。ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュについて、合計で2回以上通過させる場合、平均孔径または目開きの大きいものから順に通過させるとよい。
本実施形態においては、前記破砕品の溶融物について、少なくとも1回スクリーンメッシュおよび/またはポリマーフィルターを通過させることが好ましく、少なくとも1回スクリーンメッシュを通過させることがより好ましい。
【0014】
一方、ポリカーボネート樹脂材料(A)に含まれるポリカーボネート樹脂としては、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OC(=O)]-単位(Rが、有機基、好ましくは炭化水素基、より好ましくは、脂肪族基、芳香族基、または、脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されない。本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート樹脂がより好ましい。このようなポリカーボネート樹脂を用いることにより、より優れた耐熱性と靱性が達成される。本実施形態においては、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート樹脂は、全構成単位の90モル%以上がビスフェノール骨格を有する構成単位であることが好ましく、全構成単位の90モル%以上がビスフェノールA由来の構成単位であることがより好ましい。
【0015】
また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは12,000以上であり、さらに好ましくは14,000以上である。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の耐久性がより向上する傾向にある。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、50,000以下であることが好ましく、より好ましくは40,000以下であり、さらに好ましくは30,000以下である。前記上限値以下とすることにより、成形品の成形加工性がより向上する傾向にある。
粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4×Mv0.83、から算出される値を意味する。
2種以上のポリカーボネート樹脂を用いる場合は、混合物の粘度平均分子量とする。
【0016】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。また、溶融法を用いた場合には、末端基のOH基量を調整したポリカーボネート樹脂を使用することができる。
【0017】
上記の他、ポリカーボネート樹脂の詳細は、特開2021-084942号公報の段落0013~0041の記載、特開2021-119211号公報の段落0030~0035を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0018】
ポリカーボネート樹脂材料(A)に含まれるポリカーボネート樹脂の量は、ポリカーボネート樹脂材料(A)中、10質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であってもよい。前記ポリカーボネート樹脂材料(A)に含まれるポリカーボネート樹脂は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0019】
また、上述の通り、上記ポリカーボネート樹脂材料(A)には、強化材や樹脂添加剤等のその他の成分が含まれている場合がある。
強化材の詳細は、特開2022-011052号公報の段落0056~段落0061の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ポリカーボネート樹脂材料(A)に含まれる強化繊維の量は、ポリカーボネート樹脂材料(A)中、50質量%以下であることが好ましく、実質的に含まない構成であってもよい。実質的に含まないとは、例えば、意図的に配合されていない場合を意味し、通常、ポリカーボネート樹脂材料(A)の3質量%以下である。
また、樹脂添加剤としては、安定剤、離型剤、難燃剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが例示される。これらの合計量は、ポリカーボネート樹脂材料(A)に含まれるポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0.1質量部以上、10質量部未満であることが好ましい。
本実施形態においては、樹脂添加剤は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0020】
本実施形態においては、破砕品に含まれるポリカーボネート樹脂は、通常、ポリカーボネート樹脂材料(A)に含まれるポリカーボネート樹脂と同じである。また、本実施形態においては、破砕品に含まれるその他の成分は、通常、ポリカーボネート樹脂材料(A)に含まれる他の成分と同じである。しかしながら、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを通過させることにより、その一部の成分が取り除かれる。
【0021】
次に、本実施形態の製造方法は、ポリカーボネート樹脂材料(A)を、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つにより処理し、金属含有量を低減したポリカーボネート樹脂材料(B)を得ることを含む。マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つにより処理することにより、ポリカーボネート樹脂材料(A)中の金属含有量を低減することができる。マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機によって主に低減される金属は、主に、鉄、銅、アルニウム、SUS等である。特に、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを通過させた後のポリカーボネート樹脂材料(A)に対して、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つにより処理することにより、ポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュでは除去できなかった金属異物や、より後の工程、例えば冷却、ペレタイズ、包装などにおいて混入した金属異物を除去することができる。
マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機は、いずれか1つの処理のみを行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせて行ってもよい。本実施形態においては、(1)において、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも2つにより処理することが好ましく、マグネットバー、および、金属検知機を含む、少なくとも2つにより処理されることがより好ましい。少なくとも2つにより処理することにより、より微細な金属異物を、高い補足率で除去することができる。
ポリカーボネート樹脂材料(A)に対するマグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つにより処理は、例えば、ペレット状のポリカーボネート樹脂材料(A)に対して、これらの処理を行うとよい。
【0022】
本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂材料(B)に含まれるポリカーボネート樹脂は、通常、ポリカーボネート樹脂材料(A)に含まれるポリカーボネート樹脂と同じである。また、本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂材料(B)に含まれるその他の成分は、通常、ポリカーボネート樹脂材料(A)に含まれる他の成分と同じである。しかしながら、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つにより処理により、その一部の成分が取り除かれる。
【0023】
本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂材料(B)が無機充填剤およびポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、ポリカーボネート樹脂材料(B)に含まれる無機充填剤およびポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂の含有量が、ポリカーボネート樹脂材料(B)の総量の5質量%以下であることをいい、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、検出限界以下であることが一層好ましい。
【0024】
<工程(2)>
次いで、本実施形態の製造方法は、(2)前記ポリカーボネート樹脂材料(B)と他の成分を押出機に投入して溶融混練してポリカーボネート樹脂材料(C)を得ることを含む。ポリカーボネート樹脂材料(A)を、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つにより処理したポリカーボネート樹脂材料(B)と他の成分を押出機に投入して溶融混練を行うにより、透明性に優れた樹脂組成物が得られる。
【0025】
他の成分としては、ポリカーボネート樹脂、樹脂添加剤が例示される。本実施形態においては、少なくとも、ポリカーボネート樹脂を添加することが好ましい。
また、他の成分として添加されるポリカーボネート樹脂としては、バージンポリカーボネート樹脂であっても、非バージンポリカーボネート樹脂であってもよいが、バージンポリカーボネート樹脂を含むことが好ましい。
また、他の成分としてのポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは12,000以上であり、さらに好ましくは15,000以上である。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の耐久性がより向上する傾向にある。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、50,000以下であることが好ましく、より好ましくは40,000以下であり、さらに好ましくは30,000以下である。前記上限値以下とすることにより、成形品の成形加工性がより向上する傾向にある。
【0026】
上記ポリカーボネート樹脂の詳細は、特開2022-008175号公報の段落0010~段落0052の記載、特開2022-28718号公報の段落0016~段落0043の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0027】
本実施形態においては、他の成分として添加されるポリカーボネート樹脂の量は、ポリカーボネート樹脂材料(B)と他の成分として添加されるポリカーボネート樹脂の総量100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、また、250質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましく、95質量部以下であることが一層好ましく、90質量部以下であることがより一層好ましく、60質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、35質量部以下であってもよい。
本実施形態においては、他の成分として添加されるポリカーボネート樹脂は1種のみ投入してもよいし、2種以上投入してもよい。2種以上投入する場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
一方、樹脂添加剤としては、反応性化合物、安定剤、離型剤、難燃剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが例示される。これらの合計量は、ポリカーボネート樹脂材料(B)および前記他の成分として配合されるポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0.1質量部以上、10質量部未満であることが好ましい。
本実施形態においては、樹脂添加剤は1種のみ投入してもよいし、2種以上投入してもよい。2種以上投入する場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0029】
一方、溶融混練は、樹脂組成物の一般的な溶融混練方法に従って行うことができる。例えば、ポリカーボネート樹脂材料(B)、他の成分を溶融混練することによって得られる。一部の成分は、ポリカーボネート樹脂でマスターバッチ化して配合してもよい。この時のポリカーボネート樹脂は、バージンのポリカーボネート樹脂または非バージンのポリカーボネート樹脂であり、バージンのポリカーボネート樹脂であることが好ましい。また、ポリカーボネート樹脂材料(B)を用いてマスターバッチ化してもよい。
【0030】
押出機には、各成分をあらかじめ混合して一度に供給してもよいし、各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給してもよい。押出機は、一軸押出機であっても、二軸押出機であってもよい。
また、強化繊維(特に、ガラス繊維)を配合する場合、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することが好ましい。
溶融混練に際しての加熱温度は、ポリカーボネート樹脂の溶融温度を考慮して定められるが、通常、170~350℃の範囲から適宜選ぶことができる。
押出機から押し出された材料(以下、「ポリカーボネート樹脂材料(C)」ということがある)は、そのまま成形してもよいし、一旦、ペレット化してもよい。本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂材料(C)を一旦ペレット化することが好ましい。
【0031】
本実施形態の製造方法は、また、押出機がポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを備えていることが好ましい。すなわち、ポリカーボネート樹脂材料(B)と他の成分を押出機で溶融混練した後、押出機がポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュを通過させることが好ましい。このような構成とすることにより、金属成分に由来する異物および非金属成分に由来する異物を除去することができる。
ポリマーフィルターおよびスクリーンメッシュの通過の詳細は、前記(1)におけるポリマーフィルターおよび/またはスクリーンメッシュの通過と同じである。但し、前記(1)におけるポリマーフィルターの平均孔径およびスクリーンメッシュの目開きよりも、大きいものを用いることが好ましい。このような構成とすることにより、樹脂圧力の過剰な上昇を防ぎ、生産性を向上させることができる。
【0032】
本実施形態の製造方法においては、さらに、ポリカーボネート樹脂材料(B)と他の成分を溶融混練した後の樹脂組成物(ポリカーボネート樹脂材料(C))について、マグネットバー、マグネットロールセパレーター、および、金属検知機の少なくとも1つにより処理を行ってもよい。
【0033】
本実施形態の製造方法によって得られる樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を含む。前記樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の総量は、80質量%であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが一層好ましく、97質量%以上であることがより一層好ましく、99質量%以上であることがさらに一層好ましい。また、得られる樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂成分100質量部中、ポリカーボネート樹脂を含む成形品の破砕品由来のポリカーボネート樹脂の割合は、40質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であってもよく、75質量部以上であってもよく、また、100質量部以下であってもよい。
さらに、上述した樹脂添加剤を含んでいてもよい。
【0034】
上記した樹脂組成物(例えば、ペレット)は、各種の成形法で成形して、新たな成形品とされる。新たな成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、ボタン状のもの等が挙げられる。
【0035】
新たな成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。特に、本実施形態の樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法で得られる成形品に適している。しかしながら、本実施形態の製造方法で得られる樹脂組成物がこれらの方法で得られた成形品に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0036】
本実施形態における新たな成形品は、電気電子機器/部品、OA機器/部品、情報端末機器/部品、機械部品、家電製品、車輌部品、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器などに好ましく用いられる。
【実施例0037】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0038】
1.原料
以下の原料を用いた。
【表1】
【0039】
2.実施例1~4
<工程(1)>
表1に示す回収ポリカーボネート樹脂(粉砕品)を、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX65α」)を使用し、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数350rpmの条件で溶融混練し、押出機の出口に取り付けた表2に示す工程(1)-1の目開きを有するメッシュ/またはポリマーフィルターを通過させた後、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ペレット状のポリカーボネート樹脂材料(A)得た。
得られたペレット状のポリカーボネート樹脂材料(A)を、表2の工程(1)-2に示すとおり、マグネットバー、マグネットロールセパレーター(MRS)、および、金属検知機のいずれか1つ以上で処理した。表2において、「適用」はその処理を行ったことを意味し、「非適用」はその処理を行っていないことを意味する(表3も同じ)。各処理は、行う場合、マグネットバー、マグネットロールセパレーター(MRS)、および、金属検知機の順に行った。すなわち、実施例1では、マグネットバーの処理を行った後、MRSの処理を行わず、金属検知機の処理を行っている。また、マグネットバーは、定格10000ガウスの格子状マグネットバーを、MRSは(株)ダイカ製DDR500 磁力定格9000ガウスを、金属検知機は雑賀技術研究所 MHD2-40を用いた。このようにして、異物量を低減したポリカーボネート樹脂材料(B)を得た。
【0040】
<工程(2)>
次いで、得られたポリカーボネート樹脂材料(B)と、表2に示す他の成分について、表2に示す割合となるように(表2は、質量部で示す。表3も同じ。)、タンブラーミキサーで均一に混合した後、表2に示す目開きを有するメッシュを有する二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)を使用し、溶融混練後、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ペレット状のポリカーボネート樹脂材料(C)を得た。
【0041】
<生産安定性>
工程(2)における生産安定性を2段階で評価した。
A:安定的な連続生産が可能であり、生産安定性が良好である。
B:安定的な連続生産が不可能であり、生産安定性が不良である。
安定的な連続生産が不可能とは、生産中に異物によるメッシュの閉塞やストランド断線などが生じていることを示している。
【0042】
<異物>
上記で得られたペレット状のポリカーボネート樹脂材料(C)25gを用い、2mm厚さのプレスシートを作製し、拡大鏡を使用して非異物の数と大きさを確認した。最大長が200μm以上の異物と、51~199μmの異物をそれぞれカウントした。
同じ操作を4回繰り返し、ペレット100g当たりの異物の個数を算出した。
【0043】
<引張破断伸び>
上記で得られたペレット状のポリカーボネート樹脂材料(C)を120℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所社製射出成形機「J80ADS」(型締め力80T)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で、ISO多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO527に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用いて、引張破断伸び(単位:%)を測定した。
【0044】
<ヘイズ(Haze)>
上記で得られたペレット状のポリカーボネート樹脂材料(C)を120℃で4時間乾燥した後、射出成形機により、シリンダー温度280℃、金型温度80℃で、厚さが3mmプレートを成形し、Haze(単位:%)を、濁度計を用いて測定した。
射出成形機は、住友重機械工業社製「SE-50DUZ」を、濁度計は、日本電色工業社製「NDH-2000型」を用いた。
【0045】
<金属異物>
上記で得られたペレット状のポリカーボネート樹脂材料(C)1kgをアルミのバットに敷き、10000ガウスの棒磁石をペレットに触れさせて、金属異物、および、金属異物を内包したペレットを検出し、目視で金属異物の数と大きさを確認した。最大長が200μm以上の金属異物をカウントした。
【0046】
比較例1
実施例1において、表3に示す通り変更し、他は同様に行った。具体的には、実施例1において、<工程(1)>を行わず、回収ポリカーボネート樹脂の破砕品について、<工程(2)>を行った。
【0047】
比較例2
実施例1において、表3に示す通り変更し、他は同様に行った。具体的には、回収ポリカーボネート樹脂の粉砕品そのままを、表3の工程(1)-2に示すとおり、マグネットバー、および、金属検知機で処理した。その後、<工程(2)>を行った。
【0048】
比較例3
実施例1において、表3に示す通り変更し、他は同様に行った。具体的には、表1に示す回収ポリカーボネート樹脂(粉砕品)を、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX65α」)を使用し、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数350rpmの条件で溶融混練し、押出機の出口に取り付けた表3に示す工程(1)-1の目開きを有するメッシュを通過させた後、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ペレット状のポリカーボネート樹脂材料(A)得た。
得られたポリカーボネート樹脂材料(A)について、<工程(2)>を行った。
【0049】
比較例4
実施例1において、表3に示す通り変更し、他は同様に行った。具体的には、上記<工程(1)>を行い、上記<工程(2)>を行わなかった。
【0050】
比較例5
実施例1において、表3に示す通り変更し、かつ、工程(1)-1と工程(1)-2を逆に行った。
すなわち、表1に示す回収ポリカーボネート樹脂(粉砕品)について、表3の工程(1)-2に示すとおり、マグネットバー、および、金属検知機の処理を行った。
その後、処理済みの回収ポリカーボネート樹脂(粉砕品)を、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX65α」)を使用し、溶融混練し、押出機の出口に取り付けた表3に示す工程(1)-1の目開きを有するメッシュを通過させた後、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ペレット状のポリカーボネート樹脂材料を得た。
【0051】
得られたペレット状のポリカーボネート樹脂材料に、表3に示す他の成分について、表3に示す割合となるように、タンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)を使用し、溶融混練後、水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、ペレット状のポリカーボネート樹脂材料(C)を得た。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
本発明の製造方法で得られた樹脂組成物(ペレット)は生産安定性に優れ、透明性に優れていた。さらに、金属異物を含む異物も少なかった。さらに、引張破断伸びにも優れた成形品を提供可能な樹脂組成物(ペレット)が得られた。
これに対し、比較例1および2は、工程(1)-1を経ない為、工程(2)にて、過剰な異物によってメッシュ詰まりを生じて生産が安定しない場合があった。比較例3は工程(1)-2を経ないため、製品への金属異物の残留が生じた。比較例4は工程(2)を得ない為、金属異物が多かった。比較例5は工程(1)-1と工程(1)-2の順序を入れ変えたものであるが、金属異物が多かった。結果として、生産安定性および透明性の少なくとも1つの性能に劣り、さらに、金属異物を含む異物が多かったり、引張破断伸びが低かったりした。