(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023137132
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置、情報処理方法、シャワーシステム及び学習モデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20230922BHJP
A47K 3/28 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
A61H33/00 D
A61H33/00 T
A47K3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043172
(22)【出願日】2022-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】幸前 康章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦夫
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 俊幸
【テーマコード(参考)】
2D132
4C094
【Fターム(参考)】
2D132FA17
2D132FB02
2D132FC01
2D132FC04
2D132FD01
2D132FH01
2D132FH11
2D132FJ01
2D132FJ11
2D132FJ32
2D132FJ34
2D132FJ35
2D132FK01
4C094AA01
4C094FF02
4C094FF09
4C094FF15
4C094GG03
(57)【要約】
【課題】自律神経の調整を支援するシャワー浴に関する情報を提供することができるプログラム等を提供する。
【解決手段】プログラムは、ユーザの自律神経に関する情報を取得し、取得した前記自律神経に関する情報に応じて、高温温水と低温温水とを切り替えて吐出するシャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含むシャワー装置に対する設定情報を導出し、導出したシャワー装置に対する設定情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの自律神経に関する情報を取得し、
取得した前記自律神経に関する情報に応じて、高温温水と低温温水とを切り替えて吐出するシャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含むシャワー装置に対する設定情報を導出し、
導出したシャワー装置に対する設定情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記ユーザの生体情報を取得し、
取得した前記生体情報に基づき前記自律神経に関する情報を生成する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記ユーザの心拍、血圧、体温又は皮膚血流量の少なくとも1つを含む生体情報に基づき前記自律神経に関する情報を生成する
請求項1又は請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記ユーザからの温冷浴を通じた自律神経の目標状態に対するユーザ設定を前記自律神経に関する情報として取得し、
取得したユーザ設定に応じて前記設定情報を導出する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記ユーザの生体情報に基づき生成される前記自律神経に関する情報と、前記ユーザからの温冷浴を通じた自律神経の目標状態に対するユーザ設定とに基づき、前記設定情報を導出する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記自律神経に関する情報及び前記ユーザ設定に対応付けて複数種の設定を記憶したテーブルを用いて、前記設定情報を導出する
請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
ユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定を入力した場合にシャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含む設定情報を出力するよう学習されたモデルに、ユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定を入力して、前記設定情報を導出する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
設定情報に従い温冷浴を行ったユーザの温冷浴後における自律神経に関する情報を取得し、
取得した前記ユーザの温冷浴後における自律神経に関する情報、ユーザの温冷前における自律神経に関する情報、自律神経の目標状態に対するユーザ設定、及び設定情報に基づき、前記モデルを学習する
請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
温冷浴前後における前記ユーザの生体情報及び温冷浴を通じた自律神経の目標状態に対するユーザ設定を取得し、
取得した前記ユーザの生体情報及びユーザ設定を記憶装置に記憶する
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項10】
疲労度又は自律神経のバランスを軸とするグラフを出力し、
出力した前記グラフを通じて、前記ユーザからの温冷浴を通じた自律神経の目標状態に対するユーザ設定を取得する
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項11】
疲労度及び自律神経のバランスを軸とするグラフを出力し、
前記ユーザの生体情報に応じた温冷浴前における前記ユーザの疲労度及び自律神経のバランスを前記グラフ上に対応付けて出力し、
出力した前記グラフを通じて、前記ユーザからの温冷浴を通じた自律神経の目標状態に対するユーザ設定を取得する
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
温冷浴後における前記ユーザの生体情報に応じた温冷浴後における前記ユーザの疲労度及び自律神経のバランス状態を取得し、
取得した温冷浴後における前記ユーザの疲労度及び自律神経のバランス状態を前記グラフ上に対応付けて出力する
請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記ユーザの生体情報に基づき生成される温冷浴前における前記ユーザの交感神経及び副交感神経についての周波数に対するパワーの変化を示す第1グラフと、交感神経及び副交感神経についての周波数に対するパワーの変化を示す複数の推奨グラフとを出力し、
出力した前記複数の推奨グラフに対する前記ユーザからの選択を受け付けることにより、前記ユーザからの温冷浴を通じた自律神経の目標状態に対するユーザ設定を取得する
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項14】
温冷浴後における前記ユーザの生体情報に基づき温冷浴後における前記ユーザの交感神経及び副交感神経についての周波数に対するパワーの変化を示す第2グラフを生成し、
生成した前記第2グラフを出力する
請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
ユーザの自律神経に関する情報を取得し、
取得した前記自律神経に関する情報に応じて、高温温水と低温温水とを切り替えて吐出するシャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含むシャワー装置に対する設定情報を導出し、
導出したシャワー装置に対する設定情報を出力する
処理を実行する制御部を備える
情報処理装置。
【請求項16】
ユーザの自律神経に関する情報を取得し、
取得した前記自律神経に関する情報に応じて、高温温水と低温温水とを切り替えて吐出するシャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含むシャワー装置に対する設定情報を導出し、
導出したシャワー装置に対する設定情報を出力する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項17】
情報処理装置と、シャワー装置とを備え、
前記情報処理装置は、
ユーザの自律神経に関する情報を取得し、
取得した前記自律神経に関する情報に応じて、高温温水と低温温水とを切り替えて吐出するシャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含むシャワー装置に対する設定情報を導出し、
導出したシャワー装置に対する設定情報を出力する
処理を実行する制御部を備え、
前記シャワー装置は、
高温温水と低温温水とを切り替えて吐出する足元用シャワーノズルと、
高温温水を吐出する全身用シャワーノズルと、
出力された前記設定情報に基づく温度及び切り替えタイミングで、前記足元用シャワーノズルから高温温水及び低温温水を切り替えて吐出し、前記全身用シャワーノズルから高温温水を吐出するよう制御する制御装置とを備える
シャワーシステム。
【請求項18】
ユーザの自律神経に関する情報と、自律神経の目標状態に対するユーザ設定と、シャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含む設定情報とを含む訓練データを取得し、
前記訓練データに基づき、ユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定を入力した場合にシャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含む設定情報を出力するよう学習された学習モデルを生成する
学習モデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理装置、情報処理方法、シャワーシステム及び学習モデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱源で加熱した温水をシャワーノズルなどから吐出させるシャワー装置が広く使用されている。
【0003】
特許文献1には、人体の前面に温水を噴射する前面シャワーノズルと、人体の後面に水を噴射する後面シャワーノズルと、前記後面シャワーノズルから温水と冷水を交互に噴射させる回路とを備えるシャワー装置が開示されている。特許文献1には、前方から前面シャワーノズルにより温水を浴び、後方から後面シャワーノズルにより温水と冷水を交互に浴びることで、皮膚の血行を促進できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシャワー装置は、皮膚の血行促進に着目した技術であり、自律神経の調整を支援するシャワー浴に関する情報を提供するという観点については考慮されていない。
【0006】
本開示の主な目的は、自律神経の調整を支援するシャワー浴に関する情報を提供することができるプログラム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るプログラムは、プログラムは、ユーザの自律神経に関する情報を取得し、取得した前記自律神経に関する情報に応じて、高温温水と低温温水とを切り替えて吐出するシャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含むシャワー装置に対する設定情報を導出し、導出したシャワー装置に対する設定情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【0008】
本開示の一態様に係るシャワーシステムは、情報処理装置と、シャワー装置とを備え、前記情報処理装置は、ユーザの自律神経に関する情報を取得し、取得した前記自律神経に関する情報に応じて、高温温水と低温温水とを切り替えて吐出するシャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含むシャワー装置に対する設定情報を導出し、導出したシャワー装置に対する設定情報を出力する処理を実行する制御部を備え、前記シャワー装置は、高温温水と低温温水とを切り替えて吐出する足元用シャワーノズルと、高温温水を吐出する全身用シャワーノズルと、出力された前記設定情報に基づく温度及び切り替えタイミングで、前記足元用シャワーノズルから高温温水及び低温温水を切り替えて吐出し、前記全身用シャワーノズルから高温温水を吐出するよう制御する制御装置とを備える。
【0009】
本開示の一態様に係る学習モデルの生成方法は、ユーザの自律神経に関する情報と、自律神経の目標状態に対するユーザ設定と、シャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含む設定情報とを含む訓練データを取得し、前記訓練データに基づき、ユーザの自
律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定を入力した場合にシャワー装置における温度及び切り替えタイミングを含む設定情報を出力するよう学習された学習モデルを生成する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、自律神経の調整を支援するシャワー浴に関する情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態のシャワーシステムSの概要図である。
【
図2】第1実施形態のシャワー装置の一例を示す側面図である。
【
図3】第1実施形態のシャワー装置の一例を示す正面図である。
【
図4】第1実施形態のシャワー装置の一例を示す構成図である。
【
図5】情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】履歴情報DBに記憶される情報の内容例を示す図である。
【
図7】ユーザ端末の構成例を示すブロック図である。
【
図9】設定受付用の画面の一例を示す模式図である。
【
図10】設定情報を示す画面の一例を示す模式図である。
【
図11】温冷浴後の情報を示す画面の一例を示す模式図である。
【
図12】設定受付用の画面の他の一例を示す模式図である。
【
図13】設定情報の生成に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】温冷浴後における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図15】第2実施形態のモデルの概要を説明する説明図である。
【
図16】第3実施形態におけるシャワー装置の一例を示す側面図である。
【
図17】第4実施形態のシャワー装置の一例を示す構成図である。
【
図18】第5実施形態のシャワー装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のシャワーシステムSの概要図である。シャワーシステムSは、シャワー装置1、情報処理装置3、ユーザ端末4、及び生体センサ5を備える。各機器は、ネットワークNを介して通信可能に接続されており、データの送受信が可能である。ネットワークNは複数のネットワークを含んでもよい。
【0013】
シャワー装置1は、例えばユーザの居宅内にある浴室に設けられている。ユーザは、シャワー装置1を用いて、高温温水と低温温水とを交互に浴びる温冷浴を行うことができる。シャワー装置1は、通信機能を有する制御ユニット11を備え、制御ユニット11とユーザ端末4との間でデータを送受信することにより、温冷浴に係る湯水の吐出に関する各種設定を取得する。シャワー装置1は、取得した設定に応じて高温温水と低温温水とを切り替えて吐出する。
【0014】
情報処理装置3は、種々の情報処理、情報の送受信が可能な装置であり、例えばサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、又は量子コンピュータ等である。ユーザ端末4は、例えばスマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等の情報処理端末であり、通信により情報処理装置3及びシャワー装置1との間でデータを送受信可能である。
【0015】
生体センサ5は、ユーザの生体情報を検出する検出装置である。本実施形態において、生体センサ5は、ウェアラブルデバイスに設けられる心拍センサであり、ウェアラブルデ
バイスを装着するユーザの心拍を所定間隔で検出する。生体センサ5は、検出結果をユーザ端末4へ出力する。生体センサ5は、血圧センサ、温度センサ、レーザセンサ(脈波センサ)、イメージセンサなどを含んでもよい。生体センサ5は、複数種類のセンサを含んでもよい。生体センサ5は、ユーザの居宅内の壁面、天井、ベッドなどに設けられていてもよい。
【0016】
生体センサ5により検出される生体情報としては、例えば心拍、脳血流量、瞳孔の状態、気管の状態、血圧、冠状動脈血流量、膀胱壁の状態、膀胱括約筋の状態、消化液の分泌状態、胃腸活動の状態、立毛筋の状態、皮膚血流量、汗腺の状態、体温などの情報が挙げられる。
【0017】
温冷浴とは、温度の異なる高温温水と低温温水とを交互に浴びるシャワー浴を意味する。一例として、高温温水の温度は40℃前後、低温温水の温度は30℃前後とすることができる。このような温冷浴は、ユーザの自律神経に影響を及ぼすことが期待される。
【0018】
シャワーシステムSでは、情報処理装置3により、所望の自律神経の状態に近づけるための温冷浴の条件(シャワー装置の設定条件)を示す設定情報が生成される。設定情報は、生体センサ5から得られるユーザの生体情報又は自律神経の状態に対するユーザの目標に基づいて生成される。情報処理装置3は、ユーザ端末4を通じて設定情報をユーザへ提供することで、温冷浴を通じてユーザの自律神経の状態を整えるためのサポートを行う。
【0019】
図2は、第1実施形態のシャワー装置1の一例を示す側面図である。
図3は、第1実施形態のシャワー装置1の一例を示す正面図である。シャワー装置1は、浴室の壁面に取り付けられる水栓本体10を備える。水栓本体10は、吐出口としての足元用シャワーノズル12、全身用シャワーノズル13、及びハンドシャワー14を備える。
【0020】
水栓本体10は、本体の外郭をなす筐体15を備えている。筐体15は、箱形状の部材である。水栓本体10は、不図示の給湯器に連通する給湯管71と、水道管に連通する給水管72とにそれぞれ接続されている。水栓本体10は、給湯管71から供給された湯及び給水管72から供給された冷水を混合し、所定温度に調整する混合水栓である。水栓本体10で混合された湯水は、吐出口から吐出される。
【0021】
上述の通り、シャワー装置1は複数の吐出口を備えている。本実施形態において、足元用シャワーノズル12及び全身用シャワーノズル13は、特に温冷浴のためのシャワーとして好適に使用され、ハンドシャワー14は、通常のシャワー浴のためのシャワーとして好適に使用される。
図2では、ユーザが着座した状態で温冷浴を行う場合を例示している。水栓本体10は、浴室の壁面において、水栓本体10に正対するユーザの上半身の高さの位置に配置されている。なお温冷浴は、着座した状態で行われるものに限らず、立位状態で行われてもよい。
【0022】
足元用シャワーノズル12及び全身用シャワーノズル13は、浴室内において異なる高さに配置されており、ユーザに対する吐水範囲を異ならせる。足元用シャワーノズル12は、全身用シャワーノズル13よりも下方に設けられている。第1実施形態では、一例として、筐体15の底面下側に足元用シャワーノズル12が設けられ、筐体15の天面上側に、全身用シャワーノズル13が設けられている。なお
図1~2に示す水栓本体10の構造は一例であり、例えば足元用シャワーノズル12及び全身用シャワーノズル13は、並列に配置されてもよい。
【0023】
足元用シャワーノズル12は、湯水を吐出する吐出孔を水平方向又は水平方向やや下方に向けて設置されており、水平成分を含む方向又は水平成分を含む方向よりも下方に向け
て湯水を吐出する。足元用シャワーノズル12は、主に水栓本体10に正対するユーザの足元又は足から下に向けて湯水を吐出する。
図2に示す例では、足元用シャワーノズル12は、ユーザの両足を広くカバーすべく水平方向に並べて配置された2つのノズルを備えている。足元用シャワーノズル12は、高温温水と低温温水とを適宜切り替えて吐出することができる。
【0024】
全身用シャワーノズル13は、吐出孔を水平方向に向けて設置されており、水平成分を含む方向に向けて湯水を吐出する。全身用シャワーノズル13は、主にユーザの身体に向けて湯水を吐出する。
図2に示す例では、全身用シャワーノズル13は、ユーザの全身を広くカバーすべく水平方向に並べて配置された複数のノズルを備えている。全身用シャワーノズル13は、高温温水を吐出する。
【0025】
なお足元用シャワーノズル12及び全身用シャワーノズル13は、湯水を吐出する方向を変更可能であってもよい。足元用シャワーノズル12及び全身用シャワーノズル13は、水栓本体10に直接的に取り付けられるものに限られず、例えば水栓本体10に設けられる支持体又は浴室の壁面等に固定されていてもよい。足元用シャワーノズル12及び全身用シャワーノズル13は、高さ方向の位置を調整可能に構成されてもよい。
【0026】
ハンドシャワー14は、湯水を吐出するシャワーヘッドが可撓性のホースに接続されており、ユーザが手に持って使用可能である。ユーザは、シャワーヘッドを手に持ってホースの可動範囲内で動かすことで、任意の位置で湯水を吐出させることができる。ハンドシャワー14は、浴室壁面に設けられたシャワーホルダーに対して着脱自在に保持された状態で使用されてもよい。ハンドシャワー14は、高温温水を吐出する。ハンドシャワー14は、省略可能である。
【0027】
ユーザは、足元用シャワーノズル12を利用して、高温温水と低温温水とを交互に浴びる温冷浴を行うことができる。またユーザは、足元用シャワーノズル12の使用時に、全身用シャワーノズル13又はハンドシャワー14を利用して、心臓周辺を含む上半身などの身体に高温温水を浴びることができる。複数のシャワーを用いることで、心臓周辺を過度に冷やすことなく、好適な温冷浴が可能となる。なお足元用シャワーノズル12の使用対象は足元に限らず、例えば手、下半身全体など、温冷浴に適した身体部位であればよい。
【0028】
図3に示すように、水栓本体10の一方の側面には、流調ハンドル16及び切替ハンドル17が設けられている。流調ハンドル16の回動操作を行うことにより、流量調整を行うことができる。切替ハンドル17の回動操作を行うことにより、全身用シャワーノズル13及びハンドシャワー14を切り替えることができる。
【0029】
水栓本体10の他方の側面には、上下に並ぶ2つの温調ハンドル18が設けられている。温調ハンドル18の回動操作を行うことにより、温度調整を行うことができる。上側の温調ハンドル18は、高温側の温水、すなわち高温温水に対応する温調ハンドルである。下側の温調ハンドル18は、低温側の温水、すなわち低温温水に対応する温調ハンドルである。2つの温調ハンドル18により、高温温水及び低温温水に対し独立して温度調整が可能である。
【0030】
水栓本体10の前面には、各種操作を受け付けるための操作部19が設けられている。ユーザは、操作部19を通じて、シャワー装置1に対する各種操作が可能である。操作部19は、温冷浴を行うための温冷浴ボタン191を備えている。温冷浴ボタン191を押下することにより、足元用シャワーノズル12から高温温水及び低温温水を吐出させることができる。操作部19は、足元用シャワーノズル12からの高温温水及び低温温水の流
量調整を行うためのボタンなどを備えていてもよい。なお
図3ではハンドシャワー14の図示を省略している。
【0031】
水栓本体10の筐体15内部には、シャワー装置1の動作を制御する制御ユニット11、第1温度調整部211、第2温度調整部212(
図4参照)などが収容されている。
【0032】
図4は、第1実施形態のシャワー装置1の一例を示す構成図である。
図4に示すように、シャワー装置1は、制御ユニット11、第1温度調整部211及び第2温度調整部212を備える。制御ユニット11は、図示を省略する制御部としてのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、通信モジュール等を備え、シャワー装置1の動作を制御する。制御ユニット11には、電池等の電源装置22が接続されている。
【0033】
給湯管71及び給水管72はそれぞれ、第1温度調整部211及び第2温度調整部212へ接続されている。第1温度調整部211及び第2温度調整部212は、湯と水とを混合して、所定の温度に調整した湯水を吐水する。第1温度調整部211及び第2温度調整部212は、例えばサーモスタットを用いることができる。サーモスタットは、サーモカートリッジなどの混合弁を備え、湯と水との混合量を変更することで、温水の温度を調整する。なお第1温度調整部211及び第2温度調整部212はそれぞれ、給湯管71及び給水管72のいずれか一方が接続され、湯又は水が供給される構成であってもよい。
【0034】
第1温度調整部211は、高温温水用の温調ハンドル18の操作に応じて、温水の温度を高温温水用の第1温度に調整する。第1温度調整部211により調整された温水は高温温水に対応する。第2温度調整部212は、低温温水用の温調ハンドル18の操作に応じて、温水の温度を低温温水用の第2温度に調整する。第2温度調整部212により調整された温水は低温温水に対応する。シャワー装置1は、3つ以上の温度調整部を備えてもよい。
【0035】
第1温度調整部211に接続する配管231は、開閉弁241を介して切換弁244に接続され、切換弁244を介して分岐し、全身用シャワーノズル13及びハンドシャワー14に連結されている。第2温度調整部212に接続する配管232は、開閉弁242を介して足元用シャワーノズル12に連結されている。第1温度調整部211に接続する配管231と、第2温度調整部212に接続する配管232とは、開閉弁241及び開閉弁242の下流において分岐し、配管233により連結されている。配管233の中途に開閉弁243が設けられている。
【0036】
開閉弁241~243は、例えばソレノイドを用いた電磁弁を用いることができる。開閉弁241~243は、モータを用いた電動弁であってもよい。開閉弁241~243は、制御ユニット11に電気的に接続されている。制御ユニット11の制御部は、開閉弁241~243の開閉を制御する。制御部は、通信モジュールを通じてユーザ端末4から高温温水と低温温水との切り替えに関する設定情報を受信し、受信した設定情報に従い開閉弁241~243を開閉する。
【0037】
開閉弁241を開操作し、開閉弁242及び開閉弁243を交互に開閉することで、足元用シャワーノズル12への高温温水と低温温水との供給を切り替えることができる。開閉弁241を開操作し、切換弁244が切り替えられることで、全身用シャワーノズル13又はハンドシャワー14へ択一的に高温温水が供給される。制御ユニット11及び開閉弁241~243は、切替部として機能する。
【0038】
開閉弁241が開状態、開閉弁242が閉状態、開閉弁243が開状態であり、切換弁244が全身用シャワーノズル13方向へ切り替えられた場合、足元用シャワーノズル1
2及び全身用シャワーノズル13から高温温水が吐出される。開閉弁241が開状態、開閉弁242が開状態、開閉弁243が閉状態であり、切換弁244が全身用シャワーノズル13方向へ切り替えられた場合、足元用シャワーノズル12から低温温水が吐出され、全身用シャワーノズル13から高温温水が吐出される。なお切換弁244の切り替えを1つ増やす、あるいは別途切換弁を設けてカランへの吐水が出来るようにしてもよい。
【0039】
なお第1温度調整部211及び第2温度調整部212は、例えば制御ユニット11から設定温度を受け付け、受け付けた設定温度に応じて温度調整を行うよう構成されてもよい。
【0040】
図5は、情報処理装置3の構成例を示すブロック図である。情報処理装置3は、制御部31、記憶部32及び通信部33を備える。情報処理装置3は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよく、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよく、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0041】
制御部31は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等を用いたプロセッサを備える。制御部31は、内蔵するROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリ、クロック、カウンタ等を用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0042】
記憶部32は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを備える。記憶部32は、情報処理装置3に接続された外部記憶装置であってもよい。記憶部32は、制御部31が参照するプログラム及びデータを記憶する。記憶部32に記憶されるプログラムには、設定情報の生成に関する処理をコンピュータに実行させるためのプログラム3Pが含まれる。
【0043】
記憶部32に記憶されるプログラム(プログラム製品)は、記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でもよい。記憶部32は、読出装置によって記録媒体3Aから読み出されたプログラムを記憶する。記録媒体3Aは、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等である。また、通信ネットワークに接続されている外部サーバからプログラムをダウンロードし、記憶部32に記憶させてもよい。プログラム3Pは、単一のコンピュータプログラムでも複数のコンピュータプログラムにより構成されるものでもよく、また、単一のコンピュータ上で実行されても通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されてもよい。
【0044】
記憶部32にはまた、モデル321、履歴情報DB(Data Base :データベース)322が記憶されている。モデル321は、設定情報の導出に用いられる。履歴情報DB322は、温冷浴の履歴情報を蓄積するデータベースである。
【0045】
通信部33は、インターネット等のネットワークNを介して外部装置と通信するための通信モジュールを備える。制御部31は、通信部33を介してユーザ端末4との間でデータを送受信する。
【0046】
情報処理装置3の構成は上述の例に限定されず、例えばユーザの操作を受け付けるための操作部、各種情報を表示するための表示部等を備えてもよい。
【0047】
図6は、履歴情報DB322に記憶される情報の内容例を示す図である。履歴情報DB322には、例えば履歴情報を識別するためのIDをキーに、温冷浴を行ったユーザのユーザID、生体情報、ユーザ設定及び設定情報等の情報を紐付けたレコードが格納されている。
【0048】
生体情報は、生体センサ5を通じて検出された生体情報であり、例えば心拍データが含まれる。生体情報は、温冷浴前及び温冷浴後それぞれにおける生体情報を含んでよい。履歴情報DB322は、生体情報に基づく自律神経に関する情報を含んでもよい。自律神経に関する情報の詳細については後述する。
【0049】
ユーザ設定は、ユーザから受け付けた温冷浴に対する設定であり、温冷浴後の自律神経の目標状態に対する設定を示す情報が含まれる。温冷浴後の自律神経の目標状態は、例えば温冷浴の目標に応じて予め複数種に分類されている。自律神経の目標状態は、一例として、リラックス状態を希望する場合の「リラックス」と、集中力の向上など活動的な状態を希望する場合の「活力」とを含む。
【0050】
設定情報は、温冷浴時におけるシャワー装置1の設定に関する情報である。設定情報は、シャワー装置1における温度と、切り替えタイミングとを含む。温度は、高温温水の温度と低温温水の温度とを含む。切り替えタイミングは、高温温水の吐出時間及び低温温水の吐出時間と、サイクル数とを含む。
【0051】
図7は、ユーザ端末4の構成例を示すブロック図である。ユーザ端末4は、制御部41、記憶部42、通信部43、表示部44及び操作部45を備える。
【0052】
制御部41は、一又は複数のCPU、GPU等を用いたプロセッサを備える。制御部41は、内蔵するROM又はRAM等のメモリ、クロック、カウンタ等を用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0053】
記憶部42は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ、SSD等の不揮発性メモリを備える。記憶部42は、制御部41が参照するプログラム及びデータを記憶する。記憶部42に記憶されるプログラムには、設定情報の取得に関する処理をコンピュータに実行させるためのプログラム4Pが含まれる。記憶部42に記憶されるプログラム(プログラム製品)は、記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でもよい。記憶部42は、読出装置によって記録媒体4Aから読み出されたプログラムを記憶する。また、通信ネットワークに接続されている外部サーバからプログラムをダウンロードし、記憶部42に記憶させてもよい。
【0054】
通信部43は、通信に関する処理を行うための一又は複数の通信モジュールを備える。制御部41は、通信部43を通じて、情報処理装置3、シャワー装置1の制御ユニット11、及び生体センサ5それぞれとの間でネットワークNを介してデータを送受信する。通信部43は、近距離無線通信等の通信プロトコルにより通信を行うための通信モジュールを備え、近距離無線通信によりデータを送受信するものであってもよい。
【0055】
表示部44は、例えば液晶ディスプレイ又は有機EL(electroluminescence )ディスプレイ等のディスプレイ装置を備える。表示部44は、制御部41からの指示に従って各種の情報を表示する。操作部45は、ユーザの操作を受け付けるインタフェースである。操作部45は、例えばキーボード、ディスプレイ内蔵のタッチパネルデバイス、スピーカ及びマイクロフォン等を備える。操作部45は、ユーザからの操作入力を受け付け、操作内容に応じた制御信号を制御部41へ送出する。
【0056】
上述のように構成されるシャワーシステムSにおいて、情報処理装置3からユーザ端末4へと温冷浴のためのシャワー装置1における設定情報が提供される。以下、設定情報の生成方法について詳述する。本実施形態において、ユーザは、シャワーシステムSの利用に際し、ユーザ端末4を用いて所定の初期設定登録を行う。初期設定登録により、予めユ
ーザに対して発行されているアカウント情報に対応させたユーザ情報の登録や、ユーザ端末4とシャワー装置1及び生体センサ5とのペアリングなどが行なわれる。
【0057】
情報処理装置3は、ユーザの自律神経に関する情報に基づきシャワー装置1における設定情報を出力するモデル321を用いて、設定情報を導出する。
【0058】
ユーザの自律神経に関する情報は、ユーザの温冷浴前の自律神経の状態を示す情報と、温冷浴を通じた自律神経の目標状態を示す情報とを含む。
【0059】
温冷浴前の自律神経の状態は、ユーザの温冷浴前の生体情報に基づき生成される。温冷浴前の自律神経の状態は、例えば自律神経のバランスを含む。自律神経のバランスとは、交感神経と副交感神経とのバランスである。一般的に、ストレスを感じる状態にある場合には交感神経が優位となり、リラックス状態にある場合には副交感神経が優位となることが知られている。
【0060】
交感神経と副交感神経とのバランスは、ユーザの心拍データのパワースペクトル解析により得られる高周波(HF:Hi Frequency)成分と低周波(LF:Low Frequency)成分との比(LF/HF)で示すことができる。HF成分は、副交感神経の活動度の指標であり、LF成分は交感神経の活動度の指標である。LF/HFはストレス指標に対応し、LF/HFが大きい程、ストレス度合いが高いことを意味する。
【0061】
LF/HFの算出方法は公知であり詳細な説明は省略するが、所定時間にわたる心拍データに基づき、心拍の変動時系列データ(RRI:R -R Interval)を取得し、取得した心拍の変動時系列データを用いてパワースペクトルを計算し、HF成分とLF成分とを抽出することで求められる。HF成分の応答スペクトルの積分値に対するLF成分の応答スペクトルの積分値の値がLF/HFとなる。温冷浴前の自律神経の状態は、交感神経及び副交感神経についてのパワースペクトルで示されてもよい。
【0062】
温冷浴前の自律神経の状態は、疲労度を含んでもよい。疲労度は、例えば自律神経パワー(トータルパワー値)であってもよく、心拍変動(HRV:Heart Rate Variability)であってもよい。トータルパワー値は、自律神経全体の機能を示す値であり、HF成分の応答スペクトルの積分値とLF成分の応答スペクトルの積分値とを合計した値である。トータルパワー値が大きい程、疲労度が小さくリラックスと活力の切替ができるメリハリのある状態であり、トータルパワー値が小さい程、疲労度合いが高いことを意味する。
【0063】
HRVは、心臓の1拍ごとに拍動の長さの変化を示す値であり、RRIに基づき求めることができる。HRVを示すパラメータとしては、例えばSDNN、rMSSD、CVRRなどを用いてよい。各パラメータの算出方法は公知であるため説明を省略する。HRVが小さい程、疲労度合いが高いことを意味する。
【0064】
情報処理装置3は、ユーザ端末4を通じて、温冷浴前に生体センサ5により検出された心拍データを取得し、取得した心拍データに基づき、上記LF/HF及び疲労度を含むユーザの温冷浴前の自律神経の状態を導出する。情報処理装置3は、温冷浴前の自律神経の状態として、交感神経及び副交感神経についてのスペクトルデータを導出してもよい。
【0065】
情報処理装置3は、生体情報として心拍データに代えて又は心拍データに加えて他の生体データを用いて、温冷浴前の自律神経の状態を導出してもよい。温冷浴前の自律神経の状態の導出においては、以下の生体情報の特徴を考慮することができる。交感神経が優位にある場合には、脳血流量の減少、瞳孔の拡大、心臓の拍動の促進、気管の弛緩、血圧の上昇、冠状動脈血流量の減少、膀胱壁の拡張、膀胱括約筋の収縮、消化液分泌の抑制、胃
腸活動の抑制、立毛筋の収縮、皮膚血流量の減少、汗腺の拡大、体温の低下などが現れる。副交感神経が優位にある場合には、脳血流量の増加、瞳孔の収縮、心臓の拍動の抑制、気管の収縮、血圧の低下、冠状動脈血流量の増加、膀胱壁の収縮、膀胱括約筋の拡張、消化液分泌の促進、胃腸活動の促進、体温の上昇などが現れる。
【0066】
なお情報処理装置3は、生体情報に基づき温冷浴前の自律神経の状態を導出するものに限らず、例えば、ユーザ端末4を通じて温冷浴前の自律神経の状態に対するユーザからの入力又は選択を受け付けることにより、温冷浴前の自律神経の状態を取得してもよい。
【0067】
情報処理装置3は、機械学習の手法を用いて温冷浴前の自律神経の状態を推定してもよい。情報処理装置3は、心拍、血圧、体温及び皮膚血流量の少なくとも1つを入力した場合に温冷浴前の自律神経の状態を示す情報を出力する学習モデルを予め作成して記憶部32に記憶しておき、この学習モデルにより各種生体情報に応じた温冷浴前の自律神経の状態を生成してもよい。
【0068】
情報処理装置3は、LF/HFや疲労度の値に応じて、温冷浴前の自律神経の状態を複数種類に分類してもよい。温冷浴前の自律神経の状態は、一例として、LF/HFが予め設定される閾値以上である場合の「疲労困憊」と、LF/HFが予め設定される閾値未満である場合の「眠たい」とに分類される。
【0069】
温冷浴を通じた自律神経の目標状態は、ユーザ端末4を通じて自律神経の目標状態に対するユーザ設定を受け付けることにより取得される。本実施形態では、一例としてLF/HF又は疲労度の値に応じて分類される複数種の自律神経の目標状態(目標モード)を予め用意し、用意された目標モードに対するユーザ設定を受け付ける。本実施形態における自律神経の目標状態は、一例として「リラックス」と「活力」とを含む。自律神経の目標状態はその他、「リフレッシュ」、「疲労回復」、「活動」、「集中力」などを含んでもよい。ユーザは、温冷浴の目的に応じた自律神経の目標状態をユーザ設定として選択することができる。ユーザ設定は、目標モードを設定するものに限らず、LF/HFや疲労度に対する目標値を設定するものであってもよい。
【0070】
第1実施形態のモデル321は、判定テーブル323を用いて設定情報を導出する。
図8は、判定テーブル323の一例を示す図である。
図8に示すように、判定テーブル323は、温冷浴前の自律神経の状態及び自律神経の目標状態の組み合わせと、設定情報とを対応付けてテーブル形式で記憶している。設定情報は、高温温水及び低温温水の温度及び吐出時間と、サイクル数とを含む。
【0071】
一例として、温冷浴後に活動的な状態を希望する場合には、交感神経を優位にするよう、高温温水と低温温水との温度差が比較的大きくなるよう設定される。温冷浴後にリラックスした状態を希望する場合には、副交感神経を優位にするよう、高温温水と低温温水との温度差が比較的小さくなるよう設定される。また温冷浴前の状態がより疲労度が高い場合には、比較的吐出時間が長く、サイクル数が多くなるよう設定される。情報処理装置3は、判定テーブル323を用いて、温冷浴前の自律神経の状態及び自律神経の目標状態に応じた設定情報を特定する。情報処理装置3は、設定内容の異なる複数の判定テーブル323を用意し、各判定テーブル323の適用対象となるユーザ情報を対応付けて記憶していてもよい。
【0072】
なお情報処理装置3は、ユーザの自律神経に関する情報として、自律神経の目標状態を示す情報のみを用いて設定情報を導出してもよい。この場合、情報処理装置3は、自律神経の目標状態に対するユーザ設定のみを取得する。情報処理装置3は、自律神経の目標状態と設定情報とを対応付けた判定テーブル323を用いて、取得したユーザ設定に応じた
設定情報を特定してよい。情報処理装置3は、ユーザの自律神経に関する情報として、温冷浴前の自律神経の状態のみを用いて設定情報を導出してもよい。この場合、情報処理装置3は、温冷浴前の自律神経の状態のみを取得する。情報処理装置3は、温冷浴前の自律神経の状態と設定情報とを対応付けた判定テーブル323を用いて、取得した温冷浴前の自律神経の状態に応じた設定情報を特定してよい。
【0073】
情報処理装置3は、特定した設定情報をユーザ端末4へ送信する。ユーザ端末4へ送信された設定情報はさらに、制御ユニット11へ転送される。制御ユニット11は、高温温水及び低温温水それぞれの吐出時間とサイクル数とを受信する。
【0074】
ユーザは、温冷浴の開始に際し、ユーザ端末4を用いて得られた設定情報に従い、温調ハンドル18により高温温水及び低温温水の温度を設定する。その後ユーザは、操作部19の温冷浴ボタン191を押下する。制御ユニット11は、操作部19を介して温冷浴の開始操作を受け付ける。制御ユニット11は、受信した吐出時間とサイクル数とに従い、開閉弁241~243の開閉を制御する。制御ユニット11は、足元用シャワーノズル12から高温温水と低温温水とを切り替えて吐出させるとともに、全身用シャワーノズル13から高温温水を吐出させる。所定のサイクル数が終了すると、湯水の吐出が終了する。このようにして1回の温冷浴が終了する。
【0075】
情報処理装置3は、ユーザ端末4に表示される画面を通じて、ユーザ設定の受け付けや、設定情報の提示などの処理を実行する。以下、画面例を参照して具体的に説明する。
【0076】
図9は、設定受付用の画面の一例を示す模式図である。ユーザ端末4は、アカウント情報を用いたログイン処理に応じて情報処理装置3から提供される画面情報に基づき、
図9に示す如く設定受付用の画面を表示部44に表示させる。情報処理装置3は、設定受付用の画面を利用してユーザ設定を取得する。
【0077】
設定受付用の画面には、ユーザの疲労度を縦軸とし、自律神経のバランスを横軸とするグラフ441が表示されている。疲労度は、紙面上方向に向けて値が小さく、紙面下方向に向けて値が大きくなる。自律神経のバランスは、紙面右方向に向けて値が大きく、紙面左方向に向けて値が小さくなる。グラフ441上には、疲労度及び自律神経のバランスの値に対応付けて、複数種類の自律神経の状態を示すオブジェクト442が重畳表示されている。
図9に示す例にて、グラフ441上には、自律神経の状態の分類名称として、「眠たい」「疲労困憊」「リラックス」「活力」と表示された4つのオブジェクト442が表示されている。
【0078】
グラフ441には、ユーザの温冷浴前の自律神経の状態が認識可能に表示される。温冷浴前の自律神経の状態は、例えばグラフ441上におけるオブジェクト442のうち、ユーザの温冷浴前の自律神経の状態(
図9の例で「眠たい」)に対応するオブジェクト442に対し、色付け、枠付け、点滅表示等の処理を施すことにより示される。
図9に示す例では、「眠たい」と表示されたオブジェクト442に対し、所定の表示色であることを示すハッチングを施すとともに、オブジェクト442の近傍に「温冷浴前」と表示されたテキストが配されている。グラフ441上において、ユーザの温冷浴前の疲労度及び自律神経のバランスの値を示す所定のマーカーオブジェクトなどを表示させることにより、ユーザの温冷浴前の自律神経の状態が示されてもよい。
【0079】
情報処理装置3は、例えばログインを受け付けると、ユーザ端末4を通じて生体センサ5からユーザの生体情報を取得する。情報処理装置3は、取得した生体情報に基づきユーザの温冷浴前の自律神経の状態を特定し、特定した自律神経の状態を対応付けたグラフ441を生成する。
【0080】
また、グラフ441上に表示されるオブジェクト442のうち、自律神経の目標状態(
図9の例で「リラックス」及び「活力」)に対応付けられたオブジェクト442は、タップ操作等により選択可能に構成されている。
図9に示す例では、「リラックス」及び「活力」と表示されたオブジェクト442に対し、「眠たい」と表示されたオブジェクト442とは異なる表示色であることを示すハッチングを施すことで、選択可能な目標状態を認識可能に示している。
【0081】
ユーザは、希望する自律神経の目標状態(
図9の例で「活力」)を示すいずれかのオブジェクト442を選択する。ユーザ端末4の制御部41は、操作部45を介して自律神経の目標状態の入力を受け付ける。制御部41は、受け付けた自律神経の目標状態に対するユーザ設定を情報処理装置3へ送信する。
【0082】
情報処理装置3は、ユーザの温冷浴前の自律神経の状態と、ユーザ端末4を通じて取得したユーザ設定とに応じて、上述のモデル321により設定情報を導出する。情報処理装置3は、導出した設定情報を示す画面を生成し、ユーザ端末4を介して表示させる。
図10は、設定情報を示す画面の一例を示す模式図である。
【0083】
設定情報を示す画面には、設定情報を表示する表示欄443が含まれている。表示欄443には、設定情報としての高温温水及び低温温水の設定温度、吐出時間及びサイクル数が表示されている。設定情報は、テキスト情報に加えて、縦軸を温度、横軸を時間とするグラフを用いて表示されている。情報処理装置3は、設定情報を導出すると、導出した設定情報に応じたテキストデータ及びグラフを生成し、表示欄443に表示させる。
【0084】
また設定情報を示す画面には、設定情報で温冷浴を行う場合に選択されるOKボタン444が含まれている。OKボタン444は、シャワー装置1へ設定情報を送信させるため送信指示ボタンとしての機能を有する。ユーザは、画面に表示される設定情報で温冷浴を行う場合、OKボタン444をタップする。ユーザ端末4の制御部41は、操作部45を介してOKボタン444のタップ操作を受け付けると、シャワー装置1の制御ユニット11へ設定情報を送信する。
【0085】
情報処理装置3は、温冷浴後のユーザの生体情報を取得することにより、温冷浴後の情報を示す画面をユーザ端末4へ提供してもよい。
図11は、温冷浴後の情報を示す画面の一例を示す模式図である。温冷浴後の情報を示す画面には、ユーザの温冷浴後における自律神経の状態が表示されている。
【0086】
温冷浴後の情報を示す画面には、
図9と同様のユーザの疲労度及び自律神経のバランスを軸とするグラフ445が表示され、グラフ445上にはユーザの温冷浴後における自律神経の状態が認識可能に表示されている。
図11に示す例では、ユーザの温冷浴後における自律神経の状態(
図9の例で「活力」)を示すオブジェクト446に、ユーザの温冷浴後における自律神経の状態であることを示す枠付け処理が施されている。
【0087】
情報処理装置3は、ユーザ端末4を通じて、温冷浴後における生体情報を取得した場合、取得した温冷浴後における生体情報に基づき温冷浴後の自律神経の状態を特定する。情報処理装置3は、特定した温冷浴後の自律神経の状態を対応付けたグラフ445を生成する。情報処理装置3は、グラフ445上における温冷浴前の自律神経の状態、自律神経の目標状態、及び温冷浴後の自律神経の状態それぞれに対応するオブジェクト446に所定の表示処理を施すなど、画面上でそれらの状態を同時に認識可能に表示してもよい。
【0088】
なお情報処理装置3は、生体情報に基づき温冷浴後の自律神経の状態を導出するものに
限らず、例えば、ユーザ端末4を通じて温冷浴後の自律神経の状態に対するユーザからの入力又は選択を受け付けることにより、温冷浴後の自律神経の状態を取得してもよい。
【0089】
上記画面によれば、ユーザはグラフ441を通じて温冷浴前の自律神経の状態を明確に認識することができる。そして、温冷浴前の自律神経の状態と、自律神経の目標状態とを比較しながら、温冷浴後の自律神経の目標状態を好適に設定することができる。またグラフ445を通じて温冷浴後の自律神経の状態が表示されることで、温冷浴による効果を明確に把握することができる。
【0090】
図12は、設定受付用の画面の他の一例を示す模式図である。
図12に示す設定受付用の画面は、自律神経の状態として、交感神経及び副交感神経についてのパワースペクトルを示すグラフを表示する。
【0091】
設定受付用の画面は、温冷浴前におけるユーザの交感神経及び副交感神経についての周波数に対するパワーの変化を示すグラフ447と、交感神経及び副交感神経についての周波数に対するパワーの変化を示す複数の推奨グラフ448とを含む。推奨グラフ448は、予め複数種に分類された自律神経の目標状態(目標モード)それぞれに対し生成されている。推奨グラフ448の近傍には、推奨グラフ448にて示される自律神経の目標状態を説明するテキストデータが表示されている。
【0092】
情報処理装置3は、ユーザ端末4を通じて取得した生体情報に基づき、ユーザの温冷浴前の自律神経の状態を示すグラフ447を生成する。また情報処理装置3は、予め記憶する各目標モードに対応する推奨グラフ448を読み出す。情報処理装置3は、生成したグラフ447と、目標モード毎の推奨グラフ448とを設定受付用の画面に表示させる。
【0093】
各推奨グラフ448は、タップ操作等により選択可能に構成されている。ユーザは、希望する自律神経の目標状態を示すいずれかの推奨グラフ448を選択する。ユーザ端末4の制御部41は、操作部45を介して自律神経の目標状態を示す推奨グラフの入力を受け付ける。制御部41は、受け付けた推奨グラフ448に対するユーザ設定を情報処理装置3へ送信する。
【0094】
上記画面によれば、ユーザはグラフ447を通じて交感神経及び副交感神経の状態や、交感神経及び副交感神経のバランスを視覚的に容易に認識することができる。
【0095】
なお情報処理装置3は、パワースペクトルを示すグラフを表示する構成においても、疲労度及び自律神経のバランスのグラフを表示する構成と同様に、温冷浴後の情報を示す画面を生成するものであってよい。情報処理装置3は、温冷浴後における生体情報に基づき、温冷浴後におけるユーザの交感神経及び副交感神経についての周波数に対するパワーの変化を示すグラフを生成し、温冷浴後の情報を示す画面を通じて表示させる。
【0096】
設定受付用の画面は、
図9に示す疲労度及び自律神経のバランスのグラフを含む画面と、
図12に示すパワースペクトルを示すグラフを含む画面とが選択可能に構成されていてもよい。情報処理装置3は、ユーザから受け付けた表示内容の選択に応じて、いずれかのグラフを含む設定受付用の画面を出力する。
【0097】
情報処理装置3は、自律神経の目標状態と、温冷浴後における実際のユーザの自律神経の状態とに基づき、判定テーブル323を更新してもよい。情報処理装置3は、自律神経の目標状態と、温冷浴後における実際のユーザの自律神経の状態との分類が一致していなかった場合、判定テーブル323における設定情報の内容を所定ルールに従い更新する。
【0098】
例えば、目標状態であるユーザ設定の「活力」に対し、実際の温冷浴後の状態が「リラックス」であった場合、高温温水の温度を所定温度高くする、低温温水の温度を所定温度低くする、高温温水もしくは低温温水の吐出時間を所定時間短くする、又はサイクル数を所定回数減少するなどの修正が行われる。ユーザ毎の自律神経の状態に応じて判定テーブル323をカスタマイズすることで、よりユーザに適した設定情報の提供が可能となる。
【0099】
図13は、設定情報の生成に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の各フローチャートにおける処理は、情報処理装置3の記憶部32に記憶するプログラム3Pに従って制御部31により実行されるとともにユーザ端末4の記憶部42に記憶するプログラム4Pに従って制御部41により実行されてもよく、制御部31及び制御部41それぞれに備えられた専用のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)により実現されてもよく、それらの組合せによって実現されてもよい。
【0100】
ユーザ端末4の制御部41は、アカウント情報を用いたログインを受け付け、生体センサ5との通信により、温冷浴前の生体情報を取得する(ステップS11)。生体センサ5は、ユーザ端末4との通信の確立に応じて、過去に蓄積していた生体情報をユーザ端末4へ送信してもよく、ユーザ端末4との通信の確立後、所定時間にわたり検出した生体情報を送信してもよい。制御部41は、取得した温冷浴前の生体情報を情報処理装置3へ送信する(ステップS12)。
【0101】
情報処理装置3の制御部31は、ユーザにおける温冷浴前の生体情報を受信する(ステップS13)。制御部31は、受信した温冷浴前の生体情報を解析することにより、温冷浴前の自律神経の状態を取得する(ステップS14)。
【0102】
制御部31は、ユーザ設定を受け付けるための設定受付用の画面を生成する(ステップS15)。設定受付用の画面には、温冷浴前の自律神経の状態を示す各種グラフが含まれている。制御部31は、生成した設定受付用の画面をユーザ端末4へ送信する(ステップS16)。
【0103】
ユーザ端末4の制御部41は、設定受付用の画面を受信する(ステップS17)。制御部41は、受信した設定受付用の画面を表示部44に表示する(ステップS18)。
【0104】
制御部41は、操作部45を介してユーザ設定を受け付ける(ステップS19)。具体的には、制御部41は、設定受付用の画面を通じて、自律神経の目標状態又は自律神経の目標状態を示す推奨グラフに対する選択を受け付けることにより、自律神経の目標状態に対するユーザ設定の入力を受け付ける。制御部41は、受け付けたユーザ設定を情報処理装置3へ送信する(ステップS20)。
【0105】
情報処理装置3の制御部31は、ユーザ設定を受信する(ステップS21)。制御部31は、温冷浴前の自律神経の状態と、ユーザ設定としての自律神経の目標状態とに基づき、モデル321を用いて設定情報を導出する(ステップS22)。ステップS22では制御部31は、判定テーブル323を参照して、温冷浴前の自律神経の状態及びユーザ設定に対応する設定情報を特定する。判定テーブル323が複数記憶されている場合には、制御部31は、ログインユーザに応じた判定テーブル323を特定し、特定した判定テーブル323を参照して設定情報を導出する。
【0106】
制御部31は、温冷浴前の生体情報、温冷浴前の自律神経の状態、ユーザ設定及び設定情報等を対応付けて履歴DB322に記憶する(ステップS23)。制御部31は、特定した設定情報を示す画面を生成し、生成した設定情報を示す画面をユーザ端末4へ送信する(ステップS24)。
【0107】
ユーザ端末4の制御部41は、設定情報を示す画面を受信し(ステップS25)、受信した設定情報を示す画面を表示部44に表示する(ステップS26)。制御部41は、受信した設定情報をシャワー装置1の制御ユニット11へ送信する(ステップS27)。ステップS27では制御部41は、設定情報を示す画面を利用して受け付けた設定情報の送信指示に応じて、設定情報を送信してもよい。
【0108】
上述の処理において、情報処理装置3はユーザ端末4を通じてシャワー装置1へ設定情報を送信するものに限らず、直接シャワー装置1へ設定情報を送信してもよい。
【0109】
図14は、温冷浴後における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14の処理は、例えば温冷浴後に行われる所定の温冷浴終了の入力操作の受け付けに応じて開始される。
【0110】
ユーザ端末4の制御部41は、生体センサ5との通信により、温冷浴後の生体情報を取得する(ステップS31)。制御部41は、取得した温冷浴後の生体情報を情報処理装置3へ送信する(ステップS32)。
【0111】
情報処理装置3の制御部31は、ユーザにおける温冷浴後の生体情報を受信する(ステップS33)。制御部31は、受信した温冷浴後の生体情報を解析することにより、温冷浴後の自律神経の状態を取得する(ステップS34)。温冷浴後の自律神経の状態は、温冷浴後の自律神経に関する情報に対応する。制御部31は、取得した温冷浴後の自律神経の状態を、履歴DB322に記憶する(ステップS35)。
【0112】
制御部31は、取得した温冷浴後の自律神経の状態を含む、温冷浴後の情報を示す画面を生成する(ステップS36)。制御部31は、生成した温冷浴後の情報を示す画面をユーザ端末4へ送信する(ステップS37)。
【0113】
ユーザ端末4の制御部41は、温冷浴後の情報を示す画面を受信する(ステップS38)。制御部41は、受信した温冷浴後の情報を示す画面を表示部44に表示する(ステップS39)。
【0114】
情報処理装置3の制御部31は、ユーザ設定として受け付けた自律神経の目標状態と、温冷浴後における実際のユーザの自律神経の状態とを比較することにより、判定テーブル323を更新するか否かを判定する(ステップS40)。
【0115】
自律神経の目標状態と、温冷浴後における自律神経の状態との分類が一致していることにより、判定テーブル323を更新しないと判定した場合(ステップS40:NO)、制御部31は、更新処理をスキップする。
【0116】
自律神経の目標状態と、温冷浴後における自律神経の状態との分類が一致していないことにより、判定テーブル323を更新すると判定した場合(ステップS40:YES)、制御部31は、所定ルールに従い判定テーブル323の設定情報などを更新し(ステップS41)、一連の処理を終了する。
【0117】
上述のステップS40において、制御部31は、自律神経の目標状態及び温冷浴後における自律神経の状態における疲労度又は自律神経のバランスの値の差分が閾値以上である場合、判定テーブル323を更新すると判定してもよい。
【0118】
上述のフローチャートにおける処理主体は限定されるものではない。情報処理装置3が
実行する処理の一部又は全部はユーザ端末4により実行されてもよい。情報処理装置3とユーザ端末4とは別個に設けられるものに限らず、一つの装置であってもよい。また、情報処理装置3及びユーザ端末4が実行する処理の一部又は全部は制御ユニット11により実行されてもよい。制御ユニット11は、実質的に情報処理装置3及びユーザ端末4を内包し、例えば水栓本体10に設けられる操作部19を通じてユーザからの各種操作を受け付けるとともに、水栓本体10に設けられる不図示のディスプレイ装置等の表示装置を通じて各種情報を表示するよう構成されてもよい。
【0119】
上記では、足元用シャワーノズル12における吐出の切り替えを制御ユニット11が自動で実行する例を説明したが、足元用シャワーノズル12における切り替えは、ユーザにより行なわれてもよい。例えばユーザは、設定情報の吐出時間及びサイクル数に従い、シャワー装置1の操作部19などを通じて足元用シャワーノズル12における高温温水と低温温水とのON/OFFを手動で切り替えるものであってもよい。シャワー装置1は、温度設定及び吐出切り替えの全てを自動で行うものであってもよい。この場合、ユーザ端末4は、設定情報として、設定温度及び切換サイクルの両方を制御ユニット11へ送信する。
【0120】
本実施形態によれば、高温温水と低温温水とを交互に吐出可能な足元用シャワーノズル12を用いて、好適な温冷浴を行うことができる。情報処理装置3により、ユーザの生体情報やユーザ設定に応じた最適な設定情報が提供されるため、自律神経の状態を好適に整えるための効果的な温冷浴が可能となる。
【0121】
(第2実施形態)
第2実施形態では、機械学習の手法を用いたモデル321により設定情報を導出する構成について説明する。以下では主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0122】
図15は、第2実施形態のモデル321の概要を説明する説明図である。モデル321は、ユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定を入力として、設定情報を出力するためのモデルである。
【0123】
モデル321は、例えば、深層強化学習によって、ユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定に応じた設定情報を学習するものであり、DQN(Deep Q Network)である。モデル321は、ユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定を示す状態量が入力された場合、出力すべき設定情報を評価するための行動価値を出力するモデルである。
【0124】
モデル321は、状態量が入力される入力層と、状態量を認識する中間層と、特定の設定情報(行動)の価値を示す行動価値を出力する出力層とを有する。入力層は、ユーザの自律神経に関する情報及びユーザ設定の入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力された情報を中間層に受け渡す。中間層は、入力層に入力された各情報を圧縮して状態量の特徴を抽出する。出力層は、複数の設定情報に対応する複数のニューロンを有し、各ニューロンは、各設定情報の行動価値を出力する。モデル321は、中間層を2層以上備えるものであってもよい。
【0125】
モデル321へ入力されるユーザの自律神経に関する情報は、例えば心拍データに基づき生成される温冷浴前の自律神経の状態を示す情報である。温冷浴前の自律神経の状態を示す情報は、例えば自律神経の状態を示す分類名称であってもよく、疲労度及び自律神経のバランスの値であってもよく、自律神経のスペクトルデータであってもよい。
【0126】
モデル321へ入力されるユーザの自律神経に関する情報には、心拍データ以外の生体データから生成される情報が含まれてもよい。またユーザの自律神経に関する情報には、生体情報そのものが含まれてもよい。
【0127】
モデル321へ入力されるユーザ設定は、例えば自律神経の目標状態を示す分類名称であってもよく、疲労度及び自律神経のバランスの値であってもよく、自律神経のスペクトルデータに対応する推奨グラフであってもよい。
【0128】
モデル321の出力層からは、高温温水と低温温水の温度及び切り替えサイクルを含む複数の設定情報に対する行動価値が出力される。情報処理装置3は、モデル321から出力される行動価値に基づいて、行動価値が最大の設定情報を選択することにより、ユーザの自律神経に関する情報及びユーザ設定に応じた設定情報を導出することができる。
【0129】
情報処理装置3は、所定のデータを用いた深層強化学習によりモデル321を生成する。強化学習では、ユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定を「状態」とし、設定情報を「行動」とし、所要の「報酬」を算出して、Q値又はQ関数(行動価値関数)の値を学習する。
【0130】
モデル321への入力を状態s、モデル321からの出力を行動価値Q(s,a)とすると、行動価値関数の更新式は、下記式(1)で表される。
【0131】
Q(s,a)←Q(s,a)+α(R+γmaxQ(s_next,a_next)-Q(s,a)…(1)
但し、
s:状態
a:状態sで選択した行動
α:学習係数
R:行動の結果得られた報酬
γ:割引率
maxQ(s_next,a_next):次状態で取り得る行動に対する行動価値Qの最大値
【0132】
情報処理装置3は、TD誤差、すなわち上記式(1)の右辺第2項がゼロに近づくように、例えば誤差逆伝播法によって、モデル321のパラメータを最適化することにより、モデル321を機械学習させる。報酬の期待値と現在の行動評価との誤差を0に近づけるように、モデル321のパラメータが更新される。
【0133】
情報処理装置3は上述の強化学習を用いて、設定情報を学習する処理を行う。具体的には、情報処理装置3は、履歴情報DB322に記憶する情報を参照して、温冷浴前の自律神経の状態及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定と、設定情報と、温冷浴後における自律神経に関する情報とを取得する。情報処理装置3は、温冷浴前の自律神経の状態及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定を状態sとし、設定情報を行動aとし、温冷浴後における自律神経に関する情報に応じて算出される報酬(スコア)に基づく強化学習を行う。
【0134】
情報処理装置3は、履歴情報DB322に記憶してある自律神経の目標状態に対するユーザ設定と、実際に設定情報を用いて温冷浴を行ったユーザの温冷浴後における自律神経に関する情報と、に基づいて上記報酬を算出する。温冷浴後における自律神経に関する情報は、例えば温冷浴後の生体情報に基づき生成される温冷浴後の自律神経の状態である。
【0135】
報酬は、自律神経の目標状態と温冷浴後の自律神経の状態との乖離が小さい程、高い値となるように算出する。自律神経の目標状態と温冷浴後の自律神経の状態との乖離が大きい場合、報酬ゼロ又は負の報酬が与えられる。報酬を算出する演算式は特に限定されるものではない。
【0136】
情報処理装置3は、モデル321に入力されるユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定と、各状態変数が入力されたときに出力される行動価値Qと、算出した報酬とに基づいて、モデル321を学習させる。情報処理装置3は、複数ユーザにおける履歴情報を用いてモデル321を学習させるものであってよい。情報処理装置3は、更新後のモデル321をユーザ端末4又は制御ユニット11にデプロイしてもよい。
【0137】
学習が終了すると、情報処理装置3は、学習済みのモデル321として、学習済みのモデル321に関する定義情報を記憶部32に記憶する。これにより、ユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定に対し、高温温水と低温温水の温度及び切り替えサイクルを含む設定情報を適切に導出することのできるモデル321を構築することができる。
【0138】
上記では、モデル321としてDQNを説明したが、モデル321は、状態量と、行動価値とを対応付けたテーブルを用いて設定情報を調整するように構成されてもよい。またモデル321の構成は限定されるものではなく、ユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定に対し設定情報を識別可能であればよい。
【0139】
モデル321は、教師ありの学習アルゴリズムによるものであってもよい。教師ありの学習アルゴリズムを用いる場合には、ユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定に対し、正解値となる設定情報を対応付けた訓練データを用いてモデル321を学習してもよい。
【0140】
情報処理装置3は、
図13のフローチャートと同様の処理を実行することにより、上記モデル321を用いて設定情報を導出する。情報処理装置3は、ユーザ端末を介して取得したユーザの自律神経に関する情報及び自律神経の目標状態に対するユーザ設定を学習済みのモデル321へ入力する。情報処理装置3は、モデル321から出力される行動価値の値に基づき、最も高い行動価値の値に対応する設定情報を選択することで、設定情報を取得する。
【0141】
本実施形態によれば、情報処理装置3は、機械学習モデルを用いて精度よく設定情報を導出することができる。情報処理装置3は、強化学習手法を用いて設定情報を学習する処理を行うことが可能となる。
【0142】
(第3実施形態)
図16は、第3実施形態におけるシャワー装置1の一例を示す側面図である。
図16に示すシャワー装置1は、全身用シャワーノズル13に代替して、シャワーヘッド及びホースを備える全身用シャワー13aを備えている。全身用シャワー13aは、浴室の壁面又は天井に設けられたシャワーホルダーに対して着脱自在に保持された状態で使用されてもよい。全身用シャワー13aは、鉛直下向に向けて温水を吐出する。全身用シャワー13aは、例えばユーザの頭上から温水を吐出する。上記構成によれば、より多様な姿勢でユーザが温冷浴を楽しむことができる。
【0143】
(第4実施形態)
図17は、第4実施形態のシャワー装置1の一例を示す構成図である。シャワー装置1
の水栓本体10は、サーモッスタット式に限らず、その他任意の混合方式を用いることができる。
図17に示すシャワー装置1は、制御ユニット11の制御信号に応じて、温水の温度及び流量を調整するよう構成されている。シャワー装置1は、第1実施形態の第1温度調整部211及び第2温度調整部212に代替して、第1温度流量調整部261及び第2温度流量調整部262を備えている。
【0144】
給湯管71及び給水管72はそれぞれ、第1温度流量調整部261及び第2温度流量調整部262へ接続されている。第1温度流量調整部261及び第2温度流量調整部262は、例えばサーミスタ、電動弁及び流量計などを備える温調流調ユニットである。温調流調ユニットは、供給された湯及び水それぞれの温度に応じて所定の吐水温度となる湯水の混合比を求め、求めた混合比となるよう湯及び水それぞれの流量に応じて電動弁を制御することで、所定の温度及び流量に調整した湯水を吐水する。
【0145】
第1温度流量調整部261には、開閉弁271を介してハンドシャワー14に連結される配管281と、開閉弁272を介して全身用シャワーノズル13に連結される配管282とが接続されている。第2温度流量調整部262には、開閉弁273を介して足元用シャワーノズル12に連結される配管283が接続されている。開閉弁271~273は、制御ユニット11に電気的に接続されている。制御ユニット11は、開閉弁271~273の開閉を制御する。
【0146】
第2温度流量調整部262は、制御ユニット11からの制御信号に応じて、所定時間毎に湯水の調整温度を変更する。これにより、第2温度流量調整部262を通じて、設定情報に応じた温度及び切り替えサイクルにて高温温水及び低温温水が吐出される。
【0147】
上記構成によれば、制御ユニット11を用いて温水の温度及び流量が制御される。ユーザ端末4から受信した設定情報に基づき、温度設定及び吐出切り替えの全てをシャワー装置1が自動で行うことができるため、シャワー装置1の利便性が向上する。
【0148】
(第5実施形態)
図18は、第5実施形態のシャワー装置1の一例を示す構成図である。第5実施形態のシャワー装置1は、電動式の各種弁により、各吐出口からの吐出を制御する。シャワー装置1は、第1実施形態と同様の第1温度調整部211及び第2温度調整部212を備える。
【0149】
第1温度調整部211で調整された高温温水及び第2温度調整部212で調整された低温温水はそれぞれ、開閉弁291を介して足元用シャワーノズル12へ供給される。また第1温度調整部211で調整された高温温水及び第2温度調整部212で調整された低温温水はそれぞれ、切換弁294及び開閉弁292を介して全身用シャワーノズル13へ供給されるとともに、切換弁294及び開閉弁293を介してハンドシャワー14へ供給される。開閉弁291~293及び切換弁294は、アクチュエータ等の駆動部を備えている。
【0150】
給湯管71及び給水管72はそれぞれ、第1温度調整部211及び第2温度調整部212へ接続されている。第1温度調整部211に接続される配管295は下流で分岐し、一方は切換弁294を介して配管297へ接続され、他方は開閉弁291を介して配管298へ接続されている。第2温度調整部212に接続される配管296は下流で分岐し、一方は切換弁294を介して配管297へ接続され、他方は開閉弁291を介して配管298へ接続されている。配管297は下流で分岐し、一方は開閉弁293を介してハンドシャワー14に連結され、他方は開閉弁292を介して全身用シャワーノズル13に連結されている。配管298は、足元用シャワーノズル12に連結されている。
【0151】
開閉弁291~293及び切換弁294は、制御ユニット11及び操作部19に電気的に接続されており、制御ユニット11及び操作部19から出力される信号に応じて駆動部が動作する。制御ユニット11は、開閉弁291~293の開閉及び切換弁294の切り替えを制御する。制御ユニット11は、開閉弁291における開閉及び流路の切り替え方向を制御することで、足元用シャワーノズル12から高温温水及び低温温水を切り替えて吐出させることができる。
【0152】
開閉弁291が開状態且つ第1温度調整部211方向へ切り替えられ、切換弁294が第1温度調整部211方向へ切り替えられ、開閉弁292が開状態、開閉弁293が閉状態である場合、足元用シャワーノズル12及び全身用シャワーノズル13から高温温水が吐出される。開閉弁291が開状態且つ第2温度調整部212方向へ切り替えられ、切換弁294が第1温度調整部211方向へ切り替えられ、開閉弁292が開状態、開閉弁293が閉状態である場合、足元用シャワーノズル12から低温温水が吐出され、全身用シャワーノズル13から高温温水が吐出される。
【0153】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、上述の実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
上述の各実施形態に示すシーケンスは限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各処理手順はその順序を変更して実行されてもよく、また並行して複数の処理が実行されてもよい。各処理の処理主体は限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各装置の処理を他の装置が実行してもよい。
【符号の説明】
【0154】
S シャワーシステム
1 シャワー装置
10 水栓本体
11 制御ユニット
12足元用シャワーノズル
13全身用シャワーノズル
14ハンドシャワー
211 第1温度調整部
212 第2温度調整部
3 情報処理装置
31 制御部
32 記憶部
33 通信部
3P プログラム
3A 記録媒体
321 モデル
322 履歴情報DB
323 判定テーブル
4 ユーザ端末
41 制御部
42 記憶部
43 通信部
44 表示部
45 操作部
4P プログラム
4A 記録媒体
5 生体センサ